説明

二酸化炭素の回収方法及びその装置

【課題】コストを抑制すると共に固体燃料を用いて二酸化炭素を回収し得る二酸化炭素の回収方法及びその装置を提供する。
【解決手段】固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出する燃焼炉1と、
還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とが燃焼炉1から供給され、金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にする金属酸化炉2と、
酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとが金属酸化炉2から供給され、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉1に戻す分離手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の回収方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点より二酸化炭素の削減が求められている。そこで石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の固体燃料を燃焼した際に、燃焼により生じた燃焼ガス中から二酸化炭素を分離回収し、更に二酸化炭素を地中等に貯留するように技術開発が進められている。
【0003】
二酸化炭素を分離回収する技術としては、アミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法や化学ループ燃焼法等が考えられており、アミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法は、燃焼設備から排出される窒素、酸素、二酸化炭素等を含むガスに対し、二酸化炭素をアミン水溶液に化学反応で吸収させ、それを加熱等することにより二酸化炭素を分離回収する方法である。
【0004】
化学ループ燃焼法は、金属酸化物中の酸素を用いて燃料を燃焼させることにより、排ガス中に窒素や酸素が含まれないようにし、排ガスを二酸化炭素として分離回収する方法である。
【0005】
尚、前述の如き二酸化炭素の回収方法と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2786559号公報
【特許文献2】特許第3315719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法で二酸化炭素を回収する場合にはアミン水溶液の使用により多大な動力や手間が掛かり、コストが上昇するという問題があった。又、化学ループ燃焼法で二酸化炭素を回収する場合には、燃焼により生じる燃焼灰と金属酸化物との分離が困難であるため、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として用いることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、コストを抑制すると共に固体燃料を用いて二酸化炭素を回収し得る二酸化炭素の回収方法及びその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二酸化炭素の回収方法は、
固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出し、
還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とを金属酸化炉に供給して金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にし、
酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを分離手段に供給し、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻すものである。
【0010】
又、本発明の二酸化炭素の回収方法は、
ガス化ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出し、
還元した金属粒子を金属酸化炉に供給して金属粒子を酸化すると共に排ガスを生じ、
酸化した金属粒子と、排ガスとを分離手段に供給し、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻すものである。
【0011】
本発明の二酸化炭素の回収方法において、固体燃料を熱分解炉に供給して熱分解ガスにすることが好ましい。
【0012】
本発明の二酸化炭素の回収方法において、固体燃料をガス化炉に供給してガス化ガスにすることが好ましい。
【0013】
本発明の二酸化炭素の回収方法において、分離手段で排出される排ガスを集塵装置に供給し、排ガスから燃焼灰を分離することが好ましい。
【0014】
本発明の二酸化炭素の回収方法において、金属粒子を50μm以上1,000μm以下にすると共に燃焼灰を20μm以下にして粒子径の差により分離手段で分離することが好ましい。
【0015】
本発明の二酸化炭素の回収装置は、
固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出する燃焼炉と、
還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とが燃焼炉から供給され、金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にする金属酸化炉と、
酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとが金属酸化炉から供給され、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻す分離手段とを備えるものである。
【0016】
本発明の二酸化炭素の回収装置は、
ガス化ガスと、酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出する燃焼炉と、
還元した金属粒子が燃焼炉から供給され、金属粒子を酸化すると共に排ガスを生じる金属酸化炉と、
酸化した金属粒子と、排ガスとが金属酸化炉から供給され、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻す分離手段とを備えるものである。
【0017】
本発明の二酸化炭素の回収装置において、固体燃料を熱分解ガスにして燃料炉に供給する熱分解炉を備えることが好ましい。
【0018】
本発明の二酸化炭素の回収装置において、固体燃料をガス化ガスにして燃料炉に供給するガス化炉を備えることが好ましい。
【0019】
本発明の二酸化炭素の回収装置において、分離手段で排出される排ガスから燃焼灰を分離する集塵装置を備えることが好ましい。
【0020】
本発明の二酸化炭素の回収装置において、金属粒子を50μm以上1,000μm以下にすると共に燃焼灰を20μm以下にして粒子径の差により分離手段で分離するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の二酸化炭素の回収方法及びその装置によれば、固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、還元された金属粒子と、燃焼炉で生じた燃焼灰とを金属酸化炉に供給して金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にし、酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを分離手段に供給し、酸化して金属粒子を分離して燃焼炉に戻すので、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の適用により、酸化した金属粒子と燃焼灰とが混合される場合であっても、酸化した金属粒子と燃焼灰の分離を容易にし、よって石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
本発明の二酸化炭素の回収方法及びその装置によれば、ガス化ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等をガス化ガスにして処理するので、酸化した金属粒子と燃焼灰の混合を抑制し、よって石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の第一例を示す全体概要構成図である。
【図2】本発明の実施形態の第二例を示す全体概要構成図である。
【図3】本発明の実施形態の第三例を示す全体概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施する形態の第一例を図1を参照して説明する。ここで第一例は請求項1,5,6,7,11,12に対応している。
【0025】
第一例の二酸化炭素の回収方法及びその装置は、固体燃料と金属粒子とが供給されて流動層を形成する燃焼炉1と、燃焼炉1から金属粒子等が供給される金属酸化炉2と、金属酸化炉2から酸化した金属粒子等が供給され且つ酸化した金属粒子を燃焼炉1に戻す分離手段3とを備え、金属粒子を燃焼炉1、金属酸化炉2、分離手段3の間で循環可能にしている。
【0026】
燃焼炉1は、固体燃料が外部から供給されるように下方側部に固定燃料の供給ライン4を備えると共に、酸化した金属粒子が分離手段3から燃焼炉1内へ供給されるように移送管による移送ライン5を配置している。又、燃焼炉1の下部には、流体の供給ライン6を接続した風箱7が配置されており、風箱7は流体を燃焼炉1内の下部へ吹き出すようになっている。更に燃焼炉1の上部には、燃焼炉1内で発生した燃焼排ガスを排出する燃焼排ガスの供給ライン8が備えられると共に、燃焼炉1の側部には、燃焼炉1内で処理した金属粒子等を金属酸化炉2へ供給するように連通管による連通ライン9が配置されている。
【0027】
ここで固体燃料とは、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等である。又、ここでいう金属粒子とは、担体に金属を担持して粒子径50μm以上1,000μm以下、好ましくは100μm以上500μm以下で構成されている。金属粒子の担体は、Al、ZrO、TiO、SiO、MgO、NiAl、CoAl、YSZ、CuAl、AlPO等から選択されており、担体に担持する金属は、Ni、Fe、Cu、Co、Mn等から選択されている。又、供給ライン6の流体は、蒸気又は二酸化炭素等であり、二酸化炭素には酸素を含んでも良い。なお図1中、金属粒子はMで示し、酸化した金属粒子をMOで示している。
【0028】
金属酸化炉2は、燃焼炉1と通じる連通ライン9を下部に接続している。又、金属酸化炉2の下部には、空気の供給ライン10を接続した風箱11が配置されており、風箱11は空気を金属酸化炉2内の下部へ吹き出すようになっている。更に金属酸化炉2の上部には、酸化した金属粒子等を分離手段3へ供給するように送給管による送給ライン12を配置している。
【0029】
分離手段3は、金属酸化炉2と通じる送給ライン12を側部に接続しており、酸化した金属粒子と排ガスとを粒子径の差により分離するように構成されている。又、分離手段3の上部には、排ガスを排出する排出ライン13が備えられると共に、分離手段3の下部には移送管による移送ライン5を配置し、酸化した金属粒子を燃焼炉1へ投下するようになっている。ここで分離手段3は、酸化した金属粒子と排ガスとを分離し得るならば構成は特に制限されるものではないが、サイクロン等が好ましい。又、排出ライン13には、排ガス中の燃焼灰を分離する集塵装置14が配置されている。
【0030】
次に、上記実施の形態の第一例の作用を説明する。
【0031】
固体燃料を燃焼して二酸化炭素を回収する際には、燃焼炉1に、固体燃料を供給ライン4から供給すると共に、酸化した金属粒子を移送ライン5から投下し、更に風箱7から蒸気等の流体を吹き出して燃焼炉1内に流動層を形成し、酸化した金属粒子を500℃以上1,200℃以下の温度領域で還元すると共に固体燃料を燃焼する。
【0032】
ここで燃焼炉1の主な反応を示すと、次の反応を生じると考えられる。
[式1]
C+2MO→CO+2M
[式2]
C+HO→CO+H
[式3]
C+CO→2CO
[式4]
CO+HO⇔CO+H
[式5]
CO+MO→CO+M
[式6]
+MO→HO+M
【0033】
次に燃焼炉1で燃焼して生じた燃焼排ガスを供給ライン8により取り出す。ここで燃焼排ガスは二酸化炭素及び蒸気が主成分であることから二酸化炭素を適宜回収することが可能となる。
【0034】
同時に、燃焼炉1で還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とを連通ライン9より金属酸化炉2に供給し、そして風箱11から空気を吹き出して流動状態にし、500℃以上1,200℃以下の温度領域で金属粒子を酸化する([式7]参照)と共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にする。ここで排ガス中の燃焼灰は、粒子径が20μm以下となっており、粒子径の下限値は1μm以下のサブミクロンの値になっている。又、燃焼灰の粒子径の下限値は1μm以下で所定の粒子径を有するならば特に制限されるものではない。[式7]
M+1/2O→MO
【0035】
続いて酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを金属酸化炉2から送給ライン12を介して分離手段3に送給し、酸化した金属粒子と燃焼灰とを粒子径の差により分離し、酸化した金属粒子を移送ライン5から燃焼炉1へ戻す。又、分離手段3で分離した排ガスを、排出ライン13により集塵装置14に供給し、排ガス中の燃焼灰と、窒素及び酸素の排ガスとに分離し、排ガスを外気等へ排出する。
【0036】
而して、このように実施の形態例の第一例によれば、固体燃料と、酸化した金属粒子とを燃焼炉1に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素及び蒸気として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、燃焼炉1の流動状態を500℃以上1,200℃以下の温度領域にすることで、酸化した金属粒子を好適に還元すると共に、固体燃料を好適に燃焼し、流動層から生じた燃焼排ガスを二酸化炭素及び蒸気として排出することができる。
【0037】
更に還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とを金属酸化炉2に供給して金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にし、酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを分離手段3に供給し、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉1に戻すので、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の適用により、酸化した金属粒子と燃焼灰とが混合される場合であっても、酸化した金属粒子と燃焼灰の分離を容易にし、よって石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができる。更に又、金属酸化炉2の流動状態を500℃以上1,200℃以下の温度領域にすることで、還元された金属粒子を好適に酸化することができる。
【0038】
実施の形態例の第一例において、分離手段3で排出される排ガスを集塵装置14に供給し、排ガスから燃焼灰を分離すると、排ガス中の燃焼灰を適切に取り除いて外気へ排出し得るので、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができる。
【0039】
実施の形態例の第一例において、金属粒子を50μm以上1,000μm以下にすると共に、燃焼炉1及び金属酸化炉2で燃焼灰を20μm以下にして粒子径の差により分離手段3で分離するので、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の適用により、酸化した金属粒子と燃焼灰とが混合される場合であっても、酸化した金属粒子と燃焼灰の分離を容易にし、よって石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができる。又、金属粒子の粒子径を100μm以上、500μm以下にすると、酸化した金属粒子と燃焼灰の分離を一層容易にするので、種々の固体燃料を極めて好適に用いることができる。ここで金属粒子の粒子径を50μm未満にすると、燃焼灰との粒子径の差が小さくなり、金属粒子と燃焼灰を適切に分離することができないという問題がある。又、金属粒子の粒子径を1,000μmより大きくすると、燃焼炉1の流動層の形成や、燃焼炉1、金属酸化炉2、分離手段3の間での循環が困難になるという問題がある。更に燃焼灰は20μm以下ならば、金属粒子と適切に分離し得るので、燃焼灰の下限値は問題となることがない。
【0040】
以下、本発明を実施する形態の第二例を図2を参照して説明する。ここで第二例は請求項2,4,8,10に対応している。
【0041】
第二例の二酸化炭素の回収方法及びその装置は、固体燃焼をガス化ガスにするガス化炉15と、ガス化炉15からのガス化ガスと後述する酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成する燃焼炉16と、燃焼炉16から金属粒子が供給される金属酸化炉17と、金属酸化炉17から酸化した金属粒子等が供給され且つ酸化した金属粒子を燃焼炉16に戻す分離手段18とを備え、金属粒子を燃焼炉16、金属酸化炉17、分離手段18の間で循環可能にしている。
【0042】
ガス化炉15は、固体燃料が外部から供給されるように下方側部に固体燃料の供給ライン19を備えている。又、ガス化炉15の下部には、蒸気、酸素又は二酸化炭素の供給ライン20を接続した風箱21が配置されており、風箱21は蒸気、酸素又は二酸化炭素をガス化炉15内の下部へ吹き出すようになっている。更にガス化炉15の上部には、ガス化炉15内で発生したガス化ガスを燃焼炉16へ供給するガス化ガスの供給ライン22が備えられている。更に又、ガス化ガスの供給ライン22には、サイクロン等による分離手段22aが備えられており、ガス化ガスに含まれる燃焼灰を分離するようになっている。ここで固体燃料は、第一例と同様に、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等である。又、風箱21よりガス化炉15へ供給するものは、酸素や二酸化炭素より蒸気が好ましい。
【0043】
燃焼炉16は、酸化した金属粒子が分離手段18から燃焼炉16内へ供給されるように移送管による移送ライン23を配置している。又、燃焼炉16の下部には、ガス化ガスの供給ライン22を接続した風箱24が配置されており、風箱24はガス化ガスを燃焼炉16内の下部へ吹き出すようになっている。更に燃焼炉16の上部には、燃焼炉16内で発生した燃焼排ガスを排出する燃焼排ガスの供給ライン25が備えられると共に、燃焼炉16の側部には、燃焼炉16内で処理した金属粒子等を金属酸化炉17へ供給するように連通管による連通ライン26が配置されている。
【0044】
ここで金属粒子とは、第一例と同様に、担体に金属を担持して粒子径50μm以上1,000μm以下、好ましくは100μm以上500μm以下で構成されている。金属粒子の担体は、Al、ZrO、TiO、SiO、MgO、NiAl、CoAl、YSZ、CuAl、AlPO等から選択されており、担体に担持する金属は、Ni、Fe、Cu、Co、Mn等から選択されている。なお図2中、金属粒子はMで示し、酸化した金属粒子をMOで示している。
【0045】
金属酸化炉17は、燃焼炉16と通じる連通ライン26を下部に接続している。又、金属酸化炉17の下部には、空気の供給ライン27を接続した風箱28が配置されており、風箱28は空気を金属酸化炉17内の下部へ吹き出すようになっている。更に金属酸化炉17の上部には、酸化した金属粒子等を分離手段18へ供給するように送給管による送給ライン29を配置している。
【0046】
分離手段18は、金属酸化炉17と通じる送給ライン29を側部に接続しており、酸化した金属粒子と排ガスを粒子径の差により分離するように構成されている。又、分離手段18の上部には、排ガスを排出する排出ライン30が備えられると共に、分離手段18の下部には、移送管による移送ライン23を配置し、酸化した金属粒子を燃焼炉16へ投下するようになっている。ここで分離手段18は、金属粒子等を分離し得るならば構成は特に制限されるものではないが、サイクロン等が好ましい。
【0047】
次に、上記実施の形態の第二例の作用を説明する。
【0048】
固体燃料を燃焼して二酸化炭素を回収する際には、ガス化炉15に、固体燃料の供給ライン19から固体燃料を供給し、風箱21から蒸気等を吹き出してガス化炉15内に流動層を形成し、500℃以上2,000℃以下の温度領域で固体燃料をガス化ガスにし、ガス化ガスの供給ライン22により分離手段22aで燃焼灰を分離してガス化ガスを燃焼炉16の風箱24に供給する。
【0049】
次に、燃焼炉16に、酸化した金属粒子を移送ライン23から投下する共に、風箱24からガス化ガスを吹き出して燃焼炉16内に流動層を形成し、酸化した金属粒子を500℃以上1,200℃以下の温度領域で還元すると共にガス化ガスを燃焼する。
【0050】
続いて燃焼炉16で燃焼して生じた燃焼排ガスを供給ライン25により取り出す。ここで燃焼排ガスは二酸化炭素及び蒸気が主成分であることから二酸化炭素を適宜回収することが可能となる。
【0051】
同時に、燃焼炉16で還元した金属粒子を連通ライン26より金属酸化炉17に供給し、そして風箱28から空気を吹き出して流動状態にし、500℃以上1,200℃以下の温度領域で金属粒子を酸化すると共に排ガスを生じる。
【0052】
更に酸化した金属粒子と排ガスとを金属酸化炉17から送給ライン29を介して分離手段18に送給し、酸化した金属粒子と排ガスとを分離し、酸化した金属粒子を移送ライン23から燃焼炉16へ戻す。又、排ガス中には、燃焼灰が存在しないことから第一例の集塵装置14(図1参照)の使用を不要にして、排出ライン30により外気等へ排出する。
【0053】
而して、実施の形態例の第二例によれば、ガス化ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉16に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、燃焼炉16の流動状態を500℃以上1,200℃以下の温度領域にすることで、酸化した金属粒子を好適に還元すると共に、ガス化ガスを好適に燃焼し、流動層から生じた燃焼排ガスを二酸化炭素及び蒸気として排出することができる。
【0054】
更に石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等をガス化ガスにするので、酸化した金属粒子と燃焼灰の混合を抑制し、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができる。更に又、金属酸化炉17の流動状態を500℃以上1,200℃以下の温度領域にすることで、還元された金属粒子を好適に酸化することができる。
【0055】
実施の形態例の第二例において、固体燃料をガス化炉15に供給してガス化ガスにすると、酸化した金属粒子を燃焼炉16の流動層でガス化ガスにより還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、ガス化炉15及び分離手段22aにより固体燃料の燃焼灰を除去するので、金属粒子と燃焼灰との分離を不要にし、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等を固体燃料として好適に用いることができる。
【0056】
以下、本発明を実施する形態の第三例を図3を参照して説明する。ここで第三例は第一例を変更したものであり、第一例と同じ符号を付したものは同じものを示している。又、第三例は、請求項1,3,5,6,7,9,11,12に対応している。
【0057】
第三例の二酸化炭素の回収方法及びその装置は、固体燃料を熱分解ガスにする熱分解炉31と、熱分解ガスと酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成する燃焼炉32と、燃焼炉32から金属粒子等が供給される金属酸化炉2と、金属酸化炉2から酸化した金属粒子等が供給され且つ酸化した金属粒子を燃焼炉32に戻す分離手段3とを備え、金属粒子を燃焼炉32、金属酸化炉2、分離手段3の間で循環可能にしている。
【0058】
熱分解炉31は、固体燃料が外部から供給されるように下方側部に固体燃料の供給ライン33を備えている。又、熱分解炉31の上部には、熱分解炉31内で発生した熱分解ガスを燃焼炉32へ供給する熱分解ガスの供給ライン34が備えられている。更に熱分解炉31には、熱分解炉31内で生じた熱分解残渣を取り出す熱分解残渣の取出ライン31aが備えられている。ここで固体燃料は、第一例と同様に、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等である。
【0059】
燃焼炉32は、酸化した金属粒子が分離手段3から燃焼炉32内へ供給されるように移送管による移送ライン35を配置している。又、燃焼炉32の下部には、熱分解ガスの供給ライン34を接続した風箱36が配置されており、風箱36は熱分解ガスを燃焼炉32内の下部へ吹き出すようになっている。更に燃焼炉32の上部には、燃焼排ガスを排出する燃焼排ガスの供給ライン37が備えられると共に、燃焼炉32の側部には、金属粒子等を金属酸化炉2へ供給するように連通管による連通ライン38が配置されている。ここで燃焼炉32には、別途、固体燃料が外部から供給されるように下方側部に固体燃料の供給ライン4を備えても良いし、熱分解炉31で生じた熱分解残渣が固体燃料として供給されるように、下方側部に熱分解残渣の供給ライン31bを備えても良い。
【0060】
ここで金属粒子とは、第一例と同様に、担体に金属を担持して粒子径50μm以上1,000μm以下、好ましくは100μm以上500μm以下で構成されている。金属粒子の担体は、Al、ZrO、TiO、SiO、MgO、NiAl、CoAl、YSZ、CuAl、AlPO等から選択されており、担体に担持する金属は、Ni、Fe、Cu、Co、Mn等から選択されている。なお図3中、金属粒子はMで示し、酸化した金属粒子をMOで示している。
【0061】
又、金属酸化炉2、分離手段3、集塵装置14は、第一例と同様に構成されている。
【0062】
次に、上記実施の形態の第三例の作用を説明する。
【0063】
固体燃料を燃焼して二酸化炭素を回収する際には、熱分解炉31に、固体燃料を供給ライン33から供給して500℃以上1,200℃以下の温度領域で熱分解ガスと熱分解残渣にし、供給ライン34により熱分解ガスを燃焼炉32の風箱36に供給する。ここで熱分解残渣は取出ライン31aより製品として排出されることが好ましい。
【0064】
次に、燃焼炉32に、酸化した金属粒子を分離手段3の移送ライン35から投下する共に、熱分解ガスを風箱36から吹き出して燃焼炉32内に流動層を形成し、酸化した金属粒子を500℃以上1,200℃以下の温度領域で還元すると共に熱分解ガスを燃焼する。ここで燃焼炉32には、別途、固体燃料を供給ライン4より供給しても良いし、熱分解残渣からなる固体燃料を供給ライン31bより供給しても良い。
【0065】
続いて燃焼炉32で燃焼して生じた燃焼排ガスを供給ライン37により取り出す。ここで燃焼排ガスは二酸化炭素及び蒸気が主成分であることから二酸化炭素を適宜回収することが可能となる。
【0066】
同時に、第一例と同様に、燃焼炉32で還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とを連通ライン38より金属酸化炉2に供給し、そして風箱11から空気を吹き出して流動状態にし、500℃以上1,200℃以下の温度領域で金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にする。ここで排ガス中の燃焼灰は、粒子径が20μm以下となっており、粒子径の下限値は1μm以下のサブミクロンの値になっている。又、燃焼灰の粒子径の下限値は1μm以下で所定の粒子径を有するならば特に制限されるものではない。
【0067】
続いて金属酸化炉2で酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを送給ライン12によりサイクロン等の分離手段3に送給し、酸化した金属粒子と燃焼灰とを粒子径の差により分離し、酸化した金属粒子を移送ライン35により燃焼炉32へ戻す。又、分離手段3で分離した燃焼灰を含む排ガスを、排出ライン13により集塵装置14に供給し、排ガス中の燃焼灰と、窒素及び酸素の排ガスとに分離し、排ガスを外気等へ排出する。
【0068】
而して、実施の形態例の第三例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。
【0069】
実施の形態例の第三例において、固体燃料を熱分解炉31に供給して熱分解ガスにすると、酸化した金属粒子を燃焼炉32の流動層で熱分解ガスにより還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出するので、燃焼排ガスを二酸化炭素として容易に分離回収することができ、よってアミン水溶液を用いた二酸化炭素回収法に比べて手間を低減すると共に単純な構成によりコストを抑制することができる。又、熱分解炉31によって固体燃料を熱分解ガスと熱分解残渣にするので、熱分解ガスを燃焼炉32で容易に適用することができると共に、熱分解残渣を別の製品又は固体燃料として利用することができる。更に熱分解ガスを燃焼炉32の流動ガスとして用いるので、第一例で必要であった蒸気や二酸化炭素等の流動ガス(リサイクルガス)を不要にすることができる。
【0070】
尚、本発明の二酸化炭素の回収方法及びその装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
1 燃焼炉
2 金属酸化炉
3 分離手段
14 集塵装置
15 ガス化炉
16 燃焼炉
17 金属酸化炉
18 分離手段
31 熱分解炉
32 燃焼炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出し、
還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とを金属酸化炉に供給して金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にし、
酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとを分離手段に供給し、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻すことを特徴とする二酸化炭素の回収方法。
【請求項2】
ガス化ガスと、酸化した金属粒子とを燃焼炉に供給して流動層にし、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出し、
還元した金属粒子を金属酸化炉に供給して金属粒子を酸化すると共に排ガスを生じ、
酸化した金属粒子と、排ガスとを分離手段に供給し、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻すことを特徴とする二酸化炭素の回収方法。
【請求項3】
固体燃料を熱分解炉に供給して熱分解ガスにすることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項4】
固体燃料をガス化炉に供給してガス化ガスにすることを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項5】
分離手段で排出される排ガスを集塵装置に供給し、排ガスから燃焼灰を分離することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項6】
金属粒子を50μm以上1,000μm以下にすると共に燃焼灰を20μm以下にして粒子径の差により分離手段で分離することを特徴する請求項1に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項7】
固体燃料又は/及び熱分解ガスと、酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出する燃焼炉と、
還元した金属粒子と、流動層で生じた燃焼灰とが燃焼炉から供給され、金属粒子を酸化すると共に、燃焼灰を排ガスに含まれる状態にする金属酸化炉と、
酸化した金属粒子と、燃焼灰を含む排ガスとが金属酸化炉から供給され、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻す分離手段とを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収装置。
【請求項8】
ガス化ガスと、酸化した金属粒子とが供給されて流動層を形成し、酸化した金属粒子を流動層で還元すると共に、流動層で生じた燃焼排ガスを二酸化炭素として排出する燃焼炉と、
還元した金属粒子が燃焼炉から供給され、金属粒子を酸化すると共に排ガスを生じる金属酸化炉と、
酸化した金属粒子と、排ガスとが金属酸化炉から供給され、酸化した金属粒子を分離して燃焼炉に戻す分離手段とを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収装置。
【請求項9】
固体燃料を熱分解ガスにして燃料炉に供給する熱分解炉を備えたことを特徴とする請求項7に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項10】
固体燃料をガス化ガスにして燃料炉に供給するガス化炉を備えたことを特徴とする請求項8に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項11】
分離手段で排出される排ガスから燃焼灰を分離する集塵装置を備えたことを特徴とする請求項7に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項12】
金属粒子を50μm以上1,000μm以下にすると共に燃焼灰を20μm以下にして粒子径の差により分離手段で分離するように構成されたことを特徴する請求項7に記載の二酸化炭素の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16873(P2011−16873A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160852(P2009−160852)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】