人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびにおしゃぶり玩具
【課題】乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにした、人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびにおしゃぶり玩具を提供すること。
【解決手段】全体が略円錐状の中空体で、取り付け対象に対応して拡径されている基部と、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされており、前記乳首部は、哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていて、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている。
【解決手段】全体が略円錐状の中空体で、取り付け対象に対応して拡径されている基部と、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされており、前記乳首部は、哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていて、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳器に適用される人工乳首の改良と、改良された人工乳首を備える哺乳器ならびに、おしゃぶり玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミルクやあらかじめ搾取した母乳を収容するボトルに装着する人工乳首は、従来より広く使用されている。
特に、哺乳器からの授乳の際に、授乳期の乳幼児にだけみられるその上口蓋の窪みである哺乳窩に人工乳首の先端部を到達させるために、乳幼児の口中で伸長することを特徴とする伸展式の人工乳首が提案されている(特許文献1)参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−6809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような人工乳首においては、授乳時(飲料摂取時)に意図した伸長性能を得ることが難しく、乳幼児の吸綴強度の相違などもあり、実際の使用時に哺乳窩に到達しない場合があった。
加えて、球形になっている乳首先端部は構造上、蠕動様運動の際の乳幼児の舌の押圧力によって十分に押しつぶせないことがある。特に、人工乳首先端部が僅かに拡径して球形となっている場合(斜視図である図7を参照すると理解しやすい)には、該先端部分が十分につぶれないため、哺乳運動の際に、該先端部を哺乳窩に導くのではなく、かえって押し戻してしまうことで、乳首先端部が哺乳窩からはずれてしまい、ミルク等の飲料がうまく搾り出せない問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにした、人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびにおしゃぶり玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象に対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、しかも該乳首部は薄肉にされているから、哺乳窩に到達した状態で確実に押しつぶされる。
また、前記脆弱部を設けることにより、そこで曲折される(つぶれることはない)ことで、乳首部を哺乳窩にむけることができるとともに、蠕動様運動を受けた際に押しつぶされる領域が該乳首部に限定され、乳輪部に及ばないようにすることができる。これにより、外乳輪部は乳幼児の口唇の動きにともなって変形するものの、押しつぶされてしまうことがなく、該口唇部にしっかり保持される。
すなわち、前記脆弱部は、それが形成された箇所の円周に沿って帯状に設けられているので、乳首部に近い先端側では肉厚が薄く、乳輪部に近い箇所では肉厚が厚い構成であるから、変形時に完全におしつぶされることがなく、乳幼児の口唇によってしっかり保持される。
【0008】
好ましくは、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていることを特徴とする
上記構成によれば、乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されているから、乳幼児の口腔内で哺乳運動における蠕動様運動にあたり、従来の人工乳首において発生した不都合である、拡大した乳首先端部が押し戻される現象も防止でき、乳首部を伸展させないでも、無理なく確実に乳首部先端が哺乳窩に到達できる。
【0009】
好ましくは、前記乳輪部の表面には微細な凹凸加工がされていることを特徴とする。
上記構成によれば、人工乳首を口に含んだときに、乳幼児の口唇が、前記凹凸に触れて滑りにくくなり、安定して飲用できる。
【0010】
好ましくは、前記乳首部の内面には、縦方向に沿って延びるリブが形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、蠕動様運動において乳首部が潰された際に、前記リブが飲料通路の完全な閉塞が起こらないように通路を作ることができる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、人工乳首と、該人工乳首が取り付けられるボトルとを備える哺乳器であって、前記人工乳首が、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象である哺乳瓶のボトルに対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されており、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明は、人工乳首と、該人工乳首が取り付けられる座板部とを備えるおしゃぶり玩具であって、前記人工乳首が、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象である前記座板部に対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されており、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにした、人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびに、おしゃぶり玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る哺乳器の全体を示す概略正面図。
【図2】図1の哺乳器の乳首部の平面図。
【図3】図1の哺乳器において、ボトルと人工乳首を接続するのに使用されるキャップの一例を示す図。
【図4】図2のD−D線概略断面図。
【図5】図4の乳首部の拡大図。
【図6】図5のE−E線切断端面図。
【図7】本実施形態の人工乳首の概略正面図。
【図8】図2のA−A線概略断面図。
【図9】図8の部分拡大断面図。
【図10】人工乳首とキャップとの接合部分の部分拡大断面図。
【図11】図9のF−F線概略断面図。
【図12】図11の弁体の接合部分の形状を表す図。
【図13】図11の弁体のスリットとフランジとの方向を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る哺乳器の構成を示す概略正面図である。
図において、符号1は哺乳瓶などに使用されるボトルであり、飲料容器の一例である。
ボトル1の上端外周には図示しない雄ネジが形成されており、キャップ3内面の雌ネジと螺合できるようになっている。
キャップ3には、人工乳首20の下端基部が後述するようにはめ込まれ、その状態で、該キャップ3をボトル1の上端に螺合させて組み立てる構造となっている。
【0016】
図2は、図1の人工乳首20の概略平面図、図4は図2のD−D概略断面図、図5は図4の人工乳首の乳首部の拡大図、図6は図5のE−E切断端面図である。
図4に示すとおり、人工乳首20は、軟質合成樹脂等の弾性材料により、一体に成形されている。このような材料としては、硬度10〜40(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる)のシリコーンゴム、イソプレンゴム、熱可塑性エラストマー、あるいは天然ゴムが用いられる。本実施形態ではシリコーンゴムが選択され、硬度15〜35(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる)のものを使用することができる。
人工乳首の乳首部などの寸法設定については後述する。
【0017】
図3は、ボトル1に対して、人工乳首20を取付けるための取付け用のキャップ(以下、「キャップ」という)を示しており、図3(a)はキャップ3の概略斜視図、図3(b)はキャップ3の半断面図である。
キャップ3は全体が硬質合成樹脂の成形品で、扁平な円筒体である。この扁平な円筒体の上の開口31は下の開口32よりも開口径が小さく、該扁平な円筒体の内側面には雌ネジ部33が形成されている。キャップ3の上部には上の開口31に隣接して下向き段部を構成する内向きフランジ部34が形成されている。
【0018】
人工乳首20は、上記した材料により形成され、全体が略円錐状の中空体とされた成形品である。
人工乳首は、取り付け対象、例えば、図1のボトル1の開口部に対応して拡径されている基部21と、該基部21に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部22と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部23とを有している。乳首部の図において上端には、飲料を噴出するための開口25が形成されている。開口25はそのカット形状により、丸穴、Y字状、十字状、一方向のスリット状などの適宜の形態が選択される。
【0019】
図4で示されるように、乳輪部22は、乳首部23よりも大きな肉厚を備えるように構成されている。
乳輪部22と乳首部23との境界には、この乳輪部22よりも肉厚が薄く、乳首部23よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部24を備えている。
図示されているように、脆弱部24は、乳輪部22の近傍で肉厚が厚く、乳首部23の近傍で肉厚が最も薄くなるように、徐々に肉厚が変化するように構成されている。
これにより脆弱部は乳輪部22近傍では剛性が高く、乳首部23に近づくと剛性が低くなり、変形(曲り)を生じやすくなっている。ただし、乳輪部22に近い箇所では肉厚は十分に厚いので、折れたときに完全に潰れない構造とされている。
なお、乳輪部22や乳首部23の肉厚は使用する材料の硬度により適宜調整されるが、乳首部23の肉厚を1.0mm〜2.5mmとし、乳輪部22の肉厚をその1.5倍以上とすることが望ましい。
本実施形態では、乳首部23の肉厚を1.5mm〜2.0mm、乳輪部の肉厚を3.0mmとしている。
【0020】
さらに、図5および図6によく表れているように、乳首部23の内面には、縦方向に沿って延びるリブが設けられている。
この実施形態では、複数のリブ26が形成されており、各リブは、同じ高さで縦方向に延びていて、下端が脆弱部24の上部と重なっており、図6に示すように内周に沿って等間隔に3か所形成されている。
これにより、哺乳運動の際に乳幼児の舌の下の蠕動様運動の圧力で乳首部23が潰れたときに、乳首部23の内壁との間にリブ26が介在して隙間ができるので、飲料の通過を阻害しない。
さらに、乳首部23の内面にリブ26が設けられていることにより、乳首部23での変形(曲り)を防止し、前記脆弱部24の変形(曲り)を確実にすることができる。
なお、リブ26の高さ(内方への突出寸法)は、図5の上の方で低く、下の方で高くするようにすると、製造時の離型が容易であるとともに、脆弱部24の箇所の最も弱い領域の剛性を増し、かつ万一脆弱部24が折れて潰れようとしても、飲料通路を完全に閉塞することがない。
【0021】
なお、図4における乳首部23の長さ方向の寸法L2は、授乳時(以下、ミルク以外の果汁その他の飲料を摂取する場合も「授乳時」という。)に乳幼児の口腔内でその哺乳窩に乳首部23到達するための十分な長さとなるように設定される。
哺乳窩は通常、乳幼児の口唇から10〜15mm程度口腔内に入り込んだ位置にある。
従って、乳首部23の長さ方向の寸法L2が15mm以上であれば、乳首部23の先端は確実に乳幼児の哺乳窩に到達することができる。
本実施例では、乳首部23の長さ方向の寸法L2を15mmとし、基部21の下端から乳首部23の先端までの寸法L1を38mmとしている。
また、基部21の径方向の幅W1は、授乳時に乳幼児が口唇を大きく開いても、乳輪部22が乳幼児の口腔内に入り込まず、しっかりと乳幼児の口唇により保持されために、35mm以上であることが好ましい。
本実施例では、基部21の径方向の幅W1を45mmとしている。
【0022】
図7を参照する。
図7は人工乳首20の概略正面図であり、図において、乳輪部22の網掛け表示をした領域に関しては、その表面が微細な凹凸加工されている。
すなわち、該表面が細かい粗面とされている。
これにより、乳幼児の哺乳運動に際して、乳輪部分が乳幼児の口唇にしっかり保持されて滑りにくく、口から外れることを有効に予防することができる。
このような凹凸加工は、たとえば、成形にしようされる型内面をあらかじめサンドブラストなどにより粗面としたうえで、成形することにより得られる。あるいは人工乳首全体を成形後、乳首部分をマスキングしてサンドブラスト等により加工を施してもよい。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、基部21に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部22と、該乳輪部22から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ乳輪部22の縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部23とを有している。しかも、乳首部23は、授乳時に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されているから、乳幼児の口腔内で哺乳運動における蠕動様運動にあたり、従来の人工乳首において発生した不都合である、拡大した乳首先端部が押し戻される現象も防止でき、乳首部23を伸展させないでも、無理なく確実に乳首部23先端が哺乳窩に到達できる。しかも該乳首部23は薄肉にされているから、哺乳窩に到達した状態で押しつぶされることで、母親の乳首からの授乳と同様に授乳することができる。
また、脆弱部24を設けることにより、そこで曲折される(つぶれることはない)ことで、乳首部23を哺乳窩にむけることができるとともに、蠕動様運動を受けた際に押しつぶされる領域が該乳首部23に限定され、乳輪部22に及ばないようにすることができる。これにより、該乳輪部は乳幼児の口唇の動きにともなって若干変形するものの、押しつぶされてしまうことがなく、該口唇部にしっかり保持されることができる。
【0024】
図4の人工乳首20の基部21について説明する。
基部21は、乳輪部22のさらに下部において、全周にわたって、径方向外方に向かって膨出する膨出部42と、該膨出部の下面に形成されたオーバーハング部47と、このオーバーハング部47と対向しており、人工乳首20の下端において、例えば全周にわたってリング状に外方に膨出している所定厚みを備えたフランジ部41とを備えている。
【0025】
この基部21の領域に特徴ある構成が設けられている。
図8は、図2のA−A断面図であり、図9は図8の符合Pで示す領域を拡大して示す拡大部分断面図、図10はキャップ3が装着された状態における図9の部分の拡大部分断面図である。
図8、図9、図10において、膨出部42は、乳輪部22から乳房の膨らみに連続するように大きく拡径する部分に相当させて設けられている。
膨出部42とフランジ部41との間には、図3(b)にて説明した内向きフランジ部34が入り込む寸法の溝またはスリットからなる括れ部51が形成されている。
特に重要なのは、括れ部51の少なくとも一部は深く入り込むように設けられており、図10から理解されるように、キャップ3のフランジ部34の侵入深さよりもさらに深い位置まで、形成されている。
具体的には、括れ部51にキャップ3のフランジ部34をはめ込んだ際に、キャップ3のフランジ部34の内端よりもD2の寸法分だけ括れ部51は深く形成されている。
【0026】
一方、フランジ部41には、人工乳首20がキャップ3を介してボトル1に取り付けられた状態、つまり図1の状態で、授乳時にボトル1内のミルクなどが吸引されることによりボトル1の内圧が低下したした時に、外部からの空気を取り入れ、内部の液体が外に出ようとする際には閉じる逆止弁44が設けられている。
逆止弁44は、フランジ41の上下面に突出しないように、該フランジ41の厚みの内部に収まるように形成されている。
具体的には、フランジ部41の所定領域にたとえば図13のような円形の形成箇所43を設ける。さらに、図11に示すように、基端部がフランジ部41との一体部49,49を設け、該一体部49,49から斜め下方に向かって薄肉の可動片である弁体44a,44bを形成しており、各弁体44a,44bはそれぞれの先端(図11では下端)が閉じて液体が漏れないようにし、一方矢印Aの方向の空気には、該先端が空気圧力で開いてスリット48を形成してボトル1内に流れ込む構成とされている。
ここで、一体部49,49は、図12で斜線で示すように根元があるいは三日月状に円弧状に各可動片である弁体44a,44bと一体成形されている。
すなわち、逆止弁44は、二枚の弁体44a,44bが断面三角形状になるように先端同士を突き合わせて開閉するスリット48を形成するようにされており、これら弁体の基端部(一体部49)は、ほぼ三日月状に前記基部のフランジ部と一体に形成されている。
【0027】
さらに、図13に示すように、逆止弁44の開口であるスリット48は直線的開口であって、フランジ部41の周方向Sに対して直交する方向に形成されている。これにより、キャップ3に取り付けられた人工乳首20をボトル1に装着する際にキャップ3を螺合する際に、周方向Sへのねじれ力が作用しても各弁体44a,44bが、互いの先端(スリット48の箇所)が横滑りして、弁体どうしが重ならない状態にずれてしまうという不都合がない。
さらに、前記スリットの両端部には、該スリットの間隙寸法よりも大きな寸法の径でなる貫通孔を形成している。具体的には、好ましくは、スリット48の両端部には、円形の貫通孔48a,48aを設けている。これにより、弁体の前記スリット48の部分が互いに貼りついて、開きにくくなることを防止して、弁体の開閉をより確実にすることができる。
したがって、貫通孔48aは図示の場合円形であるが、三角状のもの等同様の作用を発揮するものであれば、形状は問わない。
なお、図10を参照して理解されるように、逆止弁44の形成箇所43はその外縁(内端)が、装着されたキャップ34の内端よりも僅かに内側(奥側)となることで、隙間D1を形成することができるようにされている。
【0028】
また、図10に示すように、逆止弁44の直上の位置において、膨出部42には、上下に貫通孔46が設けられている。貫通孔46の内端は、装着されたキャップ34の内端よりも僅かに内側(奥側)となることで、隙間D3を形成することができるようにされている。
さらに好ましくは、図7と図11を参照して理解されるように、膨出部42のオーバーハング部47には、逆止弁44に近接して、貫通孔46を両側から挟む位置にわずかな厚みを持つ凸部等で形成したスペーサ52,52が形成されている。このスペーサ52,52が図11の隙間G1を構成している。
【0029】
本実施形態は以上のように構成されており、授乳時にボトル1の内圧が低下しても図10の矢印A1に示すように膨出部42の貫通孔46を通って外気が隙間D1を抜け、続いて隙間D1、D2を抜けて逆止弁44に至る。この逆止弁44は、図11において、弁体44a,44bの下端が開きスリット48からボトル1内に向かって図10の矢印A3に示すように入り込むので、人工乳首20はボトル1の内圧の低下でつぶれることなく、支障なく授乳を続けることができる。
この場合、授乳時に、仮に、乳幼児が人工乳首20を咥える位置が変化してしまい、その口唇により貫通孔46を塞いでしまっても、スペーサ52,52の存在により矢印A2で示すように外気が隙間G1に入り込むからボトル1の内圧を低下させることを有効に防止できる。
【0030】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上述の各実施形態、変形例の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
20・・・人工乳首、22・・・乳輪部、23・・・乳首部、24・・・脆弱部、34・・・(キャップの)フランジ部、41・・・フランジ部、42・・・膨出部、44・・・逆止弁、48・・・スリット、51・・・括れ部、52・・・スペーサ、D1,D2,D3,G1・・・隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳器に適用される人工乳首の改良と、改良された人工乳首を備える哺乳器ならびに、おしゃぶり玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミルクやあらかじめ搾取した母乳を収容するボトルに装着する人工乳首は、従来より広く使用されている。
特に、哺乳器からの授乳の際に、授乳期の乳幼児にだけみられるその上口蓋の窪みである哺乳窩に人工乳首の先端部を到達させるために、乳幼児の口中で伸長することを特徴とする伸展式の人工乳首が提案されている(特許文献1)参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−6809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような人工乳首においては、授乳時(飲料摂取時)に意図した伸長性能を得ることが難しく、乳幼児の吸綴強度の相違などもあり、実際の使用時に哺乳窩に到達しない場合があった。
加えて、球形になっている乳首先端部は構造上、蠕動様運動の際の乳幼児の舌の押圧力によって十分に押しつぶせないことがある。特に、人工乳首先端部が僅かに拡径して球形となっている場合(斜視図である図7を参照すると理解しやすい)には、該先端部分が十分につぶれないため、哺乳運動の際に、該先端部を哺乳窩に導くのではなく、かえって押し戻してしまうことで、乳首先端部が哺乳窩からはずれてしまい、ミルク等の飲料がうまく搾り出せない問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにした、人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびにおしゃぶり玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象に対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、しかも該乳首部は薄肉にされているから、哺乳窩に到達した状態で確実に押しつぶされる。
また、前記脆弱部を設けることにより、そこで曲折される(つぶれることはない)ことで、乳首部を哺乳窩にむけることができるとともに、蠕動様運動を受けた際に押しつぶされる領域が該乳首部に限定され、乳輪部に及ばないようにすることができる。これにより、外乳輪部は乳幼児の口唇の動きにともなって変形するものの、押しつぶされてしまうことがなく、該口唇部にしっかり保持される。
すなわち、前記脆弱部は、それが形成された箇所の円周に沿って帯状に設けられているので、乳首部に近い先端側では肉厚が薄く、乳輪部に近い箇所では肉厚が厚い構成であるから、変形時に完全におしつぶされることがなく、乳幼児の口唇によってしっかり保持される。
【0008】
好ましくは、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていることを特徴とする
上記構成によれば、乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されているから、乳幼児の口腔内で哺乳運動における蠕動様運動にあたり、従来の人工乳首において発生した不都合である、拡大した乳首先端部が押し戻される現象も防止でき、乳首部を伸展させないでも、無理なく確実に乳首部先端が哺乳窩に到達できる。
【0009】
好ましくは、前記乳輪部の表面には微細な凹凸加工がされていることを特徴とする。
上記構成によれば、人工乳首を口に含んだときに、乳幼児の口唇が、前記凹凸に触れて滑りにくくなり、安定して飲用できる。
【0010】
好ましくは、前記乳首部の内面には、縦方向に沿って延びるリブが形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、蠕動様運動において乳首部が潰された際に、前記リブが飲料通路の完全な閉塞が起こらないように通路を作ることができる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、人工乳首と、該人工乳首が取り付けられるボトルとを備える哺乳器であって、前記人工乳首が、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象である哺乳瓶のボトルに対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されており、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明は、人工乳首と、該人工乳首が取り付けられる座板部とを備えるおしゃぶり玩具であって、前記人工乳首が、軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、取り付け対象である前記座板部に対応して拡径されている基部と、該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部とを有しており、前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されており、かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、乳首先端部が哺乳窩に十分に到達できて、適切に押し潰されることができ、その状態で確実に哺乳運動ができるようにした、人工乳首およびこれを用いた哺乳器ならびに、おしゃぶり玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る哺乳器の全体を示す概略正面図。
【図2】図1の哺乳器の乳首部の平面図。
【図3】図1の哺乳器において、ボトルと人工乳首を接続するのに使用されるキャップの一例を示す図。
【図4】図2のD−D線概略断面図。
【図5】図4の乳首部の拡大図。
【図6】図5のE−E線切断端面図。
【図7】本実施形態の人工乳首の概略正面図。
【図8】図2のA−A線概略断面図。
【図9】図8の部分拡大断面図。
【図10】人工乳首とキャップとの接合部分の部分拡大断面図。
【図11】図9のF−F線概略断面図。
【図12】図11の弁体の接合部分の形状を表す図。
【図13】図11の弁体のスリットとフランジとの方向を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る哺乳器の構成を示す概略正面図である。
図において、符号1は哺乳瓶などに使用されるボトルであり、飲料容器の一例である。
ボトル1の上端外周には図示しない雄ネジが形成されており、キャップ3内面の雌ネジと螺合できるようになっている。
キャップ3には、人工乳首20の下端基部が後述するようにはめ込まれ、その状態で、該キャップ3をボトル1の上端に螺合させて組み立てる構造となっている。
【0016】
図2は、図1の人工乳首20の概略平面図、図4は図2のD−D概略断面図、図5は図4の人工乳首の乳首部の拡大図、図6は図5のE−E切断端面図である。
図4に示すとおり、人工乳首20は、軟質合成樹脂等の弾性材料により、一体に成形されている。このような材料としては、硬度10〜40(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる)のシリコーンゴム、イソプレンゴム、熱可塑性エラストマー、あるいは天然ゴムが用いられる。本実施形態ではシリコーンゴムが選択され、硬度15〜35(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる)のものを使用することができる。
人工乳首の乳首部などの寸法設定については後述する。
【0017】
図3は、ボトル1に対して、人工乳首20を取付けるための取付け用のキャップ(以下、「キャップ」という)を示しており、図3(a)はキャップ3の概略斜視図、図3(b)はキャップ3の半断面図である。
キャップ3は全体が硬質合成樹脂の成形品で、扁平な円筒体である。この扁平な円筒体の上の開口31は下の開口32よりも開口径が小さく、該扁平な円筒体の内側面には雌ネジ部33が形成されている。キャップ3の上部には上の開口31に隣接して下向き段部を構成する内向きフランジ部34が形成されている。
【0018】
人工乳首20は、上記した材料により形成され、全体が略円錐状の中空体とされた成形品である。
人工乳首は、取り付け対象、例えば、図1のボトル1の開口部に対応して拡径されている基部21と、該基部21に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部22と、該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部23とを有している。乳首部の図において上端には、飲料を噴出するための開口25が形成されている。開口25はそのカット形状により、丸穴、Y字状、十字状、一方向のスリット状などの適宜の形態が選択される。
【0019】
図4で示されるように、乳輪部22は、乳首部23よりも大きな肉厚を備えるように構成されている。
乳輪部22と乳首部23との境界には、この乳輪部22よりも肉厚が薄く、乳首部23よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部24を備えている。
図示されているように、脆弱部24は、乳輪部22の近傍で肉厚が厚く、乳首部23の近傍で肉厚が最も薄くなるように、徐々に肉厚が変化するように構成されている。
これにより脆弱部は乳輪部22近傍では剛性が高く、乳首部23に近づくと剛性が低くなり、変形(曲り)を生じやすくなっている。ただし、乳輪部22に近い箇所では肉厚は十分に厚いので、折れたときに完全に潰れない構造とされている。
なお、乳輪部22や乳首部23の肉厚は使用する材料の硬度により適宜調整されるが、乳首部23の肉厚を1.0mm〜2.5mmとし、乳輪部22の肉厚をその1.5倍以上とすることが望ましい。
本実施形態では、乳首部23の肉厚を1.5mm〜2.0mm、乳輪部の肉厚を3.0mmとしている。
【0020】
さらに、図5および図6によく表れているように、乳首部23の内面には、縦方向に沿って延びるリブが設けられている。
この実施形態では、複数のリブ26が形成されており、各リブは、同じ高さで縦方向に延びていて、下端が脆弱部24の上部と重なっており、図6に示すように内周に沿って等間隔に3か所形成されている。
これにより、哺乳運動の際に乳幼児の舌の下の蠕動様運動の圧力で乳首部23が潰れたときに、乳首部23の内壁との間にリブ26が介在して隙間ができるので、飲料の通過を阻害しない。
さらに、乳首部23の内面にリブ26が設けられていることにより、乳首部23での変形(曲り)を防止し、前記脆弱部24の変形(曲り)を確実にすることができる。
なお、リブ26の高さ(内方への突出寸法)は、図5の上の方で低く、下の方で高くするようにすると、製造時の離型が容易であるとともに、脆弱部24の箇所の最も弱い領域の剛性を増し、かつ万一脆弱部24が折れて潰れようとしても、飲料通路を完全に閉塞することがない。
【0021】
なお、図4における乳首部23の長さ方向の寸法L2は、授乳時(以下、ミルク以外の果汁その他の飲料を摂取する場合も「授乳時」という。)に乳幼児の口腔内でその哺乳窩に乳首部23到達するための十分な長さとなるように設定される。
哺乳窩は通常、乳幼児の口唇から10〜15mm程度口腔内に入り込んだ位置にある。
従って、乳首部23の長さ方向の寸法L2が15mm以上であれば、乳首部23の先端は確実に乳幼児の哺乳窩に到達することができる。
本実施例では、乳首部23の長さ方向の寸法L2を15mmとし、基部21の下端から乳首部23の先端までの寸法L1を38mmとしている。
また、基部21の径方向の幅W1は、授乳時に乳幼児が口唇を大きく開いても、乳輪部22が乳幼児の口腔内に入り込まず、しっかりと乳幼児の口唇により保持されために、35mm以上であることが好ましい。
本実施例では、基部21の径方向の幅W1を45mmとしている。
【0022】
図7を参照する。
図7は人工乳首20の概略正面図であり、図において、乳輪部22の網掛け表示をした領域に関しては、その表面が微細な凹凸加工されている。
すなわち、該表面が細かい粗面とされている。
これにより、乳幼児の哺乳運動に際して、乳輪部分が乳幼児の口唇にしっかり保持されて滑りにくく、口から外れることを有効に予防することができる。
このような凹凸加工は、たとえば、成形にしようされる型内面をあらかじめサンドブラストなどにより粗面としたうえで、成形することにより得られる。あるいは人工乳首全体を成形後、乳首部分をマスキングしてサンドブラスト等により加工を施してもよい。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、基部21に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部22と、該乳輪部22から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ乳輪部22の縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部23とを有している。しかも、乳首部23は、授乳時に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されているから、乳幼児の口腔内で哺乳運動における蠕動様運動にあたり、従来の人工乳首において発生した不都合である、拡大した乳首先端部が押し戻される現象も防止でき、乳首部23を伸展させないでも、無理なく確実に乳首部23先端が哺乳窩に到達できる。しかも該乳首部23は薄肉にされているから、哺乳窩に到達した状態で押しつぶされることで、母親の乳首からの授乳と同様に授乳することができる。
また、脆弱部24を設けることにより、そこで曲折される(つぶれることはない)ことで、乳首部23を哺乳窩にむけることができるとともに、蠕動様運動を受けた際に押しつぶされる領域が該乳首部23に限定され、乳輪部22に及ばないようにすることができる。これにより、該乳輪部は乳幼児の口唇の動きにともなって若干変形するものの、押しつぶされてしまうことがなく、該口唇部にしっかり保持されることができる。
【0024】
図4の人工乳首20の基部21について説明する。
基部21は、乳輪部22のさらに下部において、全周にわたって、径方向外方に向かって膨出する膨出部42と、該膨出部の下面に形成されたオーバーハング部47と、このオーバーハング部47と対向しており、人工乳首20の下端において、例えば全周にわたってリング状に外方に膨出している所定厚みを備えたフランジ部41とを備えている。
【0025】
この基部21の領域に特徴ある構成が設けられている。
図8は、図2のA−A断面図であり、図9は図8の符合Pで示す領域を拡大して示す拡大部分断面図、図10はキャップ3が装着された状態における図9の部分の拡大部分断面図である。
図8、図9、図10において、膨出部42は、乳輪部22から乳房の膨らみに連続するように大きく拡径する部分に相当させて設けられている。
膨出部42とフランジ部41との間には、図3(b)にて説明した内向きフランジ部34が入り込む寸法の溝またはスリットからなる括れ部51が形成されている。
特に重要なのは、括れ部51の少なくとも一部は深く入り込むように設けられており、図10から理解されるように、キャップ3のフランジ部34の侵入深さよりもさらに深い位置まで、形成されている。
具体的には、括れ部51にキャップ3のフランジ部34をはめ込んだ際に、キャップ3のフランジ部34の内端よりもD2の寸法分だけ括れ部51は深く形成されている。
【0026】
一方、フランジ部41には、人工乳首20がキャップ3を介してボトル1に取り付けられた状態、つまり図1の状態で、授乳時にボトル1内のミルクなどが吸引されることによりボトル1の内圧が低下したした時に、外部からの空気を取り入れ、内部の液体が外に出ようとする際には閉じる逆止弁44が設けられている。
逆止弁44は、フランジ41の上下面に突出しないように、該フランジ41の厚みの内部に収まるように形成されている。
具体的には、フランジ部41の所定領域にたとえば図13のような円形の形成箇所43を設ける。さらに、図11に示すように、基端部がフランジ部41との一体部49,49を設け、該一体部49,49から斜め下方に向かって薄肉の可動片である弁体44a,44bを形成しており、各弁体44a,44bはそれぞれの先端(図11では下端)が閉じて液体が漏れないようにし、一方矢印Aの方向の空気には、該先端が空気圧力で開いてスリット48を形成してボトル1内に流れ込む構成とされている。
ここで、一体部49,49は、図12で斜線で示すように根元があるいは三日月状に円弧状に各可動片である弁体44a,44bと一体成形されている。
すなわち、逆止弁44は、二枚の弁体44a,44bが断面三角形状になるように先端同士を突き合わせて開閉するスリット48を形成するようにされており、これら弁体の基端部(一体部49)は、ほぼ三日月状に前記基部のフランジ部と一体に形成されている。
【0027】
さらに、図13に示すように、逆止弁44の開口であるスリット48は直線的開口であって、フランジ部41の周方向Sに対して直交する方向に形成されている。これにより、キャップ3に取り付けられた人工乳首20をボトル1に装着する際にキャップ3を螺合する際に、周方向Sへのねじれ力が作用しても各弁体44a,44bが、互いの先端(スリット48の箇所)が横滑りして、弁体どうしが重ならない状態にずれてしまうという不都合がない。
さらに、前記スリットの両端部には、該スリットの間隙寸法よりも大きな寸法の径でなる貫通孔を形成している。具体的には、好ましくは、スリット48の両端部には、円形の貫通孔48a,48aを設けている。これにより、弁体の前記スリット48の部分が互いに貼りついて、開きにくくなることを防止して、弁体の開閉をより確実にすることができる。
したがって、貫通孔48aは図示の場合円形であるが、三角状のもの等同様の作用を発揮するものであれば、形状は問わない。
なお、図10を参照して理解されるように、逆止弁44の形成箇所43はその外縁(内端)が、装着されたキャップ34の内端よりも僅かに内側(奥側)となることで、隙間D1を形成することができるようにされている。
【0028】
また、図10に示すように、逆止弁44の直上の位置において、膨出部42には、上下に貫通孔46が設けられている。貫通孔46の内端は、装着されたキャップ34の内端よりも僅かに内側(奥側)となることで、隙間D3を形成することができるようにされている。
さらに好ましくは、図7と図11を参照して理解されるように、膨出部42のオーバーハング部47には、逆止弁44に近接して、貫通孔46を両側から挟む位置にわずかな厚みを持つ凸部等で形成したスペーサ52,52が形成されている。このスペーサ52,52が図11の隙間G1を構成している。
【0029】
本実施形態は以上のように構成されており、授乳時にボトル1の内圧が低下しても図10の矢印A1に示すように膨出部42の貫通孔46を通って外気が隙間D1を抜け、続いて隙間D1、D2を抜けて逆止弁44に至る。この逆止弁44は、図11において、弁体44a,44bの下端が開きスリット48からボトル1内に向かって図10の矢印A3に示すように入り込むので、人工乳首20はボトル1の内圧の低下でつぶれることなく、支障なく授乳を続けることができる。
この場合、授乳時に、仮に、乳幼児が人工乳首20を咥える位置が変化してしまい、その口唇により貫通孔46を塞いでしまっても、スペーサ52,52の存在により矢印A2で示すように外気が隙間G1に入り込むからボトル1の内圧を低下させることを有効に防止できる。
【0030】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上述の各実施形態、変形例の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
20・・・人工乳首、22・・・乳輪部、23・・・乳首部、24・・・脆弱部、34・・・(キャップの)フランジ部、41・・・フランジ部、42・・・膨出部、44・・・逆止弁、48・・・スリット、51・・・括れ部、52・・・スペーサ、D1,D2,D3,G1・・・隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象に対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とする人工乳首。
【請求項2】
前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の人工乳首。
【請求項3】
前記乳輪部の表面には微細な凹凸加工がされていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の人工乳首。
【請求項4】
前記乳首部の内面には、縦方向に沿って延びるリブが形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の人工乳首。
【請求項5】
人工乳首と、該人工乳首が取り付けられるボトルとを備える哺乳器であって、
前記人工乳首が、
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象である哺乳瓶のボトルに対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とする哺乳器。
【請求項6】
人工乳首と、該人工乳首が取り付けられる座板部とを備えるおしゃぶり玩具であって、
前記人工乳首が、
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象である前記座板部に対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とするおしゃぶり玩具。
【請求項1】
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象に対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とする人工乳首。
【請求項2】
前記乳首部は、授乳時(飲料摂取時)に乳幼児の口腔内で、その哺乳窩に到達するために十分な長さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の人工乳首。
【請求項3】
前記乳輪部の表面には微細な凹凸加工がされていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の人工乳首。
【請求項4】
前記乳首部の内面には、縦方向に沿って延びるリブが形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の人工乳首。
【請求項5】
人工乳首と、該人工乳首が取り付けられるボトルとを備える哺乳器であって、
前記人工乳首が、
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象である哺乳瓶のボトルに対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とする哺乳器。
【請求項6】
人工乳首と、該人工乳首が取り付けられる座板部とを備えるおしゃぶり玩具であって、
前記人工乳首が、
軟質樹脂等の弾性材料による全体が略円錐状の中空体とされた成形品であり、
取り付け対象である前記座板部に対応して拡径されている基部と、
該基部に連続して形成されており、徐々に縮径されて延びる乳輪部と、
該乳輪部から延びており、先端に至るまで途中で拡径することなく、かつ前記乳輪部の前記縮径率よりもより小さな縮径率でわずかずつ徐々に縮径しながら延びる乳首部と
を有しており、
前記乳輪部は、前記乳首部よりも大きな肉厚を備えるようにされていて、
かつ、前記乳輪部と前記乳首部との境界には前記乳輪部よりも肉厚が薄く、前記乳首部よりも肉厚を厚くすることにより当該個所の円周に沿って帯状に形成された脆弱部を備えている
ことを特徴とするおしゃぶり玩具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−92550(P2011−92550A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250880(P2009−250880)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
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