説明

人工浮島用植生基盤、その製法及び植生用人工浮島

【課題】水生植物の生育後に水中に植生用人工浮島を放置する。
【解決手段】下部フレーム(16)及び上部フレーム(17)を構成する複数の竹筒又は木材を直方体形状又は立方体形状に接続して形成されるフレーム(11)と、互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム(16)上に配置される竹製又は木製の床材(12)と、床材(12)上に並置される複数の竹鉢(14)とを人工浮島用植生基盤(2)に設ける。水生植物の生育後に、天然材により形成される植生用人工浮島を水中に放置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼、河川又はダム湖、海岸等の比較的水が滞留し又は水流量の少ない水域に設置され、水生植物又は海藻を発芽及び育成して、水質を浄化する人工浮島用植生基盤、その製法、植生用人工浮島及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、海・湖沼・河川などの水が滞留し又は流動量の少ない比較的閉鎖的な水域では、下水・農牧業・工業廃水等が流入する多岐に渡る人間活動の影響により、窒素化合物やリン等の水中での肥料分濃度が上昇して、富栄養化する現象が多く認められる。富栄養化は、水中生物の生態系構成を変化させ、通常生物の多様性を減少させる。極端な場合には、赤潮や青潮などの二次的現象を誘引するため、富栄養化は、公害や環境問題として広く認識されている。富栄養化が進行して肥料分や栄養塩が豊富に存在する水域では、日光の当たる水面付近で光合成に伴う一次生産が増大し、特定の植物性プランクトンが急激に増殖する。また、植物性プランクトンを捕食する動物性プランクトンも異常に増える。植物性及び動物性プランクトンの増殖が、赤潮やアオコの大量発生の原因となる。光合成が停止する夜間には、生物の呼吸による酸素の消費が増えるため、水中が酸欠状態となる。また、異常増殖したプランクトンの群集が死滅して沈降した水底では、有機物の酸化的分解が進行し、急激に溶存酸素量が低下して貧酸素水塊が形成される。水温躍層により貧酸素水塊が維持されると、有機物の分解が停滞してヘドロが堆積し、嫌気性微生物が優占して悪臭の原因となる。また、水塊と周囲の水が混和するとき、魚介類に酸欠被害を生ずることがある。
【0003】
そこで近年では、湖沼内に浮かべる人工浮島で動植物を育成し、動植物の成長に従って人工浮島の水中深度を増加させることにより、人工浮島の水中の動植物に常時日光が照射されて、動植物を大きく成長させると共に、動植物の生息により、水の浄化を促進する事業が進められている。水中で発芽し育成される植物には、エビモ、シャジクモ、ミズヒキモ及びトリゲモ等の沈水植物、アシ、ガマ及びマコモ等の抽水植物又はガガブタ及びアサザ等の浮葉植物があり、これらの植物の活動により、水質を浄化し水中生物の生息場所となる。人工浮島に生息する動植物による水中の窒素及び燐の吸収、植物体表面に付着した微生物による有機物等の分解、土壌湖泥表面での脱窒、懸濁性物質の沈降及び再浮上の防止等の要因により水質を浄化して、COD、窒素又はリンの濃度を減少させ、主に富栄養化によるアオコや淡水赤潮の発生を抑制できる。また、底泥のまきあげを水草により抑制し、水草内に植物プランクトンを育成して、動物プランクトンによる植物プランクトンの捕食を抑制して、水中植物の繁茂による水質改善を図る必要がある。従って、人工浮島による水質浄化の基本条件は、以下の通りである。
[1] 閉鎖性水域の水質浄化及び生態系保全の観点から、沈水植物、浮葉植物又は抽水植物等の水草の再生が求められる。
[2] 水草の再生には、発芽させ生育する日光と、水草の生育を阻害する浮泥又はヘドロによる水底環境の改善とが不可欠である。
[3] 水深を浅くして水底の光条件を満足する必要があり、実際に湖岸部での浅瀬部造成又は沖合での植生浮島等の水質改善工法が採用されている。
[4] 湖岸部での浅瀬部造成は、強い波当たりにより、植物が根付かず、沈水植物及び浮葉植物を再生するとき、群生する抽水植物により沈水植物及び浮葉植物の生育が阻害される難点がある。
[5] 発芽直後の沈水植物は、浅い水深が望ましく、植物群落として定着しかつ安定した後は、周辺水域が清澄水質となるため、深い水深が望ましい。
[6] 水深を任意設定可能な人工浮島を設置し、植物の生育状況に応じて水深を深くし、最終的に植物群落を定着・着床させる。
[7] ヘドロが蓄積して悪化した湖底環境で浮島の植生基盤の植物群落が再生するため、浚渫を行う必要がない。
【0004】
下記特許文献1は、沈水植物を生育させる植栽基盤と、沈水植物を水中に維持するフロートと、植栽基盤を支持するフレームとを備える沈水植物用人工浮島を開示する。フロートに接続されたアングルと植栽基盤に接続されたアングルとを固定するボルトの位置を変更することにより、沈水植物が生育可能な水深に合わせて、植栽基盤の設置水深を調節することができる。しかしながら、植生用人工浮島では、一般的に水生植物の発芽確認後、育成状態を確認しながら、植栽基盤を沈めて水深を深くし、最終的に、植栽基盤を水底に設置する必要がある。このため、永年が経過しても殆ど朽腐しない鋼材又はプラスチック等の人工材料をフレーム、植栽基盤又はアングルに使用する特許文献1の人工浮島では、むしろ湖沼の環境を悪化する可能性すらある。また、湖沼の環境を考慮して、植栽基盤を水底に設置する際に、植栽基盤及びフレームを撤去すると、作業効率が悪化する問題があった。
【0005】
また、特許文献1に示される最も経済的かつ一般的と思われる実施例では、化学合繊マット、ヤシ繊維製マット、スポンジ、ロックウール、スラグウール等の植栽材又は砂若しくは軽量骨材を充填した沈水植物植栽ポッドにより形成される植栽基盤周辺に生じる波又は水流により、植生基盤の土壌が水中に流出する危険があった。
【0006】
また、特許文献1に示される同一高さの画一化されかつ多様性に乏しい植栽材又は沈水植物植栽では、植生基盤に繁茂できる植物種も均一化され易く、多様性に富む植生を再生し難い難点がある。また、植栽材又は沈水植物植栽ポッドが配置される水深が同一となるので、生育環境の異なる沈水植物と抽水植物とを同時に育成することが難しかった。即ち、特許文献1の人工浮島では、育成できる水生植物の種類が限定され、種々の植物が共存する自然を良好に再現できなかった。
【0007】
下記特許文献2は、水面に浮設される筏構造体を木材又は竹材により形成した浮遊式水質浄化装置を開示する。また、下記特許文献3は、植物を育成させる網状構造体を竹繊維、椰子殻繊維又は樹脂繊維により形成した水質浄化植物繁茂用浮島を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4,217,232号公報
【特許文献2】特開2001−276861公報
【特許文献3】特開2006−25783公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の一目的は、水中に設置した植生基盤を除去する必要のない人工浮島用植生基盤、その製法、植生用人工浮島及びその製法を提供することにある。本発明の他の目的は、締結部材を除き、基本的に天然材により形成でき環境に悪影響のない人工浮島用植生基盤及びその製法を提供することにある。本発明の別の目的は、少なくとも植生基盤内の植物が一定の大きさに生育されるまで朽腐せず、水中で十分な機械的強度を有し環境に無害の竹材により形成される人工浮島用植生基盤を提供することを目的とする。本発明の更に別の目的は、水面に発生する波又は水流による内部に保有する培地の流出を防止できる植生用人工浮島及びその製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による人工浮島用植生基盤(2)は、下部フレーム(16)及び上部フレーム(17)を構成する複数の竹筒又は木材を直方体形状又は立方体形状に接続して形成されるフレーム(11)と、互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム(16)上に固定される複数の竹製又は木製の床材(12)と、床材(12)上に配置される複数の竹鉢(14)とを備える。水中に配置した人工浮島用植生基盤(2)内の水生植物が所定の大きさに生育するまで、竹製のフレーム(11)、床材(12)及び竹鉢(14)は、水中で朽腐せずかつ十分な機械的強度を保持する。また、水生植物が育成した後、人工浮島用植生基盤を水中に放置しても、竹製のフレーム(11)及び床材(12)は、朽腐して土に還元されるため、自然環境に悪影響を与えない。むしろ人工浮島用植生基盤を水中に放置すると、竹鉢(14)の内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に保持される培地(19)中に含まれる水生植物の種子が発芽し、水生植物を十分に育成し、繁茂させることができる。更に、竹鉢(14)は、水の流れに対して、培地(19)を保持し、波浪又は水流により培地(19)が植生基盤(2)から流出するのを防止する作用がある。
【0011】
本発明による人工浮島用植生基盤の製法は、複数の竹筒又は木材を準備する工程と、複数の竹筒又は木材を井桁積み又はマキ積みに重ねて互いに固定して、少なくとも下部フレーム(16)と上部フレーム(17)を有する直方体形状又は立方体形状のフレーム(11)を形成する工程と、互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム(16)上に竹製又は木製の床材(12)を配置する工程と、床材(12)上に複数の竹鉢(14)を並置する工程とを含む。また、竹筒を井桁積み又はマキ積みに重ねて互いに固定することにより、下部フレーム(16)と上部フレーム(17)との間に竹筒の直径分の間隙(30)を形成して、間隙(30)を通じて植生基盤(2)の外部と内部との間で常時通水を行い、植生基盤(2)の全内部で満遍なく水を代謝又は循環させることができると共に、フレーム(11)を容易に構成することができる。複数の下部フレーム(16)上に床材(12)を敷設することにより、竹鉢(14)を支持する平面を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、天然に豊富に存在する竹材を使用して製造される植生用人工浮島は、内部に収容される水生植物が少なくとも所定の大きさに育つまでの期間、水中で朽腐せず、植生用人工浮島を所定の形状に保持する機械的強度を確実に維持し、しかも自然に無害で水生植物の生育後も植生用人工浮島を水中から除去する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による人工浮島用植生基盤の実施の形態を示す断面図
【図2】図1の人工浮島用植生基盤の側面図
【図3】図1の人工浮島用植生基盤の分解斜視図
【図4】図1に示す人工浮島用植生基盤を複数個同一平面上に並置して連結した状態を示す平面図
【図5】人工浮島用植生基盤の部分断面図
【図6】土壌を収納する有底竹鉢と無底竹鉢を示す人工浮島用植生基盤の部分断面図
【図7】異なる高さで土壌を収容する有底竹鉢と無底竹鉢を示す人工浮島用植生基盤の部分断面図
【図8】横型の竹鉢を示す斜視図
【図9】簾状の床材を使用する人工浮島用植生基盤の変更例を示す分解斜視図
【図10】床材を下部フレームにホッチキスで固定した実施の形態を示す分解斜視図
【図11】床材を下部フレームに植物繊維製の糸で固定した実施の形態を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による人工浮島用植生基盤、その製法、植生用人工浮島及びその製法の実施の形態を図1〜図11について説明する。
【0015】
図1〜図3に示すように、本発明による人工浮島用植生基盤(2)は、下部フレーム(16)及び上部フレーム(17)を構成する複数の竹筒直方体形状又は立方体形状に接続して形成されるフレーム(11)と、互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム(16)上に配置される竹製又は木製の床材(12)と、床材(12)上に配置される天然繊維製の敷布(13)と、敷布(13)上に垂直に並置される複数の竹筒製の竹鉢(14)とを備える。竹筒内の節の少なくとも一部を除去若しくは破断して又は円筒状に節を除去して、長さ方向に連続する空洞を竹筒内に形成した開放構造がフレーム(11)に設けられる。フレーム(11)を水中に配置したとき、竹筒の端部から内部に水が侵入し、除去した節を通じて全フレーム(11)内に水が充填されるので、水中に浸漬したフレーム(11)の不要な浮力を軽減することができる。床材(12)は、図3に示す例では、多数の縦割竹と多数の横割竹を格子状に織った構造を有する竹床材であるが、図9に示すように、連結糸(12a)等の締結部材により簾状に形成した構造でもよい。いずれにしても、床材(12)は、多数の割竹を並行若しくは格子状に配置して締結部材でフレーム(11)に固定し又は多数の割竹をシート状に織り、編み又は簾状に形成して、フレーム(11)に固定される。例えば、床材(12)は、幅5〜15mm程度の竹ひご又は割竹を20mmピッチに編んだ竹シーツにより形成される。竹ひご又は割竹と隣接する竹ひご又は割竹との間隔を20mm等の比較的大きい寸法に設定すると、竹材の強度により竹鉢(14)の重量を支持しながら、水生植物の根を竹鉢(14)から敷布(13)に延伸させて生育できる。この場合、成長した水生植物の根が床材(12)に絡み合い、水生植物は、床材(12)に根を張ることができる。本明細書で使用する締結部材は、糸、紐、綱、ロープ、革等の植物繊維製又は動物製の締結部材、針金(番線)、ワイヤ等の金属製の締結部材を含む。
【0016】
敷布(13)を敷いた床材(12)上にほぼ隙間無く複数の竹鉢(14)が、配置され、竹鉢(14)上に蓋網(15)が配置されて、蓋網(15)は、締結部材により、フレーム(11)、特に上部フレーム(17)に固定されるので、竹鉢(14)は、床材(12)と、上部フレーム(17)と、蓋網(15)により形成される空間内に転倒せずにかつ植生基盤(2)から脱落せずに保持される。竹鉢(14)上に配置される蓋網(15)は、正方形、長方形若しくは菱形の開口部を有する格子構造、六角形の開口部を有するハニカム構造に編んだ編竹、植物繊維製の糸若しくはイネ科植物の茎により形成される。
【0017】
本発明による植生基盤(2)を製造する際に、まず、1000〜3000mm、好ましくは2500mm程度のほぼ均一長さに切断された竹筒の内部の節を円筒状に除去し、竹筒内部の節を円筒状に除去した開放構造を有する所定長さの竹筒を準備する。次に、図3に示すように、互いに一定間隔離間して並行に3本の竹筒(16a,16b,16c)を配置すると共に、互いに一定間隔離間して並行に2本の竹筒(16d,16e)を竹筒(16a,16b,16c)の両端上に配置して、下部フレーム(16)を構成する。また、互いに一定間隔離間して並行に2本の竹筒(17a,17b)を配置すると共に、互いに一定間隔離間して並行に2本の竹筒(17c,17d)を竹筒(17a,17b)の両端上に配置して、上部フレーム(17)を構成する。
【0018】
次に、下部フレーム(16)上に上部フレーム(17)を井桁積み又はマキ積みに重ねて、図示しない締結部材により下部フレーム(16)と上部フレーム(17)とを立方体形状に固定する。竹筒を井桁積み又はマキ積みに重ねて互いに固定することにより、下部フレーム(16)と上部フレーム(17)との間に竹筒の直径分の間隙(30)を形成して、間隙(30)と通水性の敷布(13)とを通じて植生基盤(2)の外部と内部との間で常時通水を行い、植生基盤(2)の全内部で満遍なく水を循環(代謝)させることができると共に、フレーム(11)を容易に構成することができる。下部フレーム(16)と上部フレーム(17)との縦と横の竹筒の長さを変更して、直方体形状に形成してもよい。また、下部フレーム(16)と上部フレーム(17)の直交する竹筒(16a〜16e,17a〜17d)の交差部に垂直に竹筒を配置して、図示しない連結フレームを設け、締結部材により連結フレームを交差部で下部フレーム(16)及び上部フレーム(17)と一体に固定してもよい。連結フレームは、例えば、400〜800mm程度の長さに切断した竹筒を使用できる。節がなく水中で水及び生物が内部に侵入できる天然の竹材により形成されるフレーム(11)は、鰻又は魚等の水中生物の棲家(漁礁)となろう。
【0019】
図1〜図3に示すように、単一の植生基盤(2)は、共に1500〜3000mm、好ましくは2500mm程度の幅W及び長さLと、300〜800mm、好ましくは500mm程度の厚さTに形成される。厚さtが100〜300mm、好ましくは250mm程度の床材(12)、敷布(13)、竹鉢(14)及び蓋網(15)の積層体は、フレーム(11)内に配置され、波浪又は水流による移動が阻止される。この場合、上部フレーム(17)から下部フレーム(16)に図示しないボルトを貫通させてこれらを互いに固定し、ボルトの頭部リングにクレーンのロープ又はワイヤを係止して、クレーンにより植生基盤(2)を吊り上げて、水中に敷設することができる。
【0020】
その後、互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム(16)上に床材(12)を配置し、更に床材(12)上に敷布(13)を配置する。複数の下部フレーム(16)上に床材(12)及び敷布(13)を配置することにより、竹鉢(14)を支持する平面を容易に形成すると共に、床材(12)を構成する隣り合う割竹の間隙及び通水性の敷布(13)を通り、植生基盤(2)の外部と内部との間で常時通水を行い、植生基盤(2)の全内部で満遍なく水を循環させることができる。また、通水性の敷布(13)は、麻繊維又はイネ科植物の茎により構成される縦繊維と横繊維とが直角に交じり、隣り合う繊維間に間隙が形成される天然繊維製の織布又は編物である。敷布(13)は、例えば、比較的高い強度を有しかつ水生植物の根を通し易い適度な目の荒さを有する麻織物又は麻布により形成される。敷布(13)は、例えば、アマ、チョマ、タイマ、イラクサ、コウマ、ボウマ及び洋麻等の幹若しくは茎から採集される軟質繊維又はマニラ麻、サイザル麻、マゲー及びマオランから採集される硬質繊維を織った粗麻布若しくは黄麻布等の麻織物又は麻布が使用され、水を通過するが、土砂の通過を阻止する濾過(フィルター)作用を有する。通水性の敷布(13)は、気孔のサイズが小さいため、植生用の培地(19)を竹鉢(14)内及び隣り合う複数の竹鉢(14)間に保持する機能がある。床材(12)上に配置する敷布(13)は、床材(12)及び下部フレーム(16)を覆うと同時に、上部フレーム(17)の内部側面に達するため、敷布(13)の垂直折曲部(13a)は、竹鉢(14)と培地(19)の植生基盤(2)からの離脱を阻止する。最後に、敷布(13)上に垂直に複数の竹鉢(14)を並置する。
【0021】
フレーム(11)、床材(12)、竹鉢(14)及び蓋網(15)を形成する竹材は、真竹、孟宗竹、淡竹、黒竹又は篠竹等のイネ科中のタケ亜科に属する竹を含み、日本産に限らず、外国産を含む種々の竹材を使用することができる。特に、日本中に自生し、高さ15〜20m及び直径50〜100mm程度の真竹及び孟宗竹を使用するのが好ましい。国内に大量に存在する天然材料である竹は、環境に悪影響を及ぼさない。また、日本各地で問題となる放置竹林の竹を使用すれば、安価に植生用人工浮島(1)を製造できると共に、竹の有効活用を促進して、放棄竹林の荒廃を予防することができる。
【0022】
床材(12)よりも隙間のない敷布(13)は、竹鉢(14)の内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に充填された土壌(19)が植生基盤(2)の下方から水中に流出するのを防止できる。麻繊維は、例えば、麻番手5〜9程度の比較的太い繊維が好ましく、5〜15本/cm程度の繊維密度で十分に土壌(19)の流出を防止できる。敷布(13)には、コーヒー袋等の麻袋を再利用して使用できるが、麻織物又は麻布に限らず、例えば、綿布等の他の敷布を使用してもよい。また、複数の麻布若しくは綿布を重ねて又は並置して、敷布(13)を形成してもよい。
【0023】
多数の割竹を並行若しくは格子状に配置し又は多数の割竹をシート状に織り又は編んで床材(12)が形成される。竹鉢(14)上に蓋網(15)を配置し又は細かい網目の蓋網(15)を使用すると、カモ類等の鳥類が発芽又は成長途中の沈水植物を荒らし又は食べる鳥害を防止できる。
【0024】
植生用人工浮島(1)に単一の植生基盤(2)を使用できるが、図4に示すように、複数の植生基盤(2)を同一平面状に互いに接続して、植生用人工浮島(1)を形成することもできる。図示の実施の形態では、植生用人工浮島(1)を設置する水域の波の進行方向に直角に4つの植生基盤(2)を接続しかつフロート(3)を介して2つの植生基盤(2)を並行に接続して、合計8つの植生基盤(2)により比較的大きな植生用人工浮島(1)を形成できる。
【0025】
植生基盤(2)を使用する際に、竹鉢(14)内及び隣り合う複数の竹鉢(14)間に植生用の培地(19)が配置され、培地(19)は、敷布(13)によりフレーム(11)内に保持される。有底の竹鉢(14)及び敷布(13)は、内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に土壌(19)を保持し、波浪又は水流により土壌(19)が植生基盤(2)から流出するのを防止できる。植生用人工浮島(1)を設置する水底から採取した水生植物の種子を含む土壌を培地(19)として使用することにより、外来植物を持ち込まずに、植生用人工浮島(1)を設置する水域に合った水生植物を育成できる。竹の節により閉鎖される有底の竹鉢(14)を使用してもよく、開放底の筒状の竹鉢(14)を使用することができる。また、水底から採取した土壌(19)には、日光が届かず発芽しなかった種子が通常含まれるため、別途種子を土壌(19)に撒く必要がない。水より高い比重を植生基盤(2)に与える錘をフレーム(11)に取り付けてもよい。
【0026】
また、製造した人工浮島用植生基盤(2)に水中で浮力を生ずるフロート(3)と、水中での植生基盤(2)の水深を調整可能に植生基盤(2)とフロート(3)とを取り外し可能に接続する索体(4)と、植生基盤(2)の漂流を防止する係留手段(5)と、植生基盤(2)に当たる波及びうねりを消勢又は減衰する消波部材(6)とを人工浮島用植生基盤(2)に取り付けて植生用人工浮島が製造される。図1及び図2に示す実施の形態では、各フロート(3)は、隣り合う節間に密閉空間を有する8本の竹筒をロープにより束ねて形成され、竹筒内に封入される空気により水面(20)上に浮設する4個のフロート(3)がロープ等の索体(4)により植生基盤(2)に接続される。植生基盤(2)に索体(4)の一端を接続し、索体(4)の中間部をフロート(3)に取り付けることにより、所定の水深に植生基盤(2)を保持することができる。フロート(3)は、例えば、直径80〜200mm、好ましくは150mm程度の竹材を長さ8〜12m、好ましくは10m程度に切断した竹筒から安価にかつ容易に量産でき、景観及び自然環境に悪影響を与えない。1.5〜5m程度に切断した竹筒を長さ方向に複数組み合わせて、フロート(3)を形成してもよい。フロート(3)は、植生用人工浮島(1)の規模に応じて、長さ20〜30m、好ましくは25m程度に形成され、3〜10本程度の竹筒を並置して、1〜1.5m程度の幅に形成される。フロート(3)の構成に要する竹筒の長さ及び数量は、上記数値に限定されず、植生基盤(2)の重量等の条件により適宜に変更してよい。また、植生基盤(2)を水底に固定した後に回収されるフロート(3)には、プラスチック等の天然素材以外の材料を使用してもよい。
【0027】
索体(4)は、例えば、天然繊維をより合わせたロープであり、植生基盤(2)とフロート(3)とを接続する索体(4)の長さを調節して、植生基盤(2)の水深を変更することができる。植生基盤(2)を水底に固定した後に回収される索体(4)には、鉄、銅等の金属製のワイヤ又は合成繊維製のロープを使用してもよい。
【0028】
布袋の中に土砂を充填した土嚢、船舶用碇、水底に埋設された支柱等の公知のアンカーを係留手段(5)として使用できる。例えば、植生用人工浮島(1)を設ける水域の土砂を麻袋に充填した土嚢による係留手段(5)は、自然環境を害さずに、植生用人工浮島(1)を水上の所定位置に係留できる。図示の実施の形態では、波の進行方向に対して前後に配置した2つのフロート(3)にそれぞれをロープ又はワイヤ(18)により接続して、植生基盤(2)の漂流を防止する。水中に沈降する植生基盤(2)とフロート(3)とを接続する索体(4)の長さを調節することにより、植生基盤(2)をフロート(3)から所定の水深位置に垂下することができる。係留手段(5)の重量及び数量は、上記数値に限定されず、適宜に変更してよい。
【0029】
竹鉢(14)は、節を有する竹筒、節を除去した竹筒又は節を有する竹筒と節を除去した竹筒とを交互又は一定の規則に従って組み合わせて形成される。節の有無により異なる深さの竹鉢(14)を形成して、根長さの相違する水生植物及び異なる種類の水生植物を複数の竹鉢(14)内に育成することができる。水生植物は、竹鉢(14)の内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に充填された土壌(19)から発芽し、水生植物の根は、竹鉢(14)の下に配置される比較的目の粗い床材(12)及び敷布(13)を通り成長する。植生用人工浮島(1)を設置する水域の水生植物の種類に合わせて、節を有する竹筒と節を除去した竹筒との数の割合を変更してもよい。
【0030】
蓋網(15)は、例えば、幅5〜15mm程度の竹ひご又は割竹を100mmピッチに編んだ竹シーツにより形成される。蓋網(15)により、竹鉢(14)をフレーム(11)に固定し、水中で植生基盤(2)から竹鉢(14)が浮遊するのを防止できる。図4に示すように、床材(12)及び蓋網(15)の編み方は、縦ひごと横ひごを1本ずつ交互に編む単純な四つ目編みでよいが、例えば、ござ目編み、ねじり編み、六つ目編み又は麻の葉編み等の公知の方法により編み込むことも可能である。
【0031】
消波部材(6)は、竹枝等の竹材により形成され、例えば、長さ400〜500mm程度の竹枝又は枝葉を束ねて、フレーム(11)にロープ又は針金により固定する。この場合、下部フレーム(16)又は上部フレーム(17)に消波部材(6)となる竹枝の根部分をロープ又は針金により固定し、枝葉部分は、植生基盤(2)の下方に向けて配置される。図3の実施の形態では、複数の竹枝又は枝葉の束(26)をロープ又は針金により割竹(27)に緊締した竹枝パネルにより消波部材(6)が形成される。竹枝パネルは、下部フレーム(16)又は/及び上部フレーム(17)にロープ又は針金により固定される。図示しないが、消波部材(6)は、植生基盤(2)の対向する4辺にそれぞれ固定される。水が通過可能な竹箒状の消波部材(6)は、植生基盤(2)に向かう波及びうねりを消勢又は減衰しかつ植生基盤(2)外への土壌(19)の流出を抑制する作用がある。天然の竹枝により形成される消波部材(6)は、えび又は魚等の水中生物の棲家(漁礁)又は産卵場所を形成する。
【0032】
消波部材(6)を固定した植生基盤(2)内に竹鉢(14)を配置し、竹鉢(14)の内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に土壌(19)を充填して、竹鉢(14)上に蓋網(15)が取り付けられる。植生用人工浮島(1)を設置すべき湖沼若しくは河川に植生基盤(2)を移動した後に、竹鉢(14)に土壌(19)を充填するので、土壌(19)を充填しない比較的軽量な植生基盤(2)を湖沼若しくは河川に搬送できる。湖沼若しくは河川に植生基盤(2)を移動する前に竹鉢(14)に土壌(19)を充填してもよい。フロート(3)と係留手段(5)とをロープ又はワイヤ(18)により接続して、係留手段(5)を水底に配置する。図3の植生用人工浮島(1)では、一対のフロート(3)を植生基盤(2)の長さ方向に取り付け、フロート(3)の両端部に索体(4)を接続した後、植生基盤(2)とフロート(3)とを接続する索体(4)の長さを調整して、水生植物の生育可能な水深に植生基盤(2)を配置する。この状態で、植生用人工浮島(1)を放置すると、竹鉢(14)内の土壌(19)中に含まれる水生植物の種子が自然に発芽し、植生基盤(2)上で水生植物を生育させることができる。竹鉢(14)、敷布(13)、フレーム(11)及び消波部材(6)の障壁作用により、竹鉢(14)から水中に土壌(19)が流出するのを抑制できる。
【0033】
例えば、植生用人工浮島(1)を設置する水域の富栄養化度及び水生植物及び沈水植物の種類によるが、例えば、水面(20)から竹鉢(14)又は蓋網(15)までの水深が150〜300mm程度で植生基盤(2)を水中に設置すると、植生基盤(2)に十分な量の日光が照射されて、植生基盤(2)の土壌(19)中の沈水植物種子を発芽することができる。沈水植物が成長し、沈水植物の葉が水面(20)に届く時期に、水面(20)から竹鉢(14)又は蓋網(15)までの水深が500〜800mm程度で植生基盤(2)を更に沈降させる。再び水面(20)に届くまで沈水植物の葉が成長した時期に、植生基盤(2)と索体(4)とを分離して、植生基盤(2)を水底(10)に配置する。フロート(3)、索体(4)及び係留手段(5)を別途回収して、他の植生用人工浮島(1)に再度利用することができる。植生基盤(2)を水底(10)に配置すると、床材(12)は、水底に接近するので、床材(12)と敷布(13)が朽腐すれば、沈水植物が水底(10)に直接根を張り、水底(10)から直接養分を吸収して、沈水植物は、更に成長する。
【0034】
図6及び図7に示す竹鉢(14)は、節(14a)を除去し、節(14a)の一部に貫通孔を設け又は節(14a)の無い円筒状の無底竹鉢(14b)と、底部に節(14a)の有るカップ状の有底竹鉢(14c)とを含み、無底竹鉢(14b)と有底竹鉢(14c)とを交互に、一定の規則に従って又は任意に敷布(13)上に配置される。それぞれ異なる高さの節(14a)により、複数の有底竹鉢(14c)内に充填される土壌(19)に多様な深さを与えてもよい。図6では、無底竹鉢(14b)と有底竹鉢(14c)内にそれぞれ必要な量の土壌(19)が充填される。有底竹鉢(14c)と無底竹鉢(14b)とに加え、有底竹鉢(14c)内の土壌(19)の深さを変えることにより、土壌(19)内で水の異なる循環状況が生じて、溶存酸素量等の異なる植物生育条件が得られる。このため、異なる生育条件に適する動植物種(21,22)が各竹鉢(14)内に生育し、多様な植生が生育される。また、無底竹鉢(14b)に生育する植物(21)の根は、床材(12)と敷布(13)も貫通して植生用人工浮島(1)の下部の水中に根を張り、えび又は魚等の水中生物の棲家(魚礁)又は産卵場所になることが期待されるが、有底竹鉢(14c)の下部では、植物(22)の根密度が低いため、植生用人工浮島(1)の下部空間内にもより多様な生態系を育成することができる。図6に示すように、有底竹鉢(14c)より厚い土壌(19)の無底竹鉢(14b)には、比較的長い根を張る植物(21)が優占的に生育し、比較的短い根を張る植物(22)は、無底竹鉢(14b)より浅い土壌(19)の有底竹鉢(14c)に生育する。
【0035】
図7は、均等深さ又は分量の土壌(19)を収容する無底竹鉢(14b)と有底竹鉢(14c)を示す。有底竹鉢(14c)は、土壌(19)の上面の水深が浅く、無底竹鉢(14b)は、土壌(19)の上面の水深が深い。水深の深度増加に伴ない、日照量が低下しかつ竹鉢(14)の側壁により日照量が低下するため、土壌(19)表面の日照量(照度)に多様性が生じ易い。これにより、発芽に必要な照度又は発芽に適する水深の異なる植物種(21,23)が各竹鉢(14)内の生育条件に合わせて発芽して、多様な植物種(21,23)を生育することができる。図7では、有底竹鉢(14c)より日照量の少ない土壌(19)表面を有する無底竹鉢(14b)には、日照量の比較的少ない環境で生育できる植物(21)が優占的に生育し、日照量の比較的多い環境で生育する植物(23)は、無底竹鉢(14b)より日照量の多い土壌(19)表面を有する有底竹鉢(14c)に生育する。
【0036】
植生基盤(2)は、植生基盤(2)を水中に埋設した後、例えば、20〜30年後に朽腐し、水又は水底(10)の土に分解される。水生植物の生育状態を確認しながら索体(4)により植生基盤(2)の水深を調整し、最終的に植生基盤(2)を着底させるが、竹材等の天然材の植生基盤(2)を放置しても、いずれ朽腐若しくは腐食して水底の土壌に還元され又は水中生物により分解されるため、水中から除去する必要がない。水底(10)に放置される植生基盤(2)の水生植物は、自身の繁殖力により水生植物の群落規模を拡大する。
【0037】
植生基盤(2)を水中に配置しても、植生基盤(2)内に水生植物が所定の大きさに生育するまで、竹により形成されるフレーム(11)、床材(12)及び竹鉢(14)は、水中で朽腐せずかつ十分な機械的強度を保持する。水生植物には、植物体全体が水中にあり、水底に根を張る沈水植物、水面に葉を浮かべ水底に根を張る浮葉植物及び水底に根を張り、茎の下部は水中にあるが、茎か葉の少なくとも一部が水上に突き出る抽水植物が含まれる。また、水生植物が育成した後、敷布(13)も天然繊維により形成されるので、植生基盤(2)を水中に放置しても、構成要素は、いずれ朽腐して土に還元されるため、自然環境に悪影響を与えない。むしろ放置される植生基盤(2)により、竹鉢(14)の内部及び隣り合う竹鉢(14)との間に保持される培地(19)中に含まれる水生植物の種子が発芽し、水生植物を更に繁茂に育てることができる。更に、竹鉢(14)は、水の流れに対して、培地(19)を保持し、波浪又は水流による培地(19)の植生基盤(2)からの流出を防止する作用がある。
【0038】
このように、本発明の実施の形態では、天然に豊富に存在する竹材を使用して、植生用人工浮島を製造することができ、少なくとも水生植物が所定の大きさに育つまでの期間、製造した植生用人工浮島は、水中で侵食、腐食、朽腐せず、確実に所定の機械的強度を保持し、しかも自然に無害で水生植物の生育後も水中から除去する作業を必要としない。即ち、本発明の人工浮島の基本的な構想は、以下の通りである。
[1] 自然に無害な竹材又は木材等の自然素材により、植生基盤(2)を主に構成するフレーム(11)、床材(12)、敷布(13)、竹鉢(14)及び蓋網(15)を形成する。
[2] 特に、日本に無尽蔵に存在する竹材を使用して、水中で容易に朽腐せずかつ十分な機械的強度を有する植生基盤(2)を安価に形成する。
[3] 植生基盤(2)に接続される索体(4)の長さを変更して、植物の生育状況に応じて植生基盤(2)の水深を増加し、最終的に水底(10)に植生基盤(2)を定着・着床させる。
[4] 水底(10)に放置される植生基盤(2)は、いずれ朽腐若しくは腐食して水底(10)の土壌に還元され又は水中生物により分解される自然素材により形成されるため、水中から回収する必要がなく、自然に無害である。
【0039】
本発明の前記実施の形態は、種々の変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、内部に水が侵入する構造を有する節のない複数の竹筒を使用して、フレーム(11)を形成する例を示したが、竹筒の代わりに、木材を使用して、フレーム(11)を形成してもよい。木材は、間伐されかつ所定の長さに切断された杉、檜等の原木、皮剥原木等を使用することができる。竹筒の外側から内側に径方向に延伸してフレーム(11)内に水を導入する複数の貫通孔を竹筒の側壁に形成してもよい。また、図示の例では、床材(12)に支持される敷布(13)上に複数の竹鉢(14)を並置する例を示したが、敷布(13)を省略して、床材(12)上に直接竹鉢(14)を配置し又は培地となる土壌(19)を配置してもよい。前記実施の形態では、床材(12)により形成される竹鉢(14)の載置面に対して、竹鉢(14)の中心軸が垂直な状態で複数の竹鉢(14)を床材(12)上に並置したが、図8に示すように、竹鉢(24)の載置面に対して水平な状態で複数の竹鉢(24)を床材(12)上に並置してもよい。図示しないが、複数段の節を有する竹鉢(14)を床材(12)上又は敷布(13)上に垂直に複数配置してもよい。淡水又は淡水と海水とが混合する水域に設置する植生基盤(2)を説明したが、比較的水が滞留し又は水流量の少ない海岸水域に設置して、搗布(かじめ)、昆布、穂俵(ほんだわら)等の海藻の生育及び海水の浄化にも植生基盤(2)を適用することができる。植生用人工浮島(1)は、エビモ、シャジクモ、ミズヒキモ及びトリゲモ等の沈水植物に限らず、比較的浅い水深に沈めて、アシ(ヨシ)、ハス、ガマ及びマコモ等の抽水植物又はアサザ及びヒツジグサ等の浮葉植物の種子又は胞子を植生基盤(2)上で生育できる。また、水質浄化に限らず、水域の消波、景観の向上及び生物の生息場所の提供を目的として、植生用人工浮島(1)を湖沼、河川又はダム湖等の水域に設置してもよい。植生用人工浮島(1)を設置する水域の底から採取した土壌(19)以外の土砂を竹鉢(14)内及び隣り合う複数の竹鉢(14)間に充填してもよい。その際、植生用人工浮島(1)を設置する水域に適合する水生植物の種子を土砂内に別途充填してもよい。
【0040】
下部フレーム(16)及び上部フレーム(17)に加えて、更に複数のフレーム(11)を井桁積み又はマキ積みに重ねて、フレーム(11)を形成してもよい。また、フレーム(11)の形成法は、井桁積み又はマキ積みに限定されず、単に、水平に配置する複数の竹筒を垂直に重ねて、所定の高さの4つの壁を作り、最下部の竹筒上に床材(12)、敷布(13)及び竹鉢(14)を順次重ね、必要に応じて、蓋網(15)を竹鉢(14)上に被せて固定してもよい。植生基盤(2)は、必ずしも前記の順序で形成する必要はなく、例えば、床材(12)上に敷布(13)を配置せずに、敷布(13)上に床材(12)を配置してもよい。また、植生基盤(2)は、前記の構成に限定されず、フレーム、編材、敷布、シート又はマット等の追加部材を備えてもよい。前述した植生用人工浮島(1)の各構成部材の数、寸法及び密度等の数値は、一例に過ぎず、植生用人工浮島(1)の設置場所及びその規模又は施工費用等の条件に応じて、適宜に変更してよい。
【0041】
図10に示すように、並行に配置した複数の割竹と、割竹を下方で支持する下部フレーム(16)を構成する竹筒(16a,16b,16c)とにホッチキス又はステープラの針(12c)を打ち込んで、竹筒(16a,16b,16c)に固定された床材(12)を形成してもよい。別法として、図11に示すように、例えば、幅5〜15mm程度の割竹を麻ロープ等の植物製の繊維の糸若しくは紐又は針金(12b)により簾状に編んだ竹シーツにより床材(12)を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、比較的水が滞留し又は水流量の少ない湖岸、河川及び海岸水域に設置して、水生植物を繁茂させ水質の改善を図る植生基盤に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
(1)・・植生用人工浮島、 (2)・・植生基盤、 (3)・・フロート、 (4)・・索体、 (5)・・係留手段、 (11)・・フレーム、 (12)・・床材、 (13)・・敷布、 (14,24,34)・・竹鉢、 (15)・・蓋網、 (16)・・下部フレーム、 (16a,16b,16c,16d,16e)・・竹筒、 (17)・・上部フレーム、 (17a,17b,17c,17d)・・竹筒、 (19)・・培地、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部フレーム及び上部フレームを構成する複数の竹筒又は木材を直方体形状又は立方体形状に接続して形成されるフレームと、
互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム上に固定される複数の竹製又は木製の床材と、
床材上に並置される複数の竹鉢とを備えることを特徴とする人工浮島用植生基盤。
【請求項2】
床材は、多数の割竹を並行若しくは格子状に配置し又は多数の割竹をシート状に織り、編み又は簾状に形成して、下部フレーム上に固定した請求項1に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項3】
フレームは、竹筒内の節の少なくとも一部を除去又は破断した開放構造を有し、
フレームを水中に配置したとき、竹筒の端部から内部に水が侵入する請求項1又は2に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項4】
床材上に配置される天然繊維製の敷布を備える請求項1〜3の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項5】
敷布は、互いに編まれた縦糸と横糸とを有しかつ隣り合う縦糸と隣り合う横糸との間に間隙が形成される織布又は多数の間隙が形成される編物である請求項4に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項6】
敷布は、麻繊維又はイネ科植物の茎により構成される縦繊維と横繊維とが直角に交じり、隣り合う繊維間に間隙が形成される天然繊維製の織布又は編物である請求項4に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項7】
床材により形成される竹鉢の載置面に対して、竹鉢の中心軸が垂直又は水平な状態で複数の竹鉢を床材上に並置した請求項1〜6の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項8】
床材に支持される敷布上に複数の竹鉢を並置した請求項4〜6の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項9】
敷布により形成される竹鉢の載置面に対して、竹鉢の中心軸が垂直又は水平な状態で複数の竹鉢を敷布上に並置した請求項8に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項10】
竹鉢上に蓋網を配置した請求項1〜9の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項11】
正方形、長方形若しくは菱形の開口部を有する格子構造、六角形の開口部を有するハニカム構造に編んだ編竹、植物繊維製の糸若しくはイネ科植物の茎により蓋網を形成した請求項10に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項12】
竹鉢内及び隣り合う複数の竹鉢間に植生用の培地を配置した請求項1〜11の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項13】
下部フレーム及び上部フレームを井桁積み又はマキ積みに重ねてフレームを直方体形状又は立方体形状に構成した請求項1〜12の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項14】
下部フレームは、互いに一定間隔離間して並行に配置される3本の竹筒と、竹筒の両端上にかつ互いに一定間隔離間して並行に配置される2本の竹筒とを有する請求項1〜13の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項15】
上部フレームは、互いに一定間隔離間して並行に配置される2本の竹筒と、竹筒の両端上にかつ互いに一定間隔離間して並行に配置される2本の竹筒とを有する請求項1〜14の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤。
【請求項16】
複数の竹筒又は木材を準備する工程と、
複数の竹筒又は木材を井桁積み又はマキ積みに重ねて互いに固定して、少なくとも下部フレームと上部フレームを有する直方体形状又は立方体形状のフレームを形成する工程と、
互いに一定間隔離間してかつ対向して配置される複数の下部フレーム上に竹製又は木製の床材を配置する工程と、
床材上に複数の竹鉢を並置する工程とを含むことを特徴とする人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項17】
竹筒内の節の少なくとも一部を除去又は破断して長さ方向に連続する空洞を竹筒内に形成する開放構造を設けた複数の竹筒を準備する工程を含む請求項16に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項18】
床材により形成される竹鉢の載置面に対して、竹鉢の中心軸が垂直又は水平な状態で複数の竹鉢を床材上に並置する工程を含む請求項16又は17に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項19】
床材及び下部フレームを覆って上部フレームに達する天然繊維製の敷布を床材上に配置する工程と、
敷布上に垂直に複数の竹鉢を並置する工程を含む請求項16〜18の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項20】
敷布により形成される竹鉢の載置面に対して、竹鉢の中心軸が垂直又は水平な状態で複数の竹鉢を敷布上に並置する工程を含む請求項19に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項21】
多数の割竹を並行若しくは格子状に配置し又は多数の割竹をシート状に織り又は編んで床材を形成する工程を含む請求項16〜20の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項22】
竹鉢上に蓋網を配置する工程を含む請求項16〜21の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項23】
竹鉢内及び隣り合う複数の竹鉢間に植生用の培地を配置する工程を含む請求項16〜22の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤の製法。
【請求項24】
請求項1〜18の何れか1項に記載の人工浮島用植生基盤又は請求項19〜27の何れか1項に記載の人工浮島植生基盤の製法により製造される人工浮島用植生基盤に水中で浮力を生ずるフロートと、
水中での植生基盤の水深を調整可能に植生基盤とフロートとを取り外し可能に接続する索体と、
植生基盤の漂流を防止する係留手段とを設けた植生用人工浮島。
【請求項25】
隣り合う節間に密閉空間を有する竹筒によりフロートを形成した請求項24に記載の植生用人工浮島。
【請求項26】
植生基盤に取り付けられる消波部材を備える請求項24又は25に記載の植生用人工浮島。
【請求項27】
竹材により消波部材を形成した請求項26に記載の植生用人工浮島。
【請求項28】
竹枝の束又は割竹に竹枝の束を固定した竹枝パネルを植生基盤に取り付けて消波部材を形成した請求項27に記載の植生用人工浮島。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−19496(P2011−19496A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170013(P2009−170013)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(592090555)パシフィックコンサルタンツ株式会社 (30)
【出願人】(509107275)
【Fターム(参考)】