説明

二軸性光学異方性膜を作製するための組成物

【課題】液晶表示装置の光学補償に有用な二軸性光学異方性膜であって耐熱性が改善された光学異方性膜を容易に作製可能な組成物の提供。
【解決手段】変形したねじれらせん構造の二軸性光学異方性膜を作製するための、重合性液晶化合物とオキシムエステル化合物を含む重合開始剤とを含む液晶組成物、並びに、該液晶組成物を支持体に塗布すること、該液晶組成物をコレステリック配向させること、該液晶組成物に偏光を照射する工程を含み、前記偏光を照射する工程の前に非偏光を照射する工程を含まない光学異方性膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜用組成物、より詳しくは二軸性光学異方性膜を作製するための組成物に関する。本発明は、また、該組成物から作製した光学異方性膜、及びその製造方法、並びに前記光学異方性膜を有する液晶セル用基板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、種々のモードの液晶表示装置が提案されている。中でもVA(Vertically Aligned)モードは、広視野角モードとして全方位にわたり広いコントラスト視野角特性を有するようになり、テレビ用途として既に家庭に普及しており、更には近年30インチを超える大サイズディスプレイも登場してきた。VAモード液晶表示装置では、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトを軽減するため、種々の特性の光学異方性膜等が光学補償に利用されている。
【0003】
例えば、VAモード液晶表示装置の色視野角特性の改善に寄与する光学補償シートとして、所定の光学特性を満足する位相差板が提案され、その材料として変性ポリカーボネートが用いられている(特許文献1参照)。
また、特許文献2においては、二色性重合開始剤を含む液晶組成物を用いて変形したねじれらせん構造の二軸性フィルムを形成し、液晶表示装置の光学補償に利用することが提案されている。しかし、変形したねじれらせん構造の二軸性フィルムの製造を可能とする重合開始剤として、上記二色性重合開始剤以外の重合開始剤は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−37837号公報
【特許文献2】特表2005−513241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶表示装置の光学補償に有用な二軸性光学異方性膜であって、耐熱性が改善された光学異方性膜を容易に作製可能な組成物を提供することを課題とする。本発明は、特に、変形したねじれらせん構造の二軸性光学異方性膜であって、耐熱性が改善された光学異方性膜を容易に作製可能な組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、二軸性光学異方性膜を容易に製造可能な方法を提供することを課題とする。また、本発明は、上記組成物から作製した光学異方性膜を利用した液晶セル及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下[1]〜[12]の通りである。
[1]変形したねじれらせん構造の二軸性光学異方性膜を作製するための、重合性液晶化合物と下記一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物を含む重合開始剤とを含む液晶組成物:
【化1】

【0007】
一般式(1)中、Ar1は、ナフタレン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、チアントレン構造、フェノキサチアン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、及びモルホリノベンゼン構造からなる群から選ばれる構造を表し、Ar2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基を表し、nは、1又は2の整数を表し、nが1のとき、Mは、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下のアルカノイル基、炭素数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、複数のポリメチレン基がエーテル結合によって連結された二価の基の1つの結合手にアルコキシ基が連結された1価の基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニル基、炭素数7以上13以下のアラルキルカルボニルオキシ基、及び炭素数1以上6以下のアルキルチオ基からなる群から選ばれる基を表し、nが2のとき、Mは、炭素数1以上12以下のアルキレン基、炭素数1以上12以下のオキシアルキレンオキシ基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、−CO−O−A−O−CO−、−CO−O−(CH2CH2O)m−CO−、及び−CO−A−CO−からなる群から選ばれる2価の連結基を表し、Aは、炭素数2以上12以下のアルキレン基を表し、mは、1以上20以下の整数を表す;
【0008】
【化2】

【0009】
一般式(2)中、R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フェノキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールチオアルキル基、及びアミノ基、アミノアルキル基、または−N(R4)(OR5)基で置換されたアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R2は炭素数2〜20のアルキル基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子またはアルキルカルボニル基を表し、Ar3、Ar4はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいフリル基、置換基を有していてもよいピリジル基からなる群から選ばれる基を表す。
[2]2個以上の重合可能な基を有する重合性液晶化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする[1]に記載の液晶組成物。
[3]液晶化合物の総質量に対する前記の2個以上の重合可能な基を有する重合性液晶化合物の割合が75質量%以上である[2]に記載の液晶組成物。
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の液晶組成物に偏光を照射することにより形成される光学異方性膜。
[5]前記らせん構造のコレステリックピッチが80 nm以上230 nm以下である[4]に記載の光学異方性膜。
【0010】
[6]基板と[4]又は[5]に記載の光学異方性膜とを有するカラーフィルタ基板。
[7]基板と[4]又は[5]に記載の光学異方性膜とを有する液晶セル用基板。
[8][4]又は[5]に記載の光学異方性膜を有する液晶表示装置。
[9]VAモード液晶表示装置である[8]に記載の液晶表示装置。
[10]光学異方性膜を、液晶セル内に有する[8]又は[9]に記載の液晶表示装置。
[11]光学異方性膜が、液晶セル内の各画素に対応する各領域に配置されている[10]に記載の液晶表示装置。
[12]二軸性光学異方性膜の製造方法であって、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の液晶組成物を支持体に塗布すること、該液晶組成物をコレステリック配向させること、及びその後、該液晶組成物に偏光を照射する工程を含み、前記偏光を照射する工程の前に非偏光を照射する工程を含まないことを特徴とする光学異方性膜の製造方法。
[13]偏光を照射する工程での酸素濃度が10%以上21%以下である[12]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐熱性が改善された二軸性光学異方性膜を容易に作製可能な組成物が提供される。本発明の組成物に偏光を照射する工程を経て形成された光学異方性膜は、二軸性の光学異方性を有し、VAモード液晶表示装置などの液晶表示装置の光学補償に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学異方性膜を内部に有する液晶セルの作製方法の一例を説明するための概略図である。
【図2】本発明の液晶セル用基板を有する液晶セルの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書においては、重合体との用語は、1種類のモノマーからなる重合体のほか、2種類以上のモノマーからなるいわゆる共重合体も含む趣旨で用いられる。
【0014】
なお、本明細書において、ある官能基について「置換基を有していてもよい」という場合には、その官能基が1又は2以上の置換基を有する場合があることを示しているが、特に言及しない場合には、結合する置換基の個数、置換位置、及び種類は特に限定されない。ある官能基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。また、置換基が例示されるときは、例示される置換基がさらに同一の又は別の例示される置換基で置換されていてもよい。
【0015】
また、本明細書において、「アルキル基」という場合には、特に言及のない場合、直鎖状又は分岐状のアルキル基であればよく、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。アルキル基を含む他の基(例えばアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基等)においても同様である。
本明細書において、「アルケニル基」という場合には、特に言及のない場合、直鎖状又は分岐状のアルケニル基であればよく、炭素数2〜12のアルケニル基が好ましく、炭素数4〜8のアルケニル基がより好ましい。アルケニル基を含む他の基においても同様である。
本明細書において、「アルキニル基」という場合には、特に言及のない場合、直鎖状又は分岐状のアルキニル基であればよく、炭素数2〜12のアルキニル基が好ましく、炭素数4〜8のアルキニル基がより好ましい。
本明細書において、「シクロアルキル基」という場合には、特に言及のない場合、炭素数3〜12のシクロアルキル基が好ましく、炭素数4〜7のシクロアルキル基がより好ましい。
また、本明細書において、「ハロゲン原子」という場合にはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれでもよい。
さらに、本明細書において、「アルキレン基」という場合には、特に言及のない場合、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であればよく、炭素数2〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜8のアルキレン基がより好ましい。
【0016】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器株式会社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
【0017】
【数1】

注記:上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表し、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0018】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。
【0019】
また、Rthの符号は面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+20°傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて測定した位相差がReを超える場合を正とし、Reを下回る場合を負とする。ただし、|Rth/Re|が9以上の試料では、回転自由台座付きの偏光顕微鏡を用いて、面内の進相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した状態で、偏光板の検板を用いて決定できる試料の遅相軸がフィルム平面に平行にある場合を正とし、また遅相軸がフィルムの厚み方向にある場合を負とする。
【0020】
また、本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。更に、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。更に、Reが0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、波長550nmを指す。また、本明細書において、「可視光」とは、波長が400nm〜700nmの光のことをいう。
【0021】
1. 光学異方性膜
本発明は、二軸性光学異方性膜を容易に形成可能な液晶組成物に関する。具体的には変形したねじれらせん構造の光学異方性膜を形成可能な液晶組成物に関する。変形したねじれらせん構造の光学異方性膜とは、変形したねじれらせん構造を形成した光学異方性材料を含む光学異方性膜を意味する。ここで、光学異方性材料は通常コレステリック構造を形成できる重合性材料であればよく、このような材料として本発明においては、重合性液晶化合物と一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物を含む重合開始剤とを含む液晶組成物が用いられる。前記組成物をコレステリック配向(コレステリック配列に配向した状態をいう。)させた後、偏光を照射して重合反応させることにより光学異方性膜を形成することができる。形成される光学異方性膜は、らせん構造が変形することに由来して発生する位相差、すなわち光学的二軸性を示し、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置、の光学補償に有用である。
なお、本明細書において、「光学異方性膜」につき、支持体上に設けられている場合などにおいて「光学異方性層」ということがある。
以下、本発明の液晶組成物の成分、及び本発明の液晶組成物を用いた光学異方性膜の製造方法について説明する。
【0022】
1−1. オキシムエステル化合物
本発明の液晶組成物は、オキシムエステル化合物を重合開始剤として含む。本発明者らは、後述の実施例で示すように、下記の一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物を含む液晶組成物が偏光照射によって好ましい光学的二軸性を示す光学異方性膜を形成することを見出した。下記の一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物は通常の空気雰囲気下において高い重合反応性を示すため、耐熱性が改善された光学異方性膜を形成することができる。
【0023】
【化3】

【0024】
一般式(1)中、Ar1は、ナフタレン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、チアントレン構造、フェノキサチアン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、及びモルホリノベンゼン構造からなる群から選ばれる構造を表し、Ar2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基を表し、nは、1又は2の整数を表し、nが1のとき、Mは、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下のアルカノイル基、炭素数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、複数のポリメチレン基がエーテル結合によって連結された二価の基の1つの結合手にアルコキシ基が連結された1価の基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニル基、炭素数7以上13以下のアラルキルカルボニルオキシ基、及び炭素数1以上6以下のアルキルチオ基からなる群から選ばれる基を表し、nが2のとき、Mは、炭素数1以上12以下のアルキレン基、炭素数1以上12以下のオキシアルキレンオキシ基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、−CO−O−A−O−CO−、−CO−O−(CH2CH2O)m−CO−、及び−CO−A−CO−からなる群から選ばれる2価の連結基を表し、Aは、炭素数2以上12以下のアルキレン基を表し、mは、1以上20以下の整数を表す;
【0025】
【化4】

【0026】
一般式(2)中、R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フェノキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールチオアルキル基、及びアミノ基、アミノアルキル基、または−N(R4)(OR5)基で置換されたアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R2は炭素数2〜20のアルキル基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子またはアルキルカルボニル基を表し、Ar3、Ar4はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいフリル基、置換基を有していてもよいピリジル基からなる群から選ばれる基を表す。
【0027】
Ar1は、ナフタレン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、チアントレン構造、フェノキサチアン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、カルバゾール構造、及びモルホリノベンゼン構造からなる群から選ばれる構造を表す。Ar1としては、ベンゾフェノン構造、ジフェニルチオエーテル構造、カルバゾール構造がより好ましく、ジフェニルチオエーテル構造が特に好ましい。これらの構造は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等の置換基を有していてもよい。
Ar2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基を表す。Ar2としては、アルキル基、フェニル基が特に好ましく、フェニル基がさらに好ましい。これらの基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
nは、1又は2の整数を表す。
nが1のとき、Mは、メチル基、エチル基等の炭素数1以上20以下のアルキル基、シクロプロパン基、シクロヘキサン基等の炭素数3以上8以下のシクロアルキル基、アセチルオキシ基、プロピノイルオキシ等の炭素数2以上20以下のアルカノイル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル等の炭素数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、複数のポリメチレン基がエーテル結合によって連結された二価の基の1つの結合手にアルコキシ基が連結された1価の基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニル基、炭素数7以上13以下のアラルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数1以上6以下のアルキルチオ基を表す。これらの中でも、Mは、炭素数1以上20以下のアルキル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0029】
nが2のとき、Mは、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1以上12以下のアルキレン基、テトラメチレン基等の炭素数3以上12以下のポリメチレン基、オキシプロピレンオキシ基、オキシブチルオキシ基等の炭素数1以上12以下のオキシアルキレンオキシ基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、−CO−O−A−O−CO−、−CO−O−(CH2CH2O)m−CO−、又は−CO−A−CO−を表す。ここで、Aは、炭素数2以上12以下のアルキレン基を表し、mは、1以上20以下の整数を表す。これらの中でも、Mは炭素数1以上6以下のアルキレン基、炭素数1以上6以下のポリメチレン基、又はシクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0030】
一般式(2)中、R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フェノキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールチオアルキル基、又は、アミノ基、アミノアルキル基もしくは−N(R4)(OR5)基で置換されたアルキル基を表す。これらのうち、R1としてはアルキル基、アルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
2で表されるアルキル基は、炭素数2〜15であることがより好ましい。R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子またはアルキルカルボニル基を表す。
【0031】
Ar3は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいフリル基、置換基を有していてもよいピリジル基を表す。Ar3としては、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいチエニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基がさらに好ましい。置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0032】
Ar4は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいフリル基、置換基を有していてもよいピリジル基を表す。Ar4としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいチエニル基がより好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基がさらに好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基が挙げられる。
【0033】
オキシムエステル化合物としては、例えば、J.C.S.PerkinII(1979)1653−1660、J.C.S.PerkinII(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232に記載の化合物、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、及び、特開2006−342166号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0034】
また、市販のオキシムエステル化合物としては、チバ・ジャパン社製からイルガキュアOXE−01(1−(4−フェニルチオフェニル)−1,2−オクタンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム)、及びイルガキュアOXE−02(1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン−1−(O−アセチルオキシム))の商品名で入手可能な重合開始剤が好適に挙げられる。
【0035】
1−2.液晶化合物
本発明の液晶組成物は、少なくとも1種の重合性液晶化合物を含有する。一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物とに分類できるが、本発明では棒状液晶化合物を用いることが好ましい。液晶化合物は2種類以上の液晶化合物の混合物でもよいが、優れた耐熱性を持たせるためには、1液晶分子中の重合性基が2個以上ある重合性液晶化合物を少なくとも1種含むことがさらに好ましい。重合性基が2個以上ある重合性液晶化合物中の2個以上の重合性基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
重合性基の例を以下に示す。
【0036】
【化5】

【0037】
上記重合性基としてはアクリロイル基が特に好ましい。
本発明の液晶組成物において、含まれる液晶化合物の総質量に対する2個以上の重合性基を有する重合性液晶化合物の割合は、75質量%〜100質量%であることが好ましく、80質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0038】
なお、本発明に用いる液晶化合物は、光学活性化合物の存在下で、コレステリック配向可能な液晶化合物であればよい。このとき、液晶化合物そのものが、光学活性体である必要はなく、アキラルな液晶化合物を利用することができる。光学異方性膜の製造過程において、光学特性発現の制御が容易である等の観点から、本発明では、アキラルな液晶化合物を利用することが好ましい。同様の観点から、本発明では、光異性化基や光2量化基などの官能基を含まない液晶化合物を利用することが好ましい。
【0039】
低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。上記高分子液晶化合物は、低分子の重合性基を有する棒状液晶化合物が重合した高分子化合物であればよい。
【0040】
棒状液晶化合物としては、例えば、特開2009−69793号公報の段落[0065]から段落[0071]で説明される棒状液晶化合物を用いることができる。
以下に、棒状液晶化合物の例を示す。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
上記例示化合物のうち、I−1,I−2,I−3,I−10,I−11,又はI−12が好ましく、I−2が特に好ましい。
【0048】
1−3.カイラル剤
コレステリック配向を形成させるために、前記液晶組成物にカイラル剤を添加することが好ましい。得られたコレステリック配向のコレステリックピッチは、カイラル剤の種類と添加量で調節することができる。コレステリックピッチを小さくするためには、できる限りヘリカルツイスティングパワーの大きいカイラル剤を選択し、カイラル剤の添加量を増やす必要がある。カイラル剤を大量に添加できるようにするためには、カイラル剤が少なくとも1つの重合性基を有していることが好ましい。重合性基としては、エチレン不飽和基が好ましく、特にアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基が好ましい。具体的には、EP1388538 A1 page 16、17に記載のカイラル剤を好ましく用いることができる。
【0049】
1−4. 液晶組成物の調製
本発明の液晶組成物において、前記の一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物の含有量は、液晶組成物の全質量(塗布液等、溶媒を含む態様では、溶媒を除いた固形分の全質量)に対して、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜8質量%であることがより好ましい。
【0050】
前記液晶化合物の含有量は、液晶組成物の全質量(塗布液等、溶媒を含む態様では、溶媒を除いた固形分の全質量)に対して、60質量%〜95質量%であることが好ましく、70質量%〜90質量%であることがより好ましい。
【0051】
前記カイラル剤の含有量は、液晶組成物の全質量(塗布液等、溶媒を含む態様では、溶媒を除いた固形分の全質量)に対して、5質量%〜40質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。2種以上のカイラル剤を利用する場合は、合計が前記範囲であることが好ましい。前記カイラル剤の含有量が、10質量%未満であると、反射波長が可視域となってしまい、光学異方性膜が着色する場合がある。また、前記カイラル剤の含有量が、30質量%を超えると、コレステリック配向状態とならない場合がある。
【0052】
1−5. その他添加剤
本発明の液晶組成物は、前記の一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物、前記液晶化合物、および任意で含まれる前記カイラル剤以外に、配向剤、前記の一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物以外の重合性開始剤等の添加剤を含有していてもよい。
配向剤:
本発明の液晶組成物は、液晶化合物の配向性改善のために、配向剤を含有していてもよい。例えば、特開2007−121986号公報の[0068]〜[0072]に記載の一般式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも一種を含有させることで、液晶化合物を実質的に水平配向させることができ、前記カイラル剤と併用することにより、安定なコレステリック配向を得ることができる。
【0053】
配向剤の添加量は、液晶組成物の全質量(塗布液等、溶媒を含む態様では、溶媒を除いた固形分の全質量)に対して、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.01質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.02質量%〜1質量%であることが特に好ましい。配向剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
重合開始剤:
本発明の液晶組成物は、一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物以外の化合物を重合開始剤として含んでいてもよい。一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物は光ラジカル重合開始剤として機能するが、例えば重合反応の調節のために、その他の開始剤や増感剤を含んでいてもよい。
例えば、本発明の液晶組成物は、光によりカチオン種を発生する光カチオン開始剤を含んでいてもよい。採用する光カチオン開始剤としては、一般的なスルホニウム塩系光カチオン開始剤、あるいはヨードニウム塩系光カチオン発生剤を用いることができる。具体的には、市販の光カチオン開始剤、サイキュラーUVI−6990(ダウケミカル製)、サイキュラーUVI−6974(ダウケミカル製)、アデカオプトマー SP−150(アデカ製)、アデカオプトマー SP−152(アデカ製)、アデカオプトマー SP−170(アデカ製)、イルガキュア250(チバ・ジャパン製)等を用いることができる。
【0055】
例えば、本発明の液晶組成物は、熱により酸を発生する熱酸発生剤を含んでいてもよい。熱酸発生剤とは、熱により酸が発生する化合物であり、通常、熱分解点が100℃〜2300℃、好ましくは150℃〜250℃の範囲の化合物であり、例えば、加熱によりスルホン酸、カルボン酸、ジスルホニルイミドなどの低求核性の酸を発生する化合物である。熱酸発生剤は保存経時中や液晶組成物を塗布した後の乾燥工程や熟成工程では分解せず、コレステリック配向を変形後の加熱硬化工程で速やかに分解するものが好ましい。従って熱分解点としては100℃〜300℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましく、150℃〜250℃が更に好ましい。
熱酸発生剤としては、露光により酸を発生する光酸発生剤の適用も可能である。例えばN−ヒドロキシイミドスルホネート化合物やベンゼンスルホネート等を挙げることができる。
具体的には、市販の熱酸発生剤、NB−201(みどり化学)、SI−101(みどり化学)、PI−105(みどり化学)等を用いることができる。
【0056】
本発明の液晶組成物は、増感剤として、光増感剤を含んでいてもよい。具体的には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラー氏ケトン、チオキサントン等を挙げることができる。
【0057】
1−6. 溶媒
本発明の液晶組成物は、塗布液として調製することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。該有機溶媒としては、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド);スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド);ヘテロ環化合物(例えばピリジン);炭化水素(例えばベンゼン、ヘキサン);アルキルハライド(例えばクロロホルム、ジクロロメタン);エステル(例えば酢酸メチル、酢酸ブチル);ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン);エーテル(例えばテトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン);1,4−ブタンジオールジアセテートなどが含まれる。これらの中でも、アルキルハライド及びケトンが特に好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0058】
2. 光学異方性膜の製造方法
本発明の液晶組成物をガラス基板等の支持体表面に塗布し、液晶組成物内の液晶分子をコレステリック配向させた後、偏光を照射することにより二軸性光学異方性膜を形成することができる。
前記液晶組成物の塗布は、従来公知の種々の方法で行うことができる。後述する様に、光学異方性膜を液晶セル内に配置して、各画素に対応する領域ごとに形成する場合は、インクジェット方式を利用して、各画素内の支持体表面に塗布することが好ましい。
【0059】
液晶分子をコレステリック配向させるためには、前記液晶組成物を表面に塗布した後、塗膜を乾燥させればよい。溶媒の蒸発とともに、カイラル剤の捩れ力により、例えば、併存するアキラルな液晶化合物の分子がコレステリック配向する。所望により、乾燥後、液晶相温度範囲で1〜5分間加熱熟成してもよい。
【0060】
本発明の液晶組成物を、上記のように塗布、乾燥した後、偏光照射することにより、面内のレターデーションReを有する光学異方性膜を形成することができる。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスと同時に行ってもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射を行ってもよい。大きなレターデーションを得るためには偏光照射のみ、もしくは先に偏光照射することが好ましい。偏光照射には紫外線偏光照射が好ましく、特に365nmにピークを持つ偏光照射が好ましい。
【0061】
偏光照射の照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがより好ましい。照度は20mW/cm2〜1000mW/cm2であることが好ましく、50mW/cm2〜500mW/cm2であることがより好ましく、100mW/cm2〜350mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては300nm〜450nmにピークを有することが好ましく、350nm〜410nmにピークを有することがより好ましい。
【0062】
重合反応の調節のために、偏光照射を行う際の酸素濃度を調節してもよい。酸素濃度を調節するためには、窒素パージなどの手段を取ることができる。酸素濃度としては、10%以上21%以下が好ましい。作業上の安全性を考慮すると、18%以上21%以下がより好ましい。
【0063】
偏光照射後に加熱すると、架橋がより進行し、より大きな面内レターデーションを得ることができる。
前記加熱温度は50℃〜250℃であることが好ましく、50℃〜200℃がより好ましく、70℃〜170℃が特に好ましい。
【0064】
本発明の方法では、偏光を照射する工程の前に、非偏光を照射する工程を含まない。これにより、面内位相差を十分に発現させることができる。なお、偏光を照射した後に、耐熱性の改善のために、さらに光照射を実施するのが好ましい。偏光照射を実施した後の、耐熱性改善のための光照射は、偏光照射であっても、非偏光照射であってもよい。硬化のための光照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがよりに好ましい。照度は20mW/cm2〜1000mW/cm2であることが好ましく、50mW/cm2〜500mW/cm2であることがより好ましく、100mW/cm2〜350mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300nm〜450nmにピークを有することが好ましく、350nm〜410nmにピークを有することがより好ましい。非偏光照射の場合は200nm〜450nmにピークを有することが好ましく、250nm〜410nmにピークを有することがより好ましい。
【0065】
本発明の光学異方性膜の厚さは、0.1μm〜20μmであることが好ましく、0.5μm〜10μmであることがより好ましい。
【0066】
3. 光学異方性膜の光学特性
本発明の液晶組成物から形成した光学異方性膜は、面内レターデーションが発現しているので、例えば二軸性フィルムに要求される特性を満足し得る。
本発明の液晶組成物から形成した光学異方性膜は、二軸性を有するため、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に適する。二軸性フィルムは、一般的には、nx、ny及びnzが全て異なるものと理解されている。一例としては、nx>ny>nzを満足する光学特性を示すものが挙げられる。本発明の光学異方性膜は、Re(550)が20〜300nm程度であり、Nz値(ただし、Nz=Rth(550)/Re(550)+0.5)が、1.1〜7.0程度の特性を示す二軸性フィルムとして機能し得る。即ち、本発明の光学異方性膜は、従来用いられている二軸性フィルムの代替として、液晶表示装置の光学補償に利用することができ、特にVAモードの液晶表示装置の光学補償に用いるのに適する。本発明の光学異方性膜を二軸性フィルムとして(例えば、VAモードの液晶表示装置の光学補償に)利用する場合は、Nzは、1.5〜8.0であることが好ましく、2.0〜7.0であることがより好ましい。
また、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)は、20nm〜300nmであることが好ましく、20nm〜200nmがより好ましく、20nm〜100nmが特に好ましい。なお、Reは、値が大きい方が、二軸性が高いことを表すパラメーターである。一方、Nzファクターは値が小さい方が、二軸性が高いことを表すパラメーターである。VAモードの液晶表示装置の補償に必要な二軸性光学異方性膜のRe(550)は約50nmであり、適したReとNzファクターから外れると、視野角依存性などが低下することがある。
【0067】
本発明の光学異方性膜は、反射波長400nm未満、及び380〜780nmの波長の光に対して実質的に透明であることが好ましい。光学異方性膜の透明性は、用いる液晶材料の屈折率とらせんのピッチとで定まる。らせんのピッチは、カイラル剤の添加量に比例し、多く添加するとピッチも拡がることになる。反射波長は、液晶材料の屈折率とらせんのピッチとの積であるので、液晶材料の屈折率に従ってカイラル剤の添加量を調整することにより、反射波長の値を決定することができる。
【0068】
前記光学異方性層のコレステリックピッチは、230 nm以下80 nm以上であることが好ましく、210 nm以下80 nm以上がさらに好ましく、200 nm以下80 nm以上が最も好ましい。
コレステリックピッチが230nm 以上になると、365 nmおよび405nm の波長の光を含むUV照射光の一部が選択反射され、光学異方性層の硬化不十分および二軸性の低下が誘起される可能性がある。さらにコレステリックピッチが長くなると、可視光の選択反射領域になって光学異方性層が着色し、透明な光学異方性層が得られなくなる可能性がある。また、コレステリックピッチが80nm 以下となると光学異方性層において析出物が生じやすくなるため作製が困難となる可能性がある。さらに、コレステリックピッチが長くなると、黒表示における光漏れが大きくなり、結果としてコントラストが悪化する可能性もある。
【0069】
コレステリックピッチはカイラル剤の種類と添加量で調節することができる、コレステリックピッチを小さくするためには、できる限りヘリカルツイスティングパワー(HTP)の大きいカイラル剤を選択すればよく、及び/又は、カイラル剤添加量を増やせばよい。カイラル剤の例としては、特表2005-513241号公報に記載されているキラル性化合物が挙げられる。
【0070】
4. 光学異方性膜の用途
4−1. インセル光学異方性膜
本発明の液晶組成物を用いることにより、配向膜を利用しなくても、偏光照射により、所望の光学特性を発現できるので、光学異方性膜を微細な領域ごとの形成に有利であり、特に、液晶セル内の各画素に対応した領域への形成に有利である。
液晶セル内に形成する態様では、前記光学異方性膜の光学特性は、R光、G光及びB光が入射した際の視野角補償に最適な光学特性にそれぞれ調整されていることが好ましい。即ち、カラーフィルタ層のR層に対応する領域に形成する光学異方性膜は、その光学特性が、R光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、G層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、G光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整され、かつB層に対応する領域に形成する光学異方性膜の光学特性は、B光が入射した際の視野角補償に対して最適に調整されていることが好ましい。光学異方性膜の光学特性は、例えば、液晶化合物及びカイラル剤の種類や、配向制御剤の種類又はその添加量、膜厚、及び偏光照射条件のいずれかによって好ましい範囲に調整することができる。
また、光学異方性膜そのものをカラーフィルタとしても機能させてもよい。その場合は、光学異方性膜形成用の組成物中に、R色、G色及びB色それぞれの顔料等を添加する。
【0071】
本発明の液晶組成物を用いて、光学異方性膜を液晶セル基板の表面上に、各画素に対応する領域ごとに形成する方法の一例として、インクジェット方式を利用する方法が挙げられる。より具体的には、前記液晶組成物を含有する流体を、ブラックマトリクスによって隔てられた領域内にインクジェット方式で塗布し、その後、偏光照射によって所望の光学特性を発現させた後、所望により加熱熟成して作製することができる。
【0072】
以下に、光学異方性膜を内部に有する液晶セルの作製方法の一例を、図1を参照して詳細に説明する。
ガラス等からなる透明基板11上に、例えば、ネガ型ブラックマトリクスレジスト材料を使用し、フォトリソ法を用いてドットパターンのブラックマトリクス12(隔壁)を形成し、隔壁12によって隔てられた複数の微細領域aを形成する(図1(a))。なお、ブラックマトリクス12の形成においては、ブラックマトリクスの形成材料及び形成プロセスについては特に限定はなく、レジスト材料によるフォトリソ法を利用する方法以外の方法であっても、ブラックマトリクスパターンが形成できれば問題ない。ブラックマトリックス12のパターンは、ドットパターンに限定されるものではなく、形成するカラーフィルタの配列については特に制限はなく、ドット配列、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等いずれであってもよい。
【0073】
ブラックマトリックス12は、パターン形成後にF原子を含むガス(CF4等)でプラズマ処理され、その表面が撥インク化処理されるのが好ましい。ブラックマトリクス12の撥インク化処理は、上記プラズマ処理以外に、ブラックマトリクス材料中に撥インク剤を含有させてもよいし、ブラックマトリックスを、ガラス基板11に対して撥インク性を示す材料から形成してもよい。
【0074】
次に、所望により撥インク化処理したブラックマトリクス12で隔てられた微細領域aへ、前記液晶組成物を含有する流体13’を、インクジェット装置を用いて吐出して、微細領域a内に前記流体からなる層(図1(b))を形成する。前記溶液の吐出が完了した後、加熱熟成によりコレステリック配向させ、偏光照射することによって、らせん構造を歪ませて、面内異方性を発現し、光学異方性膜13を形成する(図1(c))。偏光照射前、偏光照射中、又は偏光照射後に所望により加熱してもよく、その場合は、加熱装置を使用してもよい。
【0075】
このようにして形成された1層目の光学異方性膜13の上に、カラーフィルタ用インク液14’によって2回目のインク吐出を行い(図1(d))、これを乾燥、及び所望により露光等して、2層目のカラーフィルタ層14が形成される((e))。
【0076】
光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14を形成する際のインク等の射出条件については特に制限されないが、光学異方性膜形成用の流体やカラーフィルタ層形成用のインクの粘度が高い場合は、室温あるいは加熱下(例えば、20℃〜70℃)において、インク粘度を下げて射出することが射出安定性の点で好ましい。インク等の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク等の温度を出来るだけ一定に保つことが好ましい。
【0077】
前記インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)は、特に制限されず、公知の種々のものを使用することができる。コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号公報に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号公報、欧州特許A278,590号公報などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドは組成物の温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は5mPa・s〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるよう組成物温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1kHz〜500kHzで稼動することが好ましい。
【0078】
なお、光学異方性膜13及びカラーフィルタ層14は、その形成順序が入れ替わっていてもよく、即ち、カラーフィルタ層14の上に光学異方性膜13が積層された構成であってもよい。かかる態様は、前記製造方法例において、光学異方性膜13を形成する工程とカラーフィルタ層14を形成する工程の順番を入れ替えることにより作製することができる。
また、カラーフィルタ形成用インクに前記液晶組成物を混合して用いてもよい。
【0079】
光学異方性膜13は、同一種の溶液等の流体を用いて形成されていてもよいし、その上に形成されるカラーフィルタ層14の色相に応じて、それぞれ最適な光学異方性を発現するように、互いに異なる材料を含む及び/又は配合量が互いに異なる流体を用いて形成されていてもよい。光学異方性膜13の形成時において、カラーフィルタ層の色相に応じて異なる溶液等を用いる場合は、それぞれの溶液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタ層14の形成時においても、例えば、R層、G層、及びB層それぞれの形成用のインク液を全て吐出した後、同時に乾燥を行ってもよいし、1種ずつ吐出及び乾燥のプロセスを行ってもよい。また、カラーフィルタの色も、赤、緑、青の3色に限定される必要はなく、多原色のカラーフィルタであってもよい。
【0080】
このようにして、第一の基板の各画素に相当する、ブラックマトリックス12で隔てられた領域毎に、光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成した後、この第1の基板と、第2の基板とを貼り合わせる。貼り合わせる前に、カラーフィルタ層14の上に、透明電極層及び/又は配向層を形成してもよい。例えば、特開平11−248921号公報、特許第3255107号公報に記載のように、カラーフィルタを形成する着色樹脂組成物を重ねることで土台を形成し、その上に透明電極を形成し、更に必要に応じて分割配向用の突起を重ねることでスペーサを形成することが、コストダウンの観点で好ましい。
【0081】
第1の基板と第2の基板の対向面間の空壁に、液晶材料を注入して液晶層を形成して、液晶セルを作製することができる。第一の基板は、前記光学異方性膜とカラーフィルタ層が形成された面を内側にして、即ち、対向面にして配置するのが好ましい。その後、双方の基板の外側表面に、それぞれ偏光板、光学フィルム等を貼り付けて、液晶表示装置を作製することができる。
【0082】
前記製造方法の例では、光学異方性膜形成用の流体、及びカラーフィルタ層形成用のインク液を所定の位置に配置するにあたって、隔壁であるブラックマトリクスを形成した後、インクジェット方式を利用しているので、第一の基板上の所定の領域に正確に光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成することができる。従って、構造を複雑化することなく、少ない工程数で製造することができる。
【0083】
なお、前記方法では、インクジェット法によるインク吐出を利用して、各微細領域に光学異方性膜及びカラーフィルタ層を形成する例を説明したが、インクジェット法以外の、例えば印刷法等を利用して形成してもよい。
【0084】
4−2. 液晶セル
本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜を含む液晶セル用基板の一態様は、基板と、液晶セルの視野角補償のための光学異方性膜と、カラーフィルタ層とを有し、該光学異方性膜が、その下又は上に配置されたカラーフィルタ層の色相に応じて(例えば、R、G、Bの色ごとに)、液晶セルの視野角補償に最適な光学特性を有する液晶セル用基板である。基板の材料としては透明であれば特に限定はなく、例えば、金属性支持体、金属張り合わせ支持体、ガラス、セラミック、合成樹脂フィルム等を使用することができる。複屈折が小さいことが好ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が好ましい。その他、前記基板の表面には、液晶材料に対して配向規制能を有する配向膜、及び透明電極層が形成されていてもよい。
【0085】
液晶セル用基板は、前記光学異方性膜が形成された側と反対外の表面(液晶表示装置内に組み込まれるときは、液晶セル外として配置される側の表面)に、更に第2の光学異方性膜を有していてもよい。第2の光学異方性膜は、液晶セル内に配置される本発明の光学異方性膜とともに、液晶セルの光学補償に寄与する。第二の光学異方性膜の光学特性は、用いられる液晶表示装置のモードによって好ましい範囲が異なる。例えば、VAモード用の液晶セル基板とする場合は、基板の内側表面に、本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜を配置し、基板外側表面に第2の光学異方性膜を配置してもよい。
【0086】
図2に上記液晶セル基板を有する液晶セルの一例の概略断面図を示す。
図2(a)に示す液晶セル用基板は、透明基板21上に、隔壁としてブラックマトリクス22が形成され、隔壁で隔てられた微細領域内にインクジェット方式により吐出して形成された、パターン状のカラーフィルタ層23及び光学異方性膜27が形成されている。更にその上に透明電極層25と配向層26とを有する。図2には、R、G、Bのカラーフィルタ層23を形成した態様を示したが、R、G、B、W(白)の層からなるカラーフィルタ層を形成してもよい。光学異方性膜27はr、g、b領域に分割され、R、G、Bそれぞれのフィルタ層23の色相に対して、それぞれ最適な位相差特性を有している。
【0087】
更に、図2(b)のように光学異方性膜27とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性膜24を液晶セル基板の外側表面に配置してもよい。第2の光学異方性膜24をセル内の光学異方性膜27と同じカラーフィルタ側基板側に配置してもよいし、図は省略するが対向基板側に配置してもよい。対向基板側には一般にTFTアレイなどの駆動用電極が配置されていることが多く、対向基板上であればどの位置に配置されてもよいが、TFTを有するアクティブ駆動型の場合、光学異方性膜の耐熱性からシリコン層よりも上であることが好ましい。
【0088】
4−3. 液晶表示装置
液晶表示装置においては、本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜は、上記した通り、液晶セル内に配置してもよく、又は、液晶セルの外側であって、液晶セルと偏光子との間に配置してもよい。また、本発明の光学異方性膜とともに光学補償に寄与する第2の光学異方性膜を更に有していてもよい。
図3は液晶表示装置の一例の概略断面図である。
図3(a)及び(b)の例はそれぞれ、図2(a)及び(b)の基板を上側基板として用い、TFT32付の透明電極層25及びその上に配向層26を有するガラス基板21を対向基板として配置し、その間に液晶31を挟んだ液晶セル37を有する液晶表示装置である。液晶セル37の両側には、セルロースアセテート(TAC)フィルム等からなる保護層34及び35に挟まれた偏光層33からなる偏光板36が配置されている。液晶セル側の保護層35は光学補償シートとしての光学特性を満足するTACフィルム等の高分子フィルムであってもよいし、保護層34と同一の高分子フィルムからなっていてもよい。図には示さないが、反射型液晶表示装置の態様では偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セルの背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を設置する。もちろんフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。更に、表示装置の1画素内に、透過部と反射部を設けた半透過型も可能である。本液晶表示装置の表示モードは特に制限がなく、全ての透過型、半透過型、及び反射型液晶表示装置に用いることが可能である。中でも色視野角特性改良が望まれるVAモード液晶表示装置に対して、本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜は効果を発揮する。
【0089】
本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜が好ましく用いられる液晶表示装置の一例は、VAモード液晶表示装置である。VAモード液晶表示装置には、負のC−プレート及びA−プレートを光学補償に利用する方式と、二軸性フィルムを一枚光学補償に利用する方式が知られている。本発明の光学異方性膜は、二軸性フィルムとして利用することができる。
【0090】
上記では、VAモード液晶表示装置の例を説明したが、本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜は、他のモードの液晶表示装置の光学補償にも利用することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモード又はFLCモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平10−54982号公報に記載がある。更に、OCBモード又はHANモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、米国特許第5805253号明細書及び国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。更にまた、STNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特許第2866372号公報に記載がある。これらの光学補償シートの代替として利用することができる。
更にエレクトロルミネセンス装置やフィールドエミッション表示装置などの反射防止の目的にも偏光板と組み合わせて、本発明の光学異方性膜を使用する効果がある。
【0091】
5.光学異方性膜の耐熱性
本発明の液晶組成物から形成された光学異方性膜は、上記したように液晶セル内に形成するインセル型の光学補償膜としても用いられる。インセル型として用いられる場合、上述のように光学異方性膜を形成した後に、カラーフィルタ層、透明電極層、配向層等が形成される。これらの各層が形成される工程において、加熱焼成工程が繰り返されることになる。光学異方性膜としては、これらの繰り返される加熱焼成工程を経た後に、所望の光学特性を示していることが求められる。加熱焼成工程での変動(ほとんどの場合、面内レターデーションReの値が減少する)を見越して予め光学異方性膜の特性値を高めにしておくことも可能ではあるが、加熱焼成工程としては様々な条件が想定されるため、最終的に所望の特性値に収めることはほとんど困難である。つまり、光学異方性膜としては、加熱焼成工程を経ても光学特性がほとんど変動しない、耐熱性の高い膜であることが望ましい。
耐熱性としては、強制条件試験(230℃で3時間の加熱)に対し、面内レターデーションRe保持率として、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。ここで、Re保持率とは、加熱処理前のRe(550)に対する、加熱処理後のRe(550)の割合を示す。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0093】
(光学異方性層用塗布液C−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−1として用いた。
【0094】
──────────────────────────────────――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
15.78
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
2.99
光重合開始剤(IRGACURE OXE−01,チバ・ジャパン製)1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────―
【0095】
【化12】

【0096】
【化13】

【0097】
W−1:TetrahedronLett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
【0098】
(光学異方性層用塗布液C−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−2として用いた。
【0099】
──────────────────────────────────――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
14.20
棒状液晶化合物(LC−1) 1.58
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
2.99
光重合開始剤(IRGACURE OXE−01,チバ・ジャパン製)1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────―
【0100】
【化14】

【0101】
LC−1:EP1174411B1号に記載の方法により合成した4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸と、4−プロピルシクロヘキシルフェノール(関東化学製)を縮合して合成した。
【0102】
(光学異方性層用塗布液C−3〜5の調製)
棒状液晶化合物の組成比を下表1に記載した通りに代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−3〜5を得た。
【0103】
(光学異方性層用塗布液C−6の調整)
光重合開始剤としてIRGACURE OXE−01を、IRGACURE OXE−02(チバ・ジャパン製)に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−6を得た。
【0104】
(光学異方性層用塗布液C−7の調整)
光重合開始剤としてIRGACUREOXE−01を、光重合開始剤PI−1に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−7を得た。PI−1は、特開2006−342166号公報の実施例4に記載の方法に従って合成した。
【0105】
【化15】

【0106】
(光学異方性層用塗布液C−8の調整)
光重合開始剤としてIRGACUREOXE−01を、光重合開始剤PI−2に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−8を得た。PI−2は、特開2006−342166号公報の実施例25に記載の方法に従って合成した。
【0107】
【化16】

【0108】
(光学異方性層用塗布液C−R1の調整)
光重合開始剤としてIRGACURE OXE−01を、ベンジルメチルケタール化合物の光重合開始剤であるIRGACURE651(チバ・ジャパン製)に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−R1を得た。
【0109】
(光学異方性層用塗布液C−R2の調整)
光重合開始剤としてIRGACURE OXE−01を、α―ヒドロキシアルキルフェノン化合物の光重合開始剤であるIRGACURE184(チバ・ジャパン製)に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−R2を得た。
【0110】
(光学異方性層用塗布液C−R3の調整)
光重合開始剤としてIRGACUREOXE−01を、α―ヒドロキシアルキルフェノン化合物の光重合開始剤PI−3に代えた以外は、光学異方性層用塗布液C−1と同様にして、光学異方性層用塗布液C−R3を得た。
【0111】
【化17】

【0112】
PI−3は、4−プロピルシクロヘキシルフェノール(関東化学製)をトリフレート化した後、フェニルボロン酸による鈴木カップリング反応でビフェニル体とした。更に、イソ酪酸クロライドと塩化アルミでビフェニルの4'位をアシル化した後、カルボニルのα位の炭素を臭素によってブロム化、次いでアルカリにより水酸基とすることで合成した。
【0113】
(光学異方性層用塗布液C−R4の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−R4として用いた。
【0114】
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(LC−1) 1.56
棒状液晶化合物(LC−2) 4.00
カイラル剤(CH−1) 12.60
カイラル剤(CH−2) 1.00
配向剤(FC171,3M製) 0.04
光重合開始剤(PI−3) 0.40
連鎖移動剤(SH−1) 0.40
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0115】
【化18】

【0116】
【化19】

【0117】
【化20】

【0118】
【化21】

【0119】
LC−2:Angew. Makromol.Chem.誌、第183巻、45頁(1990年)に記載の方法に準じて合成した。
CH−1:EP1174411B1号に記載の方法により合成した4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸と、WO/2001040154A1号に記載の方法により合成した4−ヒドロキシ−4'−(2−メチルブチル)ビフェニルを縮合して合成した。
CH−2:EP1389199A1に記載の方法により合成した。
SH−1:ヒドロキシプロピルアクリレート(アルドリッチ社製)をメシル化した後、4−プロピルシクロヘキシルフェノール(関東化学製)と反応させ、次に硫化水素を付加して合成した。
【0120】
【表1】

【0121】
[実施例1]
市販のポリイミド配向膜(SE−150、日産化学(株)製)を設けたガラス基板に、前記光学異方性層用塗布液C−1をスピンコート法により塗布した。140℃で2分間加熱乾燥した。さらに、温度65℃で2分間熟成して均一な液晶相を有する光学異方性層を形成した。さらに熟成後直ちに光学異方性層に対して、UV光源として350〜400nmに強い発光スペクトルを有するD−Bulbを搭載したマイクロウェーブ発光方式の紫外線照射装置(Light Hammer 10、240W/cm、Fusion UV Systems社製)を用い、照射面から30mm離れた位置に、ワイヤグリッド偏光フィルタ(ProFlux PPL04C、Moxtek社製)を設置し、偏光板の透過軸が透明支持体の進相軸方向となるようにして偏光UVを照射(照度100mW/cm2、照射量1000mJ/cm2)し、実施例1の光学異方性層を作製した。光学異方性層の厚みは3.9μmであった。
【0122】
[実施例2〜8]
光学異方性層用塗布液C−1を、光学異方性層用塗布液C−2〜8に代えた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ実施例2〜8の光学異方性層を作製した。
【0123】
[比較例1〜4]
光学異方性層用塗布液C−1を、光学異方性層用塗布液C−R1〜R4に代えた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ比較例1〜4の光学異方性層を作製した。
【0124】
(位相差測定)
ファイバ型分光計(KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器株式会社製))を用いた平行ニコル法により、測定波長λ=550nmにおける面内レターデーションRe(550)、及び遅相軸を回転軸として±40度サンプルを傾斜させたときのレターデーションをそれぞれ測定し、Rth(550)を算出し、Nz値も求めた。
光学異方性膜の位相差は、あらかじめ測定した光学異方性膜のない基板の透過率データで較正を行うことにより、光学異方性膜の位相差のみを求めた。位相差の測定結果を表2に示す。
光学異方性膜の二軸性の発現度合いを、Nz値より評価し、表2に併せて記載する。
◎:二軸性フィルムとして非常に好ましい.Nz値=2.0〜7.0
○:二軸性フィルムとして好ましい.Nz値=1.5〜8.0
△:二軸性フィルムとしては不十分.Nz値=1.0〜10.0
×:二軸性フィルムとしてはほとんど機能しない.Nz値=上記範囲外
【0125】
(耐熱性試験)
形成された光学異方性膜に対して、230℃で3時間の加熱処理を行う前後のRe保持率を求め、耐熱性を評価した。結果を表2に記載する。
◎:耐熱性に非常に優れる.Re保持率=90%以上
○:耐熱性に優れる.Re保持率=75%以上
△:一般的な位相差フィルムと同程度の耐熱性.Re保持率=60%以上
×:耐熱性が劣る.Re保持率=60%未満
【0126】
【表2】

【0127】
実施例1,6〜8より、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いた場合、二軸性を示し、かつ、耐熱性に優れる光学異方性膜が得られることがわかる。
実施例1〜5より、2個の重合可能な基を有する2官能性液晶化合物LC242の液晶化合物中の比率を減らしていくと、発現する二軸性が高くなっていくことがわかる。ただし、耐熱性を示すRe保持率が低下していくことも確認される。耐熱性の観点から、2官能性液晶化合物の液晶化合物中の比率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましいことが理解される。
比較例1,2では、耐熱性は良好なものの、二軸性の発現度合いが非常に低いことがわかる。
比較例3では、二軸性の発現性は比較例1,2よりは高いものの、まだ不十分な値であることがわかる。また、表の脚注に記載あるように、本実施例での偏光UV照射条件では硬化がやや不十分であるため、耐熱性も低い値である。
比較例4は、本実施例での偏光UV照射条件では、硬化することすらできていないことがわかる。
【0128】
[実施例9]
光学異方性層用塗布液C−1を用い、偏光UVを照射する際の酸素濃度が10%になるように窒素パージ工程を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の光学異方性層を作製した。得られた光学異方性膜について、同様に位相差測定、耐熱性試験を実施した。それぞれの結果を表3に示す。
【0129】
[実施例10]
光学異方性層用塗布液C−1を用い、偏光UVを照射する際の酸素濃度が5%になるように窒素パージ工程を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の光学異方性層を作製した。得られた光学異方性膜について、同様に位相差測定、耐熱性試験を実施した。それぞれの結果を表3に示す。
【0130】
[実施例11]
光学異方性層用塗布液C−1を用い、偏光UVを照射する際の酸素濃度が0.1%になるように窒素パージ工程を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11の光学異方性層を作製した。得られた光学異方性膜について、同様に位相差測定、耐熱性試験を実施した。それぞれの結果を表3に示す。
【0131】
【表3】

【0132】
実施例9〜11より、酸素濃度を大気環境よりも低下させていくと、耐熱性が向上していくことがわかる。ただし、発現する二軸性が低下することも確認される。発現する二軸性の観点から、偏光UVを照射する際の酸素濃度としては、10%以上であることが好ましいことが理解される。
【0133】
[実施例12〜17]
光学異方性層用塗布液として、C−1の代わりに、以下のC−9からC−14をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12〜17の光学異方性層を作製した。得られた光学異方性膜について、同様に位相差測定を実施した。また、目視観察による透明性試験をおこなった。それぞれの結果を表4に示す。
【0134】
(光学異方性層用塗布液C−9の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−9として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−9組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
16.91
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
1.54
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0135】
(光学異方性層用塗布液C−10の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−10として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−10組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
16.91
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
1.86
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0136】
(光学異方性層用塗布液C−11の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−11として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−11組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
16.61
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
2.16
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0137】
(光学異方性層用塗布液C−12の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−12として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−12組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
16.04
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
2.73
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0138】
(光学異方性層用塗布液C−13の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−13として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−13組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
15.26
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
3.51
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0139】
(光学異方性層用塗布液C−14の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液C−14として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液C−14組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
15.26
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
4.10
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0140】
[比較例5〜6]
光学異方性層用塗布液C−1を、光学異方性層用塗布液C−R5〜R6に代えた以外は、実施例1と同様にして、それぞれ比較例5〜6の光学異方性層を作製した。
【0141】
(光学異方性層用塗布液LC−R5の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−R5として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液LC−R5組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
17.54
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
1.23
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0142】
(光学異方性層用塗布液LC−R6の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−R6として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液LC−R6組成(質量%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶化合物(Paliocolor LC242,BASFジャパン製)
13.80
カイラル剤(Paliocolor LC756,BASFジャパン製)
4.87
光重合開始剤(上記トリアジン化合物化合物1−5) 1.20
配向剤(W−1) 0.01
紫外線吸収剤(UV−1) 0.02
メチルエチルケトン 30.00
───────────────────────────────────
【0143】
【表4】

二軸性評価
◎:二軸性フィルムとして非常に好ましい.Nz値=2.0〜7.0
○:二軸性フィルムとして好ましい.Nz値=1.5〜8.0
△:二軸性フィルムとしては不十分.Nz値=1.0〜10.0
×:二軸性フィルムとしてはほとんど機能しない.Nz値=上記範囲外
透明性評価
〇:選択反射による着色および結晶の析出などが観察されず、無色透明な膜を形成し ている。
×:選択反射により着色がみられる、あるいは析出物が観察され不透明である。
【0144】
比較例5〜6より、コレステリックピッチが大きくなると選択反射が生じ、着色してしまうことがわかる。また、コレステリックピッチを小さくするために、カイラル剤添加量を増加させると、析出が起こり、コレステリックピッチを小さくするのに限界があることが理解される。以上の結果からコレステリックピッチは80nm以上230nm 以下が好ましいことが理解される。
【0145】
(液晶セル用基板の作製)
無アルカリガラス基板上に、ブラックマトリクスを形成した基板を準備した。
(カラーフィルタ用組成物)
表5に示す組成の各RGB画素用組成物をそれぞれ調製した。
【0146】
【表5】

【0147】
表5中の組成物の組成は以下の通りである。
──────────────────────────────────―─────
R顔料分散物−1(質量%)
──────────────────────────────────―─────
C.I.ピグメント・レッド254 8.0
5−[3−オキソ−2−[4−[3,5−ビス(3−ジエチルアミノプロピルアミノカルボニル)フェニル]アミノカルボニル]フェニルアゾ]−ブチロイルアミノベンズイミダゾロン 0.8
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3.7万) 8.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 83.2
──────────────────────────────────―─────
【0148】
──────────────────────────────────―─────
R顔料分散物−2組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
C.I.ピグメント・レッド177 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3.7万) 12.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70.0
──────────────────────────────────―─────
【0149】
──────────────────────────────────―─────
G顔料分散物組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
C.I.ピグメント・グリーン36 18.0
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3.7万) 12.0
シクロヘキサノン 35.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 35.0
──────────────────────────────────―─────
【0150】
──────────────────────────────────―─────
バインダ1組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比のランダム共重合物(重量平均分子量4万) 27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────―─────
【0151】
──────────────────────────────────―
バインダ2組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=38/25
37モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万) 27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────―
【0152】
──────────────────────────────────―─────
バインダ3組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート=36/22/42モル比のランダム共重合物(重量平均分子量3万) 27.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73.0
──────────────────────────────────―─────
【0153】
──────────────────────────────────―
DPHA組成(質量%)
──────────────────────────────────―
KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製) 76.0
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24.0
──────────────────────────────────―
【0154】
(R層形成用液PP−R1の調製)
R層形成用液PP−R1は、まず表5に記載の量のR顔料分散物1、R顔料分散物2、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表5に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ2、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm10分間攪拌し、次いで、上記表に記載の量のED152をはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm20分間攪拌し、更に、表5に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm30分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0155】
(G層形成用液PP−G1の調製)
G層形成用液PP−G1は、まず表5に記載の量のG顔料分散物、CFイエローEX3393、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表5に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダ1、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジン、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpm30分間攪拌し、更に、表5に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpm5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0156】
(B層形成用液PP−B1の調製)
B層形成用液PP−B1は、まず表5に記載の量のCFブルーEX3357、CFブルーEX3383、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表5に記載の量のメチルエチルケトン、バインダ3、DPHA溶液、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)−1,3,4−オキサジアゾール、フェノチアジンをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)下、150rpmで30分間攪拌し、更に、表5に記載の量のメガファックF−176PFをはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して、30rpmで5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得られた。
【0157】
(光学異方性膜の作製)
R用光学異方性膜R−1として、上記実施例で得られた光学異方性層用塗布液C−4をピエゾ方式のヘッドを用いてブラックマトリックス(遮光性隔壁)に囲まれたR層が形成される予定の凹部に打滴し、140℃で2分間加熱乾燥した。さらに、温度65℃で2分間熟成後、直ちにこの層に対して偏光UVを照射(照度100mW/cm2、照射量1000mJ/cm2)した後、130℃加熱熟成し、厚さ3.8μmの光学異方性膜R−1を形成した。
同様にして、G層及びB層用光学異方性膜G−1及びB−1をそれぞれ、G層及びB層が形成される予定の微細領域に形成した。光学異方性層用塗布液としては、上記実施例で得られた光学異方性層用塗布液C−3及びC−1をそれぞれ用いた。
なお、本実施例では、R、G、B各画素に対応する部分に、搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部に各光学異方性膜用塗布液を打滴した。
【0158】
(カラーフィルタ層の作製)
上記で得られたR、G及びB層形成用液である、PP−R1、PP−G1、及びPP−B1を、ピエゾ方式のヘッドを用いて遮光性隔壁に囲まれた凹部のあらかじめ決められた位置に、打滴を行い、R層、G層及びB層をそれぞれ形成した。
なお、本実施例では、R、G、B各画素に対応する部分にR、G、Bそれぞれ搬送速度、駆動周波数を制御し、所望するR、G、Bに対応する凹部に各R、G及びB層形成用液PP−R1、PP−G1及びPP−B1を打滴した。
その後、温度100℃にて乾燥させ、更に温度200℃にて1時間熱処理を実施し、光学異方性膜上にカラーフィルタ画素を形成した。
【0159】
(透明電極の形成)
上記作製したカラーフィルタ上に、透明電極膜(膜厚2000Å)をITOのスパッタリングにより形成した。
【0160】
(配向層の形成及び液晶セル形成)
更にその上にポリイミドの配向膜を設けた。次に、粒子径5μmのガラスビーズを散布した。更にカラーフィルタの画素群の周囲に設けられたブラックマトリックスの外枠に相当する位置に、スペーサ粒子を含有するエポキシ樹脂のシール剤を印刷し、カラーフィルタ基板を対向基板と10kg/cmの圧力で貼り合わせた。次いで、貼り合わされたガラス基板を、温度150℃で90分間熱処理し、シール剤を硬化させ、2枚のガラス基板の積層体を得た。このガラス基板積層体を真空下で脱気し、その後大気圧に戻して2枚のガラス基板の間隙に液晶を注入し、液晶セルを得た。この液晶セルの両面に、株式会社サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0161】
(VA−LCDの作製)
カラー液晶表示装置用冷陰極管バックライトとしては、BaMg2Al1627:Eu,Mnと、LaPO4:Ce,Tbとを質量比50:50で混合した蛍光体を緑色(G)、Y23:Euを赤色(R)、BaMgAl1017:Euを青色(B)として、任意の色調を持つ白色の三波長蛍光ランプを作製した。このバックライト上に上記偏光板を付与した液晶セルを設置し、VA−LCDを作製した。
【0162】
(VA−LCDの評価)
作製したVA−LCDの黒表示の方位角45度、極角60度方向視野角における黒表示及び、方位角45度極角60度と方位角180度極角60度との色ずれを観察した。
作製したVA−LCDを観察した結果、正面方向及び視野角方向のいずれにおいても、ニュートラルな黒表示を実現することが確認できた。
【符号の説明】
【0163】
11 透明基板
12 ブラックマトリックス(隔壁)
13 光学異方性膜
14 カラーフィルタ層
21 被転写基板
22 ブラックマトリクス(隔壁)
23 カラーフィルタ層
24 ベタ光学異方性膜
25 透明電極層
26 配向層
27 パターニング光学異方性膜
31 液晶
32 TFT
33 偏光層
34 セルロースアセテートフィルム(偏光板保護フィルム)
35 セルロースアセテートフィルム、又は光学補償シート
36 偏光板
37 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形したねじれらせん構造の二軸性光学異方性膜を作製するための、重合性液晶化合物と下記一般式(1)または(2)で表されるオキシムエステル化合物を含む重合開始剤とを含む液晶組成物:
【化1】

一般式(1)中、Ar1は、ナフタレン構造、アントラセン構造、アントラキノン構造、ベンゾフェノン構造、チアントレン構造、フェノキサチアン構造、ジフェニルチオエーテル構造、チオキサントン構造、及びモルホリノベンゼン構造からなる群から選ばれる構造を表し、Ar2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びフェニル基からなる群から選ばれる基を表し、nは、1又は2の整数を表し、nが1のとき、Mは、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基、炭素数2以上20以下のアルカノイル基、炭素数2以上12以下のアルコキシカルボニル基、複数のポリメチレン基がエーテル結合によって連結された二価の基の1つの結合手にアルコキシ基が連結された1価の基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、フェノキシカルボニル基、炭素数7以上13以下のアラルキルカルボニルオキシ基、及び炭素数1以上6以下のアルキルチオ基からなる群から選ばれる基を表し、nが2のとき、Mは、炭素数1以上12以下のアルキレン基、炭素数1以上12以下のオキシアルキレンオキシ基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、−CO−O−A−O−CO−、−CO−O−(CH2CH2O)m−CO−、及び−CO−A−CO−からなる群から選ばれる2価の連結基を表し、Aは、炭素数2以上12以下のアルキレン基を表し、mは、1以上20以下の整数を表す;
【化2】

一般式(2)中、R1はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、フェノキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基、ヘテロアリールチオアルキル基、及びアミノ基、アミノアルキル基、または−N(R4)(OR5)基で置換されたアルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R2は炭素数2〜20のアルキル基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立して水素原子またはアルキルカルボニル基を表し、Ar3、Ar4はそれぞれ独立して置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいフリル基、置換基を有していてもよいピリジル基からなる群から選ばれる基を表す。
【請求項2】
2個以上の重合可能な基を有する重合性液晶化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
液晶化合物の総質量に対する前記の2個以上の重合可能な基を有する重合性液晶化合物の割合が75質量%以上である請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物に偏光を照射することにより形成される光学異方性膜。
【請求項5】
前記らせん構造のコレステリックピッチが80 nm以上230 nm以下である請求項4に記載の光学異方性膜。
【請求項6】
基板と請求項4又は5に記載の光学異方性膜とを有するカラーフィルタ基板。
【請求項7】
基板と請求項4又は5に記載の光学異方性膜とを有する液晶セル用基板。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の光学異方性膜を有する液晶表示装置。
【請求項9】
VAモード液晶表示装置である請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
光学異方性膜を液晶セル内に有する請求項8又は9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
光学異方性膜が液晶セル内の各画素に対応する各領域に配置されている請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
二軸性光学異方性膜の製造方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物を支持体に塗布すること、該液晶組成物をコレステリック配向させること、及びその後、該液晶組成物に偏光を照射する工程を含み、前記偏光を照射する工程の前に非偏光を照射する工程を含まないことを特徴とする光学異方性膜の製造方法。
【請求項13】
偏光を照射する工程での酸素濃度が10%以上21%以下である請求項12に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−8207(P2011−8207A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166692(P2009−166692)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】