説明

二輪車用リング錠

【課題】面倒ではなく手首に負担がかからず施錠・開錠操作ができる二輪車用リング錠を提供すること。
【解決手段】円弧錠の閂棒2の外周面に連続する歯20を設け、前記閂棒2の歯20とピニオンギヤー5の歯50を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャー5の歯50とラック6の歯60を歯合させ、摘まみ部tにより閂棒2を施錠方向に前進移動させる形式であり、閂棒2を開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部tの移動距離が5mm〜30mmとなるように、ピニオンギヤー5とラック6の関係を設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自転車や所謂オートバイ等に使用される二輪車用リング錠に関するものであり、特に、円弧錠の閂棒の外周面に連続する歯を設け、前記閂棒の歯とピニオンギヤーの歯を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャーの歯とラックの歯を歯合させ、前記ラックの移動により閂棒を開錠・施錠する形式の二輪車用リング錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した二輪車用リング錠の如き、円弧錠の閂棒の外周面に連続する歯を設け、前記閂棒の歯とピニオンギヤーの歯を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャーの歯とラックの歯を歯合させ、前記ラックの移動により閂棒を開錠・施錠するものとしては、例えば、特許文献1に示されている。
【0003】
しかしながら、この二輪車錠では、施錠する際にはキーを回転させながら錠ケースを押し込むという二つの操作をしなければならず、手首に負担がかかると共に面倒であった。
【0004】
他方、この種の二輪車用リング錠としては、特許文献2にも開示されている。しかしながら、この二輪車錠では、シリンダー錠にキーを差し込み、操作摘まみを回転させる操作が必要であり、上記のものと同様に手首に負担がかかると共に面倒であった。
【特許文献1】特開2002−47847号公報
【特許文献1】特開2002−21401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、面倒ではなく手首に負担がかからず施錠・開錠操作ができる二輪車用リング錠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明の二輪車用リング錠は、円弧錠の閂棒の外周面に連続する歯を設け、前記閂棒の歯とピニオンギヤーの歯を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャーの歯とラックの歯を歯合させ、摘まみ部により閂棒を施錠方向に前進移動させる形式であり、閂棒を開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部の移動距離が5mm〜30mmとなるように、ピニオンギヤーとラックの関係を設定してある。
(請求項2記載の発明)
この発明の二輪車用錠は、上記請求項1記載の発明に関し、係止片を有した摘まみ部と、ラックに一体的に設けられた施錠操作体とは、スリットを挿通する接続部材を介して接続されており、他方、前記スリットは両側の幅狭部と、中程の幅広部を有するものとしてあり、前記幅広部位置にある摘まみ部を押し込んで係止片と幅広部構成壁との係止を解除したときにのみ当該摘まみ部は幅狭部に移動できるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、二輪車用リング錠によると、手首に負担がかからず、安全に施錠・開錠操作ができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下にこの発明における二輪車用リング錠を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
図1はこの発明の実施例1の二輪車用リング錠Jの斜視図、図2は前記二輪車用リング錠Jの分解斜視図、図3は閂棒2とストッパ41との関係の説明図、
図4は幅広部内に係止片が位置している状態を示す断面図、図5は摘まみ部の押し込みにより幅広部内から係止片が外れた状態を示す断面図。
を示している。
【0010】
(二輪車用錠Jの基本的構成について)
この二輪車用リング錠Jは、図1や図2に示すように、円弧状に形成された錠本体1内に円弧状の閂棒2を移動自在に収容させると共に前記閂棒2を後退する開錠方向にバネ3で付勢して成り、前記閂棒2をバネ3の付勢力に抗して前進する施錠方向に移動させたときには施錠機構4の角軸40の動きと連動するストッパ40との係合により閂棒2が後退復帰不能となる形式のものである。
【0011】
特に、この二輪車用リング錠Jにおいては、図2に示すように、閂棒2の外周面に連続する歯20を設け、前記閂棒2の歯とピニオンギヤー5の歯50を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャー5の歯50と施錠操作体7と一体のラック6の歯60を歯合させ、摘まみ部tによりラック6を水平又は略水平に移動操作する態様で閂棒2を施錠方向に前進移動させるようにしてある。
【0012】
また、この二輪車用リング錠Jでは、上記摘まみ部tを僅かに押し込みながら操作しない限り、施錠されないようになっている。
【0013】
なお、この実施例では、閂棒2を開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部tの移動距離が5mm〜30mm(好ましくは20mm〜25mm)となるように、ピニオンギヤー5の径を設定してある。
【0014】
以下に、この二輪車用リング錠Jを構成する錠本体1、閂棒2、バネ3、施錠機構4等について詳述する。
【0015】
(錠本体1の構成について)
錠本体1は、図1や図2に示すように、ケーシング本体10とこれを被蓋する蓋部11とから構成されてなるものであり、閂棒2を収めるための収容部12と、施錠操作体7及びバネ3を収めるための収容部13と、ピニオンギヤー5及びラック6を収めるための収容部14と、施錠機構4を収めるための収容部15と、閂棒2を出没させるための開口部16と、外部に設けられる摘まみ部tと施錠操作体7とを一体移動可能に繋ぐためのスリット17を具備させてある。
【0016】
なお、この錠本体1の内周部には左右一対のブラケットB,Bを設けてあり、二輪車用錠JはこのブラケットB,Bにより二輪車のシートステイに取付られる。
【0017】
(閂棒2の構成について)
閂棒2は、図2に示すように、断面角形状で且つ上述した如く円弧状に形成されて成るものであり、その外周面の約2/5程度に連続する歯20を設けてあると共に中央部側の最後の歯20の部分近傍に段付き部21を形成してある。
【0018】
なお、閂棒2は上記収容部12内において円滑に移動できるようにしてある。
【0019】
(バネ3の構成について)
バネ3としては、図2に示すように、圧縮コイルバネを採用しており、当該圧縮コイルバネにより閂棒2を開錠位置に復帰させる方向に常時バネ付勢している。
【0020】
(施錠機構4とこれに関連する部材について)
施錠機構4は、図2に示すように、所謂シリンダー錠の内端部に角軸40の端部に突出しているものが使用されており、前記角軸40の正逆回動と連動して揺動するストッパ41を付加してある。
【0021】
なお、上記ストッパ41は、図2や図3に示すように、押圧バネ42により上記段付き部21と係合状態となるように付勢されているが、シリンダー錠のキー孔にキーKを差し込んで回すことにより段付き部21との関係を非係合状態となるようにしてある。
【0022】
(ピニオンギヤー5について)
ピニオンギヤー5は、通常市販されているものが利用できるが、上述した如く閂棒2を開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部tの移動距離が5mm〜30mm(好ましくは20mm〜25mm)とるような歯径のものを使用している。なお、このピニオンギヤー5については、大径・小径ピニオンギヤーを同軸で積層一体したものを使用することができ、大径ピニオンギヤーの歯を閂棒2の歯20と、小径ピニオンギヤーの歯をラック6の歯60と、それぞれ歯合させることにより、容易に、開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部tの移動距離を少なく抑えることができる。
【0023】
(ラック6、施錠操作体7、摘まみ部tについて)
ラック6と施錠操作体7とは、図2に示すように長手方向に連なる一体構造物であり、錠本体1内にある施錠操作体7と錠本体1外にある摘まみ部tとをスリット17を介して繋いである。
【0024】
スリット17は、図2に示すように、両側の幅狭部17a,17bと、中ほどの幅広部17cを有するものとしてある。
【0025】
施錠操作体7は、図2、図4、図5に示すように、係合突起71を備えた差し込み片70(請求項2記載の発明の接続部材と対応する)を設けてある。
【0026】
摘まみ部tは、図2、図4、図5に示すように、上記差し込み片7が差し込まれる開口t1と、前記開口t1を構成する壁面t2に設けられ且つ上記係合突起71が嵌まり込む孔t3と、係止片t4、バネt5とから構成されている。
【0027】
なお、上記ラック6及び施錠操作体7は、図4に示す如く、幅広部17cに位置しているときには係止片t4と幅広部17cの構成壁との係合により、移動できないようになっており、前記図4の状態から図5に示す如く摘まみ部tを押し込んで係止片t4と幅広部17cの構成壁との係合を解除すると幅狭部17a,17b側に移動できるようになっている。つまり、乗車しているときに不用意に閂棒2が施錠方向に移動するようなことはない。
【0028】
(この二輪車用錠Jの作用について)
この二輪車用錠Jでは施錠・開錠する場合、以下の操作によりなされる。
(1)施錠する場合
摘まみ部tを少し押し込み図1の二点鎖線の状態から実線の状態に移動させる。すると、その動作により、摘まみ部tの平行移動→施錠操作体7と一体のラック6がバネ3の付勢力に抗して平行移動(矢印方向)→ピニオンギヤー5が回転(矢印方向)→閂棒2が回転(矢印方向)し、施錠位置まで至ると図3の二点鎖線に示すように押圧バネ42によって付勢されたストッパ41が段付き部21と係合(閂棒2は開錠位置に復帰不能)となる。
(2)開錠する場合
前記(1)の閂棒2が開錠位置に復帰不能状態において、シリンダー錠のキー孔にキーKを差し込んで回す→ストッパ41が回転し、段付き部21と係合が解除される→閂棒2がバネ3の付勢力により開錠位置に復帰なる。
【0029】
(この二輪車用錠Jの優れた効果について)
この二輪車用錠Jでは、摘まみ部tの移動距離が5mm〜30mm(好ましくは20mm〜25mm)程度であり、しかも摘まみ部tを僅かに押し込んだ後に直線移動するだけであるから、手首に負担がかからないし、また面倒ではないことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例1の二輪車用リング錠の斜視図。
【図2】前記二輪車用リング錠Jの分解斜視図。
【図3】閂棒とストッパとの関係の説明図。
【図4】幅広部内に係止片が位置している状態を示す断面図
【図5】摘まみ部の押し込みにより幅広部内から係止片が外れた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
J 二輪車用リング錠
t 摘まみ部
1 錠本体
2 閂棒
20 歯
21 段付き部
3 バネ
4 施錠機構
41 ストッパ
5 ピニオンギヤー
50 歯
6 ラック
60 歯
7 施錠操作体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧錠の閂棒の外周面に連続する歯を設け、前記閂棒の歯とピニオンギヤーの歯を歯合状態にすると共に前記ピニオンギャーの歯とラックの歯を歯合させ、摘まみ部により閂棒を施錠方向に前進移動させる形式であり、閂棒を開錠位置から施錠位置にするための摘まみ部の移動距離が5mm〜30mmとなるように、ピニオンギヤーとラックの関係を設定してあることを特徴とする二輪車用リング錠。
【請求項2】
係止片を有した摘まみ部と、ラックに一体的に設けられた施錠操作体とは、スリットを挿通する接続部材を介して接続されており、他方、前記スリットは両側の幅狭部と、中程の幅広部を有するものとしてあり、前記幅広部位置にある摘まみ部を押し込んで係止片と幅広部構成壁との係止を解除したときにのみ当該摘まみ部は幅狭部に移動できるようになっていることを特徴とする請求項1記載の二輪車用リング錠。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−127758(P2008−127758A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310431(P2006−310431)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000111029)株式会社ニッコー (26)