説明

人形用眼球可動器

【課題】人形の視線を顔面側から調節することができ、眼球の交換時、異なるサイズの眼球にも対応できるよう、眼球を保持するスプリングの微調整を行うことができ、かつ、既に広く市販されている人形に、あとから取り付けることが可能で、より小さな人形への搭載と低コストを実現し、球体に限らず、様々な形状の眼球を使用できる人形用眼球可動器を得る。
【解決手段】頭内部が空洞になった人形の目の裏側に円筒を配し、球体の眼球、あるいは半球状の補助器具を取り付けた眼球を入れ、スプリングがついた蓋によって、眼球を挟んで保持し、顔面側からの視線移動、様々な形状の眼球使用が簡単になる。また、蓋を筒に対してスライドさせて、ピンで固定することにより、使用する眼球のサイズが異なっても、常に最適の力をかけるでき、小型化を容易にして、既に広く市販されている人形や、より小型の人形に搭載できる人形用眼球可動器を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線をどの方向にも動かすことができ、かつ、小型の人形にも取り付けることができ、様々な種類の眼球パーツを取り付けることができる、人形用眼球可動器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人形玩具は従来のように完成品をそのまま使用するものと異なり、自己の好みに合うように瞳や手足の部品を選択購入(スタム)して、オリジナルの人形を作成して楽しむ趣味として、需要が増して来ている。また、人形の造形もリアルさを増し、写真の被写体などの用途にも用いられるようになった。さらに、人形の眼球それ自体もリアルさを増しており、現在、部品として流通しているパーツは、全体の表面に透明なコーティングが施され、さらに、瞳の虹彩部分が隆起した、本物の眼球に酷似したものとなっている。また、眼球にも様々な色、材質、形状があり、これらを自由に交換して楽しむことが多くなされるようになってきた。また、これらのリアル指向は近年、より小型の人形においても求められるようになっている。さらに、眼球の素材も、ガラスやシリコンなどを使用した、高級感はあるが、非球形の眼球が、ユーザーの支持を得ている。
【0003】
しかし、これらの眼球を操作して人形の目線を動かすには、従来は、頭部の蓋を開けて、パテなどを用いて手作業にて眼球を直製頭部に固定していたため、取り付けるときには目の裏を見て作業を行うことから、視線をうまく合わせるためには、顔面を見ては、裏から調節という作業を繰り返す必要があった。また、交換や再調整のために非硬化パテをすると、接着力が弱いために、ちょっとした衝撃などで眼球が落ちたり、視線がずれることがあった。また、特許公開2000-296276や、特許公表2003-501230などの眼球可動機構はあるが、複雑な仕組みを組み込む必要があるため高価になるうえ、既に市場に出回っている既製品の人形に取り付けることはできなかった。また、特許公開2007−202935において、より安価で単純な眼球可動構造が示されているが、これは、眼球とスプリングの間に凹形状の受け皿を使用していたため、小型の人形に搭載してスムーズに運用するには全長が長くなりすぎ、動作も安定しなかった。また、筒に取り付ける蓋の微調整を、ネジ切りした蓋を用いることによって行っていたが、これはネジ切りのための機械が高価であり、コストが高くなる原因となっていた。さらに、眼球が球形であることが条件だったので、ガラス製の眼球や、シリコン製の眼球など、より美しく高級ではあるものの、非球形の眼球については、取り付けることが出来なかった。
【0004】
従来の各種人形眼球可動機構は、小型の人形や、眼球可動機構を持たないことを前提に作られた既製品の人形には搭載しづらかった。また、非球形の、様々な形状の眼球は、搭載できなかった。そこで本出願人は、小型人形の表現力を瞳と視線に着目し、視線を自由に動かすことができ、なおかつ別の瞳の色を持つスペア眼球との交換も簡単に行え、非球形の眼球を取り付けることができ、既に量産されている小型の既製品人形においても、あとになってから取り付けることができる人形用眼球可動器の開発を試み、今回の発明において成功している。
【0005】
眼球を固定、保持するための従来の技術は、図5に示すように眼球の後ろに突起を設けて保持するものであった。また、可動化するときは、特許公開平5−285274や特許公開2000−296276の例にあるように、複雑な機械を内蔵する物であった。また、特許公開平5−285274、および特許公開2000−296276の技術によれば、眼球を可動させるための機構が複雑で、コストが高くなり、小型の人形に組み込む際に、部品を小型化することによって各部品の耐久性が悪化し、壊れやすくかった。また、組み上げ時においても、複雑な機構ゆえに、小型化した場合には難易度が上り、コストがかかっていた。
【0006】
また、特許公開2007−202935の技術によれば、図4に示すように、円筒の中に眼球を入れ、眼球の裏の凹状の受け皿後ろにスプリングを取り付け、その後ろに蓋を設けて、円筒に対してスプリングテンションを調節して、適当な強さで眼球を保持しているが、小型化するに際して、この凹状の受け皿が機構の全長を長くする原因となっていた。また、蓋の直径が円筒の直径よりも大きかったことから、実際に蓋部分を微調整するときに、狭いスペースでは周囲と干渉して、動作に支障をきたしていた。また、非球体の眼球を取り付けることができなかった。また、市販されている眼球には、ガラスなどの素材で、後部が非球体になっているものもあり、これらの眼球は、可動機能と併用が出来なかった。
【特許文献1】特許公開平5−285274
【特許文献2】特許公開2000−296276
【特許文献3】特許公開2007−202935
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとしている課題は、眼球を、顔面素材と、眼球後ろに配置したスプリングとの間で直接挟むことによって無接着で保持し、眼球を眼窩奥側に押し込めるようにして、回転させることによる視線移動を可能にし、なおかつ、従来使用されていた凹形状の受け皿部品を廃して、スプリングを調節受け皿にすることで、機構全体の小型化を実現し、また、スプリングテンションの調節についても、従来のようなネジ切り方式ではなく、眼球を入れた円筒や蓋に、縦に小穴を複数開け、小穴越しにピンなどによって蓋を固定することで、スプリングのテンションを適切な物に調節することでき、もしくは円筒と蓋の両方に小穴を縦に複数個開けておき、外側の素材に透明な部品を使用することで、隠れた部分を目視しながら、適切にピンなどを貫通させることによって、蓋を強く固定することができ、さらに、球体ではない眼球の後部に、半球体形状をした補助部品を取り付けることで眼球の後部を球体にして、非球形の眼球も、可動化することができ、既存の広く市販されている人形に対し、人形そのものには手を加えず、人形を入手した後から、あらためて眼球可動機能を付与することができる人形用眼球可動器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、第一発明は、頭部の内部が空洞になっている人形の、目の裏側に円筒を配し、その円筒の中に、後ろ側を球状に整形した眼球を入れ、円筒の末端には、円筒の内部側にスプリングをとりつけた蓋を配し、眼球を、顔面側素材と、スプリングとの間で直接挟んで、無接着で保持し、頭部を開けることなく、顔面側から直接視線を移動させることができることを特徴とする人形用眼球可動器である。
第二発明は、前記請求項1と併せ、スプリングそのものを眼球の受け皿とすることで、機構の全長を小型化し、より小型の人形に取り付けられることを特徴とする人形用眼球可動器である。
第三発明は、円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より小さくすることで、蓋を円筒内で前後にスライドさせることを可能にし、前記請求項1と併せ、異なるサイズの眼球を交換・使用するときに、眼球を保持するためのスプリングテンションを、微調整できることを特徴とする人形用眼球可動器である。
第四発明は、円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より大きくすることで、蓋の末端およびスプリングを、円筒に対して前後にスライドさせることを可能にし、前記請求項1と併せ、異なるサイズの眼球を交換・使用するときに、眼球を保持するためのスプリングテンションを、微調整できることを特徴とする人形用眼球可動器である
第五発明は、前記請求項1、および前記請求項2、前記請求項3と併せ、円筒や蓋に、小穴を縦に複数箇所開口しておき、蓋をスライドしてスプリングテンションを調節したとき、蓋をピンなどで固定してテンションを維持できることを特徴とする人形用眼球可動器である。
第六発明は、前記請求項5と併せ、円筒か蓋のうち、外側になる部品を透明な素材で作り、円筒と蓋の両方に小穴を開け、隠れたパーツの小穴も目視しながら簡単に、適切に、ピンなどを貫通させて、蓋を強く固定することができることを特徴とする人形用眼球可動器である。である。
第七発明は、前記請求項2と併せ、円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より小さくして小型化し、蓋を開ける際、頭部の外材と干渉させずに取り外すことで、頭部内部空間に余裕のない、より小型の人形にも搭載できることを特徴とする人形用眼球可動器である。
第八発明は、前記請求項1と併せ、球形ではない眼球を使用する際、眼球の後ろに、半球状の補助部品をとりつけることによって、眼球の後部を、球状の眼球を使用したときと同じ形態にして、球状眼球と同じように、非球状眼球を取り付け、顔面側からの視線移動できることを特徴とする人形用眼球可動器である。
【発明の効果】
【0009】
第一発明によれば、素では販売され、広く市販されている人形に、後から眼球可動機能を付与することが出来る。
【0010】
第一発明によれば、人形の眼球を無接着で、スプリングのテンションによって保持するため、顔面側から動かして、人形の視線を調節することができる。
【0011】
第一発明によれば、人形の眼球を、目の後ろにパテや接着剤で止める必要がなくなり、眼球の交換を簡単に行うことができる。
【0012】
第一発明、第二発明、第七発明によれば、機構を小型化・単純化することにより、より小型の人形に対しても、眼球可動機構を搭載することが出来る。
【0013】
第三発明、第四発明によれば、眼球を保持するスプリングテンションの強さを、使用する眼球の大きさに合わせて、蓋の位置をスライドさせて、適切なテンションに調節することができる。
【0014】
第五発明によれば、眼球を保持するテンションの強さを調節した後で、それを維持することができる。
【0015】
第六発明によれば、眼球を保持するテンションを維持するために蓋を固定する際、上側のパーツと下側のパーツ、両方の小穴を目視しながらピンを貫通させるため、簡単に、蓋を強く固定することができる。
【0016】
第八発明によれば、球形ではない眼球の後ろに、半球形状の補助部品をとりつけることによって、受け皿に対して眼球の後部を球状の形態にすることで、ガラスアイや、シリコンアイなど、非球形の多彩な種類の眼球を、眼球可動器に対して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明における一実施形態を図1に示す。
【実施例1】
【0018】
眼球3は、頭部外皮1とスプリング5の間に挟み込むように配置する。また、スプリング5の後ろに蓋6を取り付け、目筒2の中に眼球3、スプリング5、蓋6を納める。目筒1と蓋の上部に小穴を設けて、ピン7によって頭部外皮1と蓋6を固定する。小穴を複数設けることにより、眼球のサイズに合わせたスプリングテンションを維持する。非球体の眼球3を仕様するときには、半球状の補助部品を眼球の後ろに取り付けることにより、スプリングに対して球状の形態をとることによって、スムーズに可動させることができる。
【0019】
第一に、顔面側から自由に視線を動かすことが出来る人形用の眼球可動機構としては、極めて構造が簡単で、各部品も単純な形状で構成されているため、生産コストを低く押さえることができる。また、搭載対象となる人形そのものについては、改造などの手を加える必要がないため、既に販売され、広く市販されている様々な種類・メーカーの人形に対して、後から取り付けることが可能となっている。そのため、既存ユーザーは、あらためて人形を買い直す必要がなく、愛着のある人形に、後から眼球可動機能を付与することができる。また、スプリングを取り付けた蓋をスライドさせ、ピン止めすることで、眼球を保持するためのテンションを自由に設定し、スムーズに眼球を動かすための最適な力で眼球を保持することができるため、どのようなサイズの眼球に換装しても、常に最適なテンションに調節することができる。また、第八発明により、非球体の眼球を取り付けることができるため、ユーザーが、様々な種類の高級眼球をコレクションしても、気軽に交換することができる。
【実施例2】
【0020】
この発明における別の実施形態について、図2に示す。
この実施形態は、蓋9を、目筒8より大きくし、透明な素材で作ることによって、ピン7を、目筒8、蓋9に設けた小穴に、容易に通すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明における一実施形態を示す斜視図である。
【図2】この発明における別の実施形態を示す斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態を示す断面図である。
【図4】従来技術を示す斜視図である。
【図5】従来技術を示す断面図である。
【図6】従来技術を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1頭部外皮
2目筒1
3非球体眼球
4非球体眼球用補助部品
5スプリング
6蓋1
7止めピン
8目筒2
9蓋2
10頭部外皮
11頭部蓋
12球体眼球
13受け皿
14ネジ切り目筒
15ネジ切り蓋
16頭部骨格
17頭部外皮
18眼球袋
19眼球
20顔面
21眼球用の穴
22円筒
23袋
24眼球用の球
25瞳
26瞳
27瞳
28バックアップ球



【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の内部が空洞になっている人形の、目の裏側に円筒を配し、その円筒の中に、後ろ側を球状に整形した眼球を入れ、円筒の末端には、円筒の内部側にスプリングをとりつけた蓋を配し、眼球を、顔面側素材と、スプリングとの間で直接挟んで、無接着で保持し、頭部を開けることなく、顔面側から直接視線を移動させることができることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項2】
前記請求項1と併せ、スプリングそのものを眼球の受け皿とすることで、機構の全長を小型化し、より小型の人形に取り付けられることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項3】
円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より小さくすることで、蓋を円筒内で前後にスライドさせることを可能にし、前記請求項1と併せ、異なるサイズの眼球を交換・使用するときに、眼球を保持するためのスプリングテンションを、微調整できることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項4】
円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より大きくすることで、蓋の末端およびスプリングを、円筒に対して前後にスライドさせることを可能にし、前記請求項1と併せ、異なるサイズの眼球を交換・使用するときに、眼球を保持するためのスプリングテンションを、微調整できることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項5】
前記請求項1、および前記請求項2、前記請求項3と併せ、円筒や蓋に、小穴を縦に複数箇所開口しておき、蓋をスライドしてスプリングテンションを調節したとき、蓋をピンなどで固定してテンションを維持できることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項6】
前記請求項5と併せ、円筒か蓋のうち、外側になる部品を透明な素材で作り、円筒と蓋の両方に小穴を開け、隠れたパーツの小穴も目視しながら簡単に、適切に、ピンなどを貫通させて、蓋を強く固定することができることを特徴とする人形用眼球可動器である。
【請求項7】
前記請求項2と併せ、円筒の末端にとりつける蓋の直径を、円筒内径より小さくして小型化し、蓋を開ける際、頭部の外材と干渉させずに取り外すことで、頭部内部空間に余裕のない、より小型の人形にも搭載できることを特徴とする人形用眼球可動器。
【請求項8】
前記請求項1と併せ、球形ではない眼球を使用する際、眼球の後ろに、半球状の補助部品をとりつけることによって、眼球の後部を、球状の眼球を使用したときと同じ形態にして、球状眼球と同じように、非球状眼球を取り付け、顔面側からの視線移動できることを特徴とする人形用眼球可動器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−259886(P2008−259886A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2008−200364(P2008−200364)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(305051118)
【Fターム(参考)】