説明

二液型熱硬化性樹脂組成物及び耐熱性透明樹脂成形物の製造方法

【課題】耐光性、耐熱性に優れ、近紫外から可視波長領域で長期にわたり光学的透明性を維持することが可能な耐熱性透明樹脂成形物の製造に用い、長期の保存が可能な二液型熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】少なくとも金属アルコキシドを含むA液と、少なくとも前記金属アルコキシドとは異なる種類の金属アルコキシドを含むB液、の組合せよりなり、A液およびB液の少なくとも一方にオルガノポリシロキサンを含み、A液およびB液は、前記した2種以上の金属アルコキシドおよび前記オルガノポリシロキサンを均一に分散し、溶解できる有機溶媒を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる金属アルコキシドを含有する二液型熱硬化性樹脂組成物及びこの二液型熱硬化性樹脂組成物を用いた耐熱性透明樹脂成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、2種以上の金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンとを混合すると、反応触媒を用いることなく縮合反応により樹脂組成物が得られるという知見を得た(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特願2007−253375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、2種以上の金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンを混合した一液タイプの混合液は、常温下であっても混合液中で反応が除々に進行し、増粘する。そして、約2日から1週間で、加熱しても硬化しなくなるという問題がある。
【0005】
このため、前記した一液タイプの混合液を原料とする場合、一週間以内に熱硬化反応させなければならず、1週間を経過すると、原料を廃棄しなければならない。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであって、2種以上の金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンを用いて耐熱性透明材料を得るに際して、その原料を長期にわたり安定させる二液型熱硬化性樹脂組成物と、この二液型熱硬化性樹脂組成物を用いた耐熱性透明樹脂成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、少なくとも金属アルコキシドを含むA液と、少なくとも前記金属アルコキシドとは異なる種類の金属アルコキシドを含むB液、の組合せよりなり、A液およびB液の少なくとも一方にオルガノポリシロキサンを含み、A液およびB液は、前記2種類の金属アルコキシドおよびオルガノポリシロキサンを均一に分散し、溶解できる有機溶媒を含む二液型熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0008】
かかる二液型熱硬化性樹脂組成物を用いれば、2ヶ月の長期にわたりA液およびB液を常温で安定して保存できるという効果を奏する。つまり、A液およびB液を製造して2ヶ月後にA液とB液により混合液を作成して熱硬化反応をさせても、所望の耐熱性透明樹脂成形物を得ることができるという効果を奏する。
【0009】
(2)そして、前記した有機溶媒は、第2級アルコールまたは第3級アルコールであるのが望ましい。
【0010】
(3)また、前記した第3級アルコールは、t−ブタノールであることが望ましい。
有機溶媒としてt−ブタノールを用いた場合は、A液およびB液を混合し、混合液を作成した後であっても、混合液を更に常温で1週間安定して保存することができるという効果を奏する。つまり、A液およびB液により混合液を作成し、その後1週間後に熱硬化反応をさせても、所望の耐熱性透明樹脂成形物を得ることができるという効果を奏する。
【0011】
(4)また、前記した3つの発明である(1)、(2)または(3)に記載のA液及びB液の組合せよりなる二液型熱硬化性樹脂組成物を用いた耐熱性透明樹脂成形物の製造方法において、成形時にA液とB液とを混合させ、得られた混合液を所定の型内に入れ、型内で反応触媒を添加することなく縮合反応させることにより、耐熱性透明樹脂成形物を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、2種以上の金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンを用いて耐熱性透明材料を得るに際して、その原料を長期にわたり安定に保存することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
シリコーン系の縮合物は高い透明性と耐熱性とを有しているため、光学素子用材料として有効である。
【0014】
一方、無機成分と有機成分とを分子レベルで化学的に結合した無機・有機ハイブリッドが、金属アルコキシドからゾルゲル法により合成され、無機及び有機の特徴を兼ね備えた新しい材料として注目されている。
【0015】
しかし、上記方法においても、最後の縮合反応の段階においてスズ系触媒などの金属触媒を用いるため、高い透明性を得ることができなかった。
【0016】
上記問題に対し、本発明者らが鋭意検討した結果、金属アルコキシドとオルガノポリシロキサンとを用いた前記無機成分と有機成分とのハイブリッド化において、2種以上の金属アルコキシドを用いることにより、反応触媒を用いることなく容易に加水分解反応が進行し、その後の縮合反応段階においても、金属触媒などの反応触媒を用いることなく前記加水分解した成分を縮合反応させることができることが見出された。
【0017】
すなわち、金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法では、通常、まず金属アルコキシド等の原料を酸性、塩基性触媒下で加水分解することが行われている。
しかし、2種以上の金属アルコキシドを用いた場合には、酸性、塩基性触媒を用いることなく原料成分を加水分解することができるのである。
【0018】
さらに、この加水分解物の縮合反応には一般的にスズ系などの金属触媒を用いるが、2種以上の金属アルコキシドを作用させることにより得られた加水分解物については、金属触媒等の反応触媒を用いることなく加熱のみで縮合反応を進行させることができ、目的とする耐熱性透明樹脂成形物を得ることができるのである。
【0019】
そして、上記により得られた無機・有機ハイブリッドにおいては、オルガノポリシロキサンの縮合物が主となるため、高い透明性が得られることがわかった。
さらに、耐光性、耐熱性にも優れ、光照射や加熱後においても優れた光学特性を維持することができることが判明した。
【0020】
以下、耐熱性透明樹脂成形物について、その製造方法と共に説明する。
(金属アルコキシド)
本発明に用いられる金属アルコキシドを形成する金属または半金属の種類としては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、カドミウム、タンタル、タングステン等のアルコキシドを形成し得る金属または半金属が挙げられる。
【0021】
また、アルコキシドの種類は特に限定されることなく、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等が挙げられ、更には、アルコキシ基の一部をβ−ジケトン、β−ケトエステル等で置換したアルコキシド誘導体であってもよい。
【0022】
本発明においては、複数(2種以上)の金属アルコキシドが用いられるが、該複数の金属アルコキシドが、ケイ素アルコキシド及びチタンアルコキシドを含むことが望ましい。また、ジルコニウムアルコキシドを用いることも好適である。
【0023】
ケイ素アルコキシドは、チタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシドに比べ、安価で入手し易く、また反応が穏やかであるため作業性に優れる。一方、チタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシドは、ケイ素アルコキシドに比べて加水分解、縮合などの反応が進みやすく、酸を使わなくても後述する加水分解反応を進めることができると期待される。
【0024】
これらを含む複数の金属アルコキシドとオルガノポリシロキサンとを水の存在下で反応させると、金属アルコキシドのアルコキシ基が水酸基に置換され、その水酸基が例えばオルガノポリメチルシロキサンの末端のシラノール基と脱水・縮合反応を起こすことにより、金属アルコキシドに由来する無機成分とオルガノポリメチルシロキサンとから構成される無機・有機ハイブリッドが形成される。
【0025】
ケイ素アルコキシドの具体的な例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、チタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシドとしては、アルコキシル基の炭素数が1〜10のチタンテトラアルコキシドやジルコニウムアルコキシドが好ましく用いられる。反応性を抑え作業性を上げるために、アルコキシ基の炭素数が3〜8のチタンテトラアルコキシドやジルコニウムテトラアルコキシドがより好ましい。このチタンテトラアルコキシドにおいては、4つのアルコキシル基は、たがいに同一でも異なっていてもよいが、入手の容易さなどの点から、同一のものが好ましく用いられる。
【0027】
該チタンテトラアルコキシドの例としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘトキシド、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−2−エチルヘトキシド、及びジルコニウムテトラ−tert−ペンチルオキシド等が挙げられる。
【0028】
ケイ素アルコキシドを含めこれらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
後述するように、光学素子用樹脂組成物を得るには、ケイ素アルコキシド及びチタンアルコキシドを各々含む2液を混合する場合と、両者を含む1液で反応させる場合とがあるが、いずれにおいても両者が混合されたときに、ケイ素アルコキシド量A及びチタンアルコキシド量Bの質量比(A/B)が40/1〜100/1の範囲となるようにすることが望ましい。
【0030】
また、上記ケイ素アルコキシド及びチタンアルコキシドを含む複数の金属アルコキシドの、混合後の反応系内の含有量は1〜40質量%の範囲とすることが望ましく、5〜15質量%の範囲とすることがより好適である。
【0031】
(オルガノポリシロキサン)
本発明に用いられるオルガノポリシロキサンとしては、例えばシラノール変性ポリジメチルシロキサンのような、片末端または両末端に、シラン化合物、金属およびまたは半金属アルコキシドの官能基と反応可能な官能基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)等を使用することができる。
【0032】
上記オルガノポリシロキサンとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が400〜80000の範囲にあるものを使用することが望ましい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が80000を超えると、ゾル液の粘度が高くなり過ぎて作業性が悪くなる場合があり、重量平均分子量が400に満たないと、光学素子用樹脂組成物で、低分子シロキサンの発生が多くなり、その結果電気接点の絶縁不良を招き易くなる。
【0033】
オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は4000〜60000の範囲であることがより望ましく、10000〜40000の範囲であることがさらに望ましい。
【0034】
なお、前記官能基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)の官能基、該PDMSの官能基と反応可能な官能基とは、活性水素を有する官能基、もしくは潜在的に活性水素を有するような官能基である。
【0035】
該官能基としては、例えば、以下に示される官能基1〜13である。なお、下式におけるRおよびR’は、各々独立に、置換または未置換のアルキレン基、アルキル基を示す。
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

但し、上記において、Xは−OCH、−OC等のアルコキシル基、のいずれかを表す。
【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
このような官能基を有するPDMSなどのオルガノポリシロキサンは、前記金属アルコキシドと円滑に反応し易い。なお、上記オルガノポリシロキサンは、過剰に存在する水分や低分子量成分を除去するために加熱処理することが望ましい。水分除去を行えば、後述するオルガノポリシロキサン溶液中に金属アルコキシドを添加した場合、該金属アルコキシドの残存水分による加水分解が防止でき、また、低分子量成分残存による光学素子用樹脂組成物(有機・無機ハイブリッド)の表面のべたつき、機械的強度の劣化等の不具合を効果的に解消することができる。
【0043】
また、上記オルガノポリシロキサンの縮合反応系内の含有量は40〜95質量%の範囲とすることが望ましく、70〜85質量%の範囲とすることがより望ましい。
【0044】
本発明の光学素子用樹脂組成物は、2種以上の金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンを反応触媒を用いることなく加水分解したゾル液(硬化性樹脂組成物)を、各種用途に応じて塗布あるいは成型して、反応触媒を用いることなく加熱により縮合反応させゲル化せしめて製造される。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物には、前記金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンを加水分解する前のもの、加水分解反応途中のものも含まれる。
【0045】
上記金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンの加水分解は、両者を溶媒に加え攪拌したのち、金属アルコキシドの加水分解物とオルガノポリシロキサンとを反応させる、あるいは必要により水を加えることによって行う。
【0046】
上記溶媒としては、前記金属アルコキシドとオルガノポリシロキサンとを均一に分散、溶解できる溶媒であれば特に限定されるものではない。
例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール等の第1級アルコール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブチルアルコール等の第2級アルコール、tert−ブチルアルコール(t−ブタノール)、tert−アミルアルコール等の第3級アルコール、酢酸エチル、メトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、2−エトキシエタノール等の各種アルコールの他、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が一般的に使用される。
硬化性樹脂組成物の液安定性(ポットライフ)の観点からは、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコールなど第3級アルコールを用いることが望ましい。
【0047】
上記各成分の配合は、例えば、前記溶媒中に金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンを同時に配合してもよいし、予め金属アルコキシドのみを溶解し、これに対してオルガノポリシロキサンを配合してもよい。さらには、加水分解した金属アルコキシドに対してオルガノポリシロキサンを配合してもよい。
【0048】
なお、前記金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンの溶液は、金属アルコキシドごとに分けて調製しても良いし、1液にすべて混合して調製しても良いが、金属アルコキシドごとに複数の液に分けて調製し、それらの液を混合する方法が反応の安定性、硬化後の樹脂組成物の安定性の点から好ましい。
【0049】
前記混合する金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンの量比としては、両者の総量において、金属アルコキシドの量を2〜60質量%の範囲とすることが望ましく、10〜30質量%の範囲とすることがより好適である。
【0050】
なお、上記混合液には本発明の作用・効果を損なわない範囲で、その他の成分を配合することができる。その他の成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0051】
その他の任意成分としては、例えば、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、防腐剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0052】
前記のように、加水分解では未加水分解のアルコキシ基に対して、必要により所定量の水を添加する。本発明では、この工程において複数の金属アルコキシド及びオルガノポリシロキサンを加水分解するが、水の量は加水分解に用いる原料液全体に対し0.01〜0.25質量%の範囲とすることが望ましく、0.02〜0.1質量%の範囲とすることがより好適である。
【0053】
雰囲気湿度により縮合反応後に樹脂組成物の硬度にバラツキが出る場合があり、予め少量の水を添加しておくことが好ましい。水の量が0.01質量%に満たないと、縮合反応後に樹脂組成物の高度にバラツキが出易くなる場合がある。一方、0.25質量%を越えると、十分に硬化しない部分が存在する場合がある。
【0054】
加水分解は、前記金属アルコキシドを溶解した溶液に、前記必要量の水を加え、10〜35℃、好ましくは20〜25℃の温度で、0.1〜2時間、好ましくは0.5〜1時間攪拌することによって行う。
【0055】
次いで、加水分解したゾル液を、適応させる素子の形状に応じて塗布、注入等を行って成型等を行う。なおこのとき、溶媒、加水分解で生成したアルコール等を常圧あるいは減圧下で留去して塗布してもよい。
【0056】
前記塗布は、例えばスプレーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート法等により、前記注入は、例えば圧力注入法、インクジェット法等により行うことができる。
【0057】
成型後、加熱により縮合反応させ硬化物とする。このとき、本発明では反応触媒を用いることはない。
加熱温度は50〜250℃の範囲とすることが望ましく、100〜180℃の範囲とすることがより好適である。
【0058】
50℃未満であると、溶媒等が十分蒸発せず、硬度、耐熱性が得られない場合がある。250℃を越えると、加熱に要する熱エネルギーが大であり、省エネの観点で好ましくなく、コストアップを招く場合がある。加熱時間は0.5〜6時間の範囲とすることが望ましく、1〜4時間の範囲とすることがより好適である。
【0059】
なお、上記縮合反応においては、前記加熱を下記のような手順により行うことが望ましい。
【0060】
まず、加熱初期に関しては、オーブン等の加熱器内の温度を前記ゾル液の成型品を投入する前に設定温度に十分高くしておき、その加熱器にゾル液を投入して初期から急激な加熱を行うことが望ましい。これにより、硬化物である光学素子用樹脂組成物の特性のばらつきを最小限にすることができる。
【0061】
このようにして得られた硬化体(光学素子用樹脂組成物)は、金属酸化物等がほとんど含まれないため、近紫外から可視波長領域で高い光学的透明性を維持することができる。
【0062】
具体的には、10mm×30mm×厚さ2mmにおいて、波長350〜800nmの光透過率が85%以上であることが望ましく、より好ましくは90%以上である。
【0063】
さらに、本発明の光学素子用樹脂組成物には、前記複数の金属アルコキシドに基づく架橋構造が存在するため、高い耐光性、耐熱性が発現される。
【0064】
具体的には、前記光学素子用樹脂組成物は、波長365nm、光量3000mW/cm2の光を24時間照射後でも、350〜800nmにおける透過率が80%以上であることが望ましく、85%以上であることがより望ましい。光照射後の透過率が上記範囲であれば、例えば各色LEDにおける長期の使用に対しても、充分な光学特性を維持することができる。
【0065】
また、200℃の雰囲気に200時間放置後の350〜800nmにおける透過率が、85%以上であることが望ましく、90%以上であることがより望ましい。加熱処理後の透過率が上記範囲であれば、例えば用いた光学素子における発熱に対しても熱劣化せず、充分な光学特性を維持することができる。
【0066】
本発明の光学素子用樹脂組成物は、特にLED素子の封止材として有用であり、耐光性、耐熱性に優れることから、発光素子が青色LED素子や紫外線LED素子であるLED素子の封止材としても有用であり、高輝度環境下においても優れた耐久性を示す。さらに、この封止材は、効率的に発光素子からの光を取り出すことができる。
【0067】
また、その他にも、その優れた耐熱性、耐光性、透明性等の特徴から、下記のディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途にも用いることができる。
【0068】
前記ディスプレイ材料としては、例えば、液晶ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料;次世代フラットパネルディスプレイであるカラープラズマディスプレイ(PDP)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等;有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;フィールドエミッションディスプレイ(FED)の各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
【0069】
前記光記録材料としては、例えば、VD(ビデオディスク)、CD、CD−ROM、CD−R/CD−RW、DVD±R/DVD±RW/DVD−RAM、MO、MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤等が挙げられる。
【0070】
前記光学機器材料としては、例えば、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダープリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部等;ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー等;プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤等;光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルム等が挙げられる。
【0071】
前記光部品材料としては、例えば、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤等;光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤等;光受動部品、光回路部品である、レンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤等;光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤等が挙げられる。
【0072】
前記光ファイバー材料としては、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等;工業用のセンサー類、表示・標識類等;通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー等が挙げられる。
【0073】
また、前記半導体集積回路周辺材料としては、例えば、LSI、超LSI材料のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料等が挙げられる。
【0074】
さらに、前記光・電子機能有機材料としては、例えば、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子;光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料;ファイバー材料;これらの素子の封止剤、接着剤等が挙げられる。
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0076】
<各種特性の測定法>
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0077】
(光透過性)
得られた各耐熱性透明樹脂成形物を、10mm×30mm×膜厚2mmに切り取り、分光光度計U−3300(日立製作所製)を用いて、波長350〜800nmの分光透過率(%T)を測定した。
【0078】
(屈折率)
得られた各耐熱性透明樹脂成形物を、10mm×30mm×膜厚2mmに切り取り、硬化体を作製した。この硬化体について、25℃における波長587nmの光の屈折率をアタゴ社製のアッベ屈折率計で測定した。
【0079】
(耐光性、耐熱性)
前記の条件で作製した光透過性試験用の試料を、各々耐光性については、ウシオ電機社製UVスポット照射装置SP−9を用い、60℃の雰囲気で、波長365nm、光量3000mW/cmの光を24時間照射し、耐熱性については加熱オーブンを用い、200℃の雰囲気に200時間放置した後、前記の測定条件で光透過率を測定し、初期の状態との比較を行った。
【実施例1】
【0080】
(原料液の調製)
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(関東化学社製)0.2質量%をt−ブタノール(和光純薬工業社製)8.2質量%に添加し、そこにテトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)10.2質量%加え攪拌した。
【0081】
この溶液を7日後に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)81.4質量%中に投入し、これを室温で30分間攪拌し原料液を得た。
【0082】
(耐熱性透明樹脂成形物の作製)
この原料液をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、バッチ式のオーブンにて100℃で1時間硬化を行った後、120℃で3時間焼成を行い(脱水縮合工程)、硬化物(耐熱性透明樹脂成形物)を得た。
しかし、8日後にフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、バッチ式のオーブンにて100℃で1時間硬化を行った後、120℃で3時間焼成を行なっても(脱水縮合工程)、硬化物を得ることはできなかった。
【0083】
(評価)
−初期特性−
・硬化特性
硬化物について、目視及び指触により以下の判断基準により評価した。
◎:垂れない程度に十分に硬化しており、硬度も均一である。
○:十分に硬化しているが、気泡が見られる。
△:全体として硬化しているが、一部柔らかくタック感のある部分がある。
×:硬化が不十分で液として垂れてしまう。
評価結果を表1に示す。
【0084】
<光学特性>
前述の条件により、硬化物の25℃における波長587nmの光の屈折率及び350〜800nmの光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
<耐光性、耐熱性>
前述の条件により耐光試験、耐熱試験を行った各試料について、前記光透過率を測定し、初期特性と比較した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0086】
実施例1の原料液の調製において、溶媒としてt−ブタノールの代わりにイソプロピルアルコールを用いた以外は同様にして耐熱性透明樹脂成形物の作製を行い、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
なお、本実施例で調製した原料液について、液調製から24時間放置後、再度硬化を行ったところ、他の実施例に比べ十分な硬化特性が得られなかった。
【実施例3】
【0088】
(原料液の調製)
−原料液A−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)20.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)76.9質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)2.5質量%と、水0.1質量%とを混合し、これを室温で30分間攪拌し原料液Aを得た。
【0089】
−原料液B−
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(関東化学社製)0.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)86質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)13.5質量%とを混合し、これを室温で30分間攪拌し原料液Bを得た。
【0090】
(光学素子用樹脂組成物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液Aおよび原料液Bを質量比1/1の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、脱泡し、無色透明な液体を得た。
【0091】
この液体をフッ素樹脂製シャーレに流し込み、100℃で1時間硬化を行った後、120℃で3時間焼成を行い(脱水縮合工程)、無色透明な耐熱性透明樹脂成形物を得た。この耐熱性透明樹脂成形物について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0092】
実施例3の原料液Aの調製において、PDMSを77.0質量%とし水を用いなかった以外は同様にして耐熱性透明樹脂成形物の作製を行い、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0093】
実施例3の原料液Aの調製において、PDMSを77.0質量%とし水を0.14質量%とした以外は同様にして耐熱性透明樹脂成形物の作製を行い、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例1)
実施例1の原料液の調製において、TIPTを0.1質量%、t−ブタノールを13.0質量%とし、TEOSを用いなかった以外は同様にして耐熱性透明樹脂成形物の作製を試みたが、加熱後に硬化物は得られなかった。
【0095】
(比較例2)
実施例1の原料液の調製において、TEOSを9.8質量%、t−ブタノールを11.8質量%とし、TIPTを用いなかった以外は同様にして耐熱性透明樹脂成形物の作製を試みたが、加熱後に硬化物は得られなかった。
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示すように、実施例の複数の金属アルコキシドを用いた場合では、縮合反応に触媒を用いなくても十分な硬化が行われ、耐熱性透明樹脂成形物は高い透明性、さらに耐光性、耐熱性を維持していた。一方、1種の金属アルコキシドを用いた比較例では、耐熱性透明樹脂成形物が得られなかった。
【実施例6】
【0098】
実施例3で得た無色透明な耐熱性透明樹脂成形物について、以下の評価テストを行った。
【0099】
(評価テスト1)
耐熱性透明樹脂成形物を200℃の環境下で200時間放置した場合の透明性を前記した分光光度計U−3300を用いて測定した。
初期テータは89.0〜91.6%Tであるのに対し、200℃、200時間放置後は90.2〜92.4%Tであり、ほとんど変化しないことが分かった。
【0100】
(評価テスト2)
耐熱性透明樹脂成形物を200℃の環境下で200時間放置した場合の重量減を測定した。
初期データを100とした場合に、200℃、200時間放置後は97.4であった。すなわち、重量減は、2.6%であった。
【0101】
(評価テスト3)
硬化物を150℃の環境下で400時間放置した場合の透明性の保持について目視検査を行った。評価基準は、目視にて観察した結果、剥離、亀裂、ボイドおよび白濁が無ければ○(=状態変化(変質)無し)、剥離、亀裂、ボイドまたは白濁があれば×とした。結果は、○であった。
【0102】
(評価テスト4)
耐熱性透明樹脂成形物について前記したUVスポット照射装置SP−9を用いて耐紫外線試験を行った。試験条件は、波長400nm、照度中心部10w/cm、照度周辺部5w/cm、試験時間350時間とした。また、評価基準は、評価テスト3と同じである。結果は、○であった。
【0103】
(評価テスト5)
耐熱性透明樹脂成形物について、80℃、85%Rhの環境下で150時間の高温高湿テストを行った。評価基準は、評価テスト3と同じである。結果は、○であった。
【0104】
(評価テスト6)
耐熱性透明樹脂成形物について、60℃、60%Rhの環境下で140時間の高温高湿テストを行った。評価基準は、評価テスト3と同じである。結果は、○であった。
【0105】
(評価テスト7)
耐熱性透明樹脂成形物について、−40℃、120℃を600サイクル繰り返すヒートサイクルテストを行った。評価基準は、評価テスト3と同じである。結果は、○であった。
【0106】
(評価テスト8)
耐熱性透明樹脂成形物を200℃の環境下で60時間放置した前後での引っ張り強度を測定した。測定器は、島津製作所製万能試験機(型番:AGS−1kNG)を用いた。その結果、初期データおよび試験後データは共に0.5MPaであり、60時間放置前後で変化しないことが分かった。
【実施例7】
【0107】
以下にPDMSを、原料液Aのみに入れた場合の実施例を示す。
(原料液の調製)
−原料液A−
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(和光純薬工業社製)0.2質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)98質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)1.8質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Aを得た。
【0108】
−原料液B−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)93質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)6.8質量%と、水0.2質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Bを得た。
【0109】
(硬化樹脂成形物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液A:原料液B=7:1の質量比の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、無色透明な液体を得た。
この液体をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、120℃で4時間焼成を行い(脱水縮合工程)、透明な耐熱性透明樹脂成形物を得た。
【実施例8】
【0110】
以下に、実施例7におけるテトライソプロポキシチタン(TIPT)の代わりにテトラブトキシジルコニウム(TBZR)を用いた場合の実施例を示す。
【0111】
(原料液の調製)
−原料液A−
テトラブトキシジルコニウム(TBZR)(和光純薬工業社製)0.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)95.2質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)4.3質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Aを得た。
【0112】
−原料液B−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)93質量%と、t−ブタノール(和光純薬工業社製)6.8質量%と、水0.2質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Bを得た。
【0113】
(硬化樹脂成形物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液A:原料液B=10:1の質量比の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、無色透明な液体を得た。
この液体をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、120℃で4時間焼成を行い(脱水縮合工程)、透明な耐熱性透明樹脂成形物を得た。
【実施例9】
【0114】
以下に、実施例3における溶媒を酢酸エチルに変更した場合の実施例を示す。
(原料液の調製)
−原料液A−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)20.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)77質量%と、酢酸エチル(和光純薬工業社製)2.4質量%と、水0.1%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Aを得た。
【0115】
−原料液B−
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(和光純薬工業社製)0.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)83.5質量%と、酢酸エチル(和光純薬工業社製)16質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Bを得た。
【0116】
(硬化樹脂成形物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液A:原料液B=1:1の質量比の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、無色透明な液体を得た。
この液体をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、120℃で4時間焼成を行い(脱水縮合工程)、透明な耐熱性透明樹脂成形物を得た。
【0117】
(比較例3)
以下に、実施例3における溶媒を、エタノールに変更した場合の比較例を示す。
(原料液の調製)
−原料液A−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)20.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)77質量%と、エタノール(和光純薬工業社製)2.4質量%と、水0.1%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Aを得た。
【0118】
−原料液B−
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(和光純薬工業社製)0.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)89.5質量%と、エタノール(和光純薬工業社製)10質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Bを得た。
【0119】
(硬化樹脂成形物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液A:原料液B=1:1の質量比の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、無色透明な液体を得た。
この液体をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、120℃で4時間焼成を行ったが(脱水縮合工程)、完全な耐熱性透明樹脂成形物は得られなかった。
【0120】
(比較例4)
以下に、実施例3における溶媒を、ジメチルホルムアミドに変更した場合の比較例を示す。
【0121】
(原料液の調製)
−原料液A−
テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学社製)20.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)77質量%と、ジメチルホルムアミド(関東化学社製)2.4質量%と、水0.1%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Aを得た。
【0122】
−原料液B−
テトライソプロポキシチタン(TIPT)(和光純薬工業社製)0.5質量%と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(重量平均分子量:20000、商品名:XF3905、GE東芝シリコーン社製)86質量%と、ジメチルホルムアミド(関東化学社製)13.5質量%とを混合し、これを室温で30分攪拌し原料液Bを得た。
【0123】
(硬化樹脂成形物の作製)
上記原料液Aおよび原料液Bを60日間室温で放置した後、上記原料液A:原料液B=1:1の質量比の割合で混合し、室温で30分間攪拌後(加水分解工程)、白濁した液体を得た。
この液体をフッ素樹脂製シャーレ(型)に流し込み、120℃で4時間焼成を行ったが(脱水縮合工程)、無色透明な耐熱性透明樹脂成形物は得られず、白濁した硬化物が得られた。
【0124】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【0125】
例えば、前記した実施例においては、耐熱性透明樹脂成形物を成形するための型として、フッ素樹脂製シャーレを示したが、これに限るわけではなく、金属を切削加工等して得られる金型であっても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属アルコキシドを含むA液と、
少なくとも前記金属アルコキシドとは異なる種類の金属アルコキシドを含むB液、の組合せよりなり、
前記A液および前記B液の少なくとも一方にオルガノポリシロキサンを含み、
前記A液および前記B液は、前記2種以上の金属アルコキシドおよび前記オルガノポリシロキサンを均一に分散し、溶解できる有機溶媒を含むことを特徴とする二液型熱硬化性樹脂組成物
【請求項2】
前記有機溶媒は、第2級アルコールまたは第3級アルコールである請求項1に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物
【請求項3】
前記第3級アルコールは、t−ブタノールである請求項2に記載の二液型熱硬化性樹脂組成物
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの請求項に記載のA液及びB液の組合せよりなる二液型熱硬化性樹脂組成物を用いた硬化樹脂成形物の製造方法において、
成形時にA液とB液とを混合させ、得られた混合液を所定の型内に入れ、型内で反応触媒を添加することなく縮合反応させることを特徴とする耐熱性透明樹脂成形物の製造方法