説明

人形の頭部及びそれを備えた人形、並びに人形の製造方法

【課題】人形1を構成している少なくとも頭部3の大量生産を可能とする。
【解決手段】作製される人形1の具現化対象である人物やキャラクターの外形形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体3aに対して、具現化対象となっている人物やキャラクターに対応した固有の外形形状を有する顔面体3b及び頭髪体3cをそれぞれ取り付けることによって、固有の人物やキャラクターを具現化した頭部3を完成することとし、人形1が具現化の対象とする人物やキャラクターにかかわらず、ほとんどの人物やキャラクターに対して頭芯体3aが共通に使用されるように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有の外形形状を備えるように胴部の上部に頭部を取り付けるようにした人形の頭部及びそれを備えた人形、並びに人形の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、特定の人物やキャラクターなどを立体的に現す固有の外形形状にかたどった人形(ドール)が広く知られているが、通常の人形では、具現化すべき対象に関する少なくとも顔面及び頭髪に相当する頭部が胴部の上部に取り付けられた構造になされている。そして、それらの胴部と頭部とは一体的な構造又は別体の構造として成形されることとなるが、そのうちの頭部については、胴部と別体で形成される場合であっても、少なくとも頭部そのものについては全体が一体的に成形されることが常識になっている。
【0003】
すなわち、一般的な人形では、顔面体や頭髪体等の各部からなる頭部の全体を一体的に形成することが通常行われている。そのように人形の頭部を一体的に成形する理由は、主として成形手段や成形方法によるものであるが、それに加えて、人形が単なる物ではなく固有の人物やキャラクターなどを具現化したものであるという特別な情緒性を有していることからも当然のこととなっている。
【0004】
しかしながら、上述したように人形の頭部の全体を一体的に成形する場合には、成形された頭部の全体が、特定の名前や名称を有する人物やキャラクターに対応した固有のものとなることから、他の名前や名称を有する人物やキャラクターを対象とした人形については、異なる外形形状を有する頭部を別個に成形する必要がある。
【0005】
従って、従来の人形では、固有の人物やキャラクター毎に別個の頭部を準備しなければならいことから、どうしても多種少量生産となってしまい、大量生産を行うことが難しいという問題がある。すなわち、人形の具現化対象である固有の人物やキャラクターを変更したい場合には、異なる外形形状を有する頭部を別個に製造しなくてはならず、急な変更要請に対して迅速に対応することができないという問題がある。
【0006】
なお、下記の特許文献1及び特許文献2のように、顔面部分を交換可能に構成した人形や、目や鼻のような各部を交換可能に構成した人形も従来から提案されてはいるが、同一の人物やキャラクターの範囲内で頭部を構成する一部のパーツが交換可能とした構造に止まっている。つまり、交換可能に構成された各部のパーツが取り付けられる頭部の本体部分は、人形が具現化しようとする固有の人物やキャラクターに対応した外形形状を有していることから、他の人物やキャラクターに変更したい場合には、交換可能な各部のパーツの他に、頭部の本体部分を別個に製造しなくてはならない。従って、これらのものにおいても上述した一般的な人形と同様な問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2005−110889号公報
【特許文献2】特開2007−14693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、大量生産を可能とするとともに、具現化の対象である人物やキャラクターを容易に変更することができるようにした人形の頭部及びそれを備えた人形、並びに人形の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明にかかる人形の頭部及びそれを備えた人形では、具現化すべき対象に関する少なくとも顔面及び頭髪に相当する固有の外形形状を備えた人形の頭部が、内方部分を構成して前記固有の外形形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体と、前記顔面に対応した固有の外形形状を有して前記頭芯体の前面側を覆うように取り付けられた顔面体と、前記頭髪に対応した固有の外形形状を有して前記頭芯体の上面側を覆うように取り付けられた頭髪体とを備えた構成を有している。
【0010】
また、本発明にかかる人形の製造方法では、固有の外形形状を備えるように胴部の上部に頭部を取り付けるようにした人形の製造方法において、前記頭部の内方部分を構成して前記固有の外形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体を予め準備しておき、人形の顔面及び頭髪にそれぞれ対応した固有の外形形状を有する顔面体及び頭髪体を、前記頭芯体の前面側及び上面側の各々を覆うように取り付けるようにしている。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、作製される人形の具現化対象である人物やキャラクターの外形形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体に対して、具現化対象となっている人物やキャラクターに対応した固有の外形形状を有する顔面体及び頭髪体をそれぞれ取り付けることによって固有の人物やキャラクターを具現化した頭部が完成されることとなる。そのため、人形が具現化の対象とする人物やキャラクターにかかわらず、ほとんどの人物やキャラクターに対して頭芯体が共通に使用されることとなり、人形の頭部のうちの大きな領域を形成する頭芯体の大量生産が可能となって生産性の向上が図られるようになっている。
【0012】
また、このような構成を有する本発明によれば、頭芯体に対して異なる外形形状の顔面体及び頭髪体を適宜に選択して取り付け又は交換することによって、異なる人物やキャラクターを具現化した人形が容易に製造されるようになっている。
【0013】
このとき本発明における前記頭芯体は、複数の分割片が接合されることにより構成されることが可能となる。
【0014】
このような構成を有する本発明によれば、頭部を構成している複数の分割片によって、例えば胴部側に設けられた首部を挟み込むように組み立てるようにすれば、胴部に対する頭部の装着が容易に行われる。
【0015】
また、本発明においては、前記顔面体及び頭髪体の少なくとも一方が、前記頭芯体に対して着脱自在となるように構成されることが可能である。
【0016】
このような構成とすれば、人形が具現化の対象とする人物やキャラクターにかからわず同一の共通形状をなすように製造された頭芯体に対して、異なる外形形状の顔面体又は頭髪体を着脱することにより、それらの顔面体又は頭髪体を適宜に交換することとすれば、人形が具現化の対象とする人物やキャラクターの変更が極めて容易に行われるようになっている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明は、人形が具現化の対象とする人物やキャラクターの外形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体に対して、人形の顔面形状及び頭髪形状を有する顔面体及び頭髪体を取り付けることにより、固有の人物やキャラクターを具現化した頭部を完成する構成を採用したことによって、人形の頭部のうちの大きな領域を形成する頭芯体を、ほとんどの人物やキャラクターに対して共通使用が可能となるように構成したものであるから、頭芯体の大量生産が可能となるとともに、異なる人物やキャラクターを具現化した人形が容易に製造又は変更可能となり、種々の人物やキャラクターを具現化した人形を安価かつ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図3に示された本発明の第1の実施形態にかかる人形1は、通常の人形と同様に、胴部2の上部から延出する首部2aに対して頭部3が取り付けられた構造を備えているが、頭部3の構造については従来にはない新規な構成を有している。
【0019】
すなわち、本実施形態にかかる頭部3は、複数(3体)の各部材3a,3b,3cの接合体から構成されており、当該頭部3の内方部分における大きな領域を構成している頭芯体3aに対して、薄肉状をなすように形成された顔面体3b及び頭髪体3cがそれぞれ取り付けられている。
【0020】
この頭部3を構成する各部の一つを構成している頭芯体3aは、人形1が具現化しようとする人物やキャラクターの外形状とは無関係な形状(色彩を含む)を有しており、人形1が現す人物やキャラクターが異なる場合であっても、他の人物やキャラクターと共通する外形形状を有するように形成されている。
【0021】
さらに、本実施形態における頭芯体3aは、複数(2体)の分割片3a1,3a2が接合された構成になされている。これら2体の分割片3a1,3a2は、上述した胴部2に設けられた首部2aを挟んで前後に分割されており、首部2aに頭芯体3aを取り付ける際に、それら2体の分割片3a1,3a2どうしにより上記首部2aを前後方向から挟み込むようにして接合し、両者を接着又はピン嵌合(図示省略)により固定すれば、頭芯体3a自体の組立と同時に、当該頭芯体3aが首部2aに対して取り付けられるようになっている。
【0022】
また、上述した首部2aの先端部分(図示上端部分)には、大径状をなすように形成された突起係止部2a1が形成されており、その突起係止部2a1が前記頭芯体3a側に設けられた凹部内に嵌り込むことによって上記頭芯体3aが首部2aから脱落することなく胴部2に保持される構成になされている。
【0023】
このようにして胴部2に取り付けられた頭芯体3aは、上述したように人形1が具現化する人物やキャラクターとは無関係な共通形状を有する外形形状(色彩を含む)になされているが、この頭芯体3aの外表面に沿うようにして取り付けられる顔面体3b及び頭髪体3cは、人形1が具現化する人物やキャラクターに固有な目鼻や頭髪の形状及び色彩を有している。そして、これらの顔面体3b及び頭髪体3cが頭芯体3aに取り付けられることによって、頭部3の全体が完成されることとなる。
【0024】
これらのうちの顔面体3bの内壁面側には、複数(2体)の突起ピン3b1が設けられており、それらの各突起ピン3b1が、上述した頭芯体3aの前面側壁面に設けられた固定穴3a3内に挿通されて嵌合されることによって、当該顔面体3bが上記頭芯体3aに対して固定されるようになっている。この顔面体3bを完全に固定する場合には、接着剤等を使用することも可能であるが、顔面体3bを取り替え可能な構成とする場合には、上述した突起ピン3b1の固定力のみで顔面体3bを保持することとなる。
【0025】
一方、上述した頭髪体3cは、上記頭芯体3aの上面側壁面を覆う略ヘルメット形状をなす中空状の湾曲体から形成されており、当該頭髪体3cの内壁面と頭芯体3aの外壁面との間の摩擦力によって上記頭芯体3aに対して頭髪体3cが着脱可能に保持されるようになっている。
【0026】
この頭髪体3cは、植毛のベース部材を構成するものであり、当該頭髪体3cの外表面には、人毛やアクリル繊維などを植え付け又は接着する植毛が、人形1の具現化すべき人物やキャラクターに対応した形状(色彩を含む)となるように施される。なお、後述する実施形態のように毛髪部分を含めた頭髪体3cの全体を樹脂成型品とすることも可能である。
【0027】
このような構成を有する本実施形態によれば、作製される人形1の具現化対象である人物やキャラクターの外形形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体3aに対して、具現化対象となっている人物やキャラクターに対応した固有の外形形状を有する顔面体3b及び頭髪体3cをそれぞれ取り付けることによって、固有の人物やキャラクターを具現化した頭部3が完成されることとなる。そのため、人形1が具現化の対象とする人物やキャラクターにかからわず、ほとんどの人物やキャラクターに対して頭芯体3aが共通に使用されることとなり、人形1の頭部3のうちの大きな領域を形成する頭芯体3aの大量生産が可能となって生産性が向上される。
【0028】
また、このような構成を有する本実施形態によれば、頭芯体3aに対して異なる外形形状の顔面体3b及び頭髪体3cを適宜に選択して取り付け又は交換することにより、異なる人物やキャラクターを具現化した人形が容易に製造されるようになっている。
【0029】
このとき、本実施形態における頭芯体3aは、複数の分割片3a1,3a2が接合された構成になされており、その頭芯体3aを構成している複数の分割片3a1,3a2の間に、例えば胴部2側に設けられた首部2aが挟み込まれるように配置されることにより、胴部2に対して頭部3が容易に装着されることとなる。
【0030】
さらに本実施形態では、顔面体3b及び頭髪体3cが頭芯体3aに対して着脱自在となるように構成することが可能であることから、同一の共通形状をなすように製造された頭芯体3aに対して、異なる外形形状の顔面体3b又は頭髪体3cが着脱されて交換されることによって、人形1が具現化の対象とする人物やキャラクターの変更が極めて容易に行われるようになっている。
【0031】
一方、上述した第1の実施形態と同一の構成に対して同一の符号を付した図4に現された第2の実施形態においては、頭髪体13cの全体が樹脂成型品により構成されている。本実施形態における頭髪体13cは、前後方向(図示左右方向)に2分割された構成になされており、前髪部13c1に設けられた嵌合ピン13c2が、後髪部13c3に設けられた嵌合穴に挿通されることによって、一体的な頭髪体13cが構成されている。このような第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様な作用・効果が奏せられる。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることはいうまでもない。
【0033】
例えは上述した各実施形態では、胴部2に対して頭部3の頭芯体3aを嵌め込むように組み立てる構造としているが、胴部2と頭部3の頭芯体3aと一体的に形成する構造とすることも可能である。
【0034】
また、上述した各実施形態においては、頭芯体3aを分割構造としているが、一体構造とすることも当然に可能である。
【0035】
さらに、頭芯体3aに取り付けられた顔面体3b及び頭髪体3cは、双方ともに着脱自在に構成しても良いが、これらのうちの少なくとも一方を着脱自在に構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上述べたように本発明は、多種多様な構造を有する人形に対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態における人形における頭部の構造を表した分解斜視説明図である。
【図2】図1に表された人形の頭部構造を現した縦断面斜視説明図である。
【図3】図1に表された人形の頭部構造を現した分解側面説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における人形の頭部の構造を表した縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 人形
2 胴部
2a 首部
2a1 突起係止部
3 頭部
3a 頭芯体
3a1,3a2 分割片
3a3 固定穴
3b 顔面体
3b1 突起ピン
3c 頭髪体
13c 頭髪体
13c1 前髪部
13c2 嵌合ピン
13c3 後髪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の胴部に取り付けられるものであって、具現化すべき対象に関する少なくとも顔面及び頭髪に相当する固有の外形形状を備えた人形の頭部において、
内方部分を構成して前記固有の外形形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体と、
前記顔面に対応した固有の外形形状を有して前記頭芯体の前面側を覆うように取り付けられた顔面体と、
前記頭髪に対応した固有の外形形状を有して前記頭芯体の上面側を覆うように取り付けられた頭髪体と、
を備えていることを特徴とする人形の頭部。
【請求項2】
前記頭芯体は、複数の分割片が接合されることにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の人形の頭部。
【請求項3】
前記顔面体及び頭髪体の少なくとも一方が、前記頭芯体に対して着脱自在となるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の人形の頭部。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の頭部が、胴部に取り付けられていることを特徴とする人形。
【請求項5】
具現化すべき対象に関する少なくとも顔面及び頭髪に相当する固有の外形形状を備えた人形の頭部を胴部に取り付けるようにした人形の製造方法において、
前記頭部の内方部分を構成して前記固有の外形状とは無関係な共通形状を有する頭芯体を予め準備しておき、
人形の顔面及び頭髪にそれぞれ対応した固有の外形形状を有する顔面体及び頭髪体を、前記頭芯体の前面側及び上面側の各々を覆うように取り付けるようにしたことを特徴とする人形の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−11458(P2009−11458A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174470(P2007−174470)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(507012973)
【Fターム(参考)】