説明

介護用シート

【課題】 安価に製造でき、使い捨てが可能な消臭効果を備える介護用シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 液透過性の表面シート11と、液吸収性の吸収体12と、液不透過性の裏面シート13と、を積層させた介護用シート10であって、前記表面シートは、水分を含む茶葉を破砕して得られた茶葉ペーストを担持させた。液透過性のシート素材としては、合成繊維もしくは天然繊維からなる織布もしくは不織布、又は合成樹脂をシート化して開孔した開孔フィルム等が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は介護用寝具である介護用シートに関し、特に、消臭機能を有する介護用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
介護を必要とする老人や傷病人用の敷布は、特に清潔であることが求められるが、失禁や傷口からの体液等の排出物により汚染されることが多い。このため、使い捨て可能な介護用シートや、抗菌または消臭等の機能を備える介護用シートが提案されている(例えば、特許文献1,2)。また、これらの排泄物の臭いが敷布に染み込まないように消臭能を有しているものも提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された介護用シートは、銀等の抗菌および消臭作用を備える物質を担持させた繊維で作られた2枚の抗菌・消臭布の間に、ゼオライトのような遠赤外線放射物質を挟んで構成されている。この介護用シートは、要介護者の身体と接する布に抗菌および消臭作用を付与することで、介護用シートに要介護者の尿等が付着することによる悪臭の発生や細菌の増殖を抑制し、また、2枚の抗菌・消臭布に挟まれたゼオライトのような充填物により介護用シートの乾燥を促進できる。
【0004】
また、特許文献2に開示された介護用シーツは、抗菌性を有する熱可塑繊維と防水層とが積層されてなる複合シートであり、熱可塑繊維が吸水加工されている。この熱可塑繊維が体液等の排泄物を吸収するため、シーツや布団の長時間の使用による蒸れを防止している。また、熱可塑繊維が抗菌性も有しているため、敷布や布団に発生する細菌の繁殖を防止することが可能となる。また、排泄物による細菌の繁殖も防止することができる。
【特許文献1】特開2004−135712号公報
【特許文献2】特開平9−187482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の介護用シートは、抗菌・消臭作用を付与した2枚の布でゼオライト等の充填物を挟むため製造コストが高くなる。また、上記介護用シートは洗濯して繰り返し使用されるが、衛生面からは使い捨てできることが好ましい。さらに、特許文献2に記載の介護用シーツは、抗菌性は有しているものの、対象者の排泄物の臭いや、加齢臭等、対象者や介助者にとって不快な臭いを消臭することはできない。そこで本発明は安価に製造でき、使い捨てが可能な消臭効果を備える介護用シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面シートと、吸収体と、水分を透過しない裏面シートと、を積層させた介護用シートであって、表面シートに茶葉ペーストを担持させたことを特徴とする。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) 液透過性の表面シートと、液吸収性の吸収体と、液不透過性の裏面シートと、を積層させた介護用シートであって、前記表面シートは、水分を含む茶葉を破砕して得られた茶葉ペーストを含浸させ乾燥させて得られたものである介護用シート。
【0008】
(2) 前記吸収体及び前記裏面シートの少なくともどちらか一方は、前記茶葉ペーストを含浸させ乾燥させて得られたものである(1)に記載の介護用シート。
【0009】
(3) 前記表面シートは、不織布である(1)又は(2)に記載の介護用シート。
【0010】
表面シートは、尿や汗等の液体を透過させる液透過性を有するシート材で構成する。液透過性のシート材の具体例としては、合成繊維もしくは天然繊維からなる織布もしくは不織布、または合成樹脂をシート化して開孔した開孔フィルム等が挙げられる。天然コットンやレーヨン等の天然繊維(半合成繊維を含む)、およびポリプロピレン等の合成繊維を混合した繊維で構成されたスパンレース不織布、レジンボンド不織布等の不織布は肌触りが良く、液透過性のシート材として特に好適に使用できる。
【0011】
裏面シートは、液体を透過させない液不透過性を有する防水シート材で構成することが好ましい。裏面シートを防水シート材で構成することにより、表面シート表面から介護用シート内部に吸収保持された尿等の排泄物が介護用シートから漏れ出してベッド等を汚すことを防止できる。
【0012】
防水シート材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびナイロン等の樹脂をシート化したフィルムが挙げられる。また、第2シートは、不織布等の液透過性のシート材の片側表面をポリエチレン等の樹脂でコーティングして構成してもよい。
【0013】
茶葉ペーストとは、水分を含んだ状態の茶葉を破砕したペースト状のものをいい、カテキン等の茶葉由来の消臭・抗菌成分を含む。茶葉ペーストは、固形物濃度が5〜12重量%、特に7〜10重量%の範囲とすることが好ましい。
【0014】
茶葉ペーストに用いる茶葉としては、特に限定されず緑茶のような不発酵茶の茶葉のみならず、紅茶等の発酵茶の茶葉を用いることもできる。茶葉はあらかじめ水等に浸漬して軟化させた後に破砕することが好ましく、茶飲料を抽出した残渣である茶滓を好適に使用できる。茶滓は茶飲料等を抽出した状態のものをそのまま破砕してもよく、液体を添加して含水率を88〜95重量%程度にしてから破砕してもよい。茶滓に添加する液体としては、pHが5.5以下の液体を用いてもよく、例えばpH3〜4.5程度の炭酸水等の酸性の液体を用いてもよい。
【0015】
表面シートに茶葉ペーストを担持させる方法として、表面シートに茶葉ペースト塗布して、所定の温度で乾燥させる方法が挙げられる。茶葉ペーストを塗布する方法として、具体的には、スプレーや刷毛等で茶葉ペーストを表面シートに塗布する方法や、茶葉ペーストが入った容器中に浸漬させる方法や、印刷する方法等が挙げられる。茶葉ペーストを含浸させた後、表面シートは自然乾燥させてもよく、乾燥機等を用いて乾燥させてもよい。
【0016】
吸収体としては、パルプ、高吸水性樹脂、および繊維等を用いることができる。吸収体の形状は特に限定されず、シート状、綿状、粉または粒状で表面シートと裏面シートの間に敷設すればよい。シート状または綿状の吸収体は、吸収体の偏在を防止でき好ましい。吸収体の具体例としては、天然コットンまたは合成繊維製の綿、高吸水性樹脂のシートまたは粉体、パルプをシート化した吸水紙、粉砕パルプ、および不織布、並びにこれらを複合したものが挙げられる。厚さ1〜5mm程度の綿は、介護用シートにクッション性を付与できるため特に好ましい。
【0017】
吸収体は表面シートと裏面シートとの間にできるだけ均一に、即ち平らに敷設する。このように吸収体を表面シートと裏面シートとで挟み込むことによって吸収体が吸収した排泄物の逆戻りを防止するとともに、吸収体の上に位置する表面シートが排泄物の臭いを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表面シートに茶葉ペーストを担持させたことによって、簡易かつ低コストな、使い捨て可能な消臭機能を備える介護用シートを得ることができる。また、表面シートが消臭機能を有しているため、吸収体で吸収した排泄物の臭いだけでなく、対象者の体臭も消臭させることが可能となる。また、茶葉ペースト中のカテキンが消臭機能だけではなく、抗菌機能も奏するため、長い間寝たきりの対象者でも清潔で快適に過ごすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る介護用シート10の分解斜視図である。また、図2は、介護用シート10の短手方向の断面図である。図1に示すように、介護用シート10は、表面シート11、吸収体12、および裏面シート13がこの順に積層された構成となっている。
【0020】
表面シート11と裏面シート13は、どちらも60cm×90cmの大きさの略矩形で、厚さは50〜100μmである。一方、吸収体12の厚さは1〜5mm、大きさは54cm×85cmであり、介護用シート10全体に比べてやや小さい。
【0021】
図2に示すように、表面シート11と裏面シート13の周縁部には吸収体12は配置されておらず、直接対向する表面シート11と裏面シート13とがホットメルト接着剤等で接合されている。表面シート11と裏面シート13とは、少なくとも周縁部が0.2〜10cm程度の幅で接合されていればよい。しかし、介護用シート10の敷設および使用状態を良好なものとするためには、表面シート11と裏面シート13とが吸収体12を挟み込んだ状態でキルティング加工され、周縁部のみならず全面に渡って接合されていることが好ましい。
【0022】
またキルティング加工に代え、接着剤を用いて吸収体12の少なくとも片面の一部を表面シート11または裏面シート13に接着してもよい。この場合は、吸収体12に対する接着剤の塗布パターンは間欠的なものとすることが好ましい。
【0023】
表面シート11は、レーヨンから成るレジンボンド不織布に茶葉ペーストを担持させたもので構成される。ここで、茶葉ペーストは、緑茶(煎茶)を80℃の温水に浸漬して緑茶飲料を製造することにより生じた茶滓(含水率80重量%)を、カッターポンプ付きの容器に入れ、カッターポンプで破砕した後、さらに湿式ミルで破砕することにより得る。
【0024】
また、裏面シート13は、ポリエチレン製のフィルムで構成され、液不透過性を備える。吸収体12は粉砕パルプを目付け100g/mで積層して構成された厚さ3mm程度の吸水シートである。
【0025】
介護用シート10は、表面シート11上に吸収体12を載置し、さらに裏面シート13を積層して周縁部を接着剤で接着して構成されている。吸収体12の表面シート11側表面には、接着剤を間欠的なパターンで塗布して、シート状の吸収体12の一部を表面シート11に固定しても良い。
【0026】
また、吸収体12を綿状物で構成し、介護用シート10の周縁部において表面シート11と裏面シート13とを接合した後、介護用シート10の長手方向および短手方向を2〜8cm間隔で縫い合わせてキルティング加工をしてもよい。
【0027】
本発明に係る介護用シート10の具体的な使用方法としては、対象者の腰の下に直接敷いて使用してもよいが、シーツと布団、あるいはマットレスとの間に挟んで使用することが好ましい。これによって対象者の動きによるずれをなくすと同時に、シーツに染み込んだ臭いをより効果的に消臭させることが可能となる。また、本発明に係る介護用シートの交換は、介助者がベッドメイクをする際に行なうことが好ましいが、必要に応じて適宜交換してもよい。
【実施例】
【0028】
〔実施例1〕
本発明に係る介護用シートについて、財団法人日本紡績検査協会により「ガスの除去性能評価試験」を行なった。具体的には容量5Lのテドラーバッグに介護用シートを10×10cmの大きさで切り取って入れ、測定対象となるガス(アンモニアガス)3Lを注入し2時間及び24時間後のガスの濃度を検知器により測定した。また、比較として、茶葉ペーストを担持させていない他は介護用シートと同じ構成とした介護用シートを作成し、実施例と同じ大きさの断片を切り取って実施例と同じ試験を行なった。その結果を表1,2に示す。表中、試料1は本発明に係る介護用シートであり、試料2は、比較として作成した介護用シートを示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表に示す通り、本発明に係る介護用シートでは2時間経過後で97.8%以上のアンモニアガスが除去され、比較例に比べて高い消臭効果が得られたことが示された。
【0031】
〔実施例2〕
次に、本発明に係る介護用シートの表面シートについて、財団法人日本紡績検査協会により「抗菌性評価試験」を行なった。その結果を表2,3に示す。なお、この試験はJIS L 1902により行なった。実施例1と同様に表中、試料1は本発明に係る介護用シートの表面シートであり、試料3は、比較として作成した綿布を示す。なお、表中、「−」は測定不可能であることを示す。
【表2】

【表3】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、介護用品として使用されるシートとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る介護用シートの分解斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る介護用シートの断面模式図である。
【符号の説明】
【0034】
10 介護用シート
11 表面シート
12 吸収体
13 裏面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液吸収性の吸収体と、液不透過性の裏面シートと、を積層させた介護用シートであって、
前記表面シートは、水分を含む茶葉を破砕して得られた茶葉ペーストを含浸させ乾燥させて得られたものである介護用シート。
【請求項2】
前記吸収体及び前記裏面シートの少なくともどちらか一方は、前記茶葉ペーストを含浸させ乾燥させて得られたものである請求項1に記載の介護用シート。
【請求項3】
前記表面シートは、不織布である請求項1又は2に記載の介護用シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−247120(P2006−247120A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67627(P2005−67627)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】