説明

人体洗浄装置

【課題】人体洗浄装置を安全に取り扱い、さらに、被洗浄者の使用感を向上させる。
【解決手段】洗浄水を加熱する熱交換器と、洗浄水を吐水するハンドノズルと、前記熱交換器からの洗浄水を導くホースと、洗浄水を排水する排水路と、を備え、前記ホースが前記排水路に接続された第1の状態と、前記ホースが前記ハンドノズルに接続された第2の状態と、が可能とされたことを特徴とする人体洗浄装置が提供される。このような人体洗浄装置は、安全に取り扱うことができる。さらに、この人体洗浄装置を用いれば、被洗浄者の使用感が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体洗浄装置に関し、人体を洗浄する人体洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋式腰掛便器に腰掛けた被洗浄者(例えば、被介護者)の「おしり」などを洗浄水で洗浄する場合には、温水洗浄便座装置の吐水ノズルを便器内に進出し、便座に座った被洗浄者の「おしり」などに向けて洗浄水を噴射する。そうすると、被洗浄者の局部を洗浄することができる。
【0003】
しかしながら、排泄の際に、汚物が広い範囲に亘って付着すると、人体局部の洗浄を主な目的とした温水洗浄便座装置の吐水ノズルでは、十分に汚れを落とすことができない場合がある。これは、例えば、臀部(肛門周辺)の筋肉が弱く、その部分の肉が垂れ下がっている高齢者などが排泄を行った場合、あるいは被洗浄者が、失禁などのように、おむつを含む衣類を着衣した状態で排泄行為を行った場合などが挙げられる。あるいは、被洗浄者の着座位置がずれている場合にも、温水洗浄便座装置の吐水ノズルでは、十分に汚れを落とすことができない場合がある。
【0004】
そこで、臀部や陰部の広い範囲を洗浄するために、例えば使用者などが容器を押すことにより洗浄水を任意の位置に吐水できるボトル式の洗浄容器がある。また、臀部や陰部の広い範囲を洗浄可能な局部洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、便座に着座した状態で被洗浄者の臀部や陰部を洗える、手持ち式の洗浄ノズルは、一定長さ以上のホース(配管)を有するため、使い始めの際にはホース内などに残留する冷水や不衛生な洗浄水が放出されることがある。この冷水等が被洗浄者にあたると、使用感を損ねてしまうという問題がある。
【0006】
これに対し、ホースの周囲にヒータを巻き付けて、ホース内の洗浄水を加熱する先行例がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この技術では、ホースの周囲に加熱用ヒータを巻き付ける都合上、ホースのサイズダウン、コストダウンが図れない。また、加熱用ヒータに通電する電流を制御する制御回路が別途必要になる。また、ホースは、頻繁に伸縮されたり、曲げられたりするので、ホースの周囲に加熱用ヒータを巻き付ける構造では安全上の問題もある。
【0007】
また、洗浄装置の配管内にSMA(形状記憶合金)製のバネを用いたローカット弁を設けて、洗浄水が一定温度以上になるまでの間は、排水側の経路を開いて、その排水をする先行例がある(例えば、特許文献3参照)。また、便器に取り付けられた手持ちノズルを、便器から脱着可能とした先行例が開示されている(例えば、特許文献4)。しかし、これらの技術では、ホース内に残留する洗浄水は、一度冷えてしまうと冷水のままとなってしまう。従って、被洗浄者の使用感を向上させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/055795号
【特許文献2】特開2003−164389号公報
【特許文献3】特開2003−102642号公報
【特許文献4】特開昭58−143031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上述した問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、洗浄水を加熱する熱交換器と、洗浄水を吐水するハンドノズルと、前記熱交換器からの洗浄水を導くホースと、洗浄水を排水する排水路と、を備え、前記ホースが前記排水路に接続された第1の状態と、前記ホースが前記ハンドノズルに接続された第2の状態と、が可能とされたことを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人体洗浄装置を安全に取り扱うことができ、さらに、被洗浄者の使用感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】人体洗浄装置の要部概念図である。
【図2】人体洗浄装置を備えたトイレ装置の要部斜視模式図である。
【図3】人体洗浄装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】ハンドノズルの要部斜視模式図である。
【図5】人体洗浄装置の操作方法を説明するための要部図である。
【図6】人体洗浄装置の操作方法を説明するためのフローチャート図である。
【図7】水温検知センサによる水温の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
第1の発明として、洗浄水を加熱する熱交換器と、洗浄水を吐水するハンドノズルと、前記熱交換器からの洗浄水を導くホースと、洗浄水を排水する排水路と、を備え、前記ホースが前記排水路に接続された第1の状態と、前記ホースが前記ハンドノズルに接続された第2の状態と、が可能とされたことを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、ホース内の冷水を衛生的な温水に置換することができる。また、ホース内に置換された温水をハンドノズルから吐水することができる。その結果、被洗浄者の臀部等に冷水が掛かってしまうことが抑制される。
【0015】
第2の発明として、第1の発明において、前記ホースの先端に、第1の接続部材が設けられ、前記排水路の一端に、第2の接続部材が設けられ、前記ハンドノズルに、第3の接続部材が設けられ、前記第1の状態において、前記第1の接続部材と前記第2の接続部材とが接続され、前記第2の状態において、前記第1の接続部材と前記第3の接続部材とが接続されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、ホース内の冷水を温水に置換することができる。また、ハンドノズルの非使用時には、ハンドノズルをホースから取り外す必要が生じる。本発明では、接続部材の脱着により、ハンドノズルを簡便にホースから取り外せるため、ハンドノズルの消毒忘れが防止される。
【0016】
第3の発明として、第1または第2の発明において、前記第1の状態において、前記熱交換器に洗浄水を給水する給水弁が開放され、前記ホース内に残留する洗浄水が前記排水路を介して排水されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、ホース内の冷水を衛生的な温水に置換することができる。また、ホース内に置換された温水をハンドノズルから吐水することができる。その結果、被洗浄者の臀部等に冷水が掛かってしまうことが抑制される。
【0017】
第4の発明として、第2の発明において、前記第2の接続部材は、前記熱交換器を包容するケーシングに付設され、前記排水路は、前記ケーシング内に設けられていることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、使用者は、ホースに接続する接続部材を即座に認識できる。また、排水路が外部に露出されていないことから、人体洗浄装置の美感が向上する。
【0018】
第5の発明として、第1〜4のいずれか1つの発明において、洗浄水は、前記排水路を介して便器内に排水されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、排水部(タンク、排水トレイ等)を別途設けることがなく、排水路から排出される洗浄水をそのまま便器内に排出できる。
【0019】
第6の発明として、第1〜5のいずれか1つの発明において、前記熱交換器から前記ホースまでの経路の途中に、安全弁が設けられ、前記安全弁から排出された洗浄水は、前記排水路を介して排水されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、熱交換器から安全弁までの洗浄水を安全弁を介して排水路に通水することができる。その結果、ホース内に高圧の洗浄水が残留した状態での接続部材の脱着行為が防止される。すなわち、安全弁を熱交換器からホースまでの経路の途中に設けることにより、ホースから洗浄水が飛散するような現象を防止できる。また、このような高圧の洗浄水を便器内に排水することに関し、既存の排水路と安全弁とを接続すれば足りる。従って、高圧の洗浄水を便器内に排水することに関し、別途バイパス経路の設置を要しない。
【0020】
第7の発明として、第1〜6のいずれか1つの発明において、便座への人体の着座を検知する着座センサと、前記着座センサから出力される検知信号が入力される制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記着座センサが人体の着座を検知すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、洗浄装置の使用前に、人体が着座した時点で自動的にホース内の冷水を温水に置換できる。また、自動的にホース内の冷水が温水に置換されるので、使用者等が特段の準備操作を行う必要がない。その結果、操作ミスによって冷水が臀部に掛かってしまうことがない。また、排便後、すぐに臀部の洗浄を行うこともできる。
【0021】
第8の発明として、第1〜6のいずれか1つの発明において、トイレ室への人体の入室を検知する入室検知センサと、前記入室検知センサから出力される検知信号が入力される制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記入室検知センサが人体の入室を検知すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、洗浄装置の使用前に、人体が入室した時点で自動的にホース内の冷水を温水に置換できる。また、自動的にホース内の冷水が温水に置換されるので、使用者等が特段の準備操作を行う必要がない。その結果、操作ミスによって冷水が臀部に掛かってしまうことがない。また、排便後、すぐに臀部の洗浄を行うこともできる。
【0022】
第9の発明として、第1〜6のいずれか1つの発明において、使用者が操作可能な操作部をさらに備え、前記操作部が操作されると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、入室や着座から所定の時間が経過し、ホース内の温度が低下した場合においても、使用者の操作により再度ホース内の冷水を温水に置換することができる。
【0023】
第10の発明として、第1〜6のいずれか1つの発明において、前記第1の状態に遷移すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、洗浄装置の使用前に、第1の接続部材と第2の接続部材とが接続した時点で、自動的にホース内の冷水を温水に置換できる。また、自動的にホース内の冷水が温水に置換されるので、使用者等が特段の準備操作を行う必要がない。その結果、操作ミスによって冷水が臀部に掛かってしまうことがない。
【0024】
第11の発明として、第3の発明において、前記給水弁が開放されてから所定時間経過後に前記給水弁が閉止されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、必要な置換が完了すると、自動的に置換が停止されるため、洗浄水の無駄な排出を防止できる。
【0025】
第12の発明として、第3の発明において、前記ホースの先端近傍及び前記排水路の少なくともいずれかに、洗浄水の温度を検知する水温検知センサが設けられ、前記給水弁が開放されてから、前記水温検知センサの検知温度が設定温度以上となった場合には、前記給水弁が閉止されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、必要な置換が完了すると、給水弁が自動的に閉止されるため、洗浄水の無駄な排出を防止できる。特に、第2の接続部材の近傍で、ケーシング内部の排水路の中途に水温検知センサを配置した場合、水温検知センサと制御部とを接続する接続配線は、ケーシング内部に配置するだけで足りる。従って、その接続配線は、ケーシングに覆われるので、その断線が生じにくい。また、この場合、ホースに沿って、接続配線を引き回す必要がなくなる。また、水温検知センサが第1の接続部材近傍、ケーシング外の第2の接続部材近傍、第3の接続部材近傍に設けられた場合は、水温検知センサがケーシング外にあるため、故障時のメンテ(部品交換)がし易くなる。特に、水温検知センサが第3の接続部材近傍に設けられた場合は、ハンドノズルに近いところで温度測定が実行されるため、より最適温度の洗浄水がホース内に充填される。
【0026】
第13の発明として、第3の発明において、前記ホースと前記排水路とが非接続となると、前記給水弁が閉止されることを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、第1の接続部材が第2の接続部材から外れた場合でも、ホース内から洗浄水が噴出することがない。
【0027】
第14の発明として、第1〜13のいずれか1つの発明において、前記洗浄水の温度に関する情報を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、使用者がハンドノズルを用いて洗浄行為に及ぶ前に、ホース内の水温が適温か否かを認識することができる。
【0028】
第15の発明として、第1〜14のいずれか1つの発明において、前記熱交換器から前記ホースまでの経路の途中に設けられた分岐路と、便器内に突出可能とされた吐水ノズルと、をさらに備え、前記分岐路を介して前記吐水ノズルに洗浄水を供給し吐水ノズルから洗浄水を吐水可能とされたことを特徴とする人体洗浄装置が提供される。
これにより、介護が不要な被洗浄者は、内蔵ノズルによって人体を洗浄することができる。また、介護が必要な被洗浄者に対しては、ハンドノズルによる洗浄を行うことができる。このため、様々な被洗浄者に対し、それぞれ快適に使用できる人体洗浄装置が実現する。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面のうち、同一の構成要素には同一の符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
図1は、人体洗浄装置の要部概念図である。
人体洗浄装置100Aは、ケーシング部110と、ホース部120と、ハンドノズル130と、ケーシング部110とホース部120とを連結する接続部(コネクタ)部140と、ハンドノズル130とホース部120と連結する接続部150と、を有している。図1では、ケーシング部110と、ホース部120と、ハンドノズル130とがそれぞれ分離した状態が示されている。
【0031】
ケーシング部110は、洗浄水の温度を調節する熱交換器、熱交換器によって加熱された洗浄水を各内部配管に分岐し、送水する分岐ユニット、各部位間を接続する内部配管、内部配管の洗浄水の圧力が過剰に上昇した場合に、その圧力を低減させる安全弁、または、これらの制御をする制御部等を備えている(後述)。
【0032】
また、ホース部120は、例えば、樹脂製のパイプが螺旋状に巻かれた形状となっている。このような形態により、ホース部120全体を容易に伸縮したり、曲げたりすることができる。さらに、非使用時には螺旋形状のバネ効果で縮んだ形状に保持されるためホースが床に触れにくいという利点もある。一方で、本実施の形態のように、螺旋状のパイプをホース部120としたほうが、ストレート型のパイプをホース部とした場合、伸縮に余裕を持たせるために、ホースの全長をストレート型のパイプをホース部とした場合よりも長く形成することがあり、ホース部120内に残留する洗浄水が多くなる。
【0033】
また、ハンドノズル130は、所謂、手持ち式の洗浄ノズルである。使用者は、ハンドノズル130を把持しながら、ハンドノズル130に設けられた操作レバー131を操作することにより、ハンドノズル130の先端から洗浄水を吐水することができる。これにより、被洗浄者の臀部等を自由自在に洗浄することができる。
【0034】
また、接続部140は、ケーシング部110外に延出されたソケット部材140sと、ホース部120の一方の端に設けられたプラグ部材140pとを有している。これらは、接続部140を構成する接続部材である。そして、ソケット部材140sとプラグ部材140pとが嵌合すると、ソケット部材140sに連結する内部配管(図示しない)と、プラグ部材140pに連結するホース部120とが連通する。
【0035】
また、接続部150は、ホース部120のもう一方の端に設けられたソケット部材150sと、ハンドノズル130の端に設けられたプラグ部材150pとを有している。これらは、接続部150を構成する接続部材である。そして、ソケット部材150sとプラグ部材150pとを嵌合すると、ソケット部材150sに連結するホース部120と、プラグ部材150pに連結するハンドノズル130とが連通する。また、例えば、ソケット部材140s、150sには、所謂、逆止め(チャッキ)弁が内蔵している。
【0036】
すなわち、ソケット部材140sとプラグ部材140pとが嵌合している状態、並びにソケット部材150sとプラグ部材150pとが嵌合している状態では、ハンドノズル130と、上述した内部配管とが連通する。
【0037】
また、ソケット部材140s、150sは、それ自体に止水機能を有している。例えば、プラグ部材140p、150pからソケット部材140s、150sを取り外すと、ソケット部材140s、150sからは、洗浄水がしない機能を備えている。
【0038】
また、人体洗浄装置100Aでは、ケーシング部110にも、接続部材であるプラグ部材110pが設けられている。また、プラグ部材110pと、ホース部120のソケット部材150sとは、互いに嵌合する。
このような嵌合によって、ホース部120とケーシング部110内に設けられた排水路110dとが連通すると、ホース部120内に残留する冷水が排水路110dを通じて排出されて、ホース部120内が温かい洗浄水で置換される(後述)。
【0039】
なお、上述した止水機能は、プラグ部材140p、150p側に設けてもよく、ソケット部材140s、150s及びプラグ部材140p、150pに設けてもよい。
また、ケーシング部110にプラグ部材140pを設け、ホース部120の一方の端にソケット部材140sを設けてもよい。また、ホース部120のもう一方の端にプラグ部材150p設け、ハンドノズル130の端にソケット部材150sを設けてもよい。
【0040】
また、ソケット部材140sとプラグ部材140pとの脱着、ソケット部材150sとプラグ部材150pとの脱着、ソケット部材150sとプラグ部材110pとの着脱は、手動による差し込み、引き抜き動作により簡便に行うことができる。
【0041】
具体的なソケット部材140s、150s、プラグ部材110p、140p、150pとしては、例えば、片路開閉型、または両路開閉型のカプラ(登録商標)等が該当する。 また、本実施の形態において「洗浄水」という場合には、適宜、温められたお湯も含むものとする。
【0042】
次に、人体洗浄装置100Aを備えたトイレ装置について説明する。
図2は、人体洗浄装置を備えたトイレ装置の要部斜視模式図である。
トイレ装置10は、洋式腰掛け型の便器500と、便器500の上に設けられた人体洗浄装置100Aと、便蓋300と、便座400と、を有している。そして、便器500の上に、人体洗浄装置100Aが設けられている。
【0043】
ここで、便蓋300及び便座400は、例えば、人体洗浄装置100Aに軸支され、便器500に対して開閉自在になっている。便器500内の洗い流し方式は、いわゆる「ロータンク式」でもよく、「水道直圧式」でもよい。
【0044】
また、トイレ装置10に組み込まれた人体洗浄装置100Aは、ケーシング部110内に、洗浄水の温度を調節する熱交換器(温度調節器)111を設けている。熱交換器111には、洗浄水を貯留させるためのタンク(図示しない)と、貯留した洗浄水を加熱するためのヒータ(図示しない)等とが設けられている。すなわち、熱交換器111は、所謂「貯湯式」の熱交換器である。そして、熱交換器111により加熱された洗浄水は、ケーシング部110内の内部配管を通じて、プラグ部材140pまで送水することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、熱交換器111の形態を貯湯式に限定しない。例えば、供給された洗浄水を瞬間的に温めて送水する、所謂「瞬間式」の熱交換器をも、本実施の形態に含めるとする。そして、熱交換器111によって温められた洗浄水は、プラグ部材140p等を介して、ホース部120に導水され、さらに、ホース部120に取り付けられたハンドノズル130にまで導水される。なお、便器500の側壁には、ハンドノズル130を収納する収納部160が設けられている。
【0046】
また、人体洗浄装置100Aは、便座400への被洗浄者の着座を検知する着座センサ170を有している。また、着座センサ170の代わりに、トイレ室への被洗浄者または使用者の入室を検知する入室検知センサ180を設けてもよい。また、着座センサ170及び入室検知センサ180を同時に設けてもよい。そして、人体洗浄装置100A内には、上述した温度調節制御、内部配管のバルブ切替制御、センサからの信号検知等を行う制御部190が設けられている。
【0047】
また、着座センサ170(または、入室検知センサ180)としては、例えば、焦電センサ、測距センサなどの赤外線投光式のセンサ、超音波センサ、またはドップラーセンサなどのマイクロ波センサ、などが該当する。そして、着座センサ170が便座400への被洗浄者の着座を検知すると、制御部190にその検知信号が送信される。また、入室検知センサ180がトイレ室への被洗浄者または使用者の入室を検知すると、制御部190にその検知信号が送信される。これにより、人体洗浄装置100Aは、人体検知をすることができる。なお、焦電センサは、被洗浄者の接近を迅速に検知できる点で、入室検知センサ180に適している。
そして、この人体洗浄装置100Aでは、ホース部120内で冷めたり、あるいは不衛生である洗浄水を、便器500内に排水可能な機能を備えている。
【0048】
図3は、人体洗浄装置の構成を説明するためのブロック図である。ここで、図3(a)では、トイレ装置10に組み込まれた人体洗浄装置100Aを上部から眺めた図が示され、図3(b)では、ホース部120周辺が表示されている。但し、図3(a)では、便蓋300、便座400は、表示していない。また、本実施の形態では、導入口101を上流側とし、ハンドノズル130側を下流としている。
【0049】
人体洗浄装置100Aでは、給水源として、例えば、水道水を導入口101から継ぎ手102を通じて、給水弁103に供給している。給水弁103は、熱交換器111よりも上流側に設けられている。また、給水弁103は、制御部190からの制御信号に応じて開閉される。そして、給水弁103が開放されている場合には、熱交換器111内のタンクに洗浄水が給水され、給水弁103が閉止されている場合には、熱交換器111内のタンクへの洗浄水の給水は停止される。すなわち、給水弁103を開状態とすると、熱交換器111に貯留している温水が熱交換器111に給水される洗浄水により加圧されて、その温水を熱交換器111よりも下流側に送水することができる。
【0050】
また、人体洗浄装置100Aには、熱交換器111の下流に、分岐ユニット104が設けられている。そして、この分岐ユニット104によって、洗浄水がハンドノズル130側の内部配管104aに分岐されたり、または、洗浄ノズル(内蔵式洗浄ノズル)105側の内部配管104bに分岐される。なお、分岐ユニット104から分岐される内部配管は、内部配管104a、104bに限るものではない。必要に応じて、分岐ユニット104の数を増設してもよい。
【0051】
なお、分岐ユニット104による内部配管104a、104b等の選択は、例えば、人体洗浄装置100Aの側面に設けられた切替スイッチ106により行うことができる。また、このような切替操作は、リモコンスイッチで行ってもよい。
【0052】
また、人体洗浄装置100Aには、内部配管104aとソケット部材140sとの間に、安全弁107が設けられている。さらに、内部配管104aと安全弁107との間に、逆止弁108が設けられている。そして、逆止弁108と安全弁107とを内部配管108aで接続し、安全弁107とソケット部材140sとを内部配管107aで接続している。
【0053】
また、人体洗浄装置100Aには、安全弁107及びプラグ部材110pに接続する排水路(排水用内部配管)110dが設けられている。そして、この排水路110dの末端部110deは、便器500内にまで導かれている。
【0054】
なお、ソケット部材140sの上流側に、安全弁107を設け、排水路110dの一部を、安全弁107に接続した理由は、以下による。
例えば、ホース部120のプラグ部材140pとソケット部材140sとを連結した場合に、ホース部120までの経路の途中に、過剰な水圧が印加された場合には、この過剰な水圧を安全弁107から排水路110dという経由で逃がすことができる。また、排水路110dから安全弁107に洗浄水が逆流しないように、安全弁107内に逆止弁を組み込んでもよい。
【0055】
そして、これらの熱交換器111、分岐ユニット104、安全弁107等は、制御部190により制御されている。また、制御部190は、切替スイッチ106、着座センサ170(または、入室検知センサ180)からの信号を検知することができる。そのほか、制御部190は、各内部配管、排水路110dの水温、ホース部120内の水温を検知することができる。また、制御部190は、前述した水温が適温であるか否かの通知(表示)、水温の通知等を行うこともできる。
【0056】
例えば、図3(b)に示すように、ケーシング部110のソケット部材140s近傍には、温度表示部109a、水温検知センサ109dが設けられている。これにより、人体洗浄装置100Aは、その付近の水温が適温であるか否かの判断をすることができる。また、その付近の水温が適温であるか否かの通知をすることができる。なお、水温検知センサ109dは、例えば、ソケット部材140sの上流側の内部経路107a内、ソケット部材140s内に設けることができる。
【0057】
また、ホース部120のソケット部材150s近傍には、同様な温度表示部109b、水温検知センサ109eが設けられ、その付近の水温が適温であるか否かの判断、通知をすることができる。なお、水温検知センサ109dは、例えば、ソケット部材150s内、ホース120部内の中途に設けることができる。
【0058】
また、ケーシング部110のプラグ部材110pの排水路110dの中途には、同様な温度表示部109c、水温検知センサ109fが設けられ、その付近の水温が適温であるか否かの判断、通知をすることができる。
【0059】
また、ソケット部材140sとプラグ部材140p、ソケット部材150sとプラグ部材150p、及びソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合しているか否かは、例えば、ソケット部材140s、150s、プラグ部材110p、140p、150pのいずれかの部分に設けられた接続センサ(図示しない)により検知することができる。接続センサとしては、例えば、近接スイッチセンサ、フォトカプラセンサ等が該当する。
【0060】
なお、上述では、水道の圧力を利用して熱交換器111に洗浄水を給水する場合を説明したが、給水ポンプによって熱交換器111に洗浄水を給水してもよい。これによれば、水道の圧力だけではなく、給水ポンプによって与えられた圧力を利用して、熱交換器111に洗浄水を給水することができる。
また、本実施の形態では、安全弁107の下流側の出口から、ホース部120を経由して、ハンドノズル130の吐水口135までの一連の経路を主流路と称する。
【0061】
次に、人体洗浄装置100Aのホース部120に連結されるハンドノズル130について説明する。
図4は、ハンドノズルの要部斜視模式図である。図4では、ハンドノズル130のほか、ハンドノズル130に連結したホース部が示されている。
【0062】
ハンドノズル130は、把持部132と、把持部132に太幅部133を介して接続されたノズル先端部134を有している。また、ノズル先端部134の先端には、洗浄水が吐水される吐水口135が設けられている。また、ハンドノズル130の内部には、吐水口135にまで連通する内部経路が設けられ、内部経路内には開閉弁(図示しない)が設けられている。また、ハンドノズル130とホース部120とが連結した状態では、上述した内部経路は、プラグ部材150p及びソケット部材150sを介して、ホース部120にまで連通している。
【0063】
そして、使用者がハンドノズル130を把持しつつ、操作レバー131を押すと、内部経路に設けられた開閉弁が開状態となる。これにより、洗浄水が吐水口135から吐水され、被洗浄者の人体を洗浄することができる。
【0064】
なお、使用者が吐水口135から洗浄水を吐水する前には、予め、ホース部120内の洗浄水が温水に置換されている(後述)。これにより、吐水口135からは、温かい、衛生的な洗浄水が常時吐水される。
また、ハンドノズル130の内部経路内に設けられた開閉弁は、上述したように、操作レバー131の手動動作によって操作されてもよく、制御部190による自動的な動作によって操作されてもよい。
【0065】
次に、人体洗浄装置の操作方法について説明する。
図5は、人体洗浄装置の操作方法を説明するための要部図である。
まず、ハンドノズル130とホース部120とが接続した状態から、ホース部120のソケット部材150sと、ハンドノズル130のプラグ部材150pとを離脱する。その後、図5(a)に示すように、ホース部120のソケット部材150sをケーシング部110に設けられたプラグ部材110pに差し込む。この段階では、ソケット部材140sとプラグ部材140pとは嵌合したままである。この場合、人体洗浄装置100Aは、上述した接続センサによって、ソケット部材140sとプラグ部材140pとが嵌合し、ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合していることを認識する。
【0066】
そして、人体洗浄装置100Aが被洗浄者の便器500への着座、被洗浄者等のトイレ室への入室、使用者等により切替スイッチ106などの操作部の操作、または、ホース部120のソケット部材150sとケーシング部110に設けられたプラグ部材110pとが嵌合したことのいずれかを認識すると、給水弁103は、(1)ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合したことを認識して、即座に開状態になるか、あるいは(2)ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合した状態から、待機状態となり、人体の着座、人体の入室、人体によるスイッチ操作が行われたことを認識した後に、開状態になるかが制御される。そして、給水弁103が制御部190からの制御信号に応じて開状態になると、熱交換器111内に洗浄水が給水されて、熱交換器111に貯留している温かい洗浄水が加圧される。そして、その洗浄水が分岐ユニット104により、内部配管104a側に分岐される。
【0067】
さらに、その洗浄水は、逆止弁108、内部配管108aにまで送水される。そして、その洗浄水は、安全弁107を介して、内部配管107aに送水される。その後は、ソケット部材140s、プラグ部材140p、ホース部120、ソケット部材150s、プラグ部材110pを経由して排水路110dにまで導水される。これにより、ホース部120内に新鮮な温水が充填される。また、ホース部120内に残留している洗浄水が排水路110dの末端部110deから便器500内に排水される。すなわち、ホース部120内の洗浄水が衛生的な温水によって置換される。
【0068】
この置換状態がしばらく続き、ホース部120内の水温が所定の温度に達すると、その旨が温度表示部109a、109b、109cの少なくともいずれかに表示される。
ホース部120内の洗浄水の温調は、時間制御、または、上述した水温検知センサ109d、109e、109fの少なくともいずれかによるフィードバック制御により実施される。あるいは、使用者の意志による操作ボタンなどの操作部の操作により実施してもよい。
【0069】
そして、使用者が温度表示部109a、109b、109cの少なくともいずれかによって、ホース部120内の水温が所定の温度に達していることを認識すると、給水弁103が閉止されて、待機状態になる。そして、使用開始時には、プラグ部材110pからソケット部材150sが引き抜かれて、図5(b)に示すように、ハンドノズル130のプラグ部材150pがソケット部材150sに差し込まれる。なお、給水弁103は、(1)ソケット部材150sとプラグ部材150pとが嵌合したことを認識して、即座に開状態になるか、あるいは(2)ソケット部材150sとプラグ部材150pとが嵌合した状態から、待機状態となり、人体の着座、人体の入室、人体によるスイッチ操作が行われたことを、再度認識した後に、開状態になる。そして、この後においては、ハンドノズル130の操作レバー131が操作されて、ハンドノズル130の吐水口135から、衛生的な温水が吐水される。
【0070】
このように、人体洗浄装置100Aを用いれば、ホース部120内に残留する冷水、あるいは不衛生な洗浄水を事前に衛生的な温水で置換することができる。従って、ホース部120内に残留する冷水、あるいは不衛生な洗浄水がハンドノズル130の吐水口135から放出されることがない。従って、被洗浄者の使用感が向上する。
また、人体洗浄装置100Aでは、洗浄水の加熱をケーシング部110内に備えた熱交換器111により実施している。従って、ホース部120の周りに加熱用ヒータを設ける必要がない。従って、ホース部120を伸縮したり、曲げたりしても、人体洗浄装置100Aを安全に操作することができる。
【0071】
次に、以上の操作方法を、フローチャート図等を含めてさらに詳細に説明する。
図6は、人体洗浄装置の操作方法を説明するためのフローチャート図である。なお、以下の動作で、手動以外の動作は、人体洗浄装置100Aの制御部190が制御指示している。
【0072】
まず、一定の時間、人体洗浄装置100Aを使用しなかったために、ホース部120内に残留する洗浄水は冷めているとする。この場合、温度表示部109a、109b、109cのいずれかは、ホース部120内の洗浄水が所定の温度でないことを表示している。そして、使用者が温度表示部109a、109b、109cのいずれかを見ることにより、使用者は、ホース部120内の洗浄水が所定の温度より低いことを認識できる。
【0073】
続いて、使用者は、ホース部120のソケット部材140sとプラグ部材140pとが嵌合したまま、ホース部120のソケット部材150sをケーシング部110に設けられたプラグ部材110pに差し込む。この差し込みによって、接続センサがソケット部材140sとプラグ部材140pとが嵌合していることと、ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合していることを検知する。すなわち、人体洗浄装置100Aは、プラグ部材140pとプラグ部材110pとが嵌合し、ホース部120と排水路110dが連通していることを検知する。この状態を、人体洗浄装置100Aの待機(スタンドバイ)状態とする(ステップS101)。
【0074】
続いて、人体洗浄装置100Aは、人体検知の判断を行う(ステップS103)。具体的には、
(1)被洗浄者が人体洗浄装置100Aの便座400に着座する。
(2)被洗浄者等が人体洗浄装置100Aを備える部屋に入室する。
(3)使用者により切替スイッチ106の操作ボタンなどの操作部の操作が行われる。
(4)使用者によりホース部120のソケット部材150sとケーシング部110に設けられたプラグ部材110pとが嵌合する。
といういずれか1つの事項を検知すると、人体洗浄装置100Aは、人体を検知したと判断する。なお、(4)に関しては、上述した給水弁103が(1)ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合したことを認識して、即座に開状態になるか、あるいは(2)ソケット部材150sとプラグ部材110pとが嵌合した状態から、待機状態となり、人体の着座、人体の入室、人体によるスイッチ操作が行われたことを認識した後に、開状態になる。また、人体洗浄装置100Aが人体検知をしない場合は、人体洗浄装置100Aは待機状態を維持する。
【0075】
続いて、上述した検知に基づき、制御部190により給水弁103が開放される(ステップS105)。あるいは、上述した給水ポンプが人体洗浄装置100Aに設けられている場合には、給水ポンプを駆動してもよい。
【0076】
これにより、ホース部120内に残留する冷水が熱交換器111により加熱された温水により置換され始める。すなわち、ホース部120内に残留する冷水は、温水によって排水路110dを通じて便器500内に排出され始める。
【0077】
続いて、ホース部120内の水温の調整が行われる(ステップS107)。この水温の制御は、ホース部120内の洗浄水を置換する時間制御で行われるか、水温検知センサ109d、109e、109fの少なくともいずれかによるフィードバック制御により行われる。
【0078】
次に、ホース部120内の洗浄水が設定された時間で置換されたり、あるいはホース部120内の水温が水温検知センサ109d、109e、109fの少なくともいずれかによって設定温度になったと判断すると、給水弁103が閉止される(ステップS109)。そして、ホース部120内の水温が設定温度に達したことが温度表示部109a、109b、109cの少なくともいずれかに表示される。
【0079】
そして、再び、人体洗浄装置100Aは待機状態になる(ステップS111)。
この後、使用者は、温度表示部109a、109b、109cの少なくともいずれかを見て、ホース部120内の水温が設定温度に達したことを認識する。そして、ホース部120のソケット部材150sがケーシング部110に設けられたプラグ部材110pから外されて、ソケット部材150sがハンドノズル130のプラグ部材150pに差し込まれる。そして、使用者がハンドノズル130の操作レバー131を操作することにより、吐水口135から温水を噴射することができる。この場合、一度閉止された給水弁103は、操作レバー131の操作、あるいは、使用者のスイッチングにより、再び開放されている。これにより、連続的に吐水口135から温水を吐水することができ、被洗浄者の身体を洗浄することができる。
【0080】
なお、以上説明した具体例において、人体センサによる検知(ステップS103)の代わりに、例えば、使用者が所定のスイッチ(操作部)などを操作することにより、ステップS105に進むようにしてもよい。つまり、捨て水の動作のトリガとして、センサによる人体の検知の代わりに、使用者のスイッチ入力を採用することもできる。このスイッチは、切替スイッチ106に配設してもよく、ハンドノズル130に設けてもよい。
【0081】
次に、上述した水温検知センサによるフィードバック制御を、水温検知センサ109eを例にとって説明する。
【0082】
図7は、水温検知センサによる水温の制御を説明するための図である。ここで、横軸は、時間(秒)を表し、縦軸は、ホース部120内の水温(℃)を表している。また、この図7では、ホース部120内の水温の設定温度(適温)を、一例として、38℃としている。また、設定温度(38℃)から許容できる温度の上限を、設定温度+1(℃)とし、設定温度(38℃)から許容できる温度の下限を、設定温度−3(℃)としている。
【0083】
例えば、一定の時間、人体洗浄装置100Aを使用しなかったために、ホース部120内に残留する洗浄水は冷めているとする。
この場合、ホース部120内の温度が水温検知センサ109eによって制御部190に送信され、温度表示部109bは、ホース部120内の洗浄水が設定温度でないことを表示する(図中のA区間)。
【0084】
次に、制御部190がホース部120と排水路110dが連通していることを検知し、さらに、制御部190が人体を検知したり、使用者のスイッチ操作を検知すると、給水弁103が開放される。あるいは、給水ポンプが駆動する。
【0085】
これにより、ホース部120内の冷水が温水により置換されて、ホース部120内の水温が上昇する。但し、冷水が置換され始めた初期の段階では、水温のオーバーシューティングが生じる場合もある。これにより、冷水が置換され始めてからしばらくの間は、洗浄水の水温が設定温度の許容範囲を超過したり、許容範囲内に入ったりする水温の変動が生じる(図中のB区間)。この領域では、温度表示部109bは、ホース部120内の洗浄水が設定温度でないことを表示する。なお、水温検知センサ109eの検知結果が設定温度以上となった場合には、制御部190は、給水弁103を閉止してもよい。
【0086】
続いて、上述したフィードバック制御が進行し、ヒータによる加熱量が適宜調整されると、ホース部120内の水温が変動しながらも、許容範囲内に入ってくる(図中のC区間)。但し、C区間でも、若干の水温の変動が生じる。従って、C区間を所定の時間(例えば、5秒間)で区切り、このC区間においても、温度表示部109bがホース部120内の洗浄水が設定温度でないことを表示する。
【0087】
次に、フィードバック制御がさらに進行し、ホース部120内の水温が設定温度になると、温度表示部109bは、ホース部120内の洗浄水が所定の温度であることを表示する(図中のD区間)。
この段階で、使用者は、温度表示部109bを見て、ホース部120内の水温が設定温度に達したことを認識できる。そして、使用者は、この時点からソケット部材150sをプラグ部材110pから外して、ソケット部材150sをプラグ部材150pに差し込んで、上述したような洗浄行為に及んでもよい。
【0088】
但し、人体洗浄装置100Aでは、ホース部120内の水温が設定温度になった後、給水弁103を閉止する制御手段を組み込んでいる。
例えば、図7に示すように、ホース部120と排水路110dが連通したまま、給水弁103の開放状態が所定の時間経過すると、給水弁103は、自動的に閉止される。これにより、ホース部120内の洗浄水の置換が終了する。
このD区間の時間は、使用者等の要求に応じて適宜調節される。例えば、捨て水の節約のために、ホース部120内の水温が設定温度になった直後に給水弁103を閉止してもよい。
【0089】
そして、給水弁103が閉止されて、ホース部120内の洗浄水の置換が終了すると、ホース部120内の水温が徐々に降下する(図中のE区間)。但し、E区間では、余熱のため、ホース部120内の水温が許容範囲内にある。また、その旨が温度表示部109bにより表示される。
なお、E区間では、ホース部120内の水温が許容範囲内にあるので、この区間では、制御部190が上述した人体検知をしても、ホース部120内の洗浄水を置換しない制御を別途設けてもよい。
【0090】
続いて、ホース部120内の水温が降下し、許容範囲下になると、その情報は、水温検知センサ109eによって制御部190に送信される。また、温度表示部109bは、ホース部120内の洗浄水が設定温度でないことを再び表示する(図中のF区間)。
例えば、使用者等が一時的にトイレ室から外出した場合、被洗浄者の洗浄前の予備準備に時間を要する場合には、ホース部120内の水温が許容範囲よりも降下する場合もある。しかし、人体洗浄装置100Aは、使用者等の人体検知、あるいは、使用者による所定のスイッチ操作を認識すると、再び、ホース部120内の冷水を温水に置換する。
このような制御により、使用者は、吐水口135から常時、温水を吐水することができる。
なお、図7では、水温検知センサ109eを例にとって説明したが、水温検知センサ109d、109fを用いても同様の制御ができる。
【0091】
次に、トイレ装置10に設けられた収納部160について補説する(図2参照)。
使用者は、ホース部120とハンドノズル130とが接続した状態で、ハンドノズル130を収納部160に収納することができる。ハンドノズル130を収納部160に収納した状態で、吐水口135から温水が吐水されると、その温水は、収納孔163に一時滞留する。このとき、ハンドノズル130の先端は、収納孔163の底面には当接しておらず、離間している。このため、収納孔163に一時滞留した洗浄水は、ノズル先端部134を洗浄した後、残留することなく排水路165から便器500内に排出される。これにより、ハンドノズル130の衛生的な状態を確保することができる。
【0092】
なお、人体洗浄装置100Aでは、例えば、過剰に熱い洗浄水(例えば、上述した上限温度を超えた温水)については、ホース部120内を通水せず、安全弁107から排水路110dを経由して、便器500内に排水してもよい。このような制御により、ホース部120、ソケット部材140s、150s、プラグ部材140pが過剰に加熱されず、使用者等の火傷等を事前に防止できる。
【0093】
また、温度表示部109a、109b、109cについては、対応する水温検知センサ109d、109e、109f付近に設ける必要はなく、例えば、ケーシング部110、ハンドノズル130等のいずれかの箇所に設けてもよい。また、洗浄水の温度を検知する水温検知センサに関しては、ハンドノズル130内に設け、水温が設定温度を超えた場合は、ハンドノズル130の水温検知センサからの信号によって、給水弁103を閉止してもよい。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ハンドノズル130などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや収納部160の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせたり、複合したりすることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0095】
10 トイレ装置
100A 人体洗浄装置
101 導入口
102 継ぎ手
103 給水弁
104 分岐ユニット
104a、104b 内部配管
105 洗浄ノズル
106 切替スイッチ
107 安全弁
107a 内部配管
108 逆止弁
108a 内部配管
109a、109b、109c 温度表示部
109d、109e、109f 水温検知センサ
110 ケーシング部
110d 排水路
110de 末端部
110p プラグ部材
111 熱交換器
120 ホース部
130 ハンドノズル
131 操作レバー
132 把持部
133 太幅部
134 ノズル先端部
135 吐水口
140 接続部
140p プラグ部材
140s ソケット部材
150 接続部
150p プラグ部材
150s ソケット部材
160 収納部
163 収納孔
165 排水路
170 着座センサ
180 入室検知センサ
190 制御部
300 便蓋
400 便座
500 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を加熱する熱交換器と、
洗浄水を吐水するハンドノズルと、
前記熱交換器からの洗浄水を導くホースと、
洗浄水を排水する排水路と、
を備え、
前記ホースが前記排水路に接続された第1の状態と、
前記ホースが前記ハンドノズルに接続された第2の状態と、
が可能とされたことを特徴とする人体洗浄装置。
【請求項2】
前記ホースの先端に、第1の接続部材が設けられ、
前記排水路の一端に、第2の接続部材が設けられ、
前記ハンドノズルに、第3の接続部材が設けられ、
前記第1の状態において、前記第1の接続部材と前記第2の接続部材とが接続され、
前記第2の状態において、前記第1の接続部材と前記第3の接続部材とが接続されることを特徴とする請求項1に記載の人体洗浄装置。
【請求項3】
前記第1の状態において、前記熱交換器に洗浄水を給水する給水弁が開放され、前記ホース内に残留する洗浄水が前記排水路を介して排水されることを特徴とする請求項1または2に記載の人体洗浄装置。
【請求項4】
前記第2の接続部材は、前記熱交換器を包容するケーシングに付設され、
前記排水路は、前記ケーシング内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の人体洗浄装置。
【請求項5】
洗浄水は、前記排水路を介して便器に排水されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項6】
前記熱交換器から前記ホースまでの経路の途中に、安全弁が設けられ、
前記安全弁から排出された洗浄水は、前記排水路を介して排水されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項7】
便座への人体の着座を検知する着座センサと、
前記着座センサから出力される検知信号が入力される制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記着座センサが人体の着座を検知すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項8】
トイレ室への人体の入室を検知する入室検知センサと、
前記入室検知センサから出力される検知信号が入力される制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記入室検知センサが人体の入室を検知すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項9】
使用者が操作可能な操作部をさらに備え、
前記操作部が操作されると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項10】
前記第1の状態に遷移すると、前記ホースに残留する洗浄水を前記排水路を介して排水することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項11】
前記給水弁が開放されてから所定時間経過後に前記給水弁が閉止されることを特徴とする請求項3に記載の人体洗浄装置。
【請求項12】
前記ホースの先端近傍及び前記排水路の少なくともいずれかに、洗浄水の温度を検知する水温検知センサが設けられ、
前記給水弁が開放されてから、前記水温検知センサの検知温度が設定温度以上となった場合には、前記給水弁が閉止されることを特徴とする請求項3に記載の人体洗浄装置。
【請求項13】
前記ホースと前記排水路とが非接続となると、前記給水弁が閉止されることを特徴とする請求項3に記載の人体洗浄装置。
【請求項14】
前記洗浄水の温度に関する情報を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。
【請求項15】
前記熱交換器から前記ホースまでの経路の途中に設けられた分岐路と、
便器内に突出可能とされた吐水ノズルと、
をさらに備え、
前記分岐路を介して前記吐水ノズルに洗浄水を供給し吐水ノズルから洗浄水を吐水可能とされたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の人体洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255366(P2010−255366A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109177(P2009−109177)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】