説明

二者択一のゲルストリップの配向のための等電点電気泳動トレイ及び電極の組立体

IPGストリップのゲル側がトレイにおいて上向き又は下向きであり、かつ電極が、電極の内方端がIPGストリップの上又はこれらの下に来るようにこの溝内で延びるインサートに取り付けられるように、電極組立体が置かれた状態で、電流を使用することを必要とする等電点電気泳動に関する工程を実行することができる。一方の部分(インサート又はトレイ)にあるスロットは、2つの部分を固定するように他方の部分の壁又は隔壁に嵌合する。トレイの溝の内部にある電極の高さを、トレイにあるインサートの高さによって、又は電極をインサートに弾性的に取り付けることによって調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動分離のための実験装置に関し、等電点電気泳動用に構成された特定の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年3月25日に出願された米国仮特許出願第61/163,289号及び2010年3月24日に出願された米国特許出願第12/730,600号の利益を主張する。両出願の内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0003】
当該技術ではよく知られているように、等電点電気泳動法は、タンパク質の等電点に応じてたんぱく質を直線的な配列へと分離するものであり、検出及び分析のため、さらに場合によってはサンプル内のタンパク質の定量化のために、サンプルにおいて実行される。等電点電気泳動は、典型的には、固定化pH勾配を含んだゲルストリップ(“IPGストリップ”)において実行され、タンパク質の全分離工程又は2次元分離における第一の次元のどちらかとして役立つことができる。二次元分離において、第二の次元分離は、第一の次元分離が行われた後に、IPGストリップを2次元(“スラブ”形状の)分離媒体の1つの縁部に沿って配置することと、電界を前記2次元媒体上でIPGストリップに対して横断する方向に印加することとによって実行される。これによりIPGストリップの各泳動域(focused zone)にあるタンパク質は配列状態へと移動しかつ拡がることになる。その結果、元のサンプル内のタンパク質は2つのパラメータに応じて分離するという利点がある。等電点電気泳動の説明及び等電点電気泳動を実行する装置のいくつかを、2003年12月2日発行の特許文献1、Panattoniの“等電点電気泳動ストリップの成形と使用のための組立体”、2003年5月6日発行の特許文献2、Williamsらの“電気泳動用装置”、1992年1月21日発行の特許文献3、Faupelらの“等電点電気泳動装置”及び2001年4月10日発行の特許文献4、Witkorowiczらの“電気泳動装置および方法”において確認することができる。
【0004】
IPGストリップは、サプライヤから生化学実験室のサプライヤへと市販されており、一般に分離工程での使用に先立ち、ユーザによって再水和されるよう脱水した形で供給される。一般的には、同じ数だけのサンプルを同時に分離するべく24枚ものIPGストリップを収容するトレイにおいて、再水和及び泳動の両方が実行される。処理工程においては、再水和が再水和平衡トレイで行われ、一旦再水和されると、ストリップが分離した泳動トレイに移送される。別の工程では、再水和及び泳動が同じトレイで行われる。同じトレイ、又は電極がストリップに接触する状態にある任意のトレイが使用された際には、再水和を電流の存在下で行うことができる(“活性再水和(active rehydration)”)。このことは、サンプルが再水和溶液と組み合わされて高分子量のタンパク質を含んでいる場合には、電流がIPGストリップへのタンパク質の浸入を高めるので、特に有効である。分離によっては、サンプルは、IPGストリップの1つの端部に位置する分離した容器を介して(即ち、“カップ装填(cup loading)”によって)装填される一方で、他のサンプルではストリップの全長にわたって適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6655649号明細書
【特許文献2】米国特許第6558522号明細書
【特許文献3】米国特許第5082548号明細書
【特許文献4】米国特許第6214191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サプライヤから提供される一般的なIPGストリップは、ゲル材料の薄く平坦なストリップであり、このストリップは、寸法安定性と取り扱いの容易性のために一方の側に裏当てを有すると共に他方の側に保護シートを有している。保護シートは再水和する前にユーザによって取り除かれて破棄される一方で、裏当ては再水和及び泳動の工程を通じて定位置にとどまる。このように、ストリップには“ゲル側”と裏当て側とがあり、分離すべきサンプルのニーズ若しくはユーザの嗜好、又はその両方に応じて、ゲルを水平位置にした状態で再水和段階の際にゲル側が上方又は下方を向いたり、泳動段階の際に上方又は下方を向いたりすることができる。しかしながら、泳動及び活性再水和の際は、電極はゲル側と接触した状態でなければならない。現在入手可能なトレイは、ゲルを一方の配向又は他方の配向のどちらかの状態で使用するように構成されており、即ち、ゲル側を上向きにして電極をゲルと接触させようとするトレイは、ゲル側を下向きにした状態で電極をゲルと接触させようとするトレイとは、構成及び構造において明確に異なっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、IPGストリップのゲル側を上向きにしてそれによりストリップの上に電極を配した状態、又は上記ゲル側を下向きにしてそれによりストリップの下に電極を配した状態のいずれかにおいて、このどちらかの配向の或る厚さの範囲のゲルを用いて、活性再水和処理若しくは等電点電気泳動、又はその両方を実行することができる装置に属する。この可変性は、トレイ及び電極を別個の部品として構成すること、即ち電極を取り外し可能なインサートに配すること、好ましくはこのような2つのインサートをトレイの各端部に1つずつ配置することによって達成される。各インサートの電極は、例えばタブ又はバーなどの、露出した延長部の内方端で終端し、延長部は、金属から、又はその上面及び下面の両方に金属ワイヤ若しくはストリップを有するプラスチックなどの支持材料から構成される。トレイは一連の平行な通路又は溝を含み、一連の平行な通路又は溝の各々がIPGストリップを受容するサイズになっている。インサートがトレイ内の適所にあるときに電極の露出した内方端が溝の内側に位置して溝のフロアと直接接するか又は近接して、電極の上又は下でゲルと接触するべく電極の材料が各電極端部の両側で露出するように、電極がインサートに取り付けられる。電極の露出した各内方端は、トレイの1つの溝内部に適合するのに充分狭く、好ましい構造として各インサートは電極タブ同士の間にスロットを備え、溝を分離する隔壁と係合する。各溝のフロアに対する各電極の露出した内方端の高さは、本発明の或る実施形態では、トレイ内にどれ程インサートを押し込むかについてのユーザ制御によって手動で調整される。他の実施形態では、各電極の露出した内方端の高さは、溝のフロアに対して露出した内方端を付勢する付勢したバネ又はさもなければ電極の弾性的な取り付け具によって自動的に設定される。したがって、弾性的に取り付けられた電極の場合では、対応する溝内での露出した各内方端の高さは、ゲルがインサートよりも先に溝に配置されたかインサートの後に配置されたかに依存し、インサートよりも先であるならばゲルの厚さに依存する。このように、再水和若しくは等電点電気泳動又はその両方がゲル側を下にして実行されるべきときに、インサートは、ゲルよりも先にトレイに置かれ、電極の内方端が空の状態の各溝のフロアに接触するほどに充分遠くに挿入される。この工程がゲル側を上にして実行されるべきときには、ゲルはインサートよりも先に溝内に配置され、インサートはゲルの上に配置されることになる。
【0008】
本発明の利点の中にあって、ユーザのできることは、IPGストリップのいずれかの配向において活性再水和と等電点電気泳動とのために単一の装置を使用することであり、かつサンプルを装填するにあたり、カップ装填によってするのか、又はIPGストリップ全体に対してサンプルを適用することによってするのかのどちらかを選ぶことにある。さらなる利点は、インサートが適所に下ろされる前ではトレイの溝に1又は複数のストリップを配することによって、インサートが適所に下げられた後では同じトレイの他の溝に1又は複数の他のストリップを配することによって、装置が両方の配向のIPGストリップを同時に収容できることにあり、さらに装置が単一のトレイに様々な厚みのIPGストリップを収容できることにある。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴、実施形態、並びに利点は、以下の記載から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明によるトレイとインサートとの組立体の一例の斜視図である。
【図1b】図1aの組立体の頂面図である。
【図1c】図1bの線C−Cに沿う図1a及び図1bの組立体の断面図である。
【図2】図1a、1b及び1cのインサートの断面図である。
【図3】図1a、1b及び1cのトレイの1つの端部の断面図である。
【図4】電極の下のゲルを収容するように配置された、組付けられた状態の図2及び図3のインサート及びトレイの断面図である。
【図5】電極の上のゲルを収容するように配置された、組付けられた状態の図2及び図3のインサート及びトレイの断面図である。
【図6】本発明によるトレイとインサートとの組立体の第2の例の斜視図である。
【図7】図6の組立体の1つのインサートの中央部の正面図である。
【図8】図6の組立体の、インサートとトレイの1つの端部との縦方向断面図である。
【図9】電極を上げた状態の、図8と同様の縦方向断面図である。
【図10】図6の組立体の、インサートとトレイの1つの端部との両方の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を定義する特徴は様々な構造体において実現可能であるが、総じて本発明は特定実施形態を詳細に検討することで最善の形で理解されるであろう。このような2つの実施形態を図面に示す。
【0012】
第1の実施形態が、図1aの斜視図、図1bの頂面図及び図1cの縦断面図に示される。図1cの断面は図1bの線C−Cに沿ったものである。これらの図にあるトレイ11は、1つの端部にインサート12を、反対側の端部に第2のインサート13を伴って示されている。トレイ11は12個の溝14を含んでおり、それらは細長く互いに平行であり、かつそれぞれが1つのIPGストリップを収容する程の大きさを持っている。各インサートはトレイの全幅にわたって延び、全溝に及んでいる。各インサート12、13は、12個の溝のそれぞれに対し1つを割り当てた、外部との電気接続のための1組のプラグ15、16と、12個の溝のそれぞれに対し1つを割り当てた、ゲルと接触するための1組の電極とを備える。電極の平坦な内方端17、18は、金属のタブ又はプラスチックタブであり、金属ワイヤ又は金属ストリップがその両面に固定され、ゲルストリップのための接触電極として作用する。
【0013】
インサートのうちの1つの拡大図を図2に、インサートが挿入されるトレイ端部の拡大図を図3に、インサート及びトレイを一緒にしたものの拡大図を図4及び図5にそれぞれ示す。これらの図は、図1cにおいて点線の円2で示した部分に相当しており、全て図1cの平面と同じ平面に沿った断面図である。
【0014】
図2のインサート12の断面において、電極21はプラグ16内部の外方端22からその内方端23へと延び、本例では、露出した上面及び下面を持った狭い平坦金属タブである。インサートの単一の横方向(即ち、溝及び電極21の縦方向に対して横断する方向)スロット24は、トレイの横方向端壁(図3に示し、以下に説明する)に嵌合する。隣接し合う電極は障壁によって区切られており、それら障壁25のうちの1つは図2において見ることができる。各障壁は、トレイを各溝に分離するトレイの隔壁に嵌合する縦方向スロット(図2では見ることができない)を備えている。
【0015】
トレイ11の断面を図3に示す。本図はトレイの単一の溝14の内部を示しており、溝はその端部において横方向の端壁31で終端し、その端壁はインサートの横方向スロット24内に受容される。溝は底部ではフロア32によって閉じられ、互いに隣接する溝は(前段落で引用された)隔壁33によって区切られ、図には1つの隔壁が示されている。補強構造34は隔壁33の内面上に成形される。
【0016】
図4及び図5は、IPGストリップ41と共に組み立てられた状態にあるトレイ及びインサートを示している。図4では、インサートが所定の位置に配置される前に、IPGストリップ41が溝14のフロア上に置かれている。したがって、電極の内方端23はIPGストリップの上に横たわってストリップの上側と接触し、IPGストリップ41がゲル側を上にして配置され電極と接触する。図5では、インサートはIPGストリップ41よりも先にトレイ内に配置され、IPGストリップはゲル側を下にして電極上に配置されている。したがって、電極の内方端23はIPGストリップの下方に横たわり、IPGストリップのゲル側は再び、電極と接触する。インサートは、図4の位置よりも図5の位置においてトレイ内で若干低めに位置する。このようにしてトレイとインサートとの組み合わせは、任意の厚さのゲルを収容することができ、かつ電極がゲルの頂部又はゲルの底部に接触した状態で使用することができる。
【0017】
第2の実施形態が後続の図面に示されている。図6は、トレイ51と、視認性のためトレイの上方に位置させた2つのインサート52、53との斜視図である。図1の実施形態のトレイ11と同様に、図6の実施形態のトレイ51は、隔壁55によって隔離された12個の溝54を有し、各インサートは12本の電極を有し、図では右側のインサートの電極だけを見ることができる。本実施形態のインサートを図1〜図5に示す実施形態のインサートと区別する特徴は、電極56の内方端の構造にある。図6の実施形態において、それぞれの個々の電極はその内方端において輪状であり、直角下向き台板及びクロスバー57で終端する。ゲルストリップは、その輪状体の2つの縦方向サイドアーム同士の間に適合する。クロスバー57は、ゲルの幅に及び、ゲルの上方又は下方のいずれかにおいてゲルとの電気的な接点として働く。輪状体とクロスバーとが図7及び図8にさらに示され、以下に説明される。
【0018】
本実施形態のインサートを図1〜図5に示す実施形態のインサートと区別する別の特徴は、インサートに位置決め柱と、トレイに位置決め柱を受容させる補完穴とを含むことにある。この斜視図では、各インサートの1つの端部に設けられた柱61、62だけが完全に見える一方で、さらなる柱では、そのうちの1つの柱63が部分的に見え、インサートの反対側の端部に同様に配置されている。トレイの4つの穴64、65、66、67の全てを見ることができ、1つの穴は4本の柱のそれぞれと直接整列している。トレイ内でのインサートの適切な配置を確実にするため、各インサートに設けられる柱のうち、一方は正方形の断面(角は丸みを帯びている)を有すると共に他方は円形の断面を有し、対応する穴は、適切な柱だけが挿入可能となるように相補的な断面を有している。
【0019】
本実施形態のインサートを図1〜図5に示す実施形態のインサートと区別する第3の特徴は、インサートをトレイ上の定位置に固定するラッチシステムにある。これらのラッチのうちの2つの部分71、72を図に見ることができる。単一のラッチ全体の拡大断面を図10に示し、以下に説明する。
【0020】
図7は、電極の内方端に対面する視野において、1つのインサート52の中央部を示している。インサートの本体73は、成形されたプラスチック又は他の非導電性かつ化学的に不活性である材料から構成され、電極を分離する障壁74を備えている。障壁のスロット75は、トレイの溝同士の間にある隔壁55(図6)に適合する。電極76は、インサート本体の開口77を通過する平坦な金属ストリップである。各電極は、縦方向サイドアーム78、79によって形成される延長輪状体で終端し、縦方向サイドアーム78、79は、これらの内方端においてクロスバー57によって結合している。
【0021】
インサートを適所に配したトレイの1つの端部の縦断面を図8及び図9に示す。図8を参照するにあたって、この断面はトレイ51の単一の溝54を介して縦方向に切断されており、ここでは溝のフロア81と溝同士を分割する隔壁55との双方を見ることができる。インサートの本体73によって支持されている単一の電極82を見ることができる。電極の内方端は、平行なサイドアームから形成される輪状体をなし、図ではサイドアーム78の一方がクロスバー57で終端した状態で見ることができる。電極の外方端は、中空キャビティ85の内部へと延びる露出先端84となっており、キャビティにおいて、露出先端が外部電気導線と接触するべく接近できるようになっている。上述したように、個々の電極先端を、電圧を個々に制御できるように個別のプラグとして形成することができる。あるいは、図8に示すように、1つのインサートの電極先端を共通の導電性ストリップ86に接合することも可能である。共通ストリップ86を次いで外部導線に接続することができる。
【0022】
本実施形態における電極82は、電極の内方端にあるクロスバー57を溝のフロア81に向かって付勢するように、インサートの本体に弾性的に取り付けられる。これは、インサート本体のコイルバネ87及び支点88によって達成される。コイルバネ87は電極の内方端を下方に付勢し、電極をクロスバー57の下にあるゲルストリップによりバネに抗して上方に押圧することができる。図8では、電極は、電極上に配置されたゲルストリップに適した最も低い位置にあり、クロスバー57は溝のフロア81にある凹部89内に位置する。図9では、電極は、インサートがトレイ内部に下ろされる前に溝内に配置されることになるゲルストリップ(図示せず)のための隙間を残すために、支点88中心に枢動されて、クロスバー57をフロア81の上に上昇させる。ゲルストリップ自体はクロスバー57を上向きに押すので、クロスバーの高さはゲルストリップの厚さによって決まり、それに応じて順応することになる。
【0023】
本実施形態のラッチシステムは4個のラッチを含み、ラッチの各々が各インサートの各端部をトレイの四隅のうちの1つに固定する。ラッチのうちの1つを図10に示す。ラッチは2つの部分、即ちインサート53の端部近傍の上部72(図6でも見ることができる)と、ラッチを含むトレイ51の部分の断面である下部92とからなる。上部72は下向きに延びるアーム93を備える。このアームの下方端には肩部95を形成する側方突起94がある一方で、下部92は溝を分離する隔壁55に平行な上向きに延びる壁96である。上向きに延びる壁96は側方突起97を有し、この側方突起は上部の肩部94と係合する逆肩部98を形成する。2つの突起は、これらの部分同士を共に摺動させてスナップ嵌合させるように、肩部の反対に傾斜面101、102を有する。ラッチを解除するのは、上部の下向きに延びるアーム93に対して矢印103の方向に指によって圧力をかけて、肩部の係合を解除することで達成される。
【0024】
これら2つの構造、即ち図1〜図5の構造及び図1〜図10の構造と、本発明の範囲に含まれる他の構造とのいずれかを使用することで、二つ以上のサンプルに対して等電点電気泳動を同時又は個別に実行することができ、それぞれ異なる組の電極に対して異なった電位を使用することにより、任意の単一のIPGストリップを横切って印加される電位を、その他全てのIPGストリップから別個に選択することができる。ストリップが溝の内側に置かれる以前又は以後のいずれかにおいて、サンプルをストリップに適用することができる。
【0025】
図に示された構造、形状及び配置の代替手段であって、未だに本発明の概念の範囲内にある代替手段には、ゲルに接する電極端部の形状及び構成、トレイにインサートを配置する際に案内するスロット及び隔壁又は端壁以外の構造的特徴を持ったものの使用、トレイ内の溝の数、トレイ内の溝よりも少ない数又は多い数の電極を持ったインサートの使用、様々なラッチ又はロック機構及び解除機構が含まれ、またさらなる変形例も当業者であるなら容易に分かるであろう。
【0026】
「を備える」および「を含む」という語句ならびにこれらの活用形は、それらがステップや要素の列挙に続く場合、さらなるステップや要素の付加が請求の範囲から除外されないことを意味するよう意図されている。本願明細書中に引用された全ての特許、特許出願、その他公開された参考資料は、ここではこれらの全体を参照することにより本願明細書に組み込まれる。ここで引用された任意の参考資料や一般的に任意の先行技術と、本願明細書の明確な教示との間の如何なる矛盾は、本願明細書における教示を優先して解決されるように意図されている。これは、単語又はフレーズに対して当業者が理解する定義と、単語やフレーズに対し本願明細書で明確に提供される定義との間におけるあらゆる矛盾も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲルストリップにおいて等電点電気泳動をするための装置であって、
前記装置は、
複数の溝を備えたトレイであって、
各溝が、フロアを有しかつ1つのゲルストリップを前記フロアに載せた状態で受容するようなサイズである、
トレイと
複数の電極が取り付けられたフレームを具備するインサートであって、
各電極が上面及び下面を持つ内方電極端で終端し、
上面及び下面の双方が露出した電極材料を具備し、
前記内方電極端が1つの溝に付き1つの内方電極端を備えた前記溝内部に適合するようなサイズを有して隔てられる、
インサートと
を有し、
前記電極の各々の前記内方電極端の高さが、前記内方電極端が前記フロアと直接接触するゼロ高さと、前記内方電極端と前記フロアとがゲルストリップを受容するのに充分な間隙を以て隔離されるような有限高さとの間で可変である、
装置。
【請求項2】
前記電極は、前記内方電極端の全てを前記フロアの上の均一な高さに制限するように、前記インサートに取り付けられた、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極は、前記内方電極端のそれぞれの高さを、他の全ての内方電極端から独立して制御できるように、前記インサートに取り付けられる、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電極は、前記内方電極端を前記フロアに向かって弾性的に付勢するように、前記インサートに取り付けられた、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電極の各々は、前記フレームに枢動可能に取り付けられ、
前記フレームは、前記内方電極端の各々を前記トレイのフロアに向かって弾性的に付勢するバネ手段を具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記溝の各々は端壁で終端し、
前記インサートを前記トレイに結合する前記手段は、前記端壁を受容するようなサイズのスロットである、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記スロット及び前記端壁は、前記内方電極端を、前記溝の前記フロアに平行に維持するように構成される、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記溝は隔壁によって分割され、
前記インサートはさらに前記フレーム内で前記隔壁を受容するスロットを具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
さらに、前記インサートを前記トレイに結合するラッチ連結部を具備し、
前記ラッチ連結部は指の圧力によって解放可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電極の各々は、それぞれの前記電極のための別個の電気プラグを伴い、前記内方電極端の反対側の前記電極の端部にある電気プラグで終端する、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極の全ては、前記内方電極端の反対側に外方端を有し、
前記外方端は、前記フレームに取り付けられた共通の電気導線と電気的に接触している、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
1対の前記インサートを具備し、
さらに前記インサートのうちの1つを、前記溝の対向する端部にある前記トレイの2つの端部のそれぞれに結合する手段を具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記1対のインサートの一方では、各電極は、各電極に対して別個の電気プラグを伴い、前記内方電極端の反対側の前記電極の端部にある電気プラグで終端し、
前記1対のインサートの他方では、前記電極の全てが前記内方電極端の反対側の外方端を有し、
前記外方端は、前記フレームに取り付けられた共通の電気導線と電気的に接触している、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ゲルストリップに対して同時に、又は単一のゲルストリップホルダ内で独立して個々の等電点電気泳動をするにあたって、複数のサンプルに等電点電気泳動を実行する方法であって、
前記方法が、
(a)前記ゲルストリップを、複数の溝を持つトレイの溝に配置するステップであって、
各溝は、フロアを有し、かつ1つのゲルストリップを前記フロアに載せた状態で受容するようなサイズである、
ステップと、
(b)ステップ(a)以前に又は以後において、1つのゲルストリップに付き1つのサンプルの割合で、前記サンプルを前記ゲルストリップに適用するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)の以前若しくは以後において、又はステップ(a)とステップ(b)との間において、前記トレイにインサートを配置するステップであって、
前記インサートは複数の電極が取り付けられたフレームを具備し、
各電極は上面及び下面を持つ内方電極端で終端し、
上面及び下面の双方が露出した電極材料を具備し、
前記内方電極端は、1つの溝に付き1つの内方電極端を備えた前記溝内部に適合するようなサイズを有して隔てられ、ステップ(a)、(b)及び(c)により、前記ゲルストリップの各々が単一の内方電極端と直接接触することになる、
ステップと、
(d)前記ストリップと前記内方電極端との間の前記接触により、各前記ストリップを通して電位を印加して、等電点電気泳動によって前記ゲルストリップに沿って前記サンプル内の溶質を分離するステップと、
を含む、
方法。
【請求項15】
ステップ(c)がステップ(a)の前に実施され、
ステップ(a)が前記ゲルストリップを前記内方電極端の上に配置することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)がステップ(c)の後に実施され、
ステップ(c)が前記内方電極端を前記ゲルストリップの上に配置することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電極は、前記内方電極端の全てを前記フロアの上の均一な高さに制限するように、前記トレイに取り付けられた、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記電極は、前記内方電極端が挿入された前記溝の前記フロアの上の各内方電極端の高さが個々に変化できるように、前記トレイに取り付けられた、
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記電極は、前記内方電極端を前記フロアに向かって弾性的に付勢して取り付けることによって、前記フレームに取り付けられた、
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記電極は前記フレームに枢動可能に取り付けられ、
前記フレームは、前記内方電極端の各々を前記トレイのフロアに向かって弾性的に付勢するバネ手段を具備する、
請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(c)は、前記溝の対向する端部にある前記トレイの2つの端部の各々に対して1個のインサートを割り当てて前記トレイに2つの前記インサートを配置して、それにより各前記ゲルストリップの各端部を前記1つのインサート上の内方電極端と直接接触するように配置することを含み、
ステップ(d)は、各ゲルストリップの対向する端部にある内方電極端同士の間に電位を印加することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記インサートが第1のインサート及び第2のインサートとして定義され、
前記第1のインサートの各電極は、前記第1のインサートの各電極に対して別個の電気プラグを伴って、前記内方電極端の反対側の前記電極の端部にある電気プラグで終端し、
前記第2のインサートの全電極は前記内方電極端の反対側の外方端を有し、
前記外方端は前記フレームに取り付けられた共通の電気導線と電気的に接触し、
ステップ(d)は、前記第1の電極の内方電極端と前記共通の電気導線との間に電位を印加することを含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溝の各々は端壁で終端し、
ステップ(a)は前記端壁を前記インサートのスロット内に挿入することを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記スロット及び前記端壁は、前記内方電極端を、前記溝の前記フロアに平行に維持するように構成された、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溝は隔壁によって分割され、
ステップ(c)は、前記隔壁を前記インサートのスロットに挿入することを含む、
請求項14に記載の方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−522220(P2012−522220A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502225(P2012−502225)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028595
【国際公開番号】WO2010/111452
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)