説明

亜鉛金属イオン及び有機アミンにより増強されたピリチオン殺生物剤

本発明は、約0.5重量%〜約30重量%の量のピリチオン又はピリチオン錯体、約0.1%〜約10%の量の亜鉛源、約30%〜約80%の量の有機アミン成分(前記%は、組成物濃厚物の全重量に基づいている)を含む安定で可溶性の抗菌濃厚組成物に関する。本発明は、本発明の抗菌組成物を用いて自生微生物又はバイオフィルムの増殖を防除する方法、及び本発明の抗菌組成物を用いて作った生成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリチオン殺生物剤に関し、詳しくは、ピリチオン、ピリチオン塩、又はピリチオン付加物と、亜鉛合金、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、又は亜鉛塩のような亜鉛源と、1,2− 1,3−アルカノールアミン及び1,2− 1,3−アルキルジアミンとの抗菌に効果的な組合せを含む、増大した殺生物効果を示す安定で可溶性の殺生物組成物に関する。殺生物組成物は、機能性流体〔例えば、金属加工流体(metalworking fluid)〕に直接配合するか、又は機能性流体「マスターバッチ」に配合されるのが適切な殺生物濃厚組成物の形で与えられる。
【背景技術】
【0002】
ピリチオン(1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン;2−ピリジンチオール−1−オキシド;2−ピリジンチオン;2−メルカプトピリジン−N−オキシド;ピリジンチオン;及びピリジンチオン−N−オキシドとしても知られている)の多価金属塩は、効果的な殺生物剤であることが知られており、ペイント及び金属加工流体中の殺真菌剤及び殺バクテリア剤として広く用いられている。ピリチオンは、フケ防止シャンプーのような人のケアー製品中にも殺真菌剤及び殺バクテリア剤としても用いられている。ピリチオンの多価金属塩は水には極めて僅かしか溶解せず、それらには、第二鉄ピリチオン、第一鉄ピリチオン、アルミニウムピリチオン、ビスマスピリチオン、ストロンチウムピリチオン、銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン、カドミウムピリチオン、及びジルコニウムピリチオンが含まれる。最も広く用いられている二価ピリチオン塩は、亜鉛ピリチオン及び銅ピリチオンである。
【0003】
亜鉛及び銅のピリチオンは、グラム陽性及び陰性バクテリア、真菌類、及び酵母に対して活性な抗菌剤として有用である。亜鉛ピリチオンはシャンプー中のフケ防止成分として用いられているが、亜鉛ピリチオン及び/又は銅ピリチオンの工業的懸濁物はペイント及び重合体の防腐剤として用いられている。これらと同じ塩の粉末は、汚れ止めペイント中の殺生物助剤としても用いられている。多価ピリチオン塩の合成は、ベルスタイン(Berstein)その他による米国特許第2,809,971号明細書に記載されている。同様な化合物及びそれらを製造する方法を開示した他の特許には、米国特許第2,786,847号、第3,589,999号、第3,590,035号、及び第3,773,770号明細書が含まれる。
【0004】
ピリチオン殺生物剤は、上で概略述べた広範囲の用途で有用であることが判明しているが、これらの化合物の有用性は、真菌及びバクテリアの特定の種及び株の防除に限定されている。更に、ピリチオン又はその塩の濃度を高くすると、一層広い範囲の有機体の増殖を抑制することが観察されているが、商業的製品に添加することができるピリチオン又はその塩の有効量は、効力及び経済的考慮によって限定され、それ程ではないが環境及び毒物学的問題によっても限定されている。
【0005】
塩化亜鉛、硫酸亜鉛、及び酸化亜鉛のような無機亜鉛塩は、ペイント、被覆、及び防腐剤を含めた多種類の製品に静菌及び/又は静真菌化合物として用いられてきた。しかし、亜鉛塩はピリチオン又はその塩よりも毒性は低いが、これらの化合物は多くの商業的用途で望まれている大きな殺生物効力を持たない。
【0006】
ピリチオンと亜鉛との或る組合せは当分野で知られている。例として米国特許第5,854,266号及び第5,883,154号明細書には、第二鉄イオン又は銅イオンの存在に起因する変色に対し保護された水性抗菌組成物が記載されており、この場合その組成物は、ピリチオン及び変色防止に有効な量(0.001%〜10%)の、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選択された亜鉛化合物を含有する。しかし、この特許は、ピリジオンと亜鉛との間の有利な抗菌効果については何も記載していない。更に、この特許で用いられている濃度では、ピリチオンと亜鉛との組成物は可溶性ではなく、従って、可溶性殺生物剤組成物として一緒に送付することはできなかったであろう。別の例として米国特許第4,161,526号明細書には、有機又は無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、又はそれらの組合せを0.01%〜1%含有する皮膚又は毛髪に適用するための白色からクリーム黄色のピリチオン塩又はジピリチオンが記載されている。しかし、この特許には、ピリチオンと亜鉛塩との間の有利な効果については何も記載されておらず、それはピリチオンと亜鉛との可溶性組成物を形成しなかったであろう。
【0007】
バクテリア及び真菌は微生物汚染問題を長年与えてきているが、最近バイオフィルムが重要な新しい微生物汚染源として認識されるようになってきた。バイオフィルムは、一般に互いに付着した細胞凝集物又は細胞外粘液層により表面に接着した細胞凝集物として特徴付けられている。バイオフィルムは一般に金属加工流体中の汚染物として見出されている。なぜなら、これらの流体はバイオフィルム中に見出される有機体の増殖にとって良好な炭素源を含んでいるからである。しかし、金属加工流体中に高濃度のバイオフィルムが存在すると、流体の急速な劣化を与える結果になり、装置問題及び故障を起こすことがある。
【0008】
表面上のバイオフィルムの増殖も、金属表面の腐食速度を増大し、ペイント、表面被覆、及びそれら被覆の下の構造材料の劣化速度を増大することがある。船体では、バイオフィルムが存在すると抗力を増大することになり、一層大きな無脊椎バイオ汚染有機体によるコロニー形成を促進することがある。バイオフィルムはしばしば内部及び皮膚感染の両方の原因になる。抗菌処理に対するバイオフィルムの抵抗性が増大すると、しばしば、バイオフィルム関連感染は一層処置しにくくなる。心臓移植及びカテーテルのような医療装置、及び透析器及び歯科送水管のような医療器具もバイオフィルムにより汚染されるようになり、感染を拡大することがある。
【0009】
バイオフィルムの増殖及び繁殖を制御する努力が今まで行われてきたが、これらの努力は僅かな成功しか収めていない。研究によれば、バイオフィルム細胞は自生(free-living)細胞よりも消毒に対し遥かに大きな抵抗性を持つことが示されているが、これは保護被覆として働く細胞外粘液層に大部分起因する。更に、これまでの微生物汚染を抑制する対策は、典型的には自生有機体に対し実験室で開発されたものであり、バイオフィルムに対する抗菌剤の効果性を決定することに関しては殆ど又は全く注意が払われていなかった。残念ながら、従来用いられてきた抗菌剤では、耐性バイオフィルムは一般に影響を受けない。バイオフィルムは、除去されるか又は破壊されないと、作動流体の用途で、腐食、閉塞、粘液の表面蓄積、悪臭、流体の不安定化、機械停止時間等のような多くの問題を起こすことがある。
【0010】
微生物殺菌分野の現状を示す更に別の代表的特許及び刊行物は、次の通りである。
【0011】
米国特許第4,654,213号明細書には、亜鉛の水溶性塩が、2,2’−ジチオピリジン−1,1’−ジオキシドのMgSO付加物(MDS)の活性度を増大している抗菌組成物が記載されている。
【0012】
米国特許第4,370,325号明細書には、目及び耳の刺激及び炎症を処置するための、MgSO(MDS)及びZn塩を含めた、2,2’−ジチオピリジン−1,1’−ジオキシド、又はその金属塩付加物の一種を含有する組成物が記載されている。
【0013】
米国特許第4,235,873号明細書には、MgSO(MDS)及びZn塩を含めた、2,2’−ジチオピリジン−1,1’−ジオキシド、又はその金属塩付加物の一種を含有する脱臭剤組成物が記載されている。
【0014】
英国特許GB2230190Aには、イソチアゾロンと、2,2’−ジチオピリジン−1,1’−ジオキシドのZnCl付加物とを含有する防腐剤組成物が記載されている。しかし、この特許は、ピリチオンと亜鉛塩との間の有利な効果については何も述べていない。
【0015】
特願平6−134227号明細書には、ZnO又はZnOと亜鉛ピリチオンを配合した抗菌フィルターが記載されている。しかし、この特許は、ピリチオンと亜鉛塩との間の有利な効果については何も記載していない。
【0016】
特願平7−118103号明細書には、ステンレス鋼洗浄機ドラムを被覆して内部表面の汚染を防ぐための抗菌組成物が記載されており、この場合ZnOがZPT熱可塑性樹脂被覆中のキャリヤーとして用いられている。しかし、この特許は、ピリチオンと亜鉛塩との間の有利な効果については何も記載していない。
【0017】
0.2%の金属銅又は0.2%の金属亜鉛が存在すると、12種類の異なった金属加工流体中のナトリウムピリチオンの殺生物活性度を減少することが見出されたことが、技術雑誌論文に記載されている〔E.O.ベネット(Bennet)その他、Int. Biodeterioration Bull. 18[1]:7-12(1982)〕。
【0018】
別の技術雑誌の論文〔M.M.カッター(Khatter)及びW.G.ソルト(Salt)、Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 175-177 (1993)〕には、肺炎桿菌バクテリアに対するピリチオン活性度の増大が記載されている。特に、カッター及びソルトの論文の第2(a)図には、ピリチオンと組合せて0.01%の塩化亜鉛を使用することに起因する、そのバクテリアに対する0.1%ピリチオン活性度の好ましい増大が示されている。
【0019】
2000年6月22日に出願された係属中の米国特許出願Serial No.09/599,371には、ピリチオン、ピリチオン塩、又はピリチオン付加物、及び亜鉛又は銅源、例えば、銅及び/又は亜鉛金属、酸化物、水酸化物、又はその塩の組合せを含む殺生物組成物が記載されている。しかし、この特許出願に記載されている抗菌組成物は、濃厚な殺生物組成物〔即ち、「濃厚組成物」(composition concentrate)〕を作るために必要になるように、ピリチオン及び亜鉛源の濃度を組成物中で増大すると、不溶性沈澱物を形成し易いであろう。例えば、0.0005%のピリチオン及び0.00001%の亜鉛より大きな濃度を有するピリチオン・亜鉛組成物は、不溶性沈澱物を形成する傾向を持つであろう。これらの不溶性沈澱物は、抗菌剤としての組成物の効果性を低下し、商品の長期保存に問題を与え、可溶性殺生物剤が必要な場合には、使用できない。更に、これまでピリチオン及び亜鉛源の濃厚な可溶性殺生物組成物を作ることが出来なかったために、適用箇所にこれらの成分を一緒に投与するのではなく、個々に投与する費用のかかる非効率的なやり方が必要であった。
【0020】
更に、幾つかの特許には、或る有機化合物でピリチオン誘導体を可溶化することが論じられている。
【0021】
米国特許第3,636,213号明細書には、第一級アミン又はポリアルキレンイミンを用いてピリチオンの重金属塩(例えば、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン等)を可溶化することが記載されている。しかし、この特許は、得られた可溶化ピリチオン塩の、ピリチオン単独と比較して、増大した抗菌又は抗バイオフィルム効果については何も記載していない。
【0022】
米国特許第3,940,482号明細書には、石鹸、シャンプー、ヘアードレッシング等のような人のケアー製品に用いられる長鎖ポリアミンを用いてピリチオンの重金属塩を可溶化することが記載されている。しかし、上の特許と同様に、この特許は、得られた可溶化ピリチオン塩の、ピリチオン単独と比較して、改良又は増大した抗菌又は抗バイオフィルム効果については何も記載していない。
【0023】
米国特許第4,835,149号明細書には、或るアミン化合物及び或るアミノカルボン酸を存在させて、不溶性ピリチオン金属塩(例えば、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン等)を可溶化する方法が記載されている。しかし、上の特許と同様に、この特許は、得られた可溶化ピリチオン塩の、ピリチオン単独と比較して、改良又は増大した抗菌又は抗バイオフィルム効果については何も記載していない。
【0024】
米国特許第5,114,984号明細書には、ポリオールと混和できるアルカノールアミンにピリチオン塩を溶解することにより、ポリウレタン発泡体に抗バクテリア及び抗真菌性を与える方法が記載されている。しかし、上の特許と同様に、この特許は、得られた可溶化ピリチオン塩の、ピリチオン単独と比較して、改良又は増大した抗菌又は抗バイオフィルム効果については何も記載していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、当分野で要求されていることは、適用箇所へピリチオンと亜鉛イオンを高濃度で同時に送付することができ、ピリチオン及びその誘導体に、自生微生物及びバイオフィルムに対する増大した殺生物効力を与えることもできる、ピリチオン、ピリチオン塩、又はピリチオン付加物、及び亜鉛源の安定で可溶性の濃厚な殺生物組成物にある。そのような濃厚組成物は、広く有用であり、高い効力を持ち、コスト的に効果的であり、「缶入」防腐剤として、また、希釈して機能性流体として用いられる「マスターバッチ」を形成する場合も、或いは直接希釈して機能性流体にする場合も、共に増大した殺生物効果を有する。本発明は、その要求に対する解答になるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
一つの態様として、本発明は、ピリチオン、ピリチオン塩、又はピリチオン錯体を約0.05重量%〜約20重量%の量で、亜鉛源を約0.01%〜約5%の量で、そして有機アミン成分を約30%〜約80%の量で含有する(前記%は、濃厚組成物の全重量に基づいている)、安定で可溶性の抗菌濃厚組成物に関する。有機アミン成分は、1,2−アルカノールアミン、及び1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと共に含む。第二有機アミンを用いた場合、第一有機アミンは、アミン成分を抗菌濃厚組成物に確実に溶解させるのに充分な量でその抗菌濃厚組成物中に存在しなければならない。抗菌濃厚組成物は、その抗菌濃厚組成物中に有効なホルムアルデヒドを与えるためのホルムアルデヒド源を含むこともできるのが有利である。本発明の抗菌濃厚組成物を適当に希釈して、機能性流体「マスターバッチ」を形成するか、又はそれは、希望に応じ、直接希釈して機能性流体それ自身にすることができる。
【0027】
別の態様として、本発明は、上記抗菌濃厚組成物を希釈して作られた安定で、可溶性の抗菌組成物で、
約0.05重量%〜約5重量%のピリチオンまたピリチオン錯体;
約0.005重量%〜約1重量%の、亜鉛塩、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物、亜鉛硼酸塩、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛合金、亜鉛錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択された亜鉛源;
約0.5重量%〜約40重量%の有機アミン成分で、1,2−アルカノールアミン、及び1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと組合せて含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を前記抗菌組成物中に確実に溶解させるのに充分な量で前記抗菌組成物中に存在する、アミン成分;
を含み、
全ての重量%は前記抗菌組成物の全重量に基づいており、前記抗菌組成物は、自生微生物又はバイオフィルムに対し増大した殺生物効果を有する、
抗菌組成物に関する。
【0028】
更に、別の態様として、本発明は、約0.5%〜約20%のピリチオン、及び約0.01%〜約5%の量で亜鉛源を含む安定で可溶性の抗菌濃厚物を与える方法に関する。その方法は、1,2−アルカノールアミン、及び1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミン、単独、又は、それと、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと組合せたものからなる群から選択された少なくとも一種類の有機アミン成分を安定化に有効な量で前記濃厚物中へ配合することを含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を前記抗菌組成物中に確実に溶解させるのに充分な量で前記抗菌組成物中に存在するものとする。前記有機アミンの安定化に有効な量は、前記有機アミンと前記亜鉛源と前記ピリチオンとの全重量に基づき、30%〜約80%であるのが好ましい。
【0029】
更に別の態様として、本発明は、金属加工流体中の自生微生物又はバイオフィルムの増殖を阻止する方法で、
(A) 上記抗菌濃厚組成物を、金属加工流体「マスターバッチ」濃厚物で:
(a) 約0.05〜約5%のピリチオンまたピリチオン錯体;
(b) 約0.005〜約1%の、亜鉛塩、亜鉛酸化物、亜鉛硼酸塩、亜鉛水酸化物、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛合金、亜鉛錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択された亜鉛源;
(c) 約0.5〜約40%の有機アミン又は有機アミンの混合物で、この場合、1,2−アルカノールアミン、及び1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンが、単独で、又は1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと組合されて存在する、有機アミン又は有機アミン混合物;
を含む、マスターバッチ濃厚物中へ配合する工程;
(B) 前記「マスターバッチ」濃厚物を希釈して抗菌に有効な金属加工流体を与える工程;及び
(C) 前記抗菌に有効な金属加工流体と、前記自生微生物又はバイオフィルムとを接触させる工程;
を含み、然も、
前記抗菌組成物は、金属加工流体中の自生微生物又はバイオフィルムに対し増大した殺生物効果を有する、
増殖阻止方法に関する。
【0030】
本発明のこれら及び他の態様は、次の詳細な本発明についての記述を読むことにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の詳細な記述
本発明に従い、ピリチオン又はその誘導体単独の場合に比較して、増大した殺生物効力を有する可溶性で安定な濃厚殺生物組成物で、有用で、効果的に、コスト的に有効に、夫々の用途へ送ることができる組成物を与える問題に対する解決策が与えられることが今度思いがけなく発見された。本発明者は、抗菌濃厚組成物で、その成分が可溶性を示すのみならず、濃厚物の成分の望ましくない沈澱に対し安定性を示す抗菌濃厚組成物を開発することにより、この問題を解決している。この可溶性で安定な抗菌濃厚組成物は、亜鉛源、例えば、亜鉛塩、及び或る1,2−アルカノールアミン、及び1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せ、単独と、又はそれと、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの及び1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと組合せたものと一緒に、ピリチオン又はピリチオン錯体を含む。特に好ましい有機アミンは、モノエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、及びそれらの組合せである。本発明で用いられる亜鉛源は、亜鉛塩、亜鉛酸化物、亜鉛硼酸塩、亜鉛水酸化物、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛合金、亜鉛錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択されるのが有利である。
【0032】
本発明の濃厚組成物は、適当に希釈して、機能性流体、例えば、金属加工流体濃厚物又は他の被覆組成物、例えば、ペイントのような流体のためのいわゆる「マスターバッチ」を与える。マスターバッチは、例えば、0.05重量%〜5重量%のピリチオンを含むのが適切であり、濃厚組成物の他の成分は、マスターバッチを調製する際に比例して希釈される。
【0033】
抗菌濃厚組成物、マスターバッチ、及び最終的「作業用」機能性流体では、本発明の抗菌組合せは、自生及びバイオフィルムの両方の状態の広い範囲の微生物に対し、ピリチオン単独と比較して、またピリチオン及び亜鉛だけのものと比較して、「缶詰」防腐性及び増大した殺生物効果の両方を示す。この抗菌性能は、この組成物の個々の成分の効果を加算したものに基づいて予測される性能よりも大きい。本発明の組成物に伴われる増大した殺生物効果は、慣用的に用いられているピリチオン系の殺生物剤の量と比較して、本発明の組成物のピリチオン成分の使用量を少なくすることができる。
【0034】
ここで定義する用語「増大した殺生物効果」とは、ピリチオン又はピリチオン塩成分と、水溶性亜鉛成分と、有機アミン成分との間の相互作用を指し、それは個々に採用したそれら成分のいずれよりも組成物の殺生物効果の方が大きい結果を与える。即ち、その組成物の抗菌結果は、個々の成分の性能に基づく組合せの予想される殺生物効果を越えている。
【0035】
本発明は、ピリチオン又はピリチオン塩成分及び亜鉛成分の濃厚な安定で可溶性の殺生物組成物を製造することも可能にしている。そのような組成物は、可溶化ピリチオン及び亜鉛成分を同時に高濃度で適用箇所へ効果的に送ることができ、得られる殺生物効果を増大することができる。
【0036】
別の有利な態様として、本発明は、鉄を含む用途でピリチオンを使用することを可能にしている。適用箇所に鉄が存在すると、一般にピリチオンの効力が低下する結果になり、鉄ピリチオンが形成されることにより、適用箇所の青色変色を伴う結果になる。ピリチオンと比較して、鉄が存在する所で使用した場合の変色について、本発明は、減少する傾向を示し、一層大きな効力を示す。
【0037】
次の論述では、バイオフィルムの幾つかの特別な特徴について詳細に述べる。ここで定義する用語「バイオフィルム」とは、細胞外粘液により互いに固定された、又は表面に固定された細胞の凝集体を指す。殆どの単細胞有機体は粘液保護被覆を生ずるが、バイオフィルムへ凝集した細胞は自生細胞とは物理的に異なっており、自生細胞よりも遥かに多くの細胞外粘液を出す。バイオフィルムの一部分を構成する粘液構造体は、生物学的にもまた建築学的にも極めて複雑である。それらは、水路により分離された個々の微生物の凝集体(ミクロコロニー)から構成されており、大きな塔型又はきのこ型構造体を形成することがある。バイオフィルムが発達するにつれて、自生細胞がバイオフィルムから離れ、入植して新しいバイオフィルムを形成する新しい領域を求めてその環境中を移動する。金属加工流体では、バイオフィルムの蓄積が多くの問題を起こすことがあり、それらには流体の劣化/分解、悪臭、腐食、及びフィルター、輸送管、ノズルの閉塞、開裂部の目詰り、機械表面の汚染、機械停止、工具寿命の減少、加工品の汚染及び損傷等が含まれる。上述したように、バイオフィルムはペイント又は他の表面被覆のような他の流体の劣化速度も増大する。心臓移植、カテーテル、透析機械、歯科送水管等のような医薬設備も、バイオフィルム及び感染拡大により汚染されるようになることがある。
【0038】
バイオフィルムは、流体本体中に住む自生細胞では見出されない広範な物理的及び化学的不均質性を有する。バイオフィルム細胞はそのバイオフィルム中で互いに緊密に接触しているので、個々の有機体間の生態学的相互作用は複雑で広範囲になることがある。バイオフィルムに存在する高度の複雑性及び不均質性により、バイオフィルム細胞は自生細胞に比較して劇的に異なった代謝因子(例えば代謝速度、増殖速度、特定の栄養に対する嗜好等)を有する。更に、バイオフィルム中に見出される細胞は、流体本体中に見出される自生細胞と比較して、大きな多様性を持つ種及び有機体の型を一般に示す。本発明の組成物の成分の各々については、以下で一層詳細に論ずる。
【0039】
酸型のピリチオン又はピリチオン錯体を、本発明の組成物で用いることができる。ここで定義する用語「ピリチオン錯体」とは、一つ以上のピリチオン分子と、一つ以上の金属との組合せ、例えば、ピリチオン塩及びピリチオン付加物(例えば、マグネシウムのような金属イオンと組合せた2,2’−ジチオピリジン−1,1’−ジオキシド)を指す。本発明で有用なピリチオン塩の例には、ナトリウムピリチオン、ビスマスピリチオン、カリウムピリチオン、リチウムピリチオン、アンモニウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、カルシウムピリチオン、マグネシウムピリチオン、ストロンチウムピリチオン、銀ピリチオン、金ピリチオン、マンガンピリチオン、及びそれらの組合せが含まれる。ピリチオンの有機アミン塩のみならず、二硫化マグネシウム塩も有用である。本発明で有用な二つ最も好ましいピリチオン塩は、ナトリウム塩(即ち、ナトリウムピリチオン)及び亜鉛ピリチオンである。ナトリウムピリチオンはよく知られた商業的製品である。それは一般に2−クロロピリジン−N−オキシドとNaSH及びNaOHを反応させることにより製造され、それは米国特許第3,159,640号明細書の開示で例示されている。亜鉛ピリチオンは、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(即ち、ピリチオン酸)又はその可溶性塩と亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛)とを反応させて亜鉛ピリチオン沈澱物を形成することにより製造することができ、それは米国特許第2,809,971号明細書に例示されている。
【0040】
本発明の濃厚組成物では、ピリチオン又はピリチオン錯体は、約0.05〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約15重量%、一層好ましくは約1〜約10重量%の範囲の量で適切に用いられる。この濃厚組成物から、組成物の全重量%に基づき、約0.05重量%〜約5重量%。一層好ましくは約0.01重量%〜約2.5重量%の範囲の量でピリチオン又はピリチオン特性が存在する「マスターバッチ」を適切に調製する。
【0041】
本発明の組成物に有用な亜鉛源には、例えば、亜鉛合金、亜鉛塩、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛硼酸塩、及びそれらの組合せが含まれる。
【0042】
本発明の組成物で用いることができる亜鉛塩の例には、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、乳酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、セレン酸亜鉛、珪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、バレリアン酸亜鉛、等が含まれる。それらの塩の組合せも本発明の組成物で用いることができる。
【0043】
本発明の濃厚組成物では、亜鉛源は一般に、濃厚物の重量に基づき、約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%の範囲で存在する。このことは、最終的「作業用」機能性流体が、加工流体の全重量に基づき、0.005〜1重量%、有利には0.01〜0.1重量%の範囲内の量で亜鉛源を含むことを可能にしている。
【0044】
有機アミン成分は、次の式:
NH−(CHR−CHR−OH (式1)
(式中、n=1又は2であり、R、R、及びRは、水素又は合計4に等しいか又はそれより少ない炭素数を有する低級アルキル基である)
により含まれる一種類以上の1,2及び1,3アルカノールアミンを含むのが好ましい。最も好ましいのは、次の場合の1,2−アルカノールアミン及び1,3−アルカノールアミンである:
【0045】
【表1】

【0046】
式1に含まれる一種類以上のアルカノールアミンと、次の式:
NR (式2)
に含まれる一種類以上のアルカノールアミンとのどのような可溶性組合せでも、本発明のアミン成分として有用である。前記式中、
1)R=R=R=HO-CH-CH-;
2)R=R=R=HO-CH(CH)-CH-;
3)R=R=CH- 及び R=HO-CH-CH-;
4)R=R=CHCH- 及び R=HO-CH-CH-;
5)R=R=CHCHCH- 及び R=HO-CH-CH-;
6)R=R=CHCHCHCH- 及び R=HO-CH-CH-;
7)R=R=CH- 及び R=HO-CH(CH)-CH-;
8)R=R=CHCH- 及び R=HO-CH(CH)-CH-;
9)R=R=CHCHCH- 及び R=HO-CH(CH)-CH-;
10)R=R=CHCHCHCH- 及び R=HO-CH(CH)-CH-;
11)R=R=CH- 及び R=HO-CH-CH-CH-;
12)R=R=CHCH- 及び R=HO-CH-CH-CH-;
13)R=R=CHCHCH- 及び R=HO-CH-CH-CH-;
14)R=R=CHCHCHCH- 及び R=HO-CH-CH-CH-;
15)R=CH- 及び R=R=HO-CH-CH-;
16)R=CHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-;
17)R=CHCHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-;
18)R=CHCHCHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-;
19)R=CH- 及び R=R=HO-CH(CH)-CH-;
20)R=CHCH- 及び R=R=HO-CH(CH)-CH-;
21)R=CHCHCH- 及び R=R=HO-CH(CH)-CH-;
22)R=CHCHCHCH- 及び R=R=HO-CH(CH)-CH-;
23)R=CH- 及び R=R=HO-CH-CH-CH-;
24)R=CHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-CH-;
25)R=CHCHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-CH-;
26)R=CHCHCHCH- 及び R=R=HO-CH-CH-CH-;
27)R=H- 及び R=R=HO-CH-CH-;
28)R=H- 及び R=R=HO-CH(CH)-CH-;
29)R=H- 及び R=R=HO-CH-CH-CH-;
30)R=R=H 及び R=HO-CH-C(CH)-;
31)R=H 及び R=CH- 及び R=HO-CH-C(CH)-;
32)R=R=CH- 及び R=HO-CH-C(CH)-;
33)R=R=H 及び R=(HOCH)C(CHCH);
34)R=R=H 及び R=HO-CH-CH-O-CH-CH-;
35)R=H 及び R=CH- 及び R=HO-CH-CH-O-CH-CH-;
36)R=R=CH- 及び R=HO-CH-CH-O-CH-CH-;
【0047】
式1により含まれる一種類以上のアミンと、式:
N−[(CH)−CH−NH−)−H (式3)
(式中、
nは1又は2であり、mは約1〜約2000であり、R及びRは、水素、又は合計4に等しいか又はそれより少ない炭素数を有する低級アルキル基である。)
のアルキルジアミンの単量体及び重合体からなる群から選択された一種類以上のアミンとのどのような可溶性の組合せでも、本発明のアミン成分として有用である。式3の範囲に入るアミン化合物の例は、次の置換基を有するものである:
1) R=R=CH−、n=2、及びm=2;
2) R=R=CHCH、n=2、及びm=1;
3) R=R=H、n=1、及びm=1;
4) RH、n=1、及びm=2;
5) R=R=H、n=1、及びm=3。
【0048】
上に記載した式1、2、及び3の中で、次のアミンが特に好ましい:
(式1)
エタノールアミン
1−アミノ−2−プロパノール
3−アミノ−1−プロパノール
2−(メチルアミノ)エタノール
2−(エチルアミノ)エタノール
2(プロピルアミノ)エタノール
2(イソプロピルアミノ)エタノール
【0049】
(式2)
ジエタノールアミノ
トリエタノールアミン
ジイソプロパノールアミン
トリイソプロパノールアミン
混合イソプロパノールアミン(モノ−、ジ−、及びトリ−イソプロパノールアミン)
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMPとも呼ばれている)
2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(AEPDとも呼ばれている)
2(2−アミノエトキシ)エタノール(ジグリコールアミンとも呼ばれている)
N−メチルジエタノールアミン
N,N−ジメチルエタノールアミン
N,N−ジエチルエタノールアミン
N,N−ジブチルアミノエタノール
N,Nジメチルアミノ−2−プロパノール
【0050】
(式3)
1,3−ジアミノプロパン
ジエチレントリアミン
トリエチレンテトラアミン
ポリエチレンイミン
ジエチルアミノプロピルアミン
ジメチルアミノプロピルアミン
【0051】
本発明の濃厚組成物で適切に用いられる有機アミンの量は、濃厚物の全重量に基づき、約30〜約80重量%、好ましくは約40〜約70重量%の範囲にあるのが適切である。「マスターバッチ」の希釈で、又は「作業用」機能性流体では、有機アミンの量は、その流体の重量に基づき、約0.5〜40重量%であるのが適切である。
【0052】
溶媒又は溶媒の組合せが、本発明の抗菌組成物に含まれていてもよい。適当な溶媒には、水、又は水と、一種類以上の水混和性有機溶媒(一種又は多種)との組合せのような水性媒体が含まれる。有用な有機溶媒には、メタノール、エタノールのようなアルコール、エーテル、エステル、グリコール等が含まれる。
【0053】
本発明の組成物は、付加的殺生物剤としてホルムアルデヒドを含んでいてもよい。本発明では、ホルムアルデヒドは直接添加するか、ホルムアルデヒド放出剤又は供与体の形になっていてもよく、例えば、塩化シス1−(3−クロロアリル)3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、4,4−ジメチルオキサゾリジン、5−ヒドロキシメトキシメチル−1−1アザ−3,7−ジオキサビシクロオクタン、ジメチロールジメチルダントイン、N,N″−メチレンビス[N’−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素、N−(ヒドロキシメチル)−N−(1,3−ジヒドロキシメル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N’−(ヒドロキシメチル)尿素、及びそれらの組合せであるが、それらに限定されるものではない。一つの有用なホルムアルデヒド放出剤は、トリアジン(TRIADINE)10〔コネチカット州ノルウォークのアーチ・ケミカルズ社(Arch Chemicals,Inc.)から販売されているヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとオマジン(omadine)塩の組合せ〕である。本発明の濃厚組成物では、ホルムアルデヒドは、組成物の全重量に基づき、約0.1〜約30重量%、好ましくは約0.5重量%〜約15重量%の範囲の量で用いるのが適切である。
【0054】
当分野で知られているように、多くのホルムアルデヒド放出剤の多くの場合では、一般にホルムアルデヒドを形成するのに材料の一部分しか放出しない。例えば、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの約31%がホルムアルデヒドを放出する。そのような場合、本発明の組成物に上記範囲のホルムアルデヒドを与えるためには、適当な換算係数を考慮に入れなければならない。例示のための一例として、500ppmのヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンは、約160ppmのホルムアルデヒドを放出する結果になる。同様に、1500ppmのヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンは、約480ppmのホルムアルデヒドを放出する結果になる。
【0055】
本発明の組成物は、先ず、一種類以上の選択された亜鉛源と、一種類以上の有機1,2−又は1,3−アルカノールアミンと、場合により1,2−又は1,3−アルキルジアミンの単量体又は重合体を、適切な溶媒又はキャリヤー中に一緒に混合し、次にピリチオン又はピリチオン錯体を添加することにより製造するのが有利である。別法として、本発明の組成物は、抗菌保護を与えるように処理された溶媒又は機能性混合物又は流体に、個々の成分を別々に添加することにより製造してもよい。
【0056】
本発明の殺生物組成物は、殺藻剤、殺バクテリア剤、及び/又は殺真菌剤、として有用であり、グラム陽性バクテリア及びグラム陰性バクテリア、真菌類(例えば、酵母、かび、うどんこ病)、藻、及び原生動物のような微生物の増殖を阻止するのに特に有用である。本組成物は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),黒色アスペルギルス(Aspergillus niger),フザリウム菌(Fusarium),セファロスポリウム(Cephalosporium),シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens),シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens),シュードモナスシュトゥッツェリ(Pseudomonas stutzeri),シュードモナスオレボランス(Pseudomonas olevorans),アルカリゲネスフェカーリス(Alcaligenes faecalis),大腸菌(Escherichia coli),シトロバクターフレウンデー(Citrobacter freundii),等に対し特に有効である。本発明の殺生物組成物は、工業的流体(例えば、金属加工流体)、ペイント、被覆、接着剤、湿潤状態防腐剤、硬質表面クリーナー、織物保護用製品、木材製品、プラスチック製品、医療製品、繊維又は他の、微生物増殖、特にバイオフィルムの増殖を停止又は遅らせなければならない用途での有用な添加剤である。
【0057】
本発明の抗菌組成物のための一つの重要な用途は、金属加工流体、切断用流体等のような機能的流体での使用である。金属加工流体は、抗菌組成物及び他の配合成分を含む「マスターバッチ」濃厚物として供給されるのが典型的である。濃厚物の場合、希釈された「作業用」流体が殺生物に有効な量の抗菌組成物を含むように充分な量の殺生物組成物を与える。この要件を満足させるため、金属加工流体の濃厚物中へ抗菌剤を、希釈「作業用」流体中に必要な濃度の約10〜100倍の量で配合するのが典型的である。金属加工濃厚物中のピリチオンの典型的な濃度は、約0.05〜1.0%のピリチオンになる範囲にある。これらのピリチオン濃度では、少量の亜鉛でも沈澱物を形成する結果になり、それは金属加工流体濃厚物で使用するには許容できない。
【0058】
本発明の殺生物組成物は、金属加工流体濃厚物で使用するのに充分な濃度でピリチオン及び亜鉛の組合せを添加することができ、然も、殺生物濃厚組成物として、又は金属加工流体濃厚物として配合しても沈澱物を形成しない。このやり方で、本発明の殺生物組成物により与えられる増大した殺生物効果を、濃厚な可溶性の形態の金属加工流体濃厚物に使用して効果的に与えられる。金属加工濃厚物中の原型的殺生物剤混合物の特に有用なレベルは約1〜4%であり、希釈した「作業用」金属加工流体中、約0.05〜0.2%ppmになるであろう。これらの濃厚物から得られる希釈した金属加工流体は、10〜500ppmの活性ナトリウムピリチオン、1〜50ppmの二価亜鉛、及び150〜1500ppmの有機1,2−及び/又は1,3−アルカノールアミン、及び場合によりアルキルジアミンのの単量体及び重合体の濃度を与えるのが有利であり、一層好ましくは25〜250ppmの活性ナトリウムピリチオン、5〜25ppmの二価亜鉛、及び150〜1200ppmの有機1,2−及び/又は1,3−アルカノールアミン、及び場合によりアルキルジアミンの単量体及び重合体の濃度を与えるであろう。最終的「作業用」金属加工流体中の成分の特に有用な比は、約100ppmの活性ナトリウムピリチオン、約10ppmの亜鉛、及び約600ppmの有機1,2−及び/又は1,3−アルカノールアミン、及び場合によりアルキルジアミンの単量体及び重合体である。
【0059】
本発明の抗菌組成物は、ペイント、接着剤、コーク(caulk)、密封材、エラストマー、及び他の、液体洗剤組成物のような水系液体クリーニング組成物を含めた被覆組成物のような被覆組成物でも有用である。適当なペイントには、室内及び屋外の家庭用ペイント、工業的及び商業的ペイントが含まれる。本発明の抗菌組成物を、被覆組成物の重量に基づき好ましくは、合計約0.01重量%〜約10重量%の量で、被覆組成物の貯蔵中、及び使用前の缶入り「湿潤状態」防腐剤として用いた場合に、特に有利な結果が得られている。
【0060】
本発明の抗菌組合せを含む被覆組成物は、例えば、接着剤、ペイント、被覆、密封材、木材及び木材複合体、湿潤状態防腐剤組成物、人のケアー製品、石造建築及び石材処理組成物、皮革保護組成物、硬質表面クリーナー及び消毒剤、布地及び織物保護組成物、その他プラスチック及び医療用製品用途のような多くの最終的用途で用いることができる。例として、抗菌組合せは、木材及び木材複合体、石造建築及び石材、皮革、硬質表面、布地、織物、プラスチック、医療用製品、及びそれらの組合せのような基体を処理するのに有効な成分を含む機能性流体中へ配合するのが適切である。
【0061】
本発明の組成物は、消毒剤及び防腐剤として、ここに記載した種々の用途のいずれかで、液体又は噴霧可能な固体状態で、単独で、又は水、液体炭化水素、エタノール、イソプロパノール等のような不活性キャリヤーと組合せて用いられる。それらは種々の基質中のバクテリア及び真菌を防除するために慣用的手順を用いて使用することができ、噴霧、浸漬、びしょ濡れの含浸(drenching impregnation)等のような慣用的方法により抗菌に有効な量でバクテリア又は真菌有機体又はそれらの基質に適用することができる。
【0062】
本発明は、主要殺生物剤であるピリチオンを減少した量で、その主要殺生物剤よりも安価である亜鉛塩殺生物助剤と組合せて使用することを可能にし、それにより安価に製造でき、種々の有機体に対し増大した抗菌効果性の上述の特性を有する抗菌組成物を与えることができる。更に、本発明の組成物のアミン成分は、組成物に著しい溶解性を与えるのみならず、沈澱物を形成しない安定性を増大し、長い期間に亙って組成物を商業的に活性状態に維持することができると考えられる。更に、本発明は、ピリチオン殺生物剤、亜鉛塩、及び1,2−及び1,3−アルカノールアミンを、単独で、又はアルキルジアミンの単量体及び重合体と組合せて含む効力の増大した殺生物組成物を、安定で濃厚な可溶性組成物として適用箇所へ送ることができるようにしている。
【0063】
次の例は、例示を目的とし、何等本発明の範囲を限定するものではない。全ての部及び%は重量であり、全ての温度は、明確に別に述べていない限り、℃である。
【実施例】
【0064】
例1〜40
ナトリウムピリチオン、ZnCl、及びアミンの混合物の、金属加工流体中の微生物に対する効力
チーズクロス・ストッパーを有するオートクレーブに入れた250mlのエルレンメイヤーフラスコを構成し、各フラスコ中に、次の希釈した(1:20)金属加工流体溶液の一つを100ml入れた:(1)可溶性油、(2)半合成流体、又は(3)合成流体。これらの流体の各々は、製造業者から入手できる市販可溶性、半合成、及び合成油に類似するように設計されていた。
【0065】
可溶性油は、次の成分から構成された:
100SUSナフテン系石油基礎原料 82.5%
62%活性スルホン酸ナトリウム 11.0%
オレイン酸 1.5%
トリエタノールアミン(TEA) 1.0%
メチルタローエート(methyl tallowate) 3.0%
グリコールエーテル 1.0%
【0066】
半合成流体は、次の成分から構成された:
100SUSナフテン系石油基礎原料 5.0%
62%スルホン酸ナトリウム 10.0%
TEA 15.0%
オレイン酸 15.0%
カルボン酸型腐食防止剤 10.0%
水 45.0%
【0067】
合成濃厚物流体は、次の成分から構成された:
水 63.0%
ポリアルキレングリコール(水溶性型) 7.0%
ヘプタン酸 1.0%
TEA 15.0%
カルボン酸型腐食防止剤 14.0%
【0068】
未処理対照の外に、夫々の種類の金属加工流体について、100PPMのナトリウムピリチオン(NaPT)単独、21PPMのZnCl単独、及び600PPMのアミン単独(モノエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、又は3−アミノ−1−プロパノールのいずか)の入ったフラスコを調製した。また、100PPMのNaPTと21PPMのZnClとの混合物、及び21PPMのZnClと、600PPMの上記三つのアミン化合物の一つとの混合物を試験するためのフラスコを設定した。各種類の流体について、三つの処理フラスコを設定し、NaPT、ZnCl、及びアミンの一種類から構成された混合物A、B、又はCにより、その最終濃度を1000PPMにして処理した。混合物Aは、10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%のモノエタノールアミンからなっていた。混合物Bは、10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%の1−アミノ−2−プロパノールからなっていた。混合物Cは、10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%の3−アミノ−1−プロパノールからなっていた。対照のため、上で示した全ての濃度は、試験フラスコ中の化合物の最終濃度である。処理試験フラスコ中の混合成分の最終的濃度は、100PPMのNaPT、18PPMのZnCl、及び605PPMのアミンであった。
【0069】
夫々のフラスコのpHを決定した。可溶性油のフラスコにアミンを添加すると、流体のpHが約9.9へ上昇した。そのようなフラスコのいずれについても、HClを添加することにより、未処理対照のpHまでpHを調節した。これは、pHによる試験有機体に対する殺生物剤の効果を除去するか又は最小限にするため行なった。半合成又は合成流体では、未処理対照に対するアミンによるpHの上昇は0.3以下であった。可溶性油、半合成、及び合成のフラスコのpHは、夫々、8.5〜8.7、8.2〜8.5、及び8.1〜8.5であった。各フラスコに、10バクテリア/mlの最終濃度になるようにバクテリアを添加した。バクテリア接種源は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa) 9027,大腸菌(Escherichia coli 8739)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens) 12201、シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens) 12202、及びシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)からの等しい数の細胞からなっていた。真菌芽胞を、10芽胞/mlの最終濃度になるように各フラスコに添加した。真菌添加は、フザリウムスピーシーズ(Fusarium sp.)及びセファロスポリウムスピーシーズ(Cephalosporium sp.)、金属加工流体野外分離物(metalworking fluid field isolate)からの等しい数の芽胞からなっていた。
【0070】
130rpmの振盪機上で、フラスコを室温(23℃±2℃)で培養した。1日及び4日の培養後、フラスコから流体試料を得た。試料を連続して殺菌脱イオン水で希釈し(1:10)、バクテリア及び真菌生存数測定のためプレートに広げた。プレートを28℃で2〜3日培養し、次にコロニー形成単位について計測した。実験結果を表1に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
表1に示したように、混合物A(10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%のモノエタノールアミン)、混合物B(10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%の1−アミノ−2−プロパノール)、又は混合物C(10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%の3−アミノ−1−プロパノール)による1000PPMの最終濃度での処理は、可溶性油及び半合成流体中の真菌に対し非常に効果的であった。これらの混合物で4日処理した後のフラスコでは真菌は検出されなかった。対照処理は、未処理対照と比較して、可溶性油及び合成流体で示された真菌の数に殆ど差はなかった。三つの混合物A、B、及びCは、全て未処理のものと比較して、4日以内で可溶性油中のバクテリアを少なくとも100分の1に少なくし、半合成流体中では1日以内で数を0にまで減少させた。未処理のものと比較して、可溶性油及び半合成流体中の対照処理によって、バクテリアの数は余り影響を受けなかった。混合物A、Cは、合成流体中のバクテリアの数を、夫々ほぼ少なくとも500分の1及び10分の1に減少した。合成流体では、亜鉛だけを含む対照は、バクテリアに対して非常に効果的であった。混合物の中で、合成流体中の真菌に対し大きな影響を持つものは一つもなかった。
【0074】
例41〜51
ナトリウムピリチオン、ZnCl、及びアミンの混合物の、金属加工流体中の自生微生物及びバイオフィルムに伴われる微生物に対する殺生物効力
二つの5ガロンのガラス水槽タンクを漂白剤で消毒し、循環する金属加工流体系に類似するように設定した。一つの水槽ポンプを、タンクを通して流体を循環させる手段として夫々のタンクに取付けた。バイオフィルム増殖のための試料採取表面を与えるため、ステンレス鋼座金の試料片(coupon)(表面積1.2cm)及びポリカーボネート円板試料片(表面積3.8cm)を、両面粘着布テープでガラス側面にある試料片保持器に取付けた。二つの鋼及びポリカーボネート試料片を、各保持器の上に置いた。各タンクに、希釈(1:20)半合成金属加工流体を12.5リットル添加した。
【0075】
タンク1は、未処理対照として使用した。混合物D(16%のNaPT、2%のZnCl、20%のモノエタノールアミン、20%の3−アミノ−1−プロパノール)を、タンク2に1250PPMの最終濃度まで添加し、それにより200PPMのNaPT、25PPMのZnCl、250PPMのモノエタノールアミン、及び250PPMの3−アミノ−1−プロパノールの最終的活性濃度を12.5リットルの希釈金属加工流体中に生じさせた。タンク1及びタンク2のpHは、夫々、7.8及び8.3であった。タンク1のpHは、HClで8.3に調節した。各タンクに、10バクテリア/mlの最終濃度になるようにバクテリアを添加した。バクテリア接種源は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa) 9027,大腸菌(Escherichia coli) 8739、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens) 12201、シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens) 12202、及びシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)からの等しい数の細胞からなっていた。真菌芽胞を、10芽胞/mlの最終濃度になるように各タンクに添加した。真菌添加は、フザリウムスピーシーズ(Fusarium sp.)及びセファロスポリウムスピーシーズ(Cephalosporium sp.)、金属加工流体野外分離物からの等しい数の芽胞からなっていた。バクテリア及び真菌の添加は一週間当たり3回繰り返した。それらタンクは、室温(23℃±2℃)で循環させた。
【0076】
主要(bulk)金属加工流体及びバイオフィルムの試料を、19日後に得た。主要流体について、試料を連続的に、消毒した脱イオン水で希釈(1:10)し、プレートに広げ、トリプト・大豆寒天(Tryptic Soy Agar)+90PPMのシクロヘキサミド、及び麦芽寒天+900PPMのストレプトマイシン+550PPMのペニシリンGの夫々の上のバクテリア及び真菌生存数について調べた。バイオフィルム試料については、試料片保持器をタンクの底及び側面から取り外した。それら試料片を保持器から取り外し、殺菌水に入れて濯ぎ、10mlの殺菌脱イオン水の入った25mm×150mmの使い捨てガラス培養管へ移した。それら試料片からバイオフィルムが離れ、30秒間最大速度でそれら管を回転させることにより再び懸濁した。再懸濁したバイオフィルムを次に、主要流体試料について記述したように、連続的に、希釈し、プレートに広げ、バクテリア及び真菌の数について調べた。流体・空気界面の所のタンクの側面から汚泥物質を0.5ml消毒無針注射器で採取し、殺菌脱イオン水中に、回転させることにより再懸濁した。各汚泥試料中のバクテリア及び真菌の数を、主要流体試料について前に述べたようにして決定した。プレートは28℃で2〜3日培養し、次にコロニー形成単位(cfu)について計測した。バイオフィルム試料については、汚泥材料を除き、コロニー形成単位/mlを、コロニー形成単位/cmへ換算した。表2は、この実験の結果を示している。
【0077】
【表4】

【0078】
表2に示したように、混合物Dで処理したタンクは、未処理タンクよりも主要流体中のバクテリアが少なくとも200分の1少ないことを示していた。主要流体中の真菌の数については、処理タンクと未処理タンクとの間には殆ど差がなかった。混合物Dで処理したタンクのバイオフィルム中に存在するバクテリアは、未処理タンクよりも少なくとも1000分の1〜3000分の1少なく、真菌については少なくとも25分の1〜250分の1少なかった。未処理タンクの空気・流体界面からの汚泥物質1mlには10バクテリア/mlが存在していたが、混合物Dで処理したタンク中の汚泥物質からはバクテリアも真菌も検出できなかった。
【0079】
例52
ナトリウムピリチオン、ZnCl、アミン、及びホルムアルデヒド放出性殺生物剤の混合物の、金属加工流体中の微生物に対する殺生物効力
実験は、ナトリウムピリチオン、ZnCl、モノエタノールアミン、及びヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン(ホルムアルデヒド放出剤)の混合物と、ナトリウムピリチオン及びヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの混合物との金属加工流体中での殺生物効力を比較するために行なった。
【0080】
3mlの5%可溶性油MWF、又は5%半合成金属加工流体の入った消毒ガラス培養管(16mm×150mm)を設定した。それらの管に、40%のナトリウムピリチオン、78.5%のヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、又は混合物A(10%のナトリウムピリチオン、1.8%のZnCl、及び60.5%のモノエタノールアミン)を、それら殺生物剤の種々の混合物及びそれら殺生物剤の各々についての対照を形成するため適切な量で添加した。バクテリア及び真菌を、各管に10バクテリア/ml及び10真菌芽胞/mlの全最終濃度に夫々なるように添加した。バクテリア接種源は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens)、及びシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)からの等しい数の細胞からなっていた。真菌添加は、フザリウムスピーシーズ(Fusarium sp.)及びセファロスポリウムスピーシーズ(Cephalosporium sp.)からの等しい数の芽胞からなっていた。管を28℃で3日間培養し、次にトリプト・大豆寒天+90PPMのシクロヘキシミド上の生存バクテリア数、及び麦芽寒天+900PPMのストレプトマイシン+550PPMのペニシリンGの上の生存真菌数について測定した。実験結果を表3に示す。
【0081】

【0082】

【0083】
表3では、用いたトリアジンがヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの78.5%水溶液であることに注意すべきである。ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンは、遊離ホルムアルデヒドと平衡状態になっており、使用した濃度で金属加工流体中でホルムアルデヒド放出剤として用いた場合、約31%のホルムアルデヒドを遊離することが知られている。例52、53、及び54のトリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンと、ホルムアルデヒドとの間の関係は、表4に示してある。
【0084】

【0085】
表3に示した実験結果は、混合物A(10%のナトリウムピリチオン、1.8%のZnCl、60.5%のモノエタノールアミン)及びヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの混合物が、ナトリウムピリチオンとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物よりも真菌に対し一層よい性能を持つことを例示している。例えば、ナトリウムピリチオンと250〜500PPMのヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物の殺生物効力に匹敵する殺生物効力を生じさせるためには、混合物Aを250〜500PPMのヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンと一緒に用いた場合、約75%少ない活性ナトリウムピリチオンがあればよい。更に、混合物Aの濃度を増大することも、真菌増殖を無くすために必要なヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの量の減少を可能にする。例えば、500PPMの混合物Aは、真菌レベルを減少させるのに必要なヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの量を4分の1に減少することができる。混合物Aを約1000PPMの濃度で用いた場合、微生物汚染を無くすためにはヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンは不必要である。
【0086】
例53
ナトリウムピリチオン、ZnCl、モノエタノールアミン、及びホルムアルデヒド放出性殺生物剤の混合物の、金属加工流体中の微生物汚染を防ぐことに対する効力
ナトリウムピリチオン、ZnCl、モノエタノールアミン、及びヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンの混合物の、金属加工流体の微生物汚染を防止することに対する効力を調べた。ナトリウムピリチオンとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物の効力に対し効果性を比較した。
【0087】
100mlの5%半合成金属加工流体の入った消毒250mlのエルレンメイヤーフラスコを設定した。それらのフラスコに、40%のナトリウムピリチオン、78.5%のヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、又は混合物A(10%のナトリウムピリチオン、1.8%のZnCl、及び60.5%のモノエタノールアミン)を、それら殺生物剤の種々の混合物及びそれら殺生物剤の各々についての対照を形成するため適切な量で添加した。バクテリア及び真菌を、各フラスコに10バクテリア/ml及び10真菌芽胞/mlの全最終濃度に夫々なるように添加した。バクテリア接種源は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナスルベセンス(Pseudomonas rubescens)、及びシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)からの等しい数の細胞からなっていた。真菌添加は、フサリウムスピーシーズ(Fusarium sp.)及びセファロスポリウムスピーシーズ(Cephalosporium sp.)からの等しい数の芽胞からなっていた。バクテリア及び真菌添加を、一週間当たり3回繰り返した。フラスコを28℃で培養し、数週間後トリプト・大豆寒天+90PPMのシクロヘキシミド上の生存バクテリア数、及び麦芽寒天+900PPMのストレプトマイシン+550PPMのペニシリンGの上の生存真菌数について測定した。実験結果を表5に示す。
【0088】

【0089】
この半合成流体では、混合物Aとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物が、NaPTとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物よりも微生物汚染に対し長い期間の保護を与える。更に、混合物Aとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物は、ナトリウムピリチオンとヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンとの混合物よりも、同じ期間の効力を維持しながら、使用されるナトリウムピリチオン又はヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンを一層少なくすることも可能にしている。
【0090】
例54
金属加工流体中のナトリウムピリチオン、ZnCl、及びアミンの混合物の、変色及び殺生物効力に対する鉄イオンの影響
鉄イオンが存在すると、ナトリウムピリチオンを含む金属加工流体の青色変色を起こすことが知られている。更に、鉄イオンは、ナトリウムピリチオンの殺生物効力を低下する。ナトリウムピリチオン、ZnCl、及びモノエタノールアミンの混合物が、同様に微生物に対する効力の低下を示し、鉄の存在で青色変色を生ずるか否かについて調べるため、実験を行なった。
【0091】
100mlの5%金属加工流体を、チーズクロス・ストッパーを有する消毒250mlのエルレンメイヤーフラスコに満たした。調べた流体は、可溶性油、二種類の半合成物、及び合成物を含んでいた。前記5%の流体を作るのに用いた水は、0PPM〜200PPMの範囲の種々の濃度のFeイオン(FeCl・6HO)を含んでいた。混合物Aは、10%のNaPT、1.8%のZnCl、及び60.5%のモノエタノールアミンから構成されており、それを1000PPMの最終濃度になるように適当なフラスコへ添加し、流体中、夫々100PPM及び8.6PPMのNaPT及びZn(II)の最終活性濃度を生ずるようにした。未処理対照及び100PPMのNaPTだけで処理した対照も調製した。一週間当たり3回、バクテリア及び真菌を、それらのフラスコに10バクテリア/ml及び10真菌芽胞/mlの全最終濃度になるように添加した。バクテリア接種源は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)9027、大腸菌(Escherichia coli)8739、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)12201、シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens)12202、及びシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)からの等しい数の細胞からなっていた。真菌添加は、フサリウムスピーシーズ(Fusarium sp.)及びセファロスポリウムスピーシーズ(Cephalosporium sp.)からの等しい数の芽胞からなっていた。フラスコを振盪機で、室温(23℃±2℃)で、120rpmで培養した。金属加工流体の初期色を目で調べて決定した。二週間で、夫々、90PPMのシクロヘキシミドを含むトリプト・大豆寒天、及び900PPMのストレプトマイシン及び550PPMのペニシリンGを含む麦芽寒天上に塗布することにより、生存バクテリア及び真菌数を決定した。流体の色を調べた。実験結果を表6に示す。
【0092】

【0093】
表6の結果は、混合物Aが、一般にNaPTよりも金属加工流体の青色変色を遥かに起こしにくくすることを示している。青色の強度は流体によって変化するが、100PPMまでのFeイオンを含む四つの流体の中で三つに青色化は観察されなかった。200PPMのFeでは、流体の三つが幾らかの青色を示した。しかし、一つの流体は、200PPMのFeイオンが存在していても青色は示さなかった。それらの結果は、バクテリア及び真菌に対する殺生物効力が、100PPM以下の濃度のFeイオンによっては殆ど影響を受けないことも示している。四つの流体の中の二つでは、200PPMのFeイオンが存在すると効力は低下した。残りの二つの流体は効力の変化を示していなかった。
【0094】
例55
ナトリウムピリチオン、酸化亜鉛、及び有機アミンの安定で可溶性の濃厚混合物の製造
ナトリウムピリチオン、ZnCl、及び種々の有機アミンの混合物を、100mlの透明ガラス瓶中で調製し、室温(23℃±2℃)に置いた。それら混合物を、製造後24時間及び72時間で沈澱物が存在するか否か、或は他の物理的不安定性を示すか否かについて計測した。
【0095】
表7. ナトリウムピリチオン、酸化亜鉛、及び有機アミン〔単一アミン(A
部)参照)及びアミン混合物(B部参照)の溶解度及び安定性
混合物 重量% 24時間 72時間
での外観 での外観
A部 − 単一アミン
NaPT 10.00
ZnCl 1.74
有機アミン 60.50
水 27.76
1,2及び1,3アルカノールアミン:式1
エタノールアミン 60.50 S S
NH−CH−CH−OH
【0096】
【化1】

【0097】
3−アミノ−1−プロパノール 60.50 S S
NH−CH−CH−CH−OH
2−(メチルアミノ)エタノール 60.50 S S
CH−NH−CH−CH−OH
プロピルエタノールアミン 60.50 S P
CH-CH-CH-NH-CH-CH-OH
1,2及び1,3アルカノールアミン:式2
ジエタノールアミン 60.50 P P
HO-CH-CH-NH-CH-CH-OH
【0098】
【化2】

【0099】
2(2−アミノエトキシ)エタノール 60.50 P P
NH-CH-CH-O-CH-CH-OH
【0100】
【化3】

【0101】
混合イソプロパノールアミン 60.50 S P
(44%ジ、44%トリ、及び12%モノ)

アルキルジアミン:式3
1,3−ジアミノプロパン 60.50 S S
NH−CH−CH−CH−NH
ジエチレントリアミン 60.50 S S
NH-CH-CH-NH-CH-CH-NH
トリエチレンテトラアミン 60.50 S S
NH(CH−CH−NH)−H
ポリエチレンイミン 60.50 S S
NH(CH−CH−NH)−H


B部 − アミン混合物
NaPT 10.00
ZnCl 1.74
有機アミン 60.50
水 27.76
1,2及び1,3アルカノールアミン:式1+式2
エタノールアミン 30.00 S S
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール 30.50
エタノールアミン 20.00 S S
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール 40.50
エタノールアミン 10.00 P P
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール 50.50
エタノールアミン 20.00 S S
ジエタノールアミン 40.50
エタノールアミン 20.00 S S
トリエタノールアミン 40.50
エタノールアミン 30.00 S S
2-アミノ-2-エチル-1.3-プロパンジオール 40.50
エタノールアミン 20.00 P P
ジグリコールアミン 40.50

P=混合物中に沈澱物が形成された。
S=可溶性で安定な混合物。
【0102】
表7に示したように、可溶性で安定な混合物を、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(メチルアミノ)エタノール、1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、トリエチレンテトラミン、及びポリエチレンイミンを用いて24時間及び72時間後に観察した。3種類のアミン、プロピルエタノールアミン、混合イソプロパノールアミン、及び3−メトキシプロピルアミンは、24時間後には可溶性混合物を示していたが、72時間後には示さなかった。AMP95、ジエタノールアミン、AEPD85、2(2−アミノエトキシ)エタノール、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、及びジイソプロパノールアミンは、24時間及び72時間後に沈澱物を示していた。表7のB部は、或るアミン混合物が、組合せて用いると適当な可溶性を与えることを示している。
【0103】
本発明をその例示としての態様に関連して記載し示してきたが、特許請求の範囲で記述する本発明の本質及び範囲から離れることなく、その形態及び詳細な点について前記及び他の種々の変化、省略、及び追加を行えることは認められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.05重量%〜約20重量%の量のピリチオン又はピリチオン錯体、約0.01%〜約5%の量の亜鉛源、約30%〜約80%の量の有機アミン成分(前記%は、組成物濃厚物の全重量に基づいている)を含み、前記有機アミン成分は、1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる付加的群から選択された第二有機アミンと組合せて含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を抗菌濃厚組成物に確実に溶解させるのに充分な量でその抗菌濃厚組成物中に存在する、抗菌濃厚組成物。
【請求項2】
ピリチオン錯体が、ピリチオン塩及びピリチオン付加物からなる群から選択されている、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】
ピリチオン塩が、ナトリウムピリチオン、ビスマスピリチオン、カリウムピリチオン、リチウムピリチオン、アンモニウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、カルシウムピリチオン、マグネシウムピリチオン、ストロンチウムピリチオン、銀ピリチオン、金ピリチオン、マンガンピリチオン、有機アミンピリチオン、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項4】
ピリチオン付加物が2,2’−ジチオピリジン−N−オキシドである、請求項2に記載の抗菌組成物。
【請求項5】
亜鉛塩が、酢酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、乳酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、セレン酸亜鉛、珪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、バレリアン酸亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項6】
第一有機アミンが、次の式:
NH−(CHR−CHR−OH (式1)
(式中、n=1又は2であり、R、R、及びRは、水素、又は合計4に等しいか又はそれより少ない炭素数を有する低級アルキル基である)
の化合物を含む、請求項1に記載の抗菌濃厚物組成物。
【請求項7】
第一有機アミンが、エタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(n−プロピルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、及びそれらの組合せからなる群から選択された少なくとも一種類の化合物である、請求項6に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項8】
第二有機アミンが、式:
NR (式2)
〔式中、Rは、H、CH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCHCHCH−、HO−CH−CH−、及びHO−CH(CH)−CH−であり、Rは、H、CH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCHCHCH−、HO−CH−CH−、HO−CH−CH−CH−、HO−CH(CH)−CH−、及びHO−CH−C(CH−であり、Rは、HO−CH−CH−、HO−CH−CH−CH−、HO−CH(CH)−CH−、HO−CH−C(CH−、(HOCHC(CHCH)、及びHO−CH−CH−O−CH−CH−である〕の化合物を含む、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項9】
第二有機アミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、混合イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMPとも呼ばれている)、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(AEPDとも呼ばれている)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(ジグリコールアミンとも呼ばれている)、n−メチルジエタノールアミン、n,n−ジメチルエタノールアミン、n,n−ジエチルエタノールアミン、n,n−ジブチルアミノエタノール、n,n−ジメチルアミノ−2−プロパノール、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項8に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項10】
第二有機アミンが、付加物に、式:
N−[(CH−CH−NH−]−H (式3)
(式中、
nは1又は2であり、mは約1〜約2000であり、R及びRは、水素、又は合計4に等しいか又はそれより少ない炭素数を有する低級アルキル基である。)
の化合物を含む、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項11】
第二有機アミンが、1,3−ジアミノプロパン、n,n−ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ポリエチレンイミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項10に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項12】
ピリチオン、ピリチオン塩、ピリチオン錯体が、抗菌濃厚組成物の全重量に基づき、その抗菌組成物の約5〜約20重量%を占める、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項13】
亜鉛源が、抗菌濃厚組成物の全重量に基づき、その抗菌組成物の約0.5〜約5重量%を占める、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項14】
有機アミン及び有機アミンの組合せが、抗菌濃厚組成物の全重量に基づき、その抗菌組成物の約40〜約70重量%を占める、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項15】
更に、水又は水混和性有機溶媒を含む、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項16】
更に、抗菌濃厚組成物中に有効ホルムアルデヒドを与えるためにホルムアルデヒド源を含む、請求項1に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項17】
ホルムアルデヒド源が、塩化シス1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、4,4−ジメチルオキサゾリジン、5−ヒドロキシメトキシメチル−1−1アザ−3,7−ジオキサビシクロ−オクタン、ジメチロールジメチルダントイン、N,N″−メチレンビス[N’−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素、N−(ヒドロキシメチル)−N−(1,3−ジヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N’−(ヒドロキシメチル)尿素、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項16に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項18】
ホルムアルデヒド源が、抗菌濃厚組成物の全重量に基づき、その抗菌組成物の約0.5〜約30重量%を占める、請求項16に記載の抗菌濃厚組成物。
【請求項19】
金属加工流体中の自生微生物又はバイオフィルムの増殖を阻止する方法において、
(A) 請求項1に記載の抗菌濃厚組成物を配合し、「マスターバッチ」で:
(a) 約0.05〜約5%のピリチオンまたピリチオン錯体;
(b) 約0.005〜約1%の、亜鉛塩、亜鉛硼酸塩、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛合金、亜鉛錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択された亜鉛源;
(c) 約0.5〜約40%の有機アミン成分で、1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる本質的群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる付加的群から選択された第二有機アミンと組合せて含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を前記抗菌濃厚組成物に確実に溶解させるのに充分な量でその抗菌濃厚組成物中に存在するものとする、有機アミン成分;を含むマスターバッチを与える工程;
(B) 前記「マスターバッチ」を希釈して抗菌に有効な金属加工流体を与える工程;及び
(C) 前記抗菌に有効な金属加工流体と、自生微生物又はバイオフィルムとを接触させる工程;
を含み、然も、
前記抗菌に有効な金属加工流体が、自生微生物又はバイオフィルムに対し増大した殺生物効果を有する、
増殖阻止方法。
【請求項20】
ピリチオン錯体が、ピリチオン塩及びピリチオン付加物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ピリチオン塩が、ナトリウムピリチオン、カリウムピリチオン、ビスマスピリチオン、リチウムピリチオン、アンモニウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、カルシウムピリチオン、マグネシウムピリチオン、ストロンチウムピリチオン、銀ピリチオン、金ピリチオン、マンガンピリチオン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ピリチオン付加物が2,2’−ジチオ−ピリジン−N−オキシドである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
亜鉛塩が、酢酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、乳酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、セレン酸亜鉛、珪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、バレリアン酸亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
自生微生物又はバイオフィルムが、グラム陽性バクテリア、グラム陰性バクテリア、酵母、真菌類、及びそれらの組合せからなる群から選択された微生物成分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
微生物成分が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、フザリウム菌(Fusarium)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナスルベッセンス(Pseudomonas rubescens)、シュードモナスシュトゥッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナスオレボランス(Pseudomonas olevorans)、アルカリゲネスフェカーリス(Alcaligenes faecalis)、シトロバクターフレウンデー(Citrobacter freundii)、大腸菌(Escherichia coli)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
更に、0.05〜約5%のホルムアルデヒド源を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
ホルムアルデヒド源が、塩化シス1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、4,4−ジメチルオキサゾリジン、5−ヒドロキシメトキシメチル−1−1アザ−3,7−ジオキサビシクロ−オクタン、ジメチロールジメチルダントイン、N,N″−メチレンビス[N’−(ヒドロキシメチル)−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル]尿素、N−(ヒドロキシメチル)−N−(1,3−ジヒドロキシメチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)−N’−(ヒドロキシメチル)尿素、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
自生微生物又はバイオフィルムの増殖を阻止する方法において、前記自生微生物又はバイオフィルムを、請求項19に記載の方法により製造された抗菌組成物を含む抗菌組成物と接触させる工程を含む増殖阻止方法。
【請求項29】
請求項1に記載の濃厚物を希釈することにより形成された、安定で可溶性の抗菌組成物において、
約0.05重量%〜約5重量%のピリチオンまたピリチオン錯体;
約0.005重量%〜約1重量%の、亜鉛塩、亜鉛酸化物、亜鉛水酸化物、亜鉛硫酸塩、亜鉛塩化物、亜鉛合金、亜鉛錯体、及びそれらの組合せからなる群から選択された亜鉛源;及び
約0.5重量%〜約40重量%のアミン成分で、1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる付加的群から選択された第二有機アミンと組合せて含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を抗菌組成物に確実に溶解させるのに充分な量でその抗菌組成物中に存在するものとする、アミン成分;
を含み、然も、全ての%は、前記抗菌組成物の全重量に基づいており、前記抗菌組成物は、自生微生物又はバイオフィルムに対し増大した殺生物効果を有する、抗菌組成物。
【請求項30】
更に、約0.05%〜5%のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド源を含む、請求項29に記載の安定で可溶性の抗菌組成物。
【請求項31】
約0.05%〜約20%のピリチオン、及び約0.1%〜約10%の量の亜鉛源を含む安定で可溶性の抗菌濃厚物を与える方法において、前記濃厚物中へ、安定化に有効な量の少なくとも一種類の有機アミン成分で、1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択された第一有機アミンを、単独で、又は1,2−アルカノールアミン、1,3−アルカノールアミン、1,2−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、1,3−アルキルジアミンの単量体及び重合体の形のもの、及びそれらの組合せからなる群から選択された第二有機アミンと組合せて含み、但し、前記第一有機アミンは、前記アミン成分を抗菌組成物に確実に溶解させるのに充分な量でその抗菌組成物中に存在するものとする、有機アミン成分を配合する工程を含む、抗菌濃厚物を与える方法。
【請求項32】
有機アミンの安定化に有効な量が、前記有機アミン+亜鉛源+ピリチオンの全重量に基づき、30%〜約80%である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
安定で可溶性の抗菌濃厚物が、更に、約0.5%〜30%のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド源を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
更に鉄イオンを含み、亜鉛及びアミン成分を含まない組成物と比較して、前記鉄イオンに起因する青色変色を阻止することを示す、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
ペイント、接着剤、被覆、及び密封材からなる群から選択された機能性流体中へ、その機能性流体に抗菌効力を与えるために配合することを含む、請求項29に記載の組成物を用いる方法。
【請求項36】
機能性流体が、木材及び木材複合体、石造建築及び石材、皮革、硬質表面、布地、織物、プラスチック、医療用製品、及びそれらの組合せからなる群から選択された基体を処理するのに有効な成分を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ペイント、接着剤、被覆、及び密封材からなる群から選択された機能性流体中へ、その機能性流体に抗菌効力を与えるために配合することを含む、請求項1に記載の濃厚組成物を用いる方法。
【請求項38】
機能性流体が、木材及び木材複合体、石造建築及び石材、皮革、硬質表面、布地、織物、プラスチック、医療用製品、及びそれらの組合せからなる群から選択された基体を処理するのに有効な成分を含む、請求項37に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510713(P2006−510713A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563143(P2004−563143)
【出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2002/040983
【国際公開番号】WO2004/057964
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(500000175)アーチ ケミカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】