人体頭部模型
【課題】着脱が容易で且つ耐久性を有したマスク部材を備えた人体頭部模型を提供する。
【解決手段】人体の頭部を模した頭部模型本体2と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部3aを有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材3とを備えた人体頭部模型1であって、前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする。
【解決手段】人体の頭部を模した頭部模型本体2と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部3aを有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材3とを備えた人体頭部模型1であって、前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科実習等で使用される人体頭部模型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科医療の教育現場では、人体頭部模型を用いて、歯列咬合模型に植立させた歯牙に対して切削実習等を行う歯科実習がなされている。
このような歯科実習等に使用される人体頭部模型としては、人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬などの顔面部を模して形成されたマスク部材と、頭部模型本体内部に設けられた歯列咬合模型とを備えたものが知られている。
マスク部材における口元に相当する部分は開口部とされ、その開口部からハンドピースなどを挿入し、歯列咬合模型に植立させた歯牙に対して切削等を行うことにより、臨床に近い状態で実習を行うことができる。
このような人体頭部模型としては、例えば次のような文献に開示されたものがある。
【0003】
実公平6−3419号公報(特許文献1)には、頭部模型本体とマスク部材とを備えた顔面模型及び歯列咬合模型を相互に着脱できるものが開示されている。
ここには、支持台部に固定支持された顔面模型が記載されており、この特許文献1には、操作用レバーをバネ部材の弾力に抗して操作すれば、顔面模型の裏面に設けられたボスの小径部と、支持台部に設けられた係止孔との係止状態が解除される構造が開示されている。
【0004】
登録実用新案第3040834号公報(特許文献2)には、頭部模型本体の前面に着脱自在に取り付けられるマスク部材が開示されている。
ここに記載のマスク部材の裏面の上周縁部には、折曲可能な係止凸片が設けられており、この特許文献2には、人体頭部模型に形成された係止孔に係止凸片を貫通挿入させた後、係止凸片の先端部を折り曲げれば、マスク部材を人体頭部模型の前面に取付可能とした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−3419号公報
【特許文献2】登録実用新案第3040834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような人体の頬などの顔面部を模して形成されたマスク部材は、歯牙に対して切削実習等の各種実習を行うにあたって、どうしても汚れたり、破損したり、実習内容や実習者のレベルに合わせて着脱・交換が必要となったりするため、頭部模型本体からマスク部材が容易に取り替えられるものであることが求められる。また実習を行う実習生毎に個人所有のマスク部材を装着し実習を行なう場合もあり、マスク部材の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものが求められる。また、実習用の模型として、取扱や管理が容易く、安価であって、ある程度リアルな外観であることも要求される。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、頭部模型本体とマスク部材とを備えた顔面模型の全体を支持台から操作用レバーの操作により容易に離脱することができるものであって、頭部模型本体とマスク部材との着脱を容易にしたものではない。
また上記特許文献1には、頭部模型本体とマスク部材とが、ホック状の止具等によって互いに着脱自在に掛止されることが記載されているが、マスク部材を着脱する際にマスク部材の頭部模型本体との接合部分にかかる負荷に考慮した具体的な結着手段等については何ら開示されていない。
【0008】
上記特許文献2に記載のものは、マスク部材を頭部模型本体に取り付ける際には、頭部模型本体に形成された係止孔にマスク部材の係止凸片を挿入させ、この挿入させた状態で係止凸片を折り曲げる、といった「挿入」して「折り曲げる」というマスク部材の装着に少なくとも2アクションが必要である。よってより簡易に着脱ができる構造が求められる。
【0009】
本発明は、前記に鑑みなされたものであり、着脱が容易で且つ耐久性を有したマスク部材を備えた管理が容易く、安価で、リアルな外観の、人体頭部模型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部を有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材とを備えた人体頭部模型であって、前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする。
この構成によれば、頭部模型本体とマスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、マスク部材の頭部模型本体からの離脱は、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させることによって可能とされているので、マスク部材の着脱を容易且つ迅速に行うことができる。例えば歯牙に対して切削実習等を行うにあたり、マスク部材が汚れたり、破損したり、着脱・交換が必要となったりしてしまった場合は、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させるという1アクションでマスク部材を頭部模型本体から離脱させることができるので、迅速にマスク部材を取り替えることができる。
また、マスク部材の頭部模型本体との接合部分には、補強部材が一体化され、マスク部材の接合部分が補強部材で補強されているので、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させても、マスク部材が破断してしまうようなことがない。
よって、マスク部材の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものとすることができる。
加えて、マスク部材と頭部模型本体との接合は、マスク部材と頭部模型本体のそれぞれに一体の簡素な結着手段により実現されるため、例えば、取り付け用の部品を別途用いてマスク部材と頭部模型本体とを接合させる形態と比べ、取り付け用の部品を紛失するおそれがなく、人体頭部模型の管理が容易である。
さらにマスク部材の離脱は、容易にできるとはいえ結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させないとできないので、例えば歯牙に対する切削実習等の作業中にマスク部材が簡単に外れてしまうことがなく、作業が行い易いものとすることができる。
【0011】
本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、間隔を空けて設けられた複数の凸部及び凹部で構成され、前記凸部の外径は前記凹部の内径よりわずかに大とされ、前記凹部に前記凸部に嵌め入れることによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されるものとしてもよい。
また、本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、凸状部材及び凹条で構成され、前記凸状部材の幅寸法は前記凹条の開口幅寸法よりわずかに大とされ、前記凸状部材を前記凹条に押し込むことによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されるものとしてもよい。
さらに、本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、面ファスナーで構成されているものとしてもよいし、磁石及び磁性体で構成されているものとしてもよい。
これらの構成によれば、いずれも結着手段が簡易な構成であるので、着脱しやすく、複雑な機構で構成されたものと比べて安価に作製することができる。
【0012】
そして、本発明の人体頭部模型において、前記補強部材は、薄板状の樹脂材または金属材からなり、前記マスク部材の前記接合部分に成型一体とされているものとしてもよい。
この構成によれば、補強部材がマスク部材に成型一体とされているので、マスク部材と補強部材とを強固に一体とすることができ、マスク部材から補強部材が容易に取れてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の人体頭部模型において、前記マスク部材と前記頭部模型本体の接合部分のいずれか一方に、他方の厚み分に相当する段差部が形成されているものとしてもよい。
この構成によれば、マスク部材或いは頭部模型本体の厚み分に相当する段差部が形成されているので、マスク部材を頭部模型本体に取り付けた際にこれらの接合部分を段差のない面一な平滑面とすることができる。よって、人体頭部模型全体の外観をよくすることができ、使用者は、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人体頭部模型によれば、着脱が容易で且つ耐久性を有したマスク部材を備えた、管理が容易く、安価な、リアルな外観を成すものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人体頭部模型の第1実施形態を示す全体斜視図であり、マスク部材を頭部模型本体から一部剥離した状態を示す図である。
【図2】同人体頭部模型を示す全体斜視図であり、マスク部材が頭部模型本体に装着されている状態を示す図である。
【図3】同人体頭部模型に設けられるマスク部材の裏平面図である。
【図4】図2のZ−Z線矢視断面図に相当し、(a)〜(c)は頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための図である。
【図5】同実施形態の変形例を示す図であり、(a)及び(b)は頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図6】同人体頭部模型の第2実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図7】(a)及び(b)は第2実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図8】同人体頭部模型の第3実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図9】(a)及び(b)は第3実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図10】同人体頭部模型の第4実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図11】(a)及び(b)は第4実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図12】本発明に係る人体頭部模型の使用例を示す図であり、同人体頭部模型が採用された歯科実習台の一例を示す外観側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の人体頭部模型の実施の形態について図面に基づき説明する。
まず本発明の第1実施形態を図1〜図5を参照しながら、説明する。
本実施形態に示す人体頭部模型1は、人体の頭部を模した頭部模型本体2と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部3aを有し頭部模型本体2に接合される軟弾性素材からなるマスク部材3とを備えている。
頭部模型本体2とマスク部材3とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8が一体化されている。
マスク部材3と前記頭部模型本体2との結着手段7を介した接合は、相互の押当て結着力によって可能とされ、またマスク部材3の頭部模型本体2からの離脱は、結着手段7による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させることによって可能とされている。
【0017】
人体頭部模型1は、人体の首から上の部分、すなわち顔面及び頭部を模して形成されており、図1及び図2等に示すように人体頭部模型1は、頭部、目、耳及び鼻部分等の略上半分が頭部模型本体2で、鼻部分より下の頬、口元、顎部分等の略下半分がマスク部材3で構成されている。ここで、上及び下なる用語に関し、人体の頭部側を上、脚部側を下とする概念として用いている(以下、同様)。
頭部模型本体2は、硬質の樹脂材等からなり、図例のものは、より実際の人体頭部に近づけるように頭髪や眉、瞼、耳の穴等、比較的細かく人体頭部を模して形成されたものを示しているが、これに限られず、さらに単純化された頭部模型本体としてもよい。
マスク部材3は、上述したように軟弾性素材からなり、人体の皮膚に似た柔らかさの、例えばゴム、シリコーンゴムシート、シリコーン発泡シート(シリコーンスポンジ)等を適宜成形加工し、必要によって着色加工したもの等を用いることができる。
【0018】
頭部模型本体2の内部には、歯牙4aが植立された顎模型(不図示)を備えた歯列咬合模型4と、歯列咬合模型4を着脱自在とする咬合模型着脱部(不図示)とが設けられている。
なお、歯列咬合模型4の外周には、図1で示すように例えば歯科実習時において水受けとしても使用できるような頬粘膜を模した頬粘膜状筒部5を取り付けるようにしてもよい。また人体頭部模型1の傾きを調整可能としたつまみ部6を回動することによって、所望する角度に段階的に切り替えることができるようにしてもよい。
【0019】
頭部模型本体2の鼻部分より下は、切欠き形成されており、その部分を覆うようにマスク部材3の上周縁部が覆い被さるように接合されて、人体頭部模型1を構成している。
具体的には頭部模型本体2とマスク部材3とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合されており、頭部模型本体2の鼻部分を挟んで耳近傍に向かう部位及び耳近傍から人体頭部模型1の顎方向に向かって延びる部位にマスク部材3における上方の周縁部(以下、上周縁部という)が接合される。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、その結着手段7が略円筒状の凸部70a(図1のX部拡大図参照)及びこの凸部70aに対応して形成された略円筒状の凹部70b(図1のY部拡大図参照)によって構成されている。
なお、図例のものは平面視して円形状からなる凸部70a、凹部70bを示すが、これに限らず平面視して楕円形状のものとしてもよい。
【0020】
ここに示す結着手段7はホック式と呼ぶことができるもので、頭部模型本体2の前面側周縁部に沿って間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凸部70a及びマスク部材3の裏面側周縁部に沿って間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凹部70bで構成されている。
凸部70aの外径R1(図4参照)は凹部70bの内径R2(図4参照)よりわずかに大とされ、凹部70bに凸部70aを嵌め入れることにより凹部70bの開口周縁部が弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。
頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分となる頭部模型本体2の前面側周縁部には、マスク部材3の一部を成す接合部分の厚み分に相当する段差部2aが形成されている。
この段差部2aには、適宜間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凸部70aが設けられており、後記するネジ頭部70aaがこの凸部70aに相当する突出部分となる(図1のX部拡大図参照)。
一方、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分、すなわち、マスク部材3の裏面側の上周縁部には、凸部70aが嵌め入れられる凹部70bが設けられている。
マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、マスク部材3を構成する軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8がマスク部材3と一体化されており、この補強部材8には凸部70aの嵌め入れ口となる連通孔8a(図1のY部拡大図参照)が形成されている。
なお、凸部および凹部の形状は、平面視したときに、この形状の他、多角形や十字などの図形となるよう形成してもよいし、凸部の形状と凹部とを例えば三角形と円形など異なる形状同士の組合せにすることもできる。少なくとも、凸部の形成される位置に対応して凹部が在り、凸部と凹部の接合において、凸部の外径が凹部の内径よりわずかに大であり、凸部および凹部のうち少なくともいずれかが弾性変形することで両者を接合できる構成ならばよい。
【0021】
補強部材8としては、上述のように軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなるものであれば、どのようなものでもよい。すなわち、可撓性においては、マスク部材3の方が補強部材8より可撓性があってしなやかな素材で、剛性においては、マスク部材3より補強部材8の方が、剛性があって強靭な素材であることが求められる。例えば補強部材8としては、薄板状のポリプロピレン等からなる樹脂材または金属材からなるものとしてもよい。
補強部材8はマスク部材3に接着剤等を介して一体化するものとしてもよいし、上述のように樹脂材または金属材からなる場合は、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分に成型一体とされているものとすることができる。
補強部材8をマスク部材3の頭部模型本体2との接合部分に同時成型によって成型一体した場合は、マスク部材3と補強部材8とを強固に一体化することができるので、マスク部材3から補強部材8が容易に取れてしまうことをより確実に防ぐことができる構成を実現できる。
また後記するように、面ファスナーやプレート体の磁石或いは磁性体などの結着手段の一部を補強部材8とすることもできる。
【0022】
図3は、マスク部材3の裏面側の平面図である。ここに示すようにマスク部材3は略扇形状に形成され、口元に相当する略中央部分には略円形の開口部3aが開口形成されている。
マスク部材3の上周縁部中央部位は、頭部模型本体2の鼻下部分に接合される箇所となり、この部位を除くマスク部材3の上周縁部両側からマスク部材3の上側角部及び側部に亘っては、補強部材8の厚み分に相当する段部3b(図4(b)及び図4(c)参照)が形成されており、この段部3bに補強部材8が固着一体に設けられている。
そしてマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に形成された凸部70aに対応して、適宜間隔を空けて複数の略円筒状の凹部70bが形成されている。凹部70bは、補強部材8に形成された連通孔8aと、凸部70a(図4(a)〜(c)参照)が嵌め入れられる係止凹部70ba(図4(b)及び図4(c)参照)とを備えている。
なお、このとき、補強部材8の連通孔8aの内周縁部には、凸部70aが簡単に抜けることのないよう切り込まれたスリット部(不図示)を連通孔8aの直径方向に設けたものとしてもよい。これによれば、凸部70aと凹部70bの嵌め入れ/離脱がしやすく、着脱をより容易に且つ迅速に行うことができる。
【0023】
次に図4(a)〜(c)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造について説明する。
図4(a)に示すように頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分に形成された段差部2aには、軸部70abにより凸部70aを螺着するインサートナット21が設けられている。このインサートナット21は、凸部70aが形成される位置に対応して適宜間隔を空けて複数設けられ、頭部模型本体2を成型する際に一体に埋設される。図中の符号20は、その際に形成されるインサートナット21の挿通孔である。
凸部70aは、図例のようなネジを構成するネジ頭部70aaからなる。該ネジは、樹脂材或いは金属材等からなり、インサートナット21に螺着されるため、雄ネジが形成された軸部70abを備えている。
ネジ頭部70aaの形状は図例に限定されるものではないが、図に示すように角張ったところがない丸みを帯びた形状とすれば、凹部70bに対する嵌め入れ/離脱がしやすいものとすることができる。この形状の他にも、ネジ頭部をテーパ付の形状とすることで、凹部に対する嵌め入れ/離脱がしやすいものとすることもできる。軸部70abは、挿入孔20内に嵌め入れられたインサートナット21に螺入され、これにより、凸部70aをインサートナット21を介して挿入孔20に螺着できる構造となっている。
これによれば、凸部70aを容易に頭部模型本体2に取り付けることができ、簡単に凸部70aが挿入孔20から外れないものとすることができる。
なお、凸部70aの頭部模型本体2への固着構造は上述の例に限定されるものではない。また軸部70abの挿入方向先側にドライバーの形状に合わせた溝を形成しておけば、インサートナット21に螺装された軸部70abをドライバーで容易に外すことができる。この形態の場合、マスク部材をネジ固定する形式の従来型の人体頭部模型にも上記マスク部材3を共用できるので、汎用性が高いというメリットがある。
また、軸部70abは、挿入孔20に圧入固定されている凸部70aが取り外せない形態としてもよい。少なくともマスク部材3の着脱時に、凸部70aが脱落/埋入するなどの不具合が生じない構成であればよい。
【0024】
図4(b)に示すように凸部70aの外径R1は凹部70bの開口部の内径R2、具体的には連通孔8aの内径よりわずかに大(R1>R2)となるように形成されている。また連通孔8aと連通する係止凹部70baの内径も、連通孔8aの内径よりわずかに大となるように形成されている。
よって、凹部70bを凸部70aに嵌め入れる際にはマスク部材3側の凹部70bが弾性変形し、その後、両者が嵌め合わされると凹部70bに元の形状に戻ろうとする復元弾力が働き、凹部70bの内壁面が凸部70aのネジ頭部70aaを押圧するよう作用し、強固な接合状態となる。
すなわち、これにより、頭部模型本体2とマスク部材3の接合状態は、結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させなければ離脱できない状態とすることができる。
さらに上述したように、凸部70aの外径及び係止凹部70baの内径が、連通孔8aの内径よりもわずかに大きくなるように形成されている。
よって、図4(c)に示すように凸部70aが係止凹部70baに嵌め入れられると、ネジ頭部70aaと軸部70abの境目のくびれ部分に連通孔8aの内周縁部が食い込むように緊合し、頭部模型本体2とマスク部材3との接合関係がより強固なものとなる。
これにより、例えば歯牙4a(図1及び図2参照)に対する切削実習等の作業中にマスク部材3が簡単に外れてしまうことがなく、作業が行い易いものとすることができる。
また以上のように頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造が簡易な構成であるので、複雑な機構で構成されたものと比べて安価に作製することができる。
【0025】
続いてマスク部材3の頭部模型本体2への着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の前面側周縁部にマスク部材3の裏面側上周縁部が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7bと頭部模型本体2側の結着手段7aとを結着させていけば、マスク部材3を頭部模型本体2に装着することができる。例えば、鼻下近傍部位から次々に両者を結着させていってもよいし、耳近傍部位から順に両者を結着させていってもよい。
このように、結着手段7(7a,7b)を結着させるだけの1アクションで両者を接合でき、例えば衣服に設けられたホックを留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(70b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくことができる。
ここで頭部模型本体2には、マスク部材3の厚み分に相当する段差部2aが形成されているので、図2に示すように表面側の接合部分を段差のない面一な平滑面とすることができる。またマスク部材3側の結着手段7b(70b)はマスク部材3の裏面に設けられているので、頭部模型本体2にマスク部材3を装着すれば、結着手段7(7a,7b)が表面から見えない。よって人体頭部模型1全体の外観をよくすることができ、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【0026】
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させる。すなわち、マスク部材3の片端部を持って結着手段7(7a,7b)を引き離す方向に力をかけていくと(図1参照)、接合状態が解除されマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
このとき、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、補強部材8が一体化され、マスク部材3の接合部分が補強部材8で補強されているので、結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させても、軟弾性素材からなるマスク部材3が破断してしまうようなことがない。よってマスク部材3の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものとすることができる。
以上のようにマスク部材3の頭部模型本体2への着脱が容易なので、例えば歯牙4aに対する切削実習等を行うにあたり、マスク部材3が汚れたり、破損してしまったり、着脱・交換が必要となったりする場合は、迅速にマスク部材を取り替えることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、頭部模型本体2側に凸部70a、マスク部材3側に凹部70bが形成され、これによって結着手段7を構成する例について説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2側に凹部、マスク部材3側に凸部が形成されるものとしてもよい。またここでは凹部70b側が弾性変形して凸部70aに嵌め入れられる例について説明したが、これに限定されず、例えばねじ頭部70aaをゴム材などの弾性部材で構成し、凸部70a側を弾性変形させて凹部70bに嵌め入れられるようにしてもよい。または、凸部および凹部の両方が弾性変形する部材で構成されていてもよく、少なくとも凸部または凹部のいずれか一方が弾性変形することで、頭部模型本体2とマスク部材3の強固な接合状態を保持することが可能で、且つ一定以上の力が加えられることでマスク部材3を離脱できる構成であればよい。
【0028】
次に本実施形態の変形例について、図5を参照しながら、説明する。
上述の例と共通する部分には共通の符号を付し、共通する部分の説明は省略する。
ここに示す変形例は、結着手段7(7a,7b)の構成は同じであるが、マスク部材3の頭部模型本体2への装着が、頭部模型本体2の裏側にマスク部材3の表側が重ね合わされる状態で装着される点で上述の例と異なる。
よって、頭部模型本体2側のマスク部材3との接合部分に段差部がなく、この例では、マスク部材3側の頭部模型本体2との接合部分に段差部3cが形成されている。
そして段差部3cには、凸部70aが嵌め入れられる凹部70bが設けられるとともに、補強部材8も固着一体にされており、係止凹部70baと連通する連通孔8aが形成されている。
また図例のように頭部模型本体2に形成される挿通孔20を有底に形成し、頭部模型本体2の表側から結着手段70aが見えない構造としてもよい。
【0029】
この変形例において、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の裏面側周縁部にマスク部材3の表面側上周縁部を持っていき(図5(a)参照)、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(70b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)とを結着させていく(図5(b)参照)。
この構成においても、例えば衣服に設けられたホックを留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(70b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくだけの1アクションで両者を接合させることができる。
またこの構成においても、マスク部材3側に頭部模型本体2の厚み分に相当する段差部3cが形成されており、図5(b)に示すように表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。さらに頭部模型本体2に形成される挿通孔20を有底にした場合は、結着手段7(7a,7b)が頭部模型本体2の表面から見えないので、人体頭部模型1全体の外観をよくすることができ、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【0030】
以下、第1実施形態とは結着手段7の構造が異なる例を各実施形態として説明する。
また以下では、第1の実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、共通する部分の説明は省略する。
本発明の第2実施形態を図6及び図7を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が凸状部材71a、この凸状部材71aに対応して形成された凹条71bによって構成されている。
ここに示す結着手段7はチャック式と呼ぶことができるもので、凸状部材71a及び凹条71bで構成され、凸状部材71aの幅寸法R3は凹条71bの開口幅寸法R4より大とされ、凸状部材71aを凹条71bに押し込むことにより凹条71bが弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。
【0031】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、鼻部分を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、レール状の凸状部材71aが固着体に設けられている。
凸状部材71a及び凹条71bの形状は、互いに対応して形成され、凸状部材71aを凹条71bに押し込むことにより凹条71bが弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される形状であれば、どのような構成でもよい。
図6及び図7(a)、図7(b)に示す頭部模型本体2側に設けられる凸状部材71aは、幅方向に突出した突出部71aaと、接合状態を強固にするために凹状に形成されたくびれ部71abと、頭部模型本体2に一体とされる平坦面をなす基部71acとを備えている。
凸状部材71aは、図6に示すようにレール状に連続して形成されるものであってもよいし、不連続に適宜間隔を空けて複数設けられるものであってもよい。凸状部材71aを複数設けるものとした場合、その凸状部材71aの形状は、円筒状を含む略円筒状のものとしてもよいし、直方体状を含む略直方体状のものとしてもよい。
なお、ここでは頭部模型本体2と凸状部材71aとを別体とした例を説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2に凸状部材71aが一体に成型されたもの(凸状部を有する頭部模型本体)としてもよい。
【0032】
一方のマスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、補強部材8の厚み分に相当する段部3bが形成されており、この段部3bに補強部材8が固着一体に設けられている。
そしてマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に形成された凸状部材71aに対応して、凹条71bが頭部模型本体2との接合部分に沿って、レール状に一連に形成されている。
凹条71bは、図7に示すように補強部材8に形成された連通開口8bと、凸状部材71aの突出部71aaが嵌め入れられる係止凹条部71baとを備えている。
なお、図7では凹条71bが補強部材8に形成されている例を示しているが、これに限定されず、例えば図4の実施形態のように補強部材8とマスク部材3とに跨って形成されたものとしてもよいし、マスク部材3に凹条71bを形成し、形成された凹条71bの周囲に補強部材8が形成されたものとしてもよい。
【0033】
次に図7(a)及び図7(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造について説明する。
図7(a)に示すように頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分に形成された段差部2aには凸状部材71aが設けられており、凸状部材71aの幅寸法R3は凹条71bの開口幅寸法R4、具体的には連通開口8bの開口幅寸法より大(R3>R4)となるように形成されている。また連通開口8bと連通する係止凹条部71baの開口幅寸法も、連通開口8bの開口幅寸法より大となるように形成されている。
よって、凹条71bに凸状部材71aを嵌め入れる際にはマスク部材3側の凹条71bの開口縁部、すなわち連通開口8bの縁部が弾性変形し、その後、両者が嵌め合わされると凹条71bに元の形状に戻ろうとする復元弾力が働き、凹条71bの内壁面が凸状部材71aの側部を押圧するように作用し、強固な接合状態となる。
すなわち、これにより、頭部模型本体2とマスク部材3の接合状態は、結着手段7(71a,71b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させなければ離脱できない状態とすることができる。
さらに上述したように、凸状部材71aの幅寸法及び係止凹条部71baの開口幅寸法が連通開口8bの開口幅寸法よりも大きくなるように形成されている。
よって、図7(b)に示すように凸状部材71aを構成するくびれ部71abに連通開口8bが食い込むように緊合し、頭部模型本体2とマスク部材3との接合関係がより強固なものとなる。
【0034】
続いてマスク部材3の頭部模型本体2への着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の前面側にマスク部材3の裏面側が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(71b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(71a)とを端の方から指を押し当てて押し込むように結着させていけば、マスク部材3を頭部模型本体2に装着することができる。
このように、両者を結着させるだけの1アクションで両者を接合でき、例えば食品用保存用袋の開閉部分を留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(71b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(71a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくことができる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
なお、本実施形態では、頭部模型本体2側に凸状部材71a、マスク部材3側に凹条71bが形成され、これによって結着手段7を構成する例について説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2側に凹条、マスク部材3側に凸状部材が形成されるものしてもよい。またここでは凹条71b側が弾性変形して凸状部材71aに嵌め入れられる例について説明したが、これに限定されず、凸状部材71a側が弾性変形して凹条71bに嵌め入れられるようにしてもよい。または、凸状部材および凹条の両方が弾性変形する部材で構成されていてもよく、少なくとも凸状部材または凹条のいずれか一方が弾性変形することで、頭部模型本体2とマスク部材3の強固な接合状態を保持することが可能で、且つ一定以上の力が加えられることでマスク部材3を離脱できる構成であればよい。
【0035】
本発明の第3実施形態を図8及び図9を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が一対のファスナー部材72a、72bによって構成されている。
ここに示す結着手段7は互いを貼り合わせたり、引き剥がしたりが何度も自在にできる面ファスナー式と呼ぶことができるもので、一対のファスナー部材72a、72bによって頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。図例では、頭部模型本体2側にフック状に起毛されたファスナー部材72aを設け、マスク部材3側にループ状(パイル状)に起毛されたファスナー部材72bを設けた例を示しているが、逆の実施形態でもよく、また一対のファスナー部材72a、72bの構成もフック状、ループ状の区別のないタイプのもの、鮫の歯状のものなど、汎用の面ファスナーを適用することができる。
【0036】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、頭部模型本体2の鼻部分を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、接着剤等を介して固着一体に帯状のファスナー部材72aが設けられており、段差部2aは、一対のファスナー部材72a、72bの接合状態の厚みを含んだマスク部材3の厚み分に相当する段差に形成されている。これによれば、マスク部材3を頭部模型本体2に接合した際に、マスク部材3と頭部模型本体3との表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。
【0037】
一方のマスク部材3の裏面側周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に設けられたファスナー部材72aに対応して、接着剤等を介したり、ファスナー部材72aの一部(起毛部分を植立させた部分など)をマスク部材3に埋着したりなどして固着一体にファスナー部材72bが設けられている。
マスク部材3側には、第1実施形態及び第2実施形態で示したように段部に補強部材8を一体形成したものとしてもよいが、ここに示すようにマスク部材3側に設けられたファスナー部材72bが補強部材8として機能するように構成してもよい。
【0038】
次に図9(a)及び図9(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造及び着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の表側にマスク部材3の裏側が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(72b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(72a)とを端の方から指を押し当てて押圧し結着させていく。すると、フック状及びループ状に起毛されたものが絡まり噛み合い、このように両者を結着させるだけの1アクションで接合できる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
【0039】
本発明の第4実施形態を図10及び図11を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が磁石73a、磁性体73bによって構成されている。
ここに示す結着手段7は互いを磁力によって貼り合わせたり、引き離したりが何度も自在にできるマグネット式と呼ぶことができるもので、磁石73aと、磁石73aにくっつく磁性体73bによって頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。図例では、頭部模型本体2側に磁石を設け、マスク部材3側に磁性体を設けた例を示しているが、逆でもよい。磁石73aとしては、薄状プレート体であれば望ましく、例えば合成樹脂材やゴム材に磁性粉を混入しこれをシート状に形成しその表裏面にN極とS極を着磁して作製されたものを用いることができる。また磁性体73bとしては、同じく薄状プレート体のものであれば望ましく、鉄、ステンレス材及びこれら磁性粉が含有されたシートなどを用いることができる。
【0040】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、頭部模型本体2の鼻を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、磁石73aが設けられており、段差部2aは、磁石73a及び磁性体73bの接合状態の厚みを含んだマスク部材3の厚み分に相当する段差に形成されている。
これによれば、マスク部材3を頭部模型本体2に接合した際に、マスク部材3と頭部模型本体3との表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。
【0041】
一方のマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に設けられた磁石73aに対応して、磁性体73bが設けられている。
マスク部材3側には、第1実施形態及び第2実施形態で示したように段部に補強部材8を一体形成したものとしてもよいが、ここに示すようにマスク部材3側に設けられた磁性体73bが補強部材8として機能するように構成してもよい。
【0042】
次に図10(a)及び図10(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造及び着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の表側にマスク部材3の裏側が重ね合わされる状態で磁力によって両者を結着させることができる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
【0043】
続いて図12には、これまで説明した各実施形態の人体頭部模型1が採用される歯科実習台10を示している。ここに示すように人体頭部模型1は、歯科実習のための実習机12に取付られた胴体模型11に、つまみ部6を用いて位置調整可能に取り付けることができる。この歯科実習台10は、不図示の診療機器、技工機器、各種コントローラ、照明灯13などを備え、歯科診療実習、歯科技工実習の双方を行うことができる。
ここでは、同じ構成の実習机12が対面して設けられた歯科実習台10を示しているが、この形態に限定されるものではない。また本実施形態の人体頭部模型1は、実際の歯科医院などにおいて使用される診療台に、患者の胴体を模した胴体模型を設置した臨床教育用の歯科実習装置(不図示)や、取付金具(不図示)を用いてテーブルに取り付けて使用するものにも適用可能である。
【0044】
なお、本発明の結着手段は上述の例に限定されず、同様の機能を奏するものであれば、他の構成のものも採用可能であることは言うまでもなく、例えば繰り返し着脱可能な粘着剤を塗布して構成してもよいし、マスク部材3の補強部材8としてワイヤーなどの線状部材を用いてもよい。また、第2実施形態〜第4実施形態においても、図5で示す頭部模型本体2の裏側にマスク部材3の表側が重ね合わされる状態で装着される例を適用することができ、この場合は図5に示すようにマスク部材3側に段差部3cが形成されたものとすることが望ましいことは言うまでもない。さらに各実施形態では頭部模型本体2とマスク部材3との着脱要領について説明したが、これら説明した着脱要領に限定されるものではないことも言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 人体頭部模型
2 頭部模型本体
2a 段差部
3 マスク部材
3c 段差部
7 結着手段
70a 凸部
70b 凹部
71a 凸状部材
71b 凹条
72a ファスナー部材
72b ファスナー部材
73a 磁石
73b 磁性体
8 補強部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科実習等で使用される人体頭部模型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯科医療の教育現場では、人体頭部模型を用いて、歯列咬合模型に植立させた歯牙に対して切削実習等を行う歯科実習がなされている。
このような歯科実習等に使用される人体頭部模型としては、人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬などの顔面部を模して形成されたマスク部材と、頭部模型本体内部に設けられた歯列咬合模型とを備えたものが知られている。
マスク部材における口元に相当する部分は開口部とされ、その開口部からハンドピースなどを挿入し、歯列咬合模型に植立させた歯牙に対して切削等を行うことにより、臨床に近い状態で実習を行うことができる。
このような人体頭部模型としては、例えば次のような文献に開示されたものがある。
【0003】
実公平6−3419号公報(特許文献1)には、頭部模型本体とマスク部材とを備えた顔面模型及び歯列咬合模型を相互に着脱できるものが開示されている。
ここには、支持台部に固定支持された顔面模型が記載されており、この特許文献1には、操作用レバーをバネ部材の弾力に抗して操作すれば、顔面模型の裏面に設けられたボスの小径部と、支持台部に設けられた係止孔との係止状態が解除される構造が開示されている。
【0004】
登録実用新案第3040834号公報(特許文献2)には、頭部模型本体の前面に着脱自在に取り付けられるマスク部材が開示されている。
ここに記載のマスク部材の裏面の上周縁部には、折曲可能な係止凸片が設けられており、この特許文献2には、人体頭部模型に形成された係止孔に係止凸片を貫通挿入させた後、係止凸片の先端部を折り曲げれば、マスク部材を人体頭部模型の前面に取付可能とした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−3419号公報
【特許文献2】登録実用新案第3040834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような人体の頬などの顔面部を模して形成されたマスク部材は、歯牙に対して切削実習等の各種実習を行うにあたって、どうしても汚れたり、破損したり、実習内容や実習者のレベルに合わせて着脱・交換が必要となったりするため、頭部模型本体からマスク部材が容易に取り替えられるものであることが求められる。また実習を行う実習生毎に個人所有のマスク部材を装着し実習を行なう場合もあり、マスク部材の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものが求められる。また、実習用の模型として、取扱や管理が容易く、安価であって、ある程度リアルな外観であることも要求される。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、頭部模型本体とマスク部材とを備えた顔面模型の全体を支持台から操作用レバーの操作により容易に離脱することができるものであって、頭部模型本体とマスク部材との着脱を容易にしたものではない。
また上記特許文献1には、頭部模型本体とマスク部材とが、ホック状の止具等によって互いに着脱自在に掛止されることが記載されているが、マスク部材を着脱する際にマスク部材の頭部模型本体との接合部分にかかる負荷に考慮した具体的な結着手段等については何ら開示されていない。
【0008】
上記特許文献2に記載のものは、マスク部材を頭部模型本体に取り付ける際には、頭部模型本体に形成された係止孔にマスク部材の係止凸片を挿入させ、この挿入させた状態で係止凸片を折り曲げる、といった「挿入」して「折り曲げる」というマスク部材の装着に少なくとも2アクションが必要である。よってより簡易に着脱ができる構造が求められる。
【0009】
本発明は、前記に鑑みなされたものであり、着脱が容易で且つ耐久性を有したマスク部材を備えた管理が容易く、安価で、リアルな外観の、人体頭部模型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部を有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材とを備えた人体頭部模型であって、前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする。
この構成によれば、頭部模型本体とマスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、マスク部材の頭部模型本体からの離脱は、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させることによって可能とされているので、マスク部材の着脱を容易且つ迅速に行うことができる。例えば歯牙に対して切削実習等を行うにあたり、マスク部材が汚れたり、破損したり、着脱・交換が必要となったりしてしまった場合は、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させるという1アクションでマスク部材を頭部模型本体から離脱させることができるので、迅速にマスク部材を取り替えることができる。
また、マスク部材の頭部模型本体との接合部分には、補強部材が一体化され、マスク部材の接合部分が補強部材で補強されているので、結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させても、マスク部材が破断してしまうようなことがない。
よって、マスク部材の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものとすることができる。
加えて、マスク部材と頭部模型本体との接合は、マスク部材と頭部模型本体のそれぞれに一体の簡素な結着手段により実現されるため、例えば、取り付け用の部品を別途用いてマスク部材と頭部模型本体とを接合させる形態と比べ、取り付け用の部品を紛失するおそれがなく、人体頭部模型の管理が容易である。
さらにマスク部材の離脱は、容易にできるとはいえ結着手段による結着力に抗した力をマスク部材に作用させないとできないので、例えば歯牙に対する切削実習等の作業中にマスク部材が簡単に外れてしまうことがなく、作業が行い易いものとすることができる。
【0011】
本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、間隔を空けて設けられた複数の凸部及び凹部で構成され、前記凸部の外径は前記凹部の内径よりわずかに大とされ、前記凹部に前記凸部に嵌め入れることによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されるものとしてもよい。
また、本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、凸状部材及び凹条で構成され、前記凸状部材の幅寸法は前記凹条の開口幅寸法よりわずかに大とされ、前記凸状部材を前記凹条に押し込むことによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されるものとしてもよい。
さらに、本発明の人体頭部模型において、前記結着手段は、面ファスナーで構成されているものとしてもよいし、磁石及び磁性体で構成されているものとしてもよい。
これらの構成によれば、いずれも結着手段が簡易な構成であるので、着脱しやすく、複雑な機構で構成されたものと比べて安価に作製することができる。
【0012】
そして、本発明の人体頭部模型において、前記補強部材は、薄板状の樹脂材または金属材からなり、前記マスク部材の前記接合部分に成型一体とされているものとしてもよい。
この構成によれば、補強部材がマスク部材に成型一体とされているので、マスク部材と補強部材とを強固に一体とすることができ、マスク部材から補強部材が容易に取れてしまうことを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の人体頭部模型において、前記マスク部材と前記頭部模型本体の接合部分のいずれか一方に、他方の厚み分に相当する段差部が形成されているものとしてもよい。
この構成によれば、マスク部材或いは頭部模型本体の厚み分に相当する段差部が形成されているので、マスク部材を頭部模型本体に取り付けた際にこれらの接合部分を段差のない面一な平滑面とすることができる。よって、人体頭部模型全体の外観をよくすることができ、使用者は、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の人体頭部模型によれば、着脱が容易で且つ耐久性を有したマスク部材を備えた、管理が容易く、安価な、リアルな外観を成すものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人体頭部模型の第1実施形態を示す全体斜視図であり、マスク部材を頭部模型本体から一部剥離した状態を示す図である。
【図2】同人体頭部模型を示す全体斜視図であり、マスク部材が頭部模型本体に装着されている状態を示す図である。
【図3】同人体頭部模型に設けられるマスク部材の裏平面図である。
【図4】図2のZ−Z線矢視断面図に相当し、(a)〜(c)は頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための図である。
【図5】同実施形態の変形例を示す図であり、(a)及び(b)は頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図6】同人体頭部模型の第2実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図7】(a)及び(b)は第2実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図8】同人体頭部模型の第3実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図9】(a)及び(b)は第3実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図10】同人体頭部模型の第4実施形態を示す正面図であり、マスク部材を頭部模型本体から離脱させた状態を示す模式的正面図である。
【図11】(a)及び(b)は第4実施形態の頭部模型本体とマスク部材との接合構造を説明するための模式的要部断面図である。
【図12】本発明に係る人体頭部模型の使用例を示す図であり、同人体頭部模型が採用された歯科実習台の一例を示す外観側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の人体頭部模型の実施の形態について図面に基づき説明する。
まず本発明の第1実施形態を図1〜図5を参照しながら、説明する。
本実施形態に示す人体頭部模型1は、人体の頭部を模した頭部模型本体2と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部3aを有し頭部模型本体2に接合される軟弾性素材からなるマスク部材3とを備えている。
頭部模型本体2とマスク部材3とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8が一体化されている。
マスク部材3と前記頭部模型本体2との結着手段7を介した接合は、相互の押当て結着力によって可能とされ、またマスク部材3の頭部模型本体2からの離脱は、結着手段7による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させることによって可能とされている。
【0017】
人体頭部模型1は、人体の首から上の部分、すなわち顔面及び頭部を模して形成されており、図1及び図2等に示すように人体頭部模型1は、頭部、目、耳及び鼻部分等の略上半分が頭部模型本体2で、鼻部分より下の頬、口元、顎部分等の略下半分がマスク部材3で構成されている。ここで、上及び下なる用語に関し、人体の頭部側を上、脚部側を下とする概念として用いている(以下、同様)。
頭部模型本体2は、硬質の樹脂材等からなり、図例のものは、より実際の人体頭部に近づけるように頭髪や眉、瞼、耳の穴等、比較的細かく人体頭部を模して形成されたものを示しているが、これに限られず、さらに単純化された頭部模型本体としてもよい。
マスク部材3は、上述したように軟弾性素材からなり、人体の皮膚に似た柔らかさの、例えばゴム、シリコーンゴムシート、シリコーン発泡シート(シリコーンスポンジ)等を適宜成形加工し、必要によって着色加工したもの等を用いることができる。
【0018】
頭部模型本体2の内部には、歯牙4aが植立された顎模型(不図示)を備えた歯列咬合模型4と、歯列咬合模型4を着脱自在とする咬合模型着脱部(不図示)とが設けられている。
なお、歯列咬合模型4の外周には、図1で示すように例えば歯科実習時において水受けとしても使用できるような頬粘膜を模した頬粘膜状筒部5を取り付けるようにしてもよい。また人体頭部模型1の傾きを調整可能としたつまみ部6を回動することによって、所望する角度に段階的に切り替えることができるようにしてもよい。
【0019】
頭部模型本体2の鼻部分より下は、切欠き形成されており、その部分を覆うようにマスク部材3の上周縁部が覆い被さるように接合されて、人体頭部模型1を構成している。
具体的には頭部模型本体2とマスク部材3とは、結着手段7を介して互いに着脱自在に接合されており、頭部模型本体2の鼻部分を挟んで耳近傍に向かう部位及び耳近傍から人体頭部模型1の顎方向に向かって延びる部位にマスク部材3における上方の周縁部(以下、上周縁部という)が接合される。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、その結着手段7が略円筒状の凸部70a(図1のX部拡大図参照)及びこの凸部70aに対応して形成された略円筒状の凹部70b(図1のY部拡大図参照)によって構成されている。
なお、図例のものは平面視して円形状からなる凸部70a、凹部70bを示すが、これに限らず平面視して楕円形状のものとしてもよい。
【0020】
ここに示す結着手段7はホック式と呼ぶことができるもので、頭部模型本体2の前面側周縁部に沿って間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凸部70a及びマスク部材3の裏面側周縁部に沿って間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凹部70bで構成されている。
凸部70aの外径R1(図4参照)は凹部70bの内径R2(図4参照)よりわずかに大とされ、凹部70bに凸部70aを嵌め入れることにより凹部70bの開口周縁部が弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。
頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分となる頭部模型本体2の前面側周縁部には、マスク部材3の一部を成す接合部分の厚み分に相当する段差部2aが形成されている。
この段差部2aには、適宜間隔を空けて設けられた複数の略円筒状の凸部70aが設けられており、後記するネジ頭部70aaがこの凸部70aに相当する突出部分となる(図1のX部拡大図参照)。
一方、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分、すなわち、マスク部材3の裏面側の上周縁部には、凸部70aが嵌め入れられる凹部70bが設けられている。
マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、マスク部材3を構成する軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材8がマスク部材3と一体化されており、この補強部材8には凸部70aの嵌め入れ口となる連通孔8a(図1のY部拡大図参照)が形成されている。
なお、凸部および凹部の形状は、平面視したときに、この形状の他、多角形や十字などの図形となるよう形成してもよいし、凸部の形状と凹部とを例えば三角形と円形など異なる形状同士の組合せにすることもできる。少なくとも、凸部の形成される位置に対応して凹部が在り、凸部と凹部の接合において、凸部の外径が凹部の内径よりわずかに大であり、凸部および凹部のうち少なくともいずれかが弾性変形することで両者を接合できる構成ならばよい。
【0021】
補強部材8としては、上述のように軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなるものであれば、どのようなものでもよい。すなわち、可撓性においては、マスク部材3の方が補強部材8より可撓性があってしなやかな素材で、剛性においては、マスク部材3より補強部材8の方が、剛性があって強靭な素材であることが求められる。例えば補強部材8としては、薄板状のポリプロピレン等からなる樹脂材または金属材からなるものとしてもよい。
補強部材8はマスク部材3に接着剤等を介して一体化するものとしてもよいし、上述のように樹脂材または金属材からなる場合は、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分に成型一体とされているものとすることができる。
補強部材8をマスク部材3の頭部模型本体2との接合部分に同時成型によって成型一体した場合は、マスク部材3と補強部材8とを強固に一体化することができるので、マスク部材3から補強部材8が容易に取れてしまうことをより確実に防ぐことができる構成を実現できる。
また後記するように、面ファスナーやプレート体の磁石或いは磁性体などの結着手段の一部を補強部材8とすることもできる。
【0022】
図3は、マスク部材3の裏面側の平面図である。ここに示すようにマスク部材3は略扇形状に形成され、口元に相当する略中央部分には略円形の開口部3aが開口形成されている。
マスク部材3の上周縁部中央部位は、頭部模型本体2の鼻下部分に接合される箇所となり、この部位を除くマスク部材3の上周縁部両側からマスク部材3の上側角部及び側部に亘っては、補強部材8の厚み分に相当する段部3b(図4(b)及び図4(c)参照)が形成されており、この段部3bに補強部材8が固着一体に設けられている。
そしてマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に形成された凸部70aに対応して、適宜間隔を空けて複数の略円筒状の凹部70bが形成されている。凹部70bは、補強部材8に形成された連通孔8aと、凸部70a(図4(a)〜(c)参照)が嵌め入れられる係止凹部70ba(図4(b)及び図4(c)参照)とを備えている。
なお、このとき、補強部材8の連通孔8aの内周縁部には、凸部70aが簡単に抜けることのないよう切り込まれたスリット部(不図示)を連通孔8aの直径方向に設けたものとしてもよい。これによれば、凸部70aと凹部70bの嵌め入れ/離脱がしやすく、着脱をより容易に且つ迅速に行うことができる。
【0023】
次に図4(a)〜(c)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造について説明する。
図4(a)に示すように頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分に形成された段差部2aには、軸部70abにより凸部70aを螺着するインサートナット21が設けられている。このインサートナット21は、凸部70aが形成される位置に対応して適宜間隔を空けて複数設けられ、頭部模型本体2を成型する際に一体に埋設される。図中の符号20は、その際に形成されるインサートナット21の挿通孔である。
凸部70aは、図例のようなネジを構成するネジ頭部70aaからなる。該ネジは、樹脂材或いは金属材等からなり、インサートナット21に螺着されるため、雄ネジが形成された軸部70abを備えている。
ネジ頭部70aaの形状は図例に限定されるものではないが、図に示すように角張ったところがない丸みを帯びた形状とすれば、凹部70bに対する嵌め入れ/離脱がしやすいものとすることができる。この形状の他にも、ネジ頭部をテーパ付の形状とすることで、凹部に対する嵌め入れ/離脱がしやすいものとすることもできる。軸部70abは、挿入孔20内に嵌め入れられたインサートナット21に螺入され、これにより、凸部70aをインサートナット21を介して挿入孔20に螺着できる構造となっている。
これによれば、凸部70aを容易に頭部模型本体2に取り付けることができ、簡単に凸部70aが挿入孔20から外れないものとすることができる。
なお、凸部70aの頭部模型本体2への固着構造は上述の例に限定されるものではない。また軸部70abの挿入方向先側にドライバーの形状に合わせた溝を形成しておけば、インサートナット21に螺装された軸部70abをドライバーで容易に外すことができる。この形態の場合、マスク部材をネジ固定する形式の従来型の人体頭部模型にも上記マスク部材3を共用できるので、汎用性が高いというメリットがある。
また、軸部70abは、挿入孔20に圧入固定されている凸部70aが取り外せない形態としてもよい。少なくともマスク部材3の着脱時に、凸部70aが脱落/埋入するなどの不具合が生じない構成であればよい。
【0024】
図4(b)に示すように凸部70aの外径R1は凹部70bの開口部の内径R2、具体的には連通孔8aの内径よりわずかに大(R1>R2)となるように形成されている。また連通孔8aと連通する係止凹部70baの内径も、連通孔8aの内径よりわずかに大となるように形成されている。
よって、凹部70bを凸部70aに嵌め入れる際にはマスク部材3側の凹部70bが弾性変形し、その後、両者が嵌め合わされると凹部70bに元の形状に戻ろうとする復元弾力が働き、凹部70bの内壁面が凸部70aのネジ頭部70aaを押圧するよう作用し、強固な接合状態となる。
すなわち、これにより、頭部模型本体2とマスク部材3の接合状態は、結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させなければ離脱できない状態とすることができる。
さらに上述したように、凸部70aの外径及び係止凹部70baの内径が、連通孔8aの内径よりもわずかに大きくなるように形成されている。
よって、図4(c)に示すように凸部70aが係止凹部70baに嵌め入れられると、ネジ頭部70aaと軸部70abの境目のくびれ部分に連通孔8aの内周縁部が食い込むように緊合し、頭部模型本体2とマスク部材3との接合関係がより強固なものとなる。
これにより、例えば歯牙4a(図1及び図2参照)に対する切削実習等の作業中にマスク部材3が簡単に外れてしまうことがなく、作業が行い易いものとすることができる。
また以上のように頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造が簡易な構成であるので、複雑な機構で構成されたものと比べて安価に作製することができる。
【0025】
続いてマスク部材3の頭部模型本体2への着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の前面側周縁部にマスク部材3の裏面側上周縁部が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7bと頭部模型本体2側の結着手段7aとを結着させていけば、マスク部材3を頭部模型本体2に装着することができる。例えば、鼻下近傍部位から次々に両者を結着させていってもよいし、耳近傍部位から順に両者を結着させていってもよい。
このように、結着手段7(7a,7b)を結着させるだけの1アクションで両者を接合でき、例えば衣服に設けられたホックを留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(70b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくことができる。
ここで頭部模型本体2には、マスク部材3の厚み分に相当する段差部2aが形成されているので、図2に示すように表面側の接合部分を段差のない面一な平滑面とすることができる。またマスク部材3側の結着手段7b(70b)はマスク部材3の裏面に設けられているので、頭部模型本体2にマスク部材3を装着すれば、結着手段7(7a,7b)が表面から見えない。よって人体頭部模型1全体の外観をよくすることができ、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【0026】
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させる。すなわち、マスク部材3の片端部を持って結着手段7(7a,7b)を引き離す方向に力をかけていくと(図1参照)、接合状態が解除されマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
このとき、マスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、補強部材8が一体化され、マスク部材3の接合部分が補強部材8で補強されているので、結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させても、軟弾性素材からなるマスク部材3が破断してしまうようなことがない。よってマスク部材3の着脱を頻繁に行ってもその使用に耐えられる耐久性を備えた長寿命のものとすることができる。
以上のようにマスク部材3の頭部模型本体2への着脱が容易なので、例えば歯牙4aに対する切削実習等を行うにあたり、マスク部材3が汚れたり、破損してしまったり、着脱・交換が必要となったりする場合は、迅速にマスク部材を取り替えることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、頭部模型本体2側に凸部70a、マスク部材3側に凹部70bが形成され、これによって結着手段7を構成する例について説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2側に凹部、マスク部材3側に凸部が形成されるものとしてもよい。またここでは凹部70b側が弾性変形して凸部70aに嵌め入れられる例について説明したが、これに限定されず、例えばねじ頭部70aaをゴム材などの弾性部材で構成し、凸部70a側を弾性変形させて凹部70bに嵌め入れられるようにしてもよい。または、凸部および凹部の両方が弾性変形する部材で構成されていてもよく、少なくとも凸部または凹部のいずれか一方が弾性変形することで、頭部模型本体2とマスク部材3の強固な接合状態を保持することが可能で、且つ一定以上の力が加えられることでマスク部材3を離脱できる構成であればよい。
【0028】
次に本実施形態の変形例について、図5を参照しながら、説明する。
上述の例と共通する部分には共通の符号を付し、共通する部分の説明は省略する。
ここに示す変形例は、結着手段7(7a,7b)の構成は同じであるが、マスク部材3の頭部模型本体2への装着が、頭部模型本体2の裏側にマスク部材3の表側が重ね合わされる状態で装着される点で上述の例と異なる。
よって、頭部模型本体2側のマスク部材3との接合部分に段差部がなく、この例では、マスク部材3側の頭部模型本体2との接合部分に段差部3cが形成されている。
そして段差部3cには、凸部70aが嵌め入れられる凹部70bが設けられるとともに、補強部材8も固着一体にされており、係止凹部70baと連通する連通孔8aが形成されている。
また図例のように頭部模型本体2に形成される挿通孔20を有底に形成し、頭部模型本体2の表側から結着手段70aが見えない構造としてもよい。
【0029】
この変形例において、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の裏面側周縁部にマスク部材3の表面側上周縁部を持っていき(図5(a)参照)、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(70b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)とを結着させていく(図5(b)参照)。
この構成においても、例えば衣服に設けられたホックを留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(70b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(70a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくだけの1アクションで両者を接合させることができる。
またこの構成においても、マスク部材3側に頭部模型本体2の厚み分に相当する段差部3cが形成されており、図5(b)に示すように表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。さらに頭部模型本体2に形成される挿通孔20を有底にした場合は、結着手段7(7a,7b)が頭部模型本体2の表面から見えないので、人体頭部模型1全体の外観をよくすることができ、実際の人体頭部に近いリアルな感覚で歯科実習等を行うことができる。
【0030】
以下、第1実施形態とは結着手段7の構造が異なる例を各実施形態として説明する。
また以下では、第1の実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、共通する部分の説明は省略する。
本発明の第2実施形態を図6及び図7を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が凸状部材71a、この凸状部材71aに対応して形成された凹条71bによって構成されている。
ここに示す結着手段7はチャック式と呼ぶことができるもので、凸状部材71a及び凹条71bで構成され、凸状部材71aの幅寸法R3は凹条71bの開口幅寸法R4より大とされ、凸状部材71aを凹条71bに押し込むことにより凹条71bが弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。
【0031】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、鼻部分を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、レール状の凸状部材71aが固着体に設けられている。
凸状部材71a及び凹条71bの形状は、互いに対応して形成され、凸状部材71aを凹条71bに押し込むことにより凹条71bが弾性変形し、頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される形状であれば、どのような構成でもよい。
図6及び図7(a)、図7(b)に示す頭部模型本体2側に設けられる凸状部材71aは、幅方向に突出した突出部71aaと、接合状態を強固にするために凹状に形成されたくびれ部71abと、頭部模型本体2に一体とされる平坦面をなす基部71acとを備えている。
凸状部材71aは、図6に示すようにレール状に連続して形成されるものであってもよいし、不連続に適宜間隔を空けて複数設けられるものであってもよい。凸状部材71aを複数設けるものとした場合、その凸状部材71aの形状は、円筒状を含む略円筒状のものとしてもよいし、直方体状を含む略直方体状のものとしてもよい。
なお、ここでは頭部模型本体2と凸状部材71aとを別体とした例を説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2に凸状部材71aが一体に成型されたもの(凸状部を有する頭部模型本体)としてもよい。
【0032】
一方のマスク部材3の頭部模型本体2との接合部分には、補強部材8の厚み分に相当する段部3bが形成されており、この段部3bに補強部材8が固着一体に設けられている。
そしてマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に形成された凸状部材71aに対応して、凹条71bが頭部模型本体2との接合部分に沿って、レール状に一連に形成されている。
凹条71bは、図7に示すように補強部材8に形成された連通開口8bと、凸状部材71aの突出部71aaが嵌め入れられる係止凹条部71baとを備えている。
なお、図7では凹条71bが補強部材8に形成されている例を示しているが、これに限定されず、例えば図4の実施形態のように補強部材8とマスク部材3とに跨って形成されたものとしてもよいし、マスク部材3に凹条71bを形成し、形成された凹条71bの周囲に補強部材8が形成されたものとしてもよい。
【0033】
次に図7(a)及び図7(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造について説明する。
図7(a)に示すように頭部模型本体2のマスク部材3との接合部分に形成された段差部2aには凸状部材71aが設けられており、凸状部材71aの幅寸法R3は凹条71bの開口幅寸法R4、具体的には連通開口8bの開口幅寸法より大(R3>R4)となるように形成されている。また連通開口8bと連通する係止凹条部71baの開口幅寸法も、連通開口8bの開口幅寸法より大となるように形成されている。
よって、凹条71bに凸状部材71aを嵌め入れる際にはマスク部材3側の凹条71bの開口縁部、すなわち連通開口8bの縁部が弾性変形し、その後、両者が嵌め合わされると凹条71bに元の形状に戻ろうとする復元弾力が働き、凹条71bの内壁面が凸状部材71aの側部を押圧するように作用し、強固な接合状態となる。
すなわち、これにより、頭部模型本体2とマスク部材3の接合状態は、結着手段7(71a,71b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させなければ離脱できない状態とすることができる。
さらに上述したように、凸状部材71aの幅寸法及び係止凹条部71baの開口幅寸法が連通開口8bの開口幅寸法よりも大きくなるように形成されている。
よって、図7(b)に示すように凸状部材71aを構成するくびれ部71abに連通開口8bが食い込むように緊合し、頭部模型本体2とマスク部材3との接合関係がより強固なものとなる。
【0034】
続いてマスク部材3の頭部模型本体2への着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の前面側にマスク部材3の裏面側が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(71b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(71a)とを端の方から指を押し当てて押し込むように結着させていけば、マスク部材3を頭部模型本体2に装着することができる。
このように、両者を結着させるだけの1アクションで両者を接合でき、例えば食品用保存用袋の開閉部分を留めていくような感覚でマスク部材3側の結着手段7b(71b)を頭部模型本体2側の結着手段7a(71a)に向けて押し込んで嵌め合わせていくことができる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
なお、本実施形態では、頭部模型本体2側に凸状部材71a、マスク部材3側に凹条71bが形成され、これによって結着手段7を構成する例について説明したが、これに限定されず、頭部模型本体2側に凹条、マスク部材3側に凸状部材が形成されるものしてもよい。またここでは凹条71b側が弾性変形して凸状部材71aに嵌め入れられる例について説明したが、これに限定されず、凸状部材71a側が弾性変形して凹条71bに嵌め入れられるようにしてもよい。または、凸状部材および凹条の両方が弾性変形する部材で構成されていてもよく、少なくとも凸状部材または凹条のいずれか一方が弾性変形することで、頭部模型本体2とマスク部材3の強固な接合状態を保持することが可能で、且つ一定以上の力が加えられることでマスク部材3を離脱できる構成であればよい。
【0035】
本発明の第3実施形態を図8及び図9を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が一対のファスナー部材72a、72bによって構成されている。
ここに示す結着手段7は互いを貼り合わせたり、引き剥がしたりが何度も自在にできる面ファスナー式と呼ぶことができるもので、一対のファスナー部材72a、72bによって頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。図例では、頭部模型本体2側にフック状に起毛されたファスナー部材72aを設け、マスク部材3側にループ状(パイル状)に起毛されたファスナー部材72bを設けた例を示しているが、逆の実施形態でもよく、また一対のファスナー部材72a、72bの構成もフック状、ループ状の区別のないタイプのもの、鮫の歯状のものなど、汎用の面ファスナーを適用することができる。
【0036】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、頭部模型本体2の鼻部分を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、接着剤等を介して固着一体に帯状のファスナー部材72aが設けられており、段差部2aは、一対のファスナー部材72a、72bの接合状態の厚みを含んだマスク部材3の厚み分に相当する段差に形成されている。これによれば、マスク部材3を頭部模型本体2に接合した際に、マスク部材3と頭部模型本体3との表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。
【0037】
一方のマスク部材3の裏面側周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に設けられたファスナー部材72aに対応して、接着剤等を介したり、ファスナー部材72aの一部(起毛部分を植立させた部分など)をマスク部材3に埋着したりなどして固着一体にファスナー部材72bが設けられている。
マスク部材3側には、第1実施形態及び第2実施形態で示したように段部に補強部材8を一体形成したものとしてもよいが、ここに示すようにマスク部材3側に設けられたファスナー部材72bが補強部材8として機能するように構成してもよい。
【0038】
次に図9(a)及び図9(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造及び着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の表側にマスク部材3の裏側が重ね合わされる状態にする。そして、向かい合って設けられたマスク部材3側の結着手段7b(72b)と頭部模型本体2側の結着手段7a(72a)とを端の方から指を押し当てて押圧し結着させていく。すると、フック状及びループ状に起毛されたものが絡まり噛み合い、このように両者を結着させるだけの1アクションで接合できる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
【0039】
本発明の第4実施形態を図10及び図11を参照しながら、説明する。
結着手段7は、頭部模型本体2側の結着手段7aとマスク部材3側の結着手段7bとで構成され、本実施形態では、結着手段7が磁石73a、磁性体73bによって構成されている。
ここに示す結着手段7は互いを磁力によって貼り合わせたり、引き離したりが何度も自在にできるマグネット式と呼ぶことができるもので、磁石73aと、磁石73aにくっつく磁性体73bによって頭部模型本体2とマスク部材3とが接合される。図例では、頭部模型本体2側に磁石を設け、マスク部材3側に磁性体を設けた例を示しているが、逆でもよい。磁石73aとしては、薄状プレート体であれば望ましく、例えば合成樹脂材やゴム材に磁性粉を混入しこれをシート状に形成しその表裏面にN極とS極を着磁して作製されたものを用いることができる。また磁性体73bとしては、同じく薄状プレート体のものであれば望ましく、鉄、ステンレス材及びこれら磁性粉が含有されたシートなどを用いることができる。
【0040】
頭部模型本体2の前面側周縁部のマスク部材3との接合部分、すなわち、頭部模型本体2の鼻を挟んでその小鼻部分から耳近傍に向かう部位と、耳近傍から下方に向かって延びる部位には、段差部2aが形成されている。この段差部2aには、磁石73aが設けられており、段差部2aは、磁石73a及び磁性体73bの接合状態の厚みを含んだマスク部材3の厚み分に相当する段差に形成されている。
これによれば、マスク部材3を頭部模型本体2に接合した際に、マスク部材3と頭部模型本体3との表面側の接合部分に段差のない面一な平滑面とすることができる。
【0041】
一方のマスク部材3の裏面側上周縁部の頭部模型本体2との接合部分には、頭部模型本体2に設けられた磁石73aに対応して、磁性体73bが設けられている。
マスク部材3側には、第1実施形態及び第2実施形態で示したように段部に補強部材8を一体形成したものとしてもよいが、ここに示すようにマスク部材3側に設けられた磁性体73bが補強部材8として機能するように構成してもよい。
【0042】
次に図10(a)及び図10(b)を参照しながら、さらに詳しく頭部模型本体2とマスク部材3との接合構造及び着脱要領について説明する。
まず、マスク部材3を頭部模型本体2に装着する際は、頭部模型本体2の接合部分にマスク部材3を載せるように置き、頭部模型本体2の表側にマスク部材3の裏側が重ね合わされる状態で磁力によって両者を結着させることができる。
一方、装着したマスク部材3を頭部模型本体2から離脱する際には、装着していくときとは逆に接合された結着手段7(7a,7b)による結着力に抗した力をマスク部材3に作用させればよく、第1実施形態と同じ要領でマスク部材3を頭部模型本体2から離脱させることができる。
【0043】
続いて図12には、これまで説明した各実施形態の人体頭部模型1が採用される歯科実習台10を示している。ここに示すように人体頭部模型1は、歯科実習のための実習机12に取付られた胴体模型11に、つまみ部6を用いて位置調整可能に取り付けることができる。この歯科実習台10は、不図示の診療機器、技工機器、各種コントローラ、照明灯13などを備え、歯科診療実習、歯科技工実習の双方を行うことができる。
ここでは、同じ構成の実習机12が対面して設けられた歯科実習台10を示しているが、この形態に限定されるものではない。また本実施形態の人体頭部模型1は、実際の歯科医院などにおいて使用される診療台に、患者の胴体を模した胴体模型を設置した臨床教育用の歯科実習装置(不図示)や、取付金具(不図示)を用いてテーブルに取り付けて使用するものにも適用可能である。
【0044】
なお、本発明の結着手段は上述の例に限定されず、同様の機能を奏するものであれば、他の構成のものも採用可能であることは言うまでもなく、例えば繰り返し着脱可能な粘着剤を塗布して構成してもよいし、マスク部材3の補強部材8としてワイヤーなどの線状部材を用いてもよい。また、第2実施形態〜第4実施形態においても、図5で示す頭部模型本体2の裏側にマスク部材3の表側が重ね合わされる状態で装着される例を適用することができ、この場合は図5に示すようにマスク部材3側に段差部3cが形成されたものとすることが望ましいことは言うまでもない。さらに各実施形態では頭部模型本体2とマスク部材3との着脱要領について説明したが、これら説明した着脱要領に限定されるものではないことも言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 人体頭部模型
2 頭部模型本体
2a 段差部
3 マスク部材
3c 段差部
7 結着手段
70a 凸部
70b 凹部
71a 凸状部材
71b 凹条
72a ファスナー部材
72b ファスナー部材
73a 磁石
73b 磁性体
8 補強部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部を有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材とを備えた人体頭部模型であって、
前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項2】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、間隔を空けて設けられた複数の凸部及び凹部で構成され、前記凸部の外径は前記凹部の内径よりわずかに大とされ、前記凹部に前記凸部に嵌め入れることによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項3】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、凸状部材及び凹条で構成され、前記凸状部材の幅寸法は前記凹条の開口幅寸法より大とされ、前記凸状部材を前記凹条に押し込むことによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項4】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、面ファスナーで構成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項5】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、磁石及び磁性体で構成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体頭部模型において、
前記補強部材は、薄板状の樹脂材または金属材からなり、前記マスク部材の前記接合部分に成型一体とされていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の人体頭部模型において、
前記マスク部材と前記頭部模型本体の接合部分のいずれか一方に、他方の厚み分に相当する段差部が形成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項1】
人体の頭部を模した頭部模型本体と、人体の頬を模して形成され口元部分に相当する開口部を有し該頭部模型本体に接合される軟弾性素材からなるマスク部材とを備えた人体頭部模型であって、
前記頭部模型本体と前記マスク部材とは、結着手段を介して互いに着脱自在に接合可能とされ、前記マスク部材の前記頭部模型本体との接合部分には、前記軟弾性素材よりも剛性且つ形状保持性を有する可撓性素材からなる補強部材が一体化されており、前記マスク部材の前記頭部模型本体からの離脱は、前記結着手段による結着力に抗した力を前記マスク部材に作用させることによって可能とされていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項2】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、間隔を空けて設けられた複数の凸部及び凹部で構成され、前記凸部の外径は前記凹部の内径よりわずかに大とされ、前記凹部に前記凸部に嵌め入れることによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項3】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、凸状部材及び凹条で構成され、前記凸状部材の幅寸法は前記凹条の開口幅寸法より大とされ、前記凸状部材を前記凹条に押し込むことによりいずれかが弾性変形し、前記頭部模型本体と前記マスク部材とが接合されることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項4】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、面ファスナーで構成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項5】
請求項1に記載の人体頭部模型において、
前記結着手段は、磁石及び磁性体で構成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体頭部模型において、
前記補強部材は、薄板状の樹脂材または金属材からなり、前記マスク部材の前記接合部分に成型一体とされていることを特徴とする人体頭部模型。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の人体頭部模型において、
前記マスク部材と前記頭部模型本体の接合部分のいずれか一方に、他方の厚み分に相当する段差部が形成されていることを特徴とする人体頭部模型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−164411(P2011−164411A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27912(P2010−27912)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】
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