説明

二軸回転ポンプ及びその製造方法

【課題】二軸の軸心の相対的な芯出し精度を向上させ、クリアランスを適切に小さく抑えてポンプ性能を向上できる二軸回転ポンプ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】二つのロータ30A、30Bがシリンダ25内で非接触に回転されるように、各ロータ30A、30Bの二つの回転軸31、32が、一方の軸受側壁部11と他方の軸受側壁部21に受られ、一方の回転軸31から他方の回転軸32へ一対の歯車33、33によって動力を伝達し、一方の軸受側壁部11が、一方の回転軸31の一端側を受けるベアリング15aが固定されたベアリングホルダー部分18が軸受側壁部の基体部分11aに対して二つの回転軸31、32に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されていると共に、一方のハウジング部10が他方のハウジング部20に対して位置調整可能な取付構造によって固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば排気側を利用することでコンプレッサー又はブロアとして利用でき、吸気側を利用することで真空ポンプとして利用できる二軸回転ポンプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸回転ポンプとしては、例えば、クローポンプ、ルーツポンプ、スクリューポンプ、ギアポンプなどがある。具体例として、図4〜図6に示すようなシリンダ110の両端面から排気するクローポンプが、本出願人によって開発されて特許出願(特願2009−186891)がなされている。また、図7及び図8に示すシリンダ210の片端面から排気するクローポンプが、本出願人によって開発されて特許出願(特願2009−212878)がなされている。
【0003】
図4〜図6に示すクローポンプについて、本発明の対照技術例として以下に説明する。
110はシリンダであり、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室111を形成する。120Aは一方のサイドプレート部であり、シリンダ110の一方の端面を塞ぐように設けられている。また、120Bは他方のサイドプレート部であり、シリンダ110の他方の端面を塞ぐように設けられている。
【0004】
シリンダ110内には、平行に位置するように反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸131、132が配されている。そして、その二つの回転軸131、132のそれぞれに一体的に固定されて、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部139が形成された二つのロータ130A、130Bが、シリンダ110内に配されている。
【0005】
また、140は回転駆動装置の構成である電動モータ(図6参照)であり、回転軸131と、その回転軸131から歯車137、137を介して駆動される回転軸132によって動力を伝達することで、二つのロータ130A、130Bを、回転駆動させるように設けられている。
【0006】
121は吸気口であり、シリンダ110内の気体が圧縮されないポンプ室の部分に連通する。なお、この吸気口121は、一般的にはサイドプレート部120A、120Bに設けられるが、シリンダ110の側周壁115に設けてもよい。
122は排気口であり、シリンダ110の両端面を通して圧縮気体を両側から排出させるように、一方のサイドプレート部120A及び他方のサイドプレート部120Bの両方にシリンダ110内の気体が圧縮されるポンプ室の部分に開口している。
【0007】
両方のサイドプレート部120A、120Bには、それぞれシリンダ110の端面を塞ぐ隔壁部123からそのシリンダ110とは反対方向へ連続する周壁部125が設けられている。そして、周壁部125とシリンダ110の側周壁115を軸の延長方向に重ね合わせるように固定され、周壁部125には排気口122から圧縮気体を導く排気案内室128を介して側方に開口する排気接続口129が設けられている(図4参照)。
図6に示すように、180は排気用接続ケースであり、二つの排出口接続口129、129に連結して両側から供給される圧縮空気を合流させ、外部の空気圧機器に接続するために設けられている。この排気用接続ケース180は消音室としても設けられている。
【0008】
両方のサイドプレート部120A、120Bの隔壁部123に吸気口121が設けられ、周壁部125には吸気口121へ吸入気体を導く吸気案内室126に開口する吸気接続口127が設けられている。
また、図5に示すように、170は吸気用接続ケースであり、二つの吸気接続口127、127に連結している。この吸気用接続ケース170は、吸気をまとめることができ、外部の空気圧機器に接続する接続室として設けられている。
【0009】
一方のサイドプレート部120Aの外側であって周壁部125に重ねられて設けられて二つの回転軸131、132の一方端側を受ける一方の軸受部135と、他方のサイドプレート部120Bの外側であって周壁部125に重ねられて設けられて二つの回転軸131、132の他方端側を受ける他方の軸受部136とを備える。
このように、ロータ130A、130Bを両端支持構造とし、ポンプ室の両側面に排気口122、122を有することで、最適な排気面積が確保可能になり、設計の自由度を格段に向上できる。
【0010】
124a、124bは透孔であり、回転軸131、132が挿通されるように、隔壁部123に設けられている(図4参照)。各軸受部135、136にはベアリング134が配され、各回転軸131、132を軸受けしている(図5参照)。また、一方の軸受部135にはオイルシール161が配設されている(図5参照)。
133は冷却用の通気口であり、各サイドプレート部120A、120Bの周壁部125、125に、そのサイドプレート部120A、120Bの内部に連通するように複数が設けられている。
【0011】
一方の軸受部135の外側において二つの回転軸131、132の一方端側に固定された歯車137、137同士が噛合され(図5参照)、他方の軸受部136の外側において二つの回転軸131、132のうちの一の他方端側131aに回転駆動装置の一例である電動モータ140の回転シャフト141が接続されている(図6参照)。150はカップリングであり、一方の回転軸131の他方端側131aと回転シャフト141を連結している。151は冷却ファンであり、カップリング150に固定されている。また、160はオイルバスであり、二つの歯車137、137用の潤滑油が封入されている。
【0012】
次に、図7及び図8に示すクローポンプについて、対照技術例として以下に説明する。
210はシリンダであり、このシリンダ210内には、反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸221、222が平行に配されている。そして、その二つの回転軸221、222の片持ちに保持された自由端側のそれぞれに一体的に固定されて、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータ220A、220Bが、シリンダ210内に配されている。
【0013】
このシリンダ210は、シリンダの周壁部212と、シリンダ210の一方の端面壁を構成する部位である一方のサイドプレート部211と、シリンダ210の他方の端面壁を構成する部位である他方のサイドプレート部213と、シリンダ210内の気体が圧縮されないポンプ室の部分に連通する吸気口214(図8参照)と、一方のサイドプレート部211にシリンダ210内の気体が圧縮されるポンプ室の部分に開口するように設けられた排気口215とを備えている。
【0014】
二つの回転軸221、222の一端側は、ベアリング234、234によって受けられるように、他方のサイドプレート部213と一方の軸受部231に亘って開口された一対の透孔に挿通されている。また、各ベアリング234は、保持板235によって一方の軸受部231に設けられたベアリングの取付け部に装着されている。
【0015】
吸気口214は、シリンダの周壁部212に開口されて設けられている(図8参照)。これによれば、開口を十分に大きく設定でき、接続口を適切に形成し易いメリットがある。
なお、吸気口214の開口位置は、これに限定されるものではなく、一方のサイドプレート部211に設けられる場合もある。つまり、非圧縮室部であるポンプ室の部分に連通できれば、設けられる位置や形状は限定されない。
【0016】
230はギアボックスであり、このギアボックス230内に、二つの回転軸221、222のそれぞれに一体的に固定されて、相互に噛合って反対方向に同一速度で回転させる一対の歯車237、237が配されている。
また、このギアボックス230は、他方のサイドプレート部213のシリンダの周壁部212側とは反対側へ設けられ、一対の歯車237、237を内包するギアボックスの周壁部232と、ギアボックス230の一方の端面壁を構成する部位であると共に二つの回転軸221、222を受ける部位である一方の軸受部231と、ギアボックス230の他方の端面壁を構成する部位であると共に二つの回転軸221、222を受ける部位である他方の軸受部233とを備えている。
【0017】
二つの回転軸221、222の他端側は、ベアリング238、238によって受けられるように、他方の軸受部233に開口された透孔に挿入されている。また、図7に示すように、オイルシール236と、透孔を塞ぐ蓋239及びO−リング239a(図8参照)によって、ギアボックス230からのオイル洩れを防止している。
【0018】
そして、シリンダ210とギアボックス230とによって一体的に構成される構造体が、一方のサイドプレート部211とシリンダの周壁部212との間で分割されると共に、一方の軸受部231と他方の軸受部233との間で分割されることで、排気口側の端面壁部(一方のサイドプレート部211)と、中間本体部240と、ギア側の本体部250との三分割構造になっている。中間本体部240と、ギア側の本体部250とは、一方の軸受部231とギアボックスの周壁部232の間で分割されている。
【0019】
260は回転駆動装置(図7参照)であり、回転軸221と、その回転軸221から歯車237、237を介して駆動される回転軸222によって動力を伝達することで、二つのロータ220A、220Bを、回転駆動させるように設けられている。
例えば、回転駆動装置260の一例である電動モータの回転シャフトが、カップリングを介して、他方の軸受部233の外側において、回転軸221の端部221aに接続することができる(図7参照)。なお、遠心ファンを、カップリングに同軸に固定して空冷構造とすることができる。また、回転駆動装置60は、電動モータに限定されず、他の既知の駆動装置を用いることができるのは勿論である。
【0020】
252はボルトであり、図8に示すように、中間本体部240とギア側の本体部250を連結するように、複数本(図8の例では6本)が配されている。ボルト252は、ギア側の本体部250に設けられたボルト孔251に挿通され、中間本体部240に設けられた雌ネジ部に螺合するように設けられている。
256はピンであり、図8に示すように、中間本体部240とギア側の本体部250との位置合せをするように、複数本(図8の例では2本)が配されている。ピン256は、ギア側の本体部250に設けられたピン穴255(図8参照)と、中間本体部240に設けられたピン穴とに挿入されて位置合せをすることができる。
【0021】
以上に説明したクローポンプを含む二軸回転ポンプでは、性能向上のため、微小な隙間を設けて回転する回転機器の微小なクリアランスを確保するように、より高い生産精度が必要となる。生産精度を高めるためには、加工精度を高めることや、組立調整や計測調整をより精密にすることで対応される。
また、クリアランスを確保する上では、ベアリングがどのように配置され、どのような精度のものを採用するかが必要不可欠な条件となる。しかしながら、クリアランスを確保するために過度に狭い隙間のベアリングを採用すると、熱の影響や回転による負荷で、そのベアリングに必要以上の負荷がかかり、早期の破損につながる。
なお、上記の対照技術例としてのクローポンプでは、精密に機械加工された一方のサイドプレート部を含む一方の本体部(ハウジング部)に対し、精密に機械加工された他方のサイドプレート部を含む他方の本体部(ハウジング部)が、平行ピン基準で組み立てられる構造になっている。
【0022】
一軸構造の回転ポンプは、軸間距離に関する影響がないため、サイドプレート部の固定による位置調整で問題ない。しかし、二軸構造では、サイドプレート部に直接にベアリングを固定した場合、軸間距離に影響が出て、二軸のどちらかのベアリングに負荷が増大しやすい。これによれば、ベアリングの寿命が短くなり、消費エネルギーが増大する要因になる。
また、二軸構造の回転ポンプでは、各部品の加工精度を高めても、ピンの精度、相対するサイドプレート部を含むハウジング部、ベアリング及び回転軸などの各部品の精度の影響を複合的に受ける。従って、全ての寸法公差を足し合わせた精度を基準に、ベアリングの内部隙間を大きくとるか、ベアリングに負荷をかけないように本体部のクリアランス寸法を大きくし、内部クリアランスを大きくとる必要がある。
さらに、ピン合わせ位置と、本体部の軸方向寸法が伸びると、機械精度が悪くなり、内部クリアランスや本体部のクリアランス寸法を大きくとる必要がある。
このようにしてクリアランス寸法が大きくなることは、空気等の流体の洩れが多くなって、ポンプ性能が低下する要因となる。
【0023】
これに対して、一軸構造の回転軸の芯出しに関する先行技術としては、モータケースの一端面に取着して成る第1の軸受と一端面とは反対側に開口を塞ぐための端蓋に取着して成る第2の軸受とにモータ軸を挿通して成る小型モータにおいて、第2の軸受を圧入して成る軸受ホルダーを有し、この軸受ホルダーは端蓋の央孔内に嵌合して滑り抵抗性で回転可能であって、モータ組立後の運転中、軸受ホルダーを回転調節して給電電流が最小となる位置で軸受ホルダーの一部を端蓋に対してスポット固着する小型モータ及びその製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
これによれば、一軸構造の回転軸について、軸受の偏芯又は傾き姿勢による摺動損のバラツキを軽減でき歩留まりが向上する効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2005−117770号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
二軸回転ポンプ及びその製造方法に関して解決しようとする問題点は、対照技術例のように平行ピン基準で組み立てられる構造になっている場合など、一軸回転ポンプの場合とは違って多くの部品の公差が加算されて精度が低下しやすいことにある。これによれば、ロータ同士の間やロータとシリンダ内面との間のクリアランスを大きくする必要があり、ポンプ性能を低下させることになる。
そこで本発明の目的は、二軸の軸心の相対的な芯出し精度を向上させ、ロータ同士の間やロータとシリンダ内面との間のクリアランスを適切に小さく抑えてポンプ性能を向上できる二軸回転ポンプ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかる二軸回転ポンプの一形態によれば、二つのロータ同士が微小なクリアランスを保って非接触に回転されると共に前記二つのロータがシリンダの内面にも微小なクリアランスを保って非接触に回転されるように、前記ロータがそれぞれ設けられた二つの回転軸の一端側を受ける一方の軸受側壁部を有する一方のハウジング部と、前記二つの回転軸の他端側を受ける前記一方のハウジング部とは別部品で設けられた他方の軸受側壁部を有する他方のハウジング部とを備え、一方の回転軸から他方の回転軸へ一対の歯車によって反対方向へ同一速度で回転させるように動力を伝達する二軸回転ポンプにおいて、動力が入力される側の軸受側壁部である前記一方の軸受側壁部が、動力が入力される側の一方の回転軸の一端側を受けるベアリングが固定されたベアリングホルダー部分と、軸受側壁部の基体部分とに分割されて構成され、前記ベアリングホルダー部分が前記軸受側壁部の基体部分に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されていると共に、前記一方のハウジング部が前記他方のハウジング部に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されている。
【0027】
また、本発明にかかる二軸回転ポンプの一形態によれば、両軸受側壁部の間に、前記二つのロータが配され、前記他方の軸受側壁部の外側に、動力を伝達する前記一対の歯車が配されていることを特徴とすることができる。
また、本発明にかかる二軸回転ポンプの一形態によれば、両軸受側壁部の間に、動力を伝達する前記一対の歯車が配され、前記他方の軸受側壁部の外側に、前記二つのロータが配されていることを特徴とすることができる。
【0028】
また、本発明にかかる二軸回転ポンプの一形態によれば、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成する前記シリンダと、該シリンダ内に配され、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部が形成された前記二つのロータとを備えるクローポンプであることを特徴とすることができる。
【0029】
また、本発明にかかる二軸回転ポンプの製造方法の一形態によれば、二つのロータ同士が微小なクリアランスを保って非接触に回転されると共に前記二つのロータがシリンダの内面にも微小なクリアランスを保って非接触に回転されるように、前記ロータがそれぞれ設けられた二つの回転軸の一端側を受ける一方の軸受側壁部を有する一方のハウジング部と、前記二つの回転軸の他端側を受ける前記一方のハウジング部とは別部品で設けられた他方の軸受側壁部を有する他方のハウジング部とを備え、一方の回転軸から他方の回転軸へ一対の歯車によって反対方向へ同一速度で回転させるように動力を伝達し、動力が入力される側の軸受側壁部である前記一方の軸受側壁部が、動力が入力される側の一方の回転軸の一端側を受けるベアリングが固定されたベアリングホルダー部分と、軸受側壁部の基体部分とに分割されて構成され、前記ベアリングホルダー部分が前記軸受側壁部の基体部分に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されると共に、前記一方のハウジング部が前記他方のハウジング部に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定される二軸回転ポンプについて、前記一方のハウジング部と前記他方のハウジング部との関係において位置調整可能に組み付けると共に、前記ベアリングホルダー部分と前記軸受側壁部の基体部分との関係において位置調整可能に組み付け、前記一方の回転軸に駆動力を伝達することで該一方の回転軸と前記他方の回転軸を同時に回転させ、両者が適正に回転する位置関係となった状態で、前記一方のハウジング部を前記他方のハウジング部に固定すると共に、前記ベアリングホルダー部分を前記軸受側壁部の基体部分に固定する。
また、本発明にかかる二軸回転ポンプの製造方法の一形態によれば、前記他方のハウジング部に設けられた前記シリンダの内端面に、前記ロータの端面を当接させることで規定される回転軸の軸芯を基準にして組み立てることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる二軸回転ポンプ及びその製造方法によれば、二軸の軸心の相対的な芯出し精度を向上させ、ロータ同士間やロータとシリンダ内面との間のクリアランスを適切に小さく抑えてポンプ性能を向上できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る二軸回転ポンプの形態例を示す断面図である。
【図2】図1の形態例が装着されたポンプユニットの斜視図である。
【図3】本発明に係る二軸回転ポンプの他の形態例を示す断面図である。
【図4】二軸回転ポンプの対照技術例を示す分解斜視図である。
【図5】図4の対照技術例の断面図である。
【図6】図4の対照技術例が装着されたポンプユニットの平面図である。
【図7】二軸回転ポンプの他の対照技術例を示す断面図である。
【図8】図7の対照技術例の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明にかかる二軸回転ポンプ及びその製造方法について最良の形態例を添付図面(図1〜3)に基づいて詳細に説明する。
この二軸回転ポンプは、例えば排気側を空気圧機器に接続することでコンプレッサー又はブロアとして利用でき、吸気側を空気圧機器に接続することで真空ポンプとして利用できる。また、空気に限定されず、他の気体について吸排気する回転ポンプ装置としても利用できる。
【0033】
図1に示した二軸回転ポンプの形態例は、ロータ30A、30Bが設けられた回転軸31、32を、そのロータ30A、30Bの両側で支持するものである。これに対して、図3に示した二軸回転ポンプの形態例は、ロータ70A、70Bが設けられた回転軸71、72を、そのロータ70A、70Bの片側で支持するものである。
【0034】
この図1及び図3に示したいずれの二軸回転ポンプも、以下の構成を備える。なお、図1の形態例の符号の他に、括弧内に図3の形態例の符号を記して合わせて説明する。
いずれの二軸回転ポンプも、二つのロータ30A、30B(70A、70B)同士が微小なクリアランスを保って非接触に回転されると共に二つのロータ30A、30B(70A、70B)がシリンダ25(65)の内面にも微小なクリアランスを保って非接触に回転されるように、ロータ30A、30B(70A、70B)がそれぞれ設けられた二つの回転軸31、32(71、72)の一端側を受ける一方の軸受側壁部11(51)を有する一方のハウジング部10(50)と、二つの回転軸31、32(71、72)の他端側を受ける一方のハウジング部10(50)とは別部品で設けられた他方の軸受側壁部21(61)を有する他方のハウジング部20(60)とを備え、一方の回転軸31(71)から他方の回転軸32(72)へ一対の歯車33、33(73、73)によって反対方向へ同一速度で回転させるように設けられている。
【0035】
そして、動力が入力される側の軸受側壁部である一方の軸受側壁部11(51)が、動力が入力される側の一方の回転軸31(71)の一端側を受けるベアリング15a(55a)が固定されたベアリングホルダー部分18(58)と、軸受側壁部の基体部分11a(51a)とに分割されて構成され、ベアリングホルダー部分18(58)が軸受側壁部の基体部分11a(51a)に対して二つの回転軸31、32(71、72)に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されていると共に、一方のハウジング部10(50)が他方のハウジング部20(60)に対して二つの回転軸31、32(71、72)に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されている
なお、一方の回転軸32(72)の一端側を受けるベアリング15b(55b)は、一方の軸受側壁部11(51)に直接的に固定されている。
【0036】
これらの形態例の取付構造では、一方の軸受側壁部11(51)に、ベアリングホルダー部分18(58)が所定の範囲で位置調整可能に嵌まるように、ベアリングホルダー部分18(58)より一回り大きく掘り込まれて形成された段部が形成されている。また、軸受側壁部の基体部分11a(51a)にベアリングホルダー部分18(58)を固定する手段としては、締結用のボルト19(図3では図示を省略)が用いられている。そして、他方のハウジング部20(60)に一方のハウジング部10(50)を固定する手段としては、締結用のボルト29(69)が用いられている。
【0037】
さらに、この図1及び図3に示したいずれの形態例も、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成するシリンダ25(65)と、そのシリンダ25(65)内に配され、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータ30A、30B(70A、70B)とを備えるクローポンプである。
なお、クローポンプの構造については、背景技術の欄において、対照技術例として図4〜図8に基づいて既に記載してあるため、ここでは説明を省略する。
また、本発明は、このようなクローポンプに限らず、例えばルーツポンプ、スクリューポンプなどの他の二軸回転ポンプにも適用できる。
【0038】
図1の形態例では、両軸受側壁部11、21の間に、二つのロータ30A、30Bが配され、他方の軸受側壁部21の外側に、動力を伝達する一対の歯車33、33が配されている。
これによれば、シリンダ25の両端の側壁から排気するクローポンプに、本発明の構成を好適に適用することができる。
【0039】
また、この図1の形態例では、以下のような構成を備えている。
一方のハウジング部10は、一方の軸受側壁部11、側周壁部12及びシリンダの一方の端壁部13が一体的に成型されて構成されており、これらの壁部によって囲まれた部分が、吸排気路用のスペース16になっている。
他方のハウジング部20は、他方の軸受側壁部21、側周壁部22及びシリンダの他方の端壁部23が一体的に成型されて構成されており、これらの壁部によって囲まれた部分が、吸排気路用のスペース26になっている。
一方のハウジング部10は、他方のハウジング部20に、締結用のボルト29によって固定されている。
【0040】
シリンダ25は、一方のハウジング部10の他端側に設けられたシリンダの一方の端壁部13と、他方のハウジング部20の側周壁部22及びシリンダの他方の端壁部23に囲まれて形成されている。
シリンダの内端面23aは、組立の際にロータ30A、30Bの端面を当接させて回転軸31、32の芯出しをするための基準面になる。
【0041】
他方の軸受側壁部21には、二つのベアリング24a、24bが固定されており、ベアリング24aによって一方の回転軸31の他端側が軸受けされ、ベアリング24bによって他方の回転軸32の他端側が軸受けされている。
28はオイルシールであり、オイルバス40によって形成されたギア室45からオイルが洩れないようにシールしている。
また、31aは回転軸31の連結部であり、カップリング46を介して電動モータ47(図2参照)などの駆動源側の回転シャフトに連結できるように延出されている。
図2は、以上の構成を備える二軸回転ポンプを備えたポンプユニットを図示しており、電動モータ47がモータジョイント48によって固定されている。41は吸気ケースであり、シリンダ25の両端に形成された吸気口に分岐して連通している。また、42は排気ケースであり、マフラーとしても機能している。
【0042】
図3の形態例では、両軸受側壁部51、61の間に、動力を伝達する一対の歯車73、73が配され、他方の軸受側壁部61の外側に、二つのロータ70A、70Bが配されている。
これによれば、シリンダ25の片端の側壁から排気するクローポンプに、本発明の構成を好適に適用することができる。
【0043】
また、この図3の形態例では、以下のような構成を備えている。
一方のハウジング部50は、一方の軸受側壁部51、側周壁部52が一体的に成型されて構成されている。
他方のハウジング部60は、他方の軸受側壁部61、側周壁部62が一体的に成型されて構成されている。
一方のハウジング部50は、他方のハウジング部60に、締結用のボルト69によって固定されている。
【0044】
一方の軸受側壁部51、側周壁部52及び他方の軸受側壁部61によって囲まれた部分が、ギア室56になっており、一対の歯車73、73が収納されている。
また、他方の軸受側壁部61がシリンダの一方の端壁部となっており、この他方の軸受側壁部61、側周壁部62及びサイドプレート80に囲まれて、シリンダ65が形成されている。
シリンダの内端面63は、組立の際にロータ70A、70Bの端面を当接させて回転軸71、72の芯出しをするための基準面になる。
【0045】
他方の軸受側壁部61には、二つのベアリング64a、64bが固定されており、ベアリング64aによって一方の回転軸71の他端側が軸受けされ、ベアリング64bによって他方の回転軸72の他端側が軸受けされている。
68はオイルシールであり、ギア室56からオイルが洩れないようにシールしている。
また、71aは回転軸71の連結部であり、カップリングを介して電動モータなどの駆動源側の回転シャフトに連結できるように延出されている。
【0046】
次に、以上の構成を備える二軸回転ポンプの製造方法について、以下に説明する。
図1及び図3のどちらの二軸回転ポンプについても、一方のハウジング部10(50)と他方のハウジング部20(60)との関係において位置調整可能に組み付けると共に、ベアリングホルダー部分18(58)と軸受側壁部の基体部分11a(51a)との関係において位置調整可能に組み付け、一方の回転軸31(71)に駆動力を伝達することでその一方の回転軸31(71)と他方の回転軸32(72)を同時に回転させ、両者が適正に回転する位置関係となった状態で、一方のハウジング部10(50)を他方のハウジング部20(60)に固定すると共に、ベアリングホルダー部分18(58)を軸受側壁部の基体部分11a(51a)に固定する。
このように組み立てることで、二つの回転軸31、32(71、72)の芯出しを適切に行うことができる。
【0047】
また、他方のハウジング部20(60)に設けられたシリンダ25(65)の内端面23a(63)に、ロータ30A、30B(70A、70B)の端面を当接させることで規定される回転軸31、32(71、72)の軸芯を基準にして組み立てることで、回転軸31、32(71、72)基準で適切に組み立てることができる。
【0048】
さらに、組立手順について説明する。
回転軸31、32(71、72)を片側(他端側)のベアリング24a、24b(64a、64b)へ挿入し、各部品を組み立てる。このとき、各部クリアランスを、ロータ30A、30B(70A、70B)の端面とシリンダの内端面23a(63)とを基準として調整する。
そして、相対する一方側のベアリング15a、15b(55a、55b)を取り付ける際には、一方のハウジング部10(50)が他方のハウジング部20(60)に対して位置調整可能なフリー状態にすると共に、ベアリングホルダー部分18(58)が位置調整可能なフリー状態とする。
その状態で回転軸31(71)を回転させることで、回転軸32(72)を従動回転させる。このように回転軸31、32(71、72)を回転させることによって、両回転軸31、32(71、72)がスムースに回転できる状態に、一方のハウジング部10(50)とベアリングホルダー部分18(58)を介して、ベアリング15a、15b(55a、55b)が自動的に位置調整され、芯出し作業が自動的になされる。
これにより、シャフト(回転軸31、32(71、72))基準で、ベアリング15a、15b(55a、55b)を適切に位置決めすることができ、その状態で、一方のハウジング部10(50)を他方のハウジング部20(60)に、ベアリングホルダー部分18(58)を、軸受側壁部の基体部分11a(51a)に、それぞれ前記シャフト基準のまま固定する。
【0049】
本発明によれば、二軸の軸心の相対的な芯出し精度を向上できるため、ロータ同士間やロータとシリンダ内面との間のクリアランスを適切に小さく抑えることができ、その結果としてポンプ性能を向上できる。
そして、シャフト(回転軸)基準でベアリングが配置できるため、ベアリングに偏荷重がかかり難くなり、その長寿命化が図れる。
また、ピン基準による組み立てと同等のクリアランスを確保した場合、ベアリング荷重配分が作用点より離れていてもクリアランスに与える影響が小さいため、性能を高めることができる。
さらに、対照技術例で説明したようなピンを用いる必要がなく、ピンの精度確保が不要となってその精密加工が不要となるため、製造効率を向上でき、コストを低減できる。
【0050】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0051】
10 一方のハウジング部
11 一方の軸受側壁部
11a 軸受側壁部の基体部分
12 側周壁部
13 シリンダの一方の端壁部
15a ベアリング
15b ベアリング
18 ベアリングホルダー部分
20 他方のハウジング部
21 他方の軸受側壁部
22 側周壁部
23 シリンダの他方の端壁部
23a シリンダの内端面
24a ベアリング
24b ベアリング
25 シリンダ
30A ロータ
30B ロータ
31 回転軸
32 回転軸
33 歯車
40 オイルバス
45 ギア室
50 一方のハウジング部
51 一方の軸受側壁部
51a 軸受側壁部の基体部分
52 側周壁部
55a ベアリング
55b ベアリング
56 ギア室
58 ベアリングホルダー部分
60 他方のハウジング部
61 他方の軸受側壁部
62 側周壁部
63 シリンダの内端面
64a ベアリング
64b ベアリング
65 シリンダ
70A ロータ
70B ロータ
71 回転軸
72 回転軸
73 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのロータ同士が微小なクリアランスを保って非接触に回転されると共に前記二つのロータがシリンダの内面にも微小なクリアランスを保って非接触に回転されるように、前記ロータがそれぞれ設けられた二つの回転軸の一端側を受ける一方の軸受側壁部を有する一方のハウジング部と、前記二つの回転軸の他端側を受ける前記一方のハウジング部とは別部品で設けられた他方の軸受側壁部を有する他方のハウジング部とを備え、一方の回転軸から他方の回転軸へ一対の歯車によって反対方向へ同一速度で回転させるように動力を伝達する二軸回転ポンプにおいて、
動力が入力される側の軸受側壁部である前記一方の軸受側壁部が、動力が入力される側の一方の回転軸の一端側を受けるベアリングが固定されたベアリングホルダー部分と、軸受側壁部の基体部分とに分割されて構成され、前記ベアリングホルダー部分が前記軸受側壁部の基体部分に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されていると共に、前記一方のハウジング部が前記他方のハウジング部に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されていることを特徴とする二軸回転ポンプ。
【請求項2】
両軸受側壁部の間に、前記二つのロータが配され、前記他方の軸受側壁部の外側に、動力を伝達する前記一対の歯車が配されていることを特徴とする請求項1記載の二軸回転ポンプ。
【請求項3】
両軸受側壁部の間に、動力を伝達する前記一対の歯車が配され、前記他方の軸受側壁部の外側に、前記二つのロータが配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の二軸回転ポンプ。
【請求項4】
二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成する前記シリンダと、該シリンダ内に配され、相互に非接触状態で噛合って吸入した気体を圧縮できるように鉤形の爪部が形成された前記二つのロータとを備えるクローポンプであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の二軸回転ポンプ。
【請求項5】
二つのロータ同士が微小なクリアランスを保って非接触に回転されると共に前記二つのロータがシリンダの内面にも微小なクリアランスを保って非接触に回転されるように、前記ロータがそれぞれ設けられた二つの回転軸の一端側を受ける一方の軸受側壁部を有する一方のハウジング部と、前記二つの回転軸の他端側を受ける前記一方のハウジング部とは別部品で設けられた他方の軸受側壁部を有する他方のハウジング部とを備え、一方の回転軸から他方の回転軸へ一対の歯車によって反対方向へ同一速度で回転させるように動力を伝達し、動力が入力される側の軸受側壁部である前記一方の軸受側壁部が、動力が入力される側の一方の回転軸の一端側を受けるベアリングが固定されたベアリングホルダー部分と、軸受側壁部の基体部分とに分割されて構成され、前記ベアリングホルダー部分が前記軸受側壁部の基体部分に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定されると共に、前記一方のハウジング部が前記他方のハウジング部に対して前記二つの回転軸に直交する平面内で位置調整可能な取付構造によって固定される二軸回転ポンプについて、
前記一方のハウジング部と前記他方のハウジング部との関係において位置調整可能に組み付けると共に、前記ベアリングホルダー部分と前記軸受側壁部の基体部分との関係において位置調整可能に組み付け、前記一方の回転軸に駆動力を伝達することで該一方の回転軸と前記他方の回転軸を同時に回転させ、両者が適正に回転する位置関係となった状態で、前記一方のハウジング部を前記他方のハウジング部に固定すると共に、前記ベアリングホルダー部分を前記軸受側壁部の基体部分に固定することを特徴とする二軸回転ポンプの製造方法。
【請求項6】
前記他方のハウジング部に設けられた前記シリンダの内端面に、前記ロータの端面を当接させることで規定される回転軸の軸芯を基準にして組み立てることを特徴とする請求項5記載の二軸回転ポンプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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