説明

人形用眼球の取付構造該取付構造を備えた人形用頭部該人形用頭部を備えた人形

【課題】簡単かつ任意に眼球の視線を調整できると共に、眼球の交換が容易かつ商品価値を低下することなく行い得る人形の眼球取付構造を提供する。
【解決手段】内部中空状に形成された人形用頭部の貫通した眼球露出穴2に、該頭部内部から眼球を取り付ける構造であって、眼球露出穴位置近傍の頭部内面に先端の固定部7を固定すると共に後頭部1b方向へ向けて突設される取付部本体6と、該取付部本体に対し摺動可能に備えられ、眼球14を保持すると共に保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部12を備えた眼球押え部9と、該眼球押え部の後方から前記取付部本体に摺動可能に備えられるカシメ部13とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形用眼球の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今人形需要者層は、低年齢層から高年齢層へと移行している。高年齢層の需要者にあっては、例えば、人形として完成した状態のものを購入する場合もあるが、人形の各パーツ、例えば頭部・脚部・腕部・胴部などを夫々個別に購入し、あるいは完成状態の人形の各パーツを別途他の別売りパーツに交換し、自分の好みの形態の人形に仕上げていくことで自分好みの意匠性を高める需要者も多い。
【0003】
特に、人形の構成パーツとして最も重要度が高いのは眼球(義眼)であり、この眼球如何によっては人形の表情が左右されてしまう。すなわち、「目は口ほどに物を言う」との諺があるように、眼球の光彩・視線などは人形の表情を左右する重要な構成要素である。
従って、頭部・脚部・腕部・胴部などの主要構成パーツを当初から備えている完成状態の人形であっても、眼球部分のみ組み込まれていない人形が多々あり、これらの人形は、需要者が人形購入後、別途自分の好みに合った眼球を購入して後付している。
【0004】
このような眼球としては、昨今アクリル材などで形成・装飾したリアル性の高い眼球が提供されており、需要者はこのような眼球を、頭部本体の内方から眼球露出穴に眼球の一部が臨むように固定させていた。このような眼球を備えることにより、人形によりリアル感を与えることができる。
【0005】
そして、従来このような眼球を取り付ける場合、眼球が簡単に脱落しないように眼球が接触する頭部本体内面の眼球露出穴周縁に接着剤を塗布し、該接着剤を固化させることで固着させていた。
しかし、このような取付方法の場合、眼球を取り付ける際に接着剤が眼球の前面(瞳部分)に付着したり、あるいは眼球を眼球露出穴に押し付けた際に接着剤が眼球の前面にはみ出したりして、眼球前面を汚してしまうことがあった。これでは上述したリアル性の高い眼球の効果が失われてしまう。
【0006】
また、需要者は、その日の気分・好みによって人形の眼球の色や視線などを変えたいと欲することが多かったが、上述のように接着剤によって固定されていたのでは、眼球の交換ができず、また無理に取り外そうとすると眼球を破損したり、頭部本体の眼球露出穴周縁を破損したりする虞もあった。
【0007】
そこで、眼球を着脱可能に固定できる眼球の取付構造が需要者に切望されているのが現状である。
このような着脱可能な眼球の取付構造としては、例えばシリコンゴムコンパウンドなどの合成樹脂系粘着材やパテなどを介して眼球を取り付ける構造が提供されている(例えば特許文献1参照)。
このような粘着材やパテなどを用いて眼球を頭部本体の眼球露出穴周縁に取り付けるものとすれば、眼球を汚したりすることもなく、また着脱が可能であるため、眼球の視線位置を眼球固定後であっても再度粘着材やパテなどを剥がして調整することが可能であった。
【特許文献1】特開2003−47784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような取付構造を採用するものでは、眼球の視線調整時点や眼球の交換時点などにあって、一々粘着材やパテを取り外して眼球の位置調整をし、その後再度粘着材やパテを用いて固着させる必要があり、粘着材やパテの着脱作業が面倒であった。
また、この種の構造であっても、粘着材やパテで固着する際に予め設定した視線位置とした眼球がずれてしまうことがあり、需要者のニーズに応え難いものであった。
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、簡単かつ任意に眼球の視線を調整できると共に、眼球の交換が容易かつ商品価値を低下することなく行い得る人形の眼球取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、内部中空状に形成された人形用頭部の貫通した眼球露出穴に、該頭部内部から眼球を取り付ける構造であって、眼球露出穴位置近傍の頭部内面に先端を固定すると共に後頭部方向へ向けて突設される取付部本体と、該取付部本体に対し摺動可能に備えられ、眼球を保持すると共に、保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた眼球押え部と、該眼球押え部の後方から前記取付部本体に摺動可能に備えられるカシメ部とで構成されていることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、取付部本体は、先端に備えられ、眼球露出穴位置よりも上方の頭部内面に固定される固定部と、該固定部から一体的に突出するシャフト部とで構成され、眼球押え部は、前記取付部本体のシャフト部外径に摺動可能に嵌められる摺動部と、該摺動部外面に一体的に備えられ、保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた環状の眼球押え部本体とで構成され、カシメ部は、前記取付部本体のシャフト部外径に摺動可能に嵌められることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、取付部本体は、先端に備えられ、眼球露出穴位置よりも上方の頭部内面に固定される固定部と、該固定部から一体的に突出するシャフト部とからなり、該シャフト部は、シャフト部の長さ方向で、遊端側から固定部方向に所定範囲にわたって内設される凹状の中空溝と、該中空溝と連通してシャフト部の外面長さ方向にわたって形成される切欠き溝とで構成された摺動溝を備え、眼球押え部は、前記摺動溝の中空溝内を摺動可能に配される摺動部と、該摺動部と一体的に備えられ、前記摺動溝の切欠き溝を介して外方に突出する突片と、該突片と一体的に備えられ、保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた環状の眼球押え部本体とで構成され、カシメ部は、前記摺動溝の中空溝内を摺動可能に配される摺動部と、該摺動部と一体的に備えられ、前記摺動溝の切欠き溝を介して外方に突出する操作部とで構成されていることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、眼球押え部本体の嵌め合い部は、眼球の最大直径よりも小径に形成されていることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0013】
第5の発明は、第2の発明において、カシメ部は、取付部本体のシャフト部外径に緊密に嵌り合って摺動する内径を有し、眼球押え部の摺動部内径は前記カシメ部の内径よりも大径に形成されていることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0014】
第6の発明は、第3の発明において、カシメ部の摺動部は、取付部本体のシャフト部に備えた摺動溝内に緊密に嵌り合って摺動する形状を有し、眼球押え部の摺動部は、前記摺動溝内に緩やかに嵌り合って摺動する形状を有していることを特徴とする人形用眼球の取付構造としたことである。
【0015】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれかに記載の人形用眼球の取付部構造を備えたことを特徴とする人形用頭部としたことである。
【0016】
第8の発明は、第7の発明の人形用頭部を備えたことを特徴とする人形としたことである。
【0017】
本発明によれば、予め頭部内方から眼球露出穴に眼球を位置決め載置し、その後取付部本体に摺動可能に備えた眼球押え部を眼球方向へと摺動させ、該眼球の後面を押さえつけて眼球を眼球露出穴の周縁に押し付ける。そして、その後カシメ部を前記眼球押え部方向へと摺動させ、カシメ部を眼球押え部の摺動部後端に当接させれば、後頭部方向への眼球押え部の戻りが抑えられる。これにより、眼球は頭部本体内方から眼球露出穴の周縁に押し付け固定される。また、この状態で固定された眼球は、その眼球押え部の嵌め合い部から眼球後方が臨んでいるため、取り付け固定後であっても眼球後方に触れて眼球の視線調整が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、簡単構造で眼球の確実な保持及び交換ができ、商品価値を向上させた人形用の眼球取付構造を提供できる。
また、本発明によれば、眼球取付後であっても眼球位置を上下左右に動かすことができるため、需要者は任意の視線位置が選択でき需要者ニーズに十分応えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。
なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず何等これに限定して解釈されるものではなく本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。また、本発明は人形用の眼球取付構造について特徴を有するもので、該眼球取付構造を備える人形用頭部構造や、該人形用頭部を備えた人形全体構造、例えば胴体部(首部を含む)・脚部・腕部などの他の構造については、特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
また、本実施例では、人間を模写した人形を代表例として説明するが、所望な眼球部分を備える人形であれば、ロボットタイプ、怪獣タイプなどの種々の外観形状を有する人形に適用される。
【実施例1】
【0020】
本発明の人形用の眼球取付構造は、例えば種々の人形に適用可能であるが、特にソフトビニル製大型人形(例えば全高60cm程度)の軟質製頭部内に備えられる眼球取付構造として用いられる。
図1にて、1は軟質製の頭部本体、3は操作開口部、4は蓋部、5は眼球取付構造を示す。
【0021】
軟質製の頭部本体1は、任意の熱可塑性樹脂にて、例えば回転成形・スラッシュ成形などにより内部中空状に一体成形される。図中2は、眼球露出穴を示す。眼球露出穴2は、頭部本体1の成形時に、該頭部本体1の所定箇所に貫通状に形成されるものであるが、頭部本体1の成形時には非貫通状で、頭部本体1若しくは頭部本体1を備えた人形を購入後、需要者が個人的にカッターなどの治具により開口するものであってもよい。
なお、頭部本体1に形成される顔表情や図示しない耳形状などにあっては任意であって限定はされない。
また、本実施例1では図示省略するが、頭部本体1には、人形用胴体部から突出する首部骨格を嵌入保持する開口縁を設けるものとする。
【0022】
眼球露出穴2は、頭部本体1の顔正面所定位置から頭部本体1の内方に向けて貫通状に開口されている。この眼球露出穴2は、配設対象とされる眼球14を頭部本体内面1aの眼球露出穴周縁2aと密接状に当接可能であればよく、配設対象とされる眼球14の径よりも周縁径が僅かに小径であっても同一径であってもよい。また、眼球露出穴2の形状は特に限定されず本発明の範囲内で、丸目形状、切れ長目形状、垂れ目形状、つり目形状など適宜所望な形状を選択できる。
なお、前記眼球露出穴2をその肉厚方向に厚肉に形成して、眼球14の瞳部分15aを眼球露出穴2の内方(頭部本体1の後頭部1b方向)に位置するように構成することで、例えば奥目形状などを構成するものとしてもよく、適宜本発明の範囲内で設計変更可能である。
さらに、本実施例では図示しないが、頭部本体内面1aの眼球露出穴周縁2aに、まつ毛の基端側を接着剤又は粘着材により固定してまつ毛を備えるものとしてもよい。
まつ毛は、実施の形態に応じて上下の双方若しくは一方のみを備えたり、色や形態を変えることが可能である。またまつ毛を備えない形態も本発明の範囲内である。
【0023】
操作開口部3は、前記頭部本体1における頭頂部1cの所望領域を選択して略円形状に設けられている。なお、操作開口部3の開口径は特に限定されないが、使用勝手の面からすると、大径に形成されている方が好ましく、少なくとも、需要者の指を差し込んで眼球取付構造5の配設操作や眼球14の視線位置変更操作が可能な程度の開口径を選択して形成する。
この操作開口部3は、頭部本体1の成形時に形成されるものであっても、頭部本体1の成形後に所望形状にくり貫くものであつてもよく任意である。
なお、操作開口部3は、後頭部1bの所望領域を選択して設けるものであってもよい。
【0024】
蓋部4は、前記頭部本体1の頭頂部1cに形成されている操作開口部3を、着脱可能に密閉して取り付けられ、本実施例では、操作開口部3の形状に合致する円形状に形成されている。図示例では、特に嵌合形状を省略するが、蓋部4と操作開口部3とには、任意の嵌合形状を備え、容易に蓋部4が外れないように構成するのが好ましい。なお、蓋部4の形状は、操作開口部3の形状と合致して着脱可能に構成されるものであれば本発明の範囲内で任意の形状が選択可能である。
【0025】
本実施例によって形成された頭部構造は、頭頂部1cに蓋部4の輪郭形状が現れるが、この輪郭形状は、例えば頭部に植毛される髪の毛によって隠せるものであるため全く視覚的にも支障はない。さらに、人形によってはカツラを使用するもの、例えば色々なスタイルや染毛のカツラを好みによって付け替える人形もあるため、このような人形にあってはカツラによって蓋部輪郭形状が隠されてしまうため上記同様全く支障はない。
【0026】
眼球取付構造5は、図1及び図2に示すように、取付部本体6と、眼球押え部9と、カシメ部13とで構成されている。
【0027】
取付部本体6は、半球形状の固定部7と、該固定部裏面7bに直交して一体的に突出する長尺円柱状のシャフト部8とで構成され、眼球露出穴2位置近傍の頭部本体内面1aに、前記固定部7を接着剤(好ましくは瞬間接着剤)などで固定し、シャフト部8を後頭部1b方向へ向けて突設する。
また、シャフト部8の長さは、眼球押え部9とカシメ部13が摺動して眼球14を着脱できる長さ方向の領域を有していればよく、特に限定はされないが、少なくとも頭部本体1内に収納される長さとする。
尚、固定部7およびシャフト部8の構成は、特に本実施例に限定されず本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0028】
眼球押え部9は、図1乃至図3に示すように、前記取付部本体6のシャフト部8の外径に摺動可能に嵌められる小径円環状の摺動部10と、該摺動部10の外面に一体的に備えられ、保持される球体状眼球14の後方が臨む嵌め合い部12を備えた円環状の眼球押え部本体11とで構成されている。
【0029】
前記摺動部10の内径D2は、前記シャフト部8の外径D1よりも大径(D1<D2)に形成され、シャフト部8の外径を緩やかな遊びをもって嵌め合わされている。
眼球押え部本体11の嵌め合い部12(内径D4)は、円環状に形成され、保持対象となる球体状眼球14の最大直径D5よりも小径に形成されている。
特に限定解釈はされないが、摺動部10は、摺動性に優れた材質で構成するか、若しくは摺動性の良いコーティング材を少なくとも摺動部10の内径に設けるものとすると摺動部10の摺動性が向上する。また、眼球押え部本体11の嵌め合い部12の内径D4にあっては、該嵌め合い部12によって嵌め合い保持される眼球14の視線を適宜操作変更した際に、その変更位置で眼球14を保持できるのが好ましいため、摩擦抵抗の高い材質で構成するか、若しくは摩擦抵抗の高いコーティング材を少なくとも嵌め合い部12の内径に設けるものとすると眼球14の視線位置の保持性が向上する。
なお、本実施例において摺動部10は、眼球押え部本体11よりも前方水平方向に突出する長尺円筒形状に形成されているが、これは摺動部10の補強を向上させるためで限定されるものではなく、眼球押え部本体11と同一肉厚の短尺に形成されるものであってもよく本発明の範囲内で設計変更可能である。また、摺動部10及び眼球押さえ部本体11の外観形状は特に限定解釈されるものではなく、摺動部10はシャフト部8の外径を摺動可能な内径を有し、眼球押え部本体11は、嵌め合い部12を有するものであれば全て本発明の範囲内である。
【0030】
カシメ部13は、前記取付部本体6のシャフト部8の外径に摺動可能に嵌められる小径円環状に形成されており、前記シャフト部8の外径D1に緊密に嵌り合って摺動する内径D3を有し、眼球押え部9の後方から前記取付部本体6に摺動可能に嵌め込まれて、眼球押え部9のシャフト部8の軸方向への自由移動を阻止する。
すなわち、カシメ部13の内径D3は、眼球押え部9の摺動部10の内径D2よりも小径に形成されている(D1<D3<D2)。
なお、カシメ部13の全体外観形状は特に限定されず前記内径D3を有するものであれば本発明の範囲内である。
【0031】
本実施例で対象とされる眼球14は、前記眼球押え部9の嵌め合い部12に最大直径D5位置よりも後方の面15bが嵌め合わされて上下左右に滑動自在に収容保持される全体球体状に形成される眼球本体15と、該眼球本体15の瞳部分15aと相対向する後方位置に一体的に備えられている眼球遊動操作部16とで構成されている。
【0032】
眼球本体15は、本実施例では、球状に形成されているが、瞳部分15aを備えた眼球前面の湾曲部分を有しているもので、かつ嵌め合い部12によって脱落することなく保持可能な形状であれば特にその形状には限定されない。
前記眼球遊動操作部16は、眼球本体15の瞳部分15aと相対向する後方位置から所望長さの杆状に突出して備えられており、前記眼球押え部本体11の嵌め合い部12を通して頭部本体1内に突状に備えられる。この操作部16は、本実施例では杆状に形成されているが、需要者が眼球14を遊動させて視線位置を調整する際に、容易に摘める形状を有しているものであればよく限定はされない。
【0033】
ここで、本実施例の眼球取付構造の取付工程の一例について説明する。
まず、取付部本体6のシャフト部8の後端から摺動部10を嵌め合わせて眼球押え部9をシャフト部8に備える。
そして次に、眼球押え部9の嵌め合い部12に眼球を嵌め合わせると共に、固定部7方向へと摺動させ、その状態で頭部本体1の内方から眼球露出穴2に眼球14を押し付ける。なお、この時、眼球露出穴2が開口されていない場合には、予めカッターナイフなどの治具で所定の開口に眼球露出穴2を貫通形成する。
【0034】
そして、眼球14位置を調整した後に、取付部本体6の固定部前面7aを眼球露出穴2上方の頭部本体内面1aに当接させてシャフト部8が水平になるように位置決めをすると共に、その頭部本体内面1aと固定部前面7aとの当接部位に瞬間接着剤を塗布する。これにより、取付部本体6が頭部本体1の眼球露出穴2の上方から後頭部1b方向に向けて水平方向に突設される。
このような位置決め作業の段階において、眼球14の前面に両面テープなどを貼り付けておき、眼球配設位置を仮止めすれば取付部本体6の取り付け作業が容易となる。
なお、接着剤が完全に固化したらシャフト部8から眼球押え部9を引き抜くと共に、眼球14を取り外し、眼球14に貼り付けてあった仮止め用の両面テープを剥がす。
本発明によれば、取付部本体6を頭部本体1の任意箇所に備えることが可能なため、頭部本体1の形状に応じた配設位置に適宜位置決め作業し得る。
【0035】
次に、再度、シャフト部8の後端から摺動部10を嵌め合わせて眼球押え部9をシャフト部8に備え、そしてその嵌め合い部12に眼球14を嵌め合わせると共に、固定部7方向へと摺動させ、該眼球押え部9の嵌め合い部12と、眼球露出穴周縁2aとの間で眼球14を前後方向から押圧保持する。
そしてその後、シャフト部8の後端からカシメ部13を嵌め合わせて固定部7方向へと摺動させ、眼球押え部9の摺動部10後端にカシメ部前端13aを当接させる。これにより眼球押え部9はシャフト部8方向への摺動が阻止され、眼球14が所定位置に取り付けられる。
そして、操作開口部3に蓋部4を取り付けて、該開口部3を閉鎖する。
なお、上述の説明では、一方の眼球取付構造5の取付工程のみを説明したが、他方の眼球取付構造5にあっても同様に行うものである。
【0036】
また、人形の視線を好みによって変えてみたい場合、頭頂部1cの蓋部4を外し、眼球押え部9の嵌め合い部12に保持されている眼球14から、前記嵌め合い部12を通して突出している眼球遊動操作部16を摘んで上下左右に動かすことにより、人形の視線を好みの視線に変更設定することができる。そして、設定した後には再び頭頂部1cを蓋部4によって閉蓋すればよい。
そして、眼球の色や光彩を変えたい場合、今まで取り付けていた眼球14に代えて他の眼球を取り付ける。この場合、蓋部4を外し、そしてカシメ部13をシャフト部8の後端方向へと摺動移動させ、次に眼球押え部9をシャフト部8の後端方向へと摺動移動させる。そして、眼球14を嵌め合い部12から取り外すと共に、新しい眼球14を嵌め合い部12に嵌め込む。そして、再び眼球押え部9を眼球露出穴2方向へと摺動移動させ、その後カシメ部13を眼球押え部9方向へと摺動移動させて、該眼球押え部9の摺動部後端10aに当接させる。これにより、新しい眼球が頭部内方から眼球露出穴2の周縁2aに押圧保持される。このように本実施例によれば簡単かつ確実に眼球14の交換作業が成し得る。
【0037】
上述したような本実施例の人形用の眼球取付構造5を備えた人形用頭部や、該人形用頭部を備えた人形とすれば、需要者のニーズに対応した人形の提供が図れるため人形としての商品価値が向上する。なお、人形用頭部の構成や、該頭部を備えた人形の構成にあっては特に限定されず本発明の範囲内で種々の構成が採用可能である。
「変形例1」
【0038】
図3(b)は、眼球押え部9の変形例で、本変形例では、球体状眼球14に代えて、瞳部分15aに相対向する後方の面が平坦な面17に形成されている半球体状の眼球14を保持対象とした実施の一例である。なお、その他の構成及び作用効果は実施例1と同様であるためその説明は省略する。
すなわち、本変形例では、眼球押え部本体11の嵌め合い部12形状を前記実施例1と異なる形状を採用している。具体的にその構成を図3(b)に基づいて説明すると、眼球14の最大直径D5を収容すると共に、平坦面(後面)17の上縁19を受ける段部18が嵌め合い部12の穴周方向にわたって全周に連続して形成されている。なお、この段部18は、断続的に複数個設けられている実施の形態も採用可能である。
「変形例2」
【0039】
図3(c)は、取付部本体6の固定部7の変形例で、本変形例では、固定部7の前面7aに複数の縦溝20を設けて接着性を向上させている。なお、縦溝20に代えて横溝であっても、縦横が交差した溝であってもよい。なお、その他の構成及び作用効果は実施例1と同様であるためその説明は省略する。
「変形例3」
【0040】
なお、図示は省略するが、次のような構成も本実施例の変形例として挙げることが出来る。
左右の眼球取付用の取付部本体を固定部側で一体に形成してなるものであってもよく、このように構成すれば左右の眼球取付用の取付部本体が、一度に頭部本体内面の所定位置に配設することができる。
また、左右の眼球取付用の取付部本体を、頭部本体内面の夫々の眼球露出穴の上下に一対ずつ備える構成も採用可能である。この場合、眼球押え部は、眼球押え部本体の上下に一つずつ摺動部を備え、カシメ部は上下の取付部本体のシャフト部毎に一つずつ備えるか、上下の摺動部を一体的に形成した構成であってもよい。
【実施例2】
【0041】
本実施例2は、実施例1のように取付部本体6のシャフト部8の外径を、眼球押え部9の摺動部10とカシメ部13が摺動移動する実施の形態に代えて、シャフト部8の内部を眼球押え部9の摺動部10とカシメ部13が摺動移動する実施の一形態である。
【0042】
例えば、その一例を図4に基づいて説明すると、シャフト部8は、シャフト部8の長さ方向で、遊端(後端)21側から固定部7方向に所定範囲にわたって内設される凹状の中空溝22aと、該中空溝22aと連通してシャフト部8の外面長さ方向にわたって形成される切欠き溝22bとで構成された断面視略T字形状の摺動溝22を備えて構成されている。固定部7、その他の構成は実施例1で説明した構成と同様である。
【0043】
眼球押え部9は、前記摺動溝22の中空溝22a内を摺動可能に配される摺動部23と、該摺動部23と一体的に備えられ、前記摺動溝22の切欠き溝22bを介して外方に突出する突片24と、該突片24と一体的に備えられ、保持される眼球14の後方が臨む嵌め合い部12を備えた円環状の眼球押え部本体11とで構成されている。すなわち、摺動部23と突片24とによって、前記シャフト部8内に設けた断面視略T次形状の摺動溝22に摺動可能に嵌り合う断面視略T字形状を構成する。眼球押え部本体11は、実施例1で説明した構成と同様である。
【0044】
カシメ部13は、前記摺動溝22の中空溝22a内を摺動可能に配される摺動部25と、該摺動部25と一体的に備えられ、前記摺動溝22の切欠き溝22bを介して外方に突出する操作部26とで断面視略T字形状に構成されている。
なお、本実施例において、カシメ部13の摺動部25は、取付部本体6のシャフト部8に備えた摺動溝22内に緊密に嵌り合って摺動する形状を有し、眼球押え部9の摺動部23は、前記摺動溝22内に緩やかに嵌り合って摺動する形状を有している。
本実施例によれば、眼球押え部9の摺動部23とカシメ部13の摺動部25がシャフト部8の摺動溝22内をシャフト部8方向に摺動移動するものであるが、その摺動面が内外で異なるにすぎず、作用効果にあっては実施例1と同様であるため、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明人形用の眼球取付構造を人形用頭部の内面に備えた概略断面図。
【図2】人形用の眼球取付構造の分解斜視図。
【図3】(a)は実施例1の眼球押え部に眼球を嵌め合わせた状態を示す断面図、(b)は実施例1の変形例の眼球押え部に眼球を嵌め合わせた状態を示す断面図、(c)は取付部本体の固定部の変形例を示す部分拡大斜視図。
【図4】本発明人形用の眼球取付構造の実施例2を示し、(a)は一部縦断して示す側面図、(b)は眼球押え部とシャフト部との嵌合状態を示す縦断面図、(c)はカシメ部とシャフト部との嵌合状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0046】
1:頭部本体
2:眼球露出穴
5:眼球取付構造
6:取付部本体
7:固定部
8:シャフト部
9:眼球押え部
10:摺動部
11:眼球押え部本体
12:嵌め合い部
13:カシメ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部中空状に形成された人形用頭部の貫通した眼球露出穴に、該頭部内部から眼球を取り付ける構造であって、
眼球露出穴位置近傍の頭部内面に先端を固定すると共に後頭部方向へ向けて突設される取付部本体と、
該取付部本体に対し摺動可能に備えられ、眼球を保持すると共に保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた眼球押え部と、
該眼球押え部の後方から前記取付部本体に摺動可能に備えられるカシメ部とで構成されていることを特徴とする人形用眼球の取付構造。
【請求項2】
取付部本体は、先端に備えられ、眼球露出穴位置よりも上方の頭部内面に固定される固定部と、該固定部から一体的に突出するシャフト部とで構成され、
眼球押え部は、前記取付部本体のシャフト部外径に摺動可能に嵌められる摺動部と、該摺動部外面に一体的に備えられ、保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた環状の眼球押え部本体とで構成され、
カシメ部は、前記取付部本体のシャフト部外径に摺動可能に嵌められることを特徴とする請求項1に記載の人形用眼球の取付構造。
【請求項3】
取付部本体は、先端に備えられ、眼球露出穴位置よりも上方の頭部内面に固定される固定部と、該固定部から一体的に突出するシャフト部とからなり、
該シャフト部は、シャフト部の長さ方向で、遊端側から固定部方向に所定範囲にわたって内設される凹状の中空溝と、該中空溝と連通してシャフト部の外面長さ方向にわたって形成される切欠き溝とで構成された摺動溝を備え、
眼球押え部は、前記摺動溝の中空溝内を摺動可能に配される摺動部と、該摺動部と一体的に備えられ、前記摺動溝の切欠き溝を介して外方に突出する突片と、該突片と一体的に備えられ、保持される眼球の後方が臨む嵌め合い部を備えた環状の眼球押え部本体とで構成され、
カシメ部は、前記摺動溝の中空溝内を摺動可能に配される摺動部と、該摺動部と一体的に備えられ、前記摺動溝の切欠き溝を介して外方に突出する操作部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の人形用眼球の取付構造。
【請求項4】
眼球押え部本体の嵌め合い部は、眼球の最大直径よりも小径に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の人形用眼球の取付構造。
【請求項5】
カシメ部は、取付部本体のシャフト部外径に緊密に嵌り合って摺動する内径を有し、眼球押え部の摺動部内径は前記カシメ部の内径よりも大径に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の人形用眼球の取付構造。
【請求項6】
カシメ部の摺動部は、取付部本体のシャフト部に備えた摺動溝内に緊密に嵌り合って摺動する形状を有し、眼球押え部の摺動部は、前記摺動溝内に緩やかに嵌り合って摺動する形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の人形用眼球の取付構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の人形用眼球の取付部構造を備えたことを特徴とする人形用頭部。
【請求項8】
請求項7に記載の人形用頭部を備えたことを特徴とする人形。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−136451(P2006−136451A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327507(P2004−327507)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(391053917)株式会社オビツ製作所 (9)
【Fターム(参考)】