説明

亜硝酸型硝化反応汚泥並びにその製造方法及び製造装置、並びに廃水処理方法及び廃水処理装置

【課題】エネルギーコストが低く、長期間にわたって安定した廃水処理を簡便に行うことができる亜硝酸型硝化反応汚泥並びにその製造方法及び製造装置、並びに廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥12のpHが10以上になるように、アルカリ液タンク18からアルカリ液を活性汚泥12に添加する。これにより、活性汚泥12中の亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させることができる。これにより、アンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止めて、硝化反応時の酸素の供給量と、還元反応時の水素供与体の供給量とを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜硝酸型硝化反応汚泥並びにその製造方法及び製造装置、並びに廃水処理方法及び廃水処理装置に係る。ここで亜硝酸型硝化反応汚泥とは、アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌を優占的に集積させた活性汚泥をいう。
【背景技術】
【0002】
アンモニア性窒素を含む廃水の処理方法として、硝化細菌によりアンモニア性窒素を硝酸に硝化(酸化)した後、この硝酸を脱窒細菌により窒素ガスに還元することで、アンモニア性窒素を除去する硝化脱窒方法が知られている。
【0003】
しかし、上記硝化脱窒方法では、廃水中のアンモニア性窒素(NH)を、亜硝酸(NO)を経由して硝酸(NO)まで硝化するため、硝化反応の際に多量の酸素を供給する必要がある。また硝酸から窒素ガスへの脱窒反応の際に多量の水素供与体(例えばメタノール)を供給する必要がある。
【0004】
そこで、アンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止めて、この亜硝酸を窒素ガスに脱窒することで、硝化反応時の酸素の供給量と、脱窒反応時の水素供与体の供給量とを低減することが考えられる。
【0005】
一方、従来の硝化脱窒方法に代わる廃水処理方法として、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法が注目を集めている。この方法は、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸に硝化した後、当該亜硝酸と、廃水中のアンモニア性窒素とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒するものであり、硝化反応時の酸素の供給量を低減することができるだけでなく、脱窒反応時に水素供与体を供給する必要がない点で従来の硝化脱窒方法よりも有利である。しかし、嫌気性アンモニア酸化細菌を用いて廃水処理を行うためには、廃水中のアンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止める必要がある。
【0006】
このような理由から、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸に硝化する亜硝酸型の硝化反応を提供する微生物担体の作製方法がいくつか提案されている。
【0007】
例えば特許文献1には、加熱処理により、亜硝酸型の硝化反応に適した硝化細菌だけを集積させることで、アンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止める方法が記載されている。この方法では、アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌と、亜硝酸を硝酸に硝化する亜硝酸酸化細菌とを含む担体に対して加熱処理を施すことで、亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌を担体中に優占的に集積させる。この担体を用いれば、廃水中のアンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止めることができる。
【0008】
しかし特許文献1に記載された方法では、担体の加熱処理時に多量の熱エネルギーを供給する必要がある。このため、エネルギーコストを低減する観点から、担体の加熱処理を伴わない方法が提案されている。
【0009】
例えば特許文献2は、アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥を包括固定した担体に対して酸処理を施すことにより、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させた担体を作製して、当該担体を用いて廃水処理を行う方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許3788601号公報
【特許文献2】特開2008−272610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、廃水等により外部から持ち込まれる亜硝酸酸化細菌を失活させるため担体を定期的に酸処理する必要があり、この酸処理の条件によっては、担体の機械的強度が徐々に劣化して、担体内部の硝化細菌が流出してしまう場合がある。
【0012】
また担体を定期的に酸処理するには、硝化反応槽中の廃水と担体とを分離して、担体だけを回収しなければならず、担体回収のための複雑な工程が必要となる。
【0013】
さらに酸処理された担体を中和せずに硝化反応槽に投入すると、硝化反応槽におけるpHが低下して、硝化反応速度が小さくなってしまう場合がある。
【0014】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、エネルギーコストが低く、長期間にわたって安定した廃水処理を簡便に行うことができる亜硝酸型硝化反応汚泥並びにその製造方法及び製造装置、並びに廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法は、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させた亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法であって、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施す工程を含むことを特徴とする。
【0016】
ここで、「pHが10以上」とは、pHが10以上14未満の場合だけでなく、pHメーターによる実測が困難なpHが14以上の場合をも含む。なお本明細書において「pH」は、25℃、1atmの状態における−log10[H]を意味する(ただし、[H]は水素イオン濃度(mol/L)である)。
【0017】
本願発明者が鋭意検討した結果、アンモニア酸化細菌がアルカリに対し高い耐性を持つ一方で、亜硝酸酸化細菌はアルカリに対して耐性が低いことが明らかになった。上記製造方法は、このようなアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とのアルカリ耐性の違いを利用したものであり、活性汚泥に対してアルカリ処理を施すことにより、亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させることができる。
【0018】
またアルカリ処理は、担体の加熱処理に比べて低コストで行うことができるため、エネルギーコストを削減することができる。
【0019】
またアンモニア酸化細菌を担体ではなく活性汚泥に集積させることにより、担体の破損に起因する硝化反応速度の低下を防止することができるとともに、担体回収のための複雑な工程を省略することができる。
【0020】
さらにアルカリ処理された活性汚泥を中和せずに硝化反応槽に投入しても、硝化反応速度を低下させることはないため、中和処理を省略することができる。
【0021】
上記亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法において、前記アルカリ処理を施す工程では、前記活性汚泥にアルカリ液を添加することで、前記活性汚泥のpHを10以上14以下(さらに好ましくは11以上14以下)の範囲で保持することが好ましい。
【0022】
活性汚泥のpHを上記範囲に調節することで、アンモニア酸化細菌を失活させることなく、亜硝酸酸化細菌を選択的に失活させることができる。
【0023】
上記亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法において、前記アルカリ処理は、下記(1)〜(3)のうち少なくとも一つの条件で行うことが好ましい。
【0024】
(1)前記活性汚泥のpHを13以上の範囲で5分以上保持する。
【0025】
(2)前記活性汚泥のpHを12以上13未満の範囲で10分以上保持する。
【0026】
(3)前記活性汚泥のpHを10以上12未満の範囲で60分以上保持する。
【0027】
これにより、亜硝酸酸化細菌を確実に失活させて、アンモニア酸化細菌がより選択的に集積した活性汚泥を製造することができる。
【0028】
本発明にかかる亜硝酸型硝化反応汚泥は、上記亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法により製造することができる。
【0029】
本発明に係る亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置は、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させた亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置であって、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施すアルカリ処理装置を含むことを特徴とする。
【0030】
アルカリ処理装置により、pH10以上のアルカリ処理を活性汚泥に施すことで、活性汚泥中の亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させることができる。
【0031】
本発明に係る廃水処理方法は、アンモニア性窒素を含む廃水を処理する廃水処理方法であって、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施す工程と、前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、前記亜硝酸に対して脱窒処理を施す工程とを含むことを特徴とする。
【0032】
上記廃水処理方法によれば、活性汚泥に対してpH10以上のアルカリ処理を施すことにより、アンモニア酸化細菌を活性汚泥中に優占的に集積させることにより、アンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止めることができる。これにより、硝化反応時の酸素の供給量と、還元反応時の水素供与体の供給量とを低減することができる。
【0033】
上記廃水処理方法において、前記脱窒処理を施す工程では、嫌気性アンモニア酸化細菌によって、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を水素供与体とし、前記アンモニア性窒素を酸化する工程で生成した前記亜硝酸を脱窒してもよい。
【0034】
上記廃水処理方法において、前記脱窒処理を施す工程では、脱窒細菌によって、前記アンモニア性窒素を酸化する工程で生成した前記亜硝酸を脱窒してもよい。
【0035】
上記廃水処理方法において、前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する工程で用いた前記活性汚泥を回収する工程と、回収された前記活性汚泥に対して前記アルカリ処理を施す工程とを含むことが好ましい。
【0036】
これにより、外部から亜硝酸酸化細菌が持ち込まれる場合であっても、亜硝酸型の硝化性能を長期にわたって維持することができる。
【0037】
上記廃水処理方法において、前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥に酸剤を添加して、前記活性汚泥のpHを調整する工程を含むことが好ましい。
【0038】
このように、酸剤の添加によりアルカリ処理後の活性汚泥のpHを小さくすることで、廃水処理の効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0039】
本発明の廃水処理装置は、アンモニア性窒素を含む廃水を処理する廃水処理装置であって、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施すアルカリ処理装置と、前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する亜硝酸生成槽と、前記亜硝酸に対して脱窒処理を行う脱窒槽とを含むことを特徴とする。
【0040】
上記廃水処理装置において、前記脱窒槽は、嫌気性アンモニア酸化細菌によって、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を水素供与体とし、前記亜硝酸生成槽において生成した前記亜硝酸を脱窒してもよい。
【0041】
上記廃水処理装置において、前記脱窒槽は、脱窒細菌によって、前記亜硝酸生成槽において生成した前記亜硝酸を脱窒してもよい。
【0042】
上記廃水処理装置において、前記亜硝酸生成槽から前記活性汚泥を回収する回収装置と、前記回収装置により回収された前記活性汚泥に対して前記アルカリ処理を施して、前記活性汚泥を再生する再生装置とを含むことが好ましい。
【0043】
上記廃水処理装置において、前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥に酸剤を添加して、前記活性汚泥のpHを調整するpH調整装置を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、活性汚泥に対してpH10以上のアルカリ処理を施すことにより、亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌を優占的に集積させることができる。これにより、廃水中のアンモニア性窒素の硝化反応を亜硝酸の段階で止めて、硝化反応時の酸素の供給量と、還元反応時の水素供与体の供給量とを低減することができる。
【0045】
アルカリ処理は、担体の加熱処理に比べて低コストで行うことができるため、エネルギーコストを削減することができる。
【0046】
またアンモニア酸化細菌を担体ではなく活性汚泥に集積させることにより、担体の破損に起因する硝化反応速度の低下を防止することができるとともに、担体回収のための複雑な工程を省略することができる。
【0047】
さらにアルカリ処理された活性汚泥を中和せずに硝化反応槽に投入しても、硝化反応速度を低下させることはないため、中和処理を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置(反応汚泥製造装置)の一例を示す構成図である。
【図2】亜硝酸型硝化反応汚泥を用いた硝化処理装置の一例を示す構成図である。
【図3】第1の廃水処理実験に用いた合成廃水の水質を示す表である。
【図4】第1の廃水処理実験の条件下における処理水中の窒素濃度を示すグラフであり、(a)〜(c)それぞれ本発明汚泥A〜Cを用いた場合の窒素濃度を示し、(d)は比較汚泥を用いた場合の窒素濃度を示す。
【図5】第2の廃水処理実験に用いた合成廃水の水質を示す表である。(a)は亜硝酸性窒素を44mg/L含有する合成廃水の水質を示す表であり、(b)はアンモニア性窒素を44mg/L含有する合成廃水の水質を示す表である。
【図6】第2の廃水処理実験に用いた好気反応槽を示す構成図である。
【図7】(a)は、亜硝酸性窒素を44mg/L含有する合成廃水(図5(a)参照)を1ヶ月間連続曝気処理して得られた上澄み液の硝酸性窒素濃度を示すグラフである。(b)はアンモニア性窒素を44mg/L含有する合成廃水(図5(b)参照)を1ヶ月間連続曝気処理して得られた上澄み液の亜硝酸性窒素濃度を示すグラフである。
【図8】反応汚泥のアルカリ処理を定期的に行う硝化処理装置の一例を示す構成図である。
【図9】第3の廃水処理実験に用いた廃水の平均水質を示す表である。
【図10】第3の廃水処理実験の条件下における処理水中の窒素濃度を示すグラフである。
【図11】(a)は脱窒菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法を示す工程図であり、(b)は嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法を示す工程図である。
【図12】本発明に係る廃水処理方法を実施するための廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図13】図12に示す廃水処理装置の変形例を示す構成図である。
【図14】図12に示す廃水処理装置の他の変形例を示す構成図である。
【図15】図14に示す廃水処理装置の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0050】
本発明に係る亜硝酸型硝化反応汚泥は、アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌を優占的に集積させた活性汚泥である。
【0051】
図1は亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置(反応汚泥製造装置)の一例を示す構成図である。同図に示すように、反応汚泥製造装置10は、活性汚泥12が溜められたアルカリ処理槽14と、活性汚泥12のpHを測定するpH測定機16と、pH測定機16の測定結果に基づいてアルカリ液タンク18に溜められたアルカリ液をアルカリ処理槽14に供給するポンプPとにより構成される。
【0052】
活性汚泥12は、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む複合微生物系の汚泥であり、例えば、下水や工場廃水を処理する処理場の活性汚泥、湖沼や河川や海の底泥、地表の土壌等を使用することができる。
【0053】
活性汚泥12のpHは、pH測定機16により常に測定されており、このpH測定機16の測定結果に基づいて、ポンプPによるアルカリ処理槽14へのアルカリ液の供給量が調節される。これにより、活性汚泥12に対して、pH10以上のアルカリ処理が施される。ここで、「pHが10以上」とは、pHが10以上14未満の場合だけでなく、一般的なpHメーターによる実測が困難なpHが14以上の場合をも含む。例えば、理論上pHが14よりも高い値になる2規定の水酸化ナトリウムに活性汚泥12を投入する場合であっても、アルカリ処理後の活性汚泥12を中和して、一定時間放置することで、活性汚泥12中のアンモニア酸化細菌を再活性化することができる。
【0054】
本願発明者が鋭意検討した結果、アンモニア酸化細菌がアルカリに対し高い耐性を持つ一方で、亜硝酸酸化細菌はアルカリに対して耐性が低いことが明らかになった。上記構成の反応汚泥製造装置10は、このようなアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とのアルカリ耐性の違いを利用したものであり、活性汚泥12に対してpH10以上のアルカリ処理を施すことにより、亜硝酸酸化細菌を失活させて、アンモニア酸化細菌が優占的に集積した反応汚泥を製造することができる。
【0055】
活性汚泥12のアルカリ処理は、pHが10以上14以下の範囲であることが好ましく、pHが11以上14以下の範囲であることがさらに好ましい。これにより、アンモニア酸化細菌を失活させることなく、亜硝酸酸化細菌を迅速に殺菌することができる。
【0056】
また活性汚泥12のアルカリ処理は、下記(1)〜(3)のうち少なくとも一つの条件で行うことが好ましい。
【0057】
(1)活性汚泥12のpHを13以上の範囲で5分以上保持する。
【0058】
(2)活性汚泥12のpHを12以上13未満の範囲で10分以上保持する。
【0059】
(3)活性汚泥12のpHを10以上12未満の範囲で60分以上保持する。
【0060】
これにより、活性汚泥12中の亜硝酸酸化細菌を確実に失活させて、アンモニア酸化細菌をより選択的に集積させることができる。
【0061】
またアルカリ処理後の活性汚泥12に対して酸剤を添加して、活性汚泥12のpHを調整することが好ましい。このように、酸剤の添加によりアルカリ処理後の活性汚泥のpHを小さくすることで、廃水処理の効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0062】
なお図1には、所定量の活性汚泥12に対してバッチ方式でアルカリ処理を行う例を示したが、一定の流量でアルカリ処理槽14を通過する活性汚泥12に対して連続方式でアルカリ処理を行ってもよい。連続方式でアルカリ処理を行う場合、上記(1)〜(3)の条件におけるアルカリ処理時間(pH保持時間)を、アルカリ処理槽14における活性汚泥12の平均滞留時間に読み替えて適用することができる。
【0063】
また図1には、反応汚泥製造装置10が独立した例について説明したが、反応汚泥製造装置10を廃水処理装置に組み込んで、廃水処理装置の一部として使用してもよい。
【0064】
次に、上記構成の反応汚泥製造装置10により製造した亜硝酸型硝化反応汚泥を用いて、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸に酸化(硝化)する硝化処理装置の構成について説明する。
【0065】
図2は亜硝酸型硝化反応汚泥を用いる硝化処理装置の一例を示す構成図である。硝化処理装置20は、主として、廃水原水を貯蔵する原水タンク22と、原水タンク22から流入する廃水原水の硝化処理が行われる好気反応槽(亜硝酸生成槽)24と、硝化処理が施された廃水(処理水30)と反応汚泥(亜硝酸型硝化反応汚泥)28とを分離する沈殿槽26とにより構成される。
【0066】
原水タンク22と好気反応槽24との間には、廃水原水を好気反応槽24に送るポンプP1(原水ポンプ)が設けられており、沈殿槽26と好気反応槽24との間には、反応汚泥28を好気反応槽24に返送するポンプP2(返送汚泥ポンプ)が設けられている。
【0067】
好気反応槽24には、ポンプP1により原水タンク22から送られた原水廃水と、ポンプP2により沈殿槽26から返送された反応汚泥28との混合液32が溜まっており、この混合液32は好気反応槽24内に設けられた散気装置34により曝気攪拌される。この散気装置34は、例えば、円筒状のパイプに設けられた複数の穴からエアを噴出する構成を有し、混合液32を均一に攪拌するとともに、硝化処理に必要な酸素を好気反応槽24に供給する。
【0068】
好気反応槽24内の混合液32のpHは、pH測定機16により常に(又は定期的に)測定されており、pH測定機16の測定値に基づいて、ポンプP3により、アルカリ液タンク18から好気反応槽24にアルカリ液が供給される。これにより、混合液32のpHを所定の範囲内に調節することができる。
【0069】
上記構成の好気反応槽24において、混合液32中のアンモニア性窒素は、反応汚泥28により持ち込まれたアンモニア酸化細菌により、亜硝酸に酸化(硝化)される。
【0070】
好気反応槽24における硝化処理が施された混合液32は、沈殿槽26に送られて、反応汚泥28と処理水30とに分離される。沈殿槽26における反応汚泥28と処理水30との分離は任意の手法で行うことができる。図2には、反応汚泥28と処理水30の比重差を利用して分離する例を示している。
【0071】
沈殿槽26において重力沈殿した反応汚泥28は、沈殿槽26の下方から抜き取られ、上澄み液である処理水30は沈殿槽26から排出される。
【0072】
この後、反応汚泥28は、返送汚泥弁V1を開いた状態で、ポンプP2を稼動することで、再び好気反応槽24に返送される。また硝化処理装置20内の反応汚泥28の全体量は、汚泥引抜弁V2の開閉により調節することができる。
【0073】
上記構成の硝化処理装置20を用いて、反応汚泥製造装置10により製造した亜硝酸型硝化反応汚泥の亜硝酸型の硝化性能を確認するために、下記の方法による第1の廃水処理実験を行った。
【0074】
硝化処理の対象である廃水として、アンモニア性窒素濃度が40mg/Lになるように調整された合成廃水を用いた。図3は硝化処理の対象である合成廃水の水質を示す表である。
【0075】
反応汚泥28には、下水処理場で採取した返送汚泥(活性汚泥浮遊物質濃度(MLSS濃度:Mixed Liquor Suspended Solid)=6,000mg/L)に対して、下記条件でアルカリ処理および中和処理した反応汚泥(本発明汚泥A〜Cと、比較汚泥)を用いた。
【0076】
本発明汚泥Aは、上記返送汚泥のpHを13.4〜13.6で20分間維持した後、酸剤を添加してpH7.5に中和して作製した。
【0077】
本発明汚泥Bは、上記返送汚泥のpHを11.9〜12.1で60分間維持した後、酸剤を添加してpH7.5に中和して作製した。
【0078】
本発明汚泥Cは、上記返送汚泥のpHを10.9〜11.1で120分間維持した後、酸剤を添加してpH7.5に中和して作製した。
【0079】
比較汚泥は、上記返送汚泥のpHを7.4〜7.6で60分間維持することで作製した。
【0080】
アルカリ処理及び中和処理には、2mol/Lの水酸化ナトリウムと、1mol/Lの硫酸とを用いた。
【0081】
好気反応槽24の反応容積は2Lであり、好気反応槽24内のMLSS濃度が2,500〜3,500mg/Lになるように運転した。また好気反応槽24内の水温を18〜22℃(平均20℃)に調節した。好気反応槽24における廃水の水理学的滞留時間は3時間とした。
【0082】
好気反応槽24内の溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)濃度は、亜硝酸型の硝化性能を評価しやすくするため、あえて硝酸型硝化反応が起こりやすい4.0mg/L以上になるように、散気装置34のエア噴出量を調節した。
【0083】
好気反応槽24内のpHは、亜硝酸型の硝化性能を評価しやすくするため、あえて硝酸型硝化反応が起こりやすい7.0以上7.5以下になるように、ポンプP3によるアルカリ液の添加量を調節した。
【0084】
図4は上述の条件下における処理水30中の窒素濃度を示すグラフであり、図4(a)〜(c)はそれぞれ本発明汚泥A〜Cを用いた場合の窒素濃度を示し、図4(d)は比較汚泥を用いた場合の窒素濃度を示す。図4(a)〜(d)において、○は廃水原水のアンモニア性窒素濃度を示し、●は処理水30のアンモニア性窒素濃度を示し、▲は処理水30の亜硝酸性窒素濃度を示し、■は処理水30の硝酸性窒素濃度を示す。
【0085】
図4(a)〜(c)に示すように、本発明汚泥A〜Cを用いた廃水処理では開始から1週間目からアンモニア酸化活性が上昇し、3週間目には亜硝酸生成率90%以上の亜硝酸生成能が確認された。その後、2ヶ月以上にわたって合成廃水の硝化処理を継続したが、硝酸生成能が上昇することはなかった。このように、本発明の製造方法により製造した反応汚泥28を用いれば、好気反応槽24において亜硝酸型の硝化反応が起こることが分かった。
【0086】
一方、図4(d)に示すように、比較汚泥を用いた廃水処理では、運転開始直後の2週間は亜硝酸の生成能のみが上昇したが、その後、硝酸生成能が上昇し、3週間目以降には硝酸生成率90%以上の硝酸生成能が確認された。その後、2ヶ月以上廃水処理を行ったが、硝酸生成能の抑制は確認されなかった。
【0087】
以上から、少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥に対して、pH10以上のアルカリ処理を施すことにより、亜硝酸型の硝化性能を有する反応汚泥28を製造可能であることが確認された。
【0088】
次に、反応汚泥28を製造する際のアルカリ処理条件と、反応汚泥28の亜硝酸型の硝化性能との関係について検討するために、下記の方法による第2の廃水処理実験を行った。
【0089】
亜硝酸型硝化反応汚泥として、第1の廃水処理実験と同様に、アルカリ処理及び中和処理が施されたMLSS濃度が6,000mg/Lの汚泥(下水処理場にて採取)を用いた。汚泥のアルカリ処理は、pHが8、9、10、11、12、13、13.5又は14であり、処理時間(分)が0.5、1、3、5、10、20、40又は60の条件下で行った。その後、アルカリ処理後の汚泥を、直ちに酸液でpH7.5に中和した。
【0090】
硝化処理の対象である合成廃水は、亜硝酸性窒素を44mg/L含有する合成廃水と、アンモニア性窒素を44mg/L含有する合成廃水とを使用した。図5(a)は亜硝酸性窒素を44mg/L含有する合成廃水の水質を示す表であり、図5(b)はアンモニア性窒素を44mg/L含有する合成廃水の水質を示す表である。
【0091】
これらの合成廃水450mLと、上述の亜硝酸型硝化反応汚泥50mLとをそれぞれ図6に示す好気反応槽24に投入して、水温20℃、曝気風量300mL/分の条件で、連続曝気処理を行った。好気反応槽24内の反応液の蒸発を考慮して、1日1回曝気を停止して活性汚泥を沈殿させ、上澄み液400mLをそれぞれの培地と交換する半回分培養を行った。
【0092】
図7(a)は、亜硝酸性窒素を44mg/L含有する合成廃水(図5(a)参照)を1ヶ月間連続曝気処理して得られた上澄み液の硝酸性窒素濃度を示すグラフであり、図7(b)はアンモニア性窒素を44mg/L含有する合成廃水(図5(b)参照)を1ヶ月間連続曝気処理して得られた上澄み液の亜硝酸性窒素濃度を示すグラフである。
【0093】
図7(a)及び(b)から、下記(1)〜(3)の条件下で、活性汚泥のアルカリ処理を行うことで、硝酸の生成を抑制しつつ、亜硝酸の生成を促進することが可能な反応汚泥を製造可能であることが分かった。
【0094】
(1)活性汚泥のpHを13以上の範囲で5分以上保持する。
【0095】
(2)活性汚泥のpHを12以上13未満の範囲で10分以上保持する。
【0096】
(3)活性汚泥のpHを10以上12未満の範囲で60分以上保持する。
【0097】
次に、亜硝酸型硝化反応汚泥の亜硝酸型の硝化性能を長期にわたって安定的に維持するための硝化処理装置の構成について説明する。
【0098】
上述の第1の廃水処理実験および第2の廃水処理実験では、硝化処理対象として合成廃水を用いたため外部から亜硝酸酸化細菌が持ち込まれることはなかったが、実際の廃水には亜硝酸酸化細菌が含まれている。このため、硝化処理を長期にわたって継続すると、廃水とともに好気反応槽に流入した亜硝酸酸化細菌が増殖して、好気反応槽における硝化反応が亜硝酸型硝化から硝酸型硝化に移行してしまう場合がある。
【0099】
このため、亜硝酸型の硝化性能を長期にわたって維持する観点から、反応汚泥(亜硝酸型硝化反応汚泥)に対して、定期的にpH10以上(好ましくはpH10以上14以下、さらに好ましくはpH11以上14以下)のアルカリ処理を施すことが好ましい。
【0100】
この場合、全ての反応汚泥に対して一度にアルカリ処理をするのではなく、沈殿槽から好気反応槽に返送される返送汚泥の一部を回収して、定期的にアルカリ処理することが好ましい。これにより、好気反応槽における亜硝酸酸化活性を長期的に抑制するとともに、好気反応槽におけるアンモニア酸化細菌の不足に起因するアンモニア酸化活性の低下を防止することができる。また返送汚泥に対してアルカリ処理を施すことで、アルカリ液の添加量を少なくすることができる。
【0101】
図8は、反応汚泥のアルカリ処理を定期的に行う硝化処理装置の一例を示す構成図である。同図に示すように、硝化処理装置40は、主として、沈殿槽26から好気反応槽24に返送される反応汚泥28の一部に対してアルカリ処理を行う再生処理槽36を備える点で、図2に示す硝化処理装置20と異なる。なお、硝化処理装置40の構成要素のうち硝化処理装置20と共通するものについては、共通の符号を付して、その説明を省略する。
【0102】
硝化処理装置40の沈殿槽26において分離した反応汚泥28は、返送汚泥弁V1を開いた状態で、ポンプP2の動力により、好気反応槽24に返送される。このとき、沈殿槽26から返送される反応汚泥28の一部は、回収汚泥弁V3が開かれることにより、再生処理槽36に送られる。
【0103】
回収汚泥弁V3の開閉は、再生処理槽36内における反応汚泥28の水位が一定になるように調節されることが好ましい。例えば、再生処理槽36に取り付けられた水位センサーSにより反応汚泥28の水位を検出して、この水位センサーSの検出結果に基づいて、回収汚泥弁V3の開閉を切り替えることで、反応汚泥28の水位を一定に調節することができる。
【0104】
再生処理槽36内の反応汚泥28のpHは、pH測定機16により常に(又は定期的に)測定されており、pH測定機16の測定値に基づいて反応汚泥28のpHが調節される。具体的には、pH測定機16の測定結果に基づいて、ポンプP3がアルカリ液タンク18Aからアルカリ液を再生処理槽36に添加するか、あるいはポンプP4が酸液タンク18Bから酸液を添加することで、反応汚泥28のpHを所望の範囲に調節することができる。なお反応汚泥28のpH調整時は、pH調整を正確に行う観点から、例えば、再生処理槽36に取り付けられた攪拌機Mにより反応汚泥28を攪拌することが好ましい。
【0105】
上記構成の再生処理槽36により、回収された反応汚泥28にpH10以上(好ましくは10以上14以下、さらに好ましくは11以上14以下)のアルカリ処理(再生処理)を施して、反応汚泥28の亜硝酸型の硝化性能を回復することができる。
【0106】
このとき、回収された反応汚泥28のアルカリ処理(再生処理)は、下記(1)〜(3)のうち少なくとも一つの条件で行うことが好ましい。
【0107】
(1)反応汚泥28のpHを13以上の範囲で5分以上保持する。
【0108】
(2)反応汚泥28のpHを12以上13未満の範囲で10分以上保持する。
【0109】
(3)反応汚泥28のpHを10以上12未満の範囲で60分以上保持する。
【0110】
反応汚泥28は、再生処理槽36によるアルカリ処理(再生処理)が行われた後、酸液タンク18Bからの酸液添加によって中和されることが好ましい。反応汚泥28は、この後、ポンプP5(再生汚泥返送ポンプ)の動力により、好気反応槽24に返送される。
【0111】
なお図8には、所定量の反応汚泥28を再生処理槽36に溜めてから、この反応汚泥28に対してアルカリ処理を施す例(バッチ方式)について説明したが、反応汚泥28のアルカリ処理は連続方式で行ってもよい。連続方式でアルカリ処理を行う場合、上記(1)〜(3)の条件における処理時間(保持時間)を、再生処理槽36における反応汚泥28の平均滞留時間に読み替えて適用することができる。
【0112】
次に、上記構成の硝化処理装置40による亜硝酸型の硝化性能の長期安定性を確認するために行った第3の廃水処理実験について説明する。
【0113】
まず、図3に示す水質の合成廃水に対して、第1の廃水処理実験で用いた本発明汚泥Aによる硝化処理を定常状態に達するまで行った。
【0114】
この後、処理対象の廃水を、下水処理水にNHClを添加して、アンモニア性窒素濃度が40mg/Lになるように調整した下水調整廃水に切り替えた。図9は硝化処理の対象である下水調整廃水の平均水質を示す表である。
【0115】
硝化処理対象の廃水を合成廃水から下水調整廃水に切り替えると、下水調整廃水とともに好気反応槽24に流れ込んだ亜硝酸酸化細菌が増殖して、好気反応槽24における硝化反応が亜硝酸型硝化から硝酸型硝化に移行する。
【0116】
本廃水処理実験では、あえて、好気反応槽24における硝化反応を亜硝酸型硝化から硝酸型硝化に移行させた後、返送汚泥の一部を定期的にアルカリ処理する運転に切り替えて、再生処理槽36による反応汚泥28のアルカリ処理(再生処理)の効果を確認した。
【0117】
また反応汚泥28のアルカリ処理(再生処理)条件としては、30mLの反応汚泥28を12時間に1回の頻度で再生処理槽36に引き込み、攪拌しながらアルカリ液を添加して、pH13.4〜13.6で20分間維持した。この後、アルカリ処理された反応汚泥28に酸液を添加、攪拌して、pH7.5に中和して、好気反応槽24に返送した。アルカリ処理および中和処理には、2mol/Lの水酸化ナトリウムと、2mol/Lの硫酸とを用いた。
【0118】
好気反応槽24の反応容積は2Lであり、好気反応槽24内のMLSS濃度が2,500〜3,500mg/Lになるように運転した。また好気反応槽24内の水温を18〜22℃(平均20℃)に調節した。好気反応槽24における廃水の水理学的滞留時間は3時間とした。
【0119】
好気反応槽24内の溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)濃度は、4.0mg/L以上に調節した。また好気反応槽24内のpHは、7.0以上7.5以下の範囲内で調節した。
【0120】
図10は上述の条件下における処理水30中の窒素濃度を示すグラフである。図10において、○は廃水原水のアンモニア性窒素濃度を示し、●は処理水30のアンモニア性窒素濃度を示し、▲は処理水30の亜硝酸性窒素濃度を示し、■は処理水30の硝酸性窒素濃度を示す。また図10の横軸は、処理対象の廃水を合成廃水から下水調整廃水に切り替えた時点(廃水切替時点)からの経過日数を示す。
【0121】
図10から分かるように、廃水切替時点から約2週間は亜硝酸型の硝化反応が維持されたが、その後処理水中の硝酸濃度が増加し、硝酸型の硝化反応に移行した。廃水切替時点から81日目に定期的引込アルカリ処理(再生処理)を開始したが、108日目までは顕著な硝酸生成抑制効果が確認されなかった。しかしながら、117日目頃から処理水中の硝酸濃度が減少し始め、209日目には処理水中硝酸濃度が5mg/L以下になり、その後は安定した亜硝酸型の硝化反応が約200日間継続した。
【0122】
以上から、回収された反応汚泥28に定期的引込アルカリ処理(再生処理)を施すことで、反応汚泥28の亜硝酸型の硝化性能を維持できることが分かった。
【0123】
次に、本発明に係るアンモニア性窒素を含む廃水を処理する廃水処理方法について説明する。
【0124】
本発明に係る廃水処理方法では、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸型硝化反応汚泥により亜硝酸に酸化(硝化)した後、生成した亜硝酸に対して脱窒処理を施して、窒素ガスに分解する。亜硝酸の脱窒処理として、例えば、脱窒菌を用いる方法や、嫌気性アンモニア酸化細菌を用いる方法を用いることができる。
【0125】
図11(a)は脱窒菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法を示す工程図であり、図11(b)は嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法を示す工程図である。
【0126】
脱窒菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法(図11(a)参照)では、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸に酸化した後、当該亜硝酸を脱窒菌により窒素ガスに分解する。これに対し、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う廃水処理方法(図11(b)参照)では、廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸に酸化した後、当該亜硝酸を嫌気性アンモニア酸化細菌により脱窒する。なお、この場合、廃水中のアンモニア性窒素が脱窒処理時の水素供与体として用いられる。
【0127】
図12は本発明に係る廃水処理方法を実施するための廃水処理装置の一例を示す構成図である。図12に示すように、廃水処理装置50は、主として、廃水原水に含まれる有機体の窒素を脱アミノ化する嫌気槽42と、亜硝酸を脱窒する無酸素槽44と、アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する好気反応槽24と、処理水30と反応汚泥28とを分離する沈殿槽26と、反応汚泥28に対してアルカリ処理を施す再生処理槽36とにより構成される。
【0128】
嫌気槽42は、廃水原水に含まれる有機体の窒素を脱アミノ化して、アンモニア性窒素を生成する。嫌気槽42において生成したアンモニア性窒素は、直後の無酸素槽44を通過して、好気反応槽24において亜硝酸に硝化される。
【0129】
この後、好気反応槽24と無酸素槽44との間に設けられた廃水返送管52により、好気反応槽24による硝化処理が施された廃水が無酸素槽44に返送される。これにより、無酸素槽44に返送された廃水中の亜硝酸が、無酸素槽44において脱窒されて、窒素ガスに分解される。
【0130】
また嫌気槽42において原水廃水中の溶存酸素が消費されるため、無酸素槽44の溶存酸素量を低い状態に維持して、無酸素槽44における脱窒処理を効率的に行うことができる。
【0131】
沈殿槽26において分離された反応汚泥28の一部は、再生処理槽36においてアルカリ処理(再生処理)が施された後、好気反応槽24よりも前段に返送される。例えば、アルカリ処理後の反応汚泥28を、好気反応槽24の直前に返送してもよいし、嫌気槽42又は無酸素槽44の直前に返送してもよい。図12には、返送汚泥弁V3、V4、V5の開閉により、アルカリ処理後の反応汚泥28の返送先を、嫌気槽42の直前、無酸素槽44の直前および好気反応槽24の直前のうちいずれかに選択できる例を示した。
【0132】
図13は、図12に示す廃水処理装置50の変形例を示す構成図である。図13に示すように、廃水処理装置60は、アンモニア酸化細菌が優占的に集積した担体54を好気反応槽24に充填している点と、担体54に対してアルカリ処理(再生処理)を行う担体再生処理槽56が設けられている点とにおいて図12に示す廃水処理装置50と異なる。
【0133】
廃水処理装置60の担体54は、例えば、アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む複合微生物系の汚泥に対して、加熱処理、アルカリ処理または酸処理を施すことにより作製することができる。具体的には、上記複合微生物系の汚泥に対して、40℃以上100℃以下の加熱処理、pH10以上(好ましくはpH10以上14以下、さらに好ましくはpH11以上14以下)のアルカリ処理、またはpH6以下(好ましくは、pH0.5以上5以下の酸処理)の酸処理を施すことにより、担体54を作製することができる。
【0134】
また担体54の亜硝酸型の硝化性能は、長期間の使用により劣化してしまうため、担体再生処理槽56によるアルカリ処理(再生処理)を定期的に行うことが好ましい。
【0135】
担体再生処理槽56は、定期的に、好気反応槽24内の担体54をポンプP8により抜き取って、担体54のアルカリ処理(再生処理)を行う。担体54のアルカリ処理(再生処理)は、pH測定機16の測定結果に基づいてアルカリ液タンク18Aからアルカリ液を担体再生処理槽56に添加することで行う。このアルカリ処理条件は、既に説明した再生処理槽36における反応汚泥28のアルカリ処理と同様の条件を用いることができる。
【0136】
上記構成の廃水処理装置60では、反応汚泥28と担体54とを併用して、好気反応槽24における硝化処理を行うため、廃水中のアンモニア性窒素を効率的に亜硝酸に酸化(硝化)することができる。
【0137】
図14は、図12に示す廃水処理装置50の他の変形例を示す構成図である。図14に示すように、廃水処理装置70は、複数の嫌気槽42と好気反応槽24とを直列に並べた多段式の処理方法を採用している点と、再生処理槽36によりアルカリ処理(再生処理)が施された反応汚泥28を分配して、各槽の直前に返送する分配器58が設けられている点において、図12に示す廃水処理装置50と異なる。
【0138】
廃水処理装置70では、複数の嫌気槽42と好気反応槽24とを並べることにより、廃水処理装置全体としてのサイズを縮小することができる。
【0139】
廃水処理装置70では、好気反応槽24における亜硝酸型の酸化(硝化)を効率的に行う観点から、アンモニア酸化細菌が優占的に集積された担体54を好気反応槽24に充填している。
【0140】
なお廃水処理装置70では、担体54のアルカリ処理(再生処理)を行っていないが、図15に示すように、既に説明した担体再生処理槽56により、担体54のアルカリ処理(再生処理)を定期的に行ってもよい。
【符号の説明】
【0141】
10…反応汚泥製造装置、12…活性汚泥、14…アルカリ処理槽、16…pH測定機、18…アルカリ液タンク、20…硝化処理装置、22…原水タンク、24…好気反応槽、26…沈殿槽、28…反応汚泥、30…処理水、32…混合液、34…散気装置、36…再生処理槽、40…硝化処理装置、42…嫌気槽、44…無酸素槽、50…廃水処理装置、52…廃水返送管、54…担体、56…担体再生処理槽、58…分配器、60…廃水処理装置、80…廃水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア酸化細菌を優占的に集積させた亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法であって、
少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施す工程を含むことを特徴とする亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ処理を施す工程では、前記活性汚泥にアルカリ液を添加することで、前記活性汚泥のpHを10以上14以下の範囲で保持することを特徴とする請求項1に記載の亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ処理は、下記(1)〜(3)のうち少なくとも一つの条件で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の亜硝酸型硝化反応汚泥の製造方法。
(1)前記活性汚泥のpHを13以上の範囲で5分以上保持する。
(2)前記活性汚泥のpHを12以上13未満の範囲で10分以上保持する。
(3)前記活性汚泥のpHを10以上12未満の範囲で60分以上保持する。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法により製造される亜硝酸型硝化反応汚泥。
【請求項5】
アンモニア酸化細菌を優占的に集積させた亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置であって、
少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施すアルカリ処理装置を含むことを特徴とする亜硝酸型硝化反応汚泥の製造装置。
【請求項6】
アンモニア性窒素を含む廃水を処理する廃水処理方法であって、
少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施す工程と、
前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、
前記亜硝酸に対して脱窒処理を施す工程とを含むことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項7】
前記脱窒処理を施す工程では、嫌気性アンモニア酸化細菌によって、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を水素供与体とし、前記アンモニア性窒素を酸化する工程で生成した前記亜硝酸を脱窒することを特徴とする請求項6に記載の廃水処理方法。
【請求項8】
前記脱窒処理を施す工程では、脱窒細菌によって、前記アンモニア性窒素を酸化する工程で生成した前記亜硝酸を脱窒することを特徴とする請求項6に記載の廃水処理方法。
【請求項9】
前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する工程で用いた前記活性汚泥を回収する工程と、
回収された前記活性汚泥に対して前記アルカリ処理を施す工程とを含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項10】
前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥に酸剤を添加して、前記活性汚泥のpHを調整する工程を含むことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項11】
アンモニア性窒素を含む廃水を処理する廃水処理装置であって、
少なくともアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌とを含む活性汚泥のpHが10以上になるように、前記活性汚泥に対してアルカリ処理を施すアルカリ処理装置と、
前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する亜硝酸生成槽と、
前記亜硝酸に対して脱窒処理を行う脱窒槽とを含むことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項12】
前記脱窒槽は、嫌気性アンモニア酸化細菌によって、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を水素供与体とし、前記亜硝酸生成槽において生成した前記亜硝酸を脱窒することを特徴とする請求項11に記載の廃水処理装置。
【請求項13】
前記脱窒槽は、脱窒細菌によって、前記亜硝酸生成槽において生成した前記亜硝酸を脱窒することを特徴とする請求項11に記載の廃水処理装置。
【請求項14】
前記亜硝酸生成槽から前記活性汚泥を回収する回収装置と、
前記回収装置により回収された前記活性汚泥に対して前記アルカリ処理を施して、前記活性汚泥を再生する再生装置とを含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項15】
前記アルカリ処理が施された前記活性汚泥に酸剤を添加して、前記活性汚泥のpHを調整するpH調整装置を含むことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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