説明

人体移送車

【課題】 受診者の移送中の介添人や通行人への被爆を有効に防止しながら操作及び移動が容易な人体移送車を提供する。
【解決手段】 核医療用放射線源を体内へ注入した受診者Pのための移送車であって、台座12を有し周囲に放射線遮蔽壁24を囲成した台車2の前後少なくとも一方に介添人Nが操作するためのハンドル部46、48を上記放射線遮蔽壁24から離して取り付けている。尚、上記台座12に載った受診者Pの身体の一部から放射線遮蔽壁24の前乃至後方対応壁部分24f、24bを透して前方乃至後方のハンドル部46,48に至る放射線の線量が規定量以下となるように身体の一部からハンドル部46,48迄の距離に応じて上記対応壁部分24f、24bの厚さを定めるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体移送車、特にPET装置搭載車と医療設備との間で放射線源を注入した受診者を安全に移動するための移動車に関する。尚、本明細書において、PETとは陽電子断層撮影(Positron Emission Tomography)のことをいう。
【背景技術】
【0002】
従来、MRI(磁気共鳴診断)装置などの高価な医療用診断装置の稼働率を上げるために、こうした装置を、検査室を備えたトレーラーに搭載して各地を巡回可能とすること(モバイル化)が行われている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、MRIでは臓器の形状の知見が得られるに留まるため、近年、体内の局所血流量やブドウ糖消費量などの生理学的機能情報を提供して癌などの早期発見に寄与するPET検査が脚光を浴びており、又、この検査装置も相当に高価であることから、そのモバイル化が要望されている。ここでPET検査の原理を簡単に説明すると、F18−FDG(フルオロデオキシグルコース)などの放射性薬剤を受診者の身体内に注入して、その薬剤から放出される陽電子が他の電子と対消滅して、その消滅光子(γ線)を放出する。癌細胞は正常細胞の3〜8倍のブドウ糖を消費するため、FDGが集まり、PET画像で光って表れるものというものである。この方法では、受診者の身体から放出されるγ線により他の受診者や医療従事者などが被爆する可能性があり、これを回避するために診療施設の待合室向けの椅子であって後面と側面とに放射線遮蔽板を設けたものが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−095780号
【特許文献2】特開2004−361288号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我国では放射性物質の取扱いに厳しい規制があるため、PET装置を搭載した車両で巡回診療をしようとすれば、医療施設内の放射線管理区域で受診者に放射性薬剤を注射した後に医療施設の周囲に駐車したPET装置搭載車まで受診者を移送する必要があるが、このとき移送中の受診者の身体からの放射線の放出を確実に遮断する手段が必要である。このために、例えば特許文献2の放射線遮蔽機能付きの椅子を移動可能な車椅子とし、更に椅子の前面をも放射遮蔽板で覆うことが考えられる。しかしながら、放射線遮蔽材料としては鉛や鉄などの比重の大きい金属が使用されるため、放射線を完全に遮断しようとすると放射線遮蔽用車椅子の重量が極めて大きくなり、移動が困難となるという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、受診者の移送中の介添人や通行人への被爆を有効に防止しながら操作及び移動が容易な人体移送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、核医療用放射線源を体内へ注入した受診者Pのための移送車であって、台座12を有し周囲に放射線遮蔽壁24を囲成した台車2の前後少なくとも一方に介添人Nが操作するためのハンドル部46,48を上記放射線遮蔽壁24から離して取り付けている。
【0007】
「核医療」としては上述のPET検査があるが、それ以外にもSPECT(Single Photon Emission Tomography)などに本発明の人体移動車を用いても良い。
【0008】
「台車」は、複数の車輪を付設した基礎フレーム(又は基板)の周囲から放射線遮蔽壁を起立するとともに、その放射線遮蔽壁の適所(例えば側壁部)を乗降車用扉に形成したものとすることができる。また、台車には自走用の駆動部を設けることが望ましい。この駆動部は例えば電動モーターなどで形成することができる。
【0009】
「台座」は、基礎フレームの一部(例えば後部)から立設させて後述の椅子形に形成することが望ましい。しかしながら、病人である受診者を寝たままの姿勢で移動するため、上記台座を一方向(好ましくは前後方向)に細長い寝台タイプとすることもできる。この場合には基礎フレームを台座に対応して縦長に形成してその周囲を放射線遮蔽壁で囲い、台車全体を遮蔽壁付きのストレッチャーのように構成すれば良い。
【0010】
「放射線遮蔽壁」は、台車の回り全体を覆うように台車の周囲から好ましくは垂直に起立する。その放射線遮蔽壁の高さは、受診者の身体から放出される放射線が台車の前後のハンドル部を操作する介添人が直接被爆しないように設定する。放射線遮蔽壁は鉛又は鉄の如く十分な放射線遮蔽能力を有しかつ不透明な素材で形成することが望ましい。
【0011】
「ハンドル部」は、介添人が移送車の進行方向を誘導するという操作部の機能の他に、介添人などが人体移送車の向きを代えたりする場合に、その放射線遮蔽壁に直接に手を触れなくて済むようにするものである。本発明の移送車は嵩張るもので、移送車の後方からは移送車前方の安全を確認しづらいため、移送車の前後両側にハンドル部を設けてそれぞれに介添人が付き添うようにすることが望ましい。台座を台車の後部側に設置したときには、前側のハンドル部は放射線遮蔽壁の前壁部分の近くに、又、後側のハンドル部は放射線遮蔽壁の後壁部分から離れた位置に好ましくは上記台座を中心として等距離に設置することができる。前側のハンドル部は、台車の前部から前方へ突出した左右一対の操作アームの前部の間に、又後側のハンドル部は台車の後部から後方へ突出した左右一対の操作アームの後部の間にそれぞれ架設した水平棒状の手摺り形に形成することが好適であるが、これに代えて、例えば前側の各操作アームの前端部及び後側の各操作アームの後端部で形成することもできる。
【0012】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記台座12に載った受診者の身体の一部から放射線遮蔽壁24の前乃至後方対応壁部分24f、24bを透して前方乃至後方のハンドル部46,48に至る放射線の線量が規定量以下となるように身体の一部からハンドル部46,48迄の距離に応じて上記対応壁部分24f、24bの厚さを定めている。
【0013】
即ち、本手段においては、この放射線遮蔽壁の前壁部分、後壁部分及び左右側壁部分の厚さは後述の如く周囲の介添人や通行人・施設関係者などの遭遇者の被爆量が一定以下となるように定めている。具体的には、鉛で形成された放射線遮蔽壁にあっては、受診者の身体から前後のハンドル部までの距離を1m程度とした場合に、後方壁部分の厚さを5〜8mm,前方壁部分の厚さを5mm程度とすると良い。又、人体移動車の傍らをすれ違う通行人と受診者との距離を550mm程度としたときに3mm程度とすると良い。
【0014】
換言すれば、本発明のハンドル部は、このハンドル部以上に放射線遮蔽壁に近い場所に介添人が一定時間接近すると、基準値以上の放射線を被爆する可能性があることを示す警告標識となる。
【0015】
本手段においては、病院の廊下やエレベータ内を移動可能な範囲で台座の位置(より具体的には台座に座る受診者の身体の一部)からハンドル部までの水平距離をできるだけ大きくとり、この距離に応じてハンドル部での介添人の放射線被爆線量が規定値に達しないように放射線遮蔽壁の対応壁部分の厚さを定めれば良い。台座(又は台座に座る受診者の身体の一部)からハンドル部までの水平距離としては、1m程度とすることが好ましく、この程度の長さであれば前方のハンドル部から後方のハンドル部まで2m程度となるのでエレベータなどへの搭載や廊下の角でのターンが可能としながら、放射線遮蔽壁の厚みを合理的な範囲に抑えることができる。もっともこの水平距離は、病院等の通路の広さに応じて適宜変更することができる。
【0016】
放射線の被爆線量は、単位時間当りの放射線量で規定してもよいが、病院などの放射線管理区域からPET装置搭載車までの移送時間内の積算線量で規定しても良い。この点に関しては、第4の手段において更に後述する。
【0017】
又、受診者の体内に注入したF18FDGは血液とともに体内を循環するため、ハンドル部までの水平距離の起算点となる受診者の身体の一部は、胴部、より具体的には体内で最も多くの血液が集まる受診者の心臓とすることが望ましい。もっとも必ずしも胴部や心臓に限られるものではなく、例えば上述のストレッチャータイプの寝台において、前後のハンドル部に最も近い身体部分(頭部乃至足部)から上記水平距離をとることも可能である。
【0018】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ上記放射線遮蔽壁24を箱形として、この放射線遮蔽壁24の後壁部分24b下部側に接近させて台車2の後半部に受診者Pが着座可能な椅子形の台座12を設け、かつ台車2から後方へ突出した操作アーム42の後部に上記ハンドル部46を形成している。
【0019】
本手段では、台座を椅子形とすることで台車をコンパクトに形成するとともに、既述ストレッチャー形の台車と比較して、椅子に腰掛けた受診者の身体の各部からハンドル部までの距離のばらつきを小さくすることで、身体の一部(例えば胴部)を基準とした放射線の被爆線量の計算誤差が小となるように構成している。
【0020】
上記椅子形の台座は放射線遮蔽壁の後壁部分と連続して設け、この後壁部分を背もたれとすることができる。
【0021】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ上記身体の一部を受診者Pの胴部として、この胴部から前方乃至後方のハンドル部46,48へ到達する放射線の線量を、移送時間中に介添人Nが前方乃至後方のハンドル部46,48の位置で被爆し得る積算線量として、この積算線量から放射線遮蔽壁24の前乃至後方対応壁部分24f、24bの厚さを定め、更に上記移送時間よりも短く設定された遭遇時間内に台車2の傍らに近づいた遭遇者が上記放射線遮蔽壁24の側壁部分24sを透して被爆し得る線量が規定量以下となるように側壁部分24sの厚さを定めている。
【0022】
本手段では、介添人が移送車による移送時間内に、又遭遇者が移送車の傍らに近づいた遭遇時間内にそれぞれ被爆し得る積算線量が基準値以下になるように、放射線遮蔽壁の前又は後方対応壁部分及び左右側壁部分の厚さを定めるように構成したものである。ここで移送時間とは、病院などの放射線管理区域からPET装置搭載車への移送時間を想定しており、又、遭遇時間とは、施設関係者にあっては、人体移送車が通行する廊下やエレベータなどに他の業務のために居合わせる時間や、人体移送車をPET装置搭載車へリフトで格納する際に傍についている時間、他の患者などにあっては、移送車と擦れ違う時間などを想定している。もちろんこれらの移送時間や遭遇時間は個々のケースで異なるため、実際の計算では、標準的な移送時間や遭遇時間を設定して被爆線量を算出すれば良い。この移送時間は少なくとも遭遇時間よりも長く設定するものとする。より具体的には、移送時間としては、例えば5〜10分程度、より好ましくは20分程度とし、更に遭遇時間としては、例えば30秒〜1分程度、より好ましくは2分程度とすると良い。又、許容される放射線の規定量は例えば4μsV(シーベルト)とすることができる。
【0023】
第5の手段は、上記第1の手段乃至第4の手段の何れかを有し、更に上記放射線遮蔽壁24のうち少なくとも前壁乃至後壁の上端部に、上内方へ傾斜する補助遮蔽板26を付設している。
【0024】
「補助遮蔽板」は、受診者の身体から上方へ放出される放射線を介添人などが被爆することを防止するためのものである。もちろん放射線遮蔽壁の上面開口を鉛板などの遮蔽板で閉塞することが放射能洩れの防止という観点から望ましいのであるが、そうすると移送車全体の重量が過度に大きくなり、取り扱い難い。そこで垂直な放射線遮蔽壁の上端部から斜め上内方へ補助遮蔽板を突出させることで少ない遮蔽材料で効果的に遮蔽を行っている。
【0025】
この補助遮蔽板は、放射線遮蔽壁の前方又は後方壁部分の上端に付設すると良く、更に放射線遮蔽壁の左右側壁部分の上端に付設することが望ましい。補助遮蔽板の長さは100mm程度が望ましいが、50mm程度でも良い。又放射線遮蔽壁の上端からの補助遮蔽板の突出角度は、垂直方向に対して30度程度とすると良い。
【0026】
更に上記補助遮蔽板26は、下方より放出された放射線を上方へ散乱させないように内方へ湾曲して張り出す湾曲板部とすると良く、これにより受診者の身体から放射された放射線が補助遮蔽板26の内面で一回乃至複数回反射して下方へ戻るように構成することができる。この補助遮蔽板は、長手方向(前後の補助遮蔽板では左右方向)から見て円弧形状に形成するとよく、更に先端部内面が水平となった円弧形状(特に四半円弧形状)に形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○台車2の前後にハンドル部46,48を放射線遮蔽壁24から離して設けたから、病院の廊下などで人体移送車を誘導している介添人Pが不用意に接近したり、或いは放射線遮蔽壁に不用意に触ることを防止できる。
○受診者用の台座の周囲を放射線遮蔽壁で囲ったから、病院内を通過する患者など受診者のプライバシーも保護される。
【0028】
第2の手段に係る発明によれば、上記放射線遮蔽壁の前後壁部分の厚さをこのハンドル部46,48の位置での被爆量が規定量以下となるように設定したから、このハンドル部を目印にしてこの人体移送車を操作する介添人が規定量を超える放射線を被爆しないようにすることができ、周囲に対する安全性を確実に担保しながら人体移送車の軽量性を図ることができる。
【0029】
第3の手段に係る発明によれば、台座12を椅子形にしたから、台車全体としてコンパクトに形成され、椅子に腰掛けた受診者Pの身体の各部からハンドル部までの距離のばらつきを小さくなり、放射線による被爆量をより的確に予測することができる。
【0030】
第4の手段に係る発明によれば、次の効果が得られる。
○受診者Pの胴部から放射される放射線が規定量以下となるように設計したから、受診者Pから実際に被爆する線量に近い放射線量が的確かつ簡易に得られる。
○放射線遮蔽壁24の前乃至後方壁部分24f、24bは介添人Nの移送時間内の積算放射線量に基づいて、又、左右側方壁部分24sは通行人の遭遇時間内の積算放射線量に基づいて定めたから、放射線遮蔽壁の各部分毎に必要な厚みを無駄なく確保することができる。
【0031】
第5の手段に係る発明によれば、放射線遮蔽壁24の上端部から上内方へ傾斜する補助遮蔽板26を付設したから、少ない放射線遮蔽材料でより効果的に放射線を遮蔽できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1から図5は、本発明の実施形態に係る人体移送車1を示している。
【0033】
この人体移送車は、台車2と、放射線遮蔽用包囲体22と、操作部材40F、40Bとで構成されている。
【0034】
台車2は、上方から見て矩形の基礎フレーム4の前後に前輪6及び後輪8を付設するとともに、基礎フレーム4の後部に後輪駆動用の駆動部10を載置させ、更にこの駆動部の上方を覆うように基礎フレーム4の後部側に椅子形の台座12を取り付けている。又、基礎フレーム4の前部上面には足踏み用の基板14を張設している。更に図示例では、基礎フレーム前部から左右一対の前方張出板16,16を、又、基礎フレーム後部から1枚の後方張出板18をそれぞれ突設して、各前方張出板の裏面に前輪6であるキャスターを付設するとともに、上記後方張出板18の左右両部可能に左右一対の駆動輪を後輪8として支持させている。
【0035】
包囲体22は、図3に示す如く放射線遮蔽壁24と補助遮蔽板26とで、台座12に着座した受診者Pの上方及び下方を除く周囲全体を覆うように構成している。この包囲体は鉛で形成されている。上記放射線遮蔽壁24は、基礎フレーム4の上面から垂直に起立する四角筒形に形成しており、その放射線遮蔽壁の後壁部分24bは、受診者Pの背もたれとして利用さるように台座12の後端部に連続させて形成している。又、放射線遮蔽壁24の上端部には補助遮蔽板26を付設している。この補助遮蔽板26は、放射線遮蔽壁の前後壁部分24f,24bの上端から前後方向上内方へそれぞれ突出した前側及び後側の補助遮蔽板26f、26bと、上記放射線遮蔽壁の左右側壁部分24s,24sの上端から左右方向上内方へそれぞれ突出した側方補助遮蔽板26s、26sとで、各コーナー部で隙間を生じないように形成している。又、この包囲体22の側方一部をヒンジ28を中心として包囲体他部に対して開閉自在な扉30に形成している。32は扉30に付設した把手である。又、補助遮蔽板26は、垂直上方に対して30〜60度程度の角度で突出させることができる。
【0036】
放射線遮蔽壁24の前後方壁部分24f,24bと前側の補助遮蔽板26との厚さは、前後のハンドル部48,46の位置との関係により、又、放射線遮蔽壁の側方壁部分24sの厚さは通行人などとの距離によりそれぞれ移送時間乃至通過時間中の積算放射線量が規定値に達しないように定めるものとする。具体的な厚さの求め方は、実施例で述べる。
【0037】
操作部材40F、40Bは、台車2の前後両側にそれぞれ着脱自在に付設している。後側の操作部材40Bは、図1に示す如く、上記後方張出板24の上面左右両部からそれぞれ起立してから後方へ屈曲する逆L字形の操作アーム42,42を有しており、これら左右一対の操作アームの後端部の間に水平棒状のハンドル部46に形成している。同様に、前側の操作部40Fは、上記前方張出板16,16から起立してから前方へ屈曲する逆L字形の操作アーム44,44を有しており、これら左右一対の操作アームの前端部の間に水平棒状のハンドル部46に形成している。これら両ハンドル部46,48は、それぞれ人体移送車を操作し易い高さ、例えば介添人Nの腰程度の高さに設定すれば良い。上記操作アーム42, 44は台車2に対して着脱自在に形成すると良い。尚、これら操作アーム42,44又はハンドル部46,48の適所には、既述駆動部を操作するための操作ボタン(図示せず)を付設すると良い。尚、図示例と異なり、前後の操作部材40F、40Bは前後対称に(即ち放射線遮蔽壁からハンドル部までの距離もほぼ同じに)形成しても良く、そうすれば、同じ形状の操作部材を台車の前後何れにも使用できる。
【0038】
上記構成において、PET診断を行うときには、まず図5に記載の如く病院60内の放射線管理区域62内で放射線薬剤を受診者Pに注射し、所要時間経過後にこの放射線管理区域に載り入れた人体移送車1内に受診者Pを搭乗させる。この人体移送車1は、その前後に付き添う介添人Nの誘導により、廊下64を通って玄関から外に出る。そして玄関に駐車していたPET診断装置搭載車66内へ、リフト68などを用いて人体移送車1ごと受診者Pを運び入れれば良い。これらの過程においてもっとも受診者Pの身体から放出される放射能を被爆し易いのは介添人Nであるが、その移送時間を考慮して放射線遮蔽壁の前後方壁部分の厚さが決定されているので、不必要に長時間ハンドル部よりも人体移送車側へ近づかない限り規定量以上の放射線を被爆することはない。又、廊下で遭遇する通行人、例えばすれ違う病人Bや、受付その他の業務を行う施設関係者Bに対しても、その距離と通行時間とを考慮して放射線遮蔽壁の側方壁部分の厚さを決定しているので、不意の被爆を防止することができる。
【0039】
図6及び図7は、本発明の補助遮蔽板26の変形例であり、各補助遮蔽板を図7に示す如く人体移送車1の内方へ湾曲して張出しさせることで、受診者Pの身体から放出された放射線が一回又は複数回反射して放射線遮蔽壁24内へ戻り、外部へ逃げないように設けたものである。
【0040】
図1乃至図5の実施形態の如く補助遮蔽板を傾斜平板とすると、後述の実施例で述べる如く受診者の身体からの放射線が後側の補助遮蔽板で斜めやや上前方へ反射して前側の介添人の頭部に当る可能性がある。そこで本実施形態では、図示の様に補助遮蔽板を、少なくとも先端部内面が水平となった円弧板としたのであり、この形状であれば図7に示す如く受診者から補助遮蔽板の先端e2寄り部分内面に当った放射線はそのまま下方へ、更に補助遮蔽板の基端e1寄り部分内面に当った放射線は更に先端e2寄り部分内面で反射した後に下方へ反射して、それぞれ包囲体22内へ戻されるので外部に反射光が洩れ難く、特に、前方の介添人の頭部を直射し易い、浅い仰角での後側補助遮蔽板26bからの放射線の射出を有効に阻止することができる。
【0041】
特に好適なのは図7に示す如く基端e1付近内面で垂直でe2付近内面で水平な四半円板であり、こうすると、基端e1での入射角θが45度以下でない限り、補助遮蔽板26内面の基端寄り部分に下内方から入射した放射線は、図示の如く先端寄り部分で再反射して下方へ向かうので、より確実に外部への散乱を防止することができる。
【0042】
本手段では、後方補助遮蔽板26bを湾曲板にすることが特に重要であるが、それ以外の前方補助遮蔽板26b及び側方補助遮蔽板26sも同様に構成することが望ましい。
【実施例】
【0043】
上記構成において、放射線遮蔽壁24の厚さは人体移送車の各部の寸法との関係を配慮して定める。まず、台車2及び放射線遮蔽壁24の寸法は、通常の体格の受診者Pが圧迫感を感じない範囲でできるだけコンパクトに形成することが望ましい。このために好適な寸法の一例は、例えば台車2及び放射線遮蔽壁24の左右巾が700mm程度、台車2及び放射線遮蔽壁24の前後巾が1000mm程度である。次に上記前後のハンドル部48,46は、台座に着座した受診者Pの胴部上半部分後面及び前面からそれぞれ1000mm程度離すと良い。そうすると仮に受診者Pの胸板の厚さが300mmあったとしても人体移送車の前端から後端までの距離は2300mm程度となり、病院の廊下などを通行するのに差し支えない範囲の大きさとなる。
【0044】
こうして前後のハンドル部48,46を操作する介添人Nと受診者Pの胴部前後両面との間の距離L1、2(≒1000mm)から、介添人Nの被爆線量を一定以下とするように放射線遮蔽壁24の前後壁部分24f、24bの厚さを実験的に定める。又、本願の人体移動車の側面に通行人が最も近づく距離を300mm程度と想定して、この通行人と受診者Pの胴部左右側面との距離L3から放射線遮蔽壁の左右側壁部分24sの厚さを実験的に定める。受診者Pの胴部の左右巾を400mm程度と想定したとき、上記距離L3は550mm程度となる。台座の高さは、受診者Pの心臓が前方及び後方のハンドル部48,46とほぼ同じ高さとなるように設定しており、その高さは床面から1000mmである。
(1)実験内容
上記の実施例で述べた人体移送車の放射線遮蔽壁の厚さと放射線遮蔽能力とを調べるために被験者A、B、C、Dを放射線遮蔽壁の各部の厚さdを変えた人体移送車に搭乗させて、前方測定点f、後方測定点b、側方測定点s、及び斜め前上方測定点u、u’で放射線量を経時的に測定した。ここで図3に示す如く後方測定点bは、後側ハンドル部46の設置箇所であって台車の左右巾方向中間位置(図2に示す如く受診者Pの心臓Hと重なる位置)に、前方測定点fは、前側ハンドル部48の設置箇所であって台車の左右巾方向中間位置にそれぞれ設置するものとする。尚、これらの位置に放射線測定器を設置する際には予め操作アーム及び支柱を取り外しておけば良い。側方測定点sは図2に示す如く受診者Pの胴部左右側面から距離L3(=550mm)をとって受診者Pの心臓Hとほぼ同じ位置に設置した。更に斜め前上方測定点u、u’は,図3に示す如くs側方から見て受診者Pの心臓Hから放射線遮蔽壁の前壁部分24f上端に沿って延びる仮想線Lの近くであってこの前方壁部分24fと前側の介添人Nとの間に、図2の如く左右中間位置からそれぞれ150mm程度左右側方にずらして設定した。そして各被験者に対して、投与量10mCi(370MBq)の放射性薬剤F18−FDG を投与し、その投与時から5分間毎の各時間帯の積算放射線量を測定した。
(2)実験結果
次の表1は前方測定点fでの各被験者A、B、C、D毎の積算放射線量測定値A,B,C,Dを示している。被験者Aは放射線遮蔽壁を取り外した台車に、被験者Cは、放射線遮蔽壁の前壁部分の厚さが3mmの台車に、被験者B及び被験者Dは、放射線遮蔽壁の前壁部分の厚さが5mmの台車にそれぞれ搭乗した。計測値は、被験者B及び被験者Dでの測定値の平均値である。縦軸に各時間帯の積算放射線量の測定値を、又横軸に時間をとって、それらの測定値を各遮蔽壁の厚さごとにグラフ化すると図8のようになる。同図中の破線は、遮蔽厚さ毎の積算線量についての後述の線形近似線である。
【0045】
【表1】

【0046】
次の表2は後方測定点bでの各被験者B、C、D毎の積算放射線量測定値B,C,Dを示している。被験者Bは、放射線遮蔽壁の後壁部分24bの厚さが10mmの台車に、被験者C及び被験者Dは、放射線遮蔽壁の前壁部分の厚さが8mmの台車にそれぞれ搭乗した。計測値は、被験者C及び被験者Dでの測定値の平均値である。縦軸に各時間帯の積算放射線量の測定値を、又横軸に時間をとって、それらの測定値を各遮蔽壁の厚さごとにグラフ化すると図9のようになる。同図中の破線は、遮蔽厚さ毎の積算線量についての後述の線形近似線である。
【0047】
【表2】

【0048】
次の表3は斜め前上方測定点u,u’での各被験者B、C、D毎の積算放射線量測定値B,B’,C,C’,D,D’を示している。測定点uでの測定においては、被験者Bは、前方側の補助遮蔽板の厚さが5mmの台車に、被験者C及び被験者Dは、前方側の補助遮蔽板の厚さが8mmの台車にそれぞれ搭乗しており、又、測定点u’での測定においては、被験者B、被験者C及び被験者Dは、前方側の補助遮蔽板を設けていない台車に搭載している。計測値は、同じ遮蔽厚での測定値の平均値である。又、縦軸に各時間帯の積算放射線量の測定値を、又横軸に時間をとって、それらの測定値を各遮蔽壁の厚さごとにグラフ化すると図10のようになる。同図中の破線は、遮蔽厚さ毎の積算線量についての後述の線形近似線である。
【0049】
【表3】

【0050】
次の表4は側方測定点sでの各被験者B、C、D毎の積算放射線量測定値B,C,Dを示している。被験者Bは、放射線遮蔽壁の前壁部分24fの厚さが5mmの台車に、被験者C及び被験者Dは、放射線遮蔽壁の前壁部分の厚さが8mmの台車にそれぞれ搭乗した。計測値は、被験者C及び被験者Dでの測定値の平均値である。又、縦軸に各時間帯の積算放射線量の測定値を、又横軸に時間をとって、それらの測定値を各遮蔽壁の厚さごとにグラフ化すると図11のようになる。同図中の破線は、遮蔽厚さ毎の積算線量についての後述の線形近似線である。
【0051】
【表4】

【0052】
(3)実験結果の解析
まず、人体移送車の前後に連れ添う介添人の被曝線量から包囲体22の前後部分の厚さを決定するため、前方、後方及び斜め前上方の各測定点での放射線量を検討する。
【0053】
前方測定点fにおいて図8に示す各遮蔽厚さd(=0mm、3mm、5mm)毎に得られた測定値を線形近似すると、破線で表す如くy0=−0.0159t+3.2682,y3=−0.01t+1.9,y5=−0.0101t+1.3826という式が得られる。但し、y0,y3,y5はそれぞれd=0mm,3mm,5mmでの積算線量(μsV)、tは時間(分)である。
【0054】
次にこれらの測定値からd=4mm,d=6mmでの放射線量の予想値y4,y6を計算する。そのために各経過時間ごとの厚さdに関する放射線量の関数Y=f(t、d)を考えて、Y(t、d)=md+bと表す。ここで傾きmと定数bとはともに経過時間tに依存する変数である。y3とy5との間で傾きmを求めると、m=(y5−y3)/2であり、t=5(分)のときには、m=(1.332−1.850)/2=−0.259(μsV/mm)となる。又、定数はb=Y−mdであり、t=5分のときにb=y3−m×3=1.850−(−0.259)×3=2.627(μsV)となる。これより、Y(t、d)=Y(5、d)=−0.259×d+2.627を得る。これにd=4及びd=6を代入すると、Y(t、d)=Y(5、4)=1.591(μsV)及びY(t、d)=Y(5、6)=1.073(μsV)を得る。同じ作業をt=10,15,…60について行うと、図12に示す予想値が得られる。
【0055】
後方測定点において図9に示す各遮蔽厚さd(=8mm、10mm)毎に得られた測定値を線形近似すると、破線で表す如くy8=−0.003t+0.5258,y10=−0.001t+0.3318という式が得られる。但し、y8,y10はそれぞれd=8mm,10mmでの積算線量(μsV)、tは時間(分)である。
【0056】
次にこれらの測定値からd=3〜7mmでの放射線量の予想値y3,y4,y5,y6,y7を計算する。前方測定点で述べたのと同様の手順により図13に示す予想値が得られる。
【0057】
斜め前上方測定点u,u’において図10に示す各遮蔽厚さd(=0mm,5mm,8mm)毎に得られた測定値を線形近似すると、破線で表す如くy0=−0.005t+1,y5=−0.0045t+0.7894,y8=−0.0032t+0.6545という式が得られる。但し、y0,y5,y8はそれぞれd=0mm,5mm,8mmでの積算線量(μsV)、tは時間(分)である。
【0058】
次にこれらの測定値からd=3mm,4mmでの放射線量の予想値y3,y4を計算する。前方測定点で述べたのと同様の手順により図14に示す予想値が得られる。
【0059】
放射線薬剤を注入してから40分間を安静期として、安静期経過後に人体移送車による移送を開始するものとし、この移送に20分間かかるものとして、受診者から介添人までの水平距離が1000mmという条件での前方、後方、及び斜め上方の各測定点での介添人の20分間の積算被爆放射線量を次の表5に表す。人体に対する被爆許容量を4μsVとして、各方向における積算線量がこの許容量を下回る最小の遮蔽厚さdを放射線遮蔽壁のうち当該方向の壁部分の厚さをすることができる。
【0060】
前方測定点fに関しては遮蔽厚さ4mmでの積算線量は4.455μSvであり、遮蔽厚さ5mmでの積算線量は3.409μSvであるから、前方壁部分24fの厚さは5mmとすれば良い。尚、5mmでの積算線量は実際に測定した数値であり、この数値は信頼性が高いものと考えられる。
【0061】
後方測定点bに関しては遮蔽厚さ4mmでの積算線量は3.361μSvであり、遮蔽厚さ3mmでの積算線量は3.707μSvであるから、計算上は遮蔽厚さ3mm程度でも安全基準である4μSvを満たすことになる。しかしながら、遮蔽厚さd=3〜7mmでの積算線量は遮蔽厚さd=8mm、10mmでの実測値から推測した値であり、その推定誤差はd=8mmから離れるほど大きいと考えられること、及び、受診者の身体からの距離が同じである前方測定点の測定から所要の壁厚をd=5mmと割り出したことを総合的に勘案すると、後方壁部分24bの厚さも5mm程度とすることが望ましい。又、前後両壁部分の厚さが同じである方が人体移送車のバランスもとり易い。他方、実測値に裏付けられた後方壁部分の必要厚さとして、8mmを好適な壁厚と考えることもできる。
【0062】
斜め前上方測定点uに関しては、遮蔽厚さ4mmでの積算線量は3.130μSvであり、遮蔽厚さ3mmでの積算線量は3.292μSvであるから、遮蔽厚さ3mmで安全基準を満たしている。そしてこれらの積算線量は遮蔽厚さd=0mm、5mm、8mmでの実測値に基づく推定値であるが、遮蔽厚さd=5〜8mmの間の放射線量Yの勾配mが‐0.044であるのに対してd=0〜5mmの間のmが−0.042で大きな違いがないことから、推定値であってもかなり信頼できることがわかる。従って前方の補助遮蔽板の厚さは3mmとすれば良い。
【0063】
【表5】

【0064】
次に人体移送車に遭遇して被曝する者の被曝線量から放射線遮蔽壁の側方壁部分24sの厚さを決定する。こうした遭遇者は二つのグループに分けられる。一つは、人体移送車のすぐ近くを比較的短い時間すれ違う通行人であり、他の一つは、放射線作業従事者を除く施設関係者であって、人体移送車から比較的遠いところにいるが繰り返し被曝する可能性があるものである。人体移送車からの通行人の通過位置を想定して、本出願人は、既述の側方測定点fで放射線線量測定を行った。
【0065】
この側方測定点fにおいて図11に示す各遮蔽厚さd(=5mm、8mm)毎に得られた測定値を線形近似すると、破線で表す如くy5=−0.0145t+2.2455,y8=−0.005t+1.0864という式が得られる。但し、y5,y8はそれぞれd=5mm、8mmでの積算線量(μsV)、tは時間(分)である。次にこれらの測定値からd=3mm、4mm、6mm、7mmでの放射線量の予想値y3,y4,y6,y7を計算する。前方測定点で述べたのと同様の手順により図15に示す予想値が得られる。側方測定点は受診者Pの身体から550mmの距離の点であり、人体移送車とすれ違う通行人の位置を想定している。
【0066】
更に通行人よりも遠い場所にいる施設設備者の被曝線量を計算で求める。放射線遮蔽壁の側方壁部分から通行人までの距離をI、側方壁部分から施設関係者までの距離をLとし、各遮蔽厚での側方測定点における放射線測定量に(I/L)2を係数としてかけると施設関係者の被曝線量を計算することができる。I=395mm、L=450mmとして上記係数を上記放射線測定量にかけると、図16が得られる。
【0067】
通行人の遭遇時間を30秒、施設関係者の遭遇時間を2分として、上記図15及び図16から通行人と施設関係者との遭遇時間中の被曝放射線量を計算すると、次の表6のようになる。この表から安全基準(4μSv)を満たすように遮蔽厚を選択すると、3mm程度の厚さがあればあれば良いことが判る。
【0068】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る人体移送車の側面図である。
【図2】図1の人体移送車の左右方向縦断面図である。
【図3】図1の人体移送車の前後方向縦断面図である。
【図4】図1の人体移送車の横断面図である。
【図5】図1の人体移送車の使用例の説明図である。
【図6】図1の人体移送車の要部変形例を示す縦断面図である。
【図7】図6の要部の拡大図である。
【図8】図1の人体移送車から洩れる放射線の前方測定点fでの測定線量を表す図である。
【図9】図1の人体移送車から洩れる放射線の後方測定点bでの測定線量を表す図である。
【図10】図1の人体移送車から洩れる放射線の斜め前上方測定点u,u‘での測定線量を表す図である。
【図11】図1の人体移送車から洩れる放射線の側方測定点sでの測定線量を表す図である。
【図12】図8の測定結果に基づき各遮蔽厚さに対応した前方測定点での放射線量の経時変化を表したグラフである。
【図13】図9の測定結果に基づき各遮蔽厚さに対応した後方測定点での放射線量の経時変化を表したグラフである。
【図14】図10の測定結果に基づき各遮蔽厚さに対応した斜め前上方測定点での放射線量の経時変化を表したグラフである。
【図15】図11の測定結果に基づき各遮蔽厚さに対応した側方測定点での放射線量の経時変化を表したグラフである。
【図16】図11の測定結果に基づき各遮蔽厚さに対応した側方測定点よりも更に遠方での放射線量(計算値)の経時変化を表したグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1…人体移送車 2…台車 4…基礎フレーム 6…前輪 8…後輪
10…駆動部 12…台座 14…基板 16…前方張出板 18…後方張出板
22…包囲体 24…放射線遮蔽壁 24f…前壁部分 24b…後壁部分
24s…側壁部分 26…補助遮蔽板 26f…前方側補助遮蔽板
26b…後方側補助遮蔽板 26s…側方補助遮蔽板 28…ヒンジ 30…扉 32…把手
40F、40B…操作部材 42,44…操作アーム 46,48…ハンドル
48…前側ハンドル部
60…病院 62…放射線管理区域 64…廊下 66…PET装置搭載車 68…リフト
f…前方測定点 s…側方測定点 b…後方測定点 u,u’…斜め上前方測定点
P…受診者 N…介添人 B1…通行人 B2…施設関係者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核医療用放射線源を体内へ注入した受診者Pのための移送車であって、台座12を有し周囲に放射線遮蔽壁24を囲成した台車2の前後少なくとも一方に介添人Nが操作するためのハンドル部46,48を上記放射線遮蔽壁24から離して取り付けたことを特徴とする人体移送車。
【請求項2】
上記台座12に載った受診者Pの身体の一部から放射線遮蔽壁24の前乃至後方対応壁部分24f、24bを透して前方乃至後方のハンドル部46,48に至る放射線の線量が規定量以下となるように身体の一部からハンドル部46,48迄の距離に応じて上記対応壁部分24f、24bの厚さを定めたことを特徴とする、請求項1記載の人体移送車。
【請求項3】
上記放射線遮蔽壁24を箱形として、この放射線遮蔽壁24の後壁部分24b下部側に接近させて台車2の後半部に受診者Pが着座可能な椅子形の台座12を設け、かつ台車2から後方へ突出した操作アーム42の後部に上記ハンドル部46を形成したことを特徴とする、請求項2記載の人体移送車。
【請求項4】
上記身体の一部を受診者Pの胴部として、この胴部から前方乃至後方のハンドル部46,48へ到達する放射線の線量を、介添人Nがこの人体移送車での移送時間中に前方乃至後方のハンドル部46,48の位置で被爆し得る積算線量として、この積算線量から放射線遮蔽壁24の前乃至後方対応壁部分24f、24bの厚さを定め、更に上記移送時間よりも短く設定された遭遇時間内に台車2の傍らに近づいた遭遇者が上記放射線遮蔽壁24の側壁部分24sを透して被爆し得る線量が規定量以下となるように側壁部分24sの厚さを定めたことを特徴とする、請求項3記載の人体移送車。
【請求項5】
上記放射線遮蔽壁24のうち少なくとも前壁乃至後壁の上端部に、上内方へ傾斜する補助遮蔽板26を付設したことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の人体移送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−296917(P2006−296917A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126212(P2005−126212)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(599156793)株式会社フリール (2)
【Fターム(参考)】