説明

二重エアゾール容器用の内袋および二重エアゾール容器ならびに二重エアゾール製品の製造法

【課題】バルブのクリンチ後にシール機能が向上し、アンダーカップ充填時にバルブとの間のシール機能が向上する二重エアゾール容器用の内袋ならびに二重エアゾール容器および二重エアゾール製品の製造法を提供する。
【解決手段】底部と、胴部22と、肩部23と、その肩部の上端から上向きに延びる首部24と、その首部の上端から外向きに拡がるフランジ25とからなる合成樹脂製の内袋12。フランジ25は、複数枚の環状の折り返し片26〜30を備えたジャバラ状に構成する。フランジ25は、バルブ13のマウンティングカップ38の被せ部42と容器本体11のビード17との間に狭着したとき、折り畳まれて厚くなりシール効果を増大する。アンダーカップ充填時にはフランジ25の弾発力で被せ部42との間のシール性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重エアゾール容器用の内袋およびそれを用いた二重エアゾール容器ならびに二重エアゾール製品の製造法に関する。さらに詳しくは、二重エアゾール容器用の内袋のフランジの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】国際公開WO99/16684号公報
【特許文献2】米国特許第4150522号明細書
【特許文献3】特公昭56−48035号公報
【特許文献4】特開昭57−104571号公報
【0003】
特許文献1には、アンダーカップ充填によりガス(プロペラント)を充填する際に、ガスの充填圧力で内袋のフランジをマウンティングカップの被せ部に密着させて内袋内へのガスの進入を防止する技術が記載されている。この特許文献1の図6には、フランジの幅方向における中央部に環状段部を設け、線シール構造とする例が開示されている。このものはバルブをクリンチしたときに環状段部が肉厚となってシール圧力が高くなる。
【0004】
特許文献2の図2には、内袋の首部の上端に厚肉のフレキシブルリングを接合し、ガスケットを設けない例が開示されている。このものは厚肉のフレキシブルリングをマウンティングカップの被せ部と容器本体のビードとの間に介在させ、クリンチするときにフレキシブルリングを挟圧してシール機能を得ることができる。すなわちフレキシブルリングがガスケットの役割を果たすため、ガスケットを省略できる。
【0005】
特許文献3には、内袋の首部の下部をジャバラ構造とした二重エアゾール装置が開示されている。このものはアンダーカップ充填のときにマウンティングカップの立ち上がり壁を内袋の上部に摩擦嵌合で嵌合して一体化することができる。それによりマウンティングカップをクリンチ装置の爪で保持し、内袋のフランジをビード部より上側に保持したり、マウンティングカップを容器本体にクリンチするときに、内袋のフランジをスムーズに容器本体のカール部に押しつけることができる。
【0006】
特許文献4には、首部に内向きに折り曲げ片を設け、さらに胴部の全体をジャバラ構造とした二重エアゾール容器の内袋が開示されている。このものも特許文献3と同様の作用効果を奏する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のフランジ部に設けた環状段部は、バルブのクリンチ後に線シール構造となるため、シール機能を発揮することができる。しかしマウンティングカップの被せ方あるいはクリンチの仕方によっては環状段部の折れ方が不均一になり、クリンチ後のシールが不充分な場合がある。また、環状段部を備えたフランジはガス充填時に被せ部に沿った変形がしにくいため、シール機能を発揮しにくい。そのため、アンダーカップ充填中に内袋内にガスが入り込まないように、内袋の首部とマウンティングカップの立ち上がり部の嵌合部分で充分にシールさせる必要がある。しかし嵌合部だけではガス充填時のシール機能が充分ではなく、内袋の内部にガスが入り込むことがある。
【0008】
特許文献2のフランジをフレキシブルリングとした内袋は、ブロー成型した内袋の上端にフレキシブルリングを接合するので、製造工程が煩雑である。また、フランジを単に厚くするだけでは、ガス充填圧力を受けてたときに変形しにくくなる。そのため、被せ部との間に隙間ができやすく、内袋の内部にガスが入り込みやすい。
【0009】
特許文献3および4の内袋は、首部や胴部にジャバラを備えているため、内袋を容器本体の底に載置し、首部の上端を容器本体の開口部から上方に突出させた状態で内容物を充填することができる。また、クリンチするときにジャバラが撓むので、クリンチの邪魔にならない。しかし容器本体の上端とマウンティングカップの被せ部の間に狭着されるフランジは、1枚のシートであるから、クリンチ後のシール機能は充分でない。また、アンダーカップ充填のときにマウンティングカップを下方に押しつけたときにジャバラが撓むので首部が下降し、内袋の首部とマウンティングカップの立ち上がり部が嵌合しにくい。そのためこの部分のシール性が弱い。さらにフランジとマウンティングカップの被せ部の間には強い当接圧が働かず、フランジは充分なシール機能を奏しない。
【0010】
本発明はクリンチ後に容器本体とマウンティングカップの間のシール機能が向上する製造が容易な二重エアゾール容器用の内袋を提供することを第1の課題としている。さらに本発明は、アンダーカップ充填時に、被せ部と密接して内袋内へのガスの侵入を抑制しうる二重エアゾール容器用の内袋を提供することを課題としている。さらに本発明はそのような内袋を用いた二重エアゾール容器および二重エアゾール製品の製造法を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二重エアゾール容器用の内袋(請求項1)は、底部と、胴部と、上向きに延びる首部と、その首部の上端から外向きに拡がるフランジとが、合成樹脂によって形成されており、前記フランジが、複数枚の環状の折り返し片を備えたジャバラ状に構成されていることを特徴としている。
【0012】
このような二重エアゾール容器用の内袋においては、前記ジャバラ状のフランジが自然な状態で縦方向に伸びており、加圧により縮む方向に弾力変形するもの(請求項2)が好ましい。さらに前記ジャバラ状のフランジを構成する折り返し片のうち上端の折り返し片が、他の折り返し片の外周より外側まで拡がっているものが好ましい(請求項3)。
【0013】
本発明の二重エアゾール容器(請求項4)は、有底筒状の容器本体と、その容器本体の上端に被せられてクリンチされる被せ部を備えたマウンティングカップを有するバルブと、前記容器本体内に収容される前記いずれかの内袋とを備え、前記内袋のジャバラ状のフランジが、前記容器本体の上端とマウンティングカップの被せ部との間に介在されることを特徴としている。
【0014】
このような二重エアゾール容器においては、前記内袋を容器本体の内底面に載置したとき、前記複数枚の折り返し片のうち下端の折り返し片が容器本体の上端より突出するものが好ましい(請求項5)。
【0015】
本発明の二重エアゾール製品の製造法(請求項6)は、容器本体とバルブと前記ジャバラが自然な状態で伸びている内袋とを準備し、内袋に原液を充填し、バルブのマウンティングカップの立ち上がり壁の外周面を内袋の首部に嵌合させてシールすると共にマウンティングカップの被せ部によりフランジを縮む方向に弾力変形させ、容器本体と内袋の間の空間にガスを充填し、マウンティングカップを容器本体にクリンチすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二重エアゾール容器用の内袋(請求項1)は、耐圧性の容器本体内に収容され、フランジをバルブのマウンティングカップの被せ部と容器本体の上端の間に狭着して二重エアゾール容器となる。通常はバルブを容器本体に取り付ける前に、内袋内に原液を充填し、内袋と容器本体の間にガスを充填して二重エアゾール製品とされる。
【0017】
本発明の内袋では、フランジがジャバラ状に構成されているので、マウンティングカップを容器本体にクリンプすると、ジャバラが折り畳まれた状態でマウンティングカップの被せ部と容器本体の上端との間に挟圧される。それによりジャバラを構成する複数枚の折り返し片が互いに重なり、各折り返し片が薄くても、全体として厚いフランジとなる。さらに折り返し片の多層構造であるので、厚くても変形しやすく、被せ部の内面との密接性が高い。そのため、アンダーカップ充填時およびクリンプ後のシール効果が高い。また、ジャバラ状のフランジの各折り返し片の厚さは首部や胴部などの厚さと同程度でよいので、内袋と一体成形することができ、容易に製造することができる。さらにジャバラ状のフランジを首部の上端に設けたので、特許文献3や特許文献4のように首部の下端や胴部など、内袋の途中にジャバラを設ける必要がなく、成形が容易である。
【0018】
このような内袋において、前記ジャバラ状のフランジが、自然な状態で縦方向に延びており、加圧により縮む方向に弾力変形する場合(請求項2)は、アンダーカップ充填の時に弾力変形の反発力でマウンティングカップと内袋の間のシール性がさらに向上し、内袋内にガスが侵入しにくくなる。ただしフランジが軸方向の弾力性を有せず、自然な状態で折り返し片同士が密接しているものであってもフランジ全体が厚く、しかもフランジは多層であるので厚くても変形し易い。そのため、マウンティングカップの内面との密接性が高い。
【0019】
前記ジャバラ状のフランジを構成する折り返し片のうち、上端の折り返し片が、他の折り返し片の外周より外側まで拡がっている場合(請求項3)は、マウンティングカップの被せ部との密着性が高くなり、アンダーカップ充填のときのシール性が一層向上する。さらに上端の折り返し片の打ち抜き加工が容易になる。
【0020】
本発明の二重エアゾール容器(請求項4)は、前述の内袋を備えているので、それぞれの前述の内袋の作用効果を奏する。
【0021】
前記内袋を容器本体の内底面に載置したとき、前記複数枚の折り返し片のうち下端の折り返し片が容器本体の上端より突出する場合(請求項5)は、内袋を容器本体の底面で支持できる。それにより原液を安定して充填することができる。さらにアンダーカップ充填のとき、バルブを持ち上げなくても折り返し片の下端と容器本体の上端との間からガスを充填することができる。また、内袋の途中にジャバラを設ける必要がないので、バルブを内袋に装着するとき、バルブを押しつけたときの押し付け方向に対する内袋の弾発力が高く、バルブを内袋にしっかりと嵌合させることができる。したがってクリンチした後のシール性だけでなく、アンダーカップ充填時のシール性も高い。
【0022】
本発明の二重エアゾール製品の製造法(請求項6)は、マウンティングカップの被せ部によりフランジを加圧して弾性変形させるため、被せ部とフランジ間のシール性が高い。したがってマウンティングカップの立ち上がり壁の外周面を内袋の首部に嵌合させてシールすることと相俟って、ガス充填時に内袋内にガスが充填するのを一層防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに図面を参照しながら本発明の内袋および二重エアゾール容器の実施形態を説明する。図1は本発明の二重エアゾール容器の一実施形態を示す一部断面正面図、図2は図1の二重エアゾール容器の要部断面図、図3および図4はその二重エアゾール容器のアンダーカップ充填および組立後の状態を示す要部断面図である。
【0024】
図1に示す二重エアゾール容器10は、容器本体11と、その容器本体内に収容される内袋12と、容器本体の上部開口を塞ぐバルブ(バルブアッセンブリ)13とから構成される。容器本体11は従来公知の形態を有し、金属板を胴部14および底部15を備えた有底筒状に成形し、胴部上端に略円錐状の肩部16を形成し、その上端から上方に延びる円筒部に外向きのカーリング加工を施してビード17を設けたものである。金属板としてはアルミニウム、スズメッキ鋼板などが用いられる。なお図1では、1枚の金属板から形成した、いわゆるワンピース缶からなる容器本体11を示しているが、肩部や底部を別個に成形して胴部に取り付けたツーピース缶やスリーピース缶を用いてもよい。また、ビード部の天面を切削して平坦面に加工してもよく、さらに合成樹脂による塗膜ないし被覆を設けてもよい。それにより一層シール性が高くなる。
【0025】
前記内袋12は、円板状の底部21、その周縁から上向きに立ち上がる筒状の胴部22、その胴部の上端から連続する略円錐状の肩部23、その肩部の上端から上方に延びる円筒状の首部24および首部の上端から外側に拡がるジャバラ状のフランジ25とを備えている。首部24は容器本体11のビード17内にわずかな隙間を残して挿入され、かつ、後述するバルブ13の立ち上がり壁(図2の符号41)の外面と密に嵌合する形状および寸法である。肩部23は、互いに直径が異なる円筒状の胴部22と首部24との間に設けられる。肩部23は前述の略円錐状にする以外に略ドーム状にしてもよい。また胴部22と首部24が同じ直径である場合は肩部23を設けなくてもよい。
【0026】
図2に示すように、フランジ25は1枚のシートから構成されるものではなく、縮んだ状態では複数枚のシートを重ねた形態となるジャバラ状の形態を備えている。すなわちフランジ25は首部24の上端から外向きに拡がる下端の折り曲げ片26と、その下端の折り曲げ片26の外周縁から内向きに延びる第1の中間折り曲げ片27と、その中間の折り曲げ片の内周縁から外向きに拡がる第2の中間折り曲げ片28と、さらにその上に続く第3の中間折り曲げ片29と、第3の中間の折り曲げ片29の内周縁から外向きに拡がる上端の折り曲げ片30とからなる。
【0027】
上端の折り曲げ片30は外向きに拡がっている。ただし内向きに拡がっていてもよい。上端の折り曲げ片30の外径は他の折り曲げ片26〜29の外径より大きい。それによりブロー成型した後、上端の折り曲げ片30の周囲を打ち抜き加工し易い。また、上端の折り曲げ片30の幅は、マウンティングカップの被せ部の内側幅と同一か、いくらか狭い程度である。そのため、被せ部に押圧されたとき、シール性が高い。他の折り曲げ片26〜29の外径は、容器本体11のビード17の上面に被さる程度、あるいはそれよりいくらか小さい程度の大きさである。下端の折り曲げ片26を除く他の折り曲げ片27〜30の内径は、折り畳んだ状態でバルブ13の立ち上がり壁41の外径と同程度か、いくらか大きめにする。図2の場合は折り曲げ片26〜30は5枚であるが、それより多くても少なくてもよい。通常は2〜8枚程度であり、とくに3〜7枚程度が好ましい。偶数枚の場合は上端が内向きに拡がることになるが、奇数枚の場合と実質的に同一の作用効果を奏する。
【0028】
この実施形態では、上端の折り曲げ片30はほぼ水平に拡がり、他の折り曲げ片26〜29は傾斜している。そしてフランジ25全体の自然な状態での高さHは、マウンティングカップ38の立ち上がり壁41よりも短い寸法であることが好ましい。この場合、バルブ13を内袋12に装着する際に立ち上がり壁41が首部24と嵌合しやすく、バルブ13と内袋12の装着部分がぐらつくなどの問題がなく安定する。そして上下の折り曲げ片26〜30は、所定の角度で成形され、軸方向に加圧することにより弾力的に縮むようにしている(図3参照)。ただし樹脂ヒンジのように、ほとんど弾発力が働かないように接続したものでもよい。また、上下の折り曲げ片26〜30は断面形状で鋭角に接続されている。折り曲げ片同士の角度は、たとえば10〜60°程度、好ましくは20〜50°程度である。
【0029】
上下の折り曲げ片26〜30は、湾曲状(アール状)に連続させてもよい。また、各折り曲げ片26〜30は水平に拡がっていてもよい。また、首部24と下端の折り曲げ片26の接続部に、容器本体11のビード17と接するアールを設けてもよい。また首部24の下半分から肩部23にかけて、アンダーカップ充填のときにプロペラントの通路となる公知の凹溝を設けてもよい。
【0030】
内袋12はガスバリア性を有する合成樹脂により、たとえばブロー成型により成形される。内袋の材質としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDTE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)などの単層、もしくは2種以上の積層体があげられる。たとえばLDPE/EVOHなどの二層の積層フィルムやLLDPE/EVOH/LLDPE、LLDPE/NY/LLDPEなどの三層の積層フィルムを使用しうる。
【0031】
内袋12の厚さは0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.0mm程度である。図1の内袋12は、下端にブロー成型のときのピンチオフ部31が設けられ、そのピンチオフ部31が脚部とされている。なお、内袋12の全体をブロー成型するほか、底部21と胴部22からなる部品と、肩部23と首部24とフランジ25からなる部品とに分けて、あるいは他の分け方に分けて製造し、その後、それらを接合することによっても製造することができる。底部21と胴部22、あるいはそれらと肩部23、あるいはさらに首部24は、シートを袋状に折り畳み、周囲を接着することにより製造することもできる。この場合はさらにアルミ箔などの金属箔シートを含む積層シートなどからも製造しうる。特許請求の範囲における「合成樹脂製」には、このようなラミネート材も含む。
【0032】
図2に示すように、前記バルブ13は、有底筒状のハウジング33と、そのハウジングの内部に上下移動自在に収容されるステム34と、ステムの上下動によりステム孔35を開閉する環状のステムラバー36と、ステムを常時上方に付勢するバネ37と、ハウジング35の上部を保持し、容器本体11にクリンチするためのマウンティングカップ38とからなる公知のものである。ステムラバー36はハウジング33とマウンティングカップ38との間のシール材を兼ねている。この実施形態ではハウジング35の下端にディップチューブは設けないが、設けてもよい。
【0033】
マウンティングカップ38はハウジング33の上部を包んで保持するハウジング保持部39と、その下端近辺より外側に拡がる底板40と、底板の周囲より立ち上がる略円筒状の立ち上がり壁41と、その上端から外側に拡がり、内袋12のフランジ25を介して容器本体11のビード17に冠着される被せ部42とを備えた公知の部品である。マウンティングカップ38は金属板をプレス成形することにより製造することができる。被せ部42は上部が凸となるように湾曲し、外周では下方を向いている。本実施形態では、従来用いられていた被せ部42内のガスケット43を採用していない。
【0034】
すなわち従来のエアゾール容器では、通常のものでも、あるいは二重エアゾール容器でも、いずれもマウンティングカップの被せ部と容器本体のビード部の間をシールするため、ゴム製の薄板円環状のガスケット43を採用している。ガスケットの材料としては、たとえば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPT、EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、軟質合成樹脂などのエラストマー材料などが採用されている。そして従来の二重エアゾール容器では、被せ部42とビード17との間に挟まれる内袋12のフランジ25は、ガスケット43とビード17の当接を妨げないように、ビード17の上端近辺までしか拡がっていない。
【0035】
しかし図2の本実施形態では、そのガスケット43を省略し、内袋12のジャバラ状のフランジ25で、マウンティングカップ38とビード17の間のシールを行わせる。ただし二重エアゾール容器10の内圧やクリンチの強度あるいは精度の高さ、使用する外部環境(とくに温度)によっては、シール機能を高くするため、ガスケット43を設けてもよい。その場合でも、薄いガスケット43を採用することができる。
【0036】
上記のごとく構成される容器本体11、内袋12およびバルブ13は、以下のように組み立てられる。まず、図1および図2のように容器本体11内に内袋12を挿入する。なお内袋12は可撓性を有するので、容器本体11の狭い上端開口部を通して容器本体11内に挿入することができる。内袋12は容器本体11の底面に載置する。この状態で、内袋12のフランジ25は、ビード17より上側に突出し、下端の折り曲げ片26とビード17の上端との間にいくらかの隙間44があいている。
【0037】
そして内袋12内に原液を充填する。原液には、液体のほか、クリーム状のもの、ゲル状のもの、粉体を含有するもの、さらにフォーム状にするための発泡剤、たとえばイソペンタン、ノルマルブタンなどの沸点が−5〜40℃である脂肪族炭化水素、沸点が40〜80℃であるハイドロフルオロエーテルなどを含有するものも含む。内袋12は図1のように容器本体11の底部15上に載置されているので、フランジ25で重量を支える必要はない。原液を充填することにより内袋12の胴部22はいくらか広がり、高さが減少するが、そのときもフランジ25とビード17の隙間44が残っているようにする。
【0038】
ついで図2に示すようにバルブ13を容器本体11の上方に配置し、さらに下降させ、図3に示すようにマウンティングカップ38の立ち上がり壁41を内袋12の首部24内に挿入する。バルブ13の保持および下降の動作は、クリンチとガス充填を行う充填装置で行う。すなわち充填装置のホールド部でマウンティングカップ38の被せ部の上面および外周面を保持し、その状態で下降させる。立ち上がり壁41の外径と首部24の内径とは、きつめの嵌合状態になるように寸法を決めてもよい。その場合は内袋12の首部24はマウンティングカップ38の立ち上がり壁41にしっかりと嵌合し、所定の嵌合強度(抜け強度)とシール性が与えられる。ただし嵌合が緩くてもよい。
【0039】
マウンティングカップ38を下降させるとき、図3に示すように、被せ部42が内袋12のジャバラ状のフランジ25を押し縮め、各折り曲げ片26〜30が被せ部42の内面形状に沿って折り畳まれる。このとき、内袋12の首部24より下側の部分はほとんど変形しない。そのため、内袋12の内部の原液も移動しない。そして折り曲げ片26〜30同士が密接した状態では、折り曲げ片の弾発力により、上端の折り曲げ片30と被せ部42の内面との間にシール作用が生ずる。とくに折り曲げ片26〜30の全部が密着する場合、または下端の折り曲げ片26が被せ部42内に収容される場合は、ガスをアンダーカップ充填するときにガスの充填通路が遮られるおそれがなく、ガスをスムーズに充填できる。なお、折り曲げ片26〜30同士が密接した後、さらにいくらかバルブ13を下降させて内袋12の首部24、肩部23および胴部22を変形させ、それに基づく強い反発力でシール機能を高めてもよい。
【0040】
バルブ13の内袋12への嵌着後も、フランジ25の下面とビード17の間には隙間44がある。この状態ではホールド部がマウンティングカップ28の被せ部42の上面および外周面と密接してシールすると共に、充填装置の下部シール部が容器本体11の肩部16の上面あるいは胴部14の外周面と密接してシールしている。そしてホールド部と下部シール部の間からガスを注入し、フランジ25とビード17の隙間44を通して容器本体11と内袋12の間の空間Sにガスを充填する。このようなアンダーカップ充填の充填装置の基本的な構成および方法の手順は公知である。
【0041】
充填後は公知の方法で充填装置のホールド部をさらに下降させ、マウンティングカップ38の被せ部42を下降させてビード17に押しつけ、クリンプ爪を開き、マウンティングカップ38の立ち上がり壁41を部分的に外向きに塑性変形させてクリンチを完了する。それにより図4に示すように、容器本体11、内袋12およびバルブ13が一体に組み立てられる。内袋12のフランジ25を被せ部42で下降させるとき、内袋の首部24,肩部23および胴部22はいくらか変形するが、原液には影響しない。クリンチにより、内袋12の首部24および肩部23も立ち上がり壁41の変形に伴って変形し、容器本体11の肩部16の内面に強く当接する。そのとき、内袋12のフランジ25の折り曲げ片26〜30は被せ部42とビード17との間に強く狭着された状態になる。なお、狭着されたときのフランジの厚さは、最も厚い部分で0.5〜2mm、さらには0.8〜1.6mmであることが好ましい。そして折り曲げ片26〜30は複数枚であるので、ガスケットを介在させなくても充分なシール効果が得られる。ただし前述のように、場合により、ガスケットをフランジ25と被せ部42の間に介在させてもよい。
【0042】
図4のように組み立てた後、ステム34の上端に押しボタンやスパウトなどの噴射部材を装着し、あるいは被せ部42ないしビード17に肩カバーを取り付け、オーバーキャップを被せるなどにより、二重エアゾール製品が得られる。アンダーカップ充填するガスとしては、窒素、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気、アルゴンなどの圧縮ガス、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フロン類などの液化ガスおよびこれらの混合ガスを採用しうる。またガスを充填した後のエアゾール容器内の圧力は、ガスとして圧縮ガスを用いた場合は0.3〜1.0MPa(35℃)、液化ガスを用いた場合は0.2〜0.8MPa(35℃)以下が好ましい。
【0043】
前記実施形態では、内袋12の高さを、容器本体11の内底に載置したとき、フランジ25がビード17の上面から突出する寸法としているが、それより低いものも使用しうる。この場合は内袋12への原液の充填時にフランジ2をビード17に引っ掛けて内袋12を吊すようにする。そしてアンダーカップ充填のときに、充填装置のホールド部でバルブを下降させ、フランジ25の折り曲げ片26〜30を折り畳むようにして被せ部42内に収容する。その後、バルブ13を少し持ち上げて、フランジ25の下面とビード17の間に隙間をあけ、その隙間からガスを充填する。
【0044】
前記実施形態では内袋12のフランジ25の上端の折り曲げ片30はほぼ水平に、すなわち内袋の軸心に直角に拡がっているが、斜め上向きあるいは斜め下向きに傾斜していてもよい。さらに上向きあるいは下向きに凸となるように湾曲していてもよい。下向きに凸に湾曲している場合は、被せ部42の内面に当接させることにより、あるいはその前に、上向きに凸となるように反転させることができる。いずれの場合も、被せ部42の内面やビード17の上面に沿わせてその形状にすることができ、シール効果が増す。
【0045】
また、前記実施形態では、フランジ25の上端の折り曲げ片30の外径を他の折り曲げ片26〜29の外径より大きくしているが、同程度あるいはそれらより小さくすることもできる。
【0046】
前述のマウンティングカップ38は、金属板をプレス成形したものであるが、金属板の容器の内面となる面、すなわち原液と接触する面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ナイロンなどの単層もしくはこれらの2種以上の積層の合成樹脂フィルムないしシートを張り合わせたラミネート板から形成することもできる。その場合はマウンティングカップと内袋とのシール性が一層高くなる。容器本体11もラミネート板から構成することができる。
【0047】
前記実施形態では、ピンチオフ部31を除いて内袋12の底部21を平坦にしているが、下端が尖っている円錐状の底部、あるいは下方に凸の球面状の底部とすることもできる。
【0048】
本発明の二重エアゾール容器の内袋に充填する原液はとくに限定されないが、たとえば医薬品、医薬部外品、化粧品、雑品などの種々の用途の原液を採用しうる。また、原液の剤型は液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、フォーム状ととくに限定されないが、二重エアゾール容器の特性を生かせる好ましい剤型としては、クリーム状、ペースト状、ゲル状といった高粘度な内容物である。さらに金属と接触すると金属を腐食しやすい原液、たとえば染毛剤やガラスクリーナなどのように原液が酸性またはアルカリ性のものや、育毛剤や抗真菌剤などのように有効成分自体が金属を腐食しやすいものも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の二重エアゾール容器の一実施形態を示す一部断面正面図である。
【図2】図1の二重エアゾール容器の要部断面図である。
【図3】図1の二重エアゾール容器のアンダーカップ充填の状態を示す要部断面図である。
【図4】図1の二重エアゾール容器の組立後の状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 二重エアゾール容器
11 容器本体
12 内袋
13 バルブ
14 (容器本体の)胴部
15 (容器本体の)底部
16 (容器本体の)肩部
17 ビード
21 (内袋の)底部
22 (内袋の)胴部
23 (内袋の)肩部
24 (内袋の)首部
25 フランジ
26 下端の折り曲げ片
27 第1の中間折り曲げ片
28 第2の中間折り曲げ片
29 第3の中間折り曲げ片
30 上端の折り曲げ片
31 ピンチオフ部
33 ハウジング
34 ステム
35 ステム孔
36 ステムラバー
37 バネ
38 マウンティングカップ
39 ハウジング保持部
40 底板
41 立ち上がり壁
42 被せ部
44 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、胴部と、上向きに延びる首部と、その首部の上端から外向きに拡がるフランジとが、合成樹脂によって形成されており、
前記フランジが、複数枚の環状の折り返し片を備えたジャバラ状に構成されている二重エアゾール容器用の内袋。
【請求項2】
前記ジャバラ状のフランジが自然な状態で縦方向に伸びており、加圧により縮む方向に弾力変形する請求項1記載の二重エアゾール容器用の内袋。
【請求項3】
前記ジャバラ状のフランジを構成する折り返し片のうち上端の折り返し片が、他の折り返し片の外周より外側まで拡がっている請求項1記載の二重エアゾール容器用の内袋。
【請求項4】
有底筒状の容器本体と、その容器本体の上端に被せられてクリンチされる被せ部を備えたマウンティングカップを有するバルブと、前記容器本体内に収容される請求項1、2または3記載の内袋とを備え、
前記内袋のジャバラ状のフランジが、前記容器本体の上端とマウンティングカップの被せ部との間に介在される二重エアゾール容器。
【請求項5】
前記内袋を容器本体の内底面に載置したとき、前記複数枚の折り返し片のうち下端の折り返し片が容器本体の上端より突出する請求項4記載の二重エアゾール容器。
【請求項6】
容器本体とバルブと請求項2記載の内袋とを準備し、内袋に原液を充填し、バルブのマウンティングカップの立ち上がり壁の外周面を内袋の首部に嵌合させてシールすると共にマウンティングカップの被せ部によりフランジを縮む方向に弾力変形させ、容器本体と内袋の間の空間にガスを充填し、マウンティングカップを容器本体にクリンチする二重エアゾール製品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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