説明

人工タンパク質スキャフォールド

本発明は、人工タンパク質Top7またはTop7誘導体に対し1つ以上の類似性を有するタンパク質を提供する。本発明のタンパク質は、Top7の対応するループより長いか、および/または予め選択した標的分子と結合する1つ以上のループを有する。本発明はまた、前記タンパク質の製造に有用な核酸および細胞、並びにそれらを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に人工タンパク質土台(スキャフォールド)並びに前記の設計、製造および使用に関する。特に本発明はTop7折り畳み構造タンパク質に由来する人工タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
自然は、多様な配列の小ペプチドをその中に挿入することができる多数のタンパク質を提供してきた。抗体はよく知られた例であって、重鎖および軽鎖可変領域によって規定される抗原結合ドメインを有する(この場合、各可変領域はフレームワーク(FR)の間に介在する相補性決定領域(CDR)を含んでいる)。重および軽抗体鎖の両鎖のCDR3ループは、エキソヌクレアーゼおよびターミナルトランスフェラーゼが働いて本質的に任意のDNA配列を各V遺伝子(ペプチドループをコードする)に挿入するプロセスによって形成される。このプロセスがCDR1およびCDR2ループに存在するより限定的な多様性と組み合わされるとき、VHおよびVLドメインはランダムペアーを形成して、極めて多数の特異的タンパク質配列を生じる。生成された天然のタンパク質は極めて様々な結合特異性を披露する。抗体VドメインのいわゆるFRは、CDRループを融合させる土台として効率的に機能する。
【0003】
しかしながら抗体は、解決されねばならない多くの技術的問題を抱えている。例えば、抗体は一般的に哺乳動物細胞で生産する必要があり、高価であり時間を要する。さらにまた、一般的にモノクローナル抗体を作製する種々の方法は時間を要するか、高価であるか、またはその両方である。前記の問題の結果として、様々なグループが、ペプチド提示用の代替タンパク質土台を開発した。例えばLaVallieら(Biotechnology, 1993, 11:187-93および米国特許5,270181号)は大腸菌(E. coli)のチオレドキシンを用い、封入体形成が回避されるようにして大腸菌でペプチドを提示させた。Colasら(Nature, 1996, 380:548-50)は、チオレドキシンの天然ループ内に任意のペプチドを挿入し得ることおよびチオレドキシン-ペプチド‘アプタマー’は種々のタンパク質に対するその結合特異性によって選別し得ることを示すことによって前記アプローチを拡張させた。他のグループは、土台として用いることができる他の天然タンパク質を認定した。しかしながらこれらのアプローチにはある限界が存在する。一般的には、天然に存在するタンパク質をベースにする土台は、天然のタンパク質を通常的に生成する系でもっともよく発現される。例えば、チオレドキシン系アプタマーは一般的には大腸菌で発現される。反対に、フィブロネクチンIII型系アプタマーは一般的に哺乳動物細胞でおよび/またはジスルフィド結合の形成を促進する分泌系を用いて発現される。さらにまた、天然に存在するタンパク質を土台として使用することは、当該天然のタンパク質の未知の生物学的特徴が個々の状況において土台としてのその機能に干渉するという内在的リスクを常に抱える。したがって、当分野では改善された特性を有するタンパク質土台系が希求される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、部分的には、de novoで設計された完全に人工的なタンパク質は、その意図する使用の要請に基づいてタンパク質工学によって指定される特性を有し得るという見解に基づく。本発明の要は、Top7タンパク質の要素を取り込んだ、または模倣した人工タンパク質である。Top7タンパク質は、Kuhlmannら(Science, 2003, 302:1364-1368)がde novoで設計した高度に安定なタンパク質である。これら人工タンパク質は、高度に安定で効率的に折り畳まれるように設計され、任意のまたは多様なペプチドループを遺伝的に取り込むことができる若干の位置を有する。これら人工タンパク質土台の安定性は、タンパク質を不安定化させる可能性があるペプチドの取り込みを許容し、ループを不安定化させ得るものの存在にもかかわらずタンパク質の折り畳みを許容する。ランダム化したアミノ酸配列を導入したら、予め選択した標的分子との結合能力について得られたタンパク質ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのようなスクリーニングから得られたタンパク質を診断薬および治療薬で用いることができる。
【0005】
したがって、ある特徴では本発明はTop7折り畳み構造を有するタンパク質を提供する。Top7は球状の折畳みタンパク質であり(Kuhlmann et al, Science, 2003, 302:1364)、以下のアミノ酸配列を有する:DIQVQVNIDDNGKNFDYTYTVTTESELQKVLNELKDYIKKQGAKRVRISITARTKKEAEKFAAILIKVFAELGYNDINVTFDGDTVTVEGQLE(図5)。
Top7折り畳み構造の1つ以上のループは予め選択した標的分子と特異的に結合する(前記タンパク質は、10μMを超えない(例えば5−10μM、1−10μM、0.5−10μM、0.1−10μM、0.05−10μM、0.01−10μM、0.001−10μMなど)解離定数で前記分子と結合する)。
別の特徴では、本発明は2つの端部を明瞭に示すTop7折り畳み構造を有するタンパク質を提供する。当該タンパク質の一方の端部の少なくとも2つのループは各々Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長い。ある実施態様では、前記2つのループの一方または両方が予め定めた選択した標的分子と特異的に結合する。ある種の実施態様では、前記タンパク質は、10μM(例えば5−10μM、1−10μM、0.5−10μM、0.1−10μM、0.05−10μM、0.01−10μM、0.001−10μMなど)を超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合する。
【0006】
別の特徴では、本発明は少なくとも5つの逆平行β-鎖、少なくとも2つの平行α-へリックス並びにα-へリックスおよびβ-鎖を連結するループを含むタンパク質を提供する。一般的には、平行α-へリックスは1つの層を形成し、逆平行β-鎖は第二の層を形成する。前記タンパク質は2つの端部を有し、前記端部は一般的にはα-へリックスおよびβ-鎖の端に一致する。前記タンパク質の2つの端部の各々は、α-へリックスをβ-鎖に連結する2つのループおよび2つのβ-鎖を連結する1つのループを含む。タンパク質の一方の端部の少なくとも2つのループは各々Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長い。いくつかの実施態様では、前記α-ヘリックスおよびβ-鎖が、Top7のα-ヘリックスおよびβ-鎖のα-炭素骨格の構造に対するその根平均自乗偏差(RMSD)が4.0を超えない(例えば3.5を超えない、3.0を超えない、2.5を超えない、2.0を超えない、1.9を超えない、1.8を超えない、1.7を超えない、1.6を超えない、1.5を超えない、1.4を超えない、1.3を超えない、1,2を超えない、1.1を超えない、または1.0を超えない)構造を有するα-炭素骨格を規定する。ある種の実施態様では、2つのループの少なくとも1つが予め選択した標的分子と特異的に結合する。例えばいくつかの実施態様では、前記タンパク質は、10μM(例えば5−10μM、1−10μM、0.5−10μM、0.1−10μM、0.05−10μM、0.01−10μM、0.001−10μMなど)を超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合する。
【0007】
別の特徴では、本発明は、少なくとも5つの逆平行β-鎖および少なくとも2つの平行α-へリックスを含むタンパク質であって、前記α-ヘリックスおよびβ-鎖が、Top7のα-ヘリックスおよびβ-鎖のα-炭素骨格の構造に対するその根平均自乗偏差(RMSD)が4.0を超えない(例えば3.5を超えない、3.0を超えない、2.5を超えない、2.0を超えない、1.9を超えない、1.8を超えない、1.7を超えない、1.6を超えない、1.5を超えない、1.4を超えない、1.3を超えない、1,2を超えない、1.1を超えない、または1.0を超えない)構造を有するα-炭素骨格を規定するタンパク質を提供する。前記タンパク質はα-ヘリックスおよびβ-鎖を連結するループを含む。タンパク質の2つの端部の各々は、α-ヘリックスとβ-鎖を連結する2つのループおよび2つのβ-鎖を連結する1つのループを含む。一方の端部のループの1つ以上が、当該タンパク質と結合する予め定めた標的分子と10μMを超えない(例えば5−10μM、1−10μM、0.5−10μM、0.1−10μM、0.05−10μM、0.01−10μM、0.001−10μMなど)解離定数で特異的に結合する。いくつかの実施態様では、平行α-ヘリックス(“α”)および逆平行β-鎖(“β”)が、ただ1つのポリペプチドにββαβαββの順番で存在する。他の実施態様では、タンパク質は2つのポリペプチドを例えばヘテロダイマーまたはホモダイマーとして含み、各ポリペプチドは1つのα-ヘリックスおよび3つの逆平行β-鎖をβαββの順番で含む。
前述のタンパク質のいずれかにおけるいくつかの実施態様で、少なくとも3つのループ(例えばタンパク質の同じ端部の3つのループ)は各々Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長い。
【0008】
本発明はまた、Top7またはTop7誘導体のアミノ酸配列に関連するアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。そのようなある誘導体のアミノ酸配列(本明細書では“RD1.3/1.4コンセンサス”と称される)は、配列番号:5として提示されている。RD1.3/1.4コンセンサスのα-ヘリックスおよびβ-鎖の部分から選択したアミノ酸が連結され配列番号:6として提示されている。別のTop7誘導体(“RD1-DI-DeLys”と称される)のアミノ酸配列は配列番号:2として提示され、そのα-ヘリックスおよびβ-鎖から選択した部分が連結され配列番号:3として提示されている。免疫原性の低下を示すと予想される多様なTop7誘導体を包含するさらに別のコンセンサス配列の対応する選択部分の連結は配列番号:7として提示される。特に配列番号:3、配列番号:6および配列番号:7の各々について、アミノ酸1−5は第一のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸6−8は第二のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸9−20は第一のα-ヘリックスの部分に対応し、アミノ酸21−23は第三のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸24−32は第二のα-ヘリックスの部分に対応し、アミノ酸33−37は第四のβ-鎖の部分に対応し、さらにアミノ酸38−42は第五のβ-鎖の部分に対応する。
【0009】
したがって、ある特徴では、本発明は式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3のアミノ酸21−42と少なくとも80%同一の配列(例えば4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸21−42と異なる)、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6のアミノ酸21−42と少なくとも90%同一の配列(例えば2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸21−42と異なる)、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7または配列番号:7のアミノ酸21−42と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。L(45)、L(56)およびL(67)の最小長はそれぞれ10アミノ酸、7アミノ酸および4アミノ酸である。L(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも1つは、当該タンパク質が結合する予め選択した標的分子と10μMを超えない親和定数で特異的に結合する。
【0010】
別の特徴では、本発明は式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3のアミノ酸21−42と少なくとも80%同一の配列(例えば4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸21−42と異なる)、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6のアミノ酸21−42と少なくとも90%同一の配列(例えば2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸21−42と異なる)、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7または配列番号:7のアミノ酸21−42と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42、に一致する。L(45)、L(56)およびL(67)の最小長はそれぞれ10アミノ酸、7アミノ酸および4アミノ酸であり、さらにL(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも2つは各々少なくとも1アミノ酸それらの最小長を超えている。いくつかの実施態様では、L(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも1つは、当該タンパク質が結合する予め選択した標的分子と10μMを超えない親和定数で特異的に結合する。
ある種の実施態様では、本発明のタンパク質は、(例えば別々のポリペプチド鎖上に)式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の特徴では、本発明は式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3のアミノ酸1−42と少なくとも80%同一の配列(例えば8箇所、7箇所、6箇所、5箇所、4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6のアミノ酸1−42と少なくとも90%同一の配列(例えば4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7または配列番号:7と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の最小長はそれぞれ10アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、7アミノ酸および4アミノ酸である。L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも1つは、当該タンパク質が結合する予め選択した標的分子と10μMを超えない親和定数で特異的に結合する。いくつかの実施態様では、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3と少なくとも80%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。
【0012】
別の特徴では、本発明は式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3のアミノ酸1−42と少なくとも80%同一の配列(例えば8箇所、7箇所、6箇所、5箇所、4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6のアミノ酸1−42と少なくとも90%同一の配列(例えば4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7または配列番号:7のアミノ酸1−42と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の最小長はそれぞれ10アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、7アミノ酸および4アミノ酸である。いくつかの実施態様では、L(12)、L(34)またはL(56)の少なくとも2つは各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超えている。いくつかの実施態様では、L(23)、L(45)またはL(67)の少なくとも2つは各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超えている。
【0013】
別の特徴では、本発明は式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質を提供する。B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、(i)配列番号:3または配列番号:3のアミノ酸1−42と少なくとも85%同一の配列(例えば6箇所、5箇所、4箇所、3箇所、2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(ii)配列番号:6または配列番号:6のアミノ酸1−42と少なくとも95%同一の配列(例えば2箇所または1箇所を超えない箇所でアミノ酸1−42と異なる)、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42;または(iii)配列番号:7のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の最小長はそれぞれ10アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、7アミノ酸および4アミノ酸であり、さらにL(12)、L(23)、L(34) 、L(45)、L(56) またはL(67)は少なくとも1アミノ酸その最小長を超えている。いくつかの実施態様では、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、配列番号:3または前記と少なくとも90%同一もしくは少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する。いくつかの実施態様では、タンパク質は、L(12)、L(23)、L(34) 、L(45)、L(56) および/またはL(67)のアミノ酸配列に依存する態様で、予め選択した標的分子と特異的に結合する。
【0014】
式(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含む任意のタンパク質について、いくつかの実施態様では、L(12)、L(23)、L(34) 、L(45)、L(56) およびL(67)の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは6つ全てが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超えている。これらの長さの組合せは以下の表1に示されている。表1では、“min”は長さが最小長に等しいことを示し、“>min”は長さが少なくとも1アミノ酸最小長を超えていることを示す。
【0015】
表1



【0016】
本発明の任意のタンパク質について、いくつかの実施態様では、本タンパク質はそれと安定に会合したエフェクターを含む。本明細書に関しては、“エフェクター”は活性(例えば治療活性または他の生物学的活性)を提供する。エフェクターは放射性同位元素((好ましくは治療的に有効な線量の)放射線の局所デリバリーに有用である)のように小さくてもよいが、または実質的にもっと大きい、例えば有機小分子(例えば医薬)、リガンド(例えばサイトカイン、例えばインターロイキン)、毒素(例えば化学療法剤)、結合成分、大環式化合物、酵素または他の触媒、シグナリングタンパク質であってもよい。エフェクターは例えばアミノ酸配列として取り込ませてもよいが、さらに、例えば架橋要素によって当該タンパク質のアミノ酸側鎖またはアミノもしくはカルボキシ末端に共有結合させてもよい。
本発明の任意のタンパク質について、いくつかの実施態様では、本タンパク質はそれと安定的に結合した検出可能な標識を含む。検出可能な標識は例えばアミノ酸配列として取り込ませてもよいが、さらに、例えば架橋要素によって当該タンパク質のアミノ酸側鎖またはアミノもしくはカルボキシ末端に共有結合させてもよい。検出可能な標識は、例えばコロイド金属(例えばコロイド金)、放射性標識、エピトープタグ、酵素または他の触媒、発蛍光団、発色団、量子ドットなどを含むことができる。
【0017】
本発明の任意のタンパク質について、いくつかの実施態様では、本発明の土台タンパク質は、それと安定的に結合した(例えば融合タンパク質)またはジスルフィド結合もしくは化学架橋剤によって共有結合した担体タンパク質を含む。担体タンパク質は、例えば抗体またはその部分(例えばFc部分、抗体可変ドメインまたはscFv要素)であり得る。ある種の実施態様では、ヘテロダイマー性担体タンパク質、例えば米国特許出願公開US2007/0287170に記載されている操作されたヘテロダイマータンパク質が含まれ、本発明の1、2つまたは3つ以上の土台の相互の結合、および/または他の要素(例えば結合タンパク質、エフェクター分子および/または検出可能な標識)との意図的な操作された態様での結合を可能にする。
本発明の任意のタンパク質について、いくつかの実施態様では、本タンパク質はCD4と特異的に結合せず;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ペプチドを含まず;免疫原性HIVペプチドを含まず;ウイルスペプチドを含まず;細菌ペプチドを含まず;および/またはアジュバントと混合または同時投与されない。
ある特徴では、本発明は上述のタンパク質の少なくとも2つを含む融合タンパク質を提供する。
【0018】
ある特徴では、本発明は複数の非同一タンパク質のタンパク質ライブラリーを提供する。前記非同一タンパク質は上記に記載されたとおりであるが、それらは、1つ以上のループのアミノ酸配列、またはL(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)もしくはL(67)の少なくとも1つのアミノ酸配列で互いに異なっている。本発明はまた、上記記載のタンパク質のいずれかをコードする核酸とともに上記記載のタンパク質ライブラリーをコードする核酸ライブラリー、およびそのような核酸を含む細胞を提供する。本発明はまた、予め定めた標識分子と特異的に結合するタンパク質を同定する方法を提供する。前記方法は、タンパク質ライブラリーを標的分子に暴露する工程および前記標的分子と結合した少なくとも1つのタンパク質を同定する工程を含む。
ある特徴では、本発明は標的分子を検出する方法を提供する。前記方法は、前記標的分子に対して親和力を有する本発明のタンパク質にあるサンプルを、標的分子が存在するとしたら前記タンパク質と当該分子が結合することができる条件下で暴露する工程を含む。前記方法はさらに、前記タンパク質および標的分子を含む複合体の有無を検出する工程を含む。
本発明はまた、予め選択した標的分子および前記予め選択した標的分子に対して親和力を有する本発明のタンパク質を含む複合体を提供する。前記タンパク質は場合によって検出可能な標識を含み、前記標識は複合体の検出を容易にすることができる。
ある特徴では、本発明はin vivo標的を結合させる方法を提供する。前記方法は、in vivo標的と特異的に結合する本発明のタンパク質を投与する工程を含む。いくつかの実施態様では、前記タンパク質は検出可能な標識を含み、前記標識は場合によってin vivoイメージングに適している(例えば放射能標識)。いくつかの実施態様では、前記タンパク質はエフェクター、例えば治療薬剤、サイトカインまたは毒素を含む。
【0019】
要約すれば本発明は以下に関する:
−Top7折り畳み構造を含むタンパク質であって、前記Top7折り畳み構造内の1つ以上のループが予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記タンパク質が10μMを超えない解離定数で前記予め選択した標的分子と結合する、前記タンパク質。
−2つの端部を明瞭に示すTop7折り畳み構造を含むタンパク質であって、前記タンパク質の一方の端部の少なくとも2つのループの各々が、Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長い、前記タンパク質。
−2つのループの少なくとも1つが予め選択した標的分子と特異的に結合する、それぞれのタンパク質。
−前記タンパク質が10μMを超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合する、それぞれのタンパク質。
−2つの平行α-ヘリックスおよび5つの逆平行β-鎖並びに前記α-ヘリックスおよびβ-鎖を連結するループを含むタンパク質であって、前記タンパク質の2つの端部の各々がα-ヘリックスとβ-鎖を連結する2つのループおよび2つのβ-鎖を連結する1つのループを含み、前記タンパク質の一方の端部の少なくとも2つのループが各々Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長い、前記タンパク質。
−前記α-ヘリックスおよびβ-鎖が、Top7のα-ヘリックスおよびβ-鎖のα-炭素骨格の構造に対するその根平均自乗偏差(RMSD)が4.0を超えない構造を有するα-炭素骨格を規定する、それぞれのタンパク質。
−前記RMSDが2.0を超えない、前記それぞれのタンパク質。
−前記2つのループの少なくとも1つが予め定めた標的分子と特異的に結合する、前記それぞれのタンパク質。
−10μMを超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合する、前記それぞれのタンパク質。
−2つの平行α-ヘリックスおよび5つの逆平行β-鎖並びに前記α-ヘリックスおよびβ-鎖を連結するループを含むタンパク質であって、前記α-ヘリックスおよびβ-鎖が、Top7のα-ヘリックスおよびβ-鎖のα-炭素骨格の構造に対するその根平均自乗偏差が4.0を超えない構造を有するα-炭素骨格を規定し、前記タンパク質の2つの端部の各々がα-ヘリックスとβ-鎖を連結する2つのループおよび2つのβ-鎖を連結する1つのループを含み、一方の端部のループの1つ以上が予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記タンパク質が10μMを超えない解離定数で前記標的分子と結合する、前記タンパク質。
−平行α-ヘリックス(“α”)および逆平行β-鎖(“β”)がただ1つのポリペプチドにββαβαββの順番で存在するタンパク質。
−各々が1つのα-ヘリックス(“α”)および3つの逆平行β-鎖(“β”)をβαββの順番で含む少なくとも2つのポリペプチドを含むタンパク質。
−少なくとも3つのループが、Top7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸だけ長いタンパク質。
−前記3つのループがタンパク質の同じ端部に存在する、前記それぞれのタンパク質。
−式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質であって、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3もしくは配列番号:3のアミノ酸21−42と少なくとも80%同一のアミノ酸配列;または(ii)配列番号:6もしくは配列番号:6のアミノ酸21−42と少なくとも90%同一のアミノ酸配列;または(iii)配列番号:7と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42、に一致し、L(45)の最小長が10アミノ酸であり、L(56)の最小長が7アミノ酸であり、L(67)の最小長が4アミノ酸であり、さらにL(45)、L(56)または L(67)の少なくとも1つが予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記タンパク質が10μMを超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合する、前記タンパク質。
−式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質であって、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3のアミノ酸21−42と少なくとも80%同一;または(ii)配列番号:6のアミノ酸21−42と少なくとも90%同一;または(iii)配列番号:7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42配列に一致し、L(45)の最小長が10アミノ酸であり、L(56)の最小長が7アミノ酸であり、L(67)の最小長が4アミノ酸であり、さらにL(45)、L(56)または L(67)の少なくとも2つが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超える、前記タンパク質。
−前記タンパク質が式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)の2つのアミノ酸配列を含むタンパク質。
−L(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも1つが予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記タンパク質が10μMを超えない解離定数で予め選択した標的分子と結合するタンパク質。
−式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質であって、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3と少なくとも80%同一の配列;または(ii)配列番号:6と少なくとも90%同一の配列;または(iii)配列番号:7と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致し、L(12)の最小長が10アミノ酸であり、L(23) の最小長が7アミノ酸であり、L(34) の最小長が9アミノ酸であり、L(45) の最小長が10アミノ酸であり、L(56) の最小長が7アミノ酸であり、L(67)の最小長が4アミノ酸であり、さらにL(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の少なくとも1つは予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記タンパク質は予め選択した標的分子と10μMを超えない解離定数で結合する、前記タンパク質。
−B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3と少なくとも80%同一;または(ii)配列番号:6と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致する、前記それぞれのタンパク質。
−式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質であって、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列;または(ii)配列番号:6と少なくとも90%同一の配列;または(iii)配列番号:7と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致し、L(12)の最小長が10アミノ酸であり、L(23) の最小長が7アミノ酸であり、L(34) の最小長が9アミノ酸であり、L(45) の最小長が10アミノ酸であり、L(56) の最小長が7アミノ酸であり、L(67)の最小長が4アミノ酸であり、さらに(a)L(12)、L(34)またはL(56)の少なくとも2つが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超えるか;または(b)L(23)、L(45)またはL(67)の少なくとも2つが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超える、前記タンパク質。
−L(12)、L(34)またはL(56)の少なくとも2つが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超える、それぞれのタンパク質。
−L(23)、L(45)またはL(67)の少なくとも2つが各々少なくとも1アミノ酸その最小長を超えるタンパク質。
−式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含むタンパク質であって、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、(i)配列番号:3と少なくとも85%同一のアミノ酸配列;または(ii)配列番号:6と少なくとも95%同一の配列;または(iii)配列番号:7と同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致し、L(12)の最小長が10アミノ酸であり、L(23) の最小長が7アミノ酸であり、L(34) の最小長が9アミノ酸であり、L(45) の最小長が10アミノ酸であり、L(56) の最小長が7アミノ酸であり、L(67)の最小長が4アミノ酸であり、さらにL(12)、L(23)、L(34) 、L(45)、L(56) またはL(67)が少なくとも1アミノ酸その最小長を超える、前記タンパク質。
−L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)またはL(67)の少なくとも2つが少なくとも1アミノ酸それらの最小長を超える、それぞれのタンパク質。
−B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、配列番号:3と少なくとも90%同一の配列のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致するタンパク質。
−B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が、配列番号:3と少なくとも95%同一の配列のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42に一致するタンパク質。
−予め選択した標的分子と特異的に結合し、前記特異的結合が、アミノ酸配列L(12)、L(23)、L(34) 、L(45)、L(56) および/またはL(67)のアミノ酸配列に依存するタンパク質。
−L(12)が10アミノ酸より長いタンパク質。
−L(23)が7アミノ酸より長いタンパク質。
−L(34)が9アミノ酸より長いタンパク質。
−L(45)が10アミノ酸より長いタンパク質。
−L(56)が7アミノ酸より長いタンパク質。
−L(67)が4アミノ酸より長いタンパク質。
−安定的に結合したエフェクターをさらに含むタンパク質。
−安定的に結合した検出可能な標識をさらに含むタンパク質。
−CD4と特異的に結合しないタンパク質。
−ヒト免疫不全ウイルスペプチドを含まないタンパク質。
−免疫原性のヒト免疫不全ウイルスペプチドを含まないタンパク質。
−ウイルスペプチドを含まないタンパク質。
−細菌ペプチドを含まないタンパク質。
−上記および特許請求の範囲で規定する少なくとも2つのタンパク質を含む融合タンパク質。
−上記および下記で規定する複数の非同一タンパク質を含むタンパク質ライブラリーであって、前記非同一タンパク質が1つ以上のループのアミノ酸配列において互いに異なる、前記タンパク質ライブラリー。
−上記および下記で規定する複数の非同一タンパク質を含むタンパク質ライブラリーであって、前記非同一タンパク質がL(45)、L(56)またはL(67)の1つ以上のアミノ酸配列において互いに異なる、前記タンパク質ライブラリー。
−上記および下記で規定する複数の非同一タンパク質を含むタンパク質ライブラリーであって、前記非同一タンパク質が、L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)またはL(67)の少なくとも1つで異なるアミノ酸配列を有する、前記タンパク質ライブラリー。
−前記タンパク質ライブラリーをコードする核酸ライブラリー。
−上記および下記で規定するタンパク質または融合タンパク質をコードする核酸。
−前記タンパク質および予め選択した標的分子を含む複合体。
−検出可能な標識をさらに含む、前記それぞれの複合体。
−予め選択した標識分子と特異的に結合するタンパク質を同定する方法であって、(i)規定のタンパク質ライブラリーを標的分子に暴露する工程および(ii)前記標的分子と結合した少なくとも1つのタンパク質を同定する工程を含む、前記方法。
−標的分子を検出する方法であって、(i)サンプルを規定のタンパク質に、標的分子が存在するとしたら前記タンパク質と標的分子が結合することができる条件下で暴露する工程および前記タンパク質と標的分子を含む複合体の有無を検出する工程を含む、前記方法。
−in vivo標的を結合させる方法であって、in vivo標的と特異的に結合する規定のタンパク質を投与する工程を含む、前記方法。
−前記タンパク質がさらに検出可能な標識を含む、前記それぞれの方法。
−前記タンパク質がさらに前記タンパク質と安定的に結合したエフェクターを含む、前記それぞれの方法。
本発明のこれらの特徴および他の特徴並びに利点は以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲の考察により明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、最初のβ-鎖の軸線に平行に見たときのTop7の三次元構造を示す。白い矢印は、当該タンパク質をN-末端から見たときに最初のβ-鎖から始まる、当該タンパク質の最初の3つの構造要素を反時計回りに示す。
【図2】図2は、Top7構造物の原子座標を含むタンパク質データバンクのデータベースの記載(1QYS)を含む。
【図3】図3は、Top7構造の二次構造要素、ループおよび端部の配置を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、抗体VHドメインおよびTop7の構造をそれぞれ示す。
【図5】図5は、Top7(配列番号:4)、RD1.3およびRD1Lib1のアミノ酸配列のアラインメントを提供する。
【図6】図6は本発明の核酸を図解により示す。
【図7】図7は、ライブラリーのメンバー間でループをシャッフリングする方法を図解により示す。
【図8】図8は本発明の例示的アミノ酸配列のアラインメントを提供する。
【図9−1】図9は、配列番号:2、3、5、6および7を有する本発明のまた別の例示的アミノ酸配列を提供する。
【図9−2】図9続き。
【図9−3】図9続き。
【図10−1】図10および11は、ヒトαV-インテグリンに対する抗体の可変ドメインに対して親和力を有する、例示的RD1Lib1由来タンパク質のアラインメントである。
【図10−2】図10続き。
【図11−1】図10および11は、ヒトαV-インテグリンに対する抗体の可変ドメインに対して親和力を有する、例示的RD1Lib1由来タンパク質のアラインメントである。
【図11−2】図11続き。
【図11−3】図11続き。
【図12−1】図12は、抗体KSの可変ドメインに対して親和力を有する、例示的RD1Lib1由来タンパク質のアラインメントである。
【図12−2】図12続き。
【図13−1】図13および14は、抗CD19抗体の可変ドメインに対して親和力を有する、例示的RD1Lib1由来タンパク質のアラインメントである。
【図13−2】図13続き。
【図13−3】図13続き。
【図14−1】図13および14は、抗CD19抗体の可変ドメインに対して親和力を有する、例示的RD1Lib1由来タンパク質のアラインメントである。
【図14−2】図14続き。
【図15】図15は、ライブラリーから選択した結合タンパク質から移植したループをもつ例示的土台タンパク質のアラインメントである。
【図16】図16は例示的なFc-RD1融合タンパク質のサイズクロマトグラフである。
【図17】図17は例示的なFc-RD1-DI-DeLys融合タンパク質のサイズクロマトグラフである。
【図18】図18は例示的なFc-“Guy 1”融合タンパク質のサイズクロマトグラフである。
【図19】図19は本発明の新たな例示的アミノ酸配列を示す。これら配列は以下を含む:6-1、変異グリコシル化部位をもつTop7タンパク質:6-2から6-4、RD1.3の軽度変種;6-5から6-9、免疫原性エピトープおよびリジンが減少したRD1.3変種;6-10、実施例9のRD1ライブラリーメンバー;および6-11、DallugeらのM7タンパク質に関する変種。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、部分的には、Top7関連タンパク質の安定性および構造が、1つ以上の異種アミノ酸配列(前記異種アミノ酸配列は前記土台に挿入でき、および/または前記土台に存在するアミノ酸と置換できる)を提示するための土台としてそれらを使用することを可能にするということが認識されたことによる。
Top7折り畳み構造
異種アミノ酸配列をTop7折り畳み構造の要素を取り込んだタンパク質に挿入することができる。Top7タンパク質の構造は図1に示されている(前記タンパク質の構造はKuhlmannらがX-線結晶学によって決定し(Science, 2003, 302:1364-1368)、タンパク質データベースに1QYSのアクセッション番号で寄託された)。前記構造物の座標もまた図2に提示されている。図1に示されているように、Top7は2層タンパク質であり、当該タンパク質の一方の側に第一の層(図1の下部層)を形成する2つの平行α-ヘリックスを有し、前記第一の層は、5つの逆平行β-鎖で形成される第二の層(図1の上部層)に向き合って束ねられている。各二次構造要素(α-ヘリックスまたはβ-鎖)は次の要素と直に連結されている。換言すれば、いずれのループも構造要素の全長を超えてある要素の“近位端” と次の要素の“遠位端”を連結することはなく、要素のより近接する端をループは連結する。
【0022】
Top7ポリペプチドにおけるTop7の二次構造要素の配置は図3に示されている。図3では、5つのβ-鎖が矢印として描かれ、2つのα-ヘリックスが円筒として描かれている。これらの要素には、1から7の数字が、それらがTop7のアミノ酸配列で出現する順番にしたがって連続して付されている。したがって、β-鎖(“β”)およびα-ヘリックス(“α”)はββαβαββの順番で存在し、最初の2つのβ-鎖には1および2の番号が付され、最初のα-ヘリックスには3の番号が付され、第二のα-ヘリックスには番号5が付され、最後の2つのβ-鎖には6および7の番号が付される。Top7のアミノ末端からカルボキシ末端までの要素の順番は123456であるが、図3では左から右への要素の順番は213456である。これは、Top7のβ-シートが、シートの一方の側に存在する第二のβ-鎖(“2”)、前記に続く第一のβ-鎖(“1”)、第三のβ-鎖(構造要素“4”)、第五のβ-鎖(構造要素“7”)さらにシートの遠位端に第四のβ-鎖(構造要素“6”)で編成されることを反映している。図3では、要素を連結するループは、それらが連結する構造要素にしたがって命名される。したがって、要素1および2を連結するループは“ループ12”と命名され、要素2および3を連結するループは“ループ23”と命名され、以下同様である。ループ12、34および56を含むタンパク質の端部は“上端(North End)”と称され、ループ23、45および67を含むタンパク質の端部は“下端(South End)”と称される。
【0023】
図1では、Top7タンパク質は、最初のβ-鎖(構造要素“1”)の下方のN-末端から透視した眺めを提供するように配されている。図1で分かるように、α-ヘリックスは、第一のβ-鎖から第二のβ-鎖および第一のα-ヘリックスへと描かれた線が反時計回りの方向に進むように(白い矢印で示されている)、β-鎖に対して配置されている。
Top7の局所構造は天然タンパク質ではこれまで見出されたことはなかった。この全体構造はKuhlmannら(彼らは意図的にタンパク質の新規な局所構造を選択した)によりde novoに設計された。いったんこの局所構造の拘束状態を固定したら、予想される特定の三次元構造をもつ93アミノ酸タンパク質(Top7)をin silicoで設計するために、Kuhlmanらは“配列設計と構造予想間で反復して適用される電算的手法”を用いた。Kuhlmanらは、前記タンパク質が、予想したin silico構造と一致する3D構造を有する高度に可溶性のモノマータンパク質として発現できることを見出した。実際、前記タンパク質骨格の実験的に決定した構造は、in silico構造に対して根平均自乗偏差(“RMSD”)はわずかに1.1Åである。Top7は極めて安定であり、このタンパク質を98℃に加熱してもタンパク質の変性を生じない。4.8Mの変性剤塩酸グアミジンの存在下においてすら、80℃を超える温度がこのタンパク質の完全な変性に必要である。
【0024】
興味深いことには、Top7のC-末端49アミノ酸はまた極めて安定なホモダイマーとして効率的に発現できることが報告された(Dantas et al. J Mol Biol, 2006, 362:1004-1024)。これらの49アミノ酸は、Top7の三番目のβ-鎖、二番目のα-ヘリックスおよび最後の2つのβ-鎖(すなわちβαββの順番で構造要素4、5、6および7)を含む。各サブユニットは、対応する配列が完全長のTop7で有する折畳みと同じ折畳みを有する(1つのβ-シートの3つの鎖に向き合って1つのα-ヘリックスが束ねられている)。Top7と同様に、このホモダイマーは球状の2つの層を形成し、この球状層は、逆平行β-鎖で構成された第二の層に向き合って束ねられた1つの層内にある2つのα-ヘリックスを有するが、ただしTop7のβ-シートは5つの逆平行β-鎖を有するが、前記ホモダイマーは6つのβ-鎖を有する。Dantasらが、C-末端フラグメント(“CFr”)の12μM溶液の二次構造は98℃または3Mの塩酸グアニジン中で不変であり、さらに4Mの塩酸グアニジン中ですら完全なタンパク質変性には80℃を越える温度が必要であることを報告したように、このホモダイマーはTop7と同様に極めて安定である。Dantasらは、このフラグメントのN-およびC-末端を連結するジスルフィド結合を導入することによってCFrをさらに安定化させることに成功した。この安定化されたフラグメント(“SS.CFR”と称される)は、6.5Mの塩酸グアニジン(CFrおよびTop7をほぼ完全に展開させる変性剤濃度)でやっと展開を始める。
Top7の構造はde novoで設計されたので、広範囲に相違するアミノ酸配列をin silicoで選択してTop7の折畳み構造を完成できることはおそらく驚くにあたらない。例えば、Dallugeらは種々のアルゴリズムを用い、テトラペプチド骨格形成を基にして、Top7の折畳みを採用すると予想されるポリペプチド配列をde novoに創作した(Proteins, 2007, 68:839-849)。彼らが設計したポリペプチド配列の2つ(M5およびM7)は各々が折畳まれたタンパク質を形成し、前記タンパク質は、変性剤の非存在下で全ての用い得る温度で安定であり、さらに4Mの塩酸グアニジンの存在下で(M7については6Mの塩酸グアニジンの存在下ですら)80℃でも完全には変性されないことが報告された。
【0025】
挿入/異種配列
したがって、既存の技術は、極めて多様な配列をもちながら、それにもかかわらず各々が異種配列導入に顕著なゆとりを許容する適切な折り畳みおよび安定性を示すタンパク質の設計を可能にする。これらの異種配列を用いて、土台の二次構造要素または相互連結ループ中のアミノ酸配列を置換することができる。前記とはまた別に、あるいは前記に加えて、異種配列を土台分子に、好ましくは1つ以上の相互連結ループ内に挿入することができる。異種配列はまた土台のN-およびC-末端に付加することができる。
図3に示すように、完全長Top7は6つの相互連結ループを含み、図3はこれらをループ12、23、34、45、56および67と認定している。完全なTopの構造を有する土台については、異種配列はこれらのループのどれかに、またはこれらループの任意の組合せ中に挿入することができる。Top7構造の一部分のみ、例えばCFrまたはその誘導体(例えばSS.CFr)を含むタンパク質もまた土台として用いることができる。Top7構造の一部分のみが存在するとき、異種配列は当該部分に存在するループのどれかに挿入することができる。したがって、例えばCFrがループ45、56および67を含む場合、前記ループのどれかまたは前記ループの全てが異種配列を含むことができる。
本発明のいくつかの実施態様では、異種配列は土台の多数のループ(好ましくはタンパク質の同じ端部にある)に挿入される。3つのループがタンパク質の各端部に存在し、これは抗体の可変ドメイン上のCDRを連想させる。図4に示すように、Top7のループおよび抗体CDRのループは多かれ少なかれ同じように方向性を有する。実際、Top7のループ12はVHドメインのCDR3とほぼ厳密に同じものである。したがって、Top7の1つ以上の特徴を取り込んだ土台を抗体可変ドメインのフレームワークと同じように用いて、多様な配列をもつループを提示することができる(それらループのいくつかは別個にまたは組み合わされて標的分子に対して有用な親和力を有する)。
【0026】
アミノ酸配列
配列同一性の低い(M5およびM7で認められるように、例えば30%未満の同一性)アミノ酸配列がそれにもかかわらず土台としての使用に適した安定な構造に折畳まれ得るので、本発明は相当に広範囲の多様なアミノ酸配列を包含する。Top7を超える、有用な土台には例えばCFr、SS.CFr(Dallugeらが開示したタンパク質)が含まれ、前記にはM5およびM7が含まれる(ただしこれらに限定されない)。前記土台は、適切な折り畳みを妨げない任意の変異を含むことができる。例えば、Top7を操作して導入した17の点変異(K41E/K42E/K57E;F17Q/Y19L;G14A;Y21L;L29A;N34G;V48A;F63A;A64G/A65G;L67A;G85A;およびV90A)のうちのいずれもタンパク質の適切な折り畳みを妨げない(Watters et al. Cell, 2007, 128:613-624)。驚くべきことではないが、Top7、M7および関連する他のタンパク質は異常なほど安定であるので、それらは要求される唯一の特徴(すなわち安定な構造に折畳まれるそれらの能力)を失うことなくいくつかの変異を取り込むことができる。
【0027】
Top7関連のある土台は、本明細書では“RD1.3/1.4コンセンサス”と称され、配列番号:5として提示されている。RD1.3/1.4コンセンサスは、いくつかのアミノ酸置換を取り込ませるために操作したTop7の変種である。Top7に関連するまた別の土台は、本明細書ではRD1-DI-DeLysと称され、当該タンパク質中のリジン残基の数を減少させそれによってリジン残基の部位特異的改変を促進しタンパク質分解の機会を低下させるために操作したRD1.3の変種である。RD1-DI-DeLysはまた、潜在的に免疫原性であるエピトープの利用可能性が低下するように操作された。RD1-DI-DeLysは配列番号:2として提示されている。したがって、本発明の実施に用いることができるいくつかの土台はRD1.3および/またはRD1-DI-DeLysの部分に類似するアミノ酸配列を有する。RD1.3/1.4コンセンサスのその7つの構造要素に由来する一定部分が連結され配列番号:6に提示され、RD1-DI-DeLysの対応する部分が連結されて配列番号:3に提示されている。配列番号:3および配列番号:6の各々について、アミノ酸1−5は第一のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸6−8は第二のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸9−20は第一のα-ヘリックスの部分に対応し、アミノ酸21−23は第三のβ-鎖の部分に対応し、アミノ酸24−32は第二のα-ヘリックスの部分に対応し、アミノ酸33−37は第四のβ-鎖の部分に対応し、さらにアミノ酸38−42は第五のβ-鎖の部分に対応する。
【0028】
タンパク質の端部(構造要素の終端および相互連結ループを含む)は、顕著に変動し得るかまたは土台中で完全に置換し得ることは明らかであるので、RD1.3/1.4コンセンサスおよびRD1-DI-DeLysのこれらの部分は配列番号:6および配列番号:3から省略されている。それにもかかわらず、構造要素は、ほとんどの事例で、これら構造要素を隔てるために通常見出されるアミノ酸と少なくとも同じ程度の数(例えばTop7の対応する部分を隔てるアミノ酸の数)を含むアミノ酸配列である相互連結ループによって連結されることは理解されよう。したがって、例えば式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含む土台を用いることができるが、この場合B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、一般的に配列番号:3;または配列番号:3と少なくとも80%同一の配列;または配列番号:6;または配列番号:6と少なくとも90%同一の配列、のアミノ酸1−5、6−8、9−20、21−23、24−32、33−37および38−42と一致する。L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の最小長は一般的にそれぞれ10、7、9、10、7および4アミノ酸である。しばしば、L(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)およびL(67)の1つ、2つ、3つまたは4つが、例えば1−3アミノ酸、2−6アミノ酸、3−8アミノ酸、4−12アミノ酸、もしくは5−14アミノ酸またはそれ以上それらの最小長を超える。
あるいは、CFrで示したように、確実な折畳み能力をもつTop7様分子の任意の部分を用いてもよい。したがって、式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)のアミノ酸配列を含む土台を用いることができるが、この場合B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、一般的には配列番号:3;または配列番号:3のアミノ酸21−42と少なくとも80%同一の配列;または配列番号:6のアミノ酸21−42と少なくとも90%同一の配列、のアミノ酸21−23、24−32、33−37および38−42と一致する。
【0029】
ライブラリーと選別
安定な土台分子の1つの利点は、前記土台分子はランダム化した配列を提示するタンパク質ライブラリーの調製を可能にするということである。続いて、所望の特性、例えば予め選択した標的分子と結合する能力をもつ個々のタンパク質を前記ライブラリーから単離することができる。前記ランダム化配列はランダム化したループ配列(ループ配列内のランダム化挿入物を含む)を含むことができ、さらに土台タンパク質の構造要素内、任意の組み合わせ内のランダム化配列を含むことができる。タンパク質ライブラリーの一例(“RD1Lib1”と称される)は図5に示され、その配列は配列番号:7として提示されている。図5に示すように、RD1Lib1ではループ12の5アミノ酸が8つのランダムな(X)アミノ酸で置換され、構造要素2のアミノ酸の1箇所がランダム化され、ループ34の6アミノ酸が8つのランダムなアミノ酸で置換され、構造要素4の1つのアミノ酸がランダム化され、ループ56の3つのアミノ酸がランダム化され、さらに当該タンパク質の最後の2つのアミノ酸がランダム化される。ループ12、23、34、45、56および67の任意の組み合わせのランダム化の後で、タンパク質ライブラリーは、例えばTop7の以下の箇所のいずれか(上端のβ-鎖のN7、D16、R47、N78および/またはE89;下端のβ-鎖のN3、T20、S49、T80およびT87;上端のα-ヘリックスのK39からQ41並びにA70およびD71;および/または下端のα-ヘリックスのE26およびK55−E57)に対応する箇所にランダム化または他の改変を含むことができる。さらにまた、端部の内部または端部近くに存在する残基もランダム化して結合表面のために様々な形状をもつ‘基盤’を提供することができよう。例えばTop7のI8、V46、I77、F69およびI38の1つ以上に対応する箇所のアミノ酸をタンパク質ライブラリーでランダム化することができる。
【0030】
タンパク質ライブラリーのN-およびC-末端もまた構成および長さについてランダム化することができる。例えば、タンパク質のN-またはC-末端をRD1.3と比較して1残基短縮するか、または10残基まで伸長させることができる。タンパク質終端の終止コドンの位置のランダム化を用いて、C-末端におけるこの長さの多様性を創出することができよう。
いくつかの事例では、アミノ酸の位置のランダム性は、例えばシステイン残基を避けるため、リジン残基を避けるため、または親水性アミノ酸を多用して免疫原性を低下させるために制限され得る。
タンパク質ライブラリーは、例えばプラスミドベクターまたはファージベクターを背景に構築することができる。ある標的と結合するタンパク質ライブラリーのメンバーを選別することができる態様で、そのようなベクターおよび宿主系を構築することが特に有用である。例えば、一本鎖ファージ(例えばM13またはfd)、二本鎖ファージ(例えばT7またはラムダ)、細菌(例えば大腸菌)の鞭毛もしくは他の表面タンパク質を用いるディスプレー系、リボソーム系ディスプレー、メッセンジャRNAディスプレー、表面タンパク質(例えば酵母のAga2)またはタンパク質単独系を用いることができる。
いったんタンパク質ライブラリーを調製したら、ライブラリーのメンバーを予め選択した標的分子(例えば核酸、抗体可変ドメイン、糖、オリゴ糖、脂質または別の有機もしくは無機化合物)に対する親和力を基準にして選別することができる。選別プロトコルのあるタイプでは、タンパク質ライブラリーはファージ(例えばM13またはT7)上で標準的技術にしたがって発現される。Top7関連土台の利点は、N-末端およびC-末端の両方を宿主タンパク質との遺伝的融合に利用でき、さらに対立する端部をループ挿入およびペプチド融合のために用いることができることであることは特記されるべきである。実施例で述べるタンパク質ライブラリーは、T7のコートタンパク質と融合したそれらのN-末端並びに利用可能なC-末端および隣接する結合端部を有する。逆向きもまた実施可能であり、それによって結合端部は土台のN-末端の方に向き、そのC-末端はディスプレータンパク質(例えばM13バクテリオファージの遺伝子IIIタンパク質)と融合される。
【0031】
一例として、ファージ発現土台ライブラリーを結合に有利な条件下で固定化標的に適用し、1回以上の洗浄工程を実施し、続いて、例えば高塩、低もしくは高pH、洗剤(例えばSDS)のような条件、または当該実験の具体的な要求によって指定される別の溶媒条件を用いて結合ファージを溶出させる。溶出ファージを、例えば細菌宿主内での増殖によって増加させる。結合/選別工程の後で潜在的結合タンパク質をコードする核酸を増加させるためにPCR系技術もまた用いることができる。続いて適切なベクターでの再クローニング、およびファージ粒子へのパッケージまたは細菌宿主の形質転換を実施する。増幅後、特異的な結合タンパク質をコードするファージが濃縮された集団を予め選択した標的分子に再度暴露し、この新たな工程で結合物を選別し、回収サイクルを繰り返す。このサイクルを場合によって例えば3から5回繰り返す。所望の場合は、各工程後に保持されているファージ数を測定することによって濃縮工程の首尾をモニターすることができる。濃縮が生じている場合はファージ力価が増加するはずである。各結合工程後に付着しているファージ数を測定することによって指示されるか、または日常的な実験によって決定することができる一定の時点で、個々の候補物を与えられた標的と結合するそれらの能力について試験することは有用である。実施例5および6はそのような分析のための具体的な方法を述べるが、ただし多様な方法を用いることができる。
いくつかの状況では、ライブラリーから結合タンパク質を選別し、続いて選別集団のメンバーのランダム化させた部分を互いに組換えて、より高い親和力を有し得る結合タンパク質を創出することができる。
【0032】
核酸
本発明のタンパク質は、前記タンパク質またはタンパク質ライブラリーをコードする任意の適切な核酸を用いて任意の適切な原核(細菌)または真核(例えば酵母、昆虫または哺乳動物(例えばヒト、霊長類、ハムスター))系で発現させることができる。タンパク質ライブラリーについては、制限部位を取り込ませて、タンパク質をコードする核酸の切り出しおよび転移を促進することが有利であり得る。適切に導入した制限部位はまた、1つ以上のループまたは他のランダム化配列の選択的切り出しを促進することができる。ある例示的核酸は図6に示されている。図6は、ループ12、34および56内に挿入部位をもつ核酸を示す。各ループは2つの制限部位とフランキングし、関心のある任意のループ配列の選択的切り出し(および/または挿入)を可能にする。
例えば、介在する制限部位は、ライブラリーのメンバー間でループを“シャッフリング” するために用いることができる。図7に示すように、特定の特性(例えば特定の標的に対する親和力)をもつタンパク質についてライブラリーメンバーを選別した後、ライブラリーメンバーを1つ以上の内部制限部位で切断および再連結し、ライブラリーメンバー間でのループの組換えおよび再シャッフリングをもたらすことができる。前記によってより強い親和力をもつ相互作用物質を同定することができる。
上記説明を通して、組成物が特別な成分を有するか含むかまたは特別な成分で構成されているかのように記載されている場合には、組成物はまた本質的に記載の成分から成るか、または記載の成分から成ることが意図される。同様に、プロセスが特別なプロセス工程を有するか含むかまたは特別なプロセス工程で構成されているかのように記載されている場合には、当該プロセスはまた本質的に記載の処理工程から成るか、または記載の処理工程から成る。特段の指示がなければ、工程の順番または一定の操作を実施する順番は、本発明が機能性を維持できるかぎり重要ではない。さらにまた、特段の記載がなければ、2つ以上の工程または操作は同時に実施することができる。
実施例
本発明を以下の実施例を参照しながらより詳細に説明する。実施例は例示と理解され、添付の特許請求の範囲に示した本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例1】
【0033】
ペプチド挿入を含む土台の熱力学的特性
大きくてランダムなペプチドループを含む土台としてのRD1.3の適切性を確認するために、ループ12、ループ34およびループ56を各々8つのグリシンで置き換えた。8つのグリシンは、骨格のエントロピーの観点から全てのアミノ酸のうちグリシンがもっとも破壊的であるので選択された(すなわち、8グリシンを含むタンパク質がなお折り畳まれ安定であるならば、他の大半のそこそこに可溶性である任意の配列を含むタンパク質も折り畳まれるはずである)。別の配列(15アミノ酸ループ“S-ペプチド”)がまたRD1.3に単独でおよびグリシンループと組み合わせて挿入された。S-ペプチドはRNase-S酵素の部分である。前記は、切端酵素と結合してそれを完全なものにし、それによって機能を回復することが知られている。ループ挿入物としてこのペプチドは結合アッセイおよび酵素アッセイの両方を提供して、有用なループを提示するRD1.3の能力を示すであろう。これら試験タンパク質の各々のアミノ酸配列は、Top7配列とのアラインメントによって図8に示されている。
試験した各タンパク質(グリシンループまたはグリシンループおよびS-ペプチドループを含む)は可溶性でかつ均質である。何度も凍結融解を繰り返し、さらに4℃での長期間保存後でさえもほとんど凝集は存在しなかった。各タンパク質溶液は4−5mg/mLで安定であった。したがって、大きくて高いエントロピーの挿入物でさえも、おそらくはRD1.3の出発構造の実質的な安定性のゆえに十分な寛容性を示すであろう。
【実施例2】
【0034】
土台の設計
Top7に関連する多様なタンパク質をタンパク質土台として使用するために設計した。タンパク質のアミノ酸配列は図9に示したアラインメントで示されている。図9で明瞭なように、土台全体の種々の位置に点変異を導入してまたは点変異を導入することなく、ループ12、23、34、45、56および67の各々で挿入が滞りなく設計された。前記タンパク質および他の関連するタンパク質(前記タンパク質の1つ以上と、または前記タンパク質の1つ以上のα-ヘリックスおよびβ-鎖と、少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一である)は、本出願に記載した1つ以上の異種配列を取り込んだ土台として、およびタンパク質ライブラリーの基礎として有用であると予想される。
【実施例3】
【0035】
例示的ライブラリーRD1Lib1の設計および合成
種々のペプチドループを有する遺伝子ライブラリーを構築するために、以下の技術を利用した。まず初めに、下記の表に示すアミノ酸と頻度配分とのセットを選択した。

この特別なライブラリー構築では、11アミノ酸のみを選択した。多様なアミノ酸および配分を用いることができることは、タンパク質工学分野の業者には明白であろう。システインの使用を避けること(なぜならばこのアミノ酸は望ましくないジスルフィド結合の生成をもたらす可能性がある)およびセレノシステインの使用を避けること(なぜならばこのアミノ酸は、終止コドンとしてもまた解釈され得るUAGコドンによってコードされる)はしばしば有用である。
【0036】
下記に列挙したオリゴヌクレオチドは市場の供給業者(TriLink BioTechnologies(San Diego, CA))から入手した。
SEQ. E1:L1
GCT CCT GAT GTA CAG GTA ACC CGT (XXX)8 GAC XXX TAC TAT GCA TAC ACG GTG ACC
SEQ. E2:L2
CTG AAC GAG CTC AAA GAC TAC ATT AAA (XXX)8 GTT XXX ATT TCT ATT ACC GCG CGC ACT AAA
SEQ. E3:L3
AA GTA TTC GCT GAC CTA GGA (XXX)3 ATT AAC GTC ACT TGG ACC GGT GAC ACA
SEQ. E4:C-TERM (“CT”)
ACT TGG ACC GGT GAC ACA GTA ACA GTA GAA GGA (XXX)2 TAA TAA CTC GAG GAA GCT TGG
“XXX”と表示したコドンは上記に記載したコドンミックスから挿入されるものである。制限部位には下線が付されている。ランダムなセグメントを含む4つのオリゴヌクレオチドの各々について、固定テールに結合するPCRプライマー対を合成した(下記に表示)。制限酵素認識部位には下線を付し、適切な制限酵素を当該配列の下に列挙する。
L1: 5’ GCT CCT GAT GTA CAG GTA ACC CGT 3’ (L1-F)
BsrGI
5’ GGT CAC CGT GTA TGC ATA GTA 3’ (L1-R)
NsiI

L2: 5’ CTG AAC GAG CTC AAA GAC TAC ATT AAA 3’ (L2-F)
SacI
5’ TTT AGT GCG CGC GGT AAT AGA AAT 3’ (L2-R)
BssHI

L3: 5’ AA GTA TTC GCT GAC CTA GGA 3’ (L3-F)
AvrII
5’ TGT GTC ACC GGT CCA AGT GAC GTT AAT 3’ (L3-R)

C-term (CT):5’ ACT TGG ACC GGT GAC ACA GTA ACA GTA GAA GGA 3’ (CT-F)
5’ CCA AGC TTC CTC GAG TTA TTA 3’ (CT-R)
XhoI
【0037】
本実施例およびこの後の全ての実施例において、PCR増幅は標準的な条件下で実施し、反応はアガロースゲルでモニターした。生じたバンドを明瞭に目で見ることができ、2サイクルの間隔をおいて採取した2つのサンプル間で顕著にバンドの強度が増加しなかったときに、反応は完了したとみなした。これら増幅工程でクリーンな二本鎖DNAを確保するために、標準的PCR手順に対して一般的に以下の改変を用いた。DNAをPCRで増幅させるとき、後期サイクルでは、完全長DNAの再アニーリングがプライマーのアニーリングと競合する可能性がある。多様なオリゴヌクレオチドプールの場合には、この作用によって不対合DNA領域が生じ、このような場合固定部分はアニールし適合しないランダム領域はでっぱりとして残る。特にこのでっぱりがクローニングに使用される制限部位近くに存在する場合、そのような一本鎖領域は連結効率を低下させる可能性がある。不対合領域のない完全に二本鎖のDNAを作製するために、完全に増幅したPCR生成物を同じプライマーを含む新しいPCRミックスで3倍に希釈し、変性、プライマーアニーリングおよび伸長の1サイクルを実施した。全ての制限消化は、New England Biolabs(Beverly, MA)から購入した酵素を用い供給された緩衝液で実施し、場合によって記載のように改変した。
ランダムセグメントをもつ個々のループを本質的に完全長のタンパク質をコードする遺伝子プールに以下のようにして一緒にした。4つのオリゴヌクレオチドプールの各々を、上記に列挙した適切なフォワードおよびリバースオリゴヌクレオチドを用いて増幅させた。L3およびCT PCR反応から、各反応の1μLを続いて新しい100μLのPCR反応に加え、オリゴヌクレオチドL3-FおよびCT-Rを用いてさらに増幅させた。このより長いオリゴヌクレオチドプール(L3およびCT多様性要素の両方を含む)をL3/CTと称した。
【0038】
L3/CT反応をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)抽出、続いて2回のクロロホルム抽出およびエタノール沈殿を用いて仕上げた。DNAを緩衝液に溶解し、続いて製造業者の指示にしたがい制限酵素AvrIIおよびXhoIを用い37℃でBSA補充NEB緩衝液2にて単一反応で切断した。L1およびL2反応をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)抽出、続いて2回のクロロホルム抽出およびエタノール沈殿を用いて同様に仕上げた。L1DNAを37℃でBsrGIによりNEB緩衝液2+BSAで消化し、続いて1/20の体積の1M NaClおよび1/25の体積の1M TRIS-HCl(pH7.9)を加え、DNAを37℃でNsilによりさらに消化した。L2DNAを37℃でSacIによりNEB緩衝液1+BSAで消化し、続いてBssHIIを加え、製造業者の指示にしたがいサンプルを50℃で消化した。土台の遺伝子を含むpUC19のアリコットを3つ調製した。第一のアリコットは、製造業者の指示にしたがい、制限酵素AvrIIおよびXhoIを用い37℃でBSA補充NEB緩衝液2にてシングル反応で消化した。第二のアリコットは、37℃でBsrGIによりNEB緩衝液2+BSAで消化し、続いて1/20の体積の1M NaClおよび1/25の体積の1M TRIS-HCl(pH7.9)を加え、DNAを37℃でNsilによりさらに消化した。第三のアリコットは、37℃でSacIによりNEB緩衝液1+BSAで消化し、続いてBssHIIを加え、製造業者の指示にしたがいサンプルを50℃で消化した。上記の反応のいずれにもアルカリ性ホスファターゼは添加しなかった。
【0039】
L1、L2およびL3/CTの消化DNAをそれぞれ別々に、製造業者の指示にしたがいGel-Star染料(Cambrex, Walkersville, MD)を用いて調製した3%の低温溶融アガロースゲルによりゲル精製した。正しいバンドを切り出し、温フェノールに続いてクロロホルム(2回)を用いてDNAを抽出し、さらにエタノール沈殿を実施した。二重消化pUC19/RD1アリコットの各々をそれぞれ別個に、製造業者の指示にしたがいGel-Star染料を用いて調製した0.8%アガロースゲルでゲル精製した。バンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いてDNAを抽出した。
ライブラリー構築の次の工程は、精製した直鎖化ベクター(挿入されるべきDNAと同じ2つの制限酵素で消化されてある)に、多様性セグメントを含むトリミングした3つのDNAの各々を連結することであった。実施されるべき3つの連結のそれぞれについて、50ナノグラムの直鎖化ベクター、3倍モル過剰の多様性を含む挿入物DNA、並びに適切な緩衝液および酵素(New England Biolabs, Beverly, MA)を用い製造業者の指示にしたがい準備した。この連結の結果、3つの環状化ベクターDNAプール一式が得られ、各々は3つの領域(L1、L2およびL3/CT)の1つに多様性をもつRD1遺伝子を含んでいた。いずれの時点でもアルカリ性ホスファターゼを使用しなかったので、環状化ベクターは概ねニックを持たないはずであるが、しっかりしたスーパーコイルではないであろう。
【0040】
細菌の形質転換は非効率的なプロセスであり、環状化ベクターの大半が形質転換を達成できない。最大のライブラリー複雑度を温存するために、以下の方法を用いて、連結に成功したDNA多様性の実質的に全てを抽出および増幅した。連結物質の5μLを、挿入物のどちらかの側でpUCベクターにアニールさせたプライマー(M13For1またはM13Rev)とともに100μLのPCR反応に直接加えた。PCRを実施し、約10サイクル後の2サイクル毎に5μLのタイムポイントを取り出した。前記タイムポイントに存在するDNA量を基に、PCRの開始前に混合物に存在するPCRコンピテントな連結済みライブラリーDNAの最少量を、各サイクルで倍加をもたらす最大増幅速度を基準にして逆算した。この計算では以下の等式を用いた:C>=m/(2^n)(式中、Cは開始時の複雑度(多様性を含む遺伝子をPCRによって抽出することができる分子の数)であり、mはnサイクルのPCR後にPCR反応中に存在する分子の数である)。例として、M13ForおよびM13Revを用いたPCRによって増幅された土台を含むpUC19由来のフラグメントはほぼ590塩基対である。nサイクルのPCRの後でPCR反応中に存在する長さが590のDNAの総量を、バンド(‘n’タイムポイントのバンド)の強度を定量用マーカー(例えばLow Mass(Invitrogen, Carlsbad, CA))のバンドと比較することによって測定することができる。例えば10サイクル(n=10)後にバンドが50ngのDNAを4μLのPCRに含んでいたならば(12.5ng/L)、残りのPCR反応(例えば80μL)は80μL X 12.5ng/L=1000ng=1μgを含む。590塩基対の二本鎖DNAフラグメントは約590b.p. X (660AMU/b.p.)=3.9E+0.5AMU/分子の分子量を有する。1グラム中の分子数を計算するために、(6.02E+23分子/モル)/(3.9E+0.5グラム/モル)=1.5E+18分子/g=1.5E+12分子/μg。開始時の最小複雑度Cを計算するために、m=1.5E+12およびn=10である。したがって、C=1.5E+12/(2^10)=1.5E+0.9である。L1およびL2について、Cが1.0E+0.9を超えるならば、複雑度は十分であると考えられ、連結されたDNAを次の工程で用いた。L3/CTについては、C>10E+0.6が十分であるとみなされた。
【0041】
完全なRD1Lib1ライブラリーのアッセンブリ:土台の遺伝子をpUC19ベクターから非対照的に増幅させるために、プライマーを設計した。pUC-Top+600は、(発現タンパク質のN-末端を含む側で)挿入物から取り出したほぼ600bpであり、一方、pUC-Bottom+150は挿入物の他方の側に至るほぼ150bpである。これらのプライマーを用いて土台遺伝子を増幅させたとき、PCRフラグメントをこの遺伝子の内部または境界に固有の認識部位を有する任意の酵素で切断することができる。生成される2つフラグメントは少なくとも100bpの違いを有し、したがってそれらはアガロースゲル電気泳動によって容易に分離することができる。
L1.1/L2.1/L3.1/CT反応生成物の最終的な混合物は少なくとも5x109の複雑度を有すると概算された。
T7セレクト・ファージ・ディスプレー・システム・パッケージングキット(T7 Select Phage Display System Packaging Kit)(P/N 70014)および10-3 T7セレクトベクターDNA(P/N 70548)をNovagen(San Diego, CA)から入手し、L1.1/L2.1/L3.1/CT反応生成物を用いるライブラリーを製造業者の指示にしたがって構築した。
【0042】
L1.1/L2.1/L3.1/CT反応生成物をEcoRIおよびHindIIIで消化してゲル精製し、続いて3:1の挿入物:ファージDNAのモル比で10-3b T7ベクターアームに連結した。200マイクロリットルの体積中で20μgのベクターアームと一晩連結させた後、続いて前記連結反応物を総量1mLのパッケージング抽出物と混合し、室温で2時間インキュベートし、無菌的LBで9:1に希釈し、続いて力価を測定した。全ての工程で製造業者の指示にしたがった。力価はパッケージされたファージの総数が1.5x109であることを示した。その後のライブラリーの配列決定は、遺伝子の約30%がフレームシフトを有し、したがって完全長土台遺伝子のライブラリー複雑度は約1x109であることを示した。ファージを大腸菌5403株(CalBiochem)で増殖させ、さらに、ファージライブラリーキットの指示にしたがい、溶菌時にファージをPEG沈殿によって2回濃縮し、続いてCsCl濃度勾配精製および透析を実施した。
ライブラリーの作製のためのこの方法に関してはいくつかの変法を実施することができることは特記されるべきであろう。例えば、上記記載のライブラリーのためにファージT7の10-3bバージョンを用いた。このバージョンは、製造業者(Novagen)によれば、各ファージ粒子の表面に約5から15コピーの融合タンパク質を発現する。他のファージゲノム、例えば1-1bを用いることも可能である。前記は、前記製造業者によればファージ粒子当り0.1から1融合タンパク質を提示する。
【実施例4】
【0043】
結合タンパク質の選別
T7をベースとする実施例3のRD1Lib1ライブラリー構築物から、特異的な標的と結合する個々のタンパク質を以下の方法によって単離した。概略すれば、全体的方法は、標的タンパク質をビーズに結合させ、T7-RD1Lib1ライブラリーを前記ビーズと混合し、洗浄し、結合したT7ファージを溶出させ、大腸菌を前記溶出ファージに感染させて前記ファージ集団を増やし、さらに、ファージ集団の相当な部分が標的と結合するタンパク質を発現するまでさらに数サイクルの結合、溶出および増殖を行うことであった。この時点で、個々のライブラリーメンバーを標的と結合するそれらの能力について、さらに場合によって関連標的とは結合しないそれらの能力について試験した。いくつかの事例では、ネガティブ選別工程が含まれた。例えば、特定の抗体のV領域対と特異的に結合するタンパク質を単離するとき、一般的には所望のV領域を持つ抗体と結合するタンパク質を選別する前に、同じ定常領域をもつがVドメインが異なる抗体に対するネガティブ選別工程を最初に実施した。
例えば、抗CD19抗体(米国特許出願公開US2007/0154473を参照されたい)、ヒト化14.18抗体(米国特許7,169,904号を参照されたい)、または抗EpCAM抗体(米国特許6,969,517号を参照されたい)のV領域と特異的に結合するタンパク質を同定した。これらの抗体タンパク質は、記載のように遺伝的に操作した哺乳動物細胞から生成された。
【0044】
以下の具体的方法は、抗CD19抗体と結合するタンパク質の単離で特異的選別に用いられた。全体的方法は、低ストリンジェンシー条件下でポジティブセレクションラウンドを実施し、選別したファージを増幅し、ネガティブセレクションラウンドを実施し直後に第二のポジティブセレクションラウンドをさらにストリンジェントな条件下で実施し、もう1ラウンドの増幅、再組合せ工程(選別したRD1集団のN-およびC-末端部分をコードするDNAの組換えを実施し、続いて低コピーT7発現ベクターに導入する)、続いて1ラウンドのポジティブセレクションとネガティブプラスポジティブセレクションの2ラウンド、ポジティブセレクションラウンドの後で増幅を実施することであった。このプロセスの最後に、個々のライブラリーメンバーを実施例5および6に記載するように試験した。
結合基質を生成するために、まず初めにビオチニル化ヤギ抗ヒト抗血清(Jackson Immunolabs, MD)を用いて、抗CD19抗体をストレプトアビジン被覆DYNALビーズ(Invitrogen Corp.(Carlsbad, CA)の製品112.06)に結合させた。1回かぎりの選別ラウンドを実施するために、約100μLのビーズ(6.7x108ビーズ/mL)を磁性ラックに置いた1.5mLのプラスチックチューブに入れ、全ビーズがチューブの側面にしっかりと保持されるまで約1分間落ち着かせた。上清を除去し、1mLのTBS(Pierce)を添加し、ビーズをTBSに混合し、再度ビーズを磁性ラックで落ち着かせ、上清を取り除き、1mLのTBSを再度添加し、ビーズを再度落ち着かせた。最後に、約30μLのTBSにビーズを再懸濁させた。20μLのグリセロールストックとして約10μgのビオチニル化ヤギ抗ヒト抗体をビーズに添加した。このスラリーを回転装置に置き、約6から9時間室温で回転させた。続いてビーズを1mLのTBSで4回洗浄し、さらに30μLのTBSに再懸濁させた。
【0045】
先ず抗CD19抗体のV領域と結合したライブラリーメンバーを選別するために、約10μgの抗CD19抗体を前記ビーズと混合した。チューブを4℃で一晩回転装置に置き、抗CD19抗体をビーズ上のヤギ抗ヒトIgGと結合させた。次の朝、上記に記載したように、1mLのTBS中で前記ビーズを2回洗浄し、PBS中の3%BSAに再懸濁させ、さらに2時間室温で回転させ、1mLのTBSで2回洗浄し、1mL当り5x1011から1012のプラーク形成単位を有するT7-RD1Lib1ライブラリーの100μLおよび30%BSAの11μLを混合し室温で2時間インキュベートすることにより調製したT7ファージ粒子を含む溶液に再懸濁させた。ファージおよびビーズを含む前記混合物を室温で約30から60分回転装置上でインキュベートした。続いてファージが吸着したビーズを室温で0.05%のTween20を含む1mLのTBS中で6回洗浄した。TBS-Tweenのそれぞれの添加後に、ビーズを懸濁させたまま1分間放置し、続いて上記に記載したように磁力によりビーズを分離し、上清を取り除き、新しいTBS-Tweenを添加した。それぞれの洗浄後に、混合物を新しいチューブに移した。最後の洗浄後に、TBS中の1%SDSの100μLを添加し5分間インキュベートし上記記載のように磁力により上清をビーズから取り出すことによって、結合ファージをビーズから溶出させた。100μLの上清を直ちに900μLのTBSに添加した。
【0046】
選別ファージを以下のように増幅させた。約20から30μLの溶出ファージを力価測定のために取り出し、残余を、35mLの指数関数的に増殖中の大腸菌5403(ODが約0.5)に50mg/Lのアンピシリン補充濃栄養培地にて添加した。前記培養に溶菌するまで37℃で通気した。溶菌は通常約2−4時間後に生じ、これはOD の低下(0.3未満)および糸状の破片の存在によって示された。この時点で、3MのNaClを3mL添加し、培養を50mLのチューブに移し、8,000xGで10分間遠心して破片を除去した。上清を新しいチューブに移し、1/5の体積の水に50%のポリエチレングリコール(PEG)8000を添加し、混合し、さらに4℃で一晩インキュベートした。次の朝、PEG沈殿物を10,000Gで20分遠心し、全上清を注意深く除去した後ペレットを得た。前記ペレットを3mLのTBSに再懸濁し、2つの2mLプラスチックチューブに分け、小型遠心機の最大速度で10分間遠心して破片を除去し、上清を採集した。2回目の沈殿工程のために、1/6の体積の50%PEGを各チューブに加え、混合物を氷上で60分間インキュベートし、続いて小型遠心機の最大速度で10分間遠心した。上清を廃棄しペレットを300μLのTBSに再懸濁した。得られた溶液を小型遠心機の最大速度で10分間再び遠心して破片を除去した。得られた上清の力価を測定し、典型的には1mL当り約5x1011のファージ粒子(pfu)が得られた。この調製物を以下の工程のために用いた。
【0047】
続いてネガティブセレクション工程を実施した。上記に記載したように、架橋としてビオチニル化ヤギ抗ヒト抗血清を用いhu.18モノクローナル抗体をDYNALビーズに結合させた。先行するパラグラフで述べたように作製したファージ調製物の100μLを前記ビーズに室温で1時間1xのブロッキング緩衝液の溶液中で吸着させた。上記に記載したようにビーズを磁力により分離し、上清を取り出した。続いてこの上清を用いて第二ラウンドのポジティブセレクションを実施した。前記ポジティブセレクションラウンドは、ファージ-ビーズ吸着混合物を12回(各々1分)、0.1%Tween含有TBSで洗浄したことを除いて、上記に記載したように実施した。これらの変更の目的は選別のストリンジェンシーを高めることであった。上記に記載したように結合ファージを溶出させ、増殖させ、さらに精製した。得られたファージ調製物の力価を測定した。このパラグラフの冒頭に記載した条件と同じ条件を用いて、前記ファージ調製物をもう1ラウンドのネガティブおよびポジティブセレクションの実施に用いた。前記選別の2つの目的は次の工程が失敗に終わった場合にバックアップとして供すること、および選別の経過の指標を提供することであった。この第三ラウンドの選別で生存したファージ数は、第二ラウンドの選別で生存したファージ数と比較して顕著に増加し、このことは結合配列が濃縮されたことを示している。
第二ラウンドの選別から増幅させたファージ集団を用い以下の方法によって組換えタンパク質を生成した。理論に拘束されないが、この工程の理論的根拠は、最初に選別されたファージのタンパク質-標的相互作用は与えられたRD1Lib1ライブラリーメンバーのただ1つのループサブセットによる可能性があること、およびより堅固な結合はそのようなループを他の場所の多様なループと対を形成させ、続いて堅固なバインダーを選別することによって達成しえるということであった。この工程は、自然界で抗体配列に多様性が導入される工程と類似する。
【0048】
第二の選別から溶出させ増幅させた約1μLのファージ調製物とともに、最初の未選別ファージ集団の1μLを用いて、ライブラリーメンバーのコード配列のPCR増幅を開始した。強いバンド(当該反応で約10ng/μLに相当する)がゲルに出現するまで各増幅反応を繰り返した。続いて前記反応を新しいPCR緩衝液、dNTP、ポリメラーゼおよびプライマーで2−3倍に希釈し、ただ1サイクルだけ実施して不完全な対を形成したライブラリーメンバーの発生を抑えた。
増幅生成物をQiagenキットで精製し、制限酵素BstAPIで切断し、以下の4つのフラグメントを生じた:選別集団から5’および3’フラグメント並びに未選別集団から5’および3’フラグメント。これらを標準的方法にしたがってゲル精製した。
【0049】
続いて以下の3つの連結反応を実施した:5’選別プラス3’選別、5’未選別プラス3’選別、および5’選別プラス3’未選別。各連結反応物を増幅した。増幅中に、種々の時点でサンプルを取り出し、アガロースゲルで定量した。前記定量から、少なくとも約109のそれぞれ別個の増幅可能な連結分子が各連結反応で生成されたことが証明された。この連結反応混合物をQiagenキットで精製し、EcoRIおよびHindIIIで同時に消化した。320-bpのDNAフラグメントをゲル精製し、続いてT7Select 1-1bに連結し、さらにNovagen in vitroパッケージングキットを製造業者の指示にしたがって用いてパッケージを実施した。
前記新規なライブラリーを増幅し、原型ライブラリーを濃縮したプロトコルと同じプロトコルによって濃縮し、少なくとも5x1011/mLの力価を有する濃縮ファージ懸濁物が得られた。上記に概略した選別方法を用いて、この新規なライブラリーから高親和性バインダーを選別した。本事例では、第三の選別ラウンドはバックアップのためのものではなく、最高のバインダーをそこからスクリーニングすることができる最終ラウンドであった。
【実施例5】
【0050】
ファージベースRD1Lib1ライブラリーの個々のメンバーを標的タンパク質との結合について試験する
ファージをベースとする結合タンパク質に対する一連の選別の後で、得られた集団は、一般的には、標的と結合するライブラリーメンバーを発現するいくつかのファージと標的と結合しない他のファージとの混合物を含むであろう。与えられた標的と結合することができるRD1Lib1ライブラリーメンバーを発現する個々のファージを同定するために、ELISA型プレートを個々の標的分子で被覆し、ライブラリーメンバーを発現するクローンファージを添加し、ファージの結合度を主要ファージキャプシドタンパク質に対する抗体を用いて検出した。
いくつかの事例で下記の特別なプロトコルを用いた。Nunc-Immuno Module MaxiSorp 8フレームイムノプレート(カタログ番号CA#468667)を100μLの標的タンパク質(1μg/mL)で一晩4℃でインキュベートして、ウェルを前記標的タンパク質で被覆した。このウェルをPBS+0.05%のTween-20で4回洗浄した。前記ウェルを100μLのPBS+3%牛血清アルブミンで2時間、室温でインキュベートしてブロックし、再びPBS+0.05%のTween-20で4回洗浄した。
【0051】
並行して、個々のRD1Lib1ライブラリーメンバーを発現するクローンファージを以下のようにして作製した。実施例4の選別から得たファージコレクションの力価を標準的な方法にしたがって測定した。十分に分離したプラークをもつ寒天プレートから、少なくとも直径が1−2mmの単一プラークを200μLの大口径のピペットチップを用いて寒天栓子として採取し、第一のFalconプラスチック96ウェルU底プレートに加えた。前記プレートの各ウェルは50μLのTE緩衝液(100mMのTris/HCl(pH8.0)、10mMのEDTA(pH8.0))を含む。前記プレートを卓上シェーカー(Eppendorf)にて室温で約30分震盪してファージ粒子を溶出させる。指数関数的に増殖している(600nmでODが0.5)約100μLの大腸菌5403株(Novagen)を第二の96ウェルU底組織培養プレートのウェルに加え、約15から20μLの溶出ファージを第一の96ウェルから添加した。溶菌を肉眼で観察できるように、ファージを含まない2つのウェルをコントロールとして残した。このプレートを“呼吸可能テープ”で覆い、New Brunswickロータリーシェーカーに約900−1000回転/分で設置した。前記プレートを溶菌について肉眼でモニターした。溶菌は通常約2時間かそれより後で生じた。続いて各ウェルの粗溶菌物の約20μLをCostar3958-1mL丸底プレートのウェルに添加した(各ウェルは指数関数的に増殖している(ODは約0.5)0.7mLの大腸菌5403株を含む)。前記プレートを呼吸可能テープで覆い、New Brunswickロータリーシェーカーに約900−1000回転/分で設置した。プレートを溶菌について肉眼でモニターした。溶菌は通常約2時間かそれより後で生じた。
【0052】
単離されたファージクローンを含む各96ウェルプレートのために、1枚の96ウェルELISAプレートを上記に記載したように標的で被覆し、1枚の96ウェルプレートは陰性コントロールとして供するために非標的分子で被覆した。抗CD19抗体標的の場合には、第二のプレートはキメラKS抗体またはキメラ14.18抗体を含んでいた。100μLのろ過ファージを各ファージ調製ウェルから取り出し、50μLを標的被覆ELISAプレートの対応するウェルに、50μLを陰性コントロールプレートのウェルに添加した。標的プレートおよびコントロールプレートを室温で約1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween-20で4回洗浄した。1:10,000希釈の抗T7テールタンパク質モノクローナル抗体(Novagenカタログ番号#71530(Madison, WI))の約100μLを各ウェルに添加し、インキュベーションを約1時間室温で進行させた。プレートをPBS+0.05%のTween-20で4回洗浄した。1:10,000希釈のヤギ抗マウスIgG Fc-HRP(Jackson Immunoカタログ番号#115-035-071)の約100μLを添加し、インキュベーションを約1時間室温で進行させた。プレートをPBS+0.05%のTween-20で4回洗浄した。Bio FX TMBコンポーネントHRP溶液TMBW 1000-01の約100μLを各ウェルに約10−20分添加した。反応を100μLの塩酸(1N)の添加によって終了させ、プレート読み取り用分光光度計でプレートを450nmで読み取った。
【実施例6】
【0053】
単離RD1Lib1ライブラリーメンバーを標的タンパク質との結合について試験する
実施例5に記載した性状決定の代替工程としてまたは前記性状決定に続く工程として下記に記載の方法を用い、実施例4で作製されたがファージから分離されたファージベースライブラリーメンバーからヒスチジンタグ付きライブラリーメンバーを作製した。
第一の工程として、ファージDNA内のRD1Lib1コードセグメントのPCR増幅によって、選別ファージから‘ミニライブラリー’を作製した。得られたDNAをNcoIおよびXhoI酵素によって切断してpET30ベクター(Novagen)に挿入し、各RD1Lib1ライブラリーメンバーのヒスチジンタグN-末端付加型が発現されるようにした。標準的条件にしたがって連結反応を実施し、連結反応混合物を用いてBlrl細胞(Novagen)を形質転換し、標準方法にしたがってLB+カナマイシン(50mg/L)プレートにプレートした。
個々のクローンを丸底96ウェルプレート(各ウェルに100μLの2x-NZCYM-Kanを含む)に抜き出し、一晩37℃で約900RPMで震盪させながら増殖させた。前記一晩培養を次の日新しい深底96ウェルプレート(1mLの2x-NZCYM-Kanを含む)で1:50または1:100に希釈し、典型的なウェルが600nmでOD=0.5を示すまで数時間37℃で増殖させ、0.5mMのIPTGで誘発してさらに4時間37℃で増殖させた。この工程は、個々のヒスチジンタグ付きライブラリーメンバーの細胞質発現をもたらす。続いて “Bug Buster”または“Pop Culture”(ともにNovagen)を製造業者の指示にしたがって用いて前記培養を溶解させた。溶解後の細胞屑を除去する遠心工程の後で、上清を新しいプレートに移した。この上清は可溶性RD1Lib1タンパク質を含んでいた。PAGEのためにランダムにウェルを選択し、少なくとも顕著な数のクローンで発現が適切であることを確認した。更なる配列決定または更なる試験のために、最初の一晩培養をグリセロールストックとして-80℃で保持するかまたはLB-Kanプレートでのレプリカとして保持した。
【0054】
種々のクローンの結合特性を以下のように試験した。各96ウェルプレートのクローンについて、2枚の96ウェルニッケル-NTAプレート(Pierce)を用意し、1枚を実験用、他方をコントロール用とした。80μLの結合緩衝液(300mMのNaCl、25mMのリン酸ナトリウム(pH8.0))を両プレートの各ウェルに添加し、続いて20μL のRD1調製物の上清を前記2枚のプレートに最初の調製物と同じ配置で添加した。前記溶解物を結合緩衝液とよく混合し、1時間インキュベートしてプレートの底のニッケル-NTA部位を可能なかぎり完全に飽和させた。続いてプレートをTBS+0.05% Tween(TBS-T)で4回洗浄した。2つの溶液をTBSで調製した(1つを2μg/mLの標的(抗CD19)に用い、他方を同じく2μg/mLの陰性コントロール(14.18)に用いた)。100μLの標的溶液を実験プレートの各ウェルに添加し、100μLのコントロール溶液をコントロールプレートの各ウェルに添加した。1時間後に前記プレートを4回TBS-Tで洗浄し、続いてTBS-T中で1:10,000希釈のHRP結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体を添加し、1時間インキュベートした。続いてこのプレートを4回TBS-Tで洗浄し、さらに実施例5に記載したようにBio-FX TMBを100μL/ウェルで添加することによってシグナルを発生させた。
試験したRD1Lib1ライブラリーメンバーの約50%が予め選択した抗CD19標的分子と結合したようであった。本事例では、14.18抗体との結合についてもまたライブラリーメンバーを試験した。選択したライブラリーメンバーの1つだけが14.18ともまた結合したようであった。このライブラリーメンバーはおそらく抗体の定常領域と結合し、したがって実施例4に記載したネガティブセレクション工程から漏れ出たものを示しているようである。
総合すれば、これらの結果は、予め選択した標的分子と特異的な態様で結合するRD1Lib1ライブラリーメンバーを同定できることを立証している。
【実施例7】
【0055】
抗αV抗体の可変ドメインと結合するタンパク質
ヒトαVインテグリンのαV-鎖に対する抗体の可変ドメインに対して親和力を有するタンパク質についてRD1Lib1ライブラリーを首尾よくスクリーニングすることができた(米国特許5,985,278号参照)。同定されたタンパク質のアミノ酸配列は図10および11に提示されている。
【実施例8】
【0056】
KSと結合するタンパク質
ヒト化KS抗体可変ドメイン(ヒトEpCAM抗原を認識する)に対して親和力を有するタンパク質についてRD1Lib1ライブラリーを首尾よくスクリーニングすることができた。同定されたタンパク質のアミノ酸配列は図12に提示されている。
【実施例9】
【0057】
抗CD19抗体可変ドメインおよびIgGと結合するタンパク質
抗CD19抗体の可変ドメインに対して親和力を有するタンパク質についてRD1Lib1ライブラリーを首尾よくスクリーニングすることができた。同定されたタンパク質のアミノ酸配列は図13および14に提示されている。
抗CD19抗体結合タンパク質(C10と称される)をさらに別のタンパク質設計実験のために選択した。特に、C10のランダム化配列をまた別の土台配列に移植した追加のタンパク質を設計した。そのような第一の土台(“RD1 no CHO”または単に“no CHO”と称される)は、変異グリコシル化部位を有するRD1.3バージョンである。第二の土台(“DI” と称される)はRD1.3の脱免疫バージョンである。第三の土台(“DI-DeLys” と称される)は、各リジンがアルギニンで置換されたDIバージョンである。IgG結合タンパク質(D26と称される)もまたそのランダム化配列をこれら他の土台に移植するために選択した。得られたアミノ酸配列は図15に示されている。
【実施例10】
【0058】
RD1変種とFc融合タンパク質の非凝集の確認
3つの土台タンパク質をサイズクロマトグラフィーに付して、前記タンパク質がもっぱら非凝集モノマーとして存在することを確認した。これらタンパク質には以下が含まれる:融合タンパク質のN-末端にFc抗体フラグメントおよびC-末端にRD1.3を含む融合タンパク質;RD1-DI-DeLys;および図9のRD1変種“Guy1”。Fc-RD1、RD1-DI-DeLysおよびGuy1のサイズクロマトグラフィーはそれぞれ図16、17および18に示されている。これらの図で分るように、各タンパク質はもっぱら単一ピークとしてクロマトグラフィー図に存在し、当該タンパク質が非凝集モノマーとして存在することを示している。
【実施例11】
【0059】
更なる変種の合成
更なる変種土台タンパク質を設計し合成した。これらタンパク質の配列を図19に示されている。これらには以下が含まれる:6-1、変異グリコシル化部位をもつTop7タンパク質;6-2から6-4、RD1.3の軽度変種;6-5から6-9、免疫原性エピトープおよびリジンが減少したRD1.3変種;6-10、実施例9のRD1ライブラリーメンバー;および6-11、DallugeらのM7タンパク質に関する変種。これらタンパク質の全てが、その後の変性および非変性ゲル電気泳動によって決定されたとおり良好に発現された。
本発明は、本発明の精神およびその本質的特徴から外れることなく他の具体的形態で実施することができる。したがって、前述の実施態様は、あらゆる点において本明細書に記載した発明についての制限ではなく例示であるとみなされよう。本発明の範囲は、したがって上述の記載ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の趣旨およびその等価物の範囲内に含まれる全ての変更はその中に包含されるものと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型タンパク質Top7由来のタンパク質であって、2つの平行α-ヘリックスと5つの逆平行β鎖および前記α-ヘリックスと前記β鎖とを連結するループを含み、前記タンパク質の2つの面がそれぞれα-ヘリックスをβ鎖に接続する2つのループおよび2つのβ鎖を接続する1つのループを含み、一方の端の少なくとも2つのループがそれぞれTop7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸長く、前記2つのループの少なくとも1つが予め選択した標的分子に特異的に結合する前記タンパク質。
【請求項2】
α-ヘリックスおよびβ鎖が、Top7のα-ヘリックス及びβ鎖のα-炭素骨格の構造からの根平均自乗偏差(RMSD)が4.0以下である構造を有するα-炭素骨格を画定する、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
RMSDが2.0以下である、請求項2記載のタンパク質。
【請求項4】
予め選択した標的分子と10μM以下の解離定数で結合する、請求項1〜3のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項5】
平行α-ヘリックス(「α」)および逆平行β鎖(「β」)が単一のポリプチド中でββαβαββの順序で存在する、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項6】
少なくとも2つのポリペプチドを含み、前記ポリペプチドのそれぞれが1つのα-ヘリックス(「α」)および3つの逆平行β鎖(「β」)をβαββの順序で含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項7】
少なくとも3つのループがTop7の対応するループよりも少なくとも1アミノ酸長い、請求項1〜6のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項8】
3つのループがタンパク質の同じ面にある、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)
(式中、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)は、
(i)配列番号3または配列番号3のアミノ酸21-42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列;または
(ii)配列番号6または配列番号3のアミノ酸21-42と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列;または
(iii)配列番号7と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、
のアミノ酸21-23、24-32、33-37および38-42に一致する)
のアミノ酸配列を含み、
(i)L(45)の最小の長さが10アミノ酸、
(ii)L(56)の最小の長さが7アミノ酸、
(iii)L(67)の最小の長さが4アミノ酸、および、
(iv)L(45)、L(56)またはL(67)が予め選択した標的分子に特異的に結合し、L(45)、L(56)またはL(67)の少なくとも2つがそれぞれ少なくとも1アミノ酸各最小長を上回る、
請求項1〜8のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項10】
式B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)からなる2つのアミノ酸配列を含む、請求項9記載のタンパク質。
【請求項11】
L(45)、L(56)またはL(67)の少なくとも一つが予め選択した標的分子に特異的に結合し、それによって予め選択した標的分子と10μM以下の解離定数で結合する、請求項9または10記載のタンパク質。
【請求項12】
式B(1)-L(12)-B(2)-L(23)-A(3)-L(34)-B(4)-L(45)-A(5)-L(56)-B(6)-L(67)-B(7)
(式中、B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が
(i)配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列;または
(ii)配列番号6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列;または
(iii)配列番号7と少なくとも95%同一のアミノ酸配列、
のアミノ酸1-5、6-8、9-20、21-23、24-32、33-37および38-42に一致する)
のアミノ酸配列を含み、
(i)L(12)の最小の長さが10アミノ酸、
(ii)L(23)の最小の長さが7アミノ酸、
(iii)L(34)の最小の長さが9アミノ酸、
(iv)L(45)の最小の長さが10アミノ酸、
(v)L(56)の最小の長さが7アミノ酸、
(vi)L(67)の最小の長さが4アミノ酸、および、
(vii)少なくともL(12)、L(23)、L(34)、L(45)、L(56)またはL(67)の少なくとも1つが予め選択した標的分子に特異的に結合し、それによって予め選択した標的分子と10μM以下の解離定数で結合する、請求項1〜8のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項13】
B(1)、B(2)、A(3)、B(4)、A(5)、B(6)およびB(7)が(i)配列番号3と少なくとも85%同一の配列、または、(ii)配列番号6と少なくとも95%同一の配列、のアミノ酸1-5、6-8、9-20、21-23、24-32、33-37および38-42に一致する、請求項12記載のタンパク質。
【請求項14】
L(12)が10アミノ酸より長い、請求項12または13記載のタンパク質。
【請求項15】
L(23)が7アミノ酸より長い、請求項12〜14のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項16】
L(34)が9アミノ酸より長い、請求項12〜15のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項17】
L(45)が10アミノ酸より長い、請求項12〜16のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項18】
L(56)が7アミノ酸より長い、請求項12〜17のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項19】
L(67)が4アミノ酸より長い、請求項12〜18のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項20】
さらに、安定に会合したエフェクターおよび/または検出可能標識を含む、請求項1〜19のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項21】
(i)CD4に特異的に結合しない、および/または、
(ii)ヒト免疫不全ウイルスペプチドを含まない、および/または、
(iii)免疫原性ヒト免疫不全ウイルスペプチドを含まない、および/または、
(iv)ウイルスペプチドまたは細菌ペプチドを含まない、
請求項1〜20のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項22】
少なくとも2つの請求項1〜21のいずれか1項記載のタンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項23】
それぞれ同一でない複数の請求項1〜21のいずれか1項記載のタンパク質を含み、前記同一でないタンパク質が1以上のループのアミノ酸配列において互いに異なっている、タンパク質ライブラリー。
【請求項24】
請求項23記載のタンパク質ライブラリーをコードする核酸ライブラリー。
【請求項25】
請求項1〜21のいずれか1項記載のタンパク質をコードする核酸または請求項22記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項26】
請求項23記載のタンパク質ライブラリーを標的分子に曝露すること、および前記標的分子と結合する少なくとも一つのタンパク質を同定すること、を含む、予め選択した標的分子に特異的に結合するタンパク質を同定する方法。
【請求項27】
サンプルを請求項1〜21のいずれか1項記載のタンパク質に、標的分子が存在する場合には前記標的分子が前記タンパク質に結合する条件下で曝露すること、および前記タンパク質および前記標的分子を含む複合体の存在または不存在を検出すること、を含む、標的分子を検出する方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図2−15】
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【図2−16】
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【図2−17】
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【図2−18】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−519276(P2011−519276A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505432(P2011−505432)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002984
【国際公開番号】WO2009/130031
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】