説明

人工ソケット骨

【課題】人工歯根を植立してその周囲に骨組織を形成するに際して、咀嚼による人工固有歯槽骨の揺動を防止することを目的とする。
【解決手段】人工歯根の全部又は一部を被包する外套となる人工ソケット骨であって、該人工ソケット骨は略円筒状に形成されており、当該人工ソケット骨の表面には複数の切れ込みが穿設され突き出し片を形成し、前記突き出し片の全部又は一部が人工ソケット骨の内部方向及び\又は外部方向へ曲設されていることを特徴とする人工ソケット骨である。また前記切れ込みの一部が突き出し片のない固有歯槽骨及び骨梁に分化する細胞を透過するための透孔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯根を安定的に植立し、人工歯根の周囲に固有歯槽骨を形成する細胞の分化を促進するための人工ソケット骨に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、咀嚼・咬合(咬み合わせ)という歯の力学的機能を長期間(60〜80年間)維持できるように、歯を支える三種類の歯周支持組織、すなわち、1)セメント質(繊維骨)、2)歯周靭帯関節(歯根膜)、3)固有歯槽骨(ソケット骨)という特別な構造を備えている。固有歯槽骨(ソケット骨)には、歯とソケット骨を固定し、両者を接着するクッションとしての機能を有する。また歯根膜において歯根表面と固有歯槽骨の各表面をセメント質で固着する。さらに固有歯槽骨(ソケット骨)と顎骨とを結合させる部位が、固有歯槽骨(ソケット骨)に付着している骨梁である。
また、有床義歯に変わって人工歯根を直接顎骨に植立して欠損歯を回復することは、歯科インプラントとしてすでに長い間実施されてきている。その際に人工歯根を骨性癒着や骨接合によって緩衝機構を備えずに顎骨と結合させると、咀嚼を繰り返すことによって、人工歯根に破断が生じたり、周囲骨の破壊等の問題が生じる。
【0003】
そこで出願人は、特許文献1にかかる人工歯根を創作した。この人工歯根によって、周囲骨に分布するミーゼスの相当応力がかなり平均化され、最大応力値の1/100〜1/10、最小応力値の10〜数十倍の範囲の分布域に顕著な骨の増成が生じる。これはピエゾ電流、ストリーミングポテンシャルおよび骨形成因子の流動によるものと考えられる。
【0004】
特許文献1に係る人工歯根を植立した場合、その歯根の形状に依存したそれぞれの主応力線(Principal stress Trajectory)が人工歯根の周囲に分布する。骨は、反復性の咀嚼運動による振動に伴って主応力線の軌跡に仕上がって形成されることになる。線維結合組織付着様式の人工歯根の主応力線の分布の解析によれば、応力を歯根が先ず負担し、歯周の線維組織で主応力線が全く異なる直交する二成分に変換される。これらの主応力線の走行と振動運動によって人工歯根の周囲には、図7に示すような固有歯槽骨(ソケット骨)Aが形成される。一方、固有歯槽骨(ソケット骨)Aに付着するほぼ直角に走行する主応力線は、固有歯槽骨(ソケット骨)Aに付着する骨梁Bを形成する。
【0005】
人工歯根は、上記の力学的な刺激によって固有歯槽骨(ソケット骨)A及び骨梁Bが完全に形成された時点で間歇的な強い咬合力のみならず持続的な咬合力や側方力を支えることができる。しかし、固有歯槽骨(ソケット骨)A及び骨梁Bが完全に形成されるまでには相当の日数がかかる。そこで人工歯根を植立する時点で同時に、固有歯槽骨(ソケット骨)A及び骨梁Bを形成することが望まれていた。
固有歯槽骨(ソケット骨)A及び骨梁Bは、相当の回数の咀嚼を反復することによって形成されるが、植立直後には骨梁が形成されておらず、特に初期段階における人工歯根は不安定であるという問題があった。
【特許文献1】特許第2547953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、植え立てられた人工歯根と顎骨の間に固有歯槽骨(ソケット骨)に相当する外套を人工的に形成し、人工歯根を被包すると同時に人工歯根を安定に植立することを目的とする。
また咀嚼という力学エネルギーによる固有歯槽骨(ソケット骨)の誘導には時間がかかるので、固有歯槽骨(ソケット骨)の周囲に外套を人工的に形成し、未分化間葉系の細胞に力学的な刺激を与えて造血と造骨を誘起することにより急速に骨組織を作ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため以下の構成を採用した。
(1)人工歯根の全部又は一部を被包する外套となる人工ソケット骨であって、該人工ソケット骨は略円筒状に形成されており、当該人工ソケット骨の表面には複数の切れ込みが穿設され突き出し片を形成し、前記突き出し片の全部又は一部が人工ソケット骨の内部方向及び\又は外部方向へ曲設されていることを特徴とする人工ソケット骨である。
(2)前記人工ソケット骨が、生体親和性のある金属、合金、樹脂又はセラミックスのいずれか一によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載された人工ソケット骨である。
ここで生体親和性のある金属とは、例えばTi等である。合金とはTi合金等である。また樹脂は、ポリ乳酸等の樹脂が好ましい。特に植物由来の植物由来のポリ乳酸にグリセリン脂肪酸系エステルを添加したコンパウンド、植物由来のポリ乳酸/ジオール・ジカルボン酸共重合体、澱粉ポリエステル樹脂のいずれか1以上を混合したものが好ましい。
【0008】
(3)前記切れ込みが人工ソケット骨の円筒周面に沿って等間隔で複数形成されており、当該列が人工ソケット骨の上下方向に間隔を持って少なくとも二列以上配列されており、上下方向における突き出し片の列の全てが人工ソケット骨の内部方向へ曲設しており、該列に隣接する列における切れ込みの突き出し片が人工ソケット骨の外部方向へ曲設されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された人工ソケット骨である。
(4)前記切れ込みの一部が突き出し片のない固有歯槽骨及び骨梁に分化する細胞を透過するための透孔であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の人工ソケット骨である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、植え立てられた人工歯根と顎骨の間に固有歯槽骨(ソケット骨)に相当する外套を人工的に形成し、人工歯根を被包すると同時に人工歯根を安定に植立できるという効果を奏する。
また未分化間葉系の細胞に力学的な刺激を与えて造血と造骨を誘起することにより急速に骨組織を作ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る人工ソケット骨の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の人工ソケット骨は、以下の製造方法によって作成することができる。なお以下の方法は例示であって、以下の方法に限定されるものではない。
本発明に係る人工ソケット骨は、Ti等の材料を円柱状に加工したブランクを切削加工により円筒状に形成する。次に円筒材料の表面にレーザを使用して複数の切れ込みを入れる。切れ込みは円形、楕円形、長方形、正方形等であって、一部が円柱胴体と連接しているものである。例えば、縦長長方形の切れ込みを入れる場合は、その上辺又は下辺と、左右側辺に切れ目が入っている。上辺に切れ目が入っている場合は下辺に切れ目が入らず円柱胴体と連接しており、下辺に切れ目が入っている場合は上辺が連接している。
上記のように切れ込みを入れた後、切れ込みの切れ目が入っていない部分を起点にして、切れ込み全体を曲成し突き出し片を形成する。
【0011】
他の製造方法としては、一枚の板を円筒状に曲成することによって本実施形態に係る人工ソケット骨を作成することができる。一枚の板にレーザ又はフライス盤等によって切れ
込みを入れる。また金型を利用した鍛造法によって一枚の板に切れ込みを入れることもできる。
次に切れ込みを入れた一枚を板を円筒状に曲成し、端部同士を溶接若しくは、接着剤によって接合する。接着剤としては、ポリ乳酸を有する生分解性プラスチック樹脂を原料とするものが好ましい。かかる接着剤としては、タンパク質−ゴムラテックス、ポリビニルビチラール、ネオプレン、ブタジエン−アクリロニトリル系合成樹脂などが挙げられる。特に接合部はプラスチック樹脂を原料とする接着剤により形成されているのが好ましい。特に好ましくはポリ乳酸を有する生分解性プラスチック樹脂を原料とする接着剤により形成されているのが好ましい。
ポリ乳酸の原料となるトウモロコシやサトウキビは、その生長過程で二酸化炭素を吸収し、使用後に燃焼して回収することもできる。また人体に無害であるので、本発明に係る人工固有歯槽骨にとって最適な材料といえる。
端部同士を接着剤によって接合した場合は、外周方向へ弾撥力が生じる機能を有し好ましい。
【0012】
また前記切れ込みは、円筒周面に沿って等間隔で穿設するのが好ましい。軸方向の一列における切れ込みの突き出し片が、人工ソケット骨の内部方向へ曲設しており、該列に隣接する列における切れ込みの突き出し片が、人工ソケット骨の外部方向へ曲設されているのが好ましい。内部方向へ曲設された突き出し片は、人工歯根の外周部に固定することになり、外部方向へ曲設された突き出し片は、顎骨に固定されることになる。
さらに前記切れ込みの一部が突き出し片のない固有歯槽骨(ソケット骨)及び骨梁に分化する細胞を透過するための透孔であることが好ましい。かかる透孔は、切れ込み部の連接部を切り離すことによって形成しても良いし、切れ込みとは別の形状の孔をレーザ等によって穿設してもよい。
【0013】
人工ソケット骨の表面に透孔を形成することによって、固有歯槽骨(ソケット骨)及び骨梁に分化する細胞を透過させることができる。そして、内部歯根の周辺に造骨と造血作用を励起することができる。かかる造骨作用の励起によって、未分化間葉系細胞が固有歯槽骨(ソケット骨)及び骨梁に分化される。さらに咀嚼力によって応じた応力が、歯周靭帯において全く異なるベクトルをもった直交する二つの主応力線に変換されることになる。
変換された主応力線のうち、内部歯根の表面において軸方向と平行なものは固有歯槽骨(ソケット骨)を作り、直角に走行するものは骨梁を作る。固有歯槽骨(ソケット骨)を走行する主応力線は顎骨の皮質骨に連なりここで終わる。
【0014】
また人工ソケット骨の厚みは0.1〜0.2mmが好ましい。厚みが0.1未満であると十分な弾撥力が生じない可能性がある。また厚みが0.2mmを超えると、人工固有歯槽骨が経年により腐食する可能性がある。
さらに前記人工ソケット骨は、Ti又はTi合金から形成されるのが好ましい。Ti,Ti合金は生体為害生が極めて少なく、生体との親和力が良いから人工ソケット骨の材料として好適である。またコストの面からも好ましい。
【0015】
また外部方向へ曲設された突き出し片は、円筒の外周方向への弾撥力を生じさせる機能を有する。すなわち、外部への突き出し片を外側から把持することによって人工ソケットが円筒内部方向に向かって押圧されることになる。
また人工歯根として用いられる材料は、金属、単体、合金、セラミックス、サーメット、バイオガラス、プラスチックス、これらの複合材料などから選ばれる。
人工歯根として好適な金属は、純TiやTi合金であり、特に好ましくは純Tiである。純Tiは生体為害性が極めて少なく、生体との親和性が良いからである。また形状記憶効果を利用することで挿入後の固定が容易に行える利点を活かし、Ti系の形状記憶合金
を人工歯根として実用化する研究も行われている。その中でもTi−Pd系形状記憶合金は、歯根で長年利用されてきたPdと耐食性に優れたTiを主組成とする合金であり、生体為害性の少ない人工歯根用の材料となる。
また人工ソケット骨と人工歯根との間に緩衝材を設けてもよい。緩衝材としては、プラスチックスの接着剤やセメント材料等が用いられる。例えば、スーパーボンド(商標名)、リン酸セメント、パナビア(商品名)等である。人工歯根と人工ソケット骨との間に緩衝材を介在することによって、主応力線が変換されるとともに、この緩衝材がクッションとなり咬合力の骨に及ぼす破壊傾向が除去される。
【0016】
次に図面に則して本発明に係る実施形態の一例を説明する。本発明は、以下の態様に限定されるものではない。
(実施形態1)
図1に示すように本実施形態に係る人工ソケット骨10は、円筒状に形成されたものであり、かかる円筒表面には複数の切れ込みが穿設されており、この切れ込みより突き出し片17、18が形成されている。かかる突き出し片には、人工ソケット骨の内部方向に突き出している突き出し片17及び外部方向へ曲設されている突き出し片18とがある。
また前記切れ込みは円筒周面に沿って等間隔で穿設されており、複数の切れ込みが軸方向に等間隔で配列されている。かかる列は、周面方向に間隔を持って8列が配列されている。1列における切れ込みの突き出し片37は人工ソケット骨30の内部方向へ曲設しており、かかる列に隣接する列における切れ込みの突き出し片38は人工ソケット骨の外部方向へ曲設されている。
【0017】
人工ソケット骨は、顎骨に穿設された歯根用の植設穴に嵌設される。この際に、人工ソケット骨の突き出し片18は、歯根用の植設穴の内周面に引っ掛かることにより人工ソケット孔が植設穴にしっかりと保持されることになる。
人工ソケット骨10の突き出し片17は、図示しない人工歯根と接触し、突き出し片17の弾撥力及び引っ掛かりにより人工歯根をしっかりと保持することができる。
【0018】
図2は、本実施形態1に係る人工ソケット骨を用いた実施例を示す概念図である。
図2に示す如く、本実施形態1に係る人工ソケット骨10は、顎骨22に穿設された人工歯根を植設する植設穴に埋設して使用する。人工ソケット骨10における突き出し片18が顎骨の植設穴の内周面に引っ掛かり人工ソケット骨10をしっかりと保持することができる。
また、人工ソケット骨10は歯冠26を植立する人工歯根25を被包する外套となる。図2に示す如く、人工歯根25の根部における凸部に人工ソケット骨10の突き出し片17が引っ掛かり、その弾撥力により人工歯根25を保持することができる。
【0019】
実施形態2
図3に示すように本実施形態に係る人工ソケット骨30は、円筒状に形成されたものであり、かかる円筒表面には複数の切れ込みが穿設されており、この切れ込みより突き出し片37、38が形成されている。かかる突き出し片には、人工ソケット骨の内部方向に突き出している突き出し片37及び外部方向へ曲設されている突き出し片38とがある。
また前記切れ込みは円筒周面に沿って等間隔で穿設されており、複数の切れ込みが軸方向に等間隔で配列されている。かかる列は、周面方向に間隔を持って8列が配列されている。1列における切れ込みの突き出し片37は人工ソケット骨30の内部方向へ曲設しており、かかる列に隣接する列における切れ込みの突き出し片38は人工ソケット骨の外部方向へ曲設されている。
さらに本実施形態2に係る人工ソケット骨においては、前記切れ込みの一部が突き出し片のない固有歯槽骨及び骨梁に分化する細胞を透過するための透孔35となっている。図3に示す如く、透孔35は円筒周面に設けても良いし、底部外周上に設けても良い。
【0020】
人工ソケット骨30は、顎骨に穿設された歯根用の植設穴に嵌設される。この際に、人工ソケット骨30の突き出し片38は、歯根用の植設穴の内周面に引っ掛かることにより人工ソケット孔が植設穴にしっかりと保持されることになる。
人工ソケット骨30の突き出し片37は、図示しない人工歯根と接触し、突き出し片37の弾撥力及び引っ掛かりにより人工歯根をしっかりと保持することができる。
【0021】
図4は、本実施形態2に係る人工ソケット骨30を用いた実施例を示す概念図である。図2と同じ部位については同じ符号を用いる。
図4に示す如く、本実施形態2に係る人工ソケット骨30は、顎骨22に穿設された人工歯根を植設する植設穴に埋設して使用する。
また、人工ソケット骨30は歯冠26を植立する人工歯根25を被包する外套となる。図4に示す如く、人工歯根25の根部における凸部に人工ソケット骨30の突き出し片37が引っ掛かり、その弾撥力により人工歯根25を保持することができる。
人工ソケット骨の表面には透孔35が形成されており、固有歯槽骨(ソケット骨)及び骨梁に分化する細胞を透過させることができる。そして、内部歯根の周辺に造骨と造血作用を励起することができる。かかる造骨作用の励起によって、未分化間葉系細胞を固有歯槽骨(ソケット骨)及び骨梁に分化する。
【0022】
ここで人工歯根25としては、例えば、Tiによって形成された「アバットメント2.5」(日東Φ6.5mmワンピース長タイプ)等を用いることができる。
このようにして、本実施形態に係る人工固有歯槽骨30を人工歯根25を被包することにより、人工ソケット骨30には透孔35が多数形成されているので、人工ソケット骨30の周辺部分に存在する未分化間葉細胞を人工歯根の周面部分に取り込むことができる。そして咀嚼によって造血作用がより活発化し、未分化間葉細胞が内部歯根の周面部分に取り込まれ、急速に内部歯根の周囲に固有歯槽骨と骨梁を形成することができる。
また本発明に係る人工ソケット骨30は、しっかりと植設穴に植設されているので、咀嚼によって揺動することがない。
【0023】
実施形態3
図5は、本発明に係る人工ソケット骨に用いられる一枚の板材料50,51の二態様を示す図である。板材料としてはTi合金を用いることができる。図5に示すように板材料には上下から交互に切り込みが形成されている。
【0024】
図5(a)に示す板材料50における切り込み55は略長方形であり、端部54が円形状に打ち抜かれている。また板材料50は図5(b)に示す形態であっても良い。図5(b)に示す板材料51における切り込み57は略長方形であり、端部58が変形楕円形状に形成されている。かかる切り込み55,57及び端部54,58を内部方向又は外部方向へ曲設することにより、本発明における突き出し片となる。
また透孔を円筒の軸方向上下から一定間隔で切り込みをいれることにより、曲げモーメントを分散することができ、筒状に形成するときに曲げ易い、亀裂がおきにくいという利点もある。
なお切れ込みの先端は円周状にするのが好ましい。先端を円周状に加工することにより応力を分散させ切れ込みの先端にクラックが入るのを防止することができる。
【0025】
図6は、本発明に係る人工ソケット骨60を示す斜視図である。図6は図1に示す板材料とは切り込み数などが異なる他の実施態様を示すものである。図6に示すように本発明に係る人工ソケット骨は筒状であって、1枚の板材料を円筒状に屈曲して形成するものである。
【0026】
1枚の板材料の端部62,62は、所定間隙を持って当接している。ただし、このような間隙を設けず接合しても良い。このような端部同士が当接している部分を接合部64とし、接合部64には全面に接着剤65が塗布されている。かかる接合部64は生分解性プラスチック樹脂を原料とする接着剤により形成されている。さらに生分解性プラスチック樹脂としてはポリ乳酸を主体とする生分解性プラスチック樹脂が好ましい。
本発明に係る人工ソケット骨は、円筒周面に沿って軸方向上下から交互に切り込み67が形成されている。切り込み67の端部68は略円形状に穿設されている。かかる切り込み67及び端部68を、内部方向又は外部方向へ曲設することにより突き出し片を形成する。
なお人工ソケット骨60と人工歯根の形状は植立部位によって若干形が異なってもよい。すなわち根尖端部は前歯、子臼歯、犬歯型ではマルク、大臼歯型では分岐して中心に陥凹を有することになる。
【0027】
このような人工ソケット骨60を外周部より強い力で把持すると、接合部64が収縮する。このような状態で予め歯茎に穿設した内部歯根を植設するための植設穴に配置する。
人工ソケット骨60は、外周部より把持する前の外径が、内部歯根を植設する植設穴の内径よりも大きい方が好ましく、さらに人工ソケット骨60を外周部より把持して収縮した状態では、人工ソケット骨60の外径が前記植設穴の内径より小さくなる必要がある。
このような人工ソケット骨60を圧縮して植設穴に配置した後、外周部からの力を解放すると、人工ソケット骨60の外周方向への弾撥力により、人工ソケット骨60は植設穴に安定して固定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1に係る人工ソケット骨を示す斜視図である。
【図2】本実施形態1に係る人工ソケット骨と人工歯根を顎骨に埋設した状態を示す概念図である。
【図3】実施形態2に係る人工ソケット骨を示す斜視図である。
【図4】図3における人工ソケット骨のIV−IV矢視断面図にて表した人工ソケット骨と人工歯根を顎骨に埋設した状態を示す概念図である
【図5】(a)は本発明に係る人工固有歯槽骨に使用される板状体を示す図である。(b)は他の例を示す板状体を示す図である。
【図6】本発明に係る人工ソケット骨の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図7】固有歯槽骨A及び骨梁Bの形成過程を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0029】
10,30,60 人工ソケット骨
17,18,37,38 突き出し片
35 透孔
55,57 切り込み(突き出し片)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯根の全部又は一部を被包する外套となる人工ソケット骨であって、該人工ソケット骨は略円筒状に形成されており、当該人工ソケット骨の表面には複数の切れ込みが穿設され突き出し片を形成し、前記突き出し片の全部又は一部が人工ソケット骨の内部方向及び\又は外部方向へ曲設されていることを特徴とする人工ソケット骨。
【請求項2】
前記人工ソケット骨が、生体親和性のある金属、合金、樹脂又はセラミックスのいずれか一によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載された人工ソケット骨。
【請求項3】
前記切れ込みが人工ソケット骨の円筒周面に沿って等間隔で複数形成されており、当該列が人工ソケット骨の上下方向に間隔を持って少なくとも二列以上配列されており、上下方向における突き出し片の列の全てが人工ソケット骨の内部方向へ曲設しており、該列に隣接する列における切れ込みの突き出し片が人工ソケット骨の外部方向へ曲設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された人工ソケット骨。
【請求項4】
前記切れ込みの一部が突き出し片のない固有歯槽骨及び骨梁に分化する細胞を透過するための透孔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の人工ソケット骨。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−295507(P2008−295507A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141641(P2007−141641)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(591107687)
【Fターム(参考)】