説明

二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置

【課題】従来技術の難点を解消し、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンクを回転させ、繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布等により形成する作業を迅速にし、且つ、仕上がりを均一にすることが可能な二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置を提供する。
【解決手段】 本発明の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置は、両端部を鏡板部とした円筒形状に形成され、且つ、円筒状部分の外周の一部に付属部が取り付けられた内殻タンクの外周に、被覆層を被覆することによって二重殻タンクを製造するために、前記内殻タンクを回転駆動するための二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置において、前記内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に、当該内殻タンクの付属部に起因する回転モーメントのアンバランスを緩和するためのバランス用回転部材を連結したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガソリン等を貯蔵するために用いられる二重殻タンクを製造する際に、当該二重殻タンクの内殻タンクを回転駆動するための二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
危険物の規制に関する制令の一部を改正する法律、及び、危険物の規制に関する規則の一部を改正する規則が改正、施行され、地下に埋設した繊維強化プラスチック二重殻タンクによる危険物の貯蔵が可能となっている。
【0003】
上記繊維強化プラスチック二重殻タンクとは、例えば図13に示すように、鋼製の内殻タンク101の外側に、上部及びフランジ部以外の部分において、間隙102を形成しつつ、繊維強化プラスチック層103(外殻)を設けてタンク本体104とし、該タンク本体104の上部から底面へ前記間隙102に連通する検知管105を挿入すると共に、前記検知管105の底部に、タンク101から間隙102に漏洩する危険物及び強化プラスチック層103から間隙102に流入する地下水の双方を検知することができるセンサー106を配設し、更に適宜の箇所に該センサー106からの出力を処理する検知装置107を配してなるものである。
【0004】
かかる二重殻タンク100は、主として、地下に埋設された状態で、ガソリンスタンド等に設置され、ガソリン等を貯蔵する貯蔵タンクとして使用されているのが現状である。
【0005】
上記の如く構成された繊維強化プラスチック二重殻タンクは、例えば、特開平7−172490号公報等に開示されているように、円筒状に形成された鋼製の内殻タンク101の長手方向の両端部に位置する鏡板部中央に、複数本の螺棒を溶接等の手段で立設すると共に、当該複数本の螺棒に対して回転軸を固定した支持板をナット等によって固着し、前記内殻タンクの両鏡板部に固着された回転軸を介して、作業所の床面に敷設されたレール上に移動可能に配設されている支持台上に回転可能に取り付け、そして、上記内殻タンクを、一方の回転軸に取り付けられたプーリと、当該プーリに掛け回されたチェーンを介して作動連結された駆動プーリとによって回転駆動され、当該内殻タンクの外周面に、上部及びフランジ部以外の部分において、前記間隙102を形成しつつ、繊維強化プラスチック層103を吹き付けや塗布により設けるようにして製造されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−172490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。即ち、上記特開平7−172490号公報に開示された内殻タンクの回転装置は、内殻タンクの両鏡板部に固着された回転軸を介して、当該内殻タンクを回転駆動することにより、内殻タンクの外周面に間隙層を形成しつつ繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布により設けるように構成されている。
【0008】
ところが、上記内殻タンクは、完全な円筒体ではなく、当該内殻タンクの上部には、前記センサー106からの出力を取り出すためのフランジ108ばかりではなく、タンクの内部にガソリン等を貯蔵したり、タンクの内部に貯蔵されたガソリン等を取り出すためフランジや、当該フランジを溶接した円筒状部材109等の付属部が設けられている。従っ
て、上記内殻タンクは、回転軸を中心にした周方向の回転モーメントが均一ではなく、フランジ等が内殻タンクの外周に突出して設けられている関係上、当該フランジ部が最上端から最下端へ下降する際には回転速度が速くなり、当該フランジ部が最下端から最上端へ上昇する際には回転速度が遅くなってしまう。
【0009】
そのため、上記特開平7−172490号公報に開示された回転装置によって、フランジ等を有する内殻タンクを回転させつつ繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けにより設けようとした場合は、内殻タンクの回転速度が速いところでは、繊維強化プラスチック(FRP)層が薄くなるのに対して、内殻タンクの回転速度が遅いところでは、繊維強化プラスチック(FRP)層が厚くなり、繊維強化プラスチック(FRP)層を均一な厚さに形成することができないという問題点を有していた。
【0010】
その結果、繊維強化プラスチック(FRP)層の厚さを全体的に規定値以上に設定するためには、回転が遅いところに相当する部分では繊維強化プラスチック(FRP)層の厚さが不必要に厚くなり、繊維強化プラスチック(FRP)を無駄に消費するばかりか、二重殻タンクの重量が過大となるという問題点を有していた。
【0011】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンクを回転させ、繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布等により形成する作業を迅速にし、且つ、仕上がりを均一にすることが可能な二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載された発明は、両端部を鏡板部とした円筒形状に形成され、且つ、円筒状部分の外周の一部に付属部が取り付けられた内殻タンクの外周に、被覆層を被覆することによって二重殻タンクを製造するために、前記内殻タンクを回転駆動するための二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置において、
前記内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に、当該内殻タンクの付属部に起因する回転モーメントのアンバランスを緩和するためのバランス用回転部材を連結したことを特徴とする二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置である。
【0013】
又、請求項2に記載された発明は、前記バランス用回転部材は、内殻タンクの直径以上の直径又は最大長を有する円形又は多角形状のものである請求項1に記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置である。
【0014】
又、請求項3に記載された発明は、前記バランス用回転部材には、更にバランス用のウエイトが取り付けられている請求項1又は2に記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置である。
【0015】
更に、請求項4に記載された発明は、前記バランス用のウエイトが、バランス用回転部材に対して位置変更自在に取り付けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。
【0016】
更に又、請求項5に記載された発明は、前記バランス用回転部材が、クラッチ装置を介して、内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に連結されている請求項1乃至4のいずれかに記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンクを回転させ、繊維強化プ
ラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布等により形成する作業を、迅速にし、且つ仕上がり均一にすることが可能な二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置を示す構成図である。
【0020】
図1において、1は内殻タンク本体を示すものであり、この内殻タンク本体1は、略円筒形状に形成された鋼製の内殻タンク1aを含んでいる。上記鋼製の内殻タンク1aは、例えば、後述する被覆層1dも含めて、直径(外径)が2120mm及び長さが10020mmに設定されている。尚、上記タンク本体1は、必ずしも、鋼製の内殻タンク1aそのものからなるものではなく、当該鋼製の内殻タンク1aの表面に、図2に示すように、錆止め塗装1b等により、被覆する前の処理を施したものであっても勿論良い。又、上記タンク本体1の長手方向両端部には、図1に示すように、耐圧性等を向上させるため、所定の湾曲形状に形成された鏡板部2、3が設けられている。
【0021】
又、上記内殻タンク1aは、完全な円筒体ではなく、当該内殻タンク1aの上部には、タンクの内部にガソリン等を貯蔵したり、タンクの内部に貯蔵されたガソリン等を取り出す他、前記センサーからの出力を取り出すための開口部を保護する円筒状のフランジ部等からなる付属部1e及び1e’が溶接等によって5箇所に設けられている。
【0022】
この発明が適用される二重殻タンクは、例えば、ガソリンスタンド等の地中に埋設された状態で設置され、ガソリン等を貯蔵する貯蔵タンクなどとして使用される。但し、これに限定されるものではない。この貯蔵タンクは、図2に示すように、鋼製の内殻タンク1aの外側に、フィルム層1cを巻き回す等して形成した0.1mm程度の微小な間隙層4を介して、繊維強化プラスチック(FRP)層等からなる被覆層1dを被覆した二重殻タンクである。上記被覆層1dは、樹脂にガラス繊維等を充填して固化させたものが用いられ、樹脂としては、イソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、ビスフェノール系不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂又はエポキシ樹脂などが用いられる。又、ガラス繊維としては、ガラスチョップドストランドマット、ガラスロービング、処理ガラスクロス又はガラスロービングクロス等が用いられる。
【0023】
ところで、この実施の形態では、両端部を鏡板部とした円筒形状に形成され、且つ、円筒状部分の外周の一部に付属部が取り付けられた内殻タンクの外周に、被覆層を被覆することによって二重殻タンクを製造するために、前記内殻タンクを回転駆動するための二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置において、前記内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に、当該内殻タンクの付属部に起因する回転モーメントとバランスを取るためのバランス用回転部材を連結するように構成されている。
【0024】
即ち、この実施の形態に係る二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置においては、図3に示すように、内殻タンク1aの端部に位置する鏡板部2に、回転軸5が水平方向に固着されている(鏡板部3には回転軸6が同様に固着されている。)。上記回転軸5は、円板状等の適宜形状の支持板7に溶接等によって垂直に固着されていると共に、当該支持板7は、複数本の螺棒8にナット9によって取り付けられている。これら複数本の螺棒8は、内殻タンク1aの鏡板部2の中央部付近に、回転軸5の外周に沿って、溶接等により水平方向に立設されている。
【0025】
又、上記内殻タンク1aの鏡板部2の外殻をFRP成形鏡板Fで構成する場合には、図3に示すように、中央部に支持板7を挿通するための開口部10を有するFRP成形鏡板Fに、環状の仮着用押さえ11を取り付けると共に、当該仮着用押さえ11の周方向に沿って複数本の連結ロッド12を固着する。そして、上記FRP成形鏡板Fは、仮着用押さえ11の複数本の連結ロッド12に、長さ調節用のナット13を介して円板14を取り付け、当該円板14を螺棒8にナット9により取り付けることで、内殻タンク1aの両鏡板部2に押し当てられ取り付けられる。鏡板部3についても同様である。
【0026】
ところで、上記内殻タンク1aは、図1に示すように、その両鏡板部2、3に取り付けられた回転軸5、6により、内殻タンク1aの長手方向の両端部に配設された支持台15、16に回転自在に支持されている。上記支持台15、16は、工場の床面に敷設されたレール17上に車輪18を介して走行自在に配設されている。尚、上記支持台のうち、片側(図中、左側)の支持台15は、固定した状態で配設すると共に、他方の支持台16を可動としても、又、双方可動に構成しても良い。
【0027】
上記支持台15では、図4に示すように、支持脚19が台車15’に立設されており、当該支持脚19の上端部において、鏡板部2に取り付けられた回転軸5が回転自在に支持されている。又、上記回転軸5の先端部には、内殻タンク1aを回転駆動するためのギア22aが装着されている。このギア22aは、これに噛み合うギア22bを介してプーリ22cに連結されている。尚、ギア22bとプーリ22cは同一軸上に取り付けられている。
【0028】
前記プーリ22cは、支持台15の下部に搭載されたクラッチブレーキ23aの出力回転軸24aに装着されたプーリ25aとチェーン26aを介して作動連結されており、クラッチブレーキ23aの入力回転軸24bに装着されたプーリ25bは、クラッチブレーキ23aと同様に支持台15の下部に搭載された駆動モータ23bの回転軸24cに装着された駆動プーリ25cとチェーン26bを介して作動連結されている。従って、駆動モータ23bを回転駆動することにより、チェーン26b、チェーン26a、ギア22b及びギア22aと駆動力が伝達していき、回転軸5を介して内殻タンク1aを回転駆動するように構成されている。
【0029】
又、上記支持台のうち、他側(図中、右側)の支持台16には、図5に示すように、2組の支持脚27、28が立設されており、一方の支持脚27の上端部には、鏡板部3に取り付けられた回転軸6を回転自在に支持する軸受け29が取り付けられている。尚、支持台15において回転軸5を回転自在に支持する構造も同様である。
【0030】
回転軸6を回転自在に支持する構造については、従来は特開平7−172490号公報に記載のように、凹状の軸受けに回転軸を載置する方法によっていたが、当該方法では凹状の軸受けが磨耗していくため、この実施の態様では、ベアリングを使用している。即ち、図6aに示すように、凹状の軸受け29に対し、その中ほどに取り付けたベアリングBを介して回転軸6を回転自在に支持してあるのである。この場合、ベアリングBとして図6bに示したように、外面形状が正八角形のものを使用すると、ベアリングBの外面が凹状の軸受け29の側壁及び底面で面接触するため、安定に回転軸6を支持することができ、且つ、軸受け29摩耗を防止することができる。又、回転軸6側の凹状の軸受け29には、水平方向の自由度が与えられている。
【0031】
更に、上記回転軸6には、図5に示すように、レバーによる回動式のクラッチ装置30を介してバランス用回転部材31が連結されている。上記クラッチ装置30は、2組の支持脚27、28の間に掛け渡された架台32上に軸方向に沿ってスライド自在に配設されている。上記クラッチ装置30は、図7に示すように、回転軸6の先端部に取り付けられ
たクラッチ受け部材33を備えている。このクラッチ受け部材33には、図8に示すように、周方向に沿って複数(図示例では、6個)のベアリング34が傾動自在に取り付けられており、これら複数のベアリング34は、上記回転軸6側の凹状の軸受け29に与えられた水平方向の自由度と相俟って、後述するロッド38の軸ズレを吸収可能なように、傾動自在なピローブロックを構成している。
【0032】
又、上記クラッチ装置30には、図9に示すように、クラッチ受け部材33と対向する位置に、クラッチ連結部材35が配設されている。このクラッチ連結部材35は、回転軸36の端部に固着された円盤37を備えており、当該円盤37の外周には、クラッチ受け部材33のベアリング34に対応するように、複数(図示例では、6個)のロッド38が立設されている。上記回転軸36は、2個の軸受け39によって回転自在に支持されている。
【0033】
一般に、内殻タンク1aの両鏡板部2、3は所定の湾曲形状に形成されているが、実際には設計通りに加工成形することができない場合があり、その結果、両鏡板部2、3に取り付けられた回転軸5、6の方向が、厳密な意味では内殻タンク1aの水平軸に一致しないことも考えられ、一方で、クラッチ連結部材35のロッド38はある程度高い精度で内殻タンク1aの水平軸に一致させることが可能であり、その結果、回転軸6とロッド38との間で軸ズレの発生すること想定されるが、そのような場合でも、複数のベアリング34が傾動自在なピローブロックを構成しているので、軸ズレの影響を受けることがない。
【0034】
上記クラッチ連結部材35は、図10に示すように、架台32上に支点42を中心にして回動自在に取り付けられたレバー43を操作することにより、クラッチ受け部材と接離する方向に移動自在となっている。
【0035】
そして、上記クラッチ装置30は、レバー43を操作することによって、クラッチ連結部材35をクラッチ受け部材33と連結する方向に移動させ、当該クラッチ連結部材35のロッド38をクラッチ受け部材33のベアリング34に係合させて連結することにより、内殻タンク1a側の回転軸6にバランス用回転部材31を作動連結するように構成されている。
【0036】
又、上記クラッチ装置30は、レバー43を逆方向に操作することによって、クラッチ連結部材35をクラッチ受け部材33と離間する方向に移動させ、当該クラッチ連結部材35のロッド38とクラッチ受け部材33のベアリング34との係合を解除することにより、内殻タンク1a側の回転軸6からバランス用回転部材31を離脱させるようになっている。
【0037】
上記バランス用回転部材31は、図11に示すように、回転軸36の端部に取り付けられている。このバランス用回転部材31は、回転軸36に取り付けられた中心円盤45を備えており、当該中心円盤45の外周には、半径方向に沿って複数本(6本)のスポーク部材46が取り付けられていると共に、当該スポーク部材46の外周端には、外周輪47が取り付けられている。
【0038】
バランス用回転部材31には、上記付属部1e及び1e’に起因する回転モーメントのアンバランスを打ち消すようには構成されていないが、フライホイールとしての機能を発揮することにより、回転モーメントのアンバランスを緩和するものである。従って、内殻タンク1aの規格に応じた適切な重量を有すること、及び、その直径が内殻タンク1aの直径以上であることが好ましい。
【0039】
又、適切に設計をすることにより、外周輪47を省略したり、或いは、スポーク部材4
6の数を減ずることも可能ではあるが、このようにした場合は、回転するスポーク部材46の間に作業員の腕等が入ってしまう可能性があるので、保護枠としての外周輪47は設けた方が好ましい。
【0040】
尚、同様の観点から、バランス用回転部材31としては多角形状のものを、図11のような円形のバランス用回転部材と同様に使用することができる。多角形状のものの場合は、適切な重量を有することと、その平面方向の最大長が内殻タンク1aの直径以上であることが好ましい。
【0041】
又、上記バランス用回転部材31のみでは、回転モーメントのアンバランスの緩和が十分でない場合は、図9及び図11に示すように、例えば、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’と回転軸36を中心にして対向する逆方向の位置に、バランス用重りとしてのバランスウエイト50をボルト51によって固定した状態で取り付けてもよい。
【0042】
更に又、図12に示すように、スポーク部材46に対し、鉛直方向に向かうガイドレール52を取り付けると共に、このガイドレール52に対してバランスウエイト50をボルト51によって固定することにより、バランスウエイト50が内殻タンク1aの中心に向かって、位置調節ねじ53によりスライド自在となるように構成しても良い。尚、バランスウエイト51の重量及び取付位置は、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’の位置及び重量に合わせて適宜設定される。
【0043】
例えば、上記バランスウエイト50の重量及び位置は、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’の重量と、内殻タンク1aの内径の1/2との間に、
付属部の重量×タンク内径=ウエイト重量×ウエイト位置
なる関係を満たすように設定される。又、ガイドレール52を利用する場合は、位置調節ねじ53によりバランスウエイトの位置を微調整することができる。
【0044】
上記バランスウエイト50の形状は、図11に示した矩形に限定されず、又、内殻タンク1aの規格との関係で、2個以上としても差し支えない。装置のコンパクト化を図るという観点から、上記バランス用回転部材31と支持台16との間の間隔はさほど広くないが、上記バランス用回転部材31を円形状又は多角形状のものとしておくことにより、バランスウエイト50の数が増加しても、バランス用回転部材31の面方向に順次取り付けていくことが可能である。
【0045】
以上の構成において、この実施の形態に係る二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置では、次のようにして、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンクを回転させ、繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布等により形成する作業を、迅速にし、且つ仕上がりを均一にすることが可能となっている。
【0046】
即ち、この実施の形態では、図1に示すように、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’の重量を予め測定しておき、バランス用回転部材31に、必要に応じて内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’の位置及び重量に適合させたバランスウエイト50を、所定の位置に取り付ける。
【0047】
その後、上記二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置では、図10に示すように、クラッチ装置のレバーを操作して、バランス用回転部材31を内殻タンク1aを回転自在に支持する回転軸36に連結するのであるが、バランスウエイト50を使用する場合、クラッチ装置により、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’とバランスウエイト50との相対位置を調整することができるので、内殻タンク1aを支持台15、
16に載置する際に、付属部1e及び1e’とバランスウエイト50との相対位置に気を配る必要がない。
【0048】
そして、駆動モータ23bを起動することにより、内殻タンク1aを回転駆動することができる。
【0049】
このように、上記内殻タンク1aを回転駆動する回転軸6には、クラッチ装置30を介して、バランス用回転部材31が連結されているため、内殻タンク1aの外周にフランジ部等の付属部1e及び1e’が取り付けられ、当該内殻タンク1aの回転モーメントが周方向に沿って略一定でない場合であっても、バランス用回転部材31がフライホイールとしての機能を発揮し、更に、バランス用回転部材31に、内殻タンク1aのフランジ部等の付属部1e及び1e’と均り合うバランスウエイト50が取り付けられていれば、上記内殻タンク1aは、バランス用回転部材31のバランスウエイト50作用が加わり、回転モーメントが略一定となり、当該内殻タンク1aを駆動モータ23bによって回転駆動する際に、内殻タンク1aを略一定の回転速度で回転駆動することができる。
【0050】
従って、上記二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置によれば、二重殻タンクを製造する際に、内殻タンク1aを回転させ、繊維強化プラスチック(FRP)層を吹き付けや塗布等により形成する作業を、迅速にし、且つ仕上がりを均一にすることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置により二重殻タンクを製造する様子を示す側面図である。
【図2】二重殻タンクの構造を示す断面図である。
【図3】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置における駆動部側の構造を示す側面図である。
【図4】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置における駆動部側の構造を示す正面図である。
【図5】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるクラッチ部側の構造を示す側面図である。
【図6】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置における駆動軸支持部の構造を示す正面図である。
【図7】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるクラッチ受け部材の構造を示す平面図である。
【図8】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるクラッチ受け部材の構造を示す正面図である。
【図9】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるクラッチ装置の構造を示す側面図である。
【図10】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるクラッチ装置の構造を示す平面図である。
【図11】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるバランス用回転部材の構造の一例を示す正面図である。
【図12】本発明二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置におけるバランス用回転部材の構造の一例を示す正面図である。
【図13】二重殻タンクの構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 内殻タンク本体
2、3 鏡板部
1e、1e’ 付属部
5、6 回転軸
15、16 支持台
22a、22b ギア
22c、25a、25b プーリ
23a クラッチブレーキ
23b 駆動モータ
29 軸受け
30 クラッチ装置
33 クラッチ受け部材
35 クラッチ連結部材
31バランス用回転部材
50 バランスウエイト
52 ガイドレール
53 位置調節ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部を鏡板部とした円筒形状に形成され、且つ、円筒状部分の外周の一部に付属部が取り付けられた内殻タンクの外周に、被覆層を被覆することによって二重殻タンクを製造するために、前記内殻タンクを回転駆動するための二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置において、
前記内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に、当該内殻タンクの付属部に起因する回転モーメントのアンバランスを緩和するためのバランス用回転部材を連結したことを特徴とする二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。
【請求項2】
前記バランス用回転部材は、内殻タンクの直径以上の直径又は最大長を有する円形又は多角形状のものである請求項1に記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。
【請求項3】
前記バランス用回転部材には、更にバランス用のウエイトが取り付けられている請求項1又は2に記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。
【請求項4】
前記バランス用のウエイトが、バランス用回転部材に対して位置変更自在に取り付けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。
【請求項5】
前記バランス用回転部材が、クラッチ装置を介して、内殻タンクを回転自在に支持する回転軸に連結されている請求項1乃至4のいずれかに記載の二重殻タンク製造用の内殻タンク回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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