説明

二重管用防火ダンパー

【課題】部品点数が少なく、構造が簡素化され、風通路を確実に遮断できる二重管用防火ダンパーを提供する。
【解決手段】外管1と内管2とからなる二重管用防火ダンパーにおいて、内管2の軸方向中央に位置し、内管2に垂直に跨って貫通し、その外周端縁が外管の内周面に達するドーナツ盤状の外ダンパー15を配し、該外ダンパーに対応する位置で、外通風路Aの断面積が少なくとも維持されるよう外管1に設けられた膨出部13とからなり、該外ダンパーを内管2の外周面を軸方向に摺動させて、外通風路を遮断させ、内管2を貫通して設けられた回転軸5に回転式円盤状の内ダンパーを配し、軸回転させて、内通風路Bを遮断させ、温度ヒューズ体3,3’の作動に連動されるスプリング4に蓄積された付勢力の解放で、該内・外ダンパーを摺動あるいは回転させて、内・外管の通風路を遮断するダンパー機構にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管と呼ばれる通気ダクトに用いられる防火ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のダンパーとしては、例えば、内側通風路は単一のダンパー板で、外側通風路は平面形コ字形に分割される2枚の上下ダンパー板により外通風路を閉塞することの技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
その他、外管の一部に断面角形の弁匣を介装し、弁匣と内管との間の外通風路をダンパー羽根の回転で遮断する防火ダンパーの技術が開示されている。(例えば、特許文献2参照)
更には、既に本発明者ら自らが発明した二重管用防火ダンパーで、バネに蓄積された付勢力を開放して、内通風路を閉鎖するダンパー板と、外管の内周を軸方向に摺動して外通風路を閉鎖するダンパー筒を同時に作動するカム機構とを備えた防火ダンパーの技術が開示されている。(例えば、特許文献3参照)
【特許文献1】 実開昭62−83130号 公報
【特許文献2】 特開2000−14819号 公報
【特許文献3】 特開2001−317801号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来の装置等では、二重管用防火ダンパーの機構が複雑であり、部品点数が多く高価なものとなる欠点があった。特に外通風路のダンパーを少なくとも2枚のダンパーで構成するとか、筒状のダンパーの摺動で構成するものであった。しかも、この外管と内管の個別のダンパーをカム機構で連動して同時に作動させているため、構造が複雑で部品点数も多く高コストは避けられなかった。
【発明を解決するための手段】
【0004】
本発明の外ダクトとその外ダクト内に挿通された内ダクトとからなる二重管と呼ばれる通気ダクトに用いられる防火ダンパーは、ダクトに接続される外管と、外管内に所定間隔を保って挿通され、外管との間に外通風路を形成するとともに、それ自体の内部が内通風路を形成する内ダクトに接続される内管とからなる。そして、その内管の軸方向中央の位置で、ドーナツ盤状の外ダンパーが配されてなる。このドーナツ盤状の外ダンパーは、内管を垂直に跨って貫通し、その外周端縁が外管の内周面に達する。そして、この外ダンパーには近傍の外通風路で温度感知部が設けられ、該温度感知部の温度ヒューズ体を介して常時は外通風路を開放状態にスプリングで付勢停止されてなる。
【0005】
この外ダンパーの付勢停止に対応する位置で、該外通風路の周方向断面積が少なくとも維持されるよう外管に膨出部が設けられてなる。
【0006】
外ダンパーは、外通風路の温度ヒューズ体の作動に連動されるスプリングに蓄積された付勢力の解放でもって、内管の外周面を軸方向に摺動する。そして外ダンパーの外周端縁が外管の内周面に接触したとき、外通風路が遮断される。併せて、外ダンパーの摺動で、該外ダンパーの内周端縁が内管の外周面に設けてなる環状リングに接触して、外ダンパー摺動の隙間も遮断される。
【0007】
一方、内管には内管内を貫通した回転軸が設けられてなる。この回転軸には、円盤状の内ダンパーが配されてなる。そして、この内ダンパーには近傍の内通風路で温度感知部が設けられ、該温度感知部の温度ヒューズ体を介して常時は内通風路を開放状態にスプリングで付勢停止されてなる。そして、内ダンパーは、内通風路の温度ヒューズ体の作動に連動されるスプリングに蓄積された付勢力の解放でもって、内ダンパーの軸回転によって内通風路が遮断される。
【0008】
本発明では、外通風路の遮断はドーナツ盤状の外ダクトの摺動のみで可能となり、一方の、内通風路の遮断は円盤状の内ダンパーの軸回転のみで可能となる。すなわち、これら外ダンパーおよび内ダンパーは、個々に設けられた温度感知部の温度ヒューズ体の作動に連動される各々のスプリングに蓄積された付勢力の解放でもって動くものである。したがって、従来のような内・外ダンパーの動きを強制連動させていないため、複雑なカム機構などの構成が不要となる。したがって部品点数が減少し構造が簡素化されるとともに、従来品に増して確実な遮断が得られ、一層の封鎖性が向上するのである。
【発明の実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図面に基づいてその詳細を説明する。図1乃至図5は、本発明の二重管用防火ダンパーの1実施例を示す。図1は、二重管用防火ダンパーの水平方向の断面図で、外ダンパーも内ダンパーもスプリングで付勢停止されており、ダンパーが作動していない状態を示す。図2は、同じく二重管用防火ダンパーの断面図で、外ダンパーも内ダンパーもスプリングの付勢力の解放で各ダンパーが作動して内・外通風路が遮断されている状態を示す。図3は、同じく二重管用防火ダンパーの垂直方向の断面図で、ダンパーが作動していない状態で、特に内管内を貫通した回転軸と、その回転軸に配された内ダンパーを示す。図4は、外ダンパーの形態例を説明するための図。そして図5は、二重管のスペーサを説明するための断面図である。
【0010】
図1に示したように、本発明の二重管用防火ダンパーは、外ダクトとその外ダクト内に挿通された内ダクトとからなる、二重管と呼ばれる通気ダクトに用いられる防火ダンパーである。
【0011】
二重管の外ダクトに接続される外管1の内部には、二重管の内ダクトに接続される内管2が挿通されている。内管2は、その外周に設けられた図5にも示す複数のスペーサ30により、外管1内に所定間隔で保持されてなる。そして、外管1と内管2との間に外通風路Aが形成され、内管2自体の内部が内通風路Bを形成してなる。
【0012】
内管2の軸方向中央に位置して、内管2を垂直に跨って貫通するドーナツ盤状の外ダンパー15が配されてなる。そして、この外ダンパー15は外周端縁16が外管1の開口部における内周面11に達する高さまで突出する寸法を維持している。外管1には、この外ダンパー15の近傍の外通風路Aに温度感知部が設けられ、該外ダンパー15は温度感知部の温度ヒューズ体3を介して常時は外通風路Aを開放状態にスプリング4で付勢停止されてなる。41はスプリング4の片端を停止させるため、内管2の外周面21に設けられた環状停止リングである。
【0013】
外管1には、内管2の軸方向に位置する外ダンパー15の付勢停止に対応する位置で、膨出部13が形成されている。外管1の膨出部13の膨れ出し量は、二重管ダクトとの接続部における外通風路Aの周方向断面積が少なくとも維持されるように設定されてなる。この膨出部13は外通風路Aの通気に支障がきたさないよう配慮することから空気抵抗が少なくなるよう丸みを持たせて形成されてなる。
【0014】
一方、図3でも示したように内管2には内管2の径方向に貫通する回転軸5が設けられ、その回転軸5に内通風路Bを遮断する回転式円盤状の内ダンパー25が配されてなる。また、内管2から突出した回転軸5の一端には、内ダンパー25が内通風路Bを平常時には通気方向と平行する向きになるよう、係止のスプリング4’が取付けられて内ダンパー25は付勢停止されてなる。
【0015】
また、内管2には、内ダンパー25の近傍で、内ダンパー25の回転を阻止しない位置に、内通風路Bの温度感知部が設けられてなる。そして、該温度感知部の温度ヒューズ体3’を介して内ダンパー25が常時は内通風路Bを開放状態に付勢停止されてなる。
【0016】
次に、図2乃至図3で示したように、内管2の外周面21にスプリング4で付勢停止されていた外ダンパー15は、外通風路Aの通気が設定温度以上の温度になり、温度感知部の温度ヒューズ体3が溶融すると、これに連動してスプリング4の解放が働き、外ダンパー15は内管2の外周面21に沿って軸方向に摺動する。この外ダンパー15が摺動して、外ダンパー15の外周端縁16が外管1の開口部における内周面11に接触したとき、外通風路Aが遮断される。
【0017】
さらに、42は環状リングであって、該環状リング42は外管1の開口部の近傍に位置する内管2の外周面21に設けられてなる。そして先に述べた外ダンパー15の摺動により外ダンパー15の外周端縁16が、外管1の開口部の内周面11に接触すると同時に、併せて該外ダンパー15の内周端縁17が環状リング42と接触して、外ダンパー15と内管1の隙間を遮断するのである。
【0018】
この外ダンパー15は、内管2を垂直に跨って貫通するドーナツ盤状が原型であるが、先に述べたように外ダンパー15が内管2の外周面21に沿って摺動することから、図4にて示すように外ダンパー15の内周縁17にガイド筒18を一体にて設けておくことも好ましい。このガイド筒18は、外ダンパー15の摺動を補助するものであって、例えば、外ダンパー15(イ)のA−A断面がI字型とすれば、(ロ)のように外ダンパー15にガイド筒18を一体にて設けて、その断面がL字型や逆L字型、あるいは逆T字型等に構成されることでよい。この場合、ガイド筒18の周端縁が環状リング42と接触して、外ダンパー15と内管1の隙間を遮断することになる。
【0019】
また、外ダンパー15には、外通風路Aの通気に支障をきたさないように、配慮することから外ダンパー15の受風円環面に空気抵抗が少なくなるような曲面19の構造を採用することも好ましい。
【0020】
一方の円盤状の内ダンパー25は、内通風路Bの通気が設定温度以上の温度になり、温度感知部の温度ヒューズ体3’が溶融すると、これに連動してスプリング4’の解放が働き、内管2を貫通した回転軸5と一体となる内ダンパー25が90度回転してストッパーピン26に接触して内通風路Bを遮断する。
【0021】
なお、これら外ダンパー15と内ダンパー25を平常時の位置に戻すには、点検孔(図示せず)を開いて、該ダンパーを押し戻し、温度ヒューズ体を交換し、元の位置で該ダンパーを係合させて、付勢停止させることで足りる。
【0022】
図3で示したように、外管1両端の接続部には、二重管の外ダクトのためのストッパー溝31が設けられている。また、内管2両端の二重管の内ダクトとの接続部には、断面E型のシール材32が埋設されていて、二重管に芯ずれがあっても接続部で通気が漏れないようになっている。さらに、外管1と内管2とを所定間隔に保持するには、内管2の外周に図5にて示すような三角形状のスペーサ30を外挿するとよい。このスペーサ30は内ダクトのストッパーも兼ねる。
【0023】
本発明の二重管用防火ダンパーでは、内・外管の温度検知部における各温度ヒューズ体の設定温度を個別に選択して設定できる。すなわち、浴室やトイレなどの排気の通風路には一般空調用の72℃で、レンジなどの火気を使用する部屋の排気の通風路には120℃で作動する温度ヒューズ体をそれぞれ取り付けることができる。
【発明の効果】
【0024】
図面からも明らかな通り、本発明の二重管用防火ダンパーは、上述のように構成されているので、外通風路の遮断はドーナツ盤状の外ダンパーの摺動、また一方、内通風路の遮断は円盤状の内ダンパーの軸回転のみで、簡単に内・外管の通風路が遮断される。特に、内管の外周面に設けた環状リングで、外ダンパー摺動の隙間も完全に遮断される効果は大きい。
【0025】
これら両ダンパーの遮断作動にあっては、個々に独立して設けられた内・外管の通風路における各温度検知部の温度ヒューズ体の作動で連動するスプリングに蓄積された付勢力の解放でもって、ダンパーの摺動もしくは回転で簡単に遮断される。本発明は、従来のような内・外ダンパーを連動させていないため、複雑なカム機構などの連動部品等が不要である。したがって、本発明は部品点数が減少し構造が簡素化されるとともに各ダンパーの作動が確実に機能する安全な二重管用防火ダンパーが安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の二重管用防火ダンパーの水平方向の断面図で、ダンパーが作動していない平常状態を示す。
【図2】同じく、二重管用防火ダンパーの断面図でダンパーが作動した状態を示す。
【図3】同じく、二重管用防火ダンパーの垂直方向の断面図でダンパーが作動した状態を示す。
【図4】外ダンパーの形態例を示す。
【図5】二重管のスペーサを説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0027】
外通風路・・・A
内通風路・・・B
外管・・・1
外管の内周面・・・11
膨出部・・・13
外ダンパー・・・15
外周端縁・・・16
内周端縁・・・17
ガイド筒・・・18
曲面・・・19
内管・・・2
内管の外周面・・・21
内ダンパー・・・25
ストッパーピン・・・26
温度ヒューズ体・・・3
温度ヒューズ体・・・3’
スペーサ・・・30
ストッパー溝・・・31
シール材・・・32
スプリング・・・4
スプリング・・・4’
環状停止リング・・・41
環状リング・・・42
回転軸・・・5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ダクトと、その外ダクト内に挿通された内ダクトとからなる二重管と呼ばれる通気ダクトに用いられる防火ダンパーにおいて、
(イ)前記外ダクトに接続される外管と、
(ロ)前記外管内に所定間隔を保って挿通され、該外管との間に外通風路を形成するとともに、それ自体の内部が内風通路を形成する前記内ダクトに接続される内管にあって、
(ハ)前記内管の軸方向中央に位置し、該内管を垂直に跨って貫通し、その外周端縁が前記外管の内周面に達するドーナツ盤状の外ダンパーを配し、該外ダンパー近傍の外通風路に温度感知部を設けて、該外ダンパーを温度感知部の温度ヒューズ体を介して常時は外通風路を開放状態にスプリングで付勢停止され、
(ニ)前記外ダンパーが付勢停止する位置で、前記外通風路の周方向断面積が少なくとも維持されるよう前記外管に膨出部が設けられ、
(ホ)前記外ダンパーが、前記外通風路の温度ヒューズ体の作動に連動される前記スプリングに蓄積された付勢力の解放でもって、前記内管の外周面に沿って該外ダンパーが軸方向に摺動して、該外ダンパーの外周端縁が前記外管の内周面に接触して、該外通風路を遮断する機構と、
(ヘ)一方、前記内管に内管内を貫通する回転軸を設け、該回転軸に回転式円盤状の内ダンパーを配し、該内ダンパー近傍の内通風路に温度感知部を設けて、該内ダンパーを温度感知部の温度ヒューズ体を介して常時は内通風路を開放状態にスプリングで付勢停止され、
(ト)前記内ダンパーが、前記内通風路の温度ヒューズ体の作動に連動される前記スプリングに蓄積された付勢力の解放でもって、前記回転軸を軸とする該内ダンパーの回転により該内通風路を遮断する機構と、
からなる、外ダンパーの摺動と内ダンパーの回転でもって、内・外管の通風路を遮断されることを特徴とする二重管用防火ダンパー。
【請求項2】
ドーナツ盤状の外ダンパーの内周端縁に、軸方向に内管を跨って摺動するガイド筒を構成した外ダンパーであることを特徴とする請求項1記載の二重管用防火ダンパー。
【請求項3】
ドーナツ盤状の外ダンパーの受風円環面に、外通風路の風圧抵抗を減少させる曲面を構成した外ダンパーであることを特徴とする請求項1記載の二重管用防火ダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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