説明

二酸化ウラン造粒体とその製造方法

【課題】欧州のMOXペレット金相と同様のペレット金相を有するMOXペレットを得ることができる二酸化ウラン造粒体とその製造方法を提供する。
【解決手段】六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルの還元焙焼によって製造した二酸化ウランを、平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にすることを特徴とする二酸化ウラン造粒粉の製造方法であり、200回タッピング後の粒子残存率が100%であって安息角30度以下であることを特徴とする二酸化ウラン造粒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電用の燃料であるMOXペレット製造時の富化度調整用の二酸化ウラン(UO2)粉末について、造粒体強度の大きいUO2粉末造粒体の製造方法に関する。本発明は、より詳しくは、ペレット内のPu濃度が均一なMOXペレットを得ることができる二酸化ウラン造粒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UO2粉末は原子力発電用の燃料であるMOXペレットに富化度調整用として配合されている。このUO2粉末を六フッ化ウラン(UF6)から製造する方法として、乾式転換法と湿式転換法とが知られている。乾式転換法(流動層タイプDCP法、IDRタイプDCP法)は、UF6を水蒸気と気相反応させてフッ化ウラニル(UO22)にし、これを還元焙焼してUO2粉末を製造する。この製造方法によって得られるUO2粉末の一次粒子は非常に微細であるため、粉末の取扱いが難しい。そのため、乾式転換法の代表プロセスである流動層タイプDCP法では、流動層を用いてUO2粉末を球状粒子にし、またIDRタイプDCP法では機械式造粒やスプレードライ法などでUO2粉末を造粒して、粉末の取扱性と流動性の向上を図っている。
【0003】
流動層タイプDCP法によって製造したUO2粉末は、流動層によって得られた球状粒子をそのままMOXペレットの富化度調整用として用いることが検討されている。一方、IDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末については造粒体にして使用することが検討されている。例えば、特表2002−530261号公報(特許文献1)には、IDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末の懸濁液に解こう剤や有機結合剤を混合して、スプレードライ法(噴霧乾燥法)によって造粒体にして使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−530261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動層タイプDCP法によって製造した従来のUO2粉末を用いて製造したMOXペレットは、その金相にはウランスポット径が大きいものでは1mm以上の巨大なスポットが存在している。ウランスポット径が大きすぎると単位体積当たりのMOXペレット内のPu濃度が不均一となり、炉燃焼特性に問題を生じる。因みに、欧州において照射実績を有するMOXペレットの金相はウランスポットが均一に分散しており、その平均ウランスポット径は10μm〜100μmである。
【0006】
一方、IDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末について、この懸濁液をスプレードライ法によって造粒したものは造粒体の強度が弱いために、取扱い時や輸送時に一部が破壊されて流動性が大きく低下し、ペレット成型時に充分な流動性を保つことが出来なくなり、高密度のペレットを得ることが難しいと云う問題がある。
【0007】
本発明は、UO2粉末造粒体の従来の製造方法における上記問題を解決したものであって、造粒体の強度が大きく、欧州のMOXペレット金相と同様のペレット金相を有するMOXペレットを得ることができる二酸化ウラン造粒体とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決した二酸化ウラン造粒体の製造方法に関する。
〔1〕 六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを流動層によって還元焙焼して製造した球状二酸化ウランを、平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にすることを特徴とする二酸化ウラン造粒粉の製造方法。
〔2〕 六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを流動層によって還元焙焼して製造した球状二酸化ウランを、0.5μm〜1.5μmに粉砕して圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にする上記[1]に記載する二酸化ウラン造粒体の製造方法。
〔3〕 六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを還元焙焼して製造した二酸化ウランを圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランをスラリーにし、スプレードライ処理して造粒粉にする上記[1]に記載する二酸化ウラン造粒体の製造方法。
〔4〕 上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する方法によって製造した造粒体であって、200回タッピング後の粒子残存率が99%以上であって安息角35度以下であることを特徴とする二酸化ウラン造粒体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によって製造した二酸化ウラン造粒体は造粒体の強度が大きく、具体的には、200回タッピング後の粒子残存率が99%以上であって安息角35度以下であるので、取扱い時や輸送時において破壊され難く、高い流動性を保つので、高密度のMOXペレットを製造することができる。また、MOXペレットの金相においても、単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量が任意の場所で55〜95wt%と均一であり、かつ単位体積あたりの平均ウランスポット径が任意の場所で20m〜100μmであり、欧州製MOXペレットと同様の金相を示すペレットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法を流動層タイプDCP法に適用した例を示す処理工程図。
【図2】本発明の製造方法をIDRタイプDCP法に適用した例を示す処理工程図。
【図3】従来の流動層タイプDCP法の処理工程図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明は、六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを流動層によって還元焙焼して製造した球状二酸化ウランを、平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にすることを特徴とする二酸化ウラン造粒粉の製造方法である。
【0012】
UF6を水蒸気と気相反応させ、乾式下で加水分解させることによって、UO22が生成する(式[1])。これに水素ガスを導入して焙焼・還元することによって、UO2粉末が製造される(式[2])。
【0013】
UF6(G) + 2H2O(G) → UO22(S) + 4HF(G) …〔1〕
UO22(S) + H2 → UO2(S)+2HF(G) …〔2〕
【0014】
UF6の乾式加水分解において、流動層タイプDCP法は流動層を用いてUO22の焙焼還元を行う。本発明の製造方法を流動層タイプDCP法に適用した例を図1に示す。この方法では球状のUO2粒子が生成するので、この球状UO2粒子を平均粒径数μm〜20μmに粉砕する。ペレットの密度を高める場合には、球状UO2粒子を1μm前後、例えば0.5μm〜1.5μmに粉砕して圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕すると良い。この粉砕した二酸化ウランをスラリーにし、スプレードライ処理して造粒粉にする。
【0015】
UF6の乾式加水分解において、IDRタイプDCP法は、流動層を用いずに、UO22の焙焼還元を行う。本発明の製造方法を、IDRタイプDCP法に適用した例を図2に示す。本方法によって生成したUO2粉末は微粉末であるので、これを圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランをスラリーにし、スプレードライ処理して造粒粉にする。
【0016】
図1および図2の製造方法において、UO2粉末はハンマーミル等の機械的手段によって粉砕すればよい。平均粒径数μm〜20μmに粉砕したUO2をスラリーにし、これをスプレードライ処理して造粒粉にする場合、例えば、UO2濃度5〜60wt%のスラリーを、雰囲気温度100℃〜300℃で噴射し、平均粒径10〜50μmの造粒体にすればよい。
【0017】
本発明の上記製造方法によれば、高強度の造粒体を得ることができる。具体的には、例えば、200回タッピング後の粒子残存率が99%以上であって安息角35度以下の二酸化ウラン造粒体を得ることができる。
【0018】
本発明の方法によって製造した二酸化ウラン造粒体は造粒体の強度が大きく、取扱い時や輸送時において破壊され難く、また、高い流動性を有するので、高密度のMOXペレットを製造することができる。具体的には、ペレット金相の均一性が良く、例えば、単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量が任意の場所で55〜95wt%である。
【0019】
因みに、従来の流動層タイプDCP法およびIDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末を用いたMOXペレットの金相では、単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量は任意の場所で50〜100wt%であり、本発明の場合よりも均一性が低い。
【実施例】
【0020】
〔実施例1〕
流動層タイプDCP法によって製造した球状UO2粒子1000gをハンマーミルにて平均粒径1μmに粉砕した。この粉砕したUO2微粉末を濃度30wt%のスラリーにし、雰囲気温度250℃で噴射することによってスプレードライ処理し、平均粒径30μmのUO2造粒体を製造した。この造粒体は200回タッピング後の粒子残存率が100%であって安息角30度であった。また、このUO2造粒体を用いた製造したMOXペレットの単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量は任意の場所で60〜80wt%であり、上記単位体積あたりの平均ウランスポット径は30μmであった。
【0021】
〔実施例2〕
流動層タイプDCP法によって製造した球状UO2粒子1000gを1μmに粉砕した後に、3tの圧力で圧密した。この圧密体をハンマーミルにて平均粒径数μm〜20μmに粉砕した。その後、実施例1と同様の条件下でUO2微粉末のスラリーを調製し、スプレードライ処理し、平均粒径35μmのUO2造粒体を製造した。この造粒体は200回タッピング後の粒子残存率が100%であって安息角30度であった。また、このUO2造粒体を用いた製造したMOXペレットの単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量は任意の場所で60〜90wt%であり、上記単位体積あたりの平均ウランスポット径は45μmであった。
【0022】
〔実施例3〕
IDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末を3tの圧力で圧密した。この圧密体をハンマーミルにて平均粒径数μm〜20μmに粉砕した。この粉砕したUO2粉末を濃度30wt%のスラリーにし、雰囲気温度250℃で噴射することによってスプレードライ処理し、平均粒径35μmのUO2造粒体を製造した。この造粒体は200回タッピング後の粒子残存率が100%であって安息角30度であった。また、このUO2造粒体を用いた製造したMOXペレットの単位体積(500μm×500μm×500μm)当たりのウラン量は任意の場所で60〜90wt%であり、上記単位体積あたりの平均ウランスポット径は50μmであった。
【0023】
実施例1〜3の結果を表1に示す。従来の流動層タイプDCP法によって製造した球状UO2粒子を用いた例、従来のIDRタイプDCP法によって製造したUO2粉末を用いた例を併せて表1に示した。表1に示すように、本発明の製造方法による造粒体は造粒体の強度が大きく、また安息角が小さく流動性に優れている。さらに、本発明のUO2造粒体を用いたMOXペレットはペレット金相の均一性が良く、平均ウランスポット径が適切な大きさを有する。
【0024】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを流動層によって還元焙焼して製造した球状二酸化ウランを、平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にすることを特徴とする二酸化ウラン造粒粉の製造方法。
【請求項2】
六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを流動層によって還元焙焼して製造した球状二酸化ウランを、0.5μm〜1.5μmに粉砕して圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にする請求項1に記載する二酸化ウラン造粒体の製造方法。
【請求項3】
六フッ化ウランの乾式加水分解によって生成したフッ化ウラニルを還元焙焼して製造した二酸化ウランを圧密し、この圧密体を平均粒径数μm〜20μmに粉砕し、この粉砕した二酸化ウランのスラリーをスプレードライ処理して造粒粉にする請求項1に記載する二酸化ウラン造粒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載する方法によって製造した造粒体であって、200回タッピング後の粒子残存率が100%であって安息角30度以下であることを特徴とする二酸化ウラン造粒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−237049(P2010−237049A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85667(P2009−85667)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】