説明

人工歯を排列するためのジグ、排列方法、並びに、義歯

【課題】義歯装着者にとって最適で調和の取れた歯列と歯槽部の3次元形態に従った、人工歯の排列システムを構築する。
【解決手段】ジグを用いた人工歯の排列方法が提供される。ジグは、人工前歯部を構成する各人工前歯をその先端部から各々はめ込むことが可能な保持孔が形成され、該保持孔は、はめ込まれた各々の人工前歯について所定の歯冠形態に則った配置を画定させるように構成されており、排列方法は、ジグを少なくとも複数の歯冠形態毎に用意し(100)、義歯装着者に適した歯冠形態を決定し(102)、決定された歯冠形態に対応するジグを選択し(104)、選択されたジグに、決定された歯冠形態の人工前歯をはめ込み(106)、ジグに人工前歯がはめ込まれた状態で義歯床の所定箇所に焼き付け固定する(110)、各工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯を排列するためのジグ、排列方法、並びに、義歯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義歯を製作する際に、人工歯を1歯ずつ順に義歯床に固定していかなければならなかった。このとき、総義歯であれば、前歯のみならず16本の臼歯部人工歯においても審美性と機能性の両立を図りながら1歯ずつ順に近遠心的位置、頬舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、頬舌的歯軸、捻転度をそれぞれ決定し、順次ワックスを加熱で軟化して固定していく作業を繰り返し、最後に全体の連続性を再度診査して微調整を行う必要性があった。
しかし、上記従来の臼歯部人工歯排列作業は、熟練を要す上に、煩雑でしかも長時間を要し、従って、経験の少ない技術者にとってこの作業を的確に行うことは困難であった。
【0003】
また、臼歯部の咬合を調整する際、所謂フルバランスド・オクルージョン(図3(b)、(c)参照)では上下顎人工歯の機能咬頭が何れも対合歯と咬合接触するため、臼歯部の人工歯排列時には上下顎人工歯の嵌合状態を容易に確認しながら的確な操作が行うことができていた。これに対して、所謂リンガライズド・オクルージョン(図3(b)、(c)参照)では、上顎臼歯舌側咬頭のみが対合する下顎臼歯と咬合接触し、上下顎人工歯頬側咬頭間には接触関係を与えず、一定の滑走間隙を確保するように人工歯排列を行う必要がある。そのため、従来、リンガライズド・オクルージョンの臼歯部排列では、上下顎人工歯頬側咬頭間に通常目測でおよそ1ミリメーター程度の隙間をあけるようにしてきた。
【0004】
リンガライズド・オクルージョンの臼歯部排列におけるこの従来法では上下顎人工歯の嵌合状態の基準が不明確なため、頬舌的に上下顎人工歯の「杵と臼」の関係をバランス良く構成することが困難な上に、上下顎人工歯頬側咬頭間の滑走間隙を的確に構成することも困難であった。このように、人工歯排列時に臼歯部の適正な咬合接触関係や嵌合状態の確認が困難であることが、リンガライズド・オクルージョンにおける臼歯部人工歯排列の基準をこれまで曖昧なものに留まらせてきた。
【0005】
一方、義歯製作時に使用する人工歯の基底部には、義歯床用レジンとの結合を強化させる目的で保持孔が付与されているものが数多く存在する。しかし、義歯床用レジンに流し込みレジンを使用する場合には、この保持孔へ床用レジンの填入が十分に行えず、保持孔内部に気泡が発生する場合があり、義歯完成後の人工歯脱落の原因ともなっている。 このため、人工歯の基底部保持孔は床用レジンの填入を円滑に行える形態に改善する必要がある。
【0006】
以上のように、義歯製作時、特にリンガライズド・オクルージョンにおける臼歯部人工歯排列において、経験の多少に関わらず、人工歯を、迅速、容易に且つ的確に排列すると共に強固に取り付けることを可能にする、人工歯及び排列方法が希求されている。
【0007】
ところで、自然歯では、特に上顎前歯部歯冠形態には、図10A、B、Cに示すように、人種や個人差に依存して、尖形、卵円形、そして方形のように種々の異なった形態が存在し、この歯冠形態によって歯列の3次元的形態も決まってくる。即ち、辺縁の発育葉に対する中央発育葉の発達バランス(図10A、B、Cの各中央図参照)により歯の3次元的な形態が決まり、これにより歯の萌出位置、歯軸の角度、歯槽の形態、更には側貌(図10A、B、Cの各左図のエステティックライン(Eライン)参照)までが大方決まってくることになる。
【0008】
顔の形態で歯冠形態と関連性が高いのは、この側貌であり、歯冠形態は、遺伝子によって決まっていると考えられている。例えば、日本人の大多数である黄色人種(モンゴロイド)では尖形が圧倒的に多く、白人(コーカソイド)では方形が多いことが知られている。そして、この歯冠形態により前歯部を構成する中切歯、側切歯、犬歯の歯軸と捻転度はいずれも著明に異なる。例えば、図10Cに示す方形(スクエアー)の場合では、前歯はほぼ垂直に真っ直ぐ萌出し、重なりは生じていない。従って、図10Aに示す尖形のような唇側方向への著名な傾斜は見られず、比較的直線状を呈す。また、方形では、歯槽基底部の形態に沿って歯の唇面が並び、捻転はほとんど認められず、歯の重なりも生じない。
【0009】
一方、図10Aに示す尖形の場合では、方形の場合と異なり、歯の萌出スペースが十分でないことが多く、歯の捻転が生じやすい。例えば、一般に、上顎前歯部では中切歯の萌出後に側切歯が出てくるが、側切歯は通常、中切歯よりも舌側に萌出する。更に、犬歯はスペース不足が顕著となり、犬歯近心部が側切歯遠心部を唇側へ押し出して捻転させ、側切歯の近心部が中切歯の遠心部を唇側へ押し出して捻転させることになる。また、尖形では、直線に近い方形の場合とは異なり、下方へ凸の強い湾曲を示しているため、前歯部が唇側へ押し出されるように萌出し、前下方へ扇状に拡大しながら歯列が完成していく。
【0010】
図10Bに示す卵円形の場合では、方形と尖形との中間的な傾向を示している。
しかし、従来、有床義歯で排列される人工前歯は、白色人種に多い方形人工歯が採用され、装着者本来の歯冠形態が省みられない場合が多かった。また、従来技術の中には、金属製プレートの上に歯冠形態に応じた人工前歯を載置して義歯床に排列するものがあるが、それらの排列基準は、種々の歯冠形態での値を総合した平均値のみが示され、図10A、B、Cに示したような歯冠形態毎の3次元的な歯列の相違を考慮しておらず、画一的排列がなされてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、義歯装着者にとって最適で調和の取れた歯列と歯槽部の3次元形態に従った、人工歯の排列システムの構築が長年希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、義歯製作に用いられるジグが提供される。このジグは、複数の人工歯をそれらの先端部から各々はめ込むことが可能な保持孔が形成されており、該人工歯を保持孔にはめ込んだとき、所定の歯冠形態に従って該人工歯の先端部を含め、唇側面と舌側面に接触し、該人工歯の配置が画定されることを特徴とする。最も好ましくは、人工前歯の各々について、ジグへのはめ込み時に、その先端部を含め唇側と舌側面とが前記ジグと接触し、これにより平均的な値ではなく、所定の歯冠形態に則った近遠心的位置、唇舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、唇舌的歯軸及び捻転度が夫々決定される。なお、所定の歯冠形態として、少なくとも前歯の形態に関する尖形、卵円形及び方形を含むグループから選択されるのが好ましい。
【0013】
従って、本発明によれば、尖形、卵円形、方形の上顎前歯人工歯部歯列の特徴を示す審美的排列基準に則ったジグを応用することにより、経験の少ない技術者でも上顎の中切歯、側切歯、犬歯の形態に応じた適正な歯軸と捻転度と歯列の連続性を容易に構成することが可能となった。
【0014】
上記ジグを用いた人工歯の排列方法も提供される。この排列方法は、ジグを少なくとも複数の歯冠形態毎に用意し、義歯装着者に適した歯冠形態を決定し、決定された歯冠形態に対応するジグを選択し、選択されたジグに、決定された歯冠形態の人工歯をはめ込み、ジグに人工歯がはめ込まれた状態で義歯床の所定箇所に焼き付け固定する、各工程を備える。
【0015】
本排列方法によれば、義歯装着者に適した義歯を容易に短時間で製作することができる。
本発明の排列方法の更なる態様は、リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯として形成された上顎又は下顎の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯の4歯全てが連結されてなる、人工臼歯部を用意し、該人工前歯が焼き付け固定された義歯床に、該人工臼歯部を位置付け、該人工臼歯部を該義歯床に焼き付け固定する、各工程を更に備える。
【0016】
本発明では、本発明の排列方法により製作された義歯も提供される。
本発明のジグ、本発明の排列方法、並びに、本発明の義歯で使用される人工歯には、以下のものが含まれる。
【0017】
本発明の人工歯は、リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯として形成された上顎又は下顎の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯の4歯全てが連結されてなることを特徴とする。好ましくは、上顎のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の舌側咬頭部に、ブレード形態が付与されている。
【0018】
本発明では,連続する第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯の4人工歯全てが連結固定されているため、経験の少ない技術者でも容易に、極めて短時間で適正な臼歯部人工歯排列が可能となる。しかも、リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯を用いているため、フルバランスド・オクルージョンの場合と比べて、4歯連結であっても頬側面の審美的歯冠形態の近遠心及び頬舌的歯軸の審美的連続性を保つとともに,上下顎歯列の適正な機能的咬合接触様式の原則を保つ両側性平衡咬合を構成することが十分可能となる。
【0019】
本発明の更に好ましい態様の人工歯は、上顎又は下顎のいずれか一方の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの人工臼歯の頬側咬頭部に、突起部が形成され、該人工臼歯と対合関係にある上顎又は下顎のうち他方のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯との滑走間隙を画定させることを特徴とする。
【0020】
この嵌合位を定めるための突起部は、リンガライズド・オクルージョンにおける臼歯部人工歯排列時の上下顎人工歯頬側咬頭部の位置付けを確かなものにした。これにより、リンガライズド・オクルージョンにおける臼歯部上下顎人工歯の嵌合時咬合接触関係の基準が明確となり、適正な滑走間隙を的確に構成することも極めて容易となった。
【0021】
本発明の別の好ましい態様の人工歯は、4歯連結されたリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の基底部側に、4歯を通して近遠心方向に延在する溝が形成され、該溝は、第1小臼歯の端部及び第2大臼歯の端部において開口されていることを特徴とする。
【0022】
この溝は、義歯製作時に人工歯基底部の保持孔へ床用レジンの填入をより確実なものにし、気泡発生を抑制する。また、人工歯脱落に対する抵抗形態を備えており、人工歯脱落防止効果を発揮する。更に、部分床義歯の人工歯として用いる場合には、支台装置脚部に対して干渉となる人工歯部を削除調整する際のガイドとなり,削除調整操作を円滑に執り行ううえで有効に作用する。
【0023】
上記突起部は、本発明の上記した4連結リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯のみならず、孤立歯や、4以外の連結数の連結人工臼歯にも適用可能である。この態様では、リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯として形成された上顎又は下顎の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの臼歯からなる人工歯において、該人工歯の少なくとも1つの人工臼歯の頬側咬頭部に、突起部が形成され、該人工臼歯と対合関係にある上顎又は下顎のうち他方のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯との滑走間隙を画定させることを特徴とする。
【0024】
また、上記溝は、本発明の上記した4連結リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯のみならず、孤立歯、リンガライズド・オクルージョン以外の人工臼歯、4以外の連結数の連結人工臼歯にも適用可能である。この態様では、上顎又は下顎の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの人工臼歯からなる人工歯において、該人工歯の基底部側に、該少なくとも1つの人工臼歯を通して近遠心方向に延在する溝が形成され、該溝は、その両端部において開口されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の態様及び作用効果は、次の図面を参照しつつ、以下で説明される本発明の好ましい実施例を参酌することによって、より明瞭に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aは、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結上顎人工臼歯を頬側から見た側面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの4歯連結上顎人工臼歯を頬側且つ咬合面側から見た斜視図である(矢印は、咬合方向)。
【図2A】図2Aは、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結下顎人工臼歯を頬側から見た側面図である(矢印は、咬合方向)。
【図2B】図2Bは、図2Aの4歯連結下顎人工臼歯を頬側且つ咬合面側から見た斜視図である(矢印は、咬合方向)。
【図2C】図2Cは、図2Aの4歯連結下顎人工臼歯を舌側且つ咬合面側から見た斜視図である(矢印は、咬合方向)。
【図2D】図2Dは、図2Aの4歯連結下顎人工臼歯を舌側から見た側面図である(矢印は、咬合方向)。
【図3】図3は、上顎臼歯及び下顎臼歯が咬合する状態を示す図であって、(a)は、図1のリンガライズド・オクルージョン用4歯連結人工臼歯の舌側面から見た咬合状態の斜視図、(b)は、1つの歯についての咬合状態の断面図を、フルバランスト・オクルージョン、ブレード形態が付与されていないリンガライズド・オクルージョン、及び、ブレード形態が付与されたリンガライズド・オクルージョンの夫々について示した比較図、(c)は、フルバランスト・オクルージョン及びリンガライズド・オクルージョンにおける食品パッキング作用の比較図である。
【図4】図4は、図1のリンガライズド・オクルージョン用4歯連結人工臼歯の上顎臼歯及び下顎臼歯を、基底部側から示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結上顎人工臼歯を、上顎咬合床に排列、固定するときの手順の一例を示す、流れ図である。
【図6】図6は、図5の手順により完成された上顎義歯に合致するように、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結下顎人工臼歯を、下顎咬合床に排列、固定するときの手順の一例を示す、流れ図である。
【図7】図7は、本発明の実施例に係るジグを示す図であって、図7Aは当該ジグの舌側から見た斜視図、図7Bは当該ジグの唇側から見た斜視図、図7Cは当該ジグに人工前歯をはめ込んだ状態の上面図、及び、図7Dは当該ジグを用いて上顎咬合床に人工前歯を取り付けるときの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係るジグを用いて歯冠形態に応じた義歯を製作するときの手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、人工前歯の歯冠形態毎に用意された複数のジグを示した図である。
【図10A】図10Aは、前歯が尖形(テーパリング)の場合における、側貌、歯冠形態、歯列の正面(a)、及び、歯列の咬合面(b)を示す図である。
【図10B】図10Bは、前歯が卵円形(オボイド)の場合における、側貌、歯冠形態、歯列の正面(a)、及び、歯列の咬合面(b)を示す図である。
【図10C】図10Cは、前歯が方形(スクエアー)の場合における、側貌、歯冠形態、歯列の正面(a)、及び、歯列の咬合面(b)を示す図である。
【図11A】図11Aは、本発明の別の実施例に係る、突起部を有する孤立した上顎人工臼歯の斜視図である。
【図11B】図11Bは、本発明の別の実施例に係る、突起部を有する孤立した下顎人工臼歯の側面図である。
【図12A】図12Aは、図11Aに示す孤立した上顎人工臼歯部と、対合する下顎臼歯との嵌合状態を示す側面図である。
【図12B】図12Bは、図11Bに示す孤立した上顎人工臼歯部と、対合する下顎臼歯との嵌合状態を示す側面図である。
【図13】図13は、本発明の別の実施例に係る、孤立した人工臼歯部を基底部側から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(4歯連結人工臼歯の実施例)
図1A及び図1Bには、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結上顎人工臼歯1Uが示されている。上顎人工臼歯部1Uは、例えば硬質レジンから作られており、第1小臼歯1U−1、第2小臼歯1U−2、第3大臼歯1U−3及び第4大臼歯1U−4を一体に連結固定することにより構成される。これらの人工臼歯の各々について、近遠心的位置、頬舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、頬舌的歯軸及び捻転度が審美的基準及び咬合接触様式の原則に則って配置されていることが理解されよう。
【0028】
また、図2A乃至図2Dには、図1A及び図1Bに示した上顎人工臼歯部1Uと対合関係にある、本発明の実施例に係るリンガライズド・オクルージョン用4歯連結下顎人工臼歯部1Dが示されている。下顎人工臼歯部1Dも、例えば硬質レジンから作られており、第1小臼歯1D−1、第2小臼歯1D−2、第3大臼歯1D−3及び第4大臼歯1D−4を一体に連結固定することにより構成される。
【0029】
上顎人工臼歯部1U及び下顎人工臼歯部1Dの人工臼歯の各々について、近遠心的位置、頬舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、頬舌的歯軸及び捻転度が審美的基準及び咬合接触様式の原則に則って配置されていることが理解されよう。なお、上顎人工臼歯1U及び下顎人工臼歯1Dは、図3(a)に示すように互いにしっかりと嵌合するように予め形成されている。
【0030】
また、上顎人工臼歯部1U及び下顎人工臼歯部1Dの各々の人工臼歯は、図3(b)の中央図に示されるように、上下顎頬側咬頭間に滑走間隙を保つリンガライズド・オクルージョンとして構成されている。このリンガライズド・オクルージョンは、図3(c)に示されるように、フルバランスト・オクルージョンと比べて、機能時の食品溢出効果が高く咬合接触面積も小さいため、義歯装着者の残存組織保全と機能回復率向上の両面で有利となる。
【0031】
更に好ましくは、図3(b)の右図に示すように、上顎第1小臼歯1U−1から上顎第2大臼歯1U−4までの4歯の舌側咬頭部にブレード形態11を付与するのがよい。このようにブレード形態を付与することにより、咬合接触面積が小さく、食品溢出効果が高いというリンガライズド・オクルージョンの効果を更に向上することができる。即ち、性質の異なる食品を破断するのに要する力は、有意に減少し、義歯で食べにくい食品でも食べやすくなるという利点がある。
【0032】
このように第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯の4人工臼歯が連結されていると、排列操作は容易となるが、仮に、かかる構成を従来のフルバランスド・オクルージョンに適用すると、各症例毎に頬側面の審美的歯冠形態の近遠心及び頬舌的歯軸の審美的連続性を保つとともに、上下顎歯列の適正な機能的咬合接触関係を保ち両側性平衡咬合を構成することは、通常極めて困難となり、4歯連結人工臼歯の臨床応用は不可能であった。しかし、本実施例に係るリンガライズド・オクルージョンの場合は、上顎臼歯の舌側咬頭のみが対合する下顎臼歯と咬合接触するため、上下顎それぞれにおいて第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯の4人工歯が連結固定されていても、頬側面の審美的歯冠形態の近遠心及び頬舌的歯軸の審美的連続性を保つとともに、上下顎歯列の適正な機能的咬合接触関係を保つ両側性平衡咬合を構成することが十分可能となる。
【0033】
図2A乃至図2Dに再び戻ると、下顎人工臼歯部1Dの第2小臼歯1D−2及び第4大臼歯1D−4の夫々の頬側咬頭部には、ティースポジショナーと称される突起部2、3が各々形成されている。これらの突起部2、3は、後述するように、上顎人工臼歯部1Uの第2小臼歯1U−2及び第4大臼歯1U−4の夫々と係合することにより、排列操作の際にリンガライズド・オクルージョンの滑走間隙を的確に確保することができるように位置、寸法及び形状が定められている。
【0034】
次に、図4を参照すると、上顎人工臼歯部1U及び下顎人工臼歯部1Dの基底面には、4連結された臼歯の底部を貫通して近遠心方向に延在する溝4U及び4Dが形成されている。溝4U及び4Dは、それらの頬側及び舌側を、各々、底壁7U、8U、及び、底壁7D、8Dにより画成されている。また、溝4U及び4Dは、4連結臼歯1U、1Dの近心端部において開口部5U、5Dによって夫々開放され、遠心端部において、開口部6U、6Dによって夫々開口されている。
【0035】
次に、本実施例に係る4歯連結上顎人工臼歯部1U及び下顎人工臼歯部1Dの排列作業を図5及び図6を用いて説明する。
図5は、主として上顎の排列作業を示している。最初に、側方チェックバイトにより咬合器の調整を行った後、審美性と機能に配慮して症例に応じて、人工前歯9U及び9Dを、上顎咬合床12U及び下顎咬合床12Dに各々排列する(工程(1))。次に、下顎咬合床12Dを支持台上に配置し(工程(2))、4連結上顎人工臼歯1Uを下顎咬合床12D上に載せ、上顎人工臼歯1Uの第1小臼歯舌側咬頭頂と第2大臼歯の近心した側咬頭頂とが下顎咬合床12Dの咬合床上面10に一致するところまで圧接された状態で配置する(工程(3))。次に、上顎咬合床12Uのワックスを適量削除して軟化し、咬合器を閉じて(工程(4))、4連結上顎人工臼歯1Uを義歯床12Uに焼き付け、上顎の両側臼歯の排列が完了される(工程(5))。
【0036】
図6は、下顎の排列作業を示している。咬合器を倒位とし、ティースポジショナー2,3により、下顎人工臼歯1Dを上顎人工臼歯1Uと嵌合させて正確に位置付ける(工程(6))。該ティースポジショナー2,3による位置決めにより嵌合時咬合接触関係が画定され、臼歯部人工歯の排列時に頬舌的な「杵と臼」の関係をバランス良く構成でき、適正な滑走間隙を確保できる。次に、下顎咬合床12Dのワックスを適量削除して軟化し、咬合器を閉じて(工程(7))、4連結下顎人工臼歯部1Dを下顎咬合床12Dに焼き付け、上顎の両側臼歯の排列が完了される(工程(8))。また、この段階で咬合器を前方運動させて前後的平衡が保てることを確認し、必要に応じて咬合平面傾斜度の微調整を行う。次に、下顎人工臼歯のティースポジショナー2,3を削除し(工程(9))、リンガライズド・オクルージョンにおいて均等な滑走間隙を確保する(工程(10))。最終的には、広い範囲で両側性平衡を保つリンガライズド・オクルージョンを、削合によって完成させる。その操作は、全て下顎のオクルーザルテーブル上に咬合紙により印記された早期接触並びに干渉部を削除調整していくことにより終了する。この削合に関しても、従来の人工歯と比較して調整量が少なく、短時間で行うことができる。
【0037】
実際にこのリンガライズド・オクルージョン用4歯連結人工臼歯部1U、1Dを試作して総義歯の臼歯部人工歯排列を行ったところ、排列の際に前後的咬合平衡が保てるように咬合平面傾斜度のみを微調整するだけで済み、従来法で1歯ずつ排列した場合と比べて有意に短時間で、容易にしかも的確に排列操作を行うことができた。
【0038】
更に、人工歯の排列完了後に、義歯をフラスコ内に埋没してワックスを溶解させ、人工臼歯基底面のフローグルーブ4U、4D(図4)を通して床用流し込みレジンの填入を試みたところ、従来の保持形態のものと比較して、レジンは有意に円滑な流れを示した。これによりレジン内の気泡発生を抑制し、床用レジンの填入をより確実なものとする効果があることが確認できた。このため、フローグルーブ4U、4Dの形態による強固な保持効果と相俟って、義歯完成後の脱落をより確実に防止することができる。また、フローグルーブ4U,4Dの夫々の開口部5U、5D及び6U、6Dは、特に部分義歯等において支台装置との干渉部調整等で人工歯基底面を削除する必要が生じた際にも、削除バーで隣接面基底ブラケットから形態修正を行うガイドとして機能し、技工操作を的確で、しかも極めて容易にする効果がある。
【0039】
(義歯製作用ジグの実施例)
図7A及び図7Bには、本発明の実施例に係る、義歯製作用のジグ20Tが示されている。図面に示されたジグ20Tは、一例として尖形の歯冠形態を有する上顎前歯用であり、上顎の中切歯、側切歯、犬歯からなる計6個の人工前歯の各々をその先端部からはめ込むための歯孔21が形成されている。歯孔21にそれに対応する人工前歯をはめ込むと、単に保持されるだけではなく、その先端部を含め唇側と舌側面とがジグと接触し、これによりジグ20のボディに対して人工前歯の3次元的配置が所定の歯冠形態に則って一意に画定される。即ち、図7Cに示すように、6本の人工前歯24を、尖形の歯冠形態に対応する本実施例のジグ20Tの歯孔21に各々はめ込んだ場合、人工前歯の各々について、尖形の歯冠形態に則った近遠心的位置、唇舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、唇舌的歯軸及び捻転度が夫々決定される(図10A参照)。
【0040】
義歯製作時には、図7Dに示すように、人工前歯24がジグ20の歯孔にはめ込まれた状態で、ジグ20を図示しない咬合器にセットし、上顎咬合床12Uの所定の位置に人工前歯24を焼き付け固定する。これにより、中切歯、側切歯、犬歯の適正な歯軸と捻転度と歯列の連続性を容易に構成しつつ、しかも極めて短時間で適切な人工歯排列が可能となる。なお、本実施例に係るジグ20では、金属製歯冠プレートの上にワックスを塗布し、その上に上顎人工前歯を先端部が接触した状態で乗せてから咬合床に取り付ける従来例と比べて、唇側と舌側面とがジグと接触するため、前歯の歯冠形態に応じた3次元的配置を曖昧さなく画定させることができる。また、本実施例に係るジグ20では、ワックスを塗布しないため、より簡略化された工程で排列操作を行うことができる。
【0041】
かくして、尖形、卵円形、方形などそれぞれの上顎前歯人工歯部歯列の特徴を示す審美的排列基準に則ったジグを、各々の歯冠形態について予め製作しておけば、各種人工歯冠形態に応じた適切な排列を可能にするシステムが実現できる。図8のフローチャートには、本実施例に係るジグ20を用いた、そのような排列システムによる方法の一例が示されている。
【0042】
予め、複数の歯冠形態毎にジグを夫々用意しておく(図8のステップ100)。例えば、図9に示すように、尖形、卵円形、方形の歯冠形態に対応した、ジグ20T、20C及び20Sを用意する。また、歯冠形態毎にも、様々に異なるサイズの義歯用のジグを各々複数用意しておく。
【0043】
次に、義歯装着者の歯冠形態を、歯冠形態と関連性が高い義歯装着者の側貌等に基づいて決定する(ステップ102)。そして、決定された歯冠形態に対応するジグを、用意されているものの中から選択する(ステップ104)。このとき、更に義歯装着者に適合した義歯サイズを持つジグを選択する。次に、選択されたジグに、ステップ102で決定された歯冠形態の人工前歯をはめ込む(ステップ106)。そして、当該ジグを咬合器にセットし(ステップ108)、はめ込まれた人工前歯を上顎咬合床の所定箇所に焼き付け固定する(ステップ110)。最後に、人工前歯が固定された上顎咬合床に対して、人工臼歯部の排列作業を行う(ステップ112)。
【0044】
なお、ステップ112の排列作業では、例えば、リンガライズド・オクルージョン用4歯連結人工臼歯1U、1Dを用いた図5及び図6の手順を実行してもよい。その代わりに、1歯毎に人工臼歯を取り付けても、或いは、2連結若しくは3連結の人工臼歯を取り付けてもよい。
【0045】
また、ステップ112の人工臼歯部の排列作業において、複数の人工臼歯部を用意しておき、これらの中から、ステップ104で選択された人工前歯部との審美的及び咬合接触関係の連続性を考慮して、取り付けるべき人工臼歯部を選択する工程を追加することもできる。
【0046】
以上が、本発明の各実施例であるが、本発明は、上記例に限定されず、本発明の請求項により画定される範囲内において様々な変形及び置換をなすことができる。
例えば、ティースポジショナー2、3を、4歯連結人工臼歯の下顎臼歯部に形成したが、上顎臼歯部に形成してもよい。また、ティースポジショナーを形成するところの臼歯の種類や、その数も任意好適に変更可能である。例えば、図11Aに示すように、孤立した上顎人工臼歯50Uに突起部51Uを設けたり、或いは、孤立した下顎人工臼歯50Dに突起部51Dを設けることもできる。図12A及び図12Bに、人工臼歯50U、50Dの対合する臼歯との嵌合状態を、各々示しておく。
【0047】
また、人工歯の基底部に形成するフローグルーブについても、図4の4歯連結臼歯に限定されず、孤立歯や、4歯連結以外の連結人工歯にも適用可能である。例えば、図13に示すように、孤立した人工臼歯毎に各歯の両端部で開口41を有する、フローグルーブ40−1、40−2、40−3、40−4,...を形成することもできる。更には、本発明の実施例に係るフローグルーブは、リンガライズド・オクルージョン以外の人工臼歯にも適用することができる。
【0048】
また、図5及び図6では、リンガライズド・オクルージョン用4歯連結人工臼歯を総義歯の製作に適用する場合について説明したが、該4歯連結人工臼歯を部分義歯の製作にも適用できることはいうまでもない。
【0049】
更に、図7の例では、上顎義歯用のジグを示したが、下顎義歯用のジグを構成することもできる。また、図7のジグを用いて人工前歯を部分咬合床に排列することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎又は下顎の人工前歯部を構成する各人工前歯をその先端部から各々はめ込むことが可能な保持孔が形成されている、ジグであって、
前記保持孔は、はめ込まれた各々の人工前歯について所定の歯冠形態に則った配置を画定させることを特徴とする、ジグ。
【請求項2】
前記人工前歯部は、計6個の上顎左右の中切歯、側切歯、犬歯からなり、前記所定の歯冠形態は、尖形、卵円形及び方形を含むグループから選択される、請求項1に記載のジグ。
【請求項3】
前記人工前歯の各々について、前記ジグへのはめ込み時に、その先端部を含め唇側と舌側面とが前記ジグと接触し、これにより所定の歯冠形態に則った近遠心的位置、唇舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、唇舌的歯軸及び捻転度が夫々決定される、請求項1又は2に記載のジグ。
【請求項4】
ジグを用いた人工歯の排列方法であって、
前記ジグは、人工前歯部を構成する各人工前歯をその先端部から各々はめ込むことが可能な保持孔が形成され、該保持孔は、はめ込まれた各々の人工前歯について所定の歯冠形態に則った配置を画定させるように構成されており、
前記排列方法は、
前記ジグを少なくとも複数の歯冠形態毎に用意し、
義歯装着者に適した歯冠形態を決定し、
決定された歯冠形態に対応するジグを選択し、
選択されたジグに、決定された歯冠形態の人工前歯をはめ込み、
前記ジグに人工前歯がはめ込まれた状態で義歯床の所定箇所に焼き付け固定する、各工程を備える、排列方法。
【請求項5】
前記人工前歯部は、計6個の上顎左右の中切歯、側切歯、犬歯からなり、前記所定の歯冠形態は、尖形、卵円形及び方形を含むグループから選択される、請求項4に記載の排列方法。
【請求項6】
前記ジグに人工前歯をはめ込む工程において、該人工前歯の各々について、その先端部を含め唇側と舌側面とが前記ジグと接触し、これにより所定の歯冠形態に則った近遠心的位置、唇舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、唇舌的歯軸及び捻転度が夫々決定される、請求項4又は5に記載の排列方法。
【請求項7】
リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯として全体が硬質レジンから形成された上顎又は下顎の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち連続する2歯乃至4歯が一体に連結されてなる、人工臼歯部を用意し、
前記人工前歯が焼き付け固定された義歯床に、前記人工臼歯部を位置付け、
前記人工臼歯部を前記義歯床に焼き付け固定する、各工程を更に備える、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項8】
前記人工臼歯の各々の近遠心的位置、頬舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、頬舌的歯軸及び捻転度が審美的基準及び咬合接触様式の原則に則っている、請求項7に記載の排列方法。
【請求項9】
前記人工臼歯部を用意する工程は、複数の人工臼歯部を用意する工程であり、
前記人工臼歯部は、前記人工前歯部との審美的及び咬合接触関係の連続性を考慮して選択される工程を更に備える、請求項8に記載の排列方法。
【請求項10】
上顎のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の舌側咬頭部にブレード形態が付与されていることを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項11】
上顎又は下顎のいずれか一方の前記人工臼歯部の第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの人工臼歯の頬側咬頭部に、突起部が形成されており、
前記人工臼歯部を位置付ける工程は、前記突起部を用いて、該人工臼歯部と対合関係にある上顎又は下顎のうち他方のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯との滑走間隙を画定させることを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項12】
2歯乃至4歯連結された前記リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の基底部側に、2歯乃至4歯を通して延在し、且つ、その両端部において開口する溝が形成されている、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項13】
前記義歯床に前記人工臼歯部が固定された後、前記溝に床用レジンの填入を行う工程を更に備える、請求項12に記載の排列方法。
【請求項14】
リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯として形成された第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つからなり、且つ、その少なくとも1つの頬側咬頭部に、突起部が形成された、人工臼歯を用意し、
前記人工前歯が焼き付け固定された義歯床に、前記人工臼歯を位置付け、
前記人工臼歯を前記義歯床に焼き付け固定する、各工程を更に備える、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項15】
第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの人工歯からなると共に、該少なくとも1つの人工歯の基底部側に、近遠心方向に延在し且つその両端部で開口する溝が形成された、人工臼歯を用意し、
前記人工前歯が焼き付け固定された義歯床に、前記人工臼歯を位置付け、
前記人工臼歯を前記義歯床に焼き付け固定する、各工程を更に備える、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の排列方法。
【請求項16】
前記義歯床に前記人工臼歯が固定された後、前記溝に床用レジンの填入を行う工程を更に備える、請求項15に記載の排列方法。
【請求項17】
ジグを用いて人工前歯部が排列された義歯であって、
前記ジグは、人工前歯部を構成する各人工前歯をその先端部から各々はめ込むことが可能な保持孔が形成され、該保持孔は、はめ込まれた各々の人工前歯について所定の歯冠形態に則った配置を画定させるように構成されている、義歯。
【請求項18】
上顎の人工前歯部についての所定の歯冠形態は、尖形、卵円形及び方形を含むグループから選択される、請求項17に記載の義歯。
【請求項19】
前記人工前歯の各々について、前記ジグへのはめ込み時に、その先端部を含め唇側と舌側面とが該ジグと接触し、これにより所定の歯冠形態に則った近遠心的位置、唇舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、唇舌的歯軸及び捻転度が夫々決定されている、請求項17又は18に記載の義歯。
【請求項20】
前記義歯の臼歯部は、リンガライズド・オクルージョンとして全体が硬質レジンから形成された第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯ののうち連続する2歯乃至4歯が一体に連結されてなる、請求項17に記載の義歯。
【請求項21】
前記臼歯部を構成する各人工臼歯の近遠心的位置、頬舌的位置、上下的位置、近遠心的歯軸、頬舌的歯軸及び捻転度が、審美的基準及び咬合接触様式の原則に則っている、請求項20に記載の義歯。
【請求項22】
上顎のリンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の舌側咬頭部にブレード形態が付与されていることを特徴とする、請求項20又は21に記載の義歯。
【請求項23】
対合関係にある上顎及び下顎の臼歯部との滑走間隙は、上顎又は下顎のいずれか一方の臼歯部の少なくとも1つの人工臼歯の頬側咬頭部に形成された突起部を用いた位置付け工程によって画定されたものである、請求項20乃至22のいずれか1項に記載の義歯。
【請求項24】
前記突起部は、前記位置付け工程の完了後に削除されている、請求項23に記載の義歯。
【請求項25】
2歯乃至4歯連結された前記リンガライズド・オクルージョン用人工臼歯の基底部側に、2歯乃至4歯を通して延在し、且つ、その両端部において開口する溝が形成されていることを特徴とする、請求項20乃至24のいずれか1項に記載の義歯。
【請求項26】
前記溝内に床用レジンが填入されている、請求項25に記載の義歯。
【請求項27】
第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯及び第2大臼歯のうち少なくとも1つの人工臼歯が取り付け固定されている、請求項17乃至19のいずれか1項に記載の義歯。
【請求項28】
前記少なくとも1つの人工臼歯が上顎リンガライズド・オクルージョン用臼歯であり、その舌側咬頭部にブレード形態が付与されていることを特徴とする、請求項27に記載の義歯。
【請求項29】
前記少なくとも1つの人工臼歯が上顎リンガライズド・オクルージョン用臼歯であり、その対合関係にある臼歯との滑走間隙は、前記少なくとも1つの人工臼歯の頬側咬頭部に形成された突起部を用いた位置付け工程によって画定されたものである、請求項27又は28に記載の義歯。
【請求項30】
前記突起部は、前記位置付け工程の完了後に削除されている、請求項29に記載の義歯。
【請求項31】
前記少なくとも1つの人工臼歯の基底部側に、近遠心方向に延在し、且つ、その両端部において開口する溝が形成されていることを特徴とする、請求項27に記載の義歯。
【請求項32】
前記溝内に床用レジンが填入されている、請求項31に記載の義歯。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図2C】
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【図2D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【公開番号】特開2009−165888(P2009−165888A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112828(P2009−112828)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2004−571326(P2004−571326)の分割
【原出願日】平成15年5月1日(2003.5.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年11月1日 医歯薬出版株式会社発行の「月刊 歯科技工、第30巻 第11号」に発表
【出願人】(502444364)ヘレウスクルツァージャパン株式会社 (2)