説明

二重化コントロールシステム

【課題】本発明は、制御ネットワークから信号を受けているコントローラで制御対象装置を制御する二重化コントロールシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明に係る二重化コントロールシステムは、制御ネットワークから個別に信号を受ける第1コントローラと第2コントローラを有し、これらのいずれかが制御対象装置とオンラインとなって該制御対象装置を制御する二重化コントロールシステムにおいて、該制御ネットワークから該第1コントローラへの信号断を検出する第1検出手段と、該制御ネットワークから該第2コントローラへの信号断を検出する第2検出手段と、該第1検出手段又は該第2検出手段で信号断を検出すると、該制御ネットワークから信号を受けているコントローラが該制御対象装置とオンラインとなるように、コントローラを切り替える切替手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば機械などの制御対象装置の制御に用いられる二重化コントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コントローラを2つ有する二重化コントロールシステムが開示されている。この二重化コントロールシステムは、制御ネットワークに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−347885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二重化コントロールシステムの2つのコントローラは、それぞれ、制御ネットワークから継続して信号を受ける。そして、一方のコントローラが制御ネットワークからの信号に基づいて制御対象装置の制御を行う。
【0005】
ところが、制御ネットワークの断線などにより、一方のコントローラが信号を受けられなくなることがある。信号を受けていないコントローラでは制御対象装置を適切に制御できない。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、制御ネットワークから信号を受けているコントローラで制御対象装置を制御する二重化コントロールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明に係る二重化コントロールシステムは、制御ネットワークから個別に信号を受ける第1コントローラと第2コントローラを有し、これらのいずれかが制御対象装置とオンラインとなって該制御対象装置を制御する二重化コントロールシステムにおいて、該制御ネットワークから該第1コントローラへの信号断を検出する第1検出手段と、該制御ネットワークから該第2コントローラへの信号断を検出する第2検出手段と、該第1検出手段又は該第2検出手段で信号断を検出すると、該制御ネットワークから信号を受けているコントローラが該制御対象装置とオンラインとなるように、該制御対象装置とオンラインとなるコントローラを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御ネットワークからの信号断を検出して、制御対象装置の制御に用いるコントローラを切替えるので安定した制御を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステム及びその周辺の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステムのブロック図である。
【図3】CPUモジュールと制御用ネットワークモジュールの構成を示すブロック図である。
【図4】CPUモジュールのユーザプログラムに格納されたプログラムによる、コントローラ切替処理のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステム及びその周辺の構成を示す図である。二重化コントロールシステム10には制御ネットワーク12が接続されている。制御ネットワーク12にはHMI(Human−Machine interface)14が接続されている。
【0011】
二重化コントロールシステム10にはEthernet16(登録商標)が接続されている。Ethernet16にはエンジニアリングツール18が接続されている。エンジニアリングツール18は、二重化コントロールシステム10に格納されるプログラムの設計などを行うものである。
【0012】
二重化コントロールシステム10にはI/O20が接続されている。I/O20には、二重化コントロールシステム10の制御対象である制御対象装置22が接続されている。制御対象装置22はたとえば製鉄のプロセスでスラブを薄板化する機械である。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステムのブロック図である。二重化コントロールシステム10は第1コントローラ30と第2コントローラ32を備えている。第1コントローラ30は、電源モジュール30a、CPUモジュール30b、制御ネットワークモジュール30c、及びEthernetモジュール30dを備えている。電源モジュール30aは第1コントローラ30へ電源供給するものである。CPUモジュール30bは第1コントローラ30の実行制御を行うものである。制御ネットワークモジュール30cは第1コントローラ30と制御ネットワーク12との通信用に設けられている。Ethernetモジュール30dは第1コントローラ30とEthernet16との通信用に設けられている。
【0014】
第2コントローラ32は、電源モジュール32a、CPUモジュール32b、制御ネットワークモジュール32c、及びEthernetモジュール32dを備えている。電源モジュール32aは第2コントローラ32へ電源供給するものである。CPUモジュール32bは第2コントローラ32の実行制御を行うものである。制御ネットワークモジュール32cは第2コントローラ32と制御ネットワーク12との通信用に設けられている。Ethernetモジュール32dは第2コントローラ32とEthernet16との通信用に設けられている。
【0015】
第1コントローラ30の制御ネットワークモジュール30cと、第2コントローラ32の制御ネットワークモジュール32cは、それぞれ個別に制御ネットワーク12から信号を受ける。
【0016】
図3は、CPUモジュールと制御用ネットワークモジュールの構成を示すブロック図である。CPUモジュール30b、制御ネットワークモジュール30c、CPUモジュール32b、及び制御ネットワークモジュール32cはステーションバス34で接続されており、信号の授受が可能となっている。CPUモジュール30b及び32bは、制御対象装置22の制御に必要な演算を実行するCPUである。
【0017】
CPUモジュール30bは、演算回路40により制御対象装置22の制御に必要な演算を実行する。CPUモジュール30bは、ユーザプログラム42とユーザメモリ44をメモリの形態で備えている。CPUモジュール30bはさらにステーションメモリ46を備えている。ステーションメモリ46は制御ネットワークモジュール30cからのステーション情報を格納するメモリである。
【0018】
CPUモジュール32bも、演算回路60、ユーザプログラム62、ユーザメモリ64、ステーションメモリ66を備えている。
【0019】
本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステムでは、制御ネットワークモジュール30cと制御ネットワークモジュール32cのそれぞれに制御ネットワーク12から信号が伝送される。そして、第1コントローラ30と第2コントローラ32の何れか一方が制御対象装置22とオンラインとなって制御対象装置22を制御する。制御対象装置22とオンラインとなっているコントローラを「マスターコントローラ」と称し、制御対象装置22とオフラインとなっているコントローラを「スレーブコントローラ」と称する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステム10は、マスターコントローラとスレーブコントローラの切替に特徴がある。以後この特徴について説明する。
【0021】
図4は、CPUモジュールのユーザプログラムに格納されたプログラムによる、コントローラ切替処理のシーケンスを示す図である。ここでは、第1コントローラ30がマスターコントローラであるものとする。
【0022】
第1検出手段80は、制御ネットワーク12から第1コントローラ30への信号断を検出する部分である。第1検出手段80は、制御ネットワーク12から第1コントローラ30への信号の累積パケット数をモニター(カウント)している。つまり、制御ネットワーク12から制御ネットワークモジュール30cに伝送された信号を、ステーションバス34を経由してCPUモジュール30bに取り込み、累積パケット数をモニターする。そして、この累積パケット数の増加が一定期間停止した時に信号断を検出し、AND回路80aの第1入力(上方の入力)がHighとなる。ここでいう一定期間とは、オフディレイタイマ(TOF)により遅延された0.15secである。
【0023】
AND回路80aの第2入力(下方の入力)は、第2コントローラ32(スレーブコントローラ)が制御対象装置22とオンラインで無い場合にHighとなる。従って、第1コントローラ30(マスターコントローラ)への信号断が起こり、かつ第2コントローラ32(スレーブコントローラ)がオフラインであるとAND回路80aの出力がHighとなる。
【0024】
第2検出手段82は、制御ネットワーク12から第2コントローラ32への信号断を検出する部分である。第2検出手段82は、制御ネットワーク12から第2コントローラ32への信号の累積パケット数をモニター(カウント)している。そしてこの累積パケット数の増加が一定期間停止した時に信号断を検出し、AND回路82aの第1入力がHighとなる。AND回路82aの第2入力は第2コントローラ32(スレーブコントローラ)がオンラインで無い場合にLowとなる。従って、第2コントローラがオフラインであれば、AND回路82aの出力は常にLowとなる。
【0025】
この場合、AND回路80aはHighを出力し、AND回路82aはLowを出力しているので、OR回路84の出力はHighとなる。OR回路85の出力もHighとすると、AND回路88の出力はHighとなる。こうして、二重化切替手段90(切替手段90と称する)が、制御対象装置22とオンラインであった第1コントローラ30をオフラインとし、第2コントローラ32を制御対象装置22とオンラインとするように切替える。さらに切替手段90で二重化切替が発生した場合、第1コントローラ30から第2コントローラ32への切替事象をHMIに警報表示させる。
【0026】
なお、電源投入などによる二重化コントロールシステム10の立ち上げ時には、OR回路85の第1入力(最も上方の入力)がHighとなることでコントローラの切替可能性が確保されている。また、コントローラの切替中は、AND回路88の第1入力をLowとすることで更なる切替を防止している。
【0027】
第1コントローラ30と第2コントローラ32が両方とも信号断となっているときは、OR回路85の出力がLowを維持することで切替が連続するチャタリングを防止する。
【0028】
ここまでは、第1コントローラ30がマスターコントローラの場合について説明したが、第2コントローラ32がマスターコントローラの場合も上述のように切替が行われる。
【0029】
切替手段90を含む図4のシーケンスは、第1コントローラのユーザプログラム42及び第2コントローラのユーザプログラム62にプログラムで記述されている。そしてこのプログラムは、第1コントローラ30及び第2コントローラ32のCPUモジュール内のメモリに格納されている。
【0030】
本発明の実施の形態に係る二重化コントロールシステム10によれば、コントローラに対する信号断を検出し、信号断の無いコントローラを制御対象装置22とオンラインとすることができる。これにより、制御ネットワーク12から信号を受けていないコントローラが制御対象装置22とオンラインになることによる「無制御時間」の発生を防止できる。また、制御対象装置22は、常にHMI14からの信号により制御されるので、制御対象装置22の破損を防止でき、かつ安全で信頼性の高い制御が可能となる。
【0031】
なお、制御ネットワーク12異常は、制御ネットワークの断線や制御ネットワークモジュールの不具合などにより起こると考えられる。
【0032】
本発明の実施の形態の二重化コントロールシステムは、本発明の特徴を失わない限りにおいて様々な変形が可能である。切替手段は、第1検出手段又は第2検出手段で信号断を検出すると、制御ネットワークから信号を受けているコントローラが制御対象装置22とオンラインとなるように、制御対象装置22とオンラインとなるコントローラを切り替えることができる限り図4のようなシーケンスでなくてもよい。
【0033】
また、図4のシーケンスを実現する手段はプログラムに限らず、実際の論理回路を用いることも出来る。
【0034】
また、コントローラへの信号断を検出できる限り、第1検出手段と第2検出手段による検出方法は限定されない。その他、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 二重化コントロールシステム、 12 制御ネットワーク、 22 制御対象装置、 30 第1コントローラ、 32 第2コントローラ、 80 第1検出手段、 82 第2検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ネットワークから個別に信号を受ける第1コントローラと第2コントローラを有し、これらのいずれかが制御対象装置とオンラインとなって前記制御対象装置を制御する二重化コントロールシステムにおいて、
前記制御ネットワークから前記第1コントローラへの信号断を検出する第1検出手段と、
前記制御ネットワークから前記第2コントローラへの信号断を検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段又は前記第2検出手段で信号断を検出すると、前記制御ネットワークから信号を受けているコントローラが前記制御対象装置とオンラインとなるように、前記制御対象装置とオンラインとなるコントローラを切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする二重化コントロールシステム。
【請求項2】
前記切替手段は、前記第1コントローラ及び前記第2コントローラにメモリで格納されたことを特徴とする請求項1に記載の二重化コントロールシステム。
【請求項3】
前記第1検出手段は、前記制御ネットワークから前記第1コントローラへの信号の累積パケット数の増加が一定期間停止した時に信号断を検出し、
前記第2検出手段は、前記制御ネットワークから前記第2コントローラへの信号の累積パケット数の増加が一定期間停止した時に信号断を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の二重化コントロールシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243249(P2012−243249A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115848(P2011−115848)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】