説明

介護浴槽

【課題】高齢者や身障者が安全で楽に浴槽に出入りすることができ、また、使用上において、操作が簡単な介護浴槽を提供する。
【解決手段】浴槽正面の壁に出入り用の開口部3を設けて、跨ぐべき浴槽壁2の高さを低くして、無理な姿勢をとらずに安全で楽に入退槽ができるようにする。出入り用の開口部を塞ぐ扉4は、開閉のための無駄なスペースを必要とすることがなく、且つ、横から不意の力が加わっても外れることのない、上下スライド式で脱着できる扉とする。この開口部における止水装置は、開口部の縁と扉を、弾性止水材を介して密着させるが、その操作は、扉を開口部の縁に沿ってスライドして下ろし、この下ろし終わった時点で扉の下部は自動的に弾性止水材7に圧密着させ、次に、扉の上部を水平方向に弾性止水材に押し付けるだけで、圧密着した状態に固定させるという簡単なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や被介護者も、安全で楽に浴槽の壁部を跨いで出入りする事ができるとともに、介護者にとっても作業程度が軽くなり、また、開口部に設置する扉は開閉のための余計なスペースを必要とせず、使用上安全で、且つ、簡単な操作で防水性能を発揮できる介護浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や被介護者にとって入浴は楽しみであるが、浴槽はお湯を貯める必要から壁部が必須の構成になっており、この壁部があるために、高齢者や被介護者が安全に無理なく入浴することを困難にしている。浅くて大きな仰臥状態で浸かる浴槽は跨ぐのは楽であるが、この姿勢を力の弱った高齢者や被介護者が浴槽の中でとるのは困難であり危険であるとともに、この大型浴槽を設置する余裕のある浴室を持つ住宅は少ない。また、浴槽に内外開きのドアの付いたものや、下から迫り上がる扉を持った浴槽もあるが、扉を開けるスペースを必要としたり、装置が大掛かりになったりする。このような状況から、現状では高い浴槽壁を跨ぐために、腰掛台を浴槽の内や外に置いて踏み台として使用しており、大変危険な状態にある。
【0003】
開き戸や引き戸等、色々な仕組みの扉はあるが、何れの場合も液漏れ止水の方法は、弾性止水材を介して、開口部の縁と扉を密着させて液漏れを止めている。そして密着させる器具装置はというと、動力を使った大仰な装置や水圧に期待したもので、装置も操作も簡単で、防水性能を発揮するものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−056138
【特許文献2】特開2009−000330
【特許文献3】特開2008−207013
【特許文献4】特開2008−086579
【特許文献5】特開2002−336325
【特許文献6】特開2002−085508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浅くて壁の低い大型浴槽は、浴槽壁を跨ぐのは楽になるが、浴室に余裕のある広さが必要となり、また、この浴槽は仰臥に近い姿勢をとるので体力のない高齢者や被介護者には難儀で危険を伴う。他に、内外開きのドアをもつ浴槽や、扉が浴槽底部より壁に沿って迫りあがる方式のもの等があるが、これらの浴槽は、ドアの開閉スペースが必要・ドアに水圧がかかっている時の開閉が困難・装置が大仰になる等の欠点を有している。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、高齢者や被介護者が安全で負担の少ない入浴動作・姿勢がとれて、また、扉の水密性において、装置と操作が単純・簡単で、容易にその機能を確保しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底部から4面の壁部が起立してなる浴槽本体で、その正面の壁部に、出入り用の開口部を設け、この開口部縁周りに弾性止水材を取付け、ここに上下スライド式で脱着できる扉を設置して、開口部を水密に閉塞するが、扉が上から押し込まれたとき、垂直力を方向転換させて、扉の下部を水平方向に動かし、弾性止水材に圧密着させる働きをする器具を、扉の左右下部に有する介護浴槽である。
【0008】
さらに本発明は、扉の上部を水平方向に押して、弾性止水材に圧密着した状態でロックする働きをする器具を、出入り用開口縁の左右上部と、この出入り用開口部を液密に閉塞する上下スライド式で脱着できる扉の、左右両端の上部に有してなる介護浴槽である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)浴槽本体の壁部に出入り用の開口部を設けたので、その部分は壁の高さが低 くなり楽で安全に跨ぐことが出来る。
(2)出入り用の開口部は、脱着できる上下スライド式扉で構成したので、ドア式 の扉と異なって開閉のためのスペースが不要となり、入浴する人も円滑に入 退槽することができ、また浴室を広く使える。
(3)上下スライド式扉は、上部からの挿し込み式で、壁部の出入り用の開口部の

り、上下にスライドする仕組みになっている。この上下スライド式扉は上部 に完全に抜き取られるまで横から力が加わっても外れることがない構造にな っているので不測の力が加わった場合も安全である。
(4)扉を上から挿し込めば、自動的に扉の下部が弾性止水材に圧密着し、次に、 扉の上部を水平方向に押すと扉の上部も弾性止水材に圧密着するようにした ので、簡単な操作で開口部の水密性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の介護浴槽の平面図。
【図2】本発明の介護浴槽の正面図。
【図3】本発明の介護浴槽の側面図。
【図4】本発明の介護浴槽の裏側より見た斜視図。
【図5】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉の正面詳細図。
【図6】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉の詳細斜視図。
【図7】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉のa−a’断面詳細図。
【図8】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉のb−b’断面詳細図。
【図9】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉のc−c’断面詳細図。
【図10】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉のd−d’断面詳細図。
【図11】本発明の介護浴槽の出入り用開口部と上下スライド式扉のe−e’断面詳細図。
【図12】本発明の介護浴槽における上下スライド式扉のキャッチ器具のf−f’断面詳細図。
【図13】本発明の介護浴槽における上下スライド式扉の力方向転換器具のf−f’断面詳細図。
【図14】本発明の介護浴槽の上下スライド式扉の作動図(扉を降ろしつつある状態)。
【図15】本発明の介護浴槽の上下スライド式扉の作動図(扉を上から押し付けた状態)。
【図16】本発明の介護浴槽の上下スライド式扉の作動図(扉上部を弾性止水材に押し付けた状態)。
【実施例】
【0011】
以下、本発明について図1〜16に示す実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1から図4に示すように、本発明の実施の形態に係る介護浴槽は、浴槽本体1の壁部2に出入り用の開口部3を設け、ここに上下スライド式の扉4を設置することによって跨ぎ易くする。また、上下スライド式の扉4は上部から挿し込み,脱着できるスライド式の扉として、扉の開閉のためのスペースを不要とする。
【0013】
図4〜図9に示すように、出入り用の開口部3と上下スライド式扉4との納まりは、出入り用の開口部3の左右両縁に凹型の溝2aを設け、一方、上下スライド式扉4の

【0014】
図6に示すように、出入り用の開口部3の縁の底部には、開口部両縁の凹型溝2aの外側が続いた状態で、浴槽外部側に立ち上がりの突起2bを設け、この立ち上がり突起2bの内面2b1と凹型の溝2aの外側の内面2a1にU字型に一連となった弾性止水材5を設置して、これに上下スライド式扉4を圧密着させて水密性を確保する。
【0015】
図12〜図16が示すように、上下スライド式扉4の作動は、上下スライド式扉4

余裕を持たせる。上下スライド式扉4を弾性止水材5へ圧密着させる手順は、先ず、

の下部に設置された、力方向転換器具7の作動によって、上下スライド式扉4の下部が弾性止水材5の方に水平移動させられて、弾性止水材5に密着する。次に、上下ス

られた突起棒器具8が、開口部の左右縁の凹型の溝2a上部に設けられた突起棒キャッチ器具9に嵌まり、上下スライド式扉4の上部は、弾性止水材5に圧密着した状態で固定される。
【0016】
図12から図16に示すように、力方向転換器具7は、上からの縦方向の力を水平方向の力にかえる仕組みを持っており、その作動は、上下スライド式扉4が完全挿入される直前の所定の作用ストロークの間に、力方向転換器具7の回転扇の下部突起7aが、凹型の溝2aの下部に当り、当った回転扇の下部突起7aが上下スライド式扉4

凹型の溝2aの内側の内面2a2(弾性止水材の付いているのとは反対側)を押すことによって、上下スライド式扉4の下部を弾性止水材5の方へ動かし圧密着させる。
【0017】
図12〜図16が示すように、上下スライド式扉4を真っ直ぐに上から差し込むと

具9上部の突起棒誘導部9bを滑りながら落下し、扉4を弾性止水材から離した状態で、突起棒受け部9cの上で挿入止まりとなる。次に、扉4の上部に水平方向の力を加えて、弾性止水材5に押し付けると、突起棒器具8が突起棒キャッチ器具9のキャッチ穴9aに嵌まり、扉4の上部を弾性止水材5に押し付けた状態でロックされる。解除はロックするのとは反対方向の水平力を、扉4の上部に加えれば、突起棒器具8が突起棒キャッチ穴9aからはずれ、ロック状態が解ける。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、一般家庭において、浴室を広く改修することなく、現状のサイズで高齢者や被介護者が同居家族とともに、安全で楽に共用使用できる介護浴槽である。
【符号の説明】
【0019】
1、 浴槽本体
2、 浴槽壁
2a、 凹型の溝
2a1、 凹型の溝の外側の内面
2a2、 凹型の溝の内側の内面
2b、 立ち上がり突起
2b1、 立ち上がり突起の内面
3、 出入り用の開口部
4、 上下スライド式扉

5、 弾性止水材

7、 力方向転換器具
7a、 回転扇の下部突起
7b、 回転扇の上部突起
8、 突起棒器具
9、 突起棒キャッチ器具
9a、 突起棒キャッチ穴
9b、 突起棒誘導部
9c、 突起棒受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部から4面の壁部が起立してなる浴槽本体で、その正面の壁部に、出入り用の開口部を設け、この開口部縁周りに弾性止水材を取付け、ここに上下スライド式で脱着できる扉を設置して、開口部を水密に閉塞するが、扉が上から押し込まれたとき、垂直力を方向転換させて、扉の下部を水平方向に動かし、弾性止水材に圧密着させる働きをする器具を、扉の左右下部に有する介護浴槽。
【請求項2】
前記扉の上部を水平方向に押して、弾性止水材に圧密着した状態でロックする働きをする器具を、この扉の左右両端の上部と、出入り用開口縁の左右上部に有してなる、請求項1に記載の介護浴槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−135599(P2012−135599A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53532(P2011−53532)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【特許番号】特許第4883461号(P4883461)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(510339500)木戸商会株式会社 (1)
【Fターム(参考)】