説明

二重殻低温貯蔵槽

【課題】
高い断熱特性を有し且つ軽量化可能な二重殻低温貯蔵槽を提供する。
【解決手段】
低温貯蔵物2を収容する内槽3と内槽3を内包する外槽4を備え、内槽3の外壁と外槽4の内壁との間の断熱層5に粒状断熱材6を充填してなる二重殻低温貯蔵槽であって、粒状断熱材6が、粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であり、断熱層5内の気相が減圧され、粒状断熱材6に対して外槽4の外壁に外部から加わる外圧と内槽3の内壁に内部から加わる内圧との間の所定の圧力が加圧されている。粒状断熱材6は逆ミセル法を用いて合成した粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であるのが好ましい。更に好ましくは、粒状断熱材6を充填した予備貯槽8を、断熱層5に連通し、外槽4の上面4aより上部に突出する個所に設けて、予備貯槽8に充填された粒状断熱材6の上面から断熱層5内の粒状断熱材6に対し加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温貯蔵物を収容する内槽と前記内槽を内包する外槽を備え、前記内槽の外壁と前記外槽の内壁との間の断熱層に粒状断熱材を充填してなる二重殻低温貯蔵槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体窒素や液化天然ガス等の低温貯蔵物を収容する低温貯蔵槽として、二重殻構造で内槽の外壁と外槽の内壁との間の断熱層にパーライトを粒状断熱材として充填した二重殻低温貯蔵槽がある。断熱層にパーライトを充填した二重殻低温貯蔵槽としては、例えば、下記の特許文献1〜3に開示された構造のもの等がある。
【0003】
他方、断熱層に粒状断熱材等を充填せずに、断熱層内の気相(充填ガス)を真空引きして断熱層を断熱化する構造のものもある。また、断熱層にパーライト等の粒状断熱材を充填する場合でも、断熱層内の気相を減圧する場合と、初期状態(通常、大気圧)から減圧しない場合とがある。
【特許文献1】特開平09−137626号公報
【特許文献2】特開平08−121695号公報
【特許文献3】特開平08−004981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の断熱層の充填材としてパーライトを用いた二重殻低温貯蔵槽では、パーライトが真珠岩等の天然ガラス鉱物を高温で焼成して得られる材料であるため、以下に示すような問題がある。
【0005】
第1に、パーライトは密に充填した場合の嵩密度が1000kg/m(=1g/cm)程度と大きく、液体窒素や液化天然ガス等を運搬する液化ガスタンクローリー(二重殻低温貯蔵槽の一例)の粒状断熱材として用いた場合、二重殻低温貯蔵槽自体の重量が重くなり、運搬時の車重がその分重くなって運搬コストが高騰する。また、嵩密度が大きいため、必然的に熱伝導量も大きくなる。
【0006】
第2に、パーライトは、焼成時のクラックが残っているため、長期間機械的振動のある環境(例えば、液化ガスタンクローリー等)で使用すると粉化し、嵩密度が増加して、断熱層内に粒状断熱材の充填されない空洞個所が生じることがある。この結果、空洞部における断熱層内の充填ガス(或いは、減圧後の残存ガス)の対流による熱伝導により断熱性能が低下する。
【0007】
第3に、パーライトは、粉粒体の流動性が悪いため、ブリッジ等が発生して断熱層内にパーライトが均一に充填されない虞があるため、これを防ぐため充填時に高度の作業ノウハウが必要となる。
【0008】
第4に、パーライトは、粒子形状が球状ではなく不定形であり、粉体粒子の吸着表面積が大きいため、水分を吸着しやすく断熱層内を真空引きし難い。また、この水分の吸着性の欠点を解消しようとすると、施工現場近傍で焼成を行い、パーライト製造時から断熱層内への充填時までの時間を短縮する必要があり、コスト高となる。
【0009】
更に、上記問題点に加えて、粒状断熱材であるパーライトは粉粒体としての流動性が悪いため、密閉された断熱層に加えられる圧力が断熱層内で均等に分散しない、つまり、パスカルの原理が有効に機能しないため、外槽及び内槽に加わる圧力は、外槽及び内槽自体の構造体及び外槽及び内槽間に設けられた支持構造によって吸収する必要がある。
【0010】
具体的には、断熱層内の気相が大気圧以下に減圧されている場合は、通常、外槽壁面には外部から大気圧と断熱層内の圧力の差分が相対的に加わり、内槽壁面には内部から内槽内の圧力(内槽内の低温貯蔵物の重力により大気圧以上となる。)と断熱層内の圧力の差分が相対的に加わっているため、外槽及び内槽には夫々断熱層内部に向かう内向きの力が加わる。また、断熱層内の気相が減圧されていない場合は、通常、外槽壁面には外部と内部の圧力が均衡しているため相対的に圧力が加わらず、内槽壁面には内部から内槽内の圧力(通常、大気圧以上に加圧されている。)と断熱層内の圧力の差分が相対的に加わっているため、内槽には断熱層内部に向かう力が加わる。従って、断熱層内の気相を真空引きして減圧する場合に、外槽及び内槽には夫々断熱層内部に向かう内向きの大きな力が加わり、外槽及び内槽自体の構造体及び外槽及び内槽間に設けられた支持構造を当該圧力に十分に耐え得る頑強なものとしなければならず、二重殻低温貯蔵槽自体が重量化してしまうという問題がある。また、外槽と内槽では、異なる力を受けることから、外槽及び内槽の構造を各別に最適化して、一方に余分な強度を持たせる必要が生じる。また、液化ガスタンクローリー等に用いられる二重殻低温貯蔵槽では、運搬する液化ガスの重量に加えて、二重殻低温貯蔵槽の重量による重量化のため、運搬コストが高騰することになる。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記問題点を解消し、高い断熱特性を有し且つ軽量化可能な二重殻低温貯蔵槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するための本発明に係る二重殻低温貯蔵槽は、低温貯蔵物を収容する内槽と前記内槽を内包する外槽を備え、前記内槽の外壁と前記外槽の内壁との間の断熱層に粒状断熱材を充填してなる二重殻低温貯蔵槽であって、前記粒状断熱材が、粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であり、前記断熱層内の気相が減圧され、前記粒状断熱材に対して前記外槽の外壁に外部から加わる外圧と前記内槽の内壁に内部から加わる内圧との間の所定の圧力が加圧されていることを特徴とする。更に、上記特徴の二重殻低温貯蔵槽において、前記粒状断熱材に対して加圧される前記所定の圧力が、前記外圧と前記内圧の中間の圧力であることが好ましい。
【0013】
上記特徴の二重殻低温貯蔵槽によれば、粒状断熱材が、粒子形状が球状(球形または略球形)で、しかも粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であることから、粉粒体としての流動性が高く、断熱層内において流体としての性質を呈して振舞うことができる。つまり、粒状断熱材に対して外圧(通常は大気圧)と内圧の間の所定の圧力、特に、その中間の圧力が加圧されることで、断熱層と外槽の間及び断熱層と内槽の間の壁面において略均等な応力を受けることになり(パスカルの原理)、外槽には外圧と粒状断熱材に対する圧力の差分が断熱層から外部に向けて相対的に加わり、内槽には内圧と粒状断熱材に対する圧力の差分が内槽から断熱層に向けて相対的に加わる。従って、高断熱性のために断熱層内の気相を減圧した場合であっても、粒状断熱材が流体として振舞うために、外槽と内槽に加わる応力が同方向で、しかも従来に比べて大幅に低減されることになる。この結果、外槽及び内槽を同じ構造で形成でき、更に、軽量で薄い材料を用いて最適設計することが可能となり、高い断熱特性を有し且つ軽量化可能な二重殻低温貯蔵槽を得ることができる。更に、内槽が実質的に流体として振舞う粒状断熱材の中に浮遊して支持されることから、低温貯蔵物を収容した内槽に掛かる下向きの重力に対して、上向きの浮力が生じるため、内槽を支持するための支持体に加わる応力も低減でき、支持体の軽量化も同時に図れる。
【0014】
更に、上記特徴の二重殻低温貯蔵槽において、前記粒状断熱材が、逆ミセル法を用いて合成された粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であることが好ましい。
【0015】
粒状断熱材は、逆ミセル法を用いて形成することで、粉粒体として粒子形状が球状で、粒径が略一定に揃った高い流動性を呈するため、上記特徴の二重殻低温貯蔵槽の作用効果を確実に奏することが可能となる。
【0016】
更に、逆ミセル法を用いて合成した粒径が略均一な多孔質球状粒子が、粒子形状が球状(球形または略球形)で、且つ、粒径が略一定に揃った粉粒体として形成されるため、粒子間の空隙距離が略一定で充填ガスの平均自由行程以下に短くでき、この結果、10−1Pa(約10−3Torr)程度の低真空でも粒子間の空隙での対流を効果的に抑制でき、伝導損失の少ない断熱を実現できる。また、粒子形状が球状で粒径が略一定に揃った粉粒体であるため断熱層に密に充填された状態での粒子間の空隙の空隙率が低くなるが、粒子単体が粒子内の空隙率の高い多孔質であるため、嵩密度が150〜300kg/m(=0.15〜0.3g/cm)程度とパーライトと比較して大幅に軽減され、断熱層を軽量に構成でき、二重殻低温貯蔵槽全体を軽量化できる。また、逆ミセル法を用いて合成されるため、パーライトのような焼成時のクラック等が存在しないため、機械的振動による微粉化の可能性は極めて低く、断熱層内に断熱性を損なう大きな空洞部の発生する可能性が極めて低い。また、全ての粒子が球状で粒子形状及び粒径が略一定に揃っているため、粉粒体の流動性が高くブリッジ等が形成され難いため、粒状断熱材の充填作業も極めて容易である。
【0017】
更に、上記特徴の二重殻低温貯蔵槽において、前記粒状断熱材を充填した予備貯槽を、前記断熱層に連通し、前記外槽の上面より上部に突出する個所に設けてあることが好ましい。更に、前記粒状断熱材に対して加圧される前記所定の圧力が、前記予備貯槽に充填された前記粒状断熱材の上面から加圧されることが好ましい。
【0018】
これにより、本発明に係る二重殻低温貯蔵槽の使用中に、例えばタンクローリー等の用途において断熱層に充填された多孔質球状粒子からなる粉粒体が、搬送中の機械的振動によって断熱層の下方部ほど充填密度が高くなるように圧縮された場合に、断熱層の上方部において逆に充填密度が低くなって粒子間の空隙が広がり、場合によっては空洞が生じて断熱性が損なわれるところ、予備貯槽に充填された予備の粉粒体が、充填密度の低くなった部分に供給されるため、粒子間の空隙の広がりを抑制し、空洞の発生を防止して当初の高断熱性を維持できる。
【0019】
更に、粒状断熱材に流動性があることから、断熱層内の粒状断熱材に対する加圧が、予備貯槽を設けてその予備貯槽内の粒状断熱材に加圧するだけで容易に実現できる。
【0020】
更に、上記特徴の二重殻低温貯蔵槽において、前記多孔質球状粒子の直径は3〜30μmであることが好ましい。粒径は、大き過ぎると粒子間の空隙距離が大きくなり、そこで対流が生じて断熱性が低下し、逆に小さ過ぎると取り扱い時に飛散しやすく取り扱い難くなるため、多孔質球状粒子の直径は3〜30μmであることが好ましい。また、流動性の観点から見ると、分子間引力が無視できるサイズの間は粒径が小さいほどブリッジ等が形成され難く流動性が高い。ところが、粒径が数μmになると常温における熱揺動が粒子の運動エネルギと同程度になり、且つ、分子間力も無視できなくなるので、嵩密度300kg/m程度では10μm弱が最も流動性がよく望ましい。
【0021】
更に、上記第1または第2の特徴の二重殻低温貯蔵槽において、前記多孔質球状粒子が、石英ガラス粒子等のガラス質であることが好ましい。一般に、低温では熱媒体の格子振動の熱伝導への寄与度が大きくなるため、粒状断熱材がガラス質であることにより、低温での熱伝導をより効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る二重殻低温貯蔵槽(以下、適宜「本発明装置」という。)の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に、本発明装置1を、液化天然ガス等の低温の液化ガス(低温貯蔵物)2を運搬するタンクローリー(または、タンクトレーラー)20に適用した場合の断面構造を模式的に示す。また、図2に、本発明装置1の槽構造の断面構造を模式的に示す。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明装置1は、液化ガス2を収容する内槽3と内槽3を内包する外槽4を備えた二重殻構造で構成され、内槽3の外壁と外槽4の内壁との間に形成される断熱層5に粒状断熱材6が充填されている。内槽3及び外槽4は、夫々にステンレス鋼等の鋼材を溶接して形成され、内槽3は、外槽4の内壁からバネ等の支持体7で中空支持されるとともに、断熱層5に充填された粒状断熱材6によっても支持される。内槽3及び外槽4は、図1及び図2の紙面垂直方向の断面形状が、円形または楕円形を呈している。尚、図中符号9で示される部位は、液化ガス2を内槽3内へ注入し、また、内槽3内から取り出すための入出口である。
【0025】
更に、図2に示すように、本発明装置1は、断熱層5に連通し、外槽4の上面4aより上部に突出する個所に予備貯槽8を設け、その内部に予備の粒状断熱材6を充填している。
【0026】
本発明装置1に使用する粒状断熱材6は、逆ミセル法を用いて合成した粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であり、具体的には、以下の要領で生成される石英ガラス粒子の粉粒体である。即ち、逆ミセル法により、油性の有機溶媒中に粒子原料を含む水溶液である水ガラス溶液(珪酸ナトリウム水溶液)を乳化分散させ、その乳化分散させた水ガラスのコロイドに炭酸ナトリウム等の沈殿剤を加えると、コロイド中の表面張力により球状化していた水ガラス粒子(エマルション粒子)がその形状を保ったままガラス粒子として沈殿するため、沈殿したガラス粒子を濾過分離、洗浄、乾燥して、粒子形状が略完全に球形で粒径も略一定の石英ガラス粒子が、粒状断熱材6として生成される。尚、粒径を略均一に揃える手法として、孔径を均一に揃えた貫通孔を多数有する高分子膜等の多孔膜を利用して、水ガラス溶液をその多孔膜を通過させて有機溶媒中に注入して乳化分散させ粒子原料のエマルション粒子を得る公知の膜乳化逆ミセル法が利用できる。膜乳化逆ミセル法については、例えば、特開平04−54605号公報、特開平05−240号公報、特開平05−23565号公報、特開平05−192907号公報等に詳細が開示されている。上記要領で生成された石英ガラス粒子の粉粒体は、嵩密度として、150〜300kg/m(=0.15〜0.3g/cm)程度のものが得られる。
【0027】
本実施形態では、生成された石英ガラス粒子の粒径として、3〜30μmの範囲のもの、特に、粉粒体の流動性の観点より10μm前後のものが好ましい。また、石英ガラス粒子の粒径のバラツキとして、体積基準の標準偏差を平均粒径の50%未満、更に好ましくは、20%未満に抑えるのが好ましい。従って、当該バラツキ範囲内のものを粒径が略均一と定義する。
【0028】
尚、嵩密度が150〜300kg/m(=0.15〜0.3g/cm)程度で粒径が略均一で3〜30μmの範囲にある多孔質球状粒子からなる粒状断熱材6として、鈴木油脂工業株式会社製の商品名「ゴッドボール」(登録商標)で市販されている多孔質無機質微粒子(石英ガラス粒子)の粉粒体が利用できる。
【0029】
石英ガラス粒子の粉粒体からなる粒状断熱材6は、公知の手法で、例えば、断熱層5内を負圧状態にして充填される。本実施形態では、粒状断熱材6は、予備貯槽8の上部の供給口から注入され、断熱層5内に充填されるとともに、予備貯槽8内にも予備の粒状断熱材6として充填される。従って、断熱層5内の粒状断熱材6が、例えば、内槽3内の低温貯蔵物2の貯留量の増減や外気温の変化による内槽3及び外槽4の膨張収縮や、機械的振動等により、断熱層5の下部の充填密度が高くなり、その分だけ断熱層5の上部が空洞化する場合においても、予備貯槽8内の充填された予備の粒状断熱材6を断熱層5の上部の空洞化部分に補充できるため、常に断熱層5内を粒状断熱材6が密に充填された状態に維持することができ、初期の断熱性能を維持できる。
【0030】
本実施形態では、断熱層5及び予備貯槽8内に粒状断熱材6を充填した後、断熱層5内の気相を真空引きして、例えば、10−1Pa(約10−3Torr)程度まで減圧する。断熱層5内の気相を減圧した後、予備貯槽8内の粒状断熱材6の上面から断熱層5及び予備貯槽8内全体の粒状断熱材6に対して加圧する。加圧方法は、予備貯槽8内に粒状断熱材6の上面を板材等により蓋10をして、その蓋10の上から重りまたはバネ等により加圧する。
【0031】
具体例により説明すると、例えば、内槽3内の圧力がゲージ圧で0.2MPa(約2気圧)、外槽4外が大気圧(ゲージ圧で0MPa)である場合を想定すると、断熱層5及び予備貯槽8内の粒状断熱材6に対して、ゲージ圧で0.1MPa(約1気圧)を加圧すると、内槽3及び外槽4の壁面には、ともに内槽3から外槽4に向かう同方向の力(0.1MPa)を受けることになる。従って、内槽3及び外槽4を同じ構造にすることができ、延いては、内槽3及び外槽4の軽量化が図れる。
【0032】
また、断熱層5内の充填ガスとしては、乾燥空気、窒素ガス等が使用可能であるが、希ガスを使用するのがより好ましい。断熱層内の気相には通常空気が入っており、そのまま減圧した場合は残存気体として空気と水分が入っている場合が多い。しかしながら、空気の主成分である窒素や酸素及び水は多原子分子であるため分子全体の運動エネルギのほかに、振動回転のエネルギを持っており熱伝導率が高い。よって、断熱層の充填気体として希ガスを用いることで、断熱層内の気相成分による熱伝導を低減でき、断熱性能の向上が図れる。また、断熱層の気相成分としてはできるだけ分子量の大きな希ガスが望ましい。特に、低温貯蔵物2が液化天然ガス等の液化ガスの場合は、Ar(アルゴン)の使用が好ましく、低温貯蔵物2が常温近傍の低温(−20〜−30℃)の場合では、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)等が好ましい。
【0033】
以下に、別の実施形態につき説明する。
【0034】
〈1〉上記実施形態では、本発明装置1を液化天然ガス等の低温の液化ガス(低温貯蔵物)2を運搬するタンクローリー(または、タンクトレーラー)20に適用した場合を例示したが、低温貯蔵物2としては、液化ガスに限定されるものではなく、また、本発明装置1の適用対象として、タンクローリー等の車両に限定されるものではない。例えば、本発明装置1を地上に固定する低温貯蔵槽に適用しても構わない。また、本発明装置1の内槽3及び外槽4の形状、材質等も上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、縦型の円筒状、球形、箱型等、種々の形状のものが可能である。また、内槽3の支持方法もバネによる支持に限定されるものではない。例えば、支持方法は内槽3を上方から吊り下げて支持する方法でも構わない。尚、図中の支持体7の個数及び位置は、支持体7の存在を模式的に示すもので、支持体7の個数及び位置は図示のものに限定されるものではない。
【0035】
〈2〉上記実施形態では、粒状断熱材6として石英ガラス粒子の粉粒体を使用したが、粒状断熱材6は、石英ガラス粒子の粉粒体に限定されるものではない。従って、多孔質球状粒子は石英以外の無機材料を含むガラスであっても構わない。
【0036】
〈3〉上記実施形態では、外槽4の上面4aより上部に突出する個所に予備貯槽8を設けたが、予備貯槽8の設置位置や形状は、図2に例示する位置や形状に限定されるものではない。また、予備貯槽8は必ずしも設けなくても構わない。
【0037】
但し、予備貯槽8を設けない場合は、断熱層5内の粒状断熱材6への加圧は別途の方法で行う必要があるため、断熱層5内に粒状断熱材6に対する加圧機構を設けておくのが好ましい。
【0038】
〈4〉上記実施形態では、石英ガラス粒子の粉粒体からなる粒状断熱材6を、逆ミセル法を用いて合成する方法について簡単に説明したが、逆ミセル法に使用する多孔膜、有機溶媒、沈殿剤等は、公知の膜乳化逆ミセル法で使用されるものが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る二重殻低温貯蔵槽を液化ガスタンクローリーに適用した一実施形態を示す概略構成図
【図2】本発明に係る二重殻低温貯蔵槽の一実施形態における二重殻構造を示す概略断面構成図
【符号の説明】
【0040】
1: 本発明に係る二重殻低温貯蔵槽
2: 低温貯蔵物
3: 内槽
4: 外槽
4a: 外槽の上面
5: 断熱層
6: 粒状断熱材
7: 支持体
8: 予備貯槽
9: 低温貯蔵物の入出口
10: 予備貯槽の蓋
20: タンクローリー(または、タンクトレーラー)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温貯蔵物を収容する内槽と前記内槽を内包する外槽を備え、前記内槽の外壁と前記外槽の内壁との間の断熱層に粒状断熱材を充填してなる二重殻低温貯蔵槽であって、
前記粒状断熱材が、粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であり、
前記断熱層内の気相が減圧され、前記粒状断熱材に対して前記外槽の外壁に外部から加わる外圧と前記内槽の内壁に内部から加わる内圧との間の所定の圧力が加圧されていることを特徴とする二重殻低温貯蔵槽。
【請求項2】
前記粒状断熱材に対して加圧される前記所定の圧力が、前記外圧と前記内圧の中間の圧力であることを特徴とする請求項1に記載の二重殻低温貯蔵槽。
【請求項3】
前記粒状断熱材が、逆ミセル法を用いて合成された粒径が略均一な多孔質球状粒子からなる粉粒体であることを特徴とする請求項1または2に記載の二重殻低温貯蔵槽。
【請求項4】
前記粒状断熱材を充填した予備貯槽を、前記断熱層に連通し、前記外槽の上面より上部に突出する個所に設けてあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の二重殻低温貯蔵槽。
【請求項5】
前記粒状断熱材に対して加圧される前記所定の圧力が、前記予備貯槽に充填された前記粒状断熱材の上面から加圧されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二重殻低温貯蔵槽。
【請求項6】
前記多孔質球状粒子の直径が、3〜30μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二重殻低温貯蔵槽。
【請求項7】
前記多孔質球状粒子が、ガラス質であることを特徴とする請求項1または2に記載の二重殻低温貯蔵槽。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−161833(P2006−161833A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349565(P2004−349565)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(304057472)株式会社ルネッサンス・エナジー・インベストメント (12)
【Fターム(参考)】