説明

井戸温泉熱交換装置

【課題】温泉水を空気と接触させずに水と熱交換させることができる井戸温泉熱交換装置を提供すること。
【解決手段】源泉2に向けて挿入される管状の密閉体4と、源泉2から温泉水5を井戸により汲み上げて密閉体4の外方に揚湯管9を介して吐出するように密閉体4内に配置される揚水ポンプ6と、を備え、揚湯管9内の温泉水5と水管21内の水との間で熱交換させる井戸温泉熱交換装置1であって、密閉体4の上端部に密閉体4内から空気を排出する空気抜き装置11と、揚湯管9の最上部に、揚湯管9内から空気を排出するとともに揚湯管9への空気の流入を防ぐ第1自動空気抜き弁10と、少なくとも熱交換した後の温泉水5が流れる揚湯管9を開閉する開閉弁15と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、源泉に向けて挿入される管状の密閉体と、源泉から温泉水を汲み上げて密閉体の外方に揚湯管を介して吐出するように密閉体内に配置される揚湯ポンプと、を備え、揚湯管内の温泉水と水管内の水との間で熱交換させる井戸温泉熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湧き出た源泉水(温泉水)を源泉タンクと第1ポンプとの間で循環させる循環管路(揚湯管)と、一般水(水)を一次貯水槽と第2ポンプとの間で循環させる循環管路(水管)と、これら循環管路内の源泉水と一般水との間で熱交換させる熱交換器と、を備える温泉熱回収装置(井戸温泉熱交換装置)がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−14750号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の井戸温泉熱交換装置にあっては、湧き出た源泉水(温泉水)内の不溶性成分が空気中の酸素と反応することで析出・沈殿してしまうため、源泉タンクの内面及び循環管路(揚湯管及び熱交換器)の内周面にこれら不溶性成分の析出物・沈殿物が付着して源泉水の流れが遮られてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、温泉水を空気と接触させずに水と熱交換させることができる井戸温泉熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の井戸温泉熱交換装置は、
源泉に向けて挿入される管状の密閉体と、前記源泉から温泉水を井戸により汲み上げて前記密閉体の外方に揚湯管を介して吐出するように前記密閉体内に配置される揚湯ポンプと、を備え、
前記揚湯管内の前記温泉水と水管内の水との間で熱交換させる井戸温泉熱交換装置であって、
前記密閉体の上端部に該密閉体内から空気を排出する空気抜き装置と、前記揚湯管の最上部に、該揚湯管内から空気を排出するとともに該揚湯管への空気の流入を防ぐ第1自動空気抜き弁と、少なくとも熱交換した後の前記温泉水が流れる前記揚湯管を開閉する開閉弁と、を設けることを特徴としている。
この特徴によれば、空気抜き装置によって密閉体内の空気を排出するとともに、揚湯ポンプの初動時に揚湯管内の空気を温泉水によって第1自動空気抜き弁から押し出すことで、揚湯管内が温泉水で満たされた後は、密閉体内と揚湯管内との双方にて源泉から汲み上げられた温泉水が酸素を含む空気と接触することが防止され、酸素と温泉水内の不溶性成分が反応することで温泉水内に析出物・沈殿物が生じることを防止することができるので、揚湯管の内周面へのこれら析出物・沈殿物の付着を防ぐことができ、揚湯ポンプを停止させる際には、開閉弁を閉止することによって揚湯管内における揚湯ポンプと開閉弁との間を空気が存在しない温泉水で満たされた状態で維持し、水管との間で熱交換させる箇所で析出物・沈殿物の付着を防ぐことができる。
【0007】
本発明の井戸温泉熱交換装置は、
前記密閉体の上端部には、前記温泉水から生じる嫌気を該密閉体内から排出するとともに該密閉体内への空気の流入を防止する第2自動空気抜き弁が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、嫌気が密閉体内の上端部に溜まることがないので、嫌気が温泉水の水面を下方に向けて押圧する力によって揚湯ポンプの温泉水の組み上げ効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0008】
本発明の井戸温泉熱交換装置は、
熱交換前の前記揚湯管には、該揚湯管の上流側への空気の流入を防止する第3自動空気抜き弁が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、揚湯ポンプによる温泉水の汲み上げがメンテナンス等により停止した場合であっても、揚湯ポンプと第3自動空気抜き弁との間における揚湯管内は、空気が存在しない温泉水で満たされた状態で維持され、揚湯ポンプによる温泉水の汲み上げが再開されるまでの間、温泉水内における析出物・沈殿物の発生を抑えることができる。
【0009】
本発明の井戸温泉熱交換装置は、
前記揚湯管から分岐する分岐管を更に備え、前記揚湯管内の前記温泉水と前記分岐管内の前記温泉水とは、互いに温度が異なるように前記水と熱交換されることを特徴としている。
この特徴によれば、揚湯管内の温泉水と分岐管内の温泉水とをそれぞれ適温の異なる複数の用途に分けて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例における井戸温泉熱交換装置を示す概略図である。
【図2】実施例の第1変形例としての井戸温泉熱交換装置を示す概略図である。
【図3】実施例の第2変形例としての井戸温泉熱交換装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る井戸温泉熱交換装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
実施例に係る井戸温泉熱交換装置につき、図1を参照して説明する。図1の符号1は、本発明の井戸温泉熱交換装置である。この井戸温泉熱交換装置1は、図1に示すように、地中Gの地熱等により約100度に熱せられた源泉2に向けて掘削機等で掘削された温泉井戸3に挿入される管状の密閉体4と、この密閉体4内に配置され源泉2から硫黄、カルシウム、珪素、鉄、マンガン等が溶解している高温の温泉水5を汲み上げる揚湯ポンプ6と、上水等の常温の水を温水18として貯水するための貯湯槽7と、揚湯ポンプ6によって汲み上げられた温泉水5と貯湯槽7内に貯水された温水18とを熱交換させる熱交換器8と、から主に構成されている。
【0013】
このうち密閉体4は、上下寸法が本実施例では約1000メートルと長寸に形成されており、温泉井戸3に挿入することによって下端部を源泉2内に配置するとともに、温泉井戸3を源泉2が空気に触れないよう密閉している。また、密閉体4の下端部には、密閉体4の内部と外部とに連通する採温水口4aが複数形成されている。
【0014】
このため、密閉体4内には採温水口4aを介して温泉水5が流入しており、この密閉体4内の温泉水5中に揚湯ポンプ6が配置されている。揚湯ポンプ6は、密閉体4の外方に延びる揚湯管9に接続されており、揚湯ポンプ6の作動によって源泉2から温泉水5を揚湯ポンプ6を介して密閉体4の外方に汲み上げることが可能となっている。尚、密閉体4の外部であるこの揚湯管9の最上端部には、揚湯管9内の空気を揚湯管9外に排出するとともに、揚湯管9内への空気の流入を防ぐ第1自動空気抜き弁10が設けられている。
【0015】
密閉体4内における温泉水5の水面よりも上方には、密閉体4の外部に設けられた空気抜き装置11が接続されている。この空気抜き装置11は、密閉体4内から空気を抜くことで密閉体4内の温泉水5の水面よりも上方を真空状態にし、密閉体4内の温泉水5が空気中の酸素と接触することを防止している。
【0016】
また、密閉体4の上端部には、密閉体4内の温泉水5から生じる硫化水素や二酸化硫黄等の酸素を含まない嫌気を密閉体4外に排出するとともに、密閉体4内への空気の流入を防ぐための第2自動空気抜き弁12が設けられている。このため、密閉体4内における温泉水5から嫌気が生じても、随時この嫌気を第2自動空気抜き弁12から排出することで、密閉体4内における温泉水5の水面よりも上方に嫌気が圧縮された状態で充満することを防ぐことができる。
【0017】
一方、揚湯管9における第1自動空気抜き弁10よりも下流側には、揚湯ポンプ6によって汲み上げた温泉水5を下流側に向けて流すとともに、揚湯管9の下流側から上流側に向けて空気が流入することを防止する第3自動空気抜き弁13が設けられている。このため、揚湯管9における揚湯ポンプ6と第3自動空気抜き弁13との間は、第1自動空気抜き弁10から空気を排出した後は常に温泉水5で満たされるようになっている。
【0018】
揚湯管9における第3自動空気抜き弁13よりも下流側からは、揚湯管9から分岐管14が分岐している。また、揚湯管9は、分岐管14が分岐した箇所よりも下流側で熱交換器8に挿通されている。熱交換器8は、グラスウールやフェノールフォーム等の断熱材によって包まれた筐体であり、この熱交換器8内に配置されている揚湯管9は、九十九折状に形成されており、温泉水5の熱を熱交換器8内で放射するようになっている。
【0019】
更に、揚湯管9における熱交換器8内で温泉水5の熱を放射する箇所よりも下流側には、揚湯管9を開閉するための開閉弁15が設けられている。一方、分岐管14にも分岐管14を開閉するための開閉弁16が設けられており、分岐管14は開閉弁15よりも下流側で揚湯管9に合流している。尚、分岐管14の開閉弁16は、通常時は閉止されており、揚湯管9内を流れる温泉水5の流量調整や、熱交換器8のメンテナンス時等のみ開放される。
【0020】
そして、分岐管14と合流した揚湯管9は、熱交換器8内で熱を放射することによって水温が低下した温泉水を最終的に温泉風呂、足湯等の入浴施設や公道への融雪の為の散水等の用途に使用される。
【0021】
貯湯槽7は、熱交換器8と同様にクラスウールやフェノールフォーム等の断熱材によって包まれた筐体であり、貯湯槽7内の水位の低下に伴い水上水管17によって内部に温水18が供給されるようになっている。また、貯湯槽7には、貯湯槽7内に貯水された温水18を貯湯槽7の外方に供給するための給湯ポンプ20が設けられた給湯管19が接続されている。
【0022】
更に、貯湯槽7には、本発明における水管としてのループ管21の一方の端部が貯湯槽7内の底部に接続されるとともに他方の端部が貯湯槽7の上部に接続されている。このループ管21には、ループ管21を開閉するための開閉弁22及び貯湯槽7の底部から水を吸い込む循環ポンプ23が設けられており、貯湯槽7内の水は底部付近の水から循環ポンプ23によってループ管21に吸い込まれ、熱交換器8を通して貯湯槽7内の上部に放出されるようになっている。尚、ループ管21の開閉弁22及び循環ポンプ23よりも下流側は、熱交換器8に挿通され、循環される仕組みになっている。
【0023】
このループ管21における熱交換器8内に配置された箇所は、熱交換器8内の揚湯管9に近接配置されているとともに、揚湯管9に沿うように九十九折状に形成されている。このため、ループ管21内を流れている水は、熱交換器8内で揚湯管9から発せられる温泉水5の熱をループ管21を介して循環されることにより、温泉水5の水温近くまで熱を受けることによって水温が上昇して温水18となった状態で貯湯槽7内の上部に放出される。つまり、熱交換器8内において温泉水5と温水18との熱交換がなされる。
【0024】
また、貯湯槽7内にはモータ24によって駆動する攪拌器25が設けられており、この攪拌器25の駆動によって熱交換器8内で加熱された貯湯槽7内の上部の温水18と、水温の低い貯湯槽7内の底部の水と、を撹拌して、貯湯槽7内の水温を一定に保っている。そして、熱交換がなされた温水18は、給湯ポンプ20の駆動によって給湯管19を介して貯湯槽7から風呂やシャワー、温水プール等の施設の他、公道への融雪の為の散水等の用途に使用するために給湯されるようになっている。
【0025】
尚、特に図示しないが、本実施例では、貯湯槽7内に貯湯槽7内の温水18の水温を常時計測している水温計を設けるとともに、貯湯槽7外に水温計及び開閉弁22に接続される制御装置を設けており、制御装置は、水温計の測定温度が一定値を超えることを条件に開閉弁22を閉止させるとともに、水温計の測定温度が一定値を下回ることを条件に開閉弁22を再び開放させるようになっている。このため、本実施例における貯湯槽7内では、貯湯槽7内の温水18の水温を一定温度に保つことが可能となっている。
【0026】
更に尚、本実施例では貯湯槽7に水上水管17及び熱交換器8に挿通されたループ管21を接続することで、温泉水5と温水18との熱交換を行い、貯湯槽7内の温水18の水温を調整したが、貯湯槽7を複数設けるとともに各貯湯槽7に水上水管17及び熱交換器8に挿通されたループ管21を接続し、前記制御装置によって各貯湯槽7への水上水管17からの温水18の流入量と開閉弁22の開閉とを制御するようにしてもよい。このように構成することで、ある貯湯槽7内の温水18を使い切る毎に他の貯湯槽7内の温水18を給湯管19を介して使用できるように切り替えるとともに、空となった貯湯槽7内へ再び水上水管17から温水18を流入させて熱交換を行わせることで、途切れることなく給湯管19へ一定水温の温水18の給湯を行うことができる。更には、揚湯ポンプ6を停止させることなく、インバーター制御により効率よく24時間の間温泉水5と温水18との熱交換を行わせ、熱交換を行った温水18を風呂やシャワー、温水プール等の施設で使用することができる。
【0027】
以上、本実施例における井戸温泉熱交換装置1にあっては、密閉体4の上端部に密閉体4内から空気を排出する空気抜き装置11と、揚湯管9の最上部に、揚湯管9内から空気を排出するとともに揚湯管9への空気の流入を防ぐ第1自動空気抜き弁10と、少なくとも熱交換した後の温泉水5が流れる揚湯管9を開閉する開閉弁15と、を設けるので、空気抜き装置11によって密閉体4内の空気を排出するとともに、揚湯ポンプ6の初動時に揚湯管9内の空気を温泉水5によって第1自動空気抜き弁10から押し出すことで、揚湯管9が温泉水5で満たされた後は、密閉体4内と揚湯管9内との双方にて源泉2から汲み上げられた温泉水5が酸素を含む空気と接触することが防止され、酸素と温泉水5内の不溶性成分とが反応することで温泉水5内に析出物・沈殿物が生じることを防止することができるので、揚湯管9の内周面へのこれら析出物・沈殿物の付着を防ぐことができ、揚湯ポンプ6を停止させる際には、開閉弁15,16を閉止することによって揚湯管9内における揚湯ポンプ6と開閉弁15,16との間を空気が存在しない温泉水5で満たされた状態で維持し、水上水管17との間で熱交換させる箇所で析出物・沈殿物の付着を防ぐことができる。
【0028】
また、密閉体4の上端部には、温泉水5から生じる嫌気を密閉体4内から排出するとともに密閉体4内への空気の流入を防止する第2自動空気抜き弁12が設けられている。これにより、嫌気が密閉体4内の上端部に溜まることがないので、嫌気が温泉水5の水面を下方に向けて押圧する力によって揚湯ポンプ6の温泉水5の組み上げ効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0029】
また、熱交換前の揚湯管9には、揚湯管9の上流側への空気の流入を防止する第3自動空気抜き弁13が設けられているので、揚湯ポンプ6による温泉水5の汲み上げがメンテナンス等により停止した場合であっても、揚湯ポンプ6と第3自動空気抜き弁13との間における揚湯管9内は、空気が存在しない温泉水5で満たされた状態で維持され、揚湯ポンプ6による温泉水5の汲み上げが再開されるまでの間、温泉水5内における析出物・沈殿物の発生を抑えることができる。
【0030】
次に、実施例における第1変形例につき、図2を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。図2に示すように、本実施例における井戸温泉熱交換装置1’は、熱交換器8が貯湯槽7内の底部に配置されており、揚湯管9は、熱交換器8と貯湯槽7内との双方に挿通されている。
【0031】
また、ループ管21の一方の端部は貯湯槽7内の上部に接続されており、ループ管21の他方の端部は貯湯槽7内にて熱交換器8の下流側に配置されている。このため、貯湯槽7内の上部の水を循環ポンプ23によって吸い込むとともに、貯湯槽7内に配置された熱交換器8にて水温が上昇した温水18をループ管21の他方側の端部から放出するようになっている。
【0032】
つまり、本実施例では、熱交換器8内において温泉水5と熱交換によって加熱された温水18を、熱エネルギーのロス無く貯湯槽7内に放出することができるようになっている。
【0033】
次に、実施例における第2変形例につき、図3を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施例における井戸温泉熱交換装置1’’は、揚湯管9における第3自動空気抜き弁13より下流側にて分岐管14が分岐している。この分岐管14は、揚湯管9と平行に所定距離延設されており、導水管9は、温泉水5をバルブ操作により常時使用適温として貯水するための貯湯槽26に接続されている。
【0034】
また、揚湯管9及び分岐管14は、熱交換器27に挿通されている。本実施例における熱交換器27は、温水18を貯水するための筐体であり、水上水管17が接続されている。この水上水管17によって内部に温水18が供給されている。更に、熱交換器27は、内部に貯水された温水18が揚湯管9及び分岐管14内の温泉水5と十分に熱交換を行い一定水温にまで加熱されるように、十分な長さ(例えば100メートル程度)に形成されており、この十分に加熱された温水18を熱交換器27の外方に供給するための開閉弁29が設けられた給湯管28が接続されている。
【0035】
このため、熱交換器27内では温水18が直接揚湯管9及び分岐管14に接触しており、熱交換器27内の温水18が温泉水5の熱を揚湯管9のみを介して受けることができるので、効率よく温泉水5の温度を低下させるとともに温水18の温度を上昇させることができるようになっている。
【0036】
尚、揚湯管9の熱交換器27内に配置される箇所よりも上流側には、開閉弁30が設けられているとともに、揚湯管9の熱交換器27内に配置される箇所よりも下流側には、開閉弁31が設けられている。同様に、分岐管14の熱交換器27内に配置される箇所よりも上流側には、開閉弁32が設けられているとともに、分岐管14の熱交換器27内に配置される箇所よりも下流側には、開閉弁33が設けられている。
【0037】
これら開閉弁30,31,32,33の開度を調整することによって揚湯管9及び分岐管14内を流れる温泉水5の流量を調整し、温泉水5から熱を受ける熱交換器27内の温水18の温度を適宜調整可能となっている。
【0038】
特に、本実施例においては、開閉弁30,31は全開放されておらず、熱交換器27内における揚湯管9内の温泉水5の流速が低速となっている。このため、揚湯管9内の温泉水5は、開閉弁29が所定量開放されたことで水上水管17内から熱交換器27内に流れ込む水との間で、熱交換器27内にて十分に時間をかけて熱交換がなされる。この熱交換によって、温泉水5は、水温が45度前後と比較的低温となった状態で貯湯槽26内に貯水される。尚、熱交換器27内にて温泉水5と熱交換がなされた温水18は、給湯管28を介して風呂やシャワー、温水プール等の施設に備え付けられた図示しない給湯タンクに給湯されるようになっている。
【0039】
一方、開閉弁32,33は略全開まで開放されており、熱交換器27内における分岐管14内の温泉水5の流速が高速となっている。このため、分岐管14内の温泉水5は、熱交換器27内にてさほど時間をかけることなく温水18との熱交換がなされ、水温が60と比較的高温な状態で温泉風呂等に供給されるようになっている。
【0040】
また、本実施例における井戸温泉熱交換装置1’’は、貯湯槽26内に貯水された温泉水5に空気を吹き付けるためのコンプレッサ34を備えている。このコンプレッサ34には、送風管35,36が接続されている。
【0041】
このうち送風管35は、熱交換器27内に挿通されて貯湯槽26に向けて延設されているとともに、熱交換器27内に配置された箇所よりもコンプレッサ34側には、送風管35を開閉可能な開閉弁37が設けられている。一方、送風管36は、熱交換器27の外方を貯湯槽7に向けて延設されているとともに、途上には開閉弁38が設けられており、これら送風管35,36は、貯湯槽26近傍で合流した状態で貯湯槽26に接続されている。
【0042】
このようにコンプレッサ34を送風管35,36を介して貯湯槽26に接続することで、コンプレッサ34内で生成された圧縮空気が送風管35または送風管36内を流れた貯湯槽26内の温泉水5に吹き付けられるようになっている。
【0043】
この圧縮空気に接触した貯湯槽26内の温泉水は、空気内の酸素と反応することによって不溶性成分が析出物・沈殿物として生成され、これら析出物・沈殿物が貯湯槽26内の底部に沈殿する。
【0044】
つまり本実施例における貯湯槽26は、析出物・沈殿物を底部に沈殿させるための沈殿槽として機能している。そして、貯湯槽26内で十分に不溶性成分を析出物・沈殿物として沈殿させた温泉水5を足湯等の入浴施設や融雪用水として供給することで、入浴施設における配管に析出物・沈殿物が付着するのを防止している。
【0045】
尚、この貯湯槽26内の温泉水5に吹き付ける圧縮空気は、前述の開閉弁37,38の開閉を行うことで送風管35,36のいずれか一方を通過させることができるようになっている。具体的には、外気温が高い夏季には、開閉弁38を開放して送風管36を流れる圧縮空気を貯湯槽26内の温泉水5に吹き付け、外気温が低い冬季には、熱交換器27内に挿通されている送風管35側を圧縮空気が流れるように開閉弁37を開放することで、高温の圧縮空気を貯湯槽26内の温泉水5に吹き付け、効率よく温泉水5の析出物・沈殿物を貯湯槽7内に沈殿させることができるようになっている。
【0046】
以上、本実施例における井戸温泉熱交換装置1’’にあっては、揚湯管9から分岐する分岐管14を更に備え、揚湯管9内の温泉水5と分岐管14内の温泉水5とは、互いに温度が異なるように温水18と熱交換されるので、揚湯管9内の温泉水5と分岐管14内の温泉水5とを図示しないバルブ操作によりそれぞれ適温の異なる複数の用途に分けて使用することができる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、前記実施例では、熱交換器8内にて揚湯管9とループ管21とを近接配置させることで温泉水5と温水18とを熱交換させたが、密着させることによってより温泉水5と温水18との熱交換効率を上昇させるようにしても良い。
【0049】
また、前記実施例では、熱交換器27熱交換器27内に揚湯管9及び分岐管14を挿通させて熱交換器27内の温水18と揚湯管9及び分岐管14内の温泉水5とを熱交換させたが、揚湯管9と分岐管14とのいずれか一方の管の一部を大径に形成して熱交換器とし、該熱交換器に水上水管17を数本挿通させることにより、バルブ操作により異なる温度の温水が生成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,1’,1’’ 井戸温泉熱交換装置
2 源泉
3 温泉井戸
4 密閉体
5 温泉水
6 揚湯ポンプ
8 熱交換器
9 揚湯管
10 第1自動空気抜き弁
11 空気抜き装置
12 第2自動空気抜き弁
13 第3自動空気抜き弁
15,16 開閉弁
18 温水
20 給湯ポンプ
21 ループ管(水管)
27 熱交換器
30,31 開閉弁
32,33 開閉弁
G 地中

【特許請求の範囲】
【請求項1】
源泉に向けて挿入される管状の密閉体と、前記源泉から温泉水を井戸により汲み上げて前記密閉体の外方に揚湯管を介して吐出するように前記密閉体内に配置される揚湯ポンプと、を備え、
前記揚湯管内の前記温泉水と水管内の水との間で熱交換させる井戸温泉熱交換装置であって、
前記密閉体の上端部に該密閉体内から空気を排出する空気抜き装置と、前記揚湯管の最上部に、該揚湯管内から空気を排出するとともに該揚湯管への空気の流入を防ぐ第1自動空気抜き弁と、少なくとも熱交換した後の前記温泉水が流れる前記揚湯管を開閉する開閉弁と、を設けることを特徴とする井戸温泉熱交換装置。
【請求項2】
前記密閉体の上端部には、前記温泉水から生じる嫌気を該密閉体内から排出するとともに該密閉体内への空気の流入を防止する第2自動空気抜き弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の井戸温泉熱交換装置。
【請求項3】
熱交換前の前記揚湯管には、該揚湯管の上流側への空気の流入を防止する第3自動空気抜き弁が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の井戸温泉熱交換装置。
【請求項4】
前記揚湯管から分岐する分岐管を更に備え、前記揚湯管内の前記温泉水と前記分岐管内の前記温泉水とは、互いに温度が異なるように前記水と熱交換されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の井戸温泉熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127539(P2012−127539A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277397(P2010−277397)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(595077016)山大機電株式会社 (7)