介助用車椅子の車体フレーム
【課題】直進性及び旋回性に優れた介助用車椅子の車体フレームを提供するとともに、この車体フレームに具備するブレーキ機構及び旋回ロック機構の操作が簡単なものとすることである。
【解決手段】ベースフレーム10の前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスター20,21を取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレート14には前記左右の後輪に作用するブレーキ機構30と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構40と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段50を具備してなる車体フレームにおいて、前記操作手段50をなす操作ペダルを中立位置から下方回動することでブレーキ機構30が作動して後輪にブレーキをかけ、操作ペダルを中立位置から上方回動することで旋回ロック機構40が作動して後輪を前進方向の状態で保持するように構成した。
【解決手段】ベースフレーム10の前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスター20,21を取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレート14には前記左右の後輪に作用するブレーキ機構30と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構40と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段50を具備してなる車体フレームにおいて、前記操作手段50をなす操作ペダルを中立位置から下方回動することでブレーキ機構30が作動して後輪にブレーキをかけ、操作ペダルを中立位置から上方回動することで旋回ロック機構40が作動して後輪を前進方向の状態で保持するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者の施設等で使用する車椅子に関し、特に施設内を移動したり入浴介助する際に使用する介助用車椅子における車体フレームのブレーキ及び方向規制機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から介護を必要とする高齢者等を移動するために開発された車椅子が多種ある。それらの多くが、後輪は前後方向に指向する状態で車体フレームに固定する一方、前輪には旋回自在なキャスターを軸着して構成している。また、前後輪をそれぞれを旋回自在なキャスターで構成したものもある。
【0003】
前者は直進性が良いだけでなく、方向転換する際に小さな操作力で良いという効果がある。しかしながら、前輪のみ旋回自在であるので小回りができず、横付けするような移動に適していないという問題があった。
一方、後者は小回りがきき、横付けするような移動を行うことに適している。しかしながら、四輪全てが旋回自在であるので、床面の傾斜や凹凸になじむように旋回してしまうので直進性が悪く、方向転換にも大きな操作力が必要となるという問題があった。
【0004】
そこで、後者の車体フレームの問題点を解消すべく、キャスター自体にブレーキ機構及び旋回ロック機構を設けたものがある。
しかしながら、上述した問題点は解消できたものとなっているが、個々のキャスターで旋回ロック機構またはブレーキ機構を操作しなければならず、使い勝手の良いものとは言い難いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−276142号公報
【特許文献2】特開2005−34334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、直進性及び旋回性に優れた介助用車椅子の車体フレームを提供するとともに、この車体フレームに具備するブレーキ機構及び旋回ロック機構の操作が簡単なものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベースフレームの前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスターを取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレートには前記左右の後輪に作用するブレーキ機構と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段を具備してなる車体フレームにおいて、前記フレームプレートの後方下部に穿設した空孔部には前記操作手段をなす操作ペダルを、前記空孔部の前方上部に穿設した取付孔には前記ブレーキ機構をなす左右一対の制動部材を、前記取付孔の後方に穿設した取付孔には前記旋回ロック機構をなす旋回ロック部材を少なくとも一方の後輪に作用するようにそれぞれ上下回動自在に支承するとともに、前記制動部材とベースフレームとの間にスプリングを介在させて前記後輪の車輪部から制動部材のリング部材を離間する方向に付勢し、前記旋回ロック部材とベースフレームとの間にもスプリングを介在させて前記後輪のヨーク部に旋回ロック部材の規制部材が作用する方向に付勢する一方、前記フレームプレートには前記制動部材の取付孔を通る直線に近似する前記空孔部を中心とした円弧状の第一ガイド孔と、前記空孔部を通る直線に近似する前記取付孔を中心とした円弧状の第二ガイド孔とを連続して構成してなるほぼ逆L字状のガイド孔を設け、該ガイド孔に沿って移動自在となるように取付軸を挿通するとともに該取付軸にはカムローラーを支承し、前記制動部材に取り付けたカムオサエプレートが該制動部材に作用するスプリングの付勢力によって前記カムローラーを前記操作ペダルの両端に固着したカムプレートのカム面に接当させる一方、前記カムプレートに隣接する状態で旋回ロックプレートを回動自在に取り付けるとともに、該旋回ロックプレートに設けたスライド孔に沿って前記カムローラーが移動自在となるように取り付け、該旋回ロックプレートに設けた保持部が前記旋回ロック部材の下部に固着した作動軸を前記旋回ロック部材に作用するスプリングの付勢力に抗して保持するように構成することにより、前記操作ペダルを中立位置から下方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第二ガイド孔に沿って移動するので前記旋回ロックプレートはほとんど回動することなく前記制動部材のリング部材側だけが下方回動して後輪の車輪部に接触することで制動状態となり、前記操作ペダルを中立位置から上方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第一ガイド孔に沿って移動するので前記制動部材はほとんど回動することなく旋回ロックプレートだけが回動するのに伴って前記旋回ロック部材の規制部材側が下方回動して前記後輪のヨーク部に作用することで旋回ロック状態となるよう構成したことを特徴とするブレーキ機構と旋回ロック機構及びその操作手段を具備してなる車体フレームとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の介助用車椅子の車体フレームは、前後輪として旋回自在なキャスターを具備している。そして、操作手段となる操作ペダルを中立位置から踏み込むことでブレーキ機構を作動させて左右の後輪に同時にブレーキをかけることができる。逆に、操作ペダルを上方にはね上げることで左右の後輪の少なくとも一方の後輪に設けた旋回ロック機構が作動して後輪を前進する状態で旋回ロックすることができる。したがって、操作ペダルの操作だけで後輪のブレーキのロック及びロック解除と、後輪の旋回ロック及び旋回ロック解除ができるものとなっている。
このように、キャスターに個別に設けたブレーキ機構と旋回ロック機構を備えたものと比較して、個々の操作を必要としないので操作が非常に簡単である。また、これらの機構を備えたキャスターを使用していないので車輪の劣化に伴う交換も安価に行うことができるという効果もある。
さらに、この車体フレームは四輪全てを旋回自在な状態で使用すると、横方向への移動もできるので、例えばベッドサイドに車椅子を横付けするときなど便利である。また、狭い浴室などでは小回りがきくので使い勝手のよいものとなっている。
また、少なくとも一方の後輪を旋回ロック状態とすると、直進性が向上するとともに、方向転換する際の操作力を軽減することができるので、移動を楽に行うことができるという効果がある。
そして、左右両側の後輪には同時にブレーキをかけることができるので安全に使用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る車体フレームを示す全体斜視図
【図2】その車体フレームの構成を示す説明図
【図3】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(1)
【図4】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(2)
【図5】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(3)
【図6】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(1)
【図7】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(2)
【図8】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(3)
【図9】ブレーキ機構のロック状態を示す全体斜視図
【図10】旋回ロック機構のロック状態を示す全体斜視図
【図11】別の実施例を示す車体フレームの全体斜視図
【図12】本発明にかかる車体フレームを用いた車椅子を示す全体側面図
【図13】その作用を示す全体側面図
【実施例1】
【0010】
本発明における車体フレーム1の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
この車体フレーム1は、図1に示すように主として平面視においてほぼH字状に構成したベースフレーム10と旋回自在なキャスターからなる前輪20,20及び後輪21,21と、該後輪21,21を制動するためのブレーキ機構30と、該後輪21,21の旋回動作を制限する旋回ロック機構40と、これらブレーキ機構30及び旋回ロック機構40を作動するための操作手段50とから構成している。
【0011】
まず始めに、図2に基づいて前記ベースフレーム10の構成について説明する。
このベースフレーム10は、左右に離間したフレーム部材11,11を連結部材12,12で連結してなるもので、前記フレーム部材11,11の前後端部にはそれぞれ筒体13,13,・・・を固着している。この筒体13には、旋回自在なキャスターをそれぞれ軸着して前輪20,20及び後輪21,21としている。なお、本発明においては、この前輪20,20及び後輪21,21にはキャスター自体にブレーキ機構や旋回ロック機構が具備されていないものを使用している。
そして、前記後輪21,21の取付側となる前記フレーム部材11,11の後部下面側には、ブレーキ機構30及び旋回ロック機構40の取付部とするフレームプレート14,15を左右対称にそれぞれ固着している。そのため、以下の説明では一方側(図面において左側後輪に作用するもの)について説明する。
【0012】
このフレームプレート14には、後述する操作手段50の取付部として空孔部14aを穿設する一方、フレームプレート15には前記フレームプレート14,14の間に取り付ける操作手段50が接触しないように切欠き部15aを設けている。
さらに、前記フレームプレート14には、前記空孔部14aの前上方に位置するようにブレーキ機構30の取付孔14bを穿設し、該取付孔14bの後方に位置するように旋回ロック機構40の取付孔14cを穿設している。そして、前記空孔部14aを中心とする円弧状の第一ガイド孔14dと、前記取付孔14bを中心とする円弧状の第二ガイド孔14eからなるほぼ逆L字状に構成したガイド孔14fを設けている。詳述すると、前記第一ガイド孔14dは前記取付孔14bを通る直線に近似した前述の円弧または直線状として、第二ガイド孔14eは前記空孔部14aを通る直線に近似した前述の円弧または直線状として構成している。
また、フレームプレート14に対応するようにフレームプレート15にも、ブレーキ機構30の取付孔15bと、旋回ロック機構40の取付孔15cと、第一ガイド孔15d及び第二ガイド孔15eからなるガイド孔15fを設けている。
なお、図面においては、前記旋回ロック機構40の取付孔14c,15cは一方(図面においては左側後輪側)のフレームプレート14,15のみに穿設している。
【0013】
次に、ブレーキ機構30について説明する。このブレーキ機構30は、制動部材31を備えており、該制動部材31を上記後輪21の車輪部21aに接触させることで回転をロックするように構成したものである。なお、前記制動部材31は、左右の後輪21,21にそれぞれ作用するように左右のフレームプレート14,15にそれぞれ同様の構成で取り付けられるものであるが、ここでは一方の制動部材31について説明する。
この制動部材31は、前記後輪21の車輪部21aに接当するリング部材32を備えている。該リング部材32には支持プレート33を固着している。該支持プレート33の中間部には空孔部33aを穿設している。また、該空孔部33aの下方にはナット部材34を固着するとともに、ボルト部材35を螺着してブレーキ力の調整部としている。なお、15gは前記ボルト部材35を調節するために設けた切欠き窓である。
そして、上記取付孔14b,15bに該制動部材31及びカムオサエプレート36を取付軸37で支承するとともに、該制動部材31の下端側と上記フレーム部材11間にスプリング38を挟み込むように取り付けている。なお、前記リング部材32の中心は、ほぼ前記後輪21の取付軸21bの軸線に沿って上下に回動するように配置することにより、後輪21がどの方向に旋回した状態であってもほぼ均一なブレーキ力でブレーキがかかるようにしている。また、前記スプリング38は該リング部材32を後輪21の車輪部21aから離間する方向に付勢するように設けたものである。また、前記カムオサエプレート36の背部には、上記ボルト部材35の頭部が接当する状態としている。
【0014】
次に、上記操作手段50について説明する。
該操作手段50は操作ペダル51を備えている。該操作ペダル51は、クランク状に曲折したアーム部材52の一端部に踏動部材53を嵌着するとともに、他端部は連結パイプ54に固着し、該連結パイプ54の両端部にカムプレート55,55を固着したものである。このカムプレート55には前記連結パイプ54と同軸上に位置する状態で空孔部55a,55aを設け、該空孔部55a,55aに回動軸56を挿通して、上記フレームプレート14,14に設けた空孔部14a,14aに回動自在に軸承している。
なお、該カムプレート55には、前記空孔部55aの中心を基準として深い谷部55bと浅い谷部55cを連続させたカム輪郭となるように構成している。
【0015】
そして、上記フレームプレート14,15にそれぞれ設けたガイド孔14f,15fの間にカムローラー57を位置させ、取付軸58を挿通して前記ガイド孔14f,15fに沿って移動自在な状態となるように取り付けている。
このカムローラー57には上記カムオサエプレート36と上記カムプレート55のカム面が接触する小径部57aを設けけている。なお、この小径部57aは前記カムオサエプレート36等を左右にずれることなく一定の位置で案内するために設けたものであり、必ずしも必要ではなく、場合によっては同一の外径となるカムローラーとしたものであっても何ら問題はない。
【0016】
上記のように構成したブレーキ機構30は、前記操作手段50によって次のように作動する。
まず、図3に示すように操作ペダル51を中立位置にしたとき、カムローラー57を支承している取付軸58が第一ガイド孔14d,15dと第二ガイド孔14e,15eの交差部に位置するとともに、上記カムプレート55のカム面の深い谷部55bに位置している。この状態では、スプリング38の付勢力によって制動部材31のリング部材32が上方回動しており、後輪21の車輪部21aから離間した状態となっているので後輪21は転動自在であり、車体フレーム1は移動自在な状態である。このとき、上記カムオサエプレート36に設けた凹部36aが前記カムローラー36に接触するように前記スプリング38の付勢力が作用しているので前記カムローラー36が前記第一ガイド孔14d,15dに沿って移動しない状態となっている。
【0017】
この状態から、図4に示すように前記操作ペダル51を下方に踏み込むと、カムプレート55に設けたカム面は、前記カムローラー57が該操作ペダル51の回動中心から離間するように作用する。このとき、カムローラー57を支承している取付軸58は、第二ガイド孔14e,15eに沿って移動する。このカムローラー36の移動に伴い前記スプリング38の付勢力に抗して前記制動部材31のリング部材32側が下方回動され、後輪21の車輪部21aにリング部材32が押し付けられて、該車輪部21aの回転がロックされ、車体フレーム1が移動できないブレーキがかかった状態となる。
この状態から前記操作ペダル51を上方回動して前述の中立位置に戻すことでブレーキは解除され、車体フレーム1は移動自在な状態となる。
【0018】
さらに、前述の中立位置から図5に示すように操作ペダル51を上方回動すると、カムプレート55の深い谷部55bに位置するカムローラー57が第一ガイド孔14d,15dに沿って下方に移動する。このとき、第一ガイド孔14d,15dは操作ペダル51の回動軸心を中心とした円弧状とするとともに制動部材31の取付孔15bを通る直線上に位置するように設けているので、制動部材31はさほど上下動することなく、操作ペダル51が前述の中立位置にあるときの制動部材31の状態を維持している。
すなわち、制動部材31は操作ペダル51を中立位置から下方回動側に回動して前記カムローラー36を支承する取付軸58が第二ガイド孔14e,15eを移動する範囲内でのみ動作するように構成したものとなっている。
【0019】
次に、旋回ロック機構40について説明する。図2に示すように該旋回ロック機構40は旋回ロック部材41を備えている。該旋回ロック部材41は、上記後輪21のヨーク部21cを保持するための通孔部42aを有してなるほぼC字状の規制部材42に支持プレート43,43を止着して構成している。そして、この支持プレート43,43のほぼ中間部には空孔部43a,43aをそれぞれ穿設し、下端側には作動軸44を固着している。なお、前記規制部材42の通孔部42aは後方側に指向するように設けている。
このように構成した旋回ロック部材41は、上記フレームプレート14,15に設けた取付孔14c,15cに取付軸45を挿通して回動自在な状態となるように取り付けている。
さらに、前記支持プレート43,43間の規制部材42上には、ピン46を固着しており、該ピン46にスプリング47を通し、上記フレーム部材11と前記規制部材42間に位置させることで、前記規制部材42を後輪21のヨーク部21c側に下方回動するよう付勢している。
【0020】
一方、上記操作手段50には旋回ロックプレート59を設け、上記操作手段50の操作ペダル51を回動操作することによって前記旋回ロック部材41を作動できるように構成している。
詳述すると、前記旋回ロックプレート59は、上記回動軸56を挿通する空孔部59aを備えている。また、前記カムローラー57の一端部に設けた小径部57bが嵌るU字状のスライド孔59bと、前記作動軸44との接触部となる保持部59cとからなる。このように構成した旋回ロックプレート59を上記回動軸56に挿通し、上記カムプレート55に隣接する状態で前記スライド孔59b内にカムローラー57に設けた小径部57bを位置させている。
【0021】
上述のように構成した旋回ロック機構40は、次のように作動する。
図3に示すように操作ペダル51が中立の状態にあるとき、旋回ロックプレート59は図6に示すように上方回動した状態にあり、該旋回ロックプレート59の保持部59cがスプリング47に抗して旋回ロック部材41の規制部材42側を上方回動させており、後輪21は旋回自在な状態となっている。
この状態では、上述したブレーキ機構30もブレーキがかかっていない状態なので、後輪21は旋回自在かつ移動自在な状態となっており、車体フレーム1は前後左右及び任意の方向に移動自在な状態となっている。
【0022】
この状態から図4に示すように操作ペダル51を下方回動すると、上記カムローラー57は図7に示すように第二ガイド孔14e,15eに沿って移動する。この第二ガイド孔14e,15eは上述したように上記空孔部14a(回動軸56)を通る直線またはこれに近似した円弧状に構成しているので、前記旋回ロックプレート59は何れの方向にもほとんど回動することなく、スライド孔59bの内部をカムローラー57が移動するので、上述した操作ペダル51が中立の状態にあるときの旋回ロック部材41の状態とほぼ同様な状態で旋回ロック部材41を保持している。すなわち、図9に示すように、この状態ではブレーキのみがかかった状態となっている。
そして、この状態から操作ペダル51を上方回動して、該操作ペダル51を中立の状態にすると、旋回ロック部材41は上下回動することなくブレーキが解除されて、図1に示すように、車体フレーム1を移動自在な状態とすることができる。
【0023】
次に、図5に示すように前記操作ペダル51を中立位置から上方回動すると、カムローラー57は図8に示すように第一ガイド孔14d,15dに沿って下方に移動する。この第一ガイド孔14d,15dは、前記操作ペダル51の回動軸心を中心とする円弧状に設けたものなので、前記旋回ロックプレート59は前記カムローラー57とともに下方回動し、上記スプリング47の付勢力によって旋回ロック部材41の規制部材42が下方回動する。このとき、後輪21が何れかに旋回状態となっていた場合には、後輪21のヨーク部21cの水平部分に規制部材42が接触するので、前記保持部59cと作動軸44が離間した状態となり、該規制部材42にはスプリング47の下方回動側への付勢力をもった状態となっている。そして、この状態から車体フレーム1を前方移動することで、後輪21が前方移動状態に指向して、規制部材42に設けた通孔部42a内に前記ヨーク部21cが嵌り込み、旋回がロックされた状態となる。この状態になると、後輪21,21の一方の旋回が拘束された状態となるので、直進性が増すとともに方向転換にかかる操作力を軽減することができる状態となっている。なお、この状態では、図10に示すように上記ブレーキ機構30は解除された状態にある。
この状態から、前記操作ペダル51を前述の中立位置に復帰させると、前記旋回ロックプレート59が上方回動して、該旋回ロックプレート59の保持部59cが上記作動軸44に作用して前記旋回ロック部材41の規制部材42側を上方回動する。したがって、旋回ロック状態が解除されて、車体フレーム1は前後左右及び任意の方向に移動自在な状態となる。
【0024】
上述したように、本発明に係る車体フレーム1は、前後左右及び任意の方向に移動自在な状態から操作手段50の操作ペダル51を下方回動側に踏み込むことで、左右の後輪21,21に同時にブレーキをかけることができる。逆に、ブレーキをかけた状態から該操作ペダル51をはね上げると、ブレーキが解除されて移動自在な状態となる。さらに、この状態から該操作ペダル51をはね上げると、旋回ロック部材41によって後輪21の旋回が拘束され、任意の方向に移動自在な状態から後輪21の一方が直進方向に指向した状態で固定されるので、直進性が良くなるだけでなく方向転換する際にかかる操作力を軽減することができる。この状態から前記操作ペダル51を下方回動すると、前述の任意の方向に移動自在な状態に戻る。
このように、操作ペダル51の上下回動操作のみで、左右の後輪21,21に同時にブレーキをかけたり、少なくとも一方の後輪21を直進状態で保持することができるので、操作が非常に簡単である。
すなわち、本発明にかかる車体フレーム1は、小回りがきく状態から廊下や通路を移動したり、停車したりするのに適した状態とするために、前記操作ペダル51を中立位置から上方、あるいは下方回動操作するだけでよいので、操作が非常に簡単である。
また、車輪部21aの劣化によって、前後輪の交換が必要になっても、本実施例にかかる車体フレーム1に用いるキャスターには、個々にブレーキ機構や旋回ロック機構を具備しておく必要がないため、交換にかかる費用を安価なものとすることができるという効果もある。
【0025】
なお、図11は左右の後輪21,21にそれぞれ旋回ロック機構40,40を設けたものを示したものである。
これは、上述した旋回ロック機構40及び旋回ロックプレート59,59を左右対称となるように設けたものである。このように構成した車体フレーム1によれば、左右の後輪21,21を同時に直進状態として固定することができ、さらに直進性を向上することができる。
【0026】
このように構成したブレーキ機構30と旋回ロック機構40、及び操作手段50を備えた車体フレーム1は、この車体フレーム1の上方に座席部を設けて介助用車椅子として使用することに適している。
この一実施例として入浴介助に適した座席部60を設けた入浴介助用車椅子Kについて図12に基づいて説明する。
【0027】
前記座席部60は、座席フレーム61に座部マット62と背凭れマット63を止着して構成している。このように構成した座席部60と上記車体フレーム1との間にリクライニング機構64を配している。このリクライニング機構64は、車体フレーム1の連結部材12,12に固着したブラケットと、前記座席フレーム61を構成するフレームプレート61aに第一リンク部材65と第二リンク部材66を軸着している。そして、これらリンク部材65,66によって車体フレーム1に対して座席部60を段階的に傾倒した状態で保持できるようにするために、車体フレーム1に固着した規制ピン67を、上記座席フレーム61に回動自在に軸着した座部保持プレート68に設けた保持溝68aを掛止している。なお、この座部保持プレート68と解除レバー69はロッド(図示省略)で連結しており、解除レバー69の操作によって、前記規制ピン67と保持溝68aの掛止状態を解除操作できるように構成している。
また、70は車体フレーム1に設けたステップであり、71はテスリ、72は頭受である。
【0028】
上記のように構成した入浴介助用車椅子Kは、解除レバー69を操作することで前記規制ピン67と保持溝68aの掛止状態を解除して、徐々に座席部60をリクライニングさせると、図13に示す状態とすることができるものである。
このような入浴用車椅子Kにあっては、図12の状態で乗せ換えして、浴室まで移動し、洗体することができる。
また、スロープ入浴する際には、図13に示す状態とすることで、楽な姿勢で入浴できるだけでなく、少ない湯量でも十分入浴できるという効果がある。
このような用途に使用する車椅子Kにおける本発明にかかる車体フレーム1では、ベッドサイドへの移動時には、操作ペダル51を中立位置としておくことで、車椅子Kを横移動することができるのでベッドとの位置合わせが容易に行える。しかる後、廊下などの移動時には前記操作ペダル51を上方回動して後輪21を旋回ロック状態として移動することで直進性がよく、軽い操作力で方向転換できるという効果がある。
さらに、洗体する際には前記操作ペダル51を下方回動することで、左右の後輪21,21に同時にブレーキがかかるので安全である。
【0029】
なお、図面においては、上述した入浴介助用車椅子Kについて本発明に係る車体フレーム1を具備したものを示しているが、本発明における車体フレーム1は、入浴介助用車椅子Kに限定するものではなく、移動介助などを行う車椅子に用いても何ら問題はなく、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 車体フレーム
10 ベースフレーム
20 前輪
21 後輪
30 ブレーキ機構
31 制動部材
40 旋回ロック機構
41 旋回ロック部材
50 操作手段
51 操作ペダル
55 カムプレート
59 旋回ロック部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者の施設等で使用する車椅子に関し、特に施設内を移動したり入浴介助する際に使用する介助用車椅子における車体フレームのブレーキ及び方向規制機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から介護を必要とする高齢者等を移動するために開発された車椅子が多種ある。それらの多くが、後輪は前後方向に指向する状態で車体フレームに固定する一方、前輪には旋回自在なキャスターを軸着して構成している。また、前後輪をそれぞれを旋回自在なキャスターで構成したものもある。
【0003】
前者は直進性が良いだけでなく、方向転換する際に小さな操作力で良いという効果がある。しかしながら、前輪のみ旋回自在であるので小回りができず、横付けするような移動に適していないという問題があった。
一方、後者は小回りがきき、横付けするような移動を行うことに適している。しかしながら、四輪全てが旋回自在であるので、床面の傾斜や凹凸になじむように旋回してしまうので直進性が悪く、方向転換にも大きな操作力が必要となるという問題があった。
【0004】
そこで、後者の車体フレームの問題点を解消すべく、キャスター自体にブレーキ機構及び旋回ロック機構を設けたものがある。
しかしながら、上述した問題点は解消できたものとなっているが、個々のキャスターで旋回ロック機構またはブレーキ機構を操作しなければならず、使い勝手の良いものとは言い難いものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−276142号公報
【特許文献2】特開2005−34334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、直進性及び旋回性に優れた介助用車椅子の車体フレームを提供するとともに、この車体フレームに具備するブレーキ機構及び旋回ロック機構の操作が簡単なものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベースフレームの前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスターを取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレートには前記左右の後輪に作用するブレーキ機構と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段を具備してなる車体フレームにおいて、前記フレームプレートの後方下部に穿設した空孔部には前記操作手段をなす操作ペダルを、前記空孔部の前方上部に穿設した取付孔には前記ブレーキ機構をなす左右一対の制動部材を、前記取付孔の後方に穿設した取付孔には前記旋回ロック機構をなす旋回ロック部材を少なくとも一方の後輪に作用するようにそれぞれ上下回動自在に支承するとともに、前記制動部材とベースフレームとの間にスプリングを介在させて前記後輪の車輪部から制動部材のリング部材を離間する方向に付勢し、前記旋回ロック部材とベースフレームとの間にもスプリングを介在させて前記後輪のヨーク部に旋回ロック部材の規制部材が作用する方向に付勢する一方、前記フレームプレートには前記制動部材の取付孔を通る直線に近似する前記空孔部を中心とした円弧状の第一ガイド孔と、前記空孔部を通る直線に近似する前記取付孔を中心とした円弧状の第二ガイド孔とを連続して構成してなるほぼ逆L字状のガイド孔を設け、該ガイド孔に沿って移動自在となるように取付軸を挿通するとともに該取付軸にはカムローラーを支承し、前記制動部材に取り付けたカムオサエプレートが該制動部材に作用するスプリングの付勢力によって前記カムローラーを前記操作ペダルの両端に固着したカムプレートのカム面に接当させる一方、前記カムプレートに隣接する状態で旋回ロックプレートを回動自在に取り付けるとともに、該旋回ロックプレートに設けたスライド孔に沿って前記カムローラーが移動自在となるように取り付け、該旋回ロックプレートに設けた保持部が前記旋回ロック部材の下部に固着した作動軸を前記旋回ロック部材に作用するスプリングの付勢力に抗して保持するように構成することにより、前記操作ペダルを中立位置から下方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第二ガイド孔に沿って移動するので前記旋回ロックプレートはほとんど回動することなく前記制動部材のリング部材側だけが下方回動して後輪の車輪部に接触することで制動状態となり、前記操作ペダルを中立位置から上方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第一ガイド孔に沿って移動するので前記制動部材はほとんど回動することなく旋回ロックプレートだけが回動するのに伴って前記旋回ロック部材の規制部材側が下方回動して前記後輪のヨーク部に作用することで旋回ロック状態となるよう構成したことを特徴とするブレーキ機構と旋回ロック機構及びその操作手段を具備してなる車体フレームとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の介助用車椅子の車体フレームは、前後輪として旋回自在なキャスターを具備している。そして、操作手段となる操作ペダルを中立位置から踏み込むことでブレーキ機構を作動させて左右の後輪に同時にブレーキをかけることができる。逆に、操作ペダルを上方にはね上げることで左右の後輪の少なくとも一方の後輪に設けた旋回ロック機構が作動して後輪を前進する状態で旋回ロックすることができる。したがって、操作ペダルの操作だけで後輪のブレーキのロック及びロック解除と、後輪の旋回ロック及び旋回ロック解除ができるものとなっている。
このように、キャスターに個別に設けたブレーキ機構と旋回ロック機構を備えたものと比較して、個々の操作を必要としないので操作が非常に簡単である。また、これらの機構を備えたキャスターを使用していないので車輪の劣化に伴う交換も安価に行うことができるという効果もある。
さらに、この車体フレームは四輪全てを旋回自在な状態で使用すると、横方向への移動もできるので、例えばベッドサイドに車椅子を横付けするときなど便利である。また、狭い浴室などでは小回りがきくので使い勝手のよいものとなっている。
また、少なくとも一方の後輪を旋回ロック状態とすると、直進性が向上するとともに、方向転換する際の操作力を軽減することができるので、移動を楽に行うことができるという効果がある。
そして、左右両側の後輪には同時にブレーキをかけることができるので安全に使用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る車体フレームを示す全体斜視図
【図2】その車体フレームの構成を示す説明図
【図3】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(1)
【図4】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(2)
【図5】ブレーキ機構の作用を説明する要部断面図(3)
【図6】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(1)
【図7】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(2)
【図8】旋回ロック機構の作用を説明する要部断面図(3)
【図9】ブレーキ機構のロック状態を示す全体斜視図
【図10】旋回ロック機構のロック状態を示す全体斜視図
【図11】別の実施例を示す車体フレームの全体斜視図
【図12】本発明にかかる車体フレームを用いた車椅子を示す全体側面図
【図13】その作用を示す全体側面図
【実施例1】
【0010】
本発明における車体フレーム1の一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
この車体フレーム1は、図1に示すように主として平面視においてほぼH字状に構成したベースフレーム10と旋回自在なキャスターからなる前輪20,20及び後輪21,21と、該後輪21,21を制動するためのブレーキ機構30と、該後輪21,21の旋回動作を制限する旋回ロック機構40と、これらブレーキ機構30及び旋回ロック機構40を作動するための操作手段50とから構成している。
【0011】
まず始めに、図2に基づいて前記ベースフレーム10の構成について説明する。
このベースフレーム10は、左右に離間したフレーム部材11,11を連結部材12,12で連結してなるもので、前記フレーム部材11,11の前後端部にはそれぞれ筒体13,13,・・・を固着している。この筒体13には、旋回自在なキャスターをそれぞれ軸着して前輪20,20及び後輪21,21としている。なお、本発明においては、この前輪20,20及び後輪21,21にはキャスター自体にブレーキ機構や旋回ロック機構が具備されていないものを使用している。
そして、前記後輪21,21の取付側となる前記フレーム部材11,11の後部下面側には、ブレーキ機構30及び旋回ロック機構40の取付部とするフレームプレート14,15を左右対称にそれぞれ固着している。そのため、以下の説明では一方側(図面において左側後輪に作用するもの)について説明する。
【0012】
このフレームプレート14には、後述する操作手段50の取付部として空孔部14aを穿設する一方、フレームプレート15には前記フレームプレート14,14の間に取り付ける操作手段50が接触しないように切欠き部15aを設けている。
さらに、前記フレームプレート14には、前記空孔部14aの前上方に位置するようにブレーキ機構30の取付孔14bを穿設し、該取付孔14bの後方に位置するように旋回ロック機構40の取付孔14cを穿設している。そして、前記空孔部14aを中心とする円弧状の第一ガイド孔14dと、前記取付孔14bを中心とする円弧状の第二ガイド孔14eからなるほぼ逆L字状に構成したガイド孔14fを設けている。詳述すると、前記第一ガイド孔14dは前記取付孔14bを通る直線に近似した前述の円弧または直線状として、第二ガイド孔14eは前記空孔部14aを通る直線に近似した前述の円弧または直線状として構成している。
また、フレームプレート14に対応するようにフレームプレート15にも、ブレーキ機構30の取付孔15bと、旋回ロック機構40の取付孔15cと、第一ガイド孔15d及び第二ガイド孔15eからなるガイド孔15fを設けている。
なお、図面においては、前記旋回ロック機構40の取付孔14c,15cは一方(図面においては左側後輪側)のフレームプレート14,15のみに穿設している。
【0013】
次に、ブレーキ機構30について説明する。このブレーキ機構30は、制動部材31を備えており、該制動部材31を上記後輪21の車輪部21aに接触させることで回転をロックするように構成したものである。なお、前記制動部材31は、左右の後輪21,21にそれぞれ作用するように左右のフレームプレート14,15にそれぞれ同様の構成で取り付けられるものであるが、ここでは一方の制動部材31について説明する。
この制動部材31は、前記後輪21の車輪部21aに接当するリング部材32を備えている。該リング部材32には支持プレート33を固着している。該支持プレート33の中間部には空孔部33aを穿設している。また、該空孔部33aの下方にはナット部材34を固着するとともに、ボルト部材35を螺着してブレーキ力の調整部としている。なお、15gは前記ボルト部材35を調節するために設けた切欠き窓である。
そして、上記取付孔14b,15bに該制動部材31及びカムオサエプレート36を取付軸37で支承するとともに、該制動部材31の下端側と上記フレーム部材11間にスプリング38を挟み込むように取り付けている。なお、前記リング部材32の中心は、ほぼ前記後輪21の取付軸21bの軸線に沿って上下に回動するように配置することにより、後輪21がどの方向に旋回した状態であってもほぼ均一なブレーキ力でブレーキがかかるようにしている。また、前記スプリング38は該リング部材32を後輪21の車輪部21aから離間する方向に付勢するように設けたものである。また、前記カムオサエプレート36の背部には、上記ボルト部材35の頭部が接当する状態としている。
【0014】
次に、上記操作手段50について説明する。
該操作手段50は操作ペダル51を備えている。該操作ペダル51は、クランク状に曲折したアーム部材52の一端部に踏動部材53を嵌着するとともに、他端部は連結パイプ54に固着し、該連結パイプ54の両端部にカムプレート55,55を固着したものである。このカムプレート55には前記連結パイプ54と同軸上に位置する状態で空孔部55a,55aを設け、該空孔部55a,55aに回動軸56を挿通して、上記フレームプレート14,14に設けた空孔部14a,14aに回動自在に軸承している。
なお、該カムプレート55には、前記空孔部55aの中心を基準として深い谷部55bと浅い谷部55cを連続させたカム輪郭となるように構成している。
【0015】
そして、上記フレームプレート14,15にそれぞれ設けたガイド孔14f,15fの間にカムローラー57を位置させ、取付軸58を挿通して前記ガイド孔14f,15fに沿って移動自在な状態となるように取り付けている。
このカムローラー57には上記カムオサエプレート36と上記カムプレート55のカム面が接触する小径部57aを設けけている。なお、この小径部57aは前記カムオサエプレート36等を左右にずれることなく一定の位置で案内するために設けたものであり、必ずしも必要ではなく、場合によっては同一の外径となるカムローラーとしたものであっても何ら問題はない。
【0016】
上記のように構成したブレーキ機構30は、前記操作手段50によって次のように作動する。
まず、図3に示すように操作ペダル51を中立位置にしたとき、カムローラー57を支承している取付軸58が第一ガイド孔14d,15dと第二ガイド孔14e,15eの交差部に位置するとともに、上記カムプレート55のカム面の深い谷部55bに位置している。この状態では、スプリング38の付勢力によって制動部材31のリング部材32が上方回動しており、後輪21の車輪部21aから離間した状態となっているので後輪21は転動自在であり、車体フレーム1は移動自在な状態である。このとき、上記カムオサエプレート36に設けた凹部36aが前記カムローラー36に接触するように前記スプリング38の付勢力が作用しているので前記カムローラー36が前記第一ガイド孔14d,15dに沿って移動しない状態となっている。
【0017】
この状態から、図4に示すように前記操作ペダル51を下方に踏み込むと、カムプレート55に設けたカム面は、前記カムローラー57が該操作ペダル51の回動中心から離間するように作用する。このとき、カムローラー57を支承している取付軸58は、第二ガイド孔14e,15eに沿って移動する。このカムローラー36の移動に伴い前記スプリング38の付勢力に抗して前記制動部材31のリング部材32側が下方回動され、後輪21の車輪部21aにリング部材32が押し付けられて、該車輪部21aの回転がロックされ、車体フレーム1が移動できないブレーキがかかった状態となる。
この状態から前記操作ペダル51を上方回動して前述の中立位置に戻すことでブレーキは解除され、車体フレーム1は移動自在な状態となる。
【0018】
さらに、前述の中立位置から図5に示すように操作ペダル51を上方回動すると、カムプレート55の深い谷部55bに位置するカムローラー57が第一ガイド孔14d,15dに沿って下方に移動する。このとき、第一ガイド孔14d,15dは操作ペダル51の回動軸心を中心とした円弧状とするとともに制動部材31の取付孔15bを通る直線上に位置するように設けているので、制動部材31はさほど上下動することなく、操作ペダル51が前述の中立位置にあるときの制動部材31の状態を維持している。
すなわち、制動部材31は操作ペダル51を中立位置から下方回動側に回動して前記カムローラー36を支承する取付軸58が第二ガイド孔14e,15eを移動する範囲内でのみ動作するように構成したものとなっている。
【0019】
次に、旋回ロック機構40について説明する。図2に示すように該旋回ロック機構40は旋回ロック部材41を備えている。該旋回ロック部材41は、上記後輪21のヨーク部21cを保持するための通孔部42aを有してなるほぼC字状の規制部材42に支持プレート43,43を止着して構成している。そして、この支持プレート43,43のほぼ中間部には空孔部43a,43aをそれぞれ穿設し、下端側には作動軸44を固着している。なお、前記規制部材42の通孔部42aは後方側に指向するように設けている。
このように構成した旋回ロック部材41は、上記フレームプレート14,15に設けた取付孔14c,15cに取付軸45を挿通して回動自在な状態となるように取り付けている。
さらに、前記支持プレート43,43間の規制部材42上には、ピン46を固着しており、該ピン46にスプリング47を通し、上記フレーム部材11と前記規制部材42間に位置させることで、前記規制部材42を後輪21のヨーク部21c側に下方回動するよう付勢している。
【0020】
一方、上記操作手段50には旋回ロックプレート59を設け、上記操作手段50の操作ペダル51を回動操作することによって前記旋回ロック部材41を作動できるように構成している。
詳述すると、前記旋回ロックプレート59は、上記回動軸56を挿通する空孔部59aを備えている。また、前記カムローラー57の一端部に設けた小径部57bが嵌るU字状のスライド孔59bと、前記作動軸44との接触部となる保持部59cとからなる。このように構成した旋回ロックプレート59を上記回動軸56に挿通し、上記カムプレート55に隣接する状態で前記スライド孔59b内にカムローラー57に設けた小径部57bを位置させている。
【0021】
上述のように構成した旋回ロック機構40は、次のように作動する。
図3に示すように操作ペダル51が中立の状態にあるとき、旋回ロックプレート59は図6に示すように上方回動した状態にあり、該旋回ロックプレート59の保持部59cがスプリング47に抗して旋回ロック部材41の規制部材42側を上方回動させており、後輪21は旋回自在な状態となっている。
この状態では、上述したブレーキ機構30もブレーキがかかっていない状態なので、後輪21は旋回自在かつ移動自在な状態となっており、車体フレーム1は前後左右及び任意の方向に移動自在な状態となっている。
【0022】
この状態から図4に示すように操作ペダル51を下方回動すると、上記カムローラー57は図7に示すように第二ガイド孔14e,15eに沿って移動する。この第二ガイド孔14e,15eは上述したように上記空孔部14a(回動軸56)を通る直線またはこれに近似した円弧状に構成しているので、前記旋回ロックプレート59は何れの方向にもほとんど回動することなく、スライド孔59bの内部をカムローラー57が移動するので、上述した操作ペダル51が中立の状態にあるときの旋回ロック部材41の状態とほぼ同様な状態で旋回ロック部材41を保持している。すなわち、図9に示すように、この状態ではブレーキのみがかかった状態となっている。
そして、この状態から操作ペダル51を上方回動して、該操作ペダル51を中立の状態にすると、旋回ロック部材41は上下回動することなくブレーキが解除されて、図1に示すように、車体フレーム1を移動自在な状態とすることができる。
【0023】
次に、図5に示すように前記操作ペダル51を中立位置から上方回動すると、カムローラー57は図8に示すように第一ガイド孔14d,15dに沿って下方に移動する。この第一ガイド孔14d,15dは、前記操作ペダル51の回動軸心を中心とする円弧状に設けたものなので、前記旋回ロックプレート59は前記カムローラー57とともに下方回動し、上記スプリング47の付勢力によって旋回ロック部材41の規制部材42が下方回動する。このとき、後輪21が何れかに旋回状態となっていた場合には、後輪21のヨーク部21cの水平部分に規制部材42が接触するので、前記保持部59cと作動軸44が離間した状態となり、該規制部材42にはスプリング47の下方回動側への付勢力をもった状態となっている。そして、この状態から車体フレーム1を前方移動することで、後輪21が前方移動状態に指向して、規制部材42に設けた通孔部42a内に前記ヨーク部21cが嵌り込み、旋回がロックされた状態となる。この状態になると、後輪21,21の一方の旋回が拘束された状態となるので、直進性が増すとともに方向転換にかかる操作力を軽減することができる状態となっている。なお、この状態では、図10に示すように上記ブレーキ機構30は解除された状態にある。
この状態から、前記操作ペダル51を前述の中立位置に復帰させると、前記旋回ロックプレート59が上方回動して、該旋回ロックプレート59の保持部59cが上記作動軸44に作用して前記旋回ロック部材41の規制部材42側を上方回動する。したがって、旋回ロック状態が解除されて、車体フレーム1は前後左右及び任意の方向に移動自在な状態となる。
【0024】
上述したように、本発明に係る車体フレーム1は、前後左右及び任意の方向に移動自在な状態から操作手段50の操作ペダル51を下方回動側に踏み込むことで、左右の後輪21,21に同時にブレーキをかけることができる。逆に、ブレーキをかけた状態から該操作ペダル51をはね上げると、ブレーキが解除されて移動自在な状態となる。さらに、この状態から該操作ペダル51をはね上げると、旋回ロック部材41によって後輪21の旋回が拘束され、任意の方向に移動自在な状態から後輪21の一方が直進方向に指向した状態で固定されるので、直進性が良くなるだけでなく方向転換する際にかかる操作力を軽減することができる。この状態から前記操作ペダル51を下方回動すると、前述の任意の方向に移動自在な状態に戻る。
このように、操作ペダル51の上下回動操作のみで、左右の後輪21,21に同時にブレーキをかけたり、少なくとも一方の後輪21を直進状態で保持することができるので、操作が非常に簡単である。
すなわち、本発明にかかる車体フレーム1は、小回りがきく状態から廊下や通路を移動したり、停車したりするのに適した状態とするために、前記操作ペダル51を中立位置から上方、あるいは下方回動操作するだけでよいので、操作が非常に簡単である。
また、車輪部21aの劣化によって、前後輪の交換が必要になっても、本実施例にかかる車体フレーム1に用いるキャスターには、個々にブレーキ機構や旋回ロック機構を具備しておく必要がないため、交換にかかる費用を安価なものとすることができるという効果もある。
【0025】
なお、図11は左右の後輪21,21にそれぞれ旋回ロック機構40,40を設けたものを示したものである。
これは、上述した旋回ロック機構40及び旋回ロックプレート59,59を左右対称となるように設けたものである。このように構成した車体フレーム1によれば、左右の後輪21,21を同時に直進状態として固定することができ、さらに直進性を向上することができる。
【0026】
このように構成したブレーキ機構30と旋回ロック機構40、及び操作手段50を備えた車体フレーム1は、この車体フレーム1の上方に座席部を設けて介助用車椅子として使用することに適している。
この一実施例として入浴介助に適した座席部60を設けた入浴介助用車椅子Kについて図12に基づいて説明する。
【0027】
前記座席部60は、座席フレーム61に座部マット62と背凭れマット63を止着して構成している。このように構成した座席部60と上記車体フレーム1との間にリクライニング機構64を配している。このリクライニング機構64は、車体フレーム1の連結部材12,12に固着したブラケットと、前記座席フレーム61を構成するフレームプレート61aに第一リンク部材65と第二リンク部材66を軸着している。そして、これらリンク部材65,66によって車体フレーム1に対して座席部60を段階的に傾倒した状態で保持できるようにするために、車体フレーム1に固着した規制ピン67を、上記座席フレーム61に回動自在に軸着した座部保持プレート68に設けた保持溝68aを掛止している。なお、この座部保持プレート68と解除レバー69はロッド(図示省略)で連結しており、解除レバー69の操作によって、前記規制ピン67と保持溝68aの掛止状態を解除操作できるように構成している。
また、70は車体フレーム1に設けたステップであり、71はテスリ、72は頭受である。
【0028】
上記のように構成した入浴介助用車椅子Kは、解除レバー69を操作することで前記規制ピン67と保持溝68aの掛止状態を解除して、徐々に座席部60をリクライニングさせると、図13に示す状態とすることができるものである。
このような入浴用車椅子Kにあっては、図12の状態で乗せ換えして、浴室まで移動し、洗体することができる。
また、スロープ入浴する際には、図13に示す状態とすることで、楽な姿勢で入浴できるだけでなく、少ない湯量でも十分入浴できるという効果がある。
このような用途に使用する車椅子Kにおける本発明にかかる車体フレーム1では、ベッドサイドへの移動時には、操作ペダル51を中立位置としておくことで、車椅子Kを横移動することができるのでベッドとの位置合わせが容易に行える。しかる後、廊下などの移動時には前記操作ペダル51を上方回動して後輪21を旋回ロック状態として移動することで直進性がよく、軽い操作力で方向転換できるという効果がある。
さらに、洗体する際には前記操作ペダル51を下方回動することで、左右の後輪21,21に同時にブレーキがかかるので安全である。
【0029】
なお、図面においては、上述した入浴介助用車椅子Kについて本発明に係る車体フレーム1を具備したものを示しているが、本発明における車体フレーム1は、入浴介助用車椅子Kに限定するものではなく、移動介助などを行う車椅子に用いても何ら問題はなく、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 車体フレーム
10 ベースフレーム
20 前輪
21 後輪
30 ブレーキ機構
31 制動部材
40 旋回ロック機構
41 旋回ロック部材
50 操作手段
51 操作ペダル
55 カムプレート
59 旋回ロック部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームの前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスターを取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレートには前記左右の後輪に作用するブレーキ機構と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段を具備してなる車体フレームにおいて、前記フレームプレートの後方下部に穿設した空孔部には前記操作手段をなす操作ペダルを、前記空孔部の前方上部に穿設した取付孔には前記ブレーキ機構をなす左右一対の制動部材を、前記取付孔の後方に穿設した取付孔には前記旋回ロック機構をなす旋回ロック部材を少なくとも一方の後輪に作用するようにそれぞれ上下回動自在に支承するとともに、前記制動部材とベースフレームとの間にスプリングを介在させて前記後輪の車輪部から制動部材のリング部材を離間する方向に付勢し、前記旋回ロック部材とベースフレームとの間にもスプリングを介在させて前記後輪のヨーク部に旋回ロック部材の規制部材が作用する方向に付勢する一方、前記フレームプレートには前記制動部材の取付孔を通る直線に近似する前記空孔部を中心とした円弧状の第一ガイド孔と、前記空孔部を通る直線に近似する前記取付孔を中心とした円弧状の第二ガイド孔とを連続して構成してなるほぼ逆L字状のガイド孔を設け、該ガイド孔に沿って移動自在となるように取付軸を挿通するとともに該取付軸にはカムローラーを支承し、前記制動部材に取り付けたカムオサエプレートが該制動部材に作用するスプリングの付勢力によって前記カムローラーを前記操作ペダルの両端に固着したカムプレートのカム面に接当させる一方、前記カムプレートに隣接する状態で旋回ロックプレートを回動自在に取り付けるとともに、該旋回ロックプレートに設けたスライド孔に沿って前記カムローラーが移動自在となるように取り付け、該旋回ロックプレートに設けた保持部が前記旋回ロック部材の下部に固着した作動軸を前記旋回ロック部材に作用するスプリングの付勢力に抗して保持するように構成することにより、前記操作ペダルを中立位置から下方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第二ガイド孔に沿って移動するので前記旋回ロックプレートはほとんど回動することなく前記制動部材のリング部材側だけが下方回動して後輪の車輪部に接触することで制動状態となり、前記操作ペダルを中立位置から上方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第一ガイド孔に沿って移動するので前記制動部材はほとんど回動することなく旋回ロックプレートだけが回動するのに伴って前記旋回ロック部材の規制部材側が下方回動して前記後輪のヨーク部に作用することで旋回ロック状態となるよう構成したことを特徴とするブレーキ機構と旋回ロック機構及びその操作手段を具備してなる車体フレーム。
【請求項1】
ベースフレームの前後左右にそれぞれ旋回自在なキャスターを取り付けて前後輪とするとともに、該ベースフレームに固着したフレームプレートには前記左右の後輪に作用するブレーキ機構と、少なくとも一方の後輪に作用する旋回ロック機構と、これらブレーキ機構及び旋回ロック機構を作動するための操作手段を具備してなる車体フレームにおいて、前記フレームプレートの後方下部に穿設した空孔部には前記操作手段をなす操作ペダルを、前記空孔部の前方上部に穿設した取付孔には前記ブレーキ機構をなす左右一対の制動部材を、前記取付孔の後方に穿設した取付孔には前記旋回ロック機構をなす旋回ロック部材を少なくとも一方の後輪に作用するようにそれぞれ上下回動自在に支承するとともに、前記制動部材とベースフレームとの間にスプリングを介在させて前記後輪の車輪部から制動部材のリング部材を離間する方向に付勢し、前記旋回ロック部材とベースフレームとの間にもスプリングを介在させて前記後輪のヨーク部に旋回ロック部材の規制部材が作用する方向に付勢する一方、前記フレームプレートには前記制動部材の取付孔を通る直線に近似する前記空孔部を中心とした円弧状の第一ガイド孔と、前記空孔部を通る直線に近似する前記取付孔を中心とした円弧状の第二ガイド孔とを連続して構成してなるほぼ逆L字状のガイド孔を設け、該ガイド孔に沿って移動自在となるように取付軸を挿通するとともに該取付軸にはカムローラーを支承し、前記制動部材に取り付けたカムオサエプレートが該制動部材に作用するスプリングの付勢力によって前記カムローラーを前記操作ペダルの両端に固着したカムプレートのカム面に接当させる一方、前記カムプレートに隣接する状態で旋回ロックプレートを回動自在に取り付けるとともに、該旋回ロックプレートに設けたスライド孔に沿って前記カムローラーが移動自在となるように取り付け、該旋回ロックプレートに設けた保持部が前記旋回ロック部材の下部に固着した作動軸を前記旋回ロック部材に作用するスプリングの付勢力に抗して保持するように構成することにより、前記操作ペダルを中立位置から下方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第二ガイド孔に沿って移動するので前記旋回ロックプレートはほとんど回動することなく前記制動部材のリング部材側だけが下方回動して後輪の車輪部に接触することで制動状態となり、前記操作ペダルを中立位置から上方回動したときには前記カム面の作用によってカムローラーが第一ガイド孔に沿って移動するので前記制動部材はほとんど回動することなく旋回ロックプレートだけが回動するのに伴って前記旋回ロック部材の規制部材側が下方回動して前記後輪のヨーク部に作用することで旋回ロック状態となるよう構成したことを特徴とするブレーキ機構と旋回ロック機構及びその操作手段を具備してなる車体フレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−197059(P2012−197059A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63927(P2011−63927)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(394006129)株式会社いうら (63)
【Fターム(参考)】
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