説明

二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置

【課題】アンモニア冷媒回路の排熱を回収してデフロストに使用することにより、より一層の省エネルギー化及び安全性の向上を図る。
【解決手段】二酸化炭素冷媒回路13と、アンモニア冷媒回路14と、アンモニア冷媒に生じる発熱により二酸化炭素冷媒をホットガス化するホットガス熱交換器16と、二酸化炭素・ホットガスを負荷側冷却器11内に供給して除霜するデフロスト回路15と、負荷側冷却器11に対する接続を二酸化炭素冷媒回路13とデフロスト回路15の間で切り換える切り換え手段と、を備える二酸化炭素循環・冷却システムにおいて、デフロスト回路15内に、二酸化炭素・ホットガスを貯留しておく膨張タンク39と、膨張タンク39内の二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを負荷側冷却器11とカスケードコンデンサー12の間に逃がすホットガス・バイパス手段41を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置に関するものであり、特に、除霜デフロストの熱源として二酸化炭素・ホットガスを利用してなる二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、オゾン層破壊防止や温暖化防止等の地球環境保全の観点から、室内の空調設備や物品の冷却・冷凍に用いる冷凍装置の冷媒を、広く用いられて来たフロンに代えて、自然冷媒でオゾン破壊係数がゼロであり、また、地球温暖化係数がゼロもしくは限りなくゼロに近いアンモニアNH3)を用いる冷凍装置の採用が増加している。
【0003】
しかしながら、アンモニアは人体に有毒であるので、アンモニア冷媒回路の冷熱を負荷側冷却器に直接供給するのではなく、アンモニアと同じ自然冷媒ではあるが、毒性の無い二酸化炭素CO2、俗称「炭酸ガス」を冷媒とする2次冷媒回路を介在せしめて負荷冷却器側に熱を供給する構成とした自然冷媒冷却システムが実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述した二酸化炭素を冷媒とする回路は、アンモニア冷媒回路で生じる冷熱を凝縮冷熱として利用し、二酸化炭素を液化してレシーバーに貯留する。また、この液冷媒を液ポンプで負荷側冷却器に送り、該負荷側冷却器で熱交換を終えた冷媒のうち、気化したものはカスケードコンデンサーで凝縮されてレシーバーに戻り、気化せず液体のものは直接レシーバーに戻るようになっている。
【0005】
そして、従来、二酸化炭素を冷媒とする二酸化炭素冷媒回路に設けられた負荷側冷却器に付着する霜の除霜(デフロスト)は、散水デフロストまたは電気ヒータデフロストで行われるのが一般的であった。
【0006】
しかしながら、このように散水デフロストまたは電気ヒータによる除霜は、冷凍倉庫等への放熱量が多く、省エネルギー化に反していた。
【0007】
そこで、本件出願人は、アンモニア冷媒回路の排熱を二酸化炭素冷媒回路側へ移し、従来、大気中に廃棄していたアンモニア冷媒回路の排熱を回収し、この排熱を除霜に使用して省エネルギー化を図るようにした二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置を、特開2010−181093号(特許文献2参照)により提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2002−243350号公報。
【特許文献2】特開平2010−181093号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2で提案した二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置は、従来、大気中に廃棄していたアンモニア冷媒回路の排熱を回収し、この排熱を除霜に使用するので、省エネルギー化に十分寄与して来たが、今日でも、より一層の省エネルギー化及び安全性への改良が要望されている。
【0010】
そこで、アンモニア冷媒回路の排熱を二酸化炭素冷媒回路側に移して冷却するとともに、該アンモニア冷媒回路の排熱を回収してデフロストに使用することにより、より一層の省エネルギー化及び安全性の向上を図ることができるようにする具体的なシステム構成を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、負荷側冷却器と、カスケードコンデンサーと、二酸化炭素冷媒が前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーを通って循環される二酸化炭素冷媒回路と、アンモニア冷媒が前記カスケードコンデンサーを通って循環するアンモニア冷媒回路と、前記アンモニア冷媒に生じる発熱により前記二酸化炭素冷媒をホットガス化するホットガス熱交換器と、前記二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器内に供給して除霜するデフロスト回路と、前記負荷側冷却器に対する接続を前記二酸化炭素冷媒回路と前記デフロスト回路の間で切り換える切り換え手段と、を備える二酸化炭素循環・冷却システムにおいて、前記デフロスト回路内に、前記二酸化炭素・ホットガスを貯留しておくバッファ手段と、該バッファ手段内の前記二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーの間に逃がすホットガス・バイパス手段を設けた二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、冷却システム運転中に二酸化炭素冷媒回路の負荷側冷却器に付着する霜を除霜デフロストする場合は、切り換え手段による切り換え操作で、負荷側冷却器に対する二酸化炭素冷媒回路の接続を遮断し、かつ、デフロスト回路との接続に切り換えると、デフロスト回路内の二酸化炭素・ホットガスは、負荷側冷却器の温度が低いために負荷側冷却器内へ引き寄せられ、これが負荷側冷却器内で液化し、その熱が氷解に使用されて除霜することができる。
【0013】
また、負荷側冷却器とホットガス熱交換器と連絡配管内のデフロスト時における二酸化炭素・ホットガスの容量は、二酸化炭素の物性により、温度が高いときにはガス化されてガス量が増え、液量が減るが、反対に温度が低いときにはガス量が減り、液量が増える。その大きさは、例えば負荷側冷却器とホットガス熱交換器と連絡配管内の容量が1m3とすると、二酸化炭素冷媒の15℃の時の絶対飽和圧力は5.2MPa、ガス比重は約160kg/m3で、この系統内ではガスは約160kg、液は0kgとなる。一方、二酸化炭素冷媒の−20℃の時の絶対飽和圧力は2.0MPa、ガス比重は約51kg/m3で、液比重は約1kg/リットルで、この系統内ではガス状態で約約51kg、液状態では109kg存在する。したがって、冷却運転の途中で、デフロスト運転に切り換えられると、負荷側冷却器内に送られる二酸化炭素・ホットガスは切り換え初期の圧力は低く、デフロスト初期段階にはデフロストを効果的に行うことができないという問題が発生する。
【0014】
しかし、この構成による装置では、前記デフロスト回路内に前記二酸化炭素・ホットガスを貯留しておくバッファ手段を設けており、負荷側冷却器の接続をデフロスト回路側に切り換えると、バッファ手段に予め貯留されていた二酸化炭素・ホットガスが負荷側冷却器側に圧力を高めた状態で流され、かつ、負荷側冷却器内で液化し、その熱が氷解に使用されて除霜に寄与して急速にデフロストを行うことができる。
【0015】
また、バッファ手段を含むデフロスト回路系統において、二酸化炭素・ホットガスを過剰に保有していると制限圧力を超えるが、この構成による装置では、デフロスト回路系統内にホットガス・バイパス手段を設け、該バッファ手段内の二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを負荷側冷却器とカスケードコンデンサーの間に逃がし、デフロスト回路系統内の制限圧力の上昇を防止する。これにより、デフロスト回路系統内の圧力は常に制限圧力内に保持され、二酸化炭素・ホットガスを大気に放出することがない。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記ホットガス・バイパス手段は、一端部側を前記膨張タンクに接続し、かつ他端部側を前記負荷側冷却器と、前記カスケードコンデンサーの間に接続してなる圧力逃がし配管と該圧力逃がし配管を通る前記二酸化炭素・ホットガスの量を調整する調整弁、を備えてなる二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、デフロスト回路系統内から負荷側冷却器とカスケードコンデンサーの間に逃がす二酸化炭素・ホットガスの量を、調整弁により簡単に調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明は、アンモニア冷媒回路のアンモニア冷媒に生じる発熱排熱で二酸化炭素冷媒をホットガスにし、該二酸化炭素・ホットガスにより負荷側冷却器に付着している霜を除霜デフロストするので、省エネルギーの効果が期待される。
【0019】
また、従来のように、別途、除霜用の電気ヒータ装置を設ける場合ではヒータ配線及び設備が必要であり、除霜用の散水装置を設ける場合ではデフロスト水槽や送水管等の設備を必要になるが、本発明では、これらの設備を設置しなくてもよいので、これらの設備にかかる設置コストの節約及びメンテナンスコストの節約を図ることができる効果が期待される。
【0020】
さらに、二酸化炭素・ホットガスを貯留したバッファ手段をデフロスト回路内に設けておき、負荷側冷却器への接続が二酸化炭素冷媒回路からデフロスト回路に切り換えられてデフロストが行われるとき、バッファ手段に予め貯留されていた二酸化炭素・ホットガスが負荷側冷却器の側へ大量に流れて液化し、その熱が氷解に使用されて除霜に寄与し、急速にデフロストを可能にするので、良好なデフロストを最初から効果的に行うことができる。
【0021】
また、さらにホットガス・バイパス手段を設けたことによってデフロスト回路系統内における二酸化炭素・ホットガスの量が所定量を越えると、超えたホットガスを負荷側冷却器とカスケードコンデンサーの間に逃がすので、デフロスト回路系統内の圧力は常に制限圧力内に保持され、二酸化炭素・ホットガスが大気に放出されることもなく、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係るデフロスト装置を適用した二酸化炭素循環・冷却システムの構成図。
【図2】本発明の実施例に係るデフロスト装置のホットガス・バイパス手段を制御する一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明はアンモニア冷媒回路の排熱を二酸化炭素冷媒回路側に移して冷却するとともに、該アンモニア冷媒回路の排熱を回収してデフロストに使用することにより、より一層の省エネルギー化及び安全性の向上を図ることができるようにする具体的なシステム構成を提供するという目的を達成するために、負荷側冷却器と、カスケードコンデンサーと、二酸化炭素冷媒が前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーを通って循環される二酸化炭素冷媒回路と、アンモニア冷媒が前記カスケードコンデンサーを通って循環するアンモニア冷媒回路と、前記アンモニア冷媒に生じる発熱により前記二酸化炭素冷媒をホットガス化するホットガス熱交換器と、前記二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器内に供給して除霜するデフロスト回路と、前記負荷側冷却器に対する接続を前記二酸化炭素冷媒回路と前記デフロスト回路の間で切り換える切り換え手段と、を備える二酸化炭素循環・冷却システムにおいて、前記デフロスト回路内に、前記二酸化炭素・ホットガスを貯留しておくバッファ手段と、該バッファ手段内の前記二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーの間に逃がすホットガス・バイパス手段を設けたことにより実現した。
【0024】
以下、本発明に係る二酸化炭素循環・冷却システムのデフロスト装置について、好適な実施例をあげて詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
図1は本発明の実施例に係るデフロスト装置を適用した二酸化炭素循環・冷却システムの構成図である。同図において、該二酸化炭素循環・冷却システムは、負荷側冷却器11と、カスケードコンデンサー12と、二酸化炭素CO2)を冷媒とし、かつ、該二酸化炭素冷媒が前記負荷側冷却器11と前記カスケードコンデンサー12を通って循環される二酸化炭素冷媒回路13と、アンモニアNH3)を冷媒とし、該アンモニア冷媒が前記カスケードコンデンサー12を通って循環するアンモニア冷媒回路14と、システム全体を決められた手順に従って制御する演算回路でなる制御部10等により構成されている。また、二酸化炭素冷媒回路13の一部にはデフロスト除霜回路15が設けられ、該デフロスト回路15とアンモニア冷媒回路14との間にはホットガス熱交換器16が設けられている。
【0026】
前記負荷側冷却器11及び該負荷側冷却器11に接続された二酸化炭素冷媒回路13の一部は、例えば冷凍倉庫・冷蔵倉庫・出荷室1以下、これらを総称して「冷凍倉庫1」という内に配設され、該二酸化炭素冷媒回路13の残りの一部及びカスケードコンデンサー12dと、人体に有害なアンモニア冷媒を使用するアンモニア冷媒回路14等は冷凍倉庫1の外側に配設している。
【0027】
前記二酸化炭素冷媒回路13内には、液化された二酸化炭素冷媒を蓄えておく二酸化炭素・レシーバー17と、該二酸化炭素・レシーバー17内の二酸化炭素を前記負荷側冷却器11に供給する二酸化炭素・ポンプ18が設けられている。また、前記二酸化炭素冷媒回路13の一部に設けられているデフロスト回路15には、該二酸化炭素・レシーバー17内の二酸化炭素冷媒を前記ホットガス熱交換器16に供給する二酸化炭素・ポンプ19が設けられている。
【0028】
前記アンモニア冷媒回路14は、液化されたアンモニア冷媒を蓄えておくアンモニア・レシーバー20と、圧縮機21と凝縮器22とを有して成るアンモニア冷媒・冷凍ユニット23と、アンモニア・コンデンサー24と、アンモニア電磁弁25と、により構成されている。
【0029】
前記ホットガス熱交換器16は、前記カスケードコンデンサー12から排出された前記アンモニア冷媒回路14内のアンモニア冷媒に生じる熱を、前記デフロスト回路15の前記二酸化炭素冷媒に移し、該デフロスト回路15内の二酸化炭素冷媒を気化させて二酸化炭素・ホットガスを生成するように構成されている。
【0030】
前記デフロスト回路15内には、前記負荷側冷却器11と前記ホットガス熱交換器16の間に、二酸化炭素・電動弁26と二酸化炭素・圧力指示調節器27と二酸化炭素・圧力発信器28及び膨張タンク39が設けられている。そして、該二酸化炭素・電動弁26の開度を調整することにより、前記二酸化炭素・ホットガスの前記負荷側冷却器11に供給される量を全閉を含めて任意に調整できるようになっている。なお、膨張タンク39は、デフロスト用の二酸化炭素・ホットガスを予め貯留しておくためのバッファ手段を構成しているタンクであり、二酸化炭素・ホットガスの貯留量に応じて貯留容積が可変するものである。また、その許容貯留量には十分な余裕が持たされ、十分な余裕を持たせておくことにより、二酸化炭素・ホットガスが異常に多く生成されたときの緩衝機能も有している。
【0031】
さらに、前記デフロスト回路15内には、安全装置として、前記膨張タンク39内の二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器11と前記カスケードコンデンサー12の間に逃がすホットガス・バイパス手段41が設けられている。すなわち、デフロスト回路15において、二酸化炭素・ホットガスを過剰に保有していると制限圧力を超えることがあるが、デフロスト回路15内にホットガス・バイパス手段41を設け、該膨張タンク39を含むデフロスト回路15内の二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えたホットガスを負荷側冷却器11とカスケードコンデンサー12の間に逃がすようにすると、デフロスト回路15内の制限圧力の上昇が抑えられる。これにより、デフロスト回路系統内の圧力を常に制限圧力内に保持することができ、二酸化炭素・ホットガスを大気に放出されるのを防止できる。
【0032】
そして、本実施例では、ホットガス・バイパス手段41は、一端部側を膨張タンク39に接続するとともに、他端部側を負荷側冷却器11とカスケードコンデンサー12の間に接続してなる圧力逃がし配管42と、該圧力逃がし配管42内を通る二酸化炭素・ホットガスを開閉する全開・全閉可能な二酸化炭素・止弁43a、及び、絞り調整可能な絞り弁43bとでなる調整弁43と、膨張タンク19内の圧力Pcまたは、デフロスト回路系統内の圧力Pcを検出するホットガス圧力指示調節器44とで構成されている。なお、調整弁43における二酸化炭素・止弁43aの開閉操作及び絞り弁43bの絞り調整は、制御部10による自動制御または手動操作により行われる。
【0033】
一方、前記二酸化炭素冷媒回路13内には、前記負荷側冷却器11の運転を、冷却運転またはデフロス運転の何れか一方の運転に切り換えるための二酸化炭素・電動弁29,30,31,32と、庫内温度・指示調節器33と、二酸化炭素・圧力指示調節器34と、二酸化炭素・圧力発信器35が設けられている。
【0034】
なお、本実施例では、ホットガス熱交換器16は、膨張タンク39及び負荷側冷却器11より低い位置に設置されている。また、二酸化炭素・電動弁29,30,31,32と二酸化炭素・電動弁26は、負荷側冷却器11に対する二酸化炭素冷媒回路13とデフロスト回路15の接続を切り換える切り換え手段40を構成している。さらに、図示しないが負荷側冷却器11は、冷却コイルとドレンパンとケーシングを備えている。そして、デフロスト回路15は、前記冷却コイル内と少なくとも前記ドレンパンまたは/及び前記ケーシング内を通って配管された構成になっており、冷却コイル内のデフロストと同時に、前記ドレンパンまたは/及び前記ケーシング内のデフロストを行うことができるようになっている。
【0035】
次に、この二酸化炭素循環・冷却システムの動作について説明する。なお、このシステムでは、冷却運転及びデフロスト運転等の操作は、制御部10の制御を介して行われる。また、図中、二酸化炭素・ホットガス系統デフロスト回路15における二酸化炭素・ホットガスの流れは実線で、二酸化炭素・冷却系統二酸化炭素冷媒回路13における二酸化炭素冷媒の流れは点線でそれぞれ示す。さらに、アンモニア系統アンモニア冷媒回路14の高圧側におけるアンモニア冷媒の流れは一点鎖線で、アンモニア系統アンモニア冷媒回路14の低圧側におけるアンモニア冷媒の流れは二点鎖線でそれぞれ示している。
【0036】
まず、前記負荷側冷却器11が冷却運転している時における二酸化炭素冷媒の流れについて説明する。冷却運転時、切り換え手段40を構成している二酸化炭素・電動弁31及び二酸化炭素・電動弁29は開、二酸化炭素・電動弁26及び二酸化炭素・電動弁30は閉とされる。そして、二酸化炭素・レシーバー17に蓄えられている液化二酸化炭素が、二酸化炭素・ポンプ18により二酸化炭素・止弁36と二酸化炭素・電動弁31、及び、二酸化炭素・電動弁32を経由して負荷側冷却器11に導かれ、該負荷側冷却器11が冷凍倉庫1内を冷却する。
【0037】
また、この冷却では、庫内温度・指示調節器33で設定された温度に対して、制御部10が二酸化炭素・電動弁31を開閉、または、比例制御することにより、冷凍倉庫1の室温制御を行う。このときに気化された液化二酸化炭素冷媒は、二酸化炭素・電動弁29と二酸化炭素・止弁37を経由してカスケードコンデンサー12に送られ、該カスケードコンデンサー12で再び液化されて二酸化炭素・レシーバー17に戻り、気化せずに液体のものは二酸化炭素・レシーバー17に直接戻って蓄えられ、冷却に使用される。以下、このサイクルを繰り返す。
【0038】
次に、冷却運転時におけるアンモニア冷媒回路14のアンモニア冷媒の流れについて説明する。アンモニア・レシーバー20に蓄えられているアンモニア冷媒は、アンモニア・レシーバー20から液冷媒として出て、アンモニア・電磁弁25を通り、カスケードコンデンサー12に送られる。そして、該ガスケードコンデンサー12で、上述したように負荷側冷却器11側から戻る二酸化炭素冷媒回路13内の二酸化炭素ガスを冷却して液化する。
【0039】
一方、カスケードコンデンサー12において二酸化炭素ガスを冷却液化したアンモニア液冷媒は、ガス化されてアンモニア冷媒・冷凍ユニット23に吸い込まれる。また、該アンモニア冷媒・冷凍ユニット23内の圧縮機21及び凝縮器22により圧縮されて高温の高圧ガスとなり、さらにアンモニア・水冷コンデンサー24に送られる。そして、該アンモニア・水冷コンデンサー24で潜熱を奪われて液化された後、アンモニア・レシーバー20に蓄えられ、冷却に使用される。以下、このサイクルを繰り返す。
【0040】
次に、デフロスト運転時における二酸化炭素冷媒の流れとアンモニア冷媒の流れについて説明する。デフロスト運転に切り替えられると、この切り替えに連動して切り換え手段40を構成している二酸化炭素・電動弁31及び二酸化炭素・電動弁29が閉じられ、反対に二酸化炭素・電動弁26及び二酸化炭素・電動弁30が開く。
【0041】
そして、二酸化炭素・電動弁26及び二酸化炭素・電動弁30が開くと、バッファ手段を構成している膨張タンク39内の二酸化炭素・ホットガス及びデフロスト回路15内に溜まっていた二酸化炭素・ホットガスは、負荷側冷却器11の温度が低いために該負荷側冷却器11内に引き寄せられる。
【0042】
同時に、二酸化炭素・レシーバー17に液化されて蓄えられている二酸化炭素媒体が、二酸化炭素・昇圧ポンプ19により二酸化炭素・電動弁38を通過して二酸化炭素・ホットガス熱交換器16に送られる。
【0043】
前記ホットガス熱交換器16に送られた液化二酸化炭素は、アンモニア冷媒・冷凍ユニット23で高温・高圧にされたアンモニア冷媒と該二酸化炭素・ホットガス熱交換器16内で熱交換をし、二酸化炭素・ホットガスに相変化する。ここで生成された二酸化炭素・ホットガスは、二酸化炭素・電動弁26を通過して負荷側冷却器11内に、膨張タンク39内の二酸化炭素・ホットガス及びデフロスト回路15内に溜まっていた二酸化炭素・ホットガスと共に送られる。以後、この動作を繰り返すことにより負荷側冷却器11は徐々に昇温し、該負荷側冷却器11に付着した霜を溶かして除去デフロストする。
【0044】
また、このデフロスト運転では、デフロスト回路15が冷却コイル内と前記ドレンパンと前記ケーシング内を通って配管されているので、冷却コイルのデフロストと同時に前記ドレンパン及び前記ケーシング内のデフロストも行う。
【0045】
一方、ホットガス熱交換器16内で潜熱を奪われたアンモニア冷媒は液化されてアンモニア・レシーバー20に戻され、液化しないで気化しているものはアンモニア・水冷コンデンサー24を介し凝縮されてアンモニア・レシーバー20に戻される。
【0046】
また、前記負荷側冷却器11に送られた前記二酸化炭素・ホットガスは、潜熱を奪われて液化し、二酸化炭素・電動弁30を経由して前記ホットガス熱交換器16に送られる。このホットガス熱交換器16に戻された二酸化炭素冷媒は、該ホットガス熱交換器16で再びガス化されてデフロスト用ホットガスとして再び使用される。
【0047】
なお、デフロスト終期には、負荷側冷却器11の温度が上昇し、該負荷側冷却器11内での液化が止まる。そして、デフロスト回路15内の余った二酸化炭素・ホットガスは膨張タンク39に貯留され、次回のデフロスト用として用意される。そして、制御部10は、デフロストが終了すると、切り換え手段40を構成している二酸化炭素・電動弁31及び二酸化炭素・電動弁29を開とし、反対に二酸化炭素・電動弁26及び二酸化炭素・電動弁30を閉じる。
【0048】
また、バッファ手段を含むデフロスト回路系統において、図2にその制御手順の一例を示すように、制御部10はホットガス・バイパス手段41のホットガス圧力指示調節器44からの信号を常に監視していて、膨張タンク19内の圧力Pc(または、デフロスト回路系統内の圧力Pc)が予め設定される所定圧力Ps以上、すなわち膨張タンク19内における二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えると調整弁43を制御し、その超えた二酸化炭素・ホットガスを負荷側冷却器11とカスケードコンデンサー12の間に逃がし、デフロスト回路系統内の制限圧力の上昇を防止する。この調整弁43の制御では、二酸化炭素・止弁43aの開閉操作及び絞り弁43bの絞り調整を組み合わせて最適な調整を行い、また調整後は二酸化炭素・止弁43aは全閉にする。これにより、デフロスト回路系統内の圧力を常に制限圧力内に保持する。
【0049】
したがって、本実施例に係る二酸化炭素循環・冷却システムのデフロスト装置によれば、アンモニア冷媒回路14のアンモニア冷媒に生じる発熱排熱で二酸化炭素冷媒を気化させてホットガスにし、該二酸化炭素・ホットガスの熱により負荷側冷却器11に付着している霜を除霜デフロストするので、省エネルギー化できる。
【0050】
また、デフロスト用の水槽や送水管等の設備を必要としないので、設備にかかる設置コストの節約、及び、メンテナンスコストの節約を図ることができる。
【0051】
さらに、二酸化炭素・ホットガスを貯留したバッファ手段としての膨張タンク39をデフロスト回路15内に設けておき、負荷側冷却器11への接続が二酸化炭素冷媒回路13からデフロスト回路15に切り換えられてデフロスト運転が行われるとき、膨張タンク39に予め貯留されていた二酸化炭素・ホットガスが負荷側冷却器11側へ大量に流れて負荷側冷却器11内で液化し、その熱が氷解に使用されて除霜に寄与するので、急速にデフロストを行うことができる。
【0052】
このデフロストの効果についてさらに説明すると、デフロスト回路15を構成している負荷側冷却器11とホットガス熱交換器16と連絡配管内のデフロスト時における二酸化炭素・ホットガスの容量は、二酸化炭素の物性により、温度が高いときにはガス化されてガス量が増え、液量が減る。また、反対に温度が低いときにはガス量が減り、液量が増える。
【0053】
その大きさは、負荷側冷却器11とホットガス熱交換器16と連絡配管内の容量を仮に1m3とし、その系の炭酸ガス充填量を160kgとすると、ガス量と液量は下記の表1の如くとなる。
【0054】
【表1】

【0055】
このため、膨張タンク39が無い場合、システムの冷却運転途中に、負荷側冷却器11への接続が二酸化炭素冷媒回路13からデフロスト回路15に切り換えられてデフロスト運転に変更されると、負荷側冷却器11内に送られる二酸化炭素・ホットガス量はデフロスト運転に切り換えられた初期には少なく、初期段階ではデフロスト効果的が十分に得ることができないという問題が発生する。
【0056】
しかし、本実施例のように、デフロスト回路15内に二酸化炭素・ホットガスを貯留しておくバッファ手段としての膨張タンク39が設けられている場合では、負荷側冷却器11の接続をデフロスト回路15側に切り換えられると、膨張タンク39に予め貯留されていた二酸化炭素・ホットガスが負荷側冷却器11側へ大量に流れて該負荷側冷却器11内で液化し、その熱が氷解に使用されて除霜に寄与し、急速にデフロストを行うことができることになる。
【0057】
また、本実施例では、バッファ手段として膨張タンク39を設けた構造を開示したが、デフロスト回路15内に二酸化炭素・ホットガスを貯留しておける構造であれば、必ずしも膨張タンク39でなくてもよい。
【0058】
さらに、ホットガス・バイパス手段41を設けたことによってデフロスト回路系統内における二酸化炭素・ホットガスの量が所定量を越えると、その超えたホットガスを負荷側冷却器11とカスケードコンデンサー12の間に逃がすので、デフロスト回路系統内の圧力は常に制限圧力内に保持されることになり、二酸化炭素・ホットガスが大気に放出されることなく、安全性が向上することになる。
【0059】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は冷蔵倉庫、冷凍倉庫以外に、冷凍ショーケース等の冷凍システムにも応用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 冷凍倉庫
10 制御部
11 負荷側冷却器
12 カスケードコンデンサー
13 二酸化炭素冷媒回路
14 アンモニア冷媒回路
15 デフロスト回路
16 ホットガス熱交換器
17 二酸化炭素・レシーバー
18 二酸化炭素・ポンプ
19 二酸化炭素・昇圧ポンプ
20 アンモニア・レシーバー
21 圧縮機
22 凝縮器
23 アンモニア冷媒・冷凍ユニット
24 アンモニア・水冷コンデンサー
25 アンモニア・電磁弁
26 二酸化炭素・電動弁
27 二酸化炭素・圧力指示調節器
28 二酸化炭素・圧力発信器
29 二酸化炭素・電動弁
30 二酸化炭素・電動弁
31 二酸化炭素・電動弁
32 二酸化炭素・電動弁
33 庫内温度・指示調節器
34 二酸化炭素・圧力指示調節器
35 二酸化炭素・圧力発信器
36 二酸化炭素・止弁
37 二酸化炭素・止弁
38 二酸化炭素・電動弁
39 膨張タンク(バッファ手段)
40 切り換え手段
41 ホットガス・バイパス手段
42 圧力逃がし配管
43 調整弁
43a 二酸化炭素・止弁
43b 絞り弁
44 ホットガス圧力指示調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側冷却器と、カスケードコンデンサーと、二酸化炭素冷媒が前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーを通って循環される二酸化炭素冷媒回路と、アンモニア冷媒が前記カスケードコンデンサーを通って循環するアンモニア冷媒回路と、前記アンモニア冷媒に生じる発熱により前記二酸化炭素冷媒をホットガス化するホットガス熱交換器と、前記二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器内に供給して除霜するデフロスト回路と、前記負荷側冷却器に対する接続を前記二酸化炭素冷媒回路と前記デフロスト回路の間で切り換える切り換え手段と、を備える二酸化炭素循環・冷却システムにおいて、
前記デフロスト回路内に、前記二酸化炭素・ホットガスを貯留しておくバッファ手段と、該バッファ手段内の前記二酸化炭素・ホットガスの貯留が所定量超えた際に、その超えた二酸化炭素・ホットガスを前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーの間に逃がすホットガス・バイパス手段を設けたことを特徴とする二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置。
【請求項2】
上記ホットガス・バイパス手段は、一端部側を前記デフロスト回路に接続し、かつ他端部側を前記負荷側冷却器と前記カスケードコンデンサーの間に接続してなる圧力逃がし配管と、該圧力逃がし配管を通る前記二酸化炭素・ホットガスの量を調整する調整弁、を備えてなることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素循環・冷却システムにおけるデフロスト装置。

【図1】
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【図2】
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