説明

二色性色素組成物、偏光膜、液晶セル、及び表示装置

【課題】高い二色比を示し、配向性が良好な二色性色素組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する二色性色素組成物である。式中、Ar1〜Ar4はそれぞれ置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及びシクロヘキサン環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L1とL2が共にアゾ基になることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光膜等の種々の用途の膜の形成に有用な二色性色素組成物、及びそれを利用して形成した偏光膜に関する。また、本発明は、該偏光膜を有する液晶セル及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機系の二色性色素を利用して形成される偏光素子が検討されている。
その一例として、ヨウ素を含む偏光素子と同様に、二色性を有する有機色素(二色性色素)をポリビニルアルコールのような高分子材料に溶解又は吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して二色性色素を配向させて作製される偏光子が提案されている。しかしながら、この方法により作製すると、延伸処理等のプロセスに手間がかかる等の問題がある。
そこで、最近では他の方法が着目されるようになってきた。この方法として、非特許文献1では、ガラスや透明フィルムなどの基板上に有機色素分子の分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させ、偏光膜(異方性色素膜)を形成する方法がある。しかしながら、該文献に記載の方法では、耐熱性の問題がある。
【0003】
また、ガラスや透明フィルムなどの基板上に有機色素分子の分子間相互作用などを利用して二色性色素を配向させる湿式成膜法により、偏光子を作製することも提案されている。湿式成膜法におけるプロセスとしては、色素を基板上に堆積、配向させる方法やその配向を制御する方法などが挙げられる。特許文献1〜3には、上記プロセスに適した材料が提案されている。また、前記プロセスに適した材料として、特許文献4では、(クロモゲン)(SO3M)nで表される色素が提案されている。
【0004】
一方、液晶セル内に配置されるカラーフィルタ層に入射した直線偏光が偏光解消されることによって生じる散乱光を軽減するため、液晶セル内に偏光層を配置することが提案されている(例えば、特許文献5及び6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dreyer,J.F.,Journal de Physique,1969,4,114.,"Light Polarization From Films of Lyotropic Nematic Liquid Crystals"
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−180052号公報
【特許文献2】特表2002−528758号公報
【特許文献3】特開2002−338838号公報
【特許文献4】特表平8−511109号公報
【特許文献5】特開平10−161105号公報
【特許文献6】特開2008−90317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、種々の表示機器等には、薄型化の要求があり、それに利用される偏光膜にも、高い偏光度を薄い膜厚で達成することが要求される。特に、セル内に配置された偏光層には、この特性が強く要求される。そのためには、高い二色比を示し、配向性が良好な二色性色素組成物が有効である。
本発明は、高い二色比を示し、配向性が良好な二色性色素組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、高い偏光度を薄い膜厚で達成可能な偏光膜の作製に有用な、二色性色素組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶セル内に配置される偏光膜の形成に有用な二色性色素組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、高い偏光度を薄い膜厚で達成可能な偏光膜、該偏光膜を有する液晶セル及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]下記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する二色性色素組成物:
【0009】
【化1】

式中、Ar1〜Ar4はそれぞれ置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及びシクロヘキサン環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L1とL2が共にアゾ基になることはない。
【0010】
[2]液晶性の非着色材料を含有しない[1]の二色性色素組成物。
[3]前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(II)で表される化合物である[1]又は[2]の二色性色素組成物:
【化2】

式中、L11及びL12はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L11とL12が共にアゾ基になることはなく;R11〜R15はそれぞれ、水素原子もしくは置換基を表し、R11とR13は互いに環を形成していてもよく;A1は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0011】
[4]一般式(II)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも2種以上含有し、該2種以上の二色性色素のうち少なくとも1種が、式(II)中、L11がアゾ基である化合物である[3]の二色性色素組成物。
[5]前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(III)で表される化合物である[1]〜[4]のいずれかの二色性色素組成物:
【化3】

式中、L21はエステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;L22はアゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;R21〜R25はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、R21とR23は互いに環を形成していてもよく;A2は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0012】
[6]前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(IV)で表される化合物である[1]〜[5]のいずれかの二色性色素組成物:
【化4】

式中、L31はイミノ基、又はビニレン基を表し;R31〜R35はそれぞれ水素原子もしくは置換基を表し、R31とR33は互いに環を形成していてもよく;A3は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0013】
[7]R11、R12、R21、R22、R31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R13、R23及びR33がそれぞれ、水素原子であり;R14、R24、R34、R15、R25及びR35がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A1、A2及びA3が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である[4]〜[6]のいずれかの二色性色素組成物。
[8]マゼンタ色素及び/又はイエロー色素として、前記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する[1]〜[7]のいずれかの二色性色素組成物。
[9]イエロー色素として、一般式(III)で表される化合物の少なくとも1種を含有する[8]の二色性色素組成物。
[10]マゼンタ色素として、一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を含有する[8]又は[9]の二色性色素組成物。
[11]シアン色素として、液晶性を有する二色性アゾ色素の少なくとも1種をさらに含有する[1]〜[10]のいずれかの二色性色素組成物。
[12][1]〜[11]のいずれかの二色性色素組成物からなる偏光膜。
[13]塗布によって形成される[12]の偏光膜。
[14]光源としてC光源を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.28<x<0.36、0.28<y<0.36を満足する[13]の偏光膜。
[15]一対の基板と、その間に配置された、液晶層、カラーフィルタ層、及び[12]〜[14]のいずれかの偏光膜を有する液晶セル。
[16]前記偏光膜を、前記カラーフィルタ層と前記液晶層との間に有する[15]の液晶セル。
[17][12]〜[14]のいずれかの偏光膜を有する表示装置。
[18][15]又は[16]の液晶セルを有する液晶表示装置。
【0014】
[19]下記一般式(III)で表される、液晶性を有する二色性色素:
【化5】

式中、L21はエステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;L22はアゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;R11〜R15はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、R11とR13は互いに環を形成していてもよく;A2は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0015】
[20]R21及びR22がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R23がそれぞれ、水素原子であり;R24及びR25がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A2が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である[19]の二色性色素。
【0016】
[21]下記一般式(IV)で表される、液晶性を有する二色性色素:
【化6】

式中、L31はイミノ基、又はビニレン基を表し;R31〜R35はそれぞれ水素原子もしくは置換基を表し、R31とR33は互いに環を形成していてもよく;A3は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0017】
[22]R31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R33が、水素原子であり;R34及びR35がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A3が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である[21]の二色性色素。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二色性色素組成物は、高い二色比を示し、配向性が良好である。よって、本発明の二色性色素組成物によれば、高い偏光度を薄い膜厚で達成可能な偏光膜を提供することができる。また、本発明によれば、液晶セル内に配置される偏光膜の形成に有用な二色性色素組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、高い偏光度を薄い膜厚で達成可能な偏光膜、該偏光膜を有する液晶セル及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
1.二色性色素組成物
1.−1 二色性色素
本発明は、下記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する二色性色素組成物に関する。
【0020】
【化7】

【0021】
式中、Ar1〜Ar4はそれぞれ置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及びシクロヘキサン環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L1とL2が共にアゾ基になることはない。
【0022】
上記一般式中、Ar1は、置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく;置換基を有していてもよい、フェニル基又はナフチル基であるのがより好ましく;置換基を有していてもよい、フェニル基であるのがさらに好ましい。
Ar1が有する置換基の例には、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)が好ましく;置換もしくは無置換のアミノ基がより好ましい。特に、Ar1は、アゾ基に対してパラ位に置換もしくは無置換のアミノ基を有するフェニル基であるのが好ましく、パラ位以外は、無置換であるのが好ましい。
【0023】
上記一般式中、Ar2は置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましく;置換基を有していてもよい、フェニレン基又はナフチレン基がより好ましく;置換基を有していてもよい、フェニレン基がさらに好ましい。
Ar2が有する置換基の例には、置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。ヘテロ原子を含むアルコキシ基としては、例えば、−(OCH2CH2nOXで表されるオリゴエチレンオキシ基であり、nは1〜10の整数を表し、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3であり、Xは水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、及びヒドロキシ基が好ましく;中でも、アルキル基、及び複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基がより好ましい。特に、Ar2は、無置換のフェニレン基であるか、又はアルキル基を有するフェニレン基であるのが好ましい。
【0024】
上記一般式中、Ar3は置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基が好ましく;置換基を有していてもよい、フェニレン基、又はナフチレン基がより好ましく;置換基を有していてもよい、フェニレン基であるのがさらに好ましい。Ar2が有する置換基の例は、Ar2が有する置換基の例と同様であり好ましい範囲も同様である。
【0025】
上記一般式中、Ar4は置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基が好ましく;置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、又はピリジル基がより好ましく;置換基を有していてもよい、フェニル基、又はピリジル基がさらに好ましい。
Ar4が有する置換基の例には、置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。ヘテロ原子を含むアルコキシ基としては、例えば、−(OCH2CH2nOXで表されるオリゴエチレンオキシ基であり、nは1〜10の整数を表し、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3であり、Xは水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を表す)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が好ましく;アルキル基、アリール基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換アミノ基がより好ましく;アルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基、シアノ基、置換アミノ基がさらに好ましい。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
特に、Ar4は、無置換のピリジル基であるか、又はL2に対してパラ位に、アルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基、シアノ基、置換アミノ基を有するフェニル基であるのが好ましい。
【0026】
なお、上記一般式で表される化合物は置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基としては。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は末端に位置するのが好ましく、即ち、Ar1及び/又はAr4の置換基として、存在するのが好ましい。
【0027】
上記一般式中、L1及びL2はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、エステル基(−C(=O)O−もしくは−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、ビニレン基(−CH=CH−)を表す。L1は、−N=N−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=N−が好ましく;−N=N−、−C(=O)O−、又は−CH=N−がより好ましい。L2は、−N=N−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−CH=N−、又は−CH=CH−が好ましく;−N=N−、−C(=O)O−、又は−CH=N−がより好ましい。但し、L1とL2が共にアゾ基になることはない。
1とL2の組み合わせの好ましい例としては、(L1/L2)=(−N=N−/−C(=O)O−)、(−N=N−/−CH=N−)、(−N=N−/−CH=CH−)、(−C(=O)O−/−N=N−)、(−C(=O)O−/−CH=CH−)、及び(−CH=N−/−N=N−)であり;(L1/L2)=(−N=N−/−CH=N−)、及び(−C(=O)O−/−N=N−)がより好ましい。
【0028】
前記一般式(I)で表される化合物の例には、下記一般式(II)で表される化合物が含まれる。
【0029】
【化8】

【0030】
式中、L11及びL12はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L11とL12が共にアゾ基になることはなく;R11〜R15はそれぞれ、水素原子もしくは置換基を表し、R11とR13は互いに環を形成していてもよく;A1は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0031】
一般式(II)中、R11及びR12は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)が好ましい。
13は、上記一般式(I)のAr2の好ましい置換基と同様であり、R11と互いに環を形成していてもよく、窒素原子を含んだ5員環及び6員環が好ましい。
14及びR15はそれぞれ、上記一般式(I)のAr2及びAr3の好ましい置換基と同様である。
【0032】
一般式(II)中、L11及びL12の好ましい例、並びにその組合わせの好ましい例については、上記一般式(I)中のL1及びL2の好ましい例、並びにその組合わせの好ましい例と同様である。
【0033】
また、前記一般式(I)で表される化合物の例には、下記一般式(III)及び(IV)で表される化合物が含まれる。下記一般式(III)で表される化合物は、イエロー色素として、また、下記一般式(IV)で表される化合物は、マゼンタ色素として、それぞれ利用されるであろう。
【0034】
【化9】

【0035】
式中、L21はエステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;L22はアゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;R21〜R25はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、R21とR23は互いに環を形成していてもよく;A2は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0036】
一般式(III)中、A2は置換もしくは無置換の炭素原子、もしくは窒素原子を表し、A2が炭素原子を表すときの置換基としては、一般式(I)中のAr4の好ましい置換基と同様である。
一般式(III)中、L21及びL22の好ましい例、並びにその組合わせの好ましい例については、上記一般式(I)中のL1及びL2の好ましい例、並びにその組合わせの好ましい例と同様である。
式(III)の化合物では、L21はアゾ基にはなり得ない。L21をアゾ基以外とすることで、色素の吸収極大波長を短波長化することができる。L22がアゾ基であっても、その効果は同様である。
【0037】
【化10】

【0038】
式中、L31はイミノ基、又はビニレン基を表し;R31〜R35はそれぞれ水素原子もしくは置換基を表し、R31とR33は互いに環を形成していてもよく;A3は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0039】
一般式(IV)中、R31〜R35の好ましい範囲は、それぞれ一般式(II)中のR11〜R15と同様である。R34が下記の位置に存在し、C15のアルキル基であると、溶解性が向上するので好ましい。
【化11】

また、一般式(IV)中、L31はイミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、又はビニレン基(−CH=CH−)を表し、ビニレン基(−CH=N−)が好ましい。L31がイミノ基又はビニレン基であることにより、二色比がより高くなる。具体的には、例えば、L31がエステル基である化合物と比較して、二色比がより高くなる。
一般式(IV)中、A3は置換もしくは無置換の炭素原子、もしくは窒素原子を表し、A3が炭素原子を表すときの置換基としては、一般式(I)中のAr4の好ましい置換基と同様である。
【0040】
前記一般式(II)〜(IV)中、R11、R12、R21、R22、R31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R13、R23及びR33がそれぞれ、水素原子であり;R14、R24、R34、R15、R25及びR35がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A1、A2及びA3が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子であるのが好ましい。
11、R12、R21、R22、R31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基の置換基の例には、重合性基が含まれ、例えば、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
また、A1、A2及びA3が置換アミノ基で置換された炭素原子である場合、アミノ基の置換基の例には、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基が含まれ、アルキル基の置換基の例には、重合性基が含まれ、例えば、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
【0041】
以下に、本発明に利用可能な前記一般式(I)で表される二色性色素の例を示したが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
前記一般式(I)〜(IV)で表される化合物の製造方法については特に制限はない。例えば、Journal of Materials Chemistry(1999),9(11),2755−2763等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
式(IV)の化合物であって、L31がイミノ基である化合物の製造方法の一例は、以下の通りである。
【0046】
【化15】

【0047】
また、前記式(IV)の化合物であって、式中のL31がエステル基である化合物の製造方法の一例は以下の通りである。
【0048】
【化16】

【0049】
上記2反応式中、Rは置換基を表す。
原料として、R31〜R35が水素原子又は種々の置換基である化合物を利用することで、式(IV)で表される種々の化合物を製造することができる。
さらに、下記の式(III)の化合物の製造例を参照することで、A3が窒素原子である化合物も同様に製造することができる。
【0050】
また、前記式(III)の化合物の製造方法であって、A2が窒素原子である化合物の製造方法の一例は、以下の通りである。
【0051】
【化17】

【0052】
原料として、R21〜R25が水素原子又は種々の置換基である化合物を利用することで、式(III)で表される種々の化合物を製造することができる。
また、上記製造方法では、L21がエステル基である化合物を製造しているが、原料として用いた4−アミノ安息香酸及びクレゾールをそれぞれ、4−アミノベンゾアルデヒド及びトルイジンにそれぞれ代えることで、L21がイミノ基である化合物も同様に製造することができる。
さらに、上記式(IV)の化合物の製造例を参照することで、A2が置換もしくは無置換の炭素原子である化合物も同様に製造することができる。
【0053】
本発明に用いる前記一般式(I)で表される二色性色素は、液晶性を示す。ネマチック液晶相を示すのが好ましく、好ましくは温度10〜300℃、より好ましくは温度100〜250℃でネマチック液晶相を示す化合物である。
【0054】
本発明の組成物において、前記一般式(I)で表される1種以上の二色性色素の含有量については特に制限はない。用途に応じて、好ましい範囲が決定されるであろう。偏光膜等、高い吸収異方性が必要となる膜の形成に利用される態様では、前記一般式(I)で表される1種以上の二色性色素は、当該組成物中に含まれる全色素の総質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることが特に好ましい。また、溶剤を除く全固形分における前記一般式(I)で表される1種以上の二色性色素の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
また、上記組成物を溶液として調製する態様では、全固形分の濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0055】
1.−2 添加剤
本発明の二色性色素組成物は、前記一般式(I)で表される二色性色素の1種以上とともに、1種以上の添加剤を含有していてもよい。但し、色素等の着色材料以外の材料として、液晶性化合物(低分子液晶性化合物及び高分子液晶性化合物)を含有しないのが好ましい。本発明の二色性色素組成物は、ホストとして液晶材料を含み、且つゲストとして二色性色素を含み、二色性色素を液晶材料の配向に付随して配向させる態様として使用されるのではなく、二色性色素を、その液晶性によって配向させる態様として使用されるのが好ましい。GHタイプと比較して、より高い二色比を達成できる点で好ましい。
【0056】
以下、本発明の二色性色素組成物に使用可能な、種々の添加剤について説明する。
ラジカル重合性基を有する非液晶性多官能モノマー;
本発明の組成物は、ラジカル重合性基を有する非液晶性の多官能モノマーを含有することが好ましい。
本発明における、ラジカル重合性基を有する非液晶性の多官能モノマーとは、成長活性種がラジカル的に重合反応する多官能モノマーをいう。この多官能モノマーは分子内に2個以上の二重結合を有する多官能モノマーであることが好ましく、エチレン性(脂肪族性)不飽和二重結合であることが特に好ましく、具体的には、アルケン、ジエン、アクリレート、メタクリレート、不飽和多価カルボン酸のジエステル、α、β−不飽和カルボン酸のアミド、不飽和ニトリル、スチレン及びその誘導体、ビニルエステル、ビニルエーテル等の官能基を有する多官能モノマーを挙げることができる。分子内の二重結合の数は、2〜20であることが好ましく、2〜15であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。多官能モノマーは、分子内に2個以上のヒドロキシルを有するポリオールと、不飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。不飽和脂肪酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸が含まれ、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。分子内に4個以上のヒドロキシルを有するポリオールは、四価以上のアルコールであるか、あるいは三価以上のアルコールのオリゴマーであることが好ましい。オリゴマーは、エーテル結合、エステル結合又はウレタン結合により多価アルコールを連結した分子構造を有する。多価アルコールをエーテル結合で連結した分子構造を有するオリゴマーが好ましい。
上記の多官能モノマーは、有機溶媒に可溶であるものが特に好ましい。
そのようなモノマーとしては、沸点が常圧で100度以上の化合物を挙げることができる。
【0057】
上記の多官能モノマーのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートなどが挙げられ、その市販品としては、例えばアロニックスM−210、同M−240、同M−6200(東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD HDDA、同HX−220、同R−604(日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(大阪有機化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0058】
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、その市販品としては、例えばアロニックスM−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060(いずれも商品名、東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120(いずれも商品名、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(いずれも商品名、大阪有機化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0059】
さらなるモノマー及びオリゴマーの例として、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレート;ポリエーテル系ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル系ポリオールのポリ(メタ)アクリレート及びポリウレタン系ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0060】
ポリオールとアクリル酸とのエステルからなるモノマーは、三菱レーヨン(株)(商品名:ダイヤビームUK−4154)や日本化薬(株)(商品名:KYARAD・DPHA、SR355)から市販されている。
【0061】
これらの2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートは、単独であるいは組み合わせて用いられ、単官能(メタ)アクリレートと組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、その市販品としては、例えばアロニックスM−101、同M−111、同M−114(東亜合成化学工業(株)製)、KAYARAD TC−110S、同TC−120S(日本化薬(株)製)、ビスコート158、同2311(大阪有機化学工業(株)製)が挙げられる。
【0063】
後述するように、偏光子を作成する際には、ネマチック液晶性色素の配向状態を固定するのが好ましく、固定する手段としては、重合反応を利用して色素の配向を固定する。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。
【0064】
本発明の組成物中、溶剤を除く全固形分における色素と非液晶性の重合性多官能モノマーの総含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0065】
重合開始剤:
上記ラジカル重合性多官能モノマーを含有する組成物を硬化反応させるために、本発明の組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、光重合、熱重合に応じて、公知のものを好適に使用することができ、たとえば光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾル化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0066】
光重合開始剤の使用量は、溶剤を除く全固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。
光重合開始剤の例、光重合開始剤の使用量、及び重合のための光照射エネルギーの値の各々は特開2001−91741号広報の段落[0050]〜[0051]の記載も本発明に適用できる。
【0067】
本発明の組成物には、前記の色素及び非液晶性の多官能モノマー、重合開始剤の他に有機溶媒や、任意の添加剤を配合・併用することができる。添加剤の例としては、風ムラ防止剤、ハジキ防止剤、配向膜のチルト角(光吸収異方性膜/配向膜界面での液晶性色素の傾斜角)を制御するための添加剤、空気界面のチルト角(偏光子膜/空気界面での色素の傾斜角)を制御するための添加剤、糖類、防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤、非液晶性のバインダーポリマー等である。以下、各添加剤について説明する。
【0068】
風ムラ防止剤:
本発明の組成物を塗布液として調製し、表面に塗布した膜を形成する場合には、組成物中には、塗布時の風ムラを防止するための材料、風ムラ防止剤、を添加してもよい。風ムラ防止剤としては、一般的に、フッ素系ポリマーが使用される。使用するフッ素系ポリマーとしては、色素のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。風ムラ防止剤として使用可能なフッ素ポリマーの例としては、特開2004−198511号公報、特許第4190275号、特開2004−333852号公報、特開2005−206638号公報に記載がある。色素とフッ素系ポリマーとを併用することによって、ムラを生じることなく表示品位の高い画像を表示することができる。さらに、ハジキなどの塗布性も改善される。液晶性色素の配向を阻害しないように、風ムラ防止目的で使用されるフッ素系ポリマーの添加量は、液晶性色素に対して一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.5〜10質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0069】
ハジキ防止剤:
本発明の組成物を塗布液として調製し、表面に塗布した膜を形成する場合には、組成物中に、塗布時のハジキを防止するための材料、ハジキ防止剤、を添加してもよい。ハジキ防止剤としては、一般的に、ポリマーが使用される。使用するポリマーとしては、当該液晶性色素と相溶性を有し、色素のチルト角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ハジキ防止剤として使用可能なポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。色素の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、液晶性色素に対して一般に0.1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあるのがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあるのがさらに好ましい。
【0070】
配向膜チルト角制御剤:
本発明の組成物には、配向膜のチルト角を制御する添加剤、配向膜チルト角制御剤、を添加するのが好ましい。配向膜チルト角制御剤の例には、分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物が含まれる。分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物の例には、R0−OH、R0−COOH、R0−O−R0、R0−NH2、R0−NH−R0、R0−SH、R0−S−R0、R0−CO−R0、R0−COO−R0、R0−CONH−R0、R0−CONHCO−R0、R0−SO3H、R0−SO3−R0、R0−SO2NH−R0、R0−SO2NHSO2−R0、R0−C=N−R0、HO−P(−OR02、(HO−)2PO−OR0、P(−OR03、HO−PO(−OR02、(HO−)2PO−OR0、PO(−OR03、R0−NO2及びR0−CNならびにこれらの有機塩が含まれる。なお、式中、R0は非極性基であり、R0が複数ある場合は、それぞれのR0は同一でも異なっていてもよい。る。ここで、有機塩としては、上記化合物の有機塩(例えば、アンモニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等)の他、ピリジニウム塩等も好ましく採用することができる。前記分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物の中でも、R0−OH、R0−COOH、R0−O−R0、R0−NH2、R0−SO3H、HO−PO(−OR02、(HO−)2PO−OR0、PO(−OR03もしくはこれらの有機塩が好ましい。
【0071】
非極性基ROとしては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数1〜30の直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基)、アリール基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基)が例として挙げられる。これらの非極性基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が好ましい例として挙げられる。
【0072】
本発明の組成物中に前記配向膜チルト制御剤を添加し、配向膜チルト制御剤の存在下で前記二色性色素の分子を配向させることで、配向膜側界面における色素分子のチルト角を調整することができる。配向膜チルト角制御剤の添加量は、一般的には、前記二色性色素の質量に対して0.0001質量%〜30質量%であるのが好ましく、0.001質量%〜20質量%であるのがより好ましく、0.005質量%〜10質量%であるのがさらに好ましい。本発明では、特開2006−58801号公報に記載の配向膜チルト制御剤を使用することができる。
【0073】
空気界面チルト角制御剤:
本発明の組成物には、空気界面のチルト角を制御する添加剤、空気界面チルト角制御剤、を添加するのが好ましい。空気界面チルト角制御剤の一例は、水平配向剤である。水平配向剤としては、好ましくは、
(1)下記一般式(10)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物;又は、
(2)一般式(11)もしくは一般式(12)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(13)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位からなる群から選択される少なくとも一種の重合単位を含むポリマー;
である。
まず、(1)下記一般式(10)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物について説明する。
【0074】
【化18】

【0075】
式中、R51、R52及びR53は各々独立に、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基を表し、X11、X22及びX33は各々独立に、−NH−、−O−又は−S−を表し、m11、m22及びm33は各々独立に、1〜3の整数を表す。
【0076】
51、R52及びR53で各々表される置換基は、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数4〜20であり、さらに好ましくは炭素数4〜16であり、特に好ましくは6〜16である。前記末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基は、アルコキシ基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。アルコキシ基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。以下に、R51、R52及びR53で表される末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基の例を示す。
【0077】
R1:n−C817−O−
R2:n−C613−O−
R3:n−C49−O−
R4:n−C817−(CH22−O−(CH22−O−
R5:n−C613−(CH22−O−(CH22−O−
R6:n−C49−(CH22−O−(CH22−O−
R7:n−C817−(CH23−O−
R8:n−C613−(CH23−O−
R9:n−C49−(CH23−O−
R10:H−(CF28−O−
R11:H−(CF26−O−
R12:H−(CF24−O−
R13:H−(CF28−(CH2)−O−
R14:H−(CF26−(CH2)−O−
R15:H−(CF24−(CH2)−O−
R16:H−(CF28−(CH2)−O−(CH22−O−
R17:H−(CF26−(CH2)−O−(CH22−O−
R18:H−(CF24−(CH2)−O−(CH22−O−
【0078】
一般式(10)中、X11、X22及びX33はそれぞれ、好ましくは−NH−又は−O−を表し、最も好ましくは−NH−を表す。m11、m22及びm33はそれぞれ、好ましくは2である。
【0079】
前記一般式(10)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化19】

【0081】
次に、(2)一般式(11)もしくは一般式(12)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(13)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位からなる群から選択される少なくとも一種の重合単位を含むポリマーについて説明する。
【0082】
【化20】

【0083】
式中、R61は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L61は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表す。
【0084】
【化21】

【0085】
式中、R62は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、L62は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表す。
【0086】
【化22】

【0087】
式中、R73は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、R71及びR72はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表す。また、R71とR72は互いに連結して複素環を形成してもよい。
【0088】
前記一般式(11)中、R61は、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。L61は2価の連結基を表し、m1は1以上18以下の整数を表し、2〜12がより好ましく、4〜8が更に好ましく、4又は6であることが最も好ましい。
【0089】
前記一般式(12)中、R62は、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。L62は2価の連結基を表し、n1は1以上18以下の整数を表し、2〜12がより好ましく、4〜8が更に好ましく、4又は6であることが最も好ましい。
【0090】
61及びL62はそれぞれ独立に2価の置換基であれば限定はないが、下記一般式(14)で表される構造であることがより好ましい。ここで(a)は二重結合側に結合する位置、(b)はフルオロ脂肪族基側に結合する位置を各々示す。
一般式(14): (a)−X10−R20−(b)
一般式(14)中、X10は単結合、又は*−COO−**、*−COS−**、*−O
CO−**、*−CON(R21)−**、*−O−**で示される2価の連結基を表す。ここで*は二重結合側に結合する位置、**はR20に結合する位置を各々示す。
20は、置換基を有していてもよいポリメチレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基など)、置換基を有していてもよいフェニレン基(例えばo−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基など)、及びそれらの任意の組み合わせにより形成できる基を表す。中ではポリメチレン基がより好ましく、ポリメチレン基の中でもメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びテトラメチレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基が更に好ましい。
【0091】
21は、水素原子又は炭素数1〜8の置換基を有してもよいアルキル基、あるは炭素数6〜20の置換基を有してもよいアリール基を表し、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。
【0092】
前記一般式(11)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーは、下記一般式(11’)で表されるモノマーであることがより好ましい。
【0093】
【化23】

【0094】
一般式(11’)中、X1は−O−、−S−又は−N(R222)−で表される二価基を表し、pは1〜8の整数を表す。X1は−O−又は−N(R222)−であることがより好ましく、−O−であることが最も好ましい。pは1〜6がより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。R61及びm1は、前記一般式(11)で説明したそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R222は水素原子又は炭素数1〜8の置換基を有してもよいアルキル基、又は炭素数6〜20の置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0095】
前記一般式(12)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの中でも、下記一般式(12’)で表されるモノマーが好ましい。
【0096】
【化24】

【0097】
一般式(12’)中、X2は−O−、−S−又は−N(R222)−で表される置換基を表し、qは1〜8の整数を表す。X2は−O−又は−N(R222)−であることがより好ましく、−O−であることが最も好ましい。pは1〜6がより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。R62及びn1は、前記一般式(12)で説明したそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R222は一般式(11’)で説明したものと同義である。
【0098】
次に、一般式(13)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位について説明する。
一般式(13)中、R73は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子又はメチル基がより好ましい。R71及びR72はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基又は炭素数1〜20のヘテロ環基を表し、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。また、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15の芳香族基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族基であることがさらに好ましい。また、R71とR72が互いに連結して複素環を形成してもよく、形成されるヘテロ環の種類としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。
【0099】
また、前記水平配向剤として用いるポリマーは、フルオロ脂肪族基含有モノマー又はアミド基含有モノマーのいずれかを重合単位として含んでいればよいが、好ましくは、フルオロ脂肪族基含有モノマー及びアミド基含有モノマーの両方を重合単位として含むものである。該ポリマーにはそれぞれのモノマーは重合単位として2種以上含まれていてもよく、また、それ以外に共重合可能な他のモノマーを一種以上重合単位として含む共重合体であってもよい。このような共重合可能な他の種類のモノマーとしては、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2 Page1〜483記載のものを用いることができる。例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0100】
前記水平配向剤として用いられるポリマーの好ましい質量平均分子量は、2000〜100,000であり、より好ましくは3000〜80,000であり、さらに好ましくは4,000〜60,000である。ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0101】
以下、本発明に水平配向剤として使用可能なポリマーの具体的な構造の例を示すが、以下の具体例に制限されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分の質量比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0102】
【化25】

【0103】
【化26】

【0104】
【化27】

【0105】
【化28】

【0106】
【化29】

【0107】
【化30】

【0108】
【化31】

【0109】
その他、特開2005−99248号公報、特開2005−134884号公報、特開2006−126768号公報、特開2006−267183号公報記載の水平配向剤を選択してもよい。
【0110】
本発明においては、前記水平配向剤を1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。前記水平配向剤の添加量は、前記二色性色素の添加量に対して0.1質量%〜10質量%であるのが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがさらに好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが特に好ましい。
【0111】
なお、本明細書では、「チルト角」とは、色素の分子の長軸方向と界面(配向膜界面あるいは空気界面)のなす角度を意味する。本発明の組成物を偏光膜の作製に利用する場合は、配向膜側のチルト角を小さくし、水平配向させることにより、偏光素子として好ましい光学性能が得られる。したがって、偏光性能の観点から、好ましい配向膜側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0°〜5°、特に好ましいのは0°〜2°、最も好ましくは0°〜1°である。また、好ましい空気界面側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0〜5°、特に好ましいのは0〜2°である。
本発明の組成物が、
(1)一般式(10)で表されるフルオロ脂肪族基含有化合物;及び
(2)一般式(11)もしくは一般式(12)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位及び一般式(13)で表されるアミド基含有モノマーの重合単位を少なくとも一種含むポリマー;
の少なくとも一種を含むことにより、これを用いた偏光子における配向膜側のチルト角を、例えば、2°以下に抑えることができるであろう。
【0112】
糖類:
本発明の組成物には、糖類を添加してもよい。糖類を添加することにより色素会合体の会合度を向上させ、その結果として色素の分子配向性を高めることができる。
使用可能な糖類としては、単糖、二糖、多糖、及び糖アルコール類などの糖の誘導体が挙げられる。糖類の中でも、分子会合性に寄与するという点から、水酸基が2以上、よ好ましくは3以上であり、且つ好ましくは18以下、更に好ましくは12以下であるものが好ましい。水酸基の数が上記範囲であると、色素との相互作用が適度になり、相互作用が強すぎることによって生じる析出がなく、適度な相互作用により配向性を向上させることができるので好ましい。
【0113】
使用する糖類の分子量としては、1,000以下が好ましく、更に好ましくは700以下である。糖類の分子量が上記範囲であると、色素との相分離が生じず、色素の配向性の改善に寄与できるので好ましい。
また、使用する糖類の炭素数としては、通常36以下、好ましくは24以下である。糖類の炭素数が前記範囲であると、色素との相分離が生じず、色素の配向性の改善に寄与できるので好ましい。
【0114】
本発明において使用可能な糖類の例には、単糖、オリゴ糖、単糖アルコールが含まれ、水酸基数、及び分子量が、前記好ましい範囲のものを使用するのが好ましい。
【0115】
単糖としては、例えばキシロース、リボース、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、ガラクトースなどが挙げられる。
オリゴ糖としては、例えばトレハロース、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、スクロース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノース、パノース、イソパノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばトレイトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトールなど前述の単糖及びオリゴ糖を還元した化合物が挙げられる。
【0116】
糖類としては、特に好ましくはキシロース、マンノース、マルトース、マルトトリオース、アラビトールが挙げられる。
【0117】
なお、これらの糖類、糖アルコール類は各々光学異性体が存在するが、本発明で用いる組成物中にはそれぞれを単独で用いてもよく、両方を含んでいてもよい。また、糖類は、本発明の組成物中に、1種が単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合せて用いられていてもよい。
【0118】
本発明の組成物中における、色素に対する糖類の含有量は、質量比で0.1以上、1以下の範囲であることが好ましい。更に好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下である。糖類の含有量が前記範囲であると、色素会合体の会合度を改善する効果が得られる。
【0119】
防黴剤、抗菌剤及び殺菌剤:
本発明の組成物には、防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤を添加してもよい。これらの添加剤を添加することにより、当該組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0120】
本発明で言う防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤とは、カビの発生・生育・増殖を抑制する防黴能、微生物を死滅される殺菌能、微生物の発生・生育・増殖を抑制する抗菌能の少なくともいずれかの機能を有する薬剤であればいずれでもよく、公知の防黴剤、殺菌剤、抗菌剤が使用できる。ただし、本発明の組成物を用いて作成した異方性膜の光学特性を低下させないものであることが好ましい。本発明に用いられる防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤としては、例えば、従来の2,4,4′−トリクロロ−2′−ヒドロキシジフェニルなどのフェノール系、二酸化塩素などの塩素系、ヨウ素などのヨウ素系、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩系等が挙げられる。
【0121】
また、1,2−benzisothiazoline−3−oneを有効成分とするものとして、Proxel BDN、Proxel BD20、Proxel GXL、Proxel LV、Proxel XL、Proxel XL2、Proxel Ultra10(以上、Avecia社製、商品名)、polyhexametylene biguanide hydrochlorideを有効成分とするものとして、Proxel IB、(Avecia社製、商品名)、Dithio−2,2’−bis(benzmethylamide)を有効成分とするものとしてDensil P(Avecia社製、商品名)等も挙げられる。
また、下記化合物は、特に極微量で抗菌効果を示すことから特に好ましい。
No. 化合物名
1. 2−クロロメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
2. 2−シアノメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
3. 2−ヒドロキシメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
4. 2−(3−メチルシクロヘキシル)−3−イソチアゾロン
5. 2−(4−クロロフェニル)−4,5−ジクロロ−3−イソチアゾロン
6. 2−(4−エチルフェニル)−3−イソチアゾロン
7. 2−(4−ニトロフェニル)−5−クロロ−3−イソチアゾロン
8. 2−クロロメチル−3−イソチアゾロン
9. 2−メトキシフェニル−4−メチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
10. 2−モルフォリノメチル−5−クロロ−3−イソチアゾロン
これらの化合物は、例えば特開平2−278号公報等を参考に合成することが可能であるが、商品名:トリバクトラン(ヘキスト社製)等の市販品を利用することも可能である。
【0122】
また、本発明で用いることのできる防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤は、これを単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
上記の防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤の、前記組成物中の含有量は、特に限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、一方、通常0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下である。前記範囲であると、薬剤が析出することがなく、また色素膜を成膜した際に相分離が生じ、点欠陥や光散乱などの光学的欠陥を生じさせることなく、これらの剤の添加効果が得られる。
【0123】
本発明の組成物を偏光膜の作製に利用する態様では、高い偏光度の偏光膜を得るために、前記組成物中に、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物及び電子リッチである(Electron-Rich)化合物を含有させることが好ましい。本発明において、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物及び電子リッチである(Electron-Rich)化合物としては、例えば、特開2006−323377号公報に記載のものを用いることができる。
【0124】
前記電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物の割合は、組成物全体を100質量部とした場合に、通常0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下の範囲である。前記範囲であると、組成物を溶液として調製した際似、粘度を過度に上昇させることなく、該化合物の添加効果を得ることができる。
【0125】
前記電子リッチである(Electron-Rich)化合物の割合は、組成物全体を100質量部とした場合に、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下の範囲である。前記範囲であると、粘度を過度に上昇させることなく、該化合物の添加効果を得ることができる。
【0126】
また、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物と電子リッチである(Electron-Rich)化合物との質量分率は、通常10/90〜90/10の範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、電子不足である(Electron-Deficient)盤状化合物又は電子リッチである(Electron-Rich)化合物の使用による効果が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0127】
非液晶性のバインダーポリマー:
本発明の組成物には、バインダとして、非液晶性ポリマーを含有してもよい。非液晶性ポリマーの例として、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、硝酸セルロース等の変性セルロース系樹脂ニトロセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びエチルセルロースなどのセルロース系樹脂や、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、各種エストラマー等が挙げられる。これらは単独で用いる他、これらを混合、又は共重合して用いることも可能である。
非液晶性のバインダーポリマーとしては、特にアクリル系ポリマー(アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする樹脂)が好ましく、有機溶剤に可溶であることが特に好ましい。
【0128】
アクリルポリマーの製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法で製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0129】
上記のアクリル系ポリマーの具体的な共重合成分については、不飽和カルボン酸(例、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸)、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなど)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、及び脂肪族共役ジエン(例、1、3−ブタジエン及びイソプレン)を挙げることができる。これらの中で、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。ここで(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系ポリマーや共重合成分としてマクロモノマー(例えばポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど)を含むアクリル系グラフトポリマーも好ましいものとして挙げられる。
これらは、1種単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
1.−3 黒色着色組成物の態様
本発明の二色性色素組成物の色調については特に制限はなく、用途に応じて、種々の色調の着色組成物として調製することができる。例えば、偏光膜の作製に利用する態様では、黒色の着色組成物となるように、2種以上の色素を混合するのが好ましい。本発明の二色性色素組成物の一態様は、イエロー色素、マゼンタ色素、及びシアン色素をそれぞれ含有する黒色の着色組成物である。本態様において、前記一般式(I)で表される二色性色素は、いずれの色調の色素として利用されていてもよい。また、前記一般式(I)で表される二色性色素であってそれぞれ異なる色調の色素を2種以上用いて、本態様の組成物を調製してもよい。
なお、本明細書において、イエロー色素とは、吸収極大波長が400〜500nmの範囲にある色素をいい、マゼンタ色素とは、吸収極大波長が500〜580nmの範囲にある色素をいい、シアン色素とは、吸収極大波長が580nm〜700nmの範囲にある色素をいう。極大吸収波長は、有機溶媒に色素を溶解した溶液を調製し、該溶液の吸収スペクトルを測定することで知ることができる。有機溶媒としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)が利用される。
【0131】
本態様の一例は、前記一般式(III)で表される二色性色素の少なくとも1種をイエロー色素として含有する黒色着色組成物である。
他の例は、前記一般式(III)で表される二色性色素の少なくとも1種をイエロー色素として含有するとともに、シアン色素を含有する黒色着色組成物である。前記一般式(III)で表されるイエロー色素は、シアン色素と混合することによって、黒色を実現できる。勿論さらにマゼンタ色素を含有していてもよい。
他の例は、前記一般式(IV)で表される二色性色素の少なくとも1種をマゼンタ色素として含有する黒色着色組成物である。
また本態様の他の例は、前記一般式(III)で表される二色性色素の少なくとも1種をイエロー色素として、及び前記一般式(IV)で表される二色性色素の少なくとも1種をマゼンタ色素として含有する、黒色着色組成物である。
本態様において利用されるシアン色素については特に制限はないが、二色比を高めるためには、シアン色素も、液晶性を有する、二色性アゾ色素であるのが好ましい。液晶性を有する、二色性アゾ色素としては、例えば下記一般式(1)および(2)で表される化合物が好ましい。
【0132】
【化32】

【0133】
式中、R1〜R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R6およびR7はそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Q1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基またはシクロヘキサン環基を表す。L1は2価の連結基を表す。Aは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0134】
【化33】

【0135】
式中、R8およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Q2は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。Q3は置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基または2価の芳香族複素環基を表し、nは1から4の整数を表すし、nが2以上のとき、複数のQ3は同一でも異なっていてもよい。
【0136】
前記一般式(1)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0137】
【化34】

式中、R10〜R13はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;R14は水素原子又はメチル基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し;B1は窒素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子を表し;L2はアゾ基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、又はイミノ基を表す。
【0138】
前記一般式(2)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0139】
【化35】

【0140】
式中、R17〜R20はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R21及びR22はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し;B2は窒素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子を表し;mは1又は2を表し、mが2以上のとき、2つのR17〜R20はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0141】
また、勿論、シアン色素として、前記一般式(I)で表される化合物を利用してもよい。
また、本態様において、色素の含有比については特に制限はない。同程度の量が添加されるであろう。
【0142】
本態様の黒色組成物を利用することにより、光源としてC光源を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.28<x<0.36、0.28<y<0.36を満足する偏光膜を作製することができる。この条件を満足すると、例えば、液晶セルにおいて該偏光膜を液晶層とカラーフィルタ層の間に配置した場合、RGBのカラーフィルタのよって生じる可視全域にわたる散乱を抑制することができるので好ましい。
なお、C光源、xy色度図、並びにx及びyの求め方については、日本規格協会発行JISハンドブック[61]色彩に詳細な記載があり、参照することができる。
【0143】
2. 本発明の二色性色素組成物の用途
本発明の二色性色素組成物は、種々の用途に利用できる。高い二色比を示すので、偏光膜の形成材料として利用するのが好ましい。以下、本発明の組成物から形成される偏光膜について説明する。
2.−1 偏光膜
本発明は、本発明の前記二色性色素組成物から形成された偏光膜にも関する。本発明の偏光膜は、任意の直線偏光を透過し、該直線偏光と偏光面が直交する偏光を吸収又は反射、後方散乱するもの;及び右又は左円偏光を透過し、該円偏光とらせんが逆向きの円偏光を吸収又は反射、後方散乱するもの;のいずれであってもよい。
本発明の組成物が含有する二色性色素は液晶性を示すので、例えば、本発明の組成物を塗布液として調製し、配向膜表面に適用すると、色素分子は配向膜との界面では配向膜のチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向する。色素分子を水平配向させ、且つその配向状態に固定することによって直線偏光膜として利用することができる。
【0144】
上記組成物から形成される本発明の偏光膜の厚さについては特に制限はないが、一般的には、0.01〜2μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
本発明の組成物は高い二色比を示すので、当該組成物からなる本発明の偏光膜は、膜厚が上記範囲であり、比較的薄くても、偏光度85%以上を達成可能である。したがって、特に薄膜化が強く要求される用途、例えば、液晶セル内に配置する偏光層として特に有用である。即ち、セル内に入射した直線偏光が、カラーフィルタ層等のセル内の部材によって偏光解消されて散乱光が生じるのを軽減するのに寄与する偏光層として特に有用である。
【0145】
また。本発明の偏光膜は、その表面に透明樹脂硬化層、粘着層、反射防止層等の機能層を有していてもよい。
【0146】
2.−2 偏光膜の作製方法
本発明の偏光膜の製造方法については特に制限はない。一例は、以下の通りである。
[1]基板を直接、又は該基板上に形成された配向膜をラビング、又は光照射する工程
[2]該基板又は該配向膜上に、塗布液として調製された本発明の組成物を塗布して途膜を形成する工程
[3]途膜から溶媒を蒸発させることにより組成物中の色素分子を配向させて偏光膜とする工程
をこの順に含む方法により製造することが好ましい。
【0147】
以下、各工程[1]〜[3]にしたがって、説明する。
[1]配向処理工程
まず、基板の表面又は基板上に形成された配向膜の表面に、配向処理を施す。配向処理には、ラビング処理と、後述する光照射処理がある。
・ラビング処理
ラビング処理とは、後記詳述するように、当該基板等の表面を、綿布、脱脂綿等のバフにより一定方向に擦って、その方向に平行な微細な溝を形成する配向処理を行う操作である。ラビング処理面に本発明の組成物を塗布することにより、色素分子を最終的にその表面に配向状態で吸着させることができる。
【0148】
ラビング条件、例えばラビング密度等を調整して、所望の配向状態を得ることができる。例えば、ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。ラビン密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
【0149】
・光照射
上記[1]の他の例は、基板上に形成した光配向材料からなる膜に直線偏光又は非偏光照射を施し、光配向膜とする工程である。
直線偏光照射とは、前記光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。照射する光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
【0150】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
【0151】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例、グラントムソンプリズム)やブリュースター角を利用した反射型偏光膜を用いる方法、又は偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0152】
照射する光は、直線偏光の場合、膜表面に対して上面もしくは裏面から、膜表面に対して垂直又は斜めから光を照射する方法が採用される。前記光の入射角度は、前記光配向材料によって異なるが、例えば、0〜90°(垂直)、好ましくは40〜90である。
非偏光を照射する態様では、斜めから光を照射する方法が採用され、その入射角度は、10〜80°、好ましくは20〜60、特に好ましくは30〜50°である。
照射時間は好ましくは1分〜60分、さらに好ましくは1分〜10分である。
【0153】
なお、パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作成に必要な回数施す方法や、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0154】
[2]塗布工程
上記配向処理を施した基板又は配向膜の表面に、塗布液として調製した本発明の組成物を塗布する工程である。
前記塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。炭化水素、アルキルハライド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0155】
前記塗布液の塗布方法については特に制限はない。湿式成膜法を利用するのが好ましい。湿式成膜法としては、原崎勇次著「コーティング工学」株式会社朝倉書店、1971年3月20日発行、253頁から277頁や市村國宏監修「分子協調材料の創製と応用」株式会社シーエムシー出版、1998年3月3日発行、118頁から149頁などに記載の公知の方法が挙げられる。また、例えば、通常の塗布方法(例えば、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スリットコーティング法、スリットアンドスピン法、ワイヤバーコーティング法、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、フリースパンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法)により実施できる。中でも、本発明においては、配向の均一性及び組成物の使用効率の点からは、スリットコーティング法を利用するのが好ましい。以下、スリットコーティング法を例に挙げて説明する。
【0156】
スリットコーティング法:
スリットコーティング法の一例は、以下の通りである。基板(例えば、何れか一辺の長さが800mm以上の基板)に、当該基板との相対移動速度が50〜150mm/secの流延塗布機のスリットダイから、本発明の組成物の塗布液を塗布して、前記基板表面に膜厚L1のウェット塗膜を形成する。その後、必要な場合、ウエット塗膜に対してプリベークを行って溶媒を除去して膜厚L2のプリベーク塗膜を形成する。このとき、前記ウエット塗膜の膜厚L1は0.1〜20μmであることが好ましく、且つ、ドライ塗膜の膜厚L2は0.01〜2μmであることが好ましい。また、前記スリットダイの吐出口と基板表面とのギャップは50μm〜200μmの範囲である。
前記方法によって、本発明の組成物の塗布液を塗布すれば、例えば、第五世代のガラス基板(1100mm×1250mm)表面に塗布する場合においても、配向均一性の高い偏光膜を生産性よく形成することができる。
【0157】
塗布時の温度は、好ましくは0℃以上、80℃以下、湿度は好ましくは10%RH以上、80%RH以下程度である。
【0158】
また、湿式製膜法により、本発明の組成物の塗布液を塗布する場合には、基板を加温してもよいし冷却してもよい。このときの基板の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。上限を上回ると、以下詳述する減圧乾燥を行う前に配向が乱れて乾燥する恐れがあり、下限を下回ると支持体表面に水滴が付き塗布の障害になる恐れがある。湿式製膜法により塗布した偏光膜を減圧乾燥するときに基板の加温を行ってもよい。このときの基板の温度は、好ましくは60℃以下である。上限を上回ると減圧乾燥を行う前に配向が乱れて乾燥する恐れがある。
【0159】
上記方法では、一方向に配向処理された基板又は配向膜上に、前記基板又は配向膜上の配向処理方向に対して平行でない角度で色素組成物を塗布して、偏光膜を形成することができる。さらに、基板の縦又は横方向と略一致する方向に色素組成物を塗布することがより好ましい。これにより、配向欠陥がなく高い偏光度を持つ偏光膜を形成することもできる。また、色素組成物の塗布後、必要な偏光角度を持たせるために基板を切り出す必要がなく、生産性が高い。
【0160】
[3]乾燥、配向工程
上記[2]塗布工程に引き続き、[2]塗布工程によって形成された塗膜から、溶媒を蒸発させることにより、色素分子を配向させる工程を実施する。
この場合、乾燥温度としては、好ましくは室温において自然乾燥することであり、塗布により形成された色素分子の配向状態を乱さない(熱緩和等を避ける)ようにするが好ましい。なお、減圧処理において、溶媒を蒸発させ、より低温で乾燥することも好ましい。
ここでいう減圧処理とは、塗膜(偏光膜)を有する基板を減圧条件下におき、溶媒を蒸発除去することを言う。このとき、偏光膜を有する基板は高部から底部に流れないよう、水平にしておくことが好ましい。塗布後、偏光膜の減圧処理を始めるまでの時間は、短ければ短いほどよく、好ましくは1秒以上30秒以内である。
【0161】
減圧処理の方法としては、例えば以下の様な方法が挙げられる。塗布液を塗布して得られた偏光膜を、その基板とともに減圧処理装置に入れて減圧処理する。例えば特開2006−201759号公報の図9や図10のような減圧処理装置を使用することができる。減圧処理装置の詳細については、特開2004−169975号公報に記載されている。
【0162】
減圧処理の条件としては、偏光膜の存在する系内の圧力が、好ましくは2×104Pa以下、さらに好ましくは1×104Pa以下、特に好ましくは1×103Pa以下である。また、好ましくは1Pa以上、更に好ましくは1×101Pa以上である。通常、系内が最終的に到達する圧力が前記の通りであることが好ましい。上限を上回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、下限を下回ると乾燥が急速過ぎて欠陥が発生する恐れがある。
また、減圧処理時間は、好ましくは5秒以上180秒以内である。上限を上回ると配向緩和前に急速に偏光膜を乾燥できず配向が乱れる恐れがあり、下限を下回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
また、減圧処理する際の系内の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。上限を上回ると乾燥時に対流が起こり偏光膜に不均一性の発生の恐れがあり、下限を下回ると乾燥できず配向が乱れる恐れがある。
【0163】
また、前記途膜を乾燥して溶媒を除去した後に、色素分子を配向させるとき、配向を促進させるために基板を加温してもよい。このときの基板の温度は、好ましくは50℃以上200℃以下であり、特に好ましくは70℃以上180℃以下である。この配向温度を低下させるために、色素組成物に可塑剤等の添加剤を併用してもよい。
【0164】
[4] 硬化工程
[3]乾燥、配向工程を行うことによって、偏光膜が得られるが、さらに硬化工程を実施すると、膜強度が改善されるので好ましい。
例えば、前記組成物が、非液晶性の重合性多官能モノマーを含む態様では、該色素を配向させた後、光照射(好ましくは紫外線照射)又は加熱、或いはこれらの組合せにより重合硬化を行なうことが好ましい。
【0165】
[5]機能層等の付加工程
以上の[1]〜[3]、及び所望により[4]を実施することで、本発明の偏光膜を形成することができる。
さらに偏光膜の表面に透明樹脂硬化層、粘着層、反射防止層等を形成してもよい。
透明樹脂硬化層は、硬化性透明樹脂組成物の塗布液を、偏光膜表面に塗布し、硬化させることで形成できる。前記塗布液の調製に用いる塗布溶媒としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。具体的には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等が挙げられる。中でもトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノール及びブタノールが好ましく、特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エタノールである。
上記溶媒の使用量は、硬化性透明樹脂組成物の固形分濃度が2〜50質量%となるように使用するのが好ましく、3〜40質量%となるように使用するのが更に好ましい。
上記、硬化性透明樹脂組成物の塗布液の塗布は、前記偏光膜の塗布方法を採用することができる。
【0166】
次に、塗膜を硬化させて、透明樹脂硬化層を形成する。硬化は、紫外線照射によって行なうことが好ましい。
【0167】
2.−3 偏光膜の作製に利用される材料
次に、上記方法によりされる配向膜等、偏光膜以外の材料について説明する。
配向膜:
本発明の偏光膜の作製に利用可能な配向膜は、当該配向膜上に設けられる色素分子に所望の配向を付与できるのであれば、どのような層でもよい。例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。中でも、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からは、高分子膜の表面をラビング処理することにより形成される配向膜が好ましく、また、配向の均一性の点からは、光配向材料の膜に光照射することにより形成される光配向膜が好ましい。
【0168】
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。例えば、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましく用いられる。配向膜についてはWO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0169】
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。具体的には、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物;特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物;特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物;特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体;特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステル;が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。
【0170】
透明樹脂硬化層:
上記した通り、本発明の偏光膜は、その表面に透明樹脂硬化層を有していてもよい。該層は、偏光膜に物理強度、耐久性、又は、光学特性を付与するために、設けられる。透明樹脂硬化層の層厚は1〜30μmの範囲にあることが好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
透明樹脂硬化層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。本発明における透明樹脂硬化層は、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を偏光子の表面に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、無機微粒子を含有することもできる。
【0171】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0172】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0173】
上記透明樹脂硬化層の形成に用いられる重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド及びチオキサントン類等が挙げられる。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のカヤキュア(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど、いずれも商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,127,500,907,369,1173,2959,4265,4263など、いずれも商品名)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0174】
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,127,907、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0175】
光重合開始剤は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA、いずれも商品名)などが挙げられる。
光重合反応は、高屈折率層の塗布及び乾燥後、紫外線照射により硬化反応させることが好ましい。
【0176】
前記透明樹脂硬化層は、脆性の付与のために質量平均分子量が500以上のオリゴマー又はポリマー、あるいは両者を添加してもよい。
オリゴマー、ポリマーとしては、(メタ)アクリレート系、セルロース系、スチレン系の重合体や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、側鎖に官能基を有するポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)やポリ(アリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0177】
前記透明樹脂硬化層中のオリゴマー及びポリマーの合計量は、樹脂層の全質量に対し5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは35〜65質量%である。
【0178】
前記透明樹脂硬化層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
透明樹脂硬化層の形成において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐久性に優れた透明樹脂硬化層を形成することができ、好ましい。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0179】
基板:
本発明の偏光膜は、基板上に形成されてもよい。
基板としては、例えば、液晶表示素子、OLED素子等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えば、シリコン基板等、並びにプラスチック基板、及びこれらに透明導電膜、カラーフィルター膜、電極、TFTを付着させたものが挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層を設けたりしていてもよい。
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることも好ましい。
【0180】
本発明に使用する基板の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。また、プラスチック基板は光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例及び好ましい態様は、特開2002−22942号公報の段落番号[0013]の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号公報に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0181】
3.液晶セル
本発明は、本発明の偏光膜を内部に有する液晶セルに関する。より具体的には、本発明は、一対の基板と、その間に配置された、液晶層、カラーフィルタ層、及び本発明の偏光膜を有する液晶セルに関する。本発明の偏光膜は、例えば、セル内に入射する直線偏光が偏光解消され散乱光が生じてしまうのを軽減するのに寄与する偏光層として利用されるであろう。この作用を十分に発揮するためには、本発明の偏光膜を、前記カラーフィルタ層と前記液晶層との間に配置するのが好ましい。
【0182】
本発明の偏光膜は、前記方法によって、例えば、カラーフィルタ基板の表面に、直接形成することができる。また、以下に説明する転写材料を用い転写して形成してもよい。即ち、本発明の偏光膜を用いた液晶セルの製造方法の一例として、前記偏光膜を、転写材料から転写して形成することを含む方法が挙げられる。転写材料を用いて偏光膜を形成することにより、工程数を軽減して、簡易な方法で良好な表示特性のセル及び表示装置を作製することができる。
【0183】
以下、前記偏光膜を、液晶表示装置内、特に液晶セル内に形成するのに有用な転写材料について説明する。
3.−1 転写材料
本発明に使用可能な転写材料は、支持体と、偏光膜とを少なくとも有する。さらに、偏光膜上に、少なくとも一層の感光性樹脂層を有しているのが好ましい。感光性樹脂層は、パターニング等の工程を経ない場合であっても、偏光膜の転写を容易にし、有用である。また、例えば、支持体と偏光膜との間には、転写時に相手基板側の凹凸を吸収するためのクッション性等の力学特性コントロール、あるいは凹凸追従性付与のための層を有していてもよいし、また、偏光膜の色素の配向を制御するための配向層として機能する層が配置されてもよいし、双方の層を有していてもよい。また、感光性樹脂層の表面保護などの目的から、最表面に剥離可能な保護層を設けてもよい。
【0184】
上記の転写材料に用いられる支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリスルホンが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステル及びノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0185】
前記偏光膜は、上記塗布を利用した方法により、上記支持体上に形成される。また、支持体上に配向膜を形成し、その上に、塗布により偏光膜を形成してもよい。なお、転写材料が有する偏光膜は、偏光性能に充分な光学特性を満足している必要はなく、例えば、転写される過程において実施される露光工程を通じて、偏光性能が発現又は変化して、最終的に偏光フィルムに必要な偏光性能を示すものであってもよい。
【0186】
感光性樹脂層:
前記転写材料は、感光性樹脂層を有しているのが好ましい。前記感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、前記感光性樹脂層は、少なくとも、(1)アルカリ可溶性樹脂と、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系と、を含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0187】
(1)アルカリ可溶性樹脂
前記アルカリ可溶性樹脂(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0188】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0189】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0190】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0191】
その他の層:
転写材料の、支持体と偏光膜との間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために熱可塑性樹脂層を形成することが好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0192】
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。該酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、公知のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0193】
前記熱可塑性樹脂層や前記中間層を、前記配向層と兼用することもできる。特に前記中間層に好ましく用いられるポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは配向層としても有効であり、中間層と配向層を1層にすることが好ましい。
【0194】
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フィルム材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0195】
偏光膜及び感光性樹脂層、及び所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層及び中間層の各層は、前記偏光膜の形成方法と同様の方法で形成することができる。2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0196】
3.−2 転写材料を用いた偏光膜の形成方法:
本発明でいう転写材料を基板上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記偏光膜及び感光性樹脂層を同時に転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した本発明でいう転写材料を、感光性樹脂層面を基板表面側にして、ラミネータを用いて加熱及び/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータ及びラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。その後、支持体は剥離してもよく、剥離によって露出した偏光膜表面に、他の層、例えば電極層等を形成してもよい。
【0197】
転写材料を転写する被転写材料である基板については、特に制限されない。例えば、透明基板が用いられ、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、或いは、プラスチックフィルム等を挙げることができる。被転写材料はまた透明基板上にカラーフィルタ等の層が設けられたものであってもよい。また、被転写材料は、予めカップリング処理を施しておくことにより、感光性樹脂層との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、700〜1200μmが一般的に好ましい。
偏光膜の上に粘着層を設けるのではなく、被転写材料の上に粘着層を設けておいてもよい。
【0198】
4.表示装置
本発明は、本発明の偏光膜を少なくとも有する表示装置に関する。本発明の表示装置は、例えば、TN、STN、VA、ECB、IPS、又はOCBモードの、透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置;及びOLEDなどのいずれであってもよい。
特に好ましくは、本発明の偏光膜を、基板の内面側に設置してなる(いわゆる、インセル偏光膜)表示装置であり、特に好ましくは、本発明の偏光膜をカラーフィルター基板に積層してなる表示装置である。
【実施例】
【0199】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、「部」は、「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
なお、以下の実施例中、光吸収異方性膜の光学特性に関する測定は下記の通り実施した。
<二色比>
二色比は、ヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で光吸収異方性膜の吸光度を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
【0200】
[実施例1:二色性色素A−2の合成例]
下記のスキームにより、下記構造の二色性色素A−2を合成した。
【0201】
【化36】

【0202】
【化37】

【0203】
化合物1の合成:
4−アミノ安息香酸10.0部を2.8N塩酸水130mlに溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム5.53部を水20mlに溶解させたものを5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、m−トルイジン16.3部をメタノール150mlに溶解させ、0℃に氷冷したものの中に5℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで昇温し、水酸化ナトリウムで中和した。析出した生成物をろ過した後、アセトニトリルで懸濁洗浄を行い、乾燥した。乾燥後、13.2部の化合物1が得られた。
【0204】
化合物2の合成:
化合物1の10.0部を塩酸16.3ml、酢酸40ml、プロピオン酸60mlの混合酸溶媒に溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム2.97部を水10mlに溶解させたものを5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、N、N−ジエチルアニリン5.84部をメタノール150mlに溶解し、0℃に氷冷したものの中に5℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで昇温し、そこに水116mlを滴下した。炭酸水素ナトリウムで反応液を中和したのち、析出した生成物をろ過し、水及びメタノールで洗浄を行い、乾燥した。乾燥後、11.0部の化合物2を得た。
【0205】
二色性色素A−2の合成:
化合物2の1.00部を10mlのTHFに溶解し、メタンスルホニルクロライド0.28部を加え、これを−5℃まで冷却した。ここに0.32部のDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を2mlのTHFに溶解したものを0℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。この反応液を、0.36部の4−ブチルフェノール及び0.32部のDIPEAを5mlのTHFに溶解したものの中に0℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。反応液を室温まで昇温し、水20ml及びメタノール20mlを加えた。析出した結晶をろ過し、メタノールで洗浄を行い、乾燥後、0.80部のA−2を得た。A−2のN−メチルピロリドン溶媒中でのλmaxは522.9nmであった。即ちマゼンタ色素であった。
なお、1H‐NMR(CDCl3)の詳細は、8.35(d,2H)、8.03(d,2H)、7.89(d,2H)、7.80(m,2H)、7.75(d,1H)、7.25(d,2H)、7.12(d,2H)、6.73(d,2H)、3.47(q,4H)、2.82(s,3H)、2.64(t,2H)、1.60(m,2H)、1.38(m,2H)、1.25(t,6H)、0.92(t,3H)であった。
A−2は液晶性を有しており、178℃〜244℃の範囲でネマチック相が確認された。また、偏光顕微鏡での観察により二色性色素であることが確認された。
【0206】
[実施例2:二色性色素A−9の合成例]
以下の合成スキームにより、下記構造の二色性色素A−9を合成した。
【化38】

【0207】
【化39】

【0208】
化合物3の合成:
4−アミノベンズアルデヒド12.1部を3.5N塩酸水85mlに溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム7.58部を水20mlに溶解させたものを5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、不溶物をろ別し、m−トルイジン11.8部をメタノール80mlに溶解させ、0℃に氷冷したものの中に5℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで昇温し、析出した生成物をろ過した後、メタノールで懸濁洗浄を行い、乾燥した。乾燥後、15.0部の化合物3が得られた。
【0209】
化合物4の合成:
化合物3の5.51部を塩酸5.0ml、酢酸28ml、水14mlの混合酸溶媒に溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム1.52部を水5mlに溶解させたものを5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、不溶物をろ別し、N、N−ジエチルアニリン2.98部をメタノール100mlに溶解し、0℃に氷冷したものの中に5℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで昇温し、そこに水100mlを滴下する。炭酸水素ナトリウムで反応液を中和したのち、析出した生成物をろ過し、水及びメタノールで洗浄を行い、乾燥した。乾燥後、6.30部の化合物4を得た。
二色性色素A−9の合成:
化合物4の1.00部を10mlのトルエンに溶解し、4−プロピルアニリン0.34部及びパラトルエンスルホン酸触媒量を加え、還流下3時間攪拌した。反応液を室温に戻し、メタノール30mlを加え、析出した結晶をろ過し、メタノールで洗浄を行い、乾燥後、0.92部のA−9を得た。
A−9のN−メチルピロリドン溶媒中でのλmaxは521.0nmであった。即ちマゼンタ色素であった。
なお、1H‐NMR(CDCl3)の詳細は、8.53(s,1H)、8.03(t,4H)、7.85(d,2H)、7.80(m,2H)、7.71(d,1H)、7.22(d,2H)、6.72(d,2H)、3.47(q,4H)、2.82(s,3H)、2.61(t,2H)、1.65(m,2H)、1.23(t,6H)、0.96(t,3H)であった。
A−9は液晶性を有しており、168℃〜288℃の範囲でネマチック相が確認された。また、偏光顕微鏡での観察により二色性色素であることが確認された。
【0210】
[実施例3:二色性色素A−26の合成例]
【0211】
以下の合成スキームにより、下記構造の二色性色素A−26を合成した。
【化40】

【0212】
【化41】

【0213】
化合物5の合成:
4−アミノ安息香酸10.0部を2.8N塩酸水130mlに溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム5.53部を水20mlに溶解させたものを5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、N、N−ジエチルアニリン1.09部をメタノール150mlに溶解し、0℃に氷冷したものの中に5℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで昇温し、そこに水116mlを滴下した。炭酸水素ナトリウムで反応液を中和したのち、析出した生成物をろ過し、水及びメタノールで洗浄を行い、乾燥した。乾燥後、21.0部の化合物5を得た。
【0214】
化合物6の合成:
4−アミノピリジン5.00部を85%リン酸水溶液25mlに溶解し、これを0℃に氷冷したものに対し、亜硝酸ナトリウム4.03部を5℃以下の温度を保ちながら少しずつ添加した。温度を保った状態で1時間程度攪拌し、ジアゾニウム塩の生成を確認した後に、オルトクレゾール5.74部を5.0N水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、5℃に氷冷したものの中に30℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。反応液に水220mlを加え、塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後アセトニトリルで懸濁洗浄及び乾燥後に、化合物6を3.80部得た。
【0215】
二色性色素A−26の合成:
化合物5の1.00部を10mlのTHFに溶解し、メタンスルホニルクロライド0.38部を加え、これを−5℃まで冷却した。ここに0.43部のDIPEAを2mlのTHFに溶解したものを0℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。この反応液を、0.72部の化合物6及び0.43部のDIPEAを5mlのTHFに溶解したものの中に0℃以下の温度を保ちながら少しずつ滴下した。反応液を室温まで昇温し、水20ml及びメタノール20mlを加えた。析出した結晶をろ過し、メタノールで洗浄を行い、乾燥後、0.75部のA−26を得た。
A−26のN−メチルピロリドン溶媒中でのλmaxは478.0nmであった。即ちイエロー色素であった。
なお、1H‐NMR(CDCl3)の詳細は、8.80(d,2H)、8.32(d,2H)、7.91(t,6H)、7.70(d,2H)、7.37(d,1H)、6.74(d,2H)、3.47(q,4H)、2.37(s,3H)、1.25(t,6H)であった。
A−26は液晶性を有しており、降温時に170℃〜200℃の範囲でネマチック相が確認された。また、偏光顕微鏡での観察により二色性色素であることが確認された。
【0216】
その他の化合物例についても上記と同様の方法で合成できる。
下記に化合物例のN−メチルピロリドン溶媒中でのλmaxと偏光顕微鏡観察による液晶層変化の挙動を示す。
【0217】
【表1】

【0218】
[実施例4]
クロロホルム99質量部に、二色性色素A−2を1質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。次に、ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に、前記塗布液を塗布し、この後、室温でクロロホルム自然乾燥して、膜を形成した。配向膜としては、下記ポリビニルアルコールを使用した。
【0219】
【化42】

【0220】
得られた膜の面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、及び膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)は18であった。即ち、得られた膜は、光吸収異方性があり、偏光膜として機能し得ることがわかった。
【0221】
[実施例5]
クロロホルム99質量部に、二色性色素A−9を1質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。この塗布液を用い、実施例4と同様に膜を作製した。
得られた膜における面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、及び膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)は58であった。即ち、得られた膜は、光吸収異方性があり、偏光膜として機能し得ることがわかった。
【0222】
[実施例6]
クロロホルム99質量部に、二色性色素A−9を0.5質量部及び二色性色素A−26を0.5質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。この塗布液を用い、実施例4と同様に厚み0.05〜0.2μmの膜を作製した。
得られた膜における面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、及び膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)は37であった。即ち、得られた膜は、光吸収異方性があり、偏光膜として機能し得ることがわかった。
【0223】
[実施例7]
クロロホルム99質量部に二色性色素A−9を0.3質量部、二色性色素A−26を0.3質量部、及び下記二色性色素Bを0.4質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。なお、二色性色素BはNMP中での吸収極大波長が615.0nmであり、即ち、シアン色素であり、209℃〜227℃の範囲にネマチック相を有し、また、偏光顕微鏡での観察により二色性色素であることが確認された。
この塗布液を用い、実施例4と同様に膜を作製した。得られた膜における膜面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、及び素膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)は28であった。即ち、得られた膜は、光吸収異方性があり、偏光膜として機能し得ることがわかった。
また、得られた光吸収異方性膜は黒色の色相を有しており、C光源を光源として用いた透過光スペクトルは、xy色度図上で、x=0.29、y=0.32の値を示した。
【0224】
【化43】

【0225】
[実施例8]
クロロホルム99質量部に、二色性色素A−26を0.4質量部及び二色性色素Bを0.6質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。この塗布液を用い、実施例4と同様に厚み0.05〜0.2μmの膜を作製した。
得られた膜における面内の吸収軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Az)、及び膜面内の偏光軸方向に振動面を有する偏光に対する吸光度(Ay)とから求めた二色比(D)は28であった。即ち、得られた膜は、光吸収異方性があり、偏光膜として機能し得ることがわかった。
また、得られた光吸収異方性膜は黒色の色相を有しており、C光源を光源として用いた透過光スペクトルは、xy色度図上で、x=0.32、y=0.34の値を示した。
【0226】
[比較例1]
特表2007−536415号公報に記載の液晶材料と二色性色素とを含む組成物から形成した膜についても同様に二色比を測定した。膜厚は2〜8μmであった。その結果、この比較例用の膜では、二色比は13であり、本発明の実施例よりも格段に低いことがわかった。
【0227】
[比較例2]
クロロホルム99質量部に、特開平11−305036号公報記載のアゾ色素No.(6)を1質量部加え、撹拌溶解後濾過して二色性色素組成物塗布液を得た。この塗布液を用い、実施例4と同様に厚み0.05〜0.2μmの膜を作製した。上記色素は、ネマチック液晶性を有していたが、配向膜上で結晶化がおこり、異方性を示さなかった。
【0228】
【化44】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する二色性色素組成物:
【化1】

式中、Ar1〜Ar4はそれぞれ置換基を有してもよい、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及びシクロヘキサン環基を表し;L1及びL2はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L1とL2が共にアゾ基になることはない。
【請求項2】
液晶性の非着色材料を含有しない請求項1に記載の二色性色素組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1又は2に記載の二色性色素組成物:
【化2】

式中、L11及びL12はそれぞれ、アゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し、但し、L11とL12が共にアゾ基になることはなく;R11〜R15はそれぞれ、水素原子もしくは置換基を表し、R11とR13は互いに環を形成していてもよく;A1は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【請求項4】
一般式(II)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも2種以上含有し、該2種以上の二色性色素のうち少なくとも1種が、式(II)中、L11がアゾ基である化合物である請求項3に記載の二色性色素組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の二色性色素組成物:
【化3】

式中、L21はエステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;L22はアゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;R21〜R25はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、R21とR23は互いに環を形成していてもよく;A2は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【請求項6】
前記一般式(I)で表される二色性色素の少なくとも1種が、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の二色性色素組成物:
【化4】

式中、L31はイミノ基、又はビニレン基を表し;R31〜R35はそれぞれ水素原子もしくは置換基を表し、R31とR33は互いに環を形成していてもよく;A3は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【請求項7】
11、R12、R21、R22、R31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R13、R23及びR33がそれぞれ、水素原子であり;R14、R24、R34、R15、R25及びR35がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A1、A2及びA3が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である請求項4〜6のいずれか1項に記載の二色性色素組成物。
【請求項8】
マゼンタ色素及び/又はイエロー色素として、前記一般式(I)で表される、液晶性を有する二色性色素を少なくとも1種含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の二色性色素組成物。
【請求項9】
イエロー色素として、請求項5中に記載の一般式(III)で表される化合物の少なくとも1種を含有する請求項8に記載の二色性色素組成物。
【請求項10】
マゼンタ色素として、請求項6中に記載の一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を含有する請求項8又は9に記載の二色性色素組成物。
【請求項11】
シアン色素として、液晶性を有する二色性アゾ色素の少なくとも1種をさらに含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の二色性色素組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の二色性色素組成物からなる偏光膜。
【請求項13】
塗布によって形成される請求項12に記載の偏光膜。
【請求項14】
光源としてC光源を用いたときの透過光が、xy色度図において、0.28<x<0.36、0.28<y<0.36を満足する請求項13に記載の偏光膜。
【請求項15】
一対の基板と、その間に配置された、液晶層、カラーフィルタ層、及び請求項12〜14のいずれか1項に記載の偏光膜を有する液晶セル。
【請求項16】
前記偏光膜を、前記カラーフィルタ層と前記液晶層との間に有する請求項15に記載の液晶セル。
【請求項17】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の偏光膜を有する表示装置。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の液晶セルを有する液晶表示装置。
【請求項19】
下記一般式(III)で表される、液晶性を有する二色性色素:
【化5】

式中、L21はエステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;L22はアゾ基、エステル基、イミノ基、又はビニレン基を表し;R11〜R15はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、R11とR13は互いに環を形成していてもよく;A2は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【請求項20】
21及びR22がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R23がそれぞれ、水素原子であり;R24及びR25がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A2が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である請求項19に記載の二色性色素。
【請求項21】
下記一般式(IV)で表される、液晶性を有する二色性色素:
【化6】

式中、L31はイミノ基、又はビニレン基を表し;R31〜R35はそれぞれ水素原子もしくは置換基を表し、R31とR33は互いに環を形成していてもよく;A3は置換もしくは無置換の炭素原子、又は窒素原子を表す。
【請求項22】
31及びR32がそれぞれ、炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であり;R33が、水素原子であり;R34及びR35がそれぞれ、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数1〜6の、複数のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基であり;A3が窒素原子、又は炭素原子数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、シアノ基、又は置換アミノ基で置換された炭素原子である請求項21に記載の二色性色素。

【公開番号】特開2011−46904(P2011−46904A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199090(P2009−199090)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】