説明

二酸化炭素吸着材

【課題】吸着した二酸化炭素を脱離して再生させるために必要となるエネルギーが小さく、かつ、二酸化炭素の吸着の度合い、または、二酸化炭素の脱離の度合いを判断することが容易な二酸化炭素吸着材を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む、二酸化炭素吸着材。


(式(1)中、aは1〜4の整数を表す。R1は、炭素原子数1〜20の2価の有機基を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素吸着材として、二酸化炭素を吸着したり脱離したりできる材料が検討されており、例えば、アミノアルコールや、アミノ基を有するイオン性液体が知られている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】G.Puxtyら、Environ. Sci. Technol. 2009, 43, 6427−6433.
【非特許文献2】E.D.Batesら、J.Am.Chem.Soc.2002, 124, 926−927.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの二酸化炭素吸着材は、吸着した二酸化炭素を脱離して再生させるために必要となるエネルギーが大きいという問題や、二酸化炭素の吸着の度合い、または、二酸化炭素の脱離の度合いを判断することが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、吸着した二酸化炭素を脱離して再生させるために必要となるエネルギーが小さく、かつ、二酸化炭素の吸着の度合い、または、二酸化炭素の脱離の度合いを判断することが容易な二酸化炭素吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の[1]〜[3]を提供する。
【0007】
[1]下記式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む二酸化炭素吸着材。
【0008】
【化1】

(式(1)中、
aは1〜4の整数を表す。
1は、炭素原子数1〜20の2価の有機基を表し、R1が2つ以上ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基を表す。複数あるR2は、同一であっても異なっていてもよい。R3が2つ以上ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
2つのR1は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。2つのR2は結合して、それらが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。2つのR3は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR1と1つのR2は結合して、R1が結合する炭素原子およびR2が結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR1と1つのR3は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR2と1つのR3は結合して、R2が結合する窒素原子およびR3が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
[2]前記式(1)で表される構造単位を有する化合物が共役系化合物である、[1]に記載の二酸化炭素吸着材。
[3]前記式(1)で表される構造単位を有する化合物が、前記式(1)で表される構造単位のみからなる化合物である、[2]に記載の二酸化炭素吸着材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二酸化炭素吸着材によれば、吸着した二酸化炭素を脱離して再生させるために必要となるエネルギーが小さく、かつ、二酸化炭素の吸着の度合い、または、二酸化炭素の脱離の度合いを判断することが容易である。従って、各種産業にて排出される気体から、二酸化炭素を効率的に除去することが可能となり、地球温暖化問題の解決に貢献するが期待される。
また、好ましい実施形態では、本発明の二酸化炭素吸着材は、二酸化炭素の吸着または脱離により導電性が変化するので、二酸化炭素センサー材料、二酸化炭素スイッチ材料等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例4で用いた二酸化炭素吸着・脱離実験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、説明する。
【0012】
<用語>
まず、本明細書において使用される用語について説明する。
「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物または基を構成する水素原子が無置換の場合および水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の双方を含み、置換基によって置換されている場合には、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルアミノ基等(これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。)によって置換されていることを意味し、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基または炭素原子数1〜18のヒドロカルビルアミノ基で置換されていることが好ましく、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基または炭素原子数1〜12のヒドロカルビルアミノ基で置換されていることがより好ましく、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜6のヒドロカルビルオキシ基または炭素原子数1〜6のヒドロカルビルアミノ基で置換されていることが更に好ましい。ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基およびヒドロカルビルアミノ基等の置換基はそれぞれ、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよい。
「2価の芳香族基」とは、芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の2個を除いた残りの原子団、芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の2個を除いた残りの原子団、または、芳香族炭化水素および芳香族複素環式化合物から選ばれる2個以上の化合物が直接結合した化合物における環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の2個を除いた残りの原子団を表す。
「共役系化合物」とは、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる化合物、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる化合物、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造および二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる化合物を意味する。
【0013】
置換基であるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子、塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは、フッ素原子または塩素原子である。
【0014】
置換基であるヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれでもよい。
上記のヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、コロニル基等のアルキル基、アルケニル基およびアリール基が挙げられ、
好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。
【0015】
置換基であるヒドロカルビルオキシ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれでもよい。
上記のヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニウムエチトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等のアルキルオキシ基およびアリールオキシ基が挙げられ、
好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基またはヘキシルオキシ基である。
【0016】
置換基であるヒドロカルビルアミノ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれでもよい。
上記のヒドロカルビルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1−アダマンチルアミノ基、2−アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、アンモニウムエチルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α-ジメチルベンジルアミノ基、2−フェネチルアミノ基、1−フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2―ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基等のアルキルアミノ基およびアリールアミノ基が挙げられ、
好ましくはメチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基または3,7−ジメチルオクチルアミノ基であり、
更に好ましくはメチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基またはヘキシルアミノ基である。
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
<二酸化炭素吸着材>
−式(1)で表される構造単位を有する化合物−
本発明の二酸化炭素吸着材は、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む、二酸化炭素吸着材である。
【0019】
前記式(1)中、R1で表される2価の有機基は、置換基を有していてもよい。
2価の有機基の炭素原子数は通常1〜20である。2価の有機基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキレン基、炭素原子数6〜20の2価の芳香族基、炭素原子数1〜20のオキシアルキレン基(即ち、−R−O−で表される基(Rはアルキレン基を表す。))が挙げられ、塩基性を高める観点から、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基が更に好ましい。アルキレン基の中では、化合物内でのプロトンの授受のしやすさの観点からは、炭素原子数1のものが好ましい。化合物の溶媒への溶解性を高めて加工性を確保する観点からは炭素原子数2〜20のものが好ましい。
この2価の有機基の例としては、メチレン基、1,1−エチレン−ジイル基、1,2−エチレン−ジイル基、1,2−プロピレン−ジイル基、1,3−プロピレン−ジイル基、1,3−イソプロピレン−ジイル基、2,2−プロピレン−ジイル基、1,2−ブチレン−ジイル基、1,3−ブチレン−ジイル基、1,4−ブチレン−ジイル基、2,2−ブチレン−ジイル基、2,3−ブチレン−ジイル基、1,1−ペンチレン−ジイル基、1,2−ペンチレン−ジイル基、1,3−ペンチレン−ジイル基、1,4−ペンチレン−ジイル基、1,5−ペンチレン−ジイル基、2,2−ペンチレン−ジイル基、2,3−ペンチレン−ジイル基、2,4−ペンチレン−ジイル基、3,3−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,3−プロピレン−ジイル基、2−オキサ−1,4−ブチレン−ジイル基、3−オキサ−1,4−ブチレン−ジイル基、2−オキサ−1,3−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,4−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,5−ペンチレン−ジイル基、3−オキサ−1,4−ペンチレン−ジイル基、3−オキサ−1,5−ペンチレン−ジイル基、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、1,2−フェンレンジイル基、1,3−フェンレンジイル基、1,4−フェンレンジイル基、o−キシリレン基等が挙げられ、
好ましくは、メチレン基、1,2−エチレン−ジイル基、1,3−プロピレン−ジイル基、1,4−ブチレン−ジイル基、1,5−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,3−プロピレン−ジイル基、2−オキサ−1,4−ブチレン−ジイル基、3−オキサ−1,4−ブチレン−ジイル基、2−オキサ−1,3−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,4−ペンチレン−ジイル基、2−オキサ−1,5−ペンチレン−ジイル基、3−オキサ−1,4−ペンチレン−ジイル基、3−オキサ−1,5−ペンチレン−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基またはペンタン−1,5−ジイル基である。
【0020】
前記式(1)中、R2およびR3で表される炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基は、置換基を有していてもよく、直鎖、分岐鎖または環状のいずれでもよい。
このヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、コロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α―ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。
【0021】
前記式(1)中、aは、好ましくは1または2である。前記式(1)で表される構造単位を有する化合物の共役がより長くなり得るためである。
【0022】
前記式(1)で表される構造単位は、共役が長くなるので、下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【0023】
【化2】

(式(2)中、a、R1、R2およびR3は、前記と同じ意味を表す。)
【0024】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物(以下、前記式(2)で表される構造単位を有する化合物も含む。)において、式(1)で表される構造で表される構造単位の含有率は、二酸化炭素吸着性がより優れ、かつ、通電により十分なプロトンを遊離できるため二酸化炭素をより効率的に脱離し得るので、全構造単位の合計を100モル%としたとき、1〜100モル%が好ましく、5〜100モル%がより好ましく、10〜100モル%が更に好ましい。
【0025】
前記式(1)で表される構造単位は、本発明の二酸化炭素吸着材に含まれる化合物に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0026】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物は、前記式(1)で表される構造単位以外に、前記式(1)で表される構造単位とは異なるその他の構造単位を有していてもよい。
【0027】
その他の構造単位としては、共役がより長いと、二酸化炭素を吸着した際に導電性が向上するため、二酸化炭素センサー材料や二酸化炭素スイッチ材料に用いた際の二酸化炭素の検出感度が向上するので、下記式(3)で表される構造単位が好ましい。
【0028】
【化3】

(式(3)中、
Ar1は、2価の芳香族基を表す。この芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基および置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のアシル基からなる群より選ばれる基を置換基として有していてもよい。)
【0029】
前記式(3)中、Ar1が有し得る置換基である、アルキル基、アルコキシ基、アリール基およびアリールオキシ基は、前記式(1)において説明し例示したものと同じである。また、前記式(3)中、Ar1が有し得る置換基であるアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基があげられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0030】
上記式(3)中、Ar1で表される2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基;1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮合環芳香族基;ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の2価の芳香族複素環基が挙げられ、これらの中でも、2価の単環性芳香族基が好ましい。
【0031】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物において、前記式(3)で表される構造単位等のその他の構造単位の含有率は、前記式(1)で表される構造単位の合計を100モル%としたとき、0〜200モル%が好ましく、0〜100モル%がより好ましい。
【0032】
前記式(3)で表される構造単位等のその他の構造単位は、本発明の二酸化炭素吸着材に含まれる化合物に、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0033】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物は、ポリアニリン骨格を有する化合物であることが特に好ましい。ポリアニリン骨格を有する化合物は、例えば、以下で表される。
【0034】
【化4】

(式中、yはモル比を表す0〜1の数であり、nは繰り返し単位数である。)
【0035】
yの値によって、以下の態様(呼称)がある。
y=1 ポリ(パラフェニレンアミン)(「ロイコエメラルディン」と呼ばれることもある。)
y=0.5 ポリ(パラフェニレンアミンイミン)(「エメラルディン」と呼ばれることもある。)
y=0 ポリ(パラフェニレンイミン)(「ペルニグラニリン」と呼ばれることもある。)
【0036】
nとしては、導電性が向上し、かつ、成膜した際の膜強度が優れるので、4以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。また、nの上限としては、溶媒に溶解させて加工(例えば、塗布。)する際の操作性が確保し易いので、通常、2000である。
【0037】
これらの化合物は、いずれもプロトン化によって塩型にもなり、多様性を示す。また、これらの化合物と塩型との相互変換は、酸化還元、pH変化等によって行うことができる。
【0038】
また、これらの化合物は、上述の各態様について導電性が異なる。カチオンを含むもの(塩型)は導電性が高く、カチオンを含まないもの(ベース型)は導電性が低いか、または、導電性を有しない。
【0039】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物は、分子鎖の主鎖に上記のポリアニリン骨格を有し、かつ、側鎖にアルキルアミノ基を有することが好ましい。これにより、例えば、下記の酸化還元サイクルを循環させることができるので、二酸化炭素の吸着および脱離によるスイッチングが可能になる。なお、本発明の二酸化炭素吸着材は、二酸化炭素が吸着すると導電性が向上し、二酸化炭素が脱離すると導電性が低下する傾向にある。
【0040】
【化5】

(式中、nは繰り返し単位数である。)
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の二酸化炭素吸着材は、二酸化炭素の吸着性がより優れるので、電気的に中性である。具体的には、アミノアルキル基がプロトン化等されていない。また、本発明の別の好ましい実施形態では、導電性を変化させ易いので、エメラルディン型である。
【0042】
以下、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物を、エメラルディン型で例示する。
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

(式中、nは繰り返し単位数である。)
【0046】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物は、導電性が向上し、かつ、成膜した際の膜強度が優れるので、高分子化合物であることが好ましく、その分子量は、2000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましい。また、前記分子量の上限は、溶媒に溶解させて加工(例えば、塗布。)する際の操作性が確保し易いので、通常、1000000である。なお、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物が高分子化合物である場合、その分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0047】
本発明の二酸化炭素吸着材は、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物のみからなるものでもよいが、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物とその他の成分との組成物であってもよい。前期式(1)で表される構造単位を有する化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の二酸化炭素吸着材が含み得るその他の成分としては、例えば、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物とは異なる高分子化合物が挙げられる。この高分子化合物としては、二酸化炭素の吸着性をより維持できるので、pHが中性に近い高分子化合物が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂が挙げられる。これらのその他の成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の二酸化炭素吸着材において、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物の含有率は、1〜100重量%が好ましく、5〜100重量%がより好ましく、10〜100重量%が更に好ましい。
【0050】
本発明の二酸化炭素吸着材において、その他の成分である高分子化合物の含有率は、前記式(1)で表される構造単位を有する化合物の合計を100重量%としたとき、0〜1000重量%が好ましく、0〜500重量%がより好ましく、0〜300重量%が更に好ましい。
【0051】
−前記式(1)で表される構造単位を有する化合物の製造方法−
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物の製造方法としては、例えば、芳香環の水素原子の1つがアミノアルキル基に置換されたアニリン化合物を用いて、塩酸水溶液中、過硫酸アンモニウムを反応させる方法(例えば、実験化学講座(丸善第4版)28巻「高分子合成」342−343頁の実験例4・74記載のポリアニリン合成法等の公知の方法)を適用することができる。この反応により得られた化合物の分子量や化学構造は、ゲル浸透クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル(NMR)等の通常の分析手段により求めることができる。
【0052】
<二酸化炭素吸着材の形状>
本発明の二酸化炭素吸着材の形状は、例えば、膜、粉末、ペレットである。これらの中でも、通電がし易いので、気体中(例えば、大気中)から二酸化炭素を除去する目的で利用する際には、膜が好ましい。膜の形態には、例えば、単独膜、複合膜、多孔質膜がある。
【0053】
前記膜の厚さは、気体中(例えば、大気中)から二酸化炭素を除去する目的で利用する際には、二酸化炭素の吸着性および空気透過性が良好になるので、3μm〜3cmが好ましく、0.1mm〜2cmがより好ましく、1mm〜1cmが特に好ましい。
【0054】
膜の空隙率は、気体中(例えば、大気中)から二酸化炭素を除去する目的で利用する際には、二酸化炭素の吸着性と空気透過性を維持できるように調整する。
【0055】
二酸化炭素を吸着した前記膜から、二酸化炭素を脱離させるには、電気エネルギーまたは光エネルギーが、好適に利用できる。
【0056】
<二酸化炭素吸着材の用途・応用>
本発明の二酸化炭素吸着材は、気体中から二酸化炭素を分離する装置にも応用することができる。また、純度の低い二酸化炭素を精製する装置(例えば、本発明の二酸化炭素吸着材に二酸化炭素を吸着させた後、通電により該二酸化炭素を放出させる装置)にも応用することができる。
【0057】
これらの装置に本発明の二酸化炭素吸着材を用いる場合、導電性が高くなれば二酸化炭素の吸着が飽和に達したと判断することができる。その後、この二酸化炭素吸着材に通電する等して二酸化炭素を脱離することで二酸化炭素吸着能を再生するか、あるいは、二酸化炭素吸着材を交換することにより、これらの装置を継続利用することができる。
【0058】
特に、気体中から二酸化炭素を分離する装置は、二酸化炭素の濃度が高い場所や二酸化炭素量が多い場所に設置すると、地球温暖化問題に有効である。このような場所としては、例えば、工場、火力発電所等の産業プラントの排気ガスラインや、冷蔵庫等の家電用品が挙げられる。
【0059】
上述のとおり、式(1)で表される構造単位を有する化合物は、二酸化炭素吸着材の製造に使用できる。また、本発明は、式(1)で表される構造単位を含む化合物と、二酸化炭素を含む気体とを接触させて、該化合物に二酸化炭素を吸着させ、該気体から二酸化炭素の一部又は全部を除く気体の精製方法を提供する。さらに本発明は、式(1)で表される構造単位を含む化合物と、二酸化炭素を含む気体とを接触させて、該化合物に二酸化炭素を吸着させ、その後該化合物から二酸化炭素を脱離させる二酸化炭素の精製方法を提供する。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
化合物のフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)は、日本分光製のFT/IR−460Plus(商品名)を用いてATR法にて測定した。また、ピーク面積は、当該装置に付属の解析ソフトで算出した。
【0062】
気相中の二酸化炭素濃度の測定には、理研計器製赤外線式ポータブルCO2検知器(RI−85)を用いた。なお、該CO2検知器は、吸引した測定気体の二酸化炭素濃度を測定した後、該測定気体を排気する機構を有する。
二酸化炭素吸着・脱離の確認を行うための電解反応(電解還元、電解酸化)装置としては、北斗電工株式会社製のH型電解槽(HX−108)を用いた。
電解反応で電圧をかける装置としては、ALS製 モデル701Cデュアル電気化学アナライザーを用いた。
【0063】
化合物の二酸化炭素吸着量は、以下のとおり、算出した。
赤外吸収スペクトルについて、1543〜1582cm-1の範囲で最大となる−C(=O)−O-結合構造のピーク面積をピーク面積(P2)とし、1372〜1534cm-1の範囲で最大となるベンゼン環のsp2炭素−sp2炭素結合構造のピーク面積をピーク面積(P1)とした。そして、P2/P1を化合物の二酸化炭素の吸着率とした。
【0064】
<実施例1>
[ポリ(アミノメチル)アニリンの合成]
【0065】
【化9】

【0066】
過硫酸アンモニウム5.0g(0.022mol)を2.0mol/Lの塩酸40mlに−3℃で溶解させ、溶液Aを調製した。別途、2−アミノベンジルアミン2.69g(0.022mmol)を2.0mol/Lの塩酸15mLに−3℃で溶解させ、溶液Bを調製した。
溶液Aを溶液Bに3分間かけて滴下し、0℃以下で3時間撹拌した後、10℃以下で2時間攪拌した。その後、反応液をアセトン水溶液400mL(アセトンと水の体積比は、アセトン:水=1:1)に滴下し、12時間攪拌した後、沈殿が生じたので、吸引ろ過して、この沈殿を取り出した。得られた沈殿をアセトン水溶液(アセトンと水の体積比は、アセトン:水=1:1)で繰り返し洗浄し、ろ液のpHが7になったことを確認後、沈殿を2.0mol/Lのアンモニア水82mLに入れて攪拌した。その後、吸引ろ過により沈殿をろ別した。得られた沈殿をアセトン水溶液(アセトンと水の体積比は、アセトン:水=1:1)で繰り返し洗浄し、ろ液のpHが7であることを確認した。50℃で1日間真空乾燥させることにより、褐色粉末のポリ(アミノメチル)アニリン0.36g(2−アミノベンジルアミン基準の重量収率13%、エメラルディン型)を得た。
【0067】
[ポリ(アミノメチル)アニリンの二酸化炭素吸着実験]
まず、得られたポリ(アミノメチル)アニリンのFT−IRを測定し、ピーク面積(P2/P1)を算出した(二酸化炭素曝露時間0時間)。
続いて、ポリ(アミノメチル)アニリン50mgをサンプル瓶に入れ、このサンプル瓶をポリエチレン製カップに入れてから、ドライアイスを入れた後、アルミホイルで蓋をし、二酸化炭素中に曝露した。ドライアイスはなくならないように適宜追加した。二酸化炭素曝露5時間後に、FT−IRを測定し、ピーク面積比(P2/P1)を算出した(二酸化炭素曝露時間5時間)。得られた結果を表1に示す。
【0068】
ポリ(アミノメチル)アニリンを二酸化炭素に曝露することにより、1560cm-1付近にC(=O)(−O-)逆対称伸縮と推測される吸収が現れ、また、P2/P1が増加しているので、ポリ(アミノメチル)アニリンへの二酸化炭素吸着が進行していることが確認された。
【0069】
<表1>
二酸化炭素曝露時間 P2/P1
0時間 0.000
5時間 0.034
【0070】
<比較例1>
[ポリアニリンの合成]
実験化学講座(丸善第4版)28巻「高分子合成」342−343頁の実験例4・74記載のポリアニリン合成法に従って、エメラルディン型ポリアニリン(粉末)0.71gを合成した。
【0071】
[ポリアニリンの二酸化炭素吸着実験]
まず、得られたポリアニリンのFT−IRを測定し、ピーク面積比(P2/P1)を算出した(二酸化炭素曝露時間0時間)。
続いて、ポリアニリン50mgをサンプル瓶に入れ、このサンプル瓶をポリエチレン製カップに入れてから、ドライアイスを入れた後、アルミホイルで蓋をし、二酸化炭素中に曝露した。ドライアイスはなくならないように適宜追加した。二酸化炭素曝露3時間にFT−IRを測定し、ピーク面積比(P2/P1)を算出した(二酸化炭素曝露時間3時間)。得られた結果を表2に示す。
【0072】
<表2>
二酸化炭素曝露時間 P2/P1
0時間 0.000
3時間 0.000
【0073】
二酸化炭素曝露前と二酸化炭素曝露3時間後では、P2/P1の変化もピークの変化も認められないので、ポリアニリンへの二酸化炭素吸着は進行していないことが確認された。
【0074】
<実施例2>
[ポリ(アミノメチル)アニリンの二酸化炭素吸着実験2]
まず、実施例1で得られたポリ(アミノメチル)アニリンを有機溶媒に溶解させて調製する溶液を用いれば、キャスト法により膜を得ることができる。そして、この膜を2つの電極で挟んで通電することにより、その導電性(二酸化炭素曝露前)を測定すると、導電性は著しく低いことが分かる。
続いて、この膜をプラスチック製のトレイに入れる。それをステンレス製カップの底に置き、そこにドライアイスの塊を置いた後、蓋をして数時間放置する。途中、ドライアイスがなくならないように、随時補充する。その後、前記膜を回収する。回収する膜を2つの電極で挟んで通電することにより、その導電性を測定すると、二酸化炭素曝露後の導電性は、二酸化炭素曝露前の導電性より高いことが分かる。
【0075】
<実施例3>
[二酸化炭素を吸着したポリ(アミノメチル)アニリンの膜からの二酸化炭素脱離実験]
実施例2において、二酸化炭素曝露後に得られた膜を2つの電極で挟んで通電を継続することにより、その導電性を測定すると、導電性は徐々に低下し、実施例2における二酸化炭素曝露前の導電性に近づく。
【0076】
<比較例2>[2−ピペリジンエタノールの二酸化炭素吸着および脱離実験]
「E.D.Batesら、J.Am.Chem.Soc.2002, 124, 926−927.」に従って、2−ピペリジンエタノールを合成し、2−ピペリジンエタノールを二酸化炭素に曝露させると、二酸化炭素を吸着する。しかし、二酸化炭素を吸着後に、得られた2−ピペリジンエタノールに電圧を印加しても、導電率に経時的な変化はないので、二酸化炭素は脱離しないことが分かる。
【0077】
<実施例4>
[ポリ(アミノメチル)アニリンの二酸化炭素吸着・脱離実験]
図1に示す二酸化炭素吸着・脱離実験装置を用いて、ポリ(アミノメチル)アニリンの二酸化炭素吸着・脱離実験を行った。
すなわち、対電極と作用電極をナフィオン(登録商標)膜(Nafion117、Aldrich社より購入)で遮断したH型電解槽に、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのN,N−ジメチルホルムアミド溶液25ml(0.1mol/L)(テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレート3.29gを100mLメスフラスコに仕込み、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解させながら100mLにメスアップすることで調製した。)を、23℃にて、対電極側槽、作用電極側槽のそれぞれに加えた後、窒素ガスでバブリングすることで、作用電極側槽の気体を窒素ガスで置換した。
その後、実施例1で得られたポリ−(アミノメチルアニリン)0.27g(実施例1に記載の繰返し単位換算で(分子量479)、0.57mmol)を、作用電極側槽のテトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのN,N−ジメチルホルムアミド溶液中に分散させ、作用電極側槽の分散液を窒素ガスでバブリングした。その後、二酸化炭素と窒素ガスの混合ガス(二酸化炭素含有量は4500ppm。)を作用電極側槽に導入することで、二酸化炭素含有量が2400ppmである二酸化炭素と窒素の混合雰囲気を作用電極側槽に調製した。
23℃にて、作用電極側槽の気相部分をCO検知器で吸引し、該CO検知器より二酸化炭素濃度測定後に排出される気体で溶液をバブリングして循環させたところ、作用電極側槽の気相部分の二酸化炭素濃度は30分間で2100ppmまで減少した。
その後、23℃にて、対電極と作用電極の間に1.5Vの一定電圧で16C(クーロン)に達するまで電解酸化を行ったところ、70分間で作用電極側槽の気相部分の二酸化炭素濃度は2400ppmまで増加した。これらのことから、二酸化炭素の吸着および脱離が進行していることを確認した。
【0078】
続けて、23℃にて、対電極と作用電極の間に−2.5Vの一定電圧で−13C(クーロン)に達するまで電解還元を行なったのち、電圧をかけずに気相部分をCO検知器で吸引し、CO検知器より二酸化炭素濃度測定後に排出される気体で溶液をバブリングして循環させたところ、作用電極側槽の気相部分の二酸化炭素濃度は60分間で2000ppmまで減少した。
その後、23℃にて、対電極と作用電極の間に1.5Vの一定電圧で23Cに達するまで電解酸化を行ったところ、70分間で作用電極側槽の気相部分の二酸化炭素濃度は2300ppmまで増加した。これらのことから、二酸化炭素の吸着および脱離が再び進行していることを確認した。
【符号の説明】
【0079】
(1)…H型電解槽
(2a)…対電極
(2b)…作用電極
(2c)…参照電極
(3)…イオン交換膜
(4)…二酸化炭素検知器
(4a)…吸引口
(4b)…排気口
(5)…スターラーチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する化合物を含む、二酸化炭素吸着材。
【化1】

(式(1)中、
aは1〜4の整数を表す。
1は、炭素原子数1〜20の2価の有機基を表し、R1が2つ以上ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20のヒドロカルビル基を表す。複数あるR2は、同一であっても異なっていてもよい。R3が2つ以上ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
2つのR1は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。2つのR2は結合して、それらが結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。2つのR3は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR1と1つのR2は結合して、R1が結合する炭素原子およびR2が結合する窒素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR1と1つのR3は結合して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。1つのR2と1つのR3は結合して、R2が結合する窒素原子およびR3が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物が共役系化合物である、請求項1に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項3】
前記式(1)で表される構造単位を有する化合物が、前記式(1)で表される構造単位のみからなる化合物である、請求項2に記載の二酸化炭素吸着材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−183529(P2012−183529A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32521(P2012−32521)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】