説明

交流電源装置

【課題】従来の交流電源では、リアクトルの電流がIGBTを介して還流している時に直列接続されたIGBTをオンすると、還流中のIGBTは交流電源の電圧で逆回復し、逆回復遮断時に大きなサージ電圧が発生し、ノイズ発生量が増加すると共に逆回復損失が大きくなる。
【解決手段】コンデンサ直列回路と双方向スイッチ直列回路と、を交流電源と並列接続し、コンデンサ直列回路内部の直列接続点と双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に別の双方向スイッチを接続し、IGBTがオンしてダイオード動作のIGBTを逆回復させる時の電圧及びIGBTがオンオフする時の電圧を、第1ステップとして交流電源電圧の半分程度の電圧とし、第2ステップとして交流電源電圧そのものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流入力電圧を電圧制御又は電力制御して負荷へ交流電圧又は交流電力を供給する交流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に、特許文献1に示された従来の交流電源回路を示す。図8(a)は交流電源Vsより低い交流電圧を出力する降圧形交流チョッパ回路図で、図8(b)は交流電源Vsより高い交流電圧を出力する昇圧形交流チョッパ回路図である。
まず図8(a)について説明する。逆阻止形IGBTS1aとS1bを逆並列接続した第1の双方向スイッチと、逆阻止形IGBTS2aとS2bを逆並列接続した第2の双方向スイッチとを直列接続した双方向スイッチ直列回路と、交流電源Vsと、コンデンサCiと並列接続し、第2の双方向スイッチと並列に負荷LDを接続したいわゆる降圧形交流チョッパ回路である。
【0003】
このような構成において、交流電源Vsの極性が正の時、IGBTS1aをオンすると負荷には交流電源と同じ電圧が印加され、IGBTS1aをオフしIGBTS2bをオンすると負荷電圧は零となる。また、交流電源Vsの電圧の極性が負の時、IGBTS1bをオンすると負荷LDには交流電源と同じ電圧が印加され、IGBTS1bをオフしIGBTS2aをオンすると負荷電圧は零となる。これらのスイッチング動作においては、IGBTがオフする時にIGBTに印加される電圧は電源電圧と同じになる。このようなスイッチング動作を高周波で行い、オンとオフの比率を調整することにより、負荷LDには交流電源Vsと周波数が同じで電圧が低い所望の交流電圧が印加される。
【0004】
次に図8(b)について説明する。逆阻止形IGBTS4aとS4bを逆並列接続した第4の双方向スイッチと、逆阻止形IGBTS5aとS5bを逆並列接続した第5の双方向スイッチとを直列接続した双方向スイッチ直列回路と、コンデンサCoと、負荷LDとが並列接続され、第5の双方向スイッチと並列に交流電源VsとリアクトルLとの直列回路が接続されたいわゆる昇圧形交流チョッパ回路である。このような構成において、交流電源Vsの極性が正の時、IGBTS5aをオンするとリアクトルLにエネルギーが蓄積され、IGBTS5aをオフしIGBTS4bをオンするとリアクトルLのエネルギーはIGBTS4bを介してコンデンサCoに正方向に充電され、交流電源Viの電圧より高い電圧となる。この時、IGBTS5aの電圧はコンデンサCoと同じ電圧となる。
【0005】
また、交流電源Vsの電圧の極性が負の時、IGBTS5bをオンするとリアクトルLにエネルギーが蓄積され、IGBTS5bをオフしIGBTS4aをオンするとリアクトルLのエネルギーはIGBTS4aを介してコンデンサCoに負方向に充電される。この時、IGBTS5bの電圧はコンデンサCoと同じ電圧となる。このようなスイッチング動作を高周波で行い、オンとオフの比率を調整することにより、負荷LDには交流電源Vsと周波数が同じで電圧が高い所望の電圧が印加される。
【0006】
これらのスイッチング動作においては、IGBTに印加される電圧及び負荷に印加される電圧波形は、以下となる。降圧形交流チョッパ回路の場合は交流電源電圧と零との間を変化する電圧で、昇圧形交流チョッパ回路の場合は昇圧された負荷電圧と零との間を変化する電圧で、いずれも電圧変化率(dv/dt)の大きい高速のスイッチング波形となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3216759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、いずれの回路構成の場合も、リアクトルの電流がIGBTを介して還流又は出力コンデンサを充電している時に直列接続されたIGBTをオンすると、還流中のIGBTは交流電源Vsの電圧又は交流出力コンデンサCoの電圧でダイオードと同様の逆回復動作となる。交流電源電圧又は交流出力電圧が数百ボルト以上と高い場合には、IGBTが高速で逆回復することになり、IGBT逆回復遮断時に大きなサージ電圧が発生し、ノイズ発生量が増加すると共に逆回復損失が大きくなる。また、スイッチング素子のスイッチング時の電圧変化量は交流電源電圧又は交流出力電圧にサージ電圧が加算された電圧となり、同様にノイズ発生量が大きく且つスイッチング損失が大きくなる。この結果、IGBTの耐圧はこの電圧に耐える高耐圧品が必要となり、また冷却装置が大型化する問題が生じる。
従って、本発明の課題は、逆回復を緩やかにしてノイズ発生量を低減すると共に逆回復時の損失を低減すること及びスイッチング時のノイズ発生量及びスイッチング損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、コンデンサを2個直列接続したコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路と、を交流電源と並列に接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第3の双方向スイッチを、前記第1の双方向スイッチ又は前記第2の双方向スイッチと並列に負荷を、各々接続し、前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧の低い交流電圧を前記負荷に供給する。
【0010】
第2の発明においては、第1の発明における前記コンデンサ直列回路と中間タップ付変圧器巻線を並列接続し、前記中間タップと前記コンデンサ直列回路内部の接続点とを接続する。
【0011】
第3の発明においては、第1又は第2の発明における前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御によりパルス列化するに際し、各パルスはコンデンサ直列回路の一方のコンデンサ電圧を出力する第1ステップ波形と前記コンデンサ直列回路全体の電圧を出力する第2ステップ波形との合成波形として出力する制御手段を備える。
【0012】
第4の発明においては、コンデンサを2個直列接続したコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した双方向スイッチ直列回路とを負荷と並列に接続し、前記コンデンサ直列回路内部の接続点と前記双方向スイッチ直列回路内部の接続点との間に第3の双方向スイッチを、前記第1の双方向スイッチ又は前記第2の双方向スイッチと並列に交流電源とリアクトルとの直列回路を、各々接続し、前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が高い交流電圧を前記負荷に供給する。
【0013】
第5の発明においては、第4の発明における前記コンデンサ直列回路と中間タップ付変圧器巻線とを並列接続し、前記中間タップと前記コンデンサ直列回路内部の接続点とを接続する。
【0014】
第6の発明においては、第4又は第5の発明における前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御により前記リアクトル電流を制御し、前記コンデンサ直列回路を電流パルスで充電し、前記交流電源の電圧よりも高い電圧を得るに際し、各電流パルスはコンデンサ直列回路の一方のコンデンサを充電する第1期間と前記コンデンサ直列回路全体を充電する第2期間とを備える。
【0015】
第7の発明においては、コンデンサを2個直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路と、交流電源とを並列に接続し、前記第1のコンデンサ直列回路内部の接続点と前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第3の双方向スイッチを接続した降圧形交流チョッパ回路と、コンデンサを2個直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、第4及び第5の双方向スイッチを2個直列接続した第2の双方向スイッチ直列回路とを負荷と並列に接続し、前記第2のコンデンサ直列回路内部の接続点と前記第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第6の双方向スイッチを接続した昇圧形交流チョッパ回路と、を備え、前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間にリアクトルを、第1の双方向スイッチ直列回路の一端と第2の双方向スイッチ直列回路の一端とを、各々接続し、前記降圧形交流チョッパ回路の動作により前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が前記交流電源より低い交流電圧を負荷に供給し、前記昇圧形交流チョッパ回路の動作により前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が前記交流電源より高い交流電圧を前記負荷に供給する。
【0016】
第8の発明においては、第7の発明における前記第1のコンデンサ直列回路と第1の中間タップ付変圧器とを、前記第2のコンデンサ直列回路と第2の中間タップ付変圧器とを、各々並列接続し、前記第1の中間タップ付変圧器巻線の中間タップと前記第1のコンデンサ直列回路内部の直列接続点とを、前記第2の中間タップ付変圧器巻線の中間タップと前記第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点とを、各々接続する。
【0017】
第9の発明においては、第7又は第8の発明における前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御によりパルス列化するに際し、各パルスは第1のコンデンサ直列回路の一方のコンデンサ電圧を出力する第1ステップ波形と前記第1のコンデンサ直列回路全体の電圧を出力する第2ステップ波形との合成波形として出力する第1の制御手段を備える。
【0018】
第10の発明においては、第7〜第9の発明における前記第4〜第6の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御により前記リアクトル電流を制御し、前記第2のコンデンサ直列回路を電流パルスで充電し、前記交流電源の電圧よりも高い電圧を得るに際し、各電流パルスは第2のコンデンサ直列回路の一方のコンデンサを充電する第1期間と前記コンデンサ直列回路全体を充電する第2期間とを有する第2の制御手段を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、IGBTがオンしてダイオード動作のIGBTを逆回復させる時の電圧及びIGBT(スイッチング素子)がオンオフする時の電圧を第1ステップとして交流電源電圧又は交流出力電圧の半分程度の電圧とし、第2ステップとして交流電源電圧又は交流出力電圧そのものとしている。このため、ダイオード動作のIGBTの逆回復時又はIGBT(スイッチング素子)オフ時にスイッチング素子に印加される電圧を小さく抑制することができる。
この結果、ダイオード動作のIGBTの逆回復時の電圧が低い電圧となり、逆回復時のサージ電圧が低く抑制され、逆回復損失が低減する。さらにIGBT(スイチング素子)のスイッチング時の電圧変化量が半分程度となり、ノイズ発生量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施例を示す回路図である。
【図2】図1の動作波形例1である。
【図3】図1の動作波形例2である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す回路図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示す回路図である。
【図6】図5の動作波形例である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す回路図である。
【図8】従来例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の要点は、双方向スイッチを直列接続した双方向スイッチ直列回路とコンデンサを直列接続したコンデンサ直列回路とを交流電源と並列接続し、双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点とコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間にさらに双方向スイッチを接続した降圧形交流チョッパ回路構成で、スイッチング時にスイッチング素子に印加される電圧として交流電源の半分を第1ステップで印加し、第2ステップで交流電源電圧そのものが印加されるように制御している点である。
【0022】
また、双方向スイッチを直列接続した双方向スイッチ直列回路とコンデンサを直列接続したコンデンサ直列回路を負荷と並列接続し、双方向スイッチ直列回路のいずれかの双方向スイッチと並列に交流電源とリアクトルの直列回路を接続した昇圧形交流チョッパ回路構成で、スイッチング時にスイッチング素子に印加される電圧として負荷電圧の半分を第1ステップで印加し、第2ステップで負荷電圧そのものが印加されるように制御している点である。
【実施例1】
【0023】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。逆阻止形IGBTS1aとS1bを逆並列接続した第1の双方向スイッチと、逆阻止形IGBTS2aとS2bを逆並列接続した第2の双方向スイッチとを直列接続した双方向スイッチ直列回路と、コンデンサC1とC2を直列接続したコンデンサ直列回路と、交流電源Vsとを並列接続し、双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点とコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形IGBTS3aとS3bを逆並列接続した第3の双方向スイッチを、第2の双方向スイッチと並列に負荷LDを接続した降圧形交流チョッパ回路である。また、コンデンサC1とC2の電圧は、電圧検出器VD1を介して、制御回路CNTに接続される。
【0024】
この様な構成における動作図を図2及び図3に示す。図2は交流電源Vsの極性が正の場合の動作例、図3は交流電源Vsの極性が負の場合の動作例である。いずれの場合も負荷LDに供給される交流電圧の基本波周波数は、交流電源の周波数と同じである。図2から判るように負荷LDの電流がIGBTS2bを介して還流しているモードでIGBTS3aをオンさせるとIGBTS2bがコンデンサC2の電圧で逆回復してオフとなると共に負荷LDにはコンデンサC2の電圧が印加される。次にIGBTS1aをオンさせるとIGBTS3aがコンデンサC1の電圧で逆回復してオフとなり、負荷LDにはコンデンサC1の電圧とC2の電圧の和(交流電源電圧)が印加される。
【0025】
この状態から、IGBTS1aをオフさせると、負荷LDにはコンデンサC2の電圧がIGBTS3aを介して供給される。次にIGBTS3aをオフし、IGBTS2bをオンさせると、負荷電流はIGBTS2bで還流し、負荷LDの電圧は零となる。これらの動作の結果、負荷LDに印加される電圧波形は図示のようにスイッチング過程で、一旦コンデンサC2の電圧を経由して電源電圧又は零電圧となる。ここで、IGBTS3aをオンした後IGBTS1aをオンさせるまでの時間差、及びIGBTS1aをオフしてからIGBTS3aをオフさせるまでの時間差は、IGBTのスイッチング時間より少し長い時間であれば良く、およそ数マイクロ秒で良い。また、コンデンサC1とC2は交流電源電圧を2分割する役割を持たせるため、ほぼ等しい静電容量とする。従って、図2に示すように交流電源電圧をViとすると、コンデンサC1、C2の電圧はVi/2となる。
【0026】
電圧検出器VD1はコンデンサC1とC2の電圧差を検出し、これを制御回路CNT1に送り、制御回路CNT1ではこの差が大きくなった場合には装置を停止させ、保護する。
交流電源Vsの極性が正の場合、IGBTS2bを逆回復させる場合はコンデンサC2の放電量が多いのでコンデンサC2の電圧が低くなるが、IGBTS3aを逆回復させる場合はコンデンサC1の放電量が多いのでコンデンサC1の電圧が低くなる。従って、逆回復させための電荷はほぼ同じとなる。IGBTS3aをオンした後IGBTS1aをオンさせるまでの時間、及びIGBTS1aをオフしてからIGBTS3aをオフさせるまでの時間を大きくすればコンデンサC2の電圧はC1の電圧より低下する。
【0027】
図3は交流電源Vsの極性が負の場合の動作例である。図3から判るように負荷LDの電流がIGBTS2aを介して還流しているモードでIGBTS3bをオンさせるとIGBTS2aがコンデンサC2の電圧で逆回復してオフとなると共に負荷LDにはコンデンサC2の電圧が印加される。次にIGBTS1bをオンさせるとIGBTS3bがコンデンサC1の電圧で逆回復してオフとなり、負荷LDにはコンデンサC1の電圧とC2の電圧の和(交流電源電圧)が印加される。この状態から、IGBTS1bをオフさせると、負荷LDにはコンデンサC2の電圧がIGBTS3bを介して供給される。次にIGBTS3bをオフし、IGBTS2aをオンさせると、負荷電流はIGBTS2aで還流し、負荷LDの電圧は零となる。
【0028】
これらの動作の結果、負荷LDに印加される電圧は図示のようにスイッチング過程で、一旦コンデンサC2の電圧を経由して電源電圧又は零電圧となる。IGBTS3bをオフした後IGBTS1bをオンさせるまでの時間、及びIGBTS1bをオフしてからIGBTS3bをオフさせるまでの時間を大きくすれば、コンデンサC1の電圧に比べてC2の電圧は低下する。また、負荷電圧は双方向スイッチ1と2のオンオフの比率を変えることにより調整できることは、従来と同様である。
【実施例2】
【0029】
図4に、本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例との違いは、コンデンサC1、C2と並列に中間タップ付変圧器BALの巻線が接続されている点である。
第1の実施例での説明のように、交流電源Vsの極性が正の場合、IGBTS3aをオンした後IGBTS1aをオンさせるまでの時間、及びIGBTS1aをオフしてからIGBTS3aをオフさせるまでの時間を大きくすればコンデンサC2の電圧はC1の電圧より低下する。また、交流電源Vsの極性が負の場合、IGBTS3bをオフした後IGBTS1bをオンさせるまでの時間、及びIGBTS1bをオフしてからIGBTS3bをオフさせるまでの時間を大きくすれば、コンデンサC1の電圧に比べてC2の電圧は低下する。
【0030】
このコンデンサC1の電圧とC2の電圧との電圧差が大きすぎると、本発明の目的である逆回復時の損失低減とノイズ低減の効果が低下してしまう。本実施例は、この課題を解決するための実施例である。中間タップ付の変圧器BALをコンデンサC1とC2との直列回路と並列接続し、中間タップとコンデンサ直列回路内部の直列接続点とを接続することにより、双方向スイッチの制御状態に影響されずに、各コンデンサ電圧を均等にすることができる。ここで、タップ位置を調整することにより、各双方向スイッチへの印加電圧の調整と発生損失の調整が可能となる。
【実施例3】
【0031】
図5に、本発明の第3の実施例を示す。交流電源Vsの電圧Viを昇圧して、交流電源電圧より高い電圧を負荷LDに供給する回路である。逆阻止形IGBTS4aとS4bを逆並列接続して構成した第4の双方向スイッチと逆阻止形IGBTS5aとS5bを逆並列接続して構成した第5の双方向スイッチとを直列接続した第2の双方向スイッチ直列回路と、コンデンサC3とC4を直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、負荷LDとが並列接続される。また、第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点と第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形IGBTS6aとS6bを逆並列接続して構成した第6の双方向スイッチを、第5の双方向スイッチと並列に交流電源VsとリアクトルL1を、各々接続する。コンデンサC3とC4の電圧は電圧検出器VD2を介して制御回路CNT2に入力される。
【0032】
この様な構成における動作を図6に示す。交流電源Vsの極性が正の場合の動作図である。IGBTS5aをオンすると、交流電源Vs→リアクトルL1→IGBTS5aの経路で電流が流れ、リアクトルL1にエネルギーが蓄積される。次にIGBTS5aをオフして、IGBTS6aをオンすると、リアクトルL1の電流はコンデンサC4に充電される。次にIGBT6aをオフしてIGBTS4bをオンするとリアクトルL1の電流は、IGBTS4b→コンデンサC3→コンデンサC4→交流電源Vs→リアクトルL1の経路でコンデンサC3とC4を充電する。次にIGBTS4bをオフしてIGBTS6aをオンするとコンデンサC4が充電される。
これらの動作の結果、第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点Uの電圧波形は負荷電圧の半分の電圧で段差を持った波形となる。
【0033】
交流電源Vsの極性が負の場合の動作も同様である。IGBTS5bをオンすると、交流電源Vs→IGBTS5b→リアクトルL1の経路で電流が流れ、リアクトルL1にエネルギーが蓄積される。次にIGBTS5bをオフして、IGBTS6bをオンすると、リアクトルL1の電流はコンデンサC4に充電される。次にIGBT6bをオフしてIGBTS4aをオンするとリアクトルL1の電流は、交流電源Vs→コンデンサC4→コンデンサC3→IGBTS4a→リアクトルL1の経路でコンデンサC4とC3を充電する。次にIGBTS4aをオフしてIGBTS6bをオンするとコンデンサC4が充電される。これらの動作の結果、第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点Uの電圧波形は図6の波形を負側に反転させた負荷電圧の半分の電圧で段差を持った波形となる。
【0034】
この構成においても、第2のコンデンサ直列回路と並列に中間タップ付の変圧器を接続し、コンデンサ直列回路内部の直列接続点と中間タップを接続することにより、コンデンサC3とC4の電圧をバランスさせることができる。電圧検出器VD2はコンデンサC3とC4の電圧アバランスを検出して制御回路CNT2に入力され、装置を保護する。その他の動作は、実施例1及び2と同様である。また、負荷電圧は双方向スイッチ4と5のオンオフの比率を変えることにより調整できることは、従来と同様である。
【実施例4】
【0035】
図7に、本発明の第4の実施例を示す。図1の降圧形交流チョッパ回路と図5の昇圧形交流チョッパ回路を組合せて、負荷に交流電源電圧より低い電圧から高い電圧まで広範囲の交流電圧を供給するようにしたものである。
降圧形交流チョッパ回路部は、逆阻止形IGBTS1aとS1bを逆並列接続した第1の双方向スイッチと、逆阻止形IGBTS2aとS2bを逆並列接続した第2の双方向スイッチとを直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路と、コンデンサC1とC2を直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、交流電源Vsとを並列接続し、双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点とコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形IGBTS3aとS3bを逆並列接続した第3の双方向スイッチを、接続し、第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点がリアクトルL1の一方の端子に接続される。
【0036】
昇圧形交流チョッパ回路部は、逆阻止形IGBTS4aとS4bを逆並列接続して構成した第4の双方向スイッチと逆阻止形IGBTS5aとS5bを逆並列接続して構成した第5の双方向スイッチとを直列接続した第2の双方向スイッチ直列回路と、コンデンサC3とC4を直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、負荷LDとが並列接続され、第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点と第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形IGBTS6aとS6bを逆並列接続して構成した第6の双方向スイッチを、接続し、第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点がリアクトルL1の他端に接続された構成である。第1のコンデンサ直列回路と並列に第1の中間タップ付変圧器を、第2のコンデンサ直列回路と並列に第2の中間タップ付変圧器を接続する構成は、第1〜第3の実施例と同様に適用できる。
【0037】
この様な構成において、降圧動作は、第4の双方向スイッチをオンさせた状態で、実施例1又は2と同様に双方向スイッチ1〜3をオンオフ制御させることより、負荷LDには交流電源電圧より低い交流電圧が供給される。また、昇圧動作は、第1の双方向スイッチをオンさせた状態で、双方向スイッチ4〜6を実施例3と同様にオンオフ制御することにより、交流電源電圧より高い交流電圧が負荷LDに供給される。
尚、上記実施例には双方向スイッチとして逆阻止形IGBTを逆並列接続した例を示したが、ダイオードと逆耐圧のないスイッチ素子を組合せた構成でも実現可能である。
また、出力電圧制御をベースに説明したが、電力制御でも同様に実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、交流電源電圧を降圧又は昇圧して負荷に供給する電源回路に関するものであり、交流電圧調整器(AVR)、交流電力調整器(APR)などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
Vs・・・交流電源 LD・・・負荷
Ci,Co、C1〜C4・・・コンデンサ L1・・・リアクトル
S1a、S1b、S2a、S2b、S3a、S3b・・・逆阻止形IGBT
S4a、S4b、S5a、S5b、S6a、S6b・・・逆阻止形IGBT
VD1、VD2・・・電圧検出器 CNT1、CNT2・・・制御回路
BAL・・・中間タップ付変圧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを2個直列接続したコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路と、を交流電源と並列に接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第3の双方向スイッチを、前記第1の双方向スイッチ又は前記第2の双方向スイッチと並列に負荷を、各々接続し、前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧の低い交流電圧を前記負荷に供給することを特徴とする交流電源装置。
【請求項2】
前記コンデンサ直列回路と中間タップ付変圧器巻線を並列接続し、前記中間タップと前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点とを接続することを特徴とする請求項1に記載の交流電源装置。
【請求項3】
前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御によりパルス列化するに際し、各パルスはコンデンサ直列回路の一方のコンデンサ電圧を出力する第1ステップ波形と前記コンデンサ直列回路全体の電圧を出力する第2ステップ波形との合成波形として出力する制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電源装置。
【請求項4】
コンデンサを2個直列接続したコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路とを負荷と並列に接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第3の双方向スイッチを、前記第1の双方向スイッチ又は前記第2の双方向スイッチと並列に交流電源とリアクトルとの直列回路を、各々接続し、前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が高い交流電圧を前記負荷に供給することを特徴とする交流電源装置。
【請求項5】
前記コンデンサ直列回路と中間タップ付変圧器巻線とを並列接続し、前記中間タップと前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点とを接続することを特徴とする請求項4に記載の交流電源装置。
【請求項6】
前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御により前記リアクトル電流を制御し、前記コンデンサ直列回路を電流パルスで充電し、前記交流電源の電圧よりも高い電圧を得るに際し、各電流パルスはコンデンサ直列回路の一方のコンデンサを充電する第1期間と前記コンデンサ直列回路全体を充電する第2期間とを備える制御手段とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の交流電源装置。
【請求項7】
コンデンサを2個直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、第1及び第2の双方向スイッチを2個直列接続した第1の双方向スイッチ直列回路と、交流電源とを並列に接続し、前記第1のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第3の双方向スイッチを接続した降圧形交流チョッパ回路と、コンデンサを2個直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、第4及び第5の双方向スイッチを2個直列接続した第2の双方向スイッチ直列回路とを負荷と並列に接続し、前記第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第6の双方向スイッチを接続した昇圧形交流チョッパ回路と、を備え、前記第1の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第2の双方向スイッチ直列回路内部の直列接続点との間にリアクトルを、第1の双方向スイッチ直列回路の一端と第2の双方向スイッチ直列回路の一端とを、各々接続し、前記降圧形交流チョッパ回路の動作により前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が前記交流電源より低い交流電圧を負荷に供給し、前記昇圧形交流チョッパ回路の動作により前記交流電源と基本波周波数が等しく且つ電圧が前記交流電源より高い交流電圧を前記負荷に供給することを特徴とする交流電源装置。
【請求項8】
前記第1のコンデンサ直列回路と第1の中間タップ付変圧器巻線とを、前記第2のコンデンサ直列回路と第2の中間タップ付変圧器巻線とを、各々並列接続し、前記第1の中間タップ付変圧器巻線の中間タップと前記第1のコンデンサ直列回路内部の直列接続点とを、前記第2の中間タップ付変圧器巻線の中間タップと前記第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点とを、各々接続することを特徴とする請求項7に記載の交流電源装置。
【請求項9】
前記第1〜第3の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御によりパルス列化するに際し、各パルスは第1のコンデンサ直列回路の一方のコンデンサ電圧を出力する第1ステップ波形と前記第1のコンデンサ直列回路全体の電圧を出力する第2ステップ波形との合成波形として出力する第1の制御手段を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の交流電源装置。
【請求項10】
前記第4〜第6の双方向スイッチをオンオフ制御し、交流電源の各半サイクル期間を高周波PWM制御により前記リアクトル電流を制御し、前記第2のコンデンサ直列回路を電流パルスで充電し、前記交流電源の電圧よりも高い電圧を得るに際し、各電流パルスは第2のコンデンサ直列回路の一方のコンデンサを充電する第1期間と前記コンデンサ直列回路全体を充電する第2期間とを有する第2の制御手段を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の交流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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