説明

二酸化チタン製造のための多段階法

本発明は、多段階法で四塩化チタンから酸化によって二酸化チタンを製造する方法に関し、本方法では、第一工程で液状の四塩化チタンを使用し、第二工程では気体状の四塩化チタンを使用する。第一工程において、O2:TiCl4のモル比の値は、1より大きい。第一公知で使用される液状四塩化チタンの量は、好ましくは全量の20%以下である。本発明による方法はエネルギー効率が良く、より小さな二酸化チタン粒子につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四塩化チタンの酸化による二酸化チタンの多段階製造法に関し、本方法は第一工程で液状の四塩化チタンを使用するものである。
【0002】
発明の技術的背景
商業的に適用される二酸化チタン顔料粒子の製造方法、いわゆる塩化物法では、四塩化チタン(TiCl4)を酸化性ガス、例えば酸素、空気など、並びに特定の添加剤と管型反応器で反応させて、二酸化チタンと塩素ガスにする:
TiCl4+O2 → TiO2+2Cl2
TiO2粒子は引き続き、塩素ガスから分離される。添加剤としては、AlCl3がルチル化剤(Rutilisierer)として、また水蒸気又はアルカリ金属塩が核形成剤として公知である。
【0003】
このプロセスはたいてい一段階で行われ、例えばUS 3,615,202又はEP 0 427 878 B1に記載されている。しかしながらこの反応進行はエネルギー面で不利である。と言うのも、TiCl4酸化の活性化エネルギーが高いため、出発原料を激しく予熱して、出発原料の断熱混合温度を反応開始前に約800℃にして、反応を完全に進めなければならないからである。しかしながら酸化反応は著しく発熱性であり、これにより完全な断熱反応後、生成物流の温度は、出発原料の温度よりも約900℃高くなる。TiO2粒子が気体状反応生成物からフィルターにより分離されるまで、この混合物を冷却工程で著しく冷却して、フィルターへの損害を避けなければならない。
【0004】
そこでエネルギー最適化のため、塩化物法の多段階的な変法が開発されており、この方法では出発原料の一部のみが加熱され、第一工程に供給される。出発原料の残りは僅かに加熱するか、又はそれどころか加熱しないで第二工程に供給する。ここで出発原料は第一工程で放出される反応エンタルピーにより加熱され、そこで反応する。第二工程のみにTiCl4、又はTiCl4と酸素を供給することができる。さらに第二工程の他に、僅かに加熱された、又は常温の出発原料を有するさらなる工程を企図することもできる。
【0005】
例えばEP 0 583 063 B1には、反応器へのTiCl4の二段階導入が記載されている。TiCl4は第一の導入点で少なくとも450℃の温度でAlCl3と混合され、AlCl3が無いさらなる導入点で350〜400℃の温度で、熱した酸素流に通す。
【0006】
EP 0 852 568 B1に記載の方法は、TiCl4の他に酸素も二段階で供給することを企図している。この方法の目的設定は、TiO2の平均粒径、ひいてはTiO2顔料基礎体の色濃淡を効果的に制御することである。ここで約950℃に熱した酸素流に、まず約400℃に熱したTiCl4蒸気を通す。後続の反応ゾーンではTiO2粒子が形成され、粒子成長が起こる。第二の導入点では、より弱く加熱されたTiCl4蒸気(約180℃)を供給する。酸素を第二の導入点に25〜1040℃の温度で導入し、ここで混合物の温度は、反応を開始するために充分である。
【0007】
US 6,387,347 B1に記載の多段階法はさらに、アグロメレート形成を減少させる。このために既に加熱されたTiCl4流が、反応器に供給する前に2つの部分流に分けられる。1つの部分流(約60%)は、反応器の第一工程で酸化される。第二の部分流(約40%)は、液状TiCl4をスプレーすることにより冷却され(過熱除去)、引き続き反応器に供給される。この過熱除去は、反応器の外部で行い、この際にガス流の凝縮温度を下回ることはない。
【0008】
類似のTiO2製造法は、US 2008/0075654 A1に記載されている。このUS特許出願の技術的教示は、TiCl4部分流の導入温度を低下させることにより、TiO2生成物の粒径を減少可能なことを含む。この効果は、TiCl4部分流2の導入温度をTiCl4部分流1の温度より低下させると強化され、温度関係が逆転すると弱くなる(実施例1〜4参照)。
【0009】
US 2007/0172414 A1は、TiCl4とO2とを反応させるための多段階法を開示しており、この方法では第一工程で気体状のTiCl4が、そして第二工程で液状のTiCl4が反応器に導入される。この方法により、エネルギーの節約と、粒径範囲の改善につながる。
【0010】
これらすべてのプロセスに共通しているのは、第一工程に導入される出発原料を激しく加熱することである。つまり第一段階は、激しく加熱した酸素と、加熱された蒸気状TiCl4で稼働させる。しかしながらこの形態の多段階工程反応の欠点は、平均粒径が、第二段階及び後続段階の出発原料含分とともに上昇することである。この効果は多分、以下のように説明できる。TiCl4と酸素との反応において、競合する2つの反応経路があり得る。1つはTiCl4とO2が気相で直接相互に反応するものであり(均質気相反応)、これによりTiO2分子が生じ、これが衝突及び焼結により相互に粒子へと成長する。他方、TiCl4は既存のTiO2粒子の表面に付加し、そこで酸素と反応してTiO2になる。この第二の反応経路により、新たな粒子の生成のみならず、既に存在する粒子の巨大化にもつながる(表面反応)。
【0011】
一段階の酸化反応では、前者の機構が好ましい。なぜならば、TiCl4とO2が反応する瞬間には、粒子がほとんど存在しないからである。しかしながら二段階や多段階反応の場合には、未燃焼のTiCl4がTiO2粒子の流れに供給されるため、一段階の反応と比べて、表面反応のための反応機構のシフトが起こる。その結果起こるのが、平均粒径の増大である。部分流での反応体(TiCl4、O2)の温度低下、例えば過熱除去により、US 6,387,347 B1及びUS 2008/0075654 A1に記載されたように表面反応の速度を低下させることができるが、これにより平均粒径はそれほど増大しない。ただし結果的には、平均粒径の増大を、KCl又は他の成長阻害剤の添加量増加により、対処しなければならない。しかしながらこれらの阻害剤は非常に腐蝕性であるため、装置腐食の増大と、整備コストの増加につながる。
【0012】
課題設定と本発明の要約
本発明の課題は、四塩化チタンの酸化により二酸化チタンを多段階で製造するための方法であり、この方法はエネルギー的に有利であり、かつ公知の方法の上記欠点を克服するものである。
【0013】
前記課題は、管型反応器での四塩化チタンと酸素含有ガスとの反応による、二酸化チタン粒子の多段階製造法において、第一工程で液状のTiCl4を予熱された酸素含有ガス流に導入し、ここでO2:TiCl4のモル比の値は1より大きく、かつ第一のTiO2粒子を含有するガス懸濁体が形成され、第二工程で気体状のTiCl4を第一のTiO2粒子を含有するガス懸濁体に導入することを特徴とする前記製造法によって解決される。
【0014】
本発明のさらなる有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明の詳細な説明
本発明による方法が、多段階塩化物法から公知の二酸化チタン製造法と異なるのは、TiCl4が第一工程で液状で、そして第二工程で気体状で酸化反応器に導入される点である。第一工程では、液状TiCl4と予熱された過剰量の酸素との反応が起こり、これによって液状TiCl4が予熱無しの常温形態でも発火する。過剰量の酸素により、第一工程の反応帯域では非常に微細なTiO2粒子のみが生成し、この粒子はさらなる工程における粒子成長のための核として役立つ。酸化法の第二段階は従来の第一工程と同じように稼働させ、加熱された気体状TiCl4は、熱した酸素含有ガス流へと反応器に導入される。
【0016】
第一工程においてO2:TiCl4のモル比の値は1より大きく、好ましくは少なくとも10、とりわけ20〜200である。
【0017】
第一工程において、TiCl4全量の最大20%、好ましくは最大10%、及びとりわけ最大2%を添加する。
【0018】
本発明による方法はまた、第三の、及び場合によりさらなる方法工程を有することもできる。さらに、第三工程、若しくは1つ又は複数のさらなる工程にTiCl4を液状で導入することができる。さらに第一工程の後、さらなる段階のうち少なくとも1つに、付加的に酸素含有ガスを導入することができる。これに加えて、さらなる段階のうち少なくとも1つに導入された酸素含有ガスは、温度が約25℃の加熱されていないガスであり得る。ここで、添加されたTiCl4すべてがTiO2に変換されるように注意すべきである。
【0019】
従来の2段階又は多段階のTiCl4燃焼法に比べて、本発明による方法ではより微細な粒子が形成される。従来の多段階法、例えばUS 2008/0075654 A1では、TiO2粒径は熱効果により影響を受ける。温度低下により、TiO2粒子の表面成長だけが遅くなるのである。これに対して本発明による方法の特徴は、第一工程で結晶核のみが形成され、これが第二燃焼工程で不完全結晶として作用することである。より僅かな粒径はさらにまた、スプレーされたTiCl4液滴が、TiCl4ガスよりも均質に酸素含有ガス流に混入され、このため均質な気相反応が強化されて進行可能な点で有利である。
【0020】
本発明による方法は、第一工程における液状TiCl4の量を調節することによって、特定の範囲で最終生成物の平均粒径を制御する可能性をもたらす。特定の粒径を正確に調整するため、従来の方法に比べて、KCl又は他の成長阻害剤が全く必要とならない、或いはより僅かな量で済む。これにより、反応装置のための整備コストも下がる。
【0021】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものだが、これにより本発明が制限されることはない。
【0022】
実施例1:
TiO2顔料を10t/h製造するため、酸素3,500Nm3/hを1,650℃に加熱し、管型反応器に導入する。酸素流にTiCl4を約250kg/h、液状でスプレーする。TiCl4はほんの一部の酸素と反応し、非常に微細なTiO2と、塩素ガスを形成する。酸素、塩素、及びTiO2からの混合物は、管型反応器の第二区域に導入し、そこに気体状TiCl4を24t/h、450℃の温度で導入する。このTiCl4流には、AlCl3が1.5質量%の量で添加混合されている。このTiCl4−AlCl3ガス流は、熱した酸素と反応してTiO2と塩素ガスを形成し、ここで第一工程からのTiO2は、核形成剤として役立つ。このようにして、さらなる成長阻害剤を添加しなくても、白色顔料として使用するための充分に微細なTiO2が生成する。
【0023】
実施例2:
TiO2顔料を10t/h製造するため、酸素2,800Nm3/hを1,650℃に加熱し、管型反応器に導入する。酸素流に、TiCl4を液状で約200kg/hスプレーする。TiCl4はほんの一部の酸素と反応し、非常に微細なTiO2と、塩素ガスを形成する。酸素、塩素、及びTiO2からの混合物は、管型反応器の第二区域に導入し、そこに気体状TiCl4を12t/h、450℃の温度で導入する。このTiCl4流には、AlCl3が1.5質量%の量で添加混合されている。このTiCl4−AlCl3ガス流は、熱した酸素と反応してTiO2と塩素ガスを形成し、ここで第一工程からのTiO2は、核形成剤として役立つ。気体とTiO2とからの混合物は、管型反応器の第三区域に導入し、ここで順次、加熱していない酸素700Nm3/hを約25℃の温度で、そして液状TiCl4を12t/hスプレーする。これら2つの流れは、第二の工程からの気体−固体流によって加熱され、反応してTiO2と塩素ガスを形成する。このようにして、さらなる成長阻害剤を添加しなくても、白色顔料として使用するための充分に微細なTiO2が生成する。
【0024】
実施例1と比べてこの実施例の態様は、エネルギーが節約できるため特に有利である。と言うのも、酸素とTiCl4の一部のみを予熱すればよいからである。反応器の第三区域に計量供給された酸素流とTiCl4流は、工程1及び2から放出された反応熱によって加熱する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管型反応器での四塩化チタンと酸素含有ガスとの反応による、二酸化チタン粒子の多段階製造法において、第一工程で液状のTiCl4を予熱された酸素含有ガス流に導入し、ここでO2:TiCl4のモル比の値は1より大きく、かつ第一のTiO2粒子含有ガス懸濁体が形成され、第二工程で気体状のTiCl4を、第一のTiO2粒子含有ガス懸濁体に導入することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
第一工程において、O2:TiCl4のモル比の値が、少なくとも10、好ましくは20〜200であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二工程後にさらなる工程で、気体状又は液状のTiCl4を導入することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第一工程後のさらなる工程のうちの少なくとも1つで、さらに酸素含有ガスを導入することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第一工程でTiCl4を、全量の最大20%、好ましくは最大10%、及びとりわけ最大2%添加することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第一工程後のさらなる工程のうちの少なくとも1つで、加熱されていない酸素含有ガスを導入することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−518584(P2012−518584A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550450(P2011−550450)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000677
【国際公開番号】WO2010/094400
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】