説明

交通信号制御システム及び交通信号制御装置

【課題】 交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる交通信号制御システム等を提供する。
【解決手段】 交通信号制御装置1は、車両感知器3の感知器情報と、時刻情報とに基づいて制御方法選択処理を実行し、道路区間RSEC1を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御か、道路区間RSEC1を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御のうちの、いずれか一方の制御方法を選択する。円滑制御を選択した場合には、道路区間RSEC1において、いわゆる系統制御を行うための円滑制御用信号制御パラメータSPM1を設定する。一方、速度抑制制御を選択した場合には、速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状況が混雑である時間帯と閑散である時間帯の双方において適切な信号制御を行うことができる交通信号制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号制御システムでは、近接する5交差点程度を一括りのサブエリアとして、同じサブエリア内の交通信号制御機は同一のサイクル長(信号現示が一巡するのに要する時間)で動作させ、当該サブエリア内の交通信号制御機が青信号を表示している時間帯にこれらの交通信号制御機が設置された全ての交差点を、できるだけ多くの車両が通過できるように、交通信号制御機間の青信号の開始時刻に適切なオフセットを持たせる系統制御を行うのが一般的である(特許文献1)。
【0003】
例えば、図1のように道路R1上に連続して存在する交差点ISA、交差点ISB、交差点ISC、交差点ISD、交差点ISE、交差点ISFを1つのサブエリアとして、各交差点に設置される交通信号制御機2A、交通信号制御機2B、交通信号制御機2C、交通信号制御機2D、交通信号制御機2E、交通信号制御機2Fにおいて系統制御を行う場合、図3(a)のように、横軸には交差点間の距離に応じて配置した交通信号制御機をとり、縦軸には時間をとったオフセット図において、下り方向(交差点ISAから交差点ISFに向かう方向を下り方向とする)及び上り方向(交差点ISFから交差点ISAに向かう方向を上り方向とする)の交通量が円滑になるように、各交通信号制御機の青信号(図3(a)の空白部分)の開始時刻にオフセットを与えて、下り方向のスルーバンド(下り方向に進行する車両が、6つの交差点を信号待ち時間なしで通過できる時間帯)及び上り方向のスルーバンド(上り方向に進行する車両が、6つの交差点を信号待ち時間なしで通過できる時間帯)を確保することができる。
【0004】
このように、進行方向毎の交通量や平均走行速度等に応じて、各サブエリア内の交差点間のオフセット等の信号制御パラメータを適宜決定することにより、交通流を円滑化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−079327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、夜間などの交通状況が閑散となっている時間帯において上述の系統制御を行った場合、車両が高速で道路区間を通過できるようになる可能性があり、交通事故の危険性が高まるおそれがあった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる交通信号制御システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の交通信号制御システムは、信号灯器が設置された交差点を複数含む道路区間における交通を制御する交通信号制御システムであって、前記道路区間を走行する車両の交通状況に関する交通状況情報を取得する交通状況取得手段と、前記交通状況情報に基づいて、前記道路区間を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御と、前記道路区間を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御とを含む複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する選択手段と、前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する信号制御手段とを備え、前記信号制御手段は、前記選択手段により選択した制御方法に基づいて制御するように構成されている(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、交通状況に応じて、例えば、高速で走行する車両の割合が小さい場合は、車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御、車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御とを含む複数の制御方法のうち、前記円滑制御を選択し、高速で走行する車両の割合が大きくなってくると、前記複数の制御方法のうち、前記速度抑制制御を選択することができるので、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
【0010】
前記交通状況情報には、前記道路区間を走行する車両の速度に関する速度情報が含まれ、前記選択手段は、前記速度情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されていることが好ましい(請求項2)。
【0011】
例えば、前記速度情報には、前記道路区間を走行した全車両の台数に対する、速度が第1閾値以上となった車両の台数の割合が含まれ、前記選択手段は、前記割合が第2閾値を超えた場合に前記速度抑制制御を選択するように構成されていれば(請求項3)、高速で走行する車両の割合が大きい場合に、前記速度抑制制御を選択することにより、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
【0012】
また、前記交通状況情報には、前記道路区間を走行する車両の交通量に関する交通量情報が含まれ、前記選択手段は、前記交通量情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
例えば、道路区間の交通量が少ない場合に、前記速度抑制制御を選択することにより、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
また、速度情報だけでなく、交通量情報も考慮して、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択すれば、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減の両立をより一層図ることができる。
【0014】
また、前記交通状況情報には、前記道路区間の渋滞状況に関する渋滞状況情報が含まれ、前記選択手段は、前記渋滞状況情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されていることが好ましい(請求項5)。
【0015】
例えば、道路区間の渋滞度(空き、混雑、渋滞)が空きとなっている場合や、道路区間の旅行時間が短い場合に、前記速度抑制制御を選択することにより、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
また、速度情報だけでなく、渋滞度や旅行時間などの渋滞状況に関する渋滞状況情報も考慮して、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択すれば、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減の両立をより一層図ることができる。
【0016】
また、前記選択手段は、所定の時間帯において、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されていることが好ましい(請求項6)。
【0017】
例えば、運転者の視野が狭くなり、高速走行をすると交通事故の可能性が増える夜間において、高速で走行する車両の割合に応じて、前記円滑制御と前記速度抑制制御とを含む複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択することにより、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減の両立を効果的に実現することができる。
【0018】
また、前記選択手段が前記速度抑制制御を選択した場合、前記信号制御手段は、所定時間以上、前記速度抑制制御に基づいて制御するように構成されていることが好ましい(請求項7)。
【0019】
これにより、前記速度抑制制御とその他の制御方法とが頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0020】
また、本発明の選択手段により選択した制御方法に基づいて、前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する複数の交通信号制御機のそれぞれに対する信号制御指令情報を作成する制御指令作成手段を備える交通信号制御装置(請求項8)は、交通信号制御システムにとって有用である。
【0021】
前記交通信号制御装置の前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記速度抑制性制御を選択した場合、車両が前記道路区間に含まれる重要交差点又は重要交差点の手前の一般交差点で停止するように信号制御パラメータを設定し、この信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成することが好ましい(請求項9)。
これにより、前記速度抑制性制御を有効に行うことができる。
【0022】
また、前記交通信号制御装置の前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記速度抑制制御を選択した場合、以下の条件(1)、(2)の少なくとも1つを満たす信号制御パラメータを設定し、この信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成しても良い(請求項10)。
(1)前記道路区間に含まれる一の交差点を青信号開始と同時に出発した車両が高速で走行すると、当該一の交差点に隣接する交差点で赤信号で停止する。
(2)車両が低速で走行すると、前記道路区間に含まれる一般交差点は青信号で通過できても、前記道路区間に含まれる重要交差点は赤信号で停止する。
これにより、前記速度抑制制御を有効に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る交通信号制御システムの概要を示す模式図である。
【図2】交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】円滑制御用信号制御パラメータSPM1の具体例を説明するための図である。
【図4】速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2の具体例を説明するための図である。
【図5】制御方法選択処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明に係る交通信号制御システムの概要を示す模式図である。交通信号制御システムは、交通信号制御装置1、交通信号制御機2、車両感知器3などを含む。
交通信号制御装置1は、交通管制センター内に設置されており、各交差点IS(図1では、交差点ISA、ISB、ISC、ISD、ISE、ISF)に設置された交通信号制御機2(図1では、交通信号制御機2A、2B、2C、2D、2E、2F)と電話回線などの通信回線で接続されている。なお、交通信号制御装置1は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。
また、交通信号制御装置1は、道路R1の下り方向(交差点ISAから交差点ISFに向かう方向)の各交差点間と、道路R1の上り方向(交差点ISFから交差点ISAに向かう方向)の各交差点間に設置された車両感知器3(図1では、車両感知器3AB、3BC、3CD、3DE、3EF、3FE、3ED、3DC、3CB、3BA)と電話回線などの通信回線で接続されている。
【0027】
ここで、道路R1のうち交差点ISAから交差点ISFまでの区間を、以下、道路区間RSEC1と呼ぶことにする。
道路区間RSEC1に含まれる交差点ISA乃至ISFのうち、交差点ISA、交差点ISDは重要交差点であり、交差点ISB、交差点ISC、交差点ISE、交差点ISFは一般交差点である。
重要交差点、一般交差点の各用語の定義は下記の通りである。
・ 重要交差点:普段から負荷率が大きくボトルネックになることが多い交差点のことを重要交差点といい、一般に、幹線・準幹線道路相互の交差点がこれに該当する。
・ 一般交差点:重要交差点に比べて従道路の交通需要が少なく、例えば単に横断歩行者の青時間を確保すればよいような交差点のことを一般交差点という。
【0028】
〔車両感知器3〕
車両感知器3は、画像式車両感知器などであって、感知エリア(不図示)内を通過する車両の速度と台数(交通量)を測定し、その結果を所定の周期毎に交通信号制御装置1に送信する。
【0029】
〔交通信号制御機2〕
交通信号制御機2は、交通信号制御装置1から後述する信号制御指令情報を受信し、この信号制御指令情報に基づいて交差点に設置された信号灯器(不図示)の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
【0030】
〔交通信号制御装置1〕
図2は交通情報算出装置の構成を示すブロック図である。交通情報算出装置1は、演算部101、記憶部102、送受信部103、時計部104などを備える。
演算部101は、1又は複数のコンピュータから構成されており、装置全体の制御を行う。また、演算部101は、後述する制御方法選択処理などの各種の演算処理を行う。これらの各種の演算処理は、CD−ROMやハードディスクなどの所定の記憶媒体に記録されたコンピュータプログラムを、演算部101のコンピュータが実行することにより行われる。
【0031】
記憶部102は、演算部101による各種の演算処理の結果や、送受信部103が受信した感知器情報などの各種情報などを記憶する。
送受信部103は、車両感知器3から感知器情報などを受信する。
また、送受信部103は、信号制御パラメータを含む信号制御指令情報を交通信号制御機2に送信する。
時計部104は、時刻情報を取得する。
【0032】
演算部101は、送受信部103が受信した車両感知器3の感知器情報と、時計部104が取得した時刻情報に基づいて、後述する制御方法選択処理を実行し、道路区間RSEC1を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御か、道路区間RSEC1を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御のうちの、いずれか一方の制御方法を選択する。
【0033】
演算部101は、円滑制御を選択した場合には、道路区間RSEC1において、いわゆる系統制御を行うための円滑制御用信号制御パラメータSPM1を設定する。系統制御とは、幹線道路に沿って設置された幾つかの交通信号制御機を信号制御の単位として扱い、互いに一定の時間関係をもたせて制御する方式である。
一方、演算部101は、速度抑制制御を選択した場合には、以下の条件(1)、(2)を満たすような速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2を設定する。
・ 条件(1):交差点を青信号開始と同時に出発した車両が高速(例えば、60km/h)で走行すると、隣接する交差点で赤信号で停止する。
・ 条件(2):車両が低速(例えば、40km/h)で走行すると、一般交差点は青信号で通過できても、重要交差点は赤信号で停止する。
【0034】
円滑制御用信号制御パラメータSPM1、速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2のいずれにも、サイクル長、スプリット、オフセット等が含まれている。サイクル長、スプリット、オフセットの各用語の定義は下記の通りである。
・ サイクル長:信号灯色の表示が一巡することを1サイクルといい、1サイクルの所要時間をサイクル長という。
・ スプリット:交差点の各流入路に対して与えられる通行権を現示といい、1サイクルに占める各現示の時間比率をスプリットという。
・ オフセット:系統制御において、各交通信号機制御機の1サイクルの開始時点にもたせるずれをオフセットという。
【0035】
そして、演算部101は、円滑制御用信号制御パラメータSPM1又は速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2を含む信号制御指令情報を道路区間RSEC1の各交差点ISA乃至ISFに設置された各交通信号制御機2A乃至2Fに、送受信部103を介して送信する。
【0036】
図3は円滑制御用信号制御パラメータSPM1の具体例を説明するための図である。
図3(b)は各交差点間の距離を示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISA−交差点ISB間の距離:400m
・ 交差点ISB−交差点ISC間の距離:300m
・ 交差点ISC−交差点ISD間の距離:400m
・ 交差点ISD−交差点ISE間の距離:300m
・ 交差点ISE−交差点ISF間の距離:400m
【0037】
また、図3(c)は各交差点間の相対オフセットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISAに対する交差点ISBの相対オフセット:−10秒(交差点ISBの青信号の開始時刻は交差点ISAの青信号の開始時刻よりも10秒早い)
・ 交差点ISBに対する交差点ISCの相対オフセット:50秒(交差点ISCの青信号の開始時刻は交差点ISBの青信号の開始時刻よりも50秒遅い)
・ 交差点ISCに対する交差点ISDの相対オフセット:10秒
・ 交差点ISDに対する交差点ISEの相対オフセット:−20秒
・ 交差点ISEに対する交差点ISFの相対オフセット:−22秒
【0038】
また、図3(d)は各交差点の種別(重要交差点か一般交差点か)を示している。
また、図3(e)は各交差点の絶対オフセットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISA:10秒
・ 交差点ISB: 0秒
・ 交差点ISC:50秒
・ 交差点ISD:60秒
・ 交差点ISE:40秒
・ 交差点ISF:18秒
【0039】
また、図3(f)は各交差点のサイクル長を示しており、いずれも100秒となっている。
また、図3(g)は各交差点のスプリットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISAの現示1(道路R1への通行権) :40%
・ 交差点ISAの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISAの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :40%
・ 交差点ISAの現示4(道路R1の交差側道路の右折車両への通行権):10%
・ 交差点ISBの現示1(道路R1への通行権) :70%
・ 交差点ISBの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
・ 交差点ISCの現示1(道路R1への通行権) :70%
・ 交差点ISCの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
・ 交差点ISDの現示1(道路R1への通行権) :40%
・ 交差点ISDの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISDの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :40%
・ 交差点ISDの現示4(道路R1の交差側道路の右折車両への通行権):10%
・ 交差点ISEの現示1(道路R1への通行権) :70%
・ 交差点ISEの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
・ 交差点ISFの現示1(道路R1への通行権) :60%
・ 交差点ISFの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISFの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
【0040】
以上の図3(c)、(e)、(f)、(g)に示す信号制御パラメータは、車両が道路区間RSEC1を速度60km/hで走行すると停止回数が少なくなるように設定されている。これを図3(a)で確認する。
【0041】
図3(a)は、同図(c)、(e)、(f)、(g)に示す信号制御パラメータに基づいて、各交差点の青信号時間と赤信号時間を記載したオフセット図である。
図3(a)では、横軸に、道路R1上の交差点ISAよりも西へ(交差点ISFから交差点ISAへの向き)所定距離の地点を原点としたときの道路R1上に沿って東へ(交差点ISAから交差点ISFへの向き)移動した距離[m]をとり、縦軸に、任意の時刻を原点としたときの時間[s]をとっており、横軸には、交差点間の距離に応じて交通信号制御機2A乃至2Fを配置している。
図3(a)において、縦軸に沿った実線が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する赤時間を示しており、この実線と隣接する縦軸に沿った実線の間の空白部分が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する青時間を示している。
【0042】
また、斜めの実線SBD1と斜めの実線SBD2の間の領域は下り方向のスルーバンドであり、下り方向に進行する車両が交差点ISA乃至交差点ISFを信号待ち時間なしで通過できる時間帯である。
斜めの実線SBU1と斜めの実線SBU2の間の領域は上り方向のスルーバンドであり、上り方向に進行する車両が交差点ISF乃至交差点ISAを信号待ち時間なしで通過できる時間帯である。
なお、これらの実線SBD1、SBD2、SBU1、SBU2の傾きは速度を表しており、いずれも60km/hである。
【0043】
図3(a)のオフセット図においては、道路区間RSEC1のすべてにわたるスルーバンドが上り方向にも下り方向にも確保されている。
従って、道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両は、交差点ISA乃至交差点ISFのすべてを青信号で通過することができ、道路区間RSEC1を上り方向に走行する車両は、交差点ISF乃至交差点ISAのすべてを青信号で通過することができる。
【0044】
一方、図4は速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2の具体例を説明するための図である。
図4(b)は各交差点間の距離を示しており、図3(b)と同じである。
【0045】
また、図4(c)は各交差点間の相対オフセットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISAに対する交差点ISBの相対オフセット:35秒(交差点ISBの青信号の開始時刻は交差点ISAの青信号の開始時刻よりも35秒遅い)
・ 交差点ISBに対する交差点ISCの相対オフセット:27秒
・ 交差点ISCに対する交差点ISDの相対オフセット:65秒
・ 交差点ISDに対する交差点ISEの相対オフセット:28秒
・ 交差点ISEに対する交差点ISFの相対オフセット:−35秒(交差点ISFの青信号の開始時刻は交差点ISEの青信号の開始時刻よりも35秒早い)
【0046】
また、図4(d)は各交差点の種別を示しており、図3(d)と同じである。
また、図4(e)は各交差点の絶対オフセットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISA:10秒
・ 交差点ISB:45秒
・ 交差点ISC:72秒
・ 交差点ISD:37秒
・ 交差点ISE:65秒
・ 交差点ISF:30秒
【0047】
また、図4(f)は各交差点のサイクル長を示しており、各交差点のサイクル長はいずれも100秒となっている。
【0048】
また、図4(g)は各交差点のスプリットを示しており、次のようになっている。
・ 交差点ISAの現示1(道路R1への通行権) :30%
・ 交差点ISAの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISAの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :50%
・ 交差点ISAの現示4(道路R1の交差側道路の右折車両への通行権):10%
・ 交差点ISBの現示1(道路R1への通行権) :30%
・ 交差点ISBの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :70%
・ 交差点ISCの現示1(道路R1への通行権) :70%
・ 交差点ISCの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
・ 交差点ISDの現示1(道路R1への通行権) :30%
・ 交差点ISDの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISDの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :50%
・ 交差点ISDの現示4(道路R1の交差側道路の右折車両への通行権):10%
・ 交差点ISEの現示1(道路R1への通行権) :70%
・ 交差点ISEの現示2(道路R1の交差側道路への通行権) :30%
・ 交差点ISFの現示1(道路R1への通行権) :50%
・ 交差点ISFの現示2(道路R1の右折車両への通行権) :10%
・ 交差点ISFの現示3(道路R1の交差側道路への通行権) :40%
【0049】
重要交差点の交差点ISA、交差点ISDについては、道路R1を走行する車両が停止しやすいように、道路R1に対するスプリット(現示1と現示2のスプリットの合計)は40%と、道路R1の交差側道路に対するスプリット(現示3と現示4のスプリットの合計)60%よりも小さくなるように設定されている。
また、一般交差点の交差点ISBについては、隣の交差点ISCを青信号で通過した車両がこの交差点ISBも青信号で通過することを抑止するために、道路R1に対するスプリット(現示1のスプリット)は30%と、道路R1の交差側道路に対するスプリット(現示2のスプリット)70%よりも小さくなるように設定されている。
また、一般交差点の交差点ISFについては、隣の交差点ISEを青信号で通過した車両がこの交差点ISFも青信号で通過することを抑止するために、道路R1に対するスプリット(現示1と現示2のスプリットの合計)は60%と、道路R1の交差側道路に対するスプリット(現示3のスプリット)40%との差が小さくなるように設定されている。
【0050】
以上の図4(c)、(e)、(f)、(g)に示す信号制御パラメータは、以下の条件(1A)、(2A)を満たすように設定されている。
・ 条件(1A):交差点を青信号開始と同時に出発した車両が60km/hで走行すると、必ず隣接する交差点で赤信号で停止する。
・ 条件(2A):車両が40km/hで走行すると、一般交差点は青信号で通過できるが、重要交差点は赤信号で停止する。
なお、これらの信号制御パラメータは、車両が40km/h未満で走行することを前提として設定されていない。仮に車両が40km/h未満で走行して、道路区間RSEC1を赤信号で停止せずに通過できたとしても、車両が高速(60km/h)で走行することを抑制するという目的の達成には影響しないためである。
これを図4(a)で確認する。
【0051】
図4(a)は、同図(c)、(e)、(f)、(g)に示す信号制御パラメータに基づいて、各交差点の青信号時間と赤信号時間を記載したオフセット図である。
図4(a)では、図3(a)と同様、横軸に、道路R1上の交差点ISAよりも西へ(交差点ISFから交差点ISAへの向き)所定距離の地点を原点としたときの道路R1上に沿って東へ(交差点ISAから交差点ISFへの向き)移動した距離[m]をとり、縦軸に、任意の時刻を原点としたときの時間[s]をとっており、横軸には、交差点間の距離に応じて交通信号制御機2A乃至2Fを配置している。
【0052】
図4(a)において、図3(a)と同様、縦軸に沿った実線が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する赤時間を示しており、この実線と隣接する縦軸に沿った実線の間の空白部分が各交通信号制御機2A乃至2Fにおける道路R1の車両に対する青時間を示している。
【0053】
図4(a)における点線TR1乃至TR10は各交差点を青信号の開始と同時に出発した車両が60km/hで走行した場合の軌跡を表している。
まず、道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両に注目する。
交差点ISAを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISBで赤信号で停止する(軌跡TR1)。
交差点ISBを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISCで赤信号で停止する(軌跡TR2)
交差点ISCを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISDで赤信号で停止する(軌跡TR3)
交差点ISDを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISEで赤信号で停止する(軌跡TR4)
交差点ISEを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISFで赤信号で停止する(軌跡TR5)
以上のように、道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両は、交差点を青信号開始と同時に出発して60km/hで走行すると、必ず隣接する交差点で赤信号で停止する。
【0054】
次に、道路区間RSEC1を上り方向に走行する車両に注目する。
交差点ISFを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISEで赤信号で停止する(軌跡TR6)。
交差点ISEを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISDで赤信号で停止する(軌跡TR7)
交差点ISDを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISCで赤信号で停止する(軌跡TR8)
交差点ISCを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISBで赤信号で停止する(軌跡TR9)
交差点ISBを青信号の開始と同時に出発した車両は、60km/hで走行すると、隣接する交差点ISAで赤信号で停止する(軌跡TR10)
以上のように、道路区間RSEC1を上り方向に走行する車両は、交差点を青信号開始と同時に出発して60km/hで走行すると、必ず隣接する交差点で赤信号で停止する。
よって、条件(1A)を満たしている。
【0055】
また、斜めの実線SBD11と斜めの実線SBD12の間の領域、斜めの実線SBD13と斜めの実線SBD14の間の領域は、それぞれ下り方向のスルーバンドである。
また、斜めの実線SBU11と斜めの実線SBU12の間の領域、斜めの実線SBU13と斜めの実線SBU14の間の領域、斜めの実線SBU15と斜めの実線SBU16の間の領域は、それぞれ上り方向のスルーバンドである。
なお、これらの実線SBD11、SBD12、SBD13、SBD14、SBU11、SBU12、SBU13、SBU14、SBU15、SBU16の傾きは速度を表しており、いずれも40km/hである。
【0056】
図4(a)のオフセット図では、道路区間RSEC1のすべてにわたるスルーバンドが下り方向と上り方向のいずれにも確保されておらず、下り方向のスルーバンドは交差点ISDで途切れ、上り方向のスルーバンドは交差点ISBと交差点ISDで途切れている。
道路区間RSEC1を下り方向に走行する車両は、一般交差点ISBと一般交差点ISCは青信号で通過することができるが、重要交差点ISDは赤信号で停止する。また、道路区間RSEC1を上り方向に走行する車両は、一般交差点ISEを青信号で通過できるが、重要交差点ISDは赤信号で停止し、一般交差点ISCは青信号で通過できるが、重要交差点ISAは赤信号で停止する。従って、上記条件(2A)を満たしている。
【0057】
以下、交通信号制御装置1の演算部101が行う制御方法選択処理について説明する。
図5は、制御方法選択処理の手順を示すフローチャートである。演算部101は、制御選択処理を所定の周期(例えば、5分間)毎に実行する。
【0058】
まず、交通信号制御装置1の演算部101は、交通信号制御装置1の時計部104が示す時刻が所定の時間帯(例えば、夜間の22:00から翌日の5:00までの時間帯)に含まれているか否かを判定する(ステップS01)。
所定の時間帯に含まれていないと判定した場合には(ステップS01においてNO)、演算部101はステップS11以降の処理を実行する。
【0059】
一方、所定の時間帯に含まれていると判定した場合には(ステップS01においてYES)、演算部101は、直近の5分間における各車両感知器3からの感知器情報を解析し、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向において、予め設定した速度閾値(例えば、60km/h)を超えた車両の割合を算出する(ステップS02)。
例えば、交差点ISAと交差点ISBの下り方向においては、車両感知器3ABから収集した感知器情報に含まれる交通量と各車両の速度に基づいて、上記閾値速度を超えた車両の台数を交通量で除することで、上記閾値速度を超えた車両の割合を算出する。
【0060】
次に、演算部101は、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についてステップS02で算出した割合のうち、少なくとも1つが予め設定した割合閾値(例えば、10%)以上となるか否かを判定する(ステップS03)。
少なくとも1つが上記割合閾値以上になると判定した場合には(ステップS03においてYES)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、当該道路区間を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御を選択する(ステップS04)。
一方、少なくとも1つが上記割合閾値以上にならないと判定した場合、すなわち、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についてステップS02で算出した割合のすべてが上記割合閾値未満になると判定した場合には(ステップS03においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、当該道路区間を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御を選択する(ステップS12)。
【0061】
また、演算部101は、速度抑制制御を時間閾値(例えば、30分)以上継続しているか否かを判定する(ステップS11)。
速度抑制制御を時間閾値以上継続していると判定した場合には(ステップS11においてYES)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、当該道路区間を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御を選択する(ステップS12)。
一方、速度抑制制御を時間閾値以上継続していないと判定した場合には(ステップS11においてNO)、演算部101は、道路区間RSEC1の交通の制御方法として、当該道路区間を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御を選択する(ステップS04)。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、交通信号制御装置1は、道路区間RSEC1を走行する車両の速度情報を取得して、高速で走行する車両の割合を算出し、この割合に応じて、道路区間RSEC1を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御と、前記道路区間を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御のうち、いずれか一方の制御方法を選択する。そして、選択した制御方法に対応する信号制御パラメータを設定し、これに基づく信号制御指令情報を作成し、道路区間RSEC1に設置された交通信号制御機2A乃至2Fに送信する。
【0063】
これにより、高速で走行する車両の割合が小さい間は、車両が円滑に走行するように交通を制御し、高速で走行する車両の割合が大きくなってくると、車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御することができるので、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減を両立すべく適切な信号制御を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、運転者の視野が狭くなり、高速走行をすると交通事故の可能性が増える夜間などの所定の時間帯においては、高速で走行する車両の割合に応じて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択することにより、交通事故の発生を低減し、前記所定の時間帯以外の通常時においては、前記円滑制御を選択することにより、交通渋滞の発生を低減するので、交通状況に応じた最適な交通の制御を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、交通信号制御装置1は、前記速度抑制制御を選択すると、その後に高速で走行する車両の割合が小さくなっても、前記速度抑制制御を所定時間以上継続してからしか、前記円滑制御を選択しないようにしているので、前記円滑制御と前記速度抑制制御とが頻繁に切り替わることに起因した運転者の混乱を防止することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、交通信号制御装置1は、前記速度抑制制御を選択すると、以下の条件(1)、(2)を満たすような速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2を設定し、これに基づく信号制御指令情報を作成する。
・ 条件(1):交差点を青信号開始と同時に出発した車両が高速で走行すると、隣接する交差点で赤信号で停止する。
・ 条件(2):車両が低速で走行すると、一般交差点は青信号で通過できても、重要交差点は赤信号で停止する。
これにより、前記速度抑制制御を有効に行うことができる。
【0067】
上述の実施形態においては、夜間などの所定の時間帯において、高速で走行する車両の割合が割合閾値以上となった場合には、前記速度抑制制御を選択する構成であったが、これに限定されない。例えば、前記所定の時間帯において、高速で走行する車両の割合が割合閾値以上となっても、道路区間RSEC1を走行する車両の交通量が交通量閾値(例えば、1車線当たりの15分間の交通量が150台)以上であれば、前記速度抑制制御を選択せず、前記円滑制御を選択する構成としても良い。これにより、交通渋滞の発生の低減と交通事故の発生の低減の両立をより一層図ることができる。なお、道路区間RSEC1を走行する車両の交通量が交通量閾値以上か否かを判定する代わりに、道路区間RSEC1の渋滞度が混雑以上か否か(すなわち、平均速度が10km/h以下か否か)を判定しても良いし、道路区間RSEC1を走行する車両の旅行時間の代表値(例えば、平均値、中央値など)が旅行時間閾値(例えば、10分)以上か否かを判定しても良いし、これらを組み合わせて判定する構成であっても良い。
【0068】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1を走行する車両の速度情報に基づいて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方を選択する構成であったが、これに限定されない。
道路区間RSEC1を走行する車両の交通量に関する交通量情報に基づいて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方を選択する構成であっても良いし、道路区間RSEC1の渋滞状況に関する渋滞状況情報に基づいて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方を選択する構成であっても良い。
例えば、道路区間RSEC1を走行する車両の交通量が交通量閾値(例えば、1車線当たりの15分間の交通量が15台)未満であれば、前記速度抑制制御を選択する構成としても良い。
また、道路区間RSEC1の渋滞度が空きである、あるいは、道路区間RSEC1を走行する車両の旅行時間の代表値が旅行時間閾値(例えば、5分)未満であれば、前記速度抑制制御を選択する構成としても良い。
【0069】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の下り方向と上り方向の両方について、前記速度抑制制御を行う構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1の下り方向と上り方向のうちのいずれか一方についてのみ、前記速度抑制制御を行う構成であっても良い。
【0070】
また、上述の実施形態においては、前記速度抑制制御を選択した場合には、上記の条件(1)、(2)を満たすような信号制御パラメータを設定する構成であったが、これに限定されず、上記の条件(1)、(2)のいずれか一方を満たすような信号制御パラメータを設定する構成であっても良い。あるいは、前記速度抑制制御を選択した場合には、車両が道路区間RSEC1に含まれる重要交差点(図1の交差点ISAと交差点ISD)又は重要交差点の手前の一般交差点(下り方向の場合は図1の交差点ISC、上り方向の場合は図1の交差点ISEと交差点ISB)で停止するように信号制御パラメータを設定する構成であっても良い。
【0071】
また、上述の実施形態においては、交通信号制御装置1は、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限定されず、この2つの制御方法とさらに他の制御方法とを含む3つ以上の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する構成であっても良い。
【0072】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の全ての交差点間の下り方向及び上り方向に車両感知器3が設置される構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1の上り方向の各交差点間のうちの1又は複数に車両感知器3が設置され、道路区間RSEC1の下り方向の各交差点間のうちの1又は複数に車両感知器3が設置される構成であっても良い。また、道路R1上の上り方向の道路区間RSEC1の上流側の地点、すなわち、交差点ISAの西側の地点に車両感知器3が設置され、道路R1上の下り方向の道路区間RSEC1の上流側の地点、すなわち、交差点ISFの東側の地点に車両感知器3が設置される構成であっても良い。
【0073】
また、上述の実施形態においては、道路区間RSEC1の各交差点間の下り方向及び上り方向についての上記速度閾値を超えた車両の割合のうち、少なくとも1つが上記割合閾値以上と判定した場合に、速度抑制制御を選択する構成であったが、これに限定されず、所定数(例えば、3つ)以上が上記割合閾値以上と判定した場合に、速度抑制制御を選択する構成であっても良いし、全てが上記割合閾値以上と判定した場合に、速度抑制制御を選択する構成であっても良い。
【0074】
また、上述の実施形態においては、交通信号制御装置1が車両感知器3から収集した感知器情報に基づいて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であったが、これに限定されず、道路区間RSEC1に設置された交通信号制御機2A乃至2Fが連携して、車両感知器3から収集した感知器情報に基づいて、前記円滑制御と前記速度抑制制御のうちのいずれか一方の制御方法を選択する構成であっても良い。これにより、交通信号制御装置1によらず、交通信号制御機2だけで交通事故の発生の低減と交通渋滞の発生の低減を両立することができる。
【0075】
また、上述の実施形態においては、前記速度抑制制御を選択した場合には、これに応じた速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2を設定し、これに基づく信号制御指令を作成して、交通信号制御機2に送信する構成であったが、これに限定されず、さらに前記速度抑制制御を行っている旨の情報を道路区間RSEC1に設置された交通情報板や光ビーコンを通じて運転者に報知する構成であってもよい。
【0076】
また、上述の実施形態においては、速度抑制制御用信号制御パラメータSPM2は、円滑制御用信号制御パラメータSPM1に対して、オフセットとスプリットとを変更する構成であったが、これに限定されず、さらにサイクル長を変更する構成であってもよいし、オフセット、スプリット、サイクル長の少なくとも1つを変更する構成であってもよい。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 交通信号制御装置、 101 演算部、 102 記憶部、 103 送受信部、 104 時計部
2、2A、2B、2C、2D、2E、2F 交通信号制御機
3、3AB、3BC、3CD、3DE、3EF、3FE、3ED、3DC、3CB、3BA 車両感知器
IS、ISA、ISB、ISC、ISD、ISE、ISF 交差点
R1 道路、 RSEC1 道路区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器が設置された交差点を複数含む道路区間における交通を制御する交通信号制御システムであって、
前記道路区間を走行する車両の交通状況に関する交通状況情報を取得する交通状況取得手段と、
前記交通状況情報に基づいて、前記道路区間を車両が円滑に走行するように交通を制御する円滑制御と、前記道路区間を車両が高速で走行することを抑制するように交通を制御する速度抑制制御とを含む複数の制御方法のうち、いずれか1つの制御方法を選択する選択手段と、
前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する信号制御手段とを備え、
前記信号制御手段は、前記選択手段により選択した制御方法に基づいて制御するように構成されている、交通信号制御システム。
【請求項2】
前記交通状況情報には、前記道路区間を走行する車両の速度に関する速度情報が含まれ、
前記選択手段は、前記速度情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されている、
請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記速度情報には、前記道路区間を走行した全車両の台数に対する、速度が第1閾値以上となった車両の台数の割合が含まれ、
前記選択手段は、前記割合が第2閾値を超えた場合に前記速度抑制制御を選択するように構成されている、
請求項2に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
前記交通状況情報には、前記道路区間を走行する車両の交通量に関する交通量情報が含まれ、
前記選択手段は、前記交通量情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されている、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の交通信号制御システム。
【請求項5】
前記交通状況情報には、前記道路区間の渋滞状況に関する渋滞状況情報が含まれ、
前記選択手段は、前記渋滞状況情報に基づいて、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されている、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の交通信号制御システム。
【請求項6】
前記選択手段は、所定の時間帯において、前記複数の制御方法のうちのいずれか1つの制御方法を選択するように構成されている、
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の交通信号制御システム。
【請求項7】
前記選択手段が前記速度抑制制御を選択した場合、前記信号制御手段は、所定時間以上、前記速度抑制制御に基づいて制御するように構成されている、
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の交通信号制御システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の交通信号制御システムに用いられ、前記選択手段を備えた交通信号制御装置であって、
前記選択手段により選択した制御方法に基づいて、前記複数の交差点に設置された信号灯器を制御する複数の交通信号制御機のそれぞれに対する信号制御指令情報を作成する制御指令作成手段を備える、
交通信号制御装置。
【請求項9】
前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記速度抑制性制御を選択した場合、車両が前記道路区間に含まれる重要交差点又は重要交差点の手前の一般交差点で停止するように信号制御パラメータを設定し、この信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成する、
請求項8に記載の交通信号制御装置。
【請求項10】
前記制御指令作成手段は、前記選択手段が前記速度抑制制御を選択した場合、以下の条件(1)、(2)の少なくとも1つを満たす信号制御パラメータを設定し、この信号制御パラメータに基づく信号制御指令情報を作成する、
請求項8又は9に記載の交通信号制御装置。
(1)前記道路区間に含まれる一の交差点を青信号開始と同時に出発した車両が高速で走行すると、当該一の交差点に隣接する交差点で赤信号で停止する。
(2)車両が低速で走行すると、前記道路区間に含まれる一般交差点は青信号で通過できても、前記道路区間に含まれる重要交差点は赤信号で停止する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−32866(P2012−32866A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169371(P2010−169371)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】