説明

介護用衣類

【課題】人が姿勢変更してもうまく対応でき、衣類の開口部が開いた状態を保つことが可能な介護用衣類を提供する。
【解決手段】 被着用者の下肢を覆う一対の裾部と、下肢を覆う裾部に延設される股上部分とからなり、股上部分の下部の股部中心から背面側上方に向かって開口部を備えるとともに、各一端が被着用者の使用する簡易便器を備えた車椅子の側部の係止手段に係止可能で、他端が股上部分もしくは裾部の側部にそれぞれ係止され、開口部を開いた状態に保つ一対の紐を備えた構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子等に搭載可能な簡易便器の使用者等に適した介護用衣類に関するものである。
【背景技術】
従来、身体の不自由などの理由により、自分の排泄を自力で容易にできない人のために排泄機能を乗ったままできる特徴をもたせた車椅子のための簡易便器が存在する。一方老齢者等のためトイレで用便するときに、衣服の着脱の必要がないように、用便の姿勢時にズボンの下部が開くズボンやパンツなどの下半身用衣服が存在する。特許文献1の発明は、このような身体の不自由などの理由により、自分の排泄を自力で容易にできない人のために排泄機能を乗ったままできる目的のための車椅子あるいは簡易便器に係るものである。
【特許文献1】特開2003−319975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
特許文献1に示すような構成においては、便器が車椅子に固定され、身体の不自由などの理由により、自分の排泄を自力で容易にできない人は、衣服の着脱の必要がないように、用便の姿勢時に衣類の下部が開くズボンを使用するが、長時間同じ姿勢を保つことが難しいため、衣類の下部開口部が開いた状態を維持できない場合が生じる。また、お尻の位置を自分で制御できない場合は、使用者の肛門の位置とズボンの開口部の位置が合わなくなる場合が生じる。このような場合には排泄物がうまく通過できず不具合を生じることがあった。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、さまざまな体型の人が姿勢変更してもうまく対応でき、衣類の開口部が開いた状態を保つことが可能な介護用衣類を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
以上の課題を解決するための本発明の介護用衣類は、被着用者の下肢を覆う一対の裾部と、下肢を覆う裾部に延設される股上部分とからなり、股上部分の下部の股部中心から背面側上方に向かって開口部を備えるとともに、各一端が被着用者の使用する簡易便器を備えた車椅子の側部の係止手段に係止可能で、他端が股上部分もしくは裾部の側部にそれぞれ係止され、開口部を開いた状態に保つ一対の紐を備えた、構成を有する。
【発明の効果】
【0004】
本発明によれば、各一端が被着用者の使用する簡易便器を備えた車椅子の側部の係止手段に係止可能で、他端が股上部もしくは裾部の側部にそれぞれ係止され、開口部を開いた状態に保つ一対の紐を備えているので、さまざまな体型の人が姿勢変更してもうまく対応でき、衣類の開口部が開いた状態を保つことが可能な介護用衣類を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(実施の形態)
本発明の実施の形態における介護用衣類について、図1を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態における介護用衣類の背面図である。また、図2は同実施の形態における簡易便器の分解斜視図である。図1において、介護用衣類100は、綿、化学繊維、あるいは絹などから選定された織布で成形され、被着用者の下肢を覆う一対の裾部101,102と、下肢を覆う裾部101,102に延設される股上部分103とからなり、股上部分103の下部の股部中心104から背面側上方105に向かって開口部106を備える。開口部106は点線107の部分で閉じることが可能なように充分な寸法に成形されている。また、各一端108が被着用者の使用する簡易便器(後に説明)を備えた車椅子等の側部の係止手段A、Bに係止可能で、他端109が股上部分103もしくは裾部101,102の側部にそれぞれ係止され、被着用者が簡易便器を使用する間は開口部106を開いた状態に保つ一対の紐110を備えた構成となっている。
【0006】
次に、本実施の形態における簡易便器について図2により説明する。簡易便器1は、上方に開口し排泄物を受け入れ保持する便器2と、便器2を支持する便器固定用ステー3と、便器固定用ステー3を支持する支持手段4と、便器2の開口2aを覆うとともに排泄物を通過させる貫通孔5を供えた便器本体カバー6と、便器本体カバー6の上方に設けられ、便座2の貫通孔2aに連通する局部口7を供えた着座マット8と、便器2に排泄パイプ9を介して接続された汚物タンク10と、洗浄水を便器2内から便器本体カバー6の貫通孔5および着座マット8の局部口7を通過して上方に噴射可能な噴射ノズルと、噴射ノズル11に洗浄水を供給する洗浄水供給装置12とを含み、着座マット8の局部口7を便器2の開口2aより小さい開口面積とし、便器固定用ステー3は支持手段4に対しての相対位置が変更可能に支持手段4に支持されている。
【0007】
着座マット8の上には、局部口7と連通する穴13を備え、着座マット8を覆う保護シート14が載せられており、使用回数に応じて保護シート14は取替え可能になっている。また、便器2の開口2aの周辺部前方には、回動可能に配置され、回動することで排泄者の局部を覆う位置に停止可能な局部カバー15がさらに設けられている。局部カバー15には、取替え可能な保護カバー16が着脱可能に設けられている。この局部カバー15主に男性用として使用される構成となっており、使用しないときは取り外し可能な構造となっている。
【0008】
便器2内には、便器2内の排泄物を洗浄水により排泄パイプ9を介して接続された汚物タンク10に流し込むための洗浄ノズル17,18,19が設けられている。洗浄ノズル17は便器2の前方に設けられており、前方から排泄物を排泄パイプ9に向けて洗い流す機能を有する。洗浄ノズル17,18,19は、洗浄水供給装置12の給水ポンプ12aにより給水管12bを介して接続され、洗浄水タンク12cからの線浄水を放出する構成となっている。また、噴射ノズル11に対しても洗浄水供給装置12の給水ポンプ12aにより給水管12bを介して洗浄水が供給される。洗浄ノズル18a,bは便器2の側方に設けられており、主に便器2の洗浄する機能を有する。洗浄ノズル19a,bは便器2の後方に設けられており、後方から排泄物を浮き上がらせて排泄物の排出を助けるとともに、後方から便器2の前方の洗浄をする機能を有する。排泄パイプ9に向けて洗い流す役割をはたす。
【0009】
噴射ノズル11は、使用者の後方側に設けられており、排泄者のでん部の穴に洗浄水を放射して洗浄する機能を有する。また通常は排泄者のでん部の肛門に洗浄水を放射して洗浄する機能を有するように上方へ向けて噴射可能なノズル構成となっているが、噴射ノズル11は長手方向に中心軸の周りを回動可能に支持されており、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bにより回転する。この場合手動による回転でもよい。このように噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向が上方または下方に可変に構成され、噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を下方に向けた場合には、便器2内の排泄物を洗浄可能な構成となっている。また、噴射ノズル11の応用例として、図3に示すものは女性用ノズル11aを備え、噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を下方に向けた場合には、女性用ノズル11aが上方に向けられて、ビテ機能を有するノズルとなるよう構成されている。なお噴射ノズル11からの洗浄水の噴射方向を上方に向けた場合には、女性用ノズル11aが下方に向けられるので、排泄者のでん部の肛門に洗浄水を放射して洗浄する機能を使う場合にもでん部への影響はない。
【0010】
次に、使用者のでん部を乾燥するための乾燥装置21について説明する。乾燥装置21は便器2の側部に接続されており、臭気吸入装置22の空気ポンプ23により汚物タンク10の上方に設けた吸引口24から臭気を含んだ空気を吸引し、防臭室25、オゾン発生装置26を介して除臭された空気を配管21aを介して便器2の開口2aを貫通して使用者のでん部に向けて放出される構成となっている。
また前記洗浄ノズル17,18,19,20の洗浄水の放出、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bの制御は制御部27のコンピュータ(図示せず)により行われ、使用者は使用者用コントローラ28により洗浄ノズル17,18,19,20の洗浄水の放出、噴射ノズル11の回転のための回転モータ11bの制御操作が可能となっている。また、補助者等は補助者用コントローラ29を用いて線浄水の吐出量、乾燥時間、などが使用者用コントローラ28の機能に加えてさらに制御可能に構成されている。制御部27はバッテリー30により駆動されるが、充電器31、直流変換器32を介して100ボルトAC電源による使用、充電が可能な構成になっている。
【0011】
以上の簡易便器1における、着座マット8と便器2の開口2aとの関係、および便器固定用ステー3と支持手段4との関係について図3を用いて説明する。図3は簡易便器1を備えた車椅子33の平面図であり、着座マット8が斜線にて示されている図である。図3においては簡易便器1における着座マット8の局部口7が便器2の開口2aより小さい開口面積であることが示されている。これは便器2の開口2aより排泄物の臭いが漏れ出すのを最小限にとどめる役割をはたす。また、局部口7は使用者の体格等を考慮して大、中、小のものを容易することが可能である。
【0012】
次に、本発明の実施の形態における簡易便器が車椅子33に搭載された例ついて、さらに図4を用いて説明する。図4は同実施の形態3における簡易便器1を搭載した車椅子33の背面図である。図において、車椅子33の下方の後方ステー35上には汚物タンク10と洗浄水供給装置12が搭載される。便器2を固定した便器固定用ステー3が支持手段4に支持され、支持手段4は車椅子33のフレームに対して固定される。便器2と汚物タンク10との接続が排泄パイプ9により行われている。車椅子33の手摺り37には使用者用コントローラ28が配置されている。
【0013】
また、車椅子33の手摺り37の上面には、介護用衣類100の紐110の各一端108が係止される係止手段A、Bとしてのフック状の金具が設けられており、被着用者の使用時には紐110の各一端108が結びつけなどにより固定される。そして被着用者の使用時には、紐110の他端109が股上部分103もしくは裾部101,102の側部にそれぞれ係止されているので、被着用者が簡易便器1を使用する場合は、紐110により張力が裾部101,102の側部に働き、開口部106が開き、かつ開いた状態に保つ構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、さまざまな体型の人が姿勢変更してもうまく対応でき、衣類の開口部が開いた状態を保つことが可能な介護用衣類を提供することが可能となるので、介護分野、病院、身体障害者が働く工場、映画館、ホテルでの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における介護用衣類の背面図である。
【図2】本発明の実施の形態における簡易便器の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における車椅子の平面図である。
【図4】同車椅子の背面図である。
【符号の説明】
【0016】
100 介護用衣類、101,102 一対の裾部、103 股上部分、104 股部中心、105 背面側上方、106 開口部、A、B 係止手段、110 紐、1 簡易便器、2 便器、3 便器固定用ステー3、4 支持手段、5 貫通孔、6 便器本体カバー、7 局部口、8 着座マット、9 排泄パイプ、10 汚物タンク、11 噴射ノズル、12 洗浄水供給装置、13 局部口7と連通する穴、14 保護シート14、15 局部カバー、17,18,19,20 洗浄ノズル、21 乾燥装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着用者の下肢を覆う一対の裾部と、下肢を覆う裾部に延設される股上部分とからなり、前記股上部分の下部の股部中心から背面側上方に向かって開口部を備えるとともに、各一端が被着用者の使用する簡易便器を備えた車椅子の側部の係止手段に係止可能で、他端が前記股上部分もしくは裾部の側部にそれぞれ係止され、前記開口部を開いた状態に保つ一対の紐を備えた、介護用衣類。
【請求項2】
前記被着用者の使用する簡易便器は、
排泄物を受け入れ保持する便器と、
前記便器を支持する便器固定用ステーと、
前記便器固定用ステーを支持する支持手段と、
前記便器の開口を覆うとともに排泄物を通過させる貫通孔を供えた便器本体カバーと、
前記便器本体カバーの上方に設けられ前記便座の貫通孔に連通する局部口を供えた着座マットと、
前記便器に排泄パイプを介して接続された汚物タンクと、
洗浄水を前記便器内から前記便器本体カバーの貫通孔および前記着座マットの局部口を通過して上方に噴射可能な噴射ノズルと、
前記噴射ノズルに洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、を含む簡易便器である、請求項1に記載の介護用衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−256847(P2009−256847A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126482(P2008−126482)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(502155574)
【Fターム(参考)】