説明

付着物除去装置

【課題】一端側が海底の海底固定具に結び付けられ、他端側が柵綱に結び付けられている根尾綱に対する着脱が簡便で、しかも、構造がシンプルで付着物を効率的に取り除くことができるように開発された付着物除去装置を提供する。
【解決手段】巻上げロープ3aと吊下げロープ4aをそれぞれ結び繋げるロープ繋ぎ部3,4を有する第1、第2の両リング部材1,2を、リング円周の一部において回動可能に枢着し、この枢着部Sを支点に、略同心状に重なり合う状態から交差可変自在に重なり合う状態へと自在に変化するようにしている。そして、ロープ繋ぎ部3を、枢着部Sの略反対側に位置するリング円周部位に備え、ロープ繋ぎ部4を枢着部Sと略同じリング円周部位に備えている。さらに、第1のリング部材1側に、第1、第2の両リング部材1,2相互が枢着部Sを支点に略同心状に重なり合ったときに、当該同心状に第1、第2の両リング部材1,2の動きを受け止めるストッパー部5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖施設の綱から付着物を取り除くための付着物除去装置に係り、詳しくは、カキ、ホタテ貝などの貝類の幼貝を育成するときに、幼貝が取り付けられる養殖ロープなどを海中に吊り下げ保持する根尾網などに付着している付着物を取り除くために使用される付着物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乱獲や乱取りなどによる漁業資源の減少によって近年では、乱獲から養殖へと移行してきている。特に、二枚貝などの貝類の養殖は、食料資源のみならず、装身用品の確保を目的などから早くから行われている。
例えば、カキ、ホタテ貝などの貝類の養殖では、図7の(a)に示す養殖施設Bの説明概略図のように、所望な間隔をおいて海底に配置されるコンクリートブロックその他の固定部材からなる海底固定具100にそれぞれ根尾綱101の一端側を取り付け、根尾綱101の他端側に桁綱102を取り付けて両根尾綱101を繋ぐ。そして、海面の数ヶ所の浮球103に一端側を取り付けた吊り綱104の他端側を桁綱103に取り付け、さらに、桁綱103自体に浮球103を取り付けることで、桁綱102を海中に略水平に張架支持させ、この桁綱102に、カキ、ホタテ貝などの貝類の幼貝Cが取り付けられた多数本の養殖ロープ105が吊り下げられるようになっている。
このように、幼貝を海中に吊り下げて育成する貝類の養殖施設としては、例えば、特許文献1などにおいて知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−102332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、幼貝を海中で養殖し、成長貝にするためには、少なくとも2年から3年前後の時間が掛かり、その間に、貝類が取り付けられた養殖ロープを海中に支持する綱、特に、海底から貝類の支持(吊持)水位へと掛け渡される尾根網などには、ムラサキイガイなどの貝類や海藻、その他の付着物が付着する。そして、貝類などの成長に伴って徐々に付着物の重量が増す。
すると、根尾綱が付着物の重みで海底へと垂れ下がり、垂れ下がった根尾綱の一部が海水の流れなどによってコンクリートブロックからなる海底固定具100に接触し、擦れるなどによって根尾綱が傷つき、最悪の場合は根尾綱が切れてしまうなどのおそれがある。根尾綱が切れた場合は、養殖施設が崩壊、全滅することになるために、付着物を定期的に取り除く除去作業は必須となっている。
【0005】
そこで、従来では、例えば、2分割されたブロック形状の除去装置、或いは一方のリング部材が固定され、もう一方のリング部材が根尾綱に沿ってスライドさせるように構成されている除去装置などを用いて、根尾綱に付着している付着物を取り除くことが行われていた。
しかしながら、2分割された除去装置では、根尾綱にセットするときに、根尾綱を挟み込むようにブロック体をボルトなどの連結具を用いて連結する構成故に、装置が大型で、根尾綱へのセット、根尾綱から取り外すなどの着脱が面倒で取扱い性が悪いものとなっていた。
【0006】
ちなみに、根尾綱に除去装置をセットするときには、根尾綱を柵綱とともに漁船に装備されている油圧式などを動力とする巻上げ機によって引き上げて行われ、また、除去装置の上下移動も同じく巻上げ機によって行われるものである。
【0007】
なお、従来では、定期的な除去作業を行わずに、根尾綱が付着物の重さで海底に垂れないように、根尾綱、棚綱を海中、海面で支持する浮球の数を増やすことで対応することも試みられていたが、浮球の数を増やすことは、その増数分、コストが掛かり、養殖施設の維持管理費が嵩むことなどから、除去装置を用いて定期的に付着物を取り除く除去作業が主流となっている。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、貝類や海藻、その他の付着物が付着する綱に対する着脱が簡便で、しかも、構造がシンプルで付着物を効率的に取り除くことができるように開発された付着物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明では、海中に綱(少なくとも根尾綱、柵綱など)によって構築される養殖施設の前記綱から付着物を取り除く付着物除去装置であって、
ロープ繋ぎ部をそれぞれ有する第1のリング部材と第2のリング部材とを備え、前記第1、第2の両リング部材は、リング円周の一部において回動可能に枢着されて、この枢着部を支点に略同心状に、かつ、交差可変自在に重なり合うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記第1のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部には巻き上げロープが結び繋がれ、前記第2のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部には吊り下げロープが結び繋がれる。そして、前記第1のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部は、該第1のリング部材のリング中心点を境に、前記枢着部の略反対側に位置するリング円周部位に備えられ、前記第2のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部は、前記枢着部と略同じリング円周部位に備えられる。さらに、前記第1のリング部材側に、前記第2のリング部材が前記枢着部を支点に回動して同軸状に重なり合った時点で前記第2のリング部材の動きを受け止めるストッパー部を備え、このストッパー部は、前記ロープ繋ぎ部と前記枢着部との間におけるリング円周の略中間部位に備えられているなどの構成を採用することが好適なものとなる。
【0011】
また、前記第1、第2の両リング部材は、前記枢着部を支点に略同心状に重なり合ったときにリングの内外に通じる綱通し開口部を備え、この綱通し開口部は、前記第1、第2の両リング部材のリング中心点を境に、前記ストッパー部が備えられているリング円周部位の略反対側に位置するリング円周部位に備えられている。さらに、前記第1、第2の両リング部材のうち、少なくとも第1のリング部材側の前記綱通し開口部に綱外れ止め部を備え、この綱外れ防止部は、一端側が前記綱通し開口部近傍に固着されて該綱通し開口部との間に前記綱の太さに相当する隙間を確保し、該綱通し開口部をリング円周方向に跨ぎ、かつ、他端側を前記綱通し開口部からリング円周方向に外れた位置において開放させているなどの構成を採用することが好適なものとなる。
【0012】
また、前記第1のリング部材は、リング円周に円周部材を備え、この円周部材は、少なくとも前記ロープ繋ぎ部側から前記ストッパー部および前記枢着部を通り、前記第1のリング部材の前記リング中心点を境に、前記ロープ繋ぎ部の略反対側に至るリング円周範囲において備えられている。さらに、前記第1のリング部材は、前記第2のリング部材が前記枢着部を支点に交差可変状に重なり合ったときに、前記第2のリング部材の自重のもとで前記綱を摺接動自在に挟み込む略コの字形状の綱通し凹部を、前記リング中心点を境に、前記ロープ繋ぎ部の略反対側に位置するリング円周部位に備えているなどの構成を採用することが好適なものとなる。
【0013】
このような構成によれば、リング円周部の一部において回動自在に連結されている第1のリング部材と第2のリング部材を略同心状に重ね合わせた状態で、海中から海面(漁船上)に巻き上げられた付着物が付着している綱を囲繞するようにセットする。この状態で第1、第2の両リング部材を付着物の外側に沿わせて海底へと下ろす。このとき、綱は略垂直にして第2のリング部材のロープ繋ぎ部に結び繋がれている引き下げロープを持って行うことで、第1、第2の両リングの略同軸上の重ね合わせ状態は第1のリング部材に備えられているストッパー部によって保たれ、速やかに海底へと下ろすことができる。第1のリング部材のロープ繋ぎ部に結び繋がれている巻き上げロープは、第1、第2の両リング部材の降下に伴い海中へと引き込まれていく。
このようにして、第1、第2の両リング部材を海底へと下ろし、第1、第2の料リング部材が海底に到着したところで、引き下げロープを緩め、巻き上げロープを、漁船に装備されている巻き上げドラムなどによって巻き上げる。すると、第2のリング部材は、枢着部を支点に自重で回動し、第1のリング部材に対して略交差可変状に重なり合う状態となる。この交差重なり状態は、付着物の付着状態に応じて任意となる。
これにより、綱に付着している付着物は、巻き上げロープが巻き上げられるに伴い、交差する第1、第2の両リング部材によって綱から剥ぎ取られるように取り除かれていく。
【発明の効果】
【0014】
本発明の付着物除去装置は、以上のように構成されていることで、付着物が付着している綱に第1、第2の両リング部材を同軸上に重ね合わせた状態でセットし、第1、第2の両リング部材を巻き上げドラムなどの巻き上げ機によって上下に移動させることで、枢着部を支点に相互に交差可変自在に重なり合う第1、第2の両リング部材によって、綱に付着している付着物を、綱から剥ぎ取るように取り除くことができる。また、このとき、枢着部を支点に第1、第2の両リング部材の交差重なり状態が相互に小さく可変することで、付着物の除去作業を継続して行うこともできる。
これにより、効率的に除去作業を遂行させることが期待できる。
【0015】
また、除去作業中において、第1、第2の両リング部材を、第1のリング部材側のロープ繋ぎ部に結び付けられる巻き上げロープによって海面へと巻き上げ、再び、略同心状に重ね合わせて綱が結び付けられている海底の、例えば、コンクリートブロックに向けて第1、第2の両リング部材を降ろすときに、第2のリング部材のロープ繋ぎ部に結び付けられている吊り下げロープによって行うことでできる。つまり、巻き上げロープを放し、吊り下げロープ側で第1、第2の両リング部材を支えると、第1のリング部材は、第2リング部材との枢着部を支点にストッパー部が第2のリング部材のリング円周に当接するように回動し、第1、第2の両リング部材は同軸状に重なり合う。
これにより、綱に付着している付着物に引っ掛かるなどなく、第1、第2の両リング部材を、海底のコンクリートブロックなどからなる固定部材へと速やかに下ろして、除去作業を遂行させることができる。
【0016】
また、枢着部を支点に回動可能に枢着(連結)されている第1、第2の両リング部材を、同軸状に重ね合わせることで、リングの内外に通じる綱通し開口部を通して、付着物が付着している綱への両リング部材の着脱を行うことができる。また、第1、第2の両リング部材の少なくとも一方側には、綱通し開口部をリング円周方向に跨ぐように綱外れ防止部を備えていることで、綱通し開口部から第1、第2の両リング部材内に入れられた綱が簡単、かつ、不用意に外れることが無い。
これにより、綱が、仮にループ状に連なっているなどの場合であっても、綱に対して第1、第2の両リング部材をセット、そして取り外すなどの着脱を簡便に行うことができる。
【0017】
また、第2のリング部材が枢着部を支点に可変交差可変状に重なり合う第1のリング部材のリング円周部位に、綱の太さに相当する綱通し凹部が備えられていることで、綱の表面から略完全に付着物を取り除く除去作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る付着物除去装置の第1のリング部材と第2のリング部材とを交差可変状に重ね合わせ状態をリング前方から見たときの正面図である。
【図2】同付着除去装置の第1のリング部材と第2のリング部材とを略同心状に重ね合わせた状態で示す同正面図である。
【図3】第1のリング部材側を示し、(a)は、リング前方から見たときの正面図であり、(b)は、その側面図である。
【図4】第2のリング部材側を示し、(a)は、リング前方から見たときの正面図であり、(b)は、その側面図である。
【図5】第1、第2の両リング部材の重ね合わせ可変状態をリング前方から見たときのそれぞれの正面図を示し、(a)は、略同心状に重ね合わせされた状態を示し、(b)は、(a)の状態から交差状に重ね合わせされた状態を示し、(c)は、(b)の状態から交差重ね合わせ状態を可変させたときの状態を示し、(d)は、(c)の状態から交差重ね合わせ状態をさらに可変させたときの状態を示す。
【図6】本実施形態に係る付着物除去装置を、根尾綱にセットまたはそのセットを解除するときの状態を示す斜視図であり、(a)は、第1のリング部材の備えられている綱外れ防止部の開放端側から第1、第2の両リング部材の開口位置させた綱通し開口部へと根尾綱を導いた状態を示し、(b)は、第1、第2の両リング部材の綱通し開口部を通して根尾綱をリング内に導く状態を示す。
【図7】カキ、ホタテ貝などの貝類の養殖施設の一例を示す説明概略図であり、(a)は、海中における養殖状態を示し、(b)は、根尾綱を海底から海面へと略垂直に巻き上げて付着物除去装置により付着物を除去するときの作業状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態に係る付着物除去装置を示す正面図であり、図3は、第1のリング部材を示す正面図およびその側面図であり、図4は、第2のリング部材を示す正面図およびその側面図であり、図5は、第1、第2の両リング部材の重ね合わせ可変状態をそれぞれ示す正面図である。
【0020】
≪付着物除去装置の構成≫
付着物除去装置(以後、単に「除去装置」と称する)Aは、図1および図2に示すように、リング円周の一部において回動可能に枢着されて、この枢着部Sを支点に相互に略同心状に、かつ、交差可変自在に重なり合うように連結される第1のリング部材1と第2のリング部材2とを備えて構成されている。
そして、この第1、第2の両リング部材1,2は、それぞれのリング円周部の一部に、巻き上げロープ3aと吊り下げロープ4aがそれぞれ結び繋がれるロープ繋ぎ部3,4を備えている。
これにより、第1、第2の両リング部材1,2は、後記の図7に示す養殖施設Bの根尾綱101にセットされた状態で、海底から海面、漁船(甲板)上へと巻き上げロープ3aに支持されて巻き上げられるとき、図1に示すように、枢着部Sを支点に相互に交差可変自在に重なり合う。そして、吊り下げロープ4aに支持されて海底へと吊り下げられるときは、図2に示すように、枢着部Sを支点に相互に略同心状に重なり合うようになっている。
【0021】
≪第1のリング部材の構成≫
第1のリング部材1は、耐腐食性に優れたステンレス製の棒材、或いは、表面に耐腐食性の塗料が表面に塗布された金属製棒材を用いて、図3に示すように、所望の大きさ、例えば、直径が400mm程度の大きさを有する略真円形状に形成されている。
そして、この第1のリング部材1は、図3の(a)に示すように、リング円周の一部にロープ繋ぎ部3を備え、さらに、リング中心点P1を境に、ロープ繋ぎ部3が備えられているリング円周側に対し、略反対側(円周略180°反対側)に位置するリング円周部位に連結部S1を備えている。
【0022】
ロープ繋ぎ部3は、略U字形状は形成され、図3の(a)に示すように、リング中心点P1を通る直線(対角線)X上に位置するリング部材1のリング円周部位において、後記する円周部材9に溶接などにより固着されて備えられる。これにより、巻き上げロープ3aが結び繋がれるようにしている。
【0023】
連結部S1は、第2のリング部材2側に備えられる後記の連結ピンS2を回動可能に軸支させる内径を有する筒状に形成されている。
そして、連結部S1は、図3の(a)に示すように、リング中心点P1を通る直線Xに対し、リング中心点P1から、例えば、角度30°のθ1にて描かれる放射直線Z1上に位置する第1のリング部材1のリング円周部位において、円周部材9に溶接などにより固着されて備えられる。
【0024】
また、第1のリング部材1は、第1のリング部材1が枢着部Sを支点に回動して第2のリング部材2に対して略同心状に重なり合った時点で、その動きを受け止めるためのストッパー部5を備えている。
ストッパー部5は、ロープ繋ぎ部3と連結部S1との間のリング円周において、直線Xと直交するようにリング中心点P1を通る直交直線Y上に位置する第1のリング部材1のリング円周部位において、円周部材9に溶接などより固着されて、第2のリング部材2が略同心状に重なり合うリング表面側に向けた凸状に備えられる。
【0025】
さらに、第1のリング部材1は、根尾綱101をリング内に導入するための綱通し開口部6を備えている。
綱通し開口部6は、第1、第2の両リング部材1,2を、枢着部Sを支点に略同心状に重なり合わせたときに、第2のリング部材2の後記する綱通し開口部7と開口位置が一致し、これにより、後記の図6に示すように、根尾綱101を第1、第2の両リング部材1,2のリング内に導入する。換言すれば、根尾綱101に対し、第1、第2の両リング部材1,2を、綱方向途中においてセットするための開口である。
この綱通し開口部6は、図3の(a)に示すように、リング中心点P1(直線X)を挟んで、ストッパー部5が備えられているリング円周側に対し、反対(円周180°)側の直交直線Y上に位置する第1のリング部材1のリング円周部位において、根尾綱101の太さよりもやや広めか、1.5倍程度の開口幅にて設けられる。
【0026】
また、第1のリング部材1は、綱通し開口部6から根尾綱101が不用意に外れることを防ぐ綱外れ防止部8を備えている。
この綱外れ防止部8は、図3および後記の図6に示すように、一端8a側が綱通し開口部6の近傍に溶接などによって固着され、該綱通し開口部6との間に根尾綱101の太さに相当する隙間を確保し、該綱通し開口部6をリング円周方向に跨ぎ、かつ、他端8b側を綱通し開口部6からリング円周方向に外れた位置において開放させている略L字形状に形成されている。
【0027】
また、第1のリング部材1は、図3に示すように、リング円周(リング外周)に沿わせて円周部材9を備えているとともに、リング円周の一部から円周部材9に跨るように綱挟み凹部10を備えている。
【0028】
円周部材9は、図3の(a)に示すように、ロープ繋ぎ部3と綱通し開口部6とのリング円周における綱通し開口部6寄りからロープ繋ぎ部3を通り、そしてストッパー部5、連結部S1を通って綱通し開口部6寄りに至るリング円周範囲において形成されている。
そして、円周部材9は、連結部S1から綱通し開口部6寄りに位置する第1のリング部材1のリング円周範囲において、他の部分よりもリング外周方向に向けて幅広状に形成されている。
これにより、図1に示すように、ロープ繋ぎ部3に結び繋がられる巻き上げロープ3aに支持されて巻き上げられるとき、第1のリング部材1の重心が連結部S、つまり、第2のリング部材2との枢着部S寄りの下側に来るようにしている。また、円周部材9によって第1のリング部材1の強度が増強されるようにしている。
【0029】
綱挟み凹部10は、付着物Cの除去時に、殆どの付着物Cが根尾綱101から取り除かれた最終段階のときに、図3の(a)および後記図5の(d)に二点鎖線で示すように、根尾綱101が入り、第2のリング部材2との間で根尾綱101が挟まれることによって、根尾綱101の表面から付着物Cを完全に取り除くものである。
この綱挟み凹部10は、図3の(a)に示すように、直線Xに対し、リング中心点P1から、例えば、角度15°のθ2にて描かれる放射直線Z2上に位置する第1のリング部材1のリング円周部位(連結部S1と綱通し開口部6との間におけるリング円周)において、円周部材9に跨る形で根尾綱101の太さよりも広めの開口にて凹欠状に形成されている。
【0030】
≪第2のリング部材の構成≫
第2のリング部材2は、第1のリング部材1と同じくステンレス製の棒材、或いは、塗料が塗布された金属製棒材を用いて、第1のリング部材1と略同径とする略真円形状に形成されている。
そして、この第2のリング部材2は、図4に示すように、リング円周の一部にロープ繋ぎ部4を備え、このロープ繋ぎ部4の近くには連結ピンS2を備えている。
【0031】
ロープ繋ぎ部4は、略U字形状は形成され、図4に示すように、リング中心点P2を通る直線Xに対し、リング中心点P1から、例えば、角度35°のθ3にて描かれる放射直線Z3上に位置する第2のリング部材2のリング円周部位において、溶接などにより固着されて備えられる。
【0032】
連結ピンS2は、連結部S1を貫通する程度の長さに形成されている。この連結ピンS2は、図4の(a)に示すように、リング中心点P2を通る直線Xに対し、リング中心点P2から、例えば、角度30°のθ4にて描かれる放射直線Z4上に位置する第2のリング部材2のリング円周部位において溶接などより固着され、第1のリング部材1が重なり合うリング表面側に向けて備えられる(図4の(b)参照)。
そして、連結ピンS2は、連結部S1に挿入された後に、連結部S1から突出する突端側にワッシャなどの環状部材11を備え、この環状部材11が溶接などによって固着されることで、連結部S1と連結されて第1、第2の両リング部材1,2を回動可能に枢着するものである(後記の図6参照)。
【0033】
これにより、第1、第2の両リング部材1,2は、図5の(a)に示す略同心状の重なり合い状態から、(b)から(d)にそれぞれ示す交差重なり合い状態へと可変するように、枢着部Sを支点にして回動自在に連結されている。
【0034】
なお、図示を省略しているが、連結部S1から突出する連結ピンS2の突端側に環状部材11を備え、前記の溶接などによらずに、E型止め輪(所謂Eリング)や割りピンなどを用いて環状部材11が連結ピンS2から抜け外れないようにすることもできる。これにより、例えば、第1、第2の両リング部材1,2のうち、一方側が破損した場合などには、破損側のみを交換することで再利用することができる。
【0035】
また、第2のリング部材2は、第1のリング部材1側の綱通し開口部6に一致させることで、根尾綱101をリング内に導入するための綱通し開口部7を備えている。
綱通し開口部7は、図4の(a)に示すように、リング中心点P2(直線X)を挟んで、綱繋ぎ部4および連結ピンS2が備えられているリング円周側に対し、直線Xと直交するようにリング中心点P2を通る直交直線Y上に位置する第2のリング部材2のリング円周部位において、根尾綱101の太さよりもやや広めか、1.5倍程度の開口幅にて設けられる。
【0036】
[作用説明]
つぎに、以上のように構成されている本実施形態に係る除去装置Aの使い方について簡単に説明する。
図6は、除去装置を根尾綱にセットまたはそのセットを解除するときの状態をそれぞれ示す斜視図であり、図7は、養殖施設の一例を示す説明概略図である。ここでは、図1、図2、図5、図6を適宜参照しながら説明する。
養殖施設Bは、背景技術欄で説明した通り、図7の(a)に示すように、所望な間隔をおいて海底に配置されるコンクリートブロックその他の固定部材からなる海底固定具100にそれぞれ根尾綱101の一端側を取り付け、根尾綱101の他端側に桁綱102を取り付けて両根尾綱101を繋ぐ。そして、海面の数ヶ所の浮球103に一端側を取り付けた吊り綱104の他端側を桁綱103に取り付け、さらに、桁綱103自体に浮球103を取り付けることで、桁綱102を海中に略水平に張架支持させ、この桁綱102に、カキ、ホタテ貝などの貝類の幼貝Cが取り付けられた多数本の養殖ロープ105が吊り下げられるようになっている。
【0037】
このような養殖施設Bにおいて、図5に示すように、巻貝や昆布などの付着物Dが付着している一方の根尾綱101から付着物Dを取り除くときには、桁綱102の根尾綱102との繋ぎ部寄り側を、まず、漁船Eに装備されている巻上げ機などによって海面まで吊り上げ、この状態で、長さを確保するために、桁綱103に足し綱106の一端側を結び付け、ついで、根尾綱101と桁綱103と繋ぎ部分を解いて、根尾綱101に足し綱10の他端側を結び付ける。これにより、図7の(b)に示すように、根尾綱101を海底から略垂直に吊り上げることができる。
【0038】
そして、根尾綱101を略垂直に保持した状態で、第1、第2の両リング部材1,2相互を、枢着部Sを支点に回動させて略同心状に重ね合わせることで一致する両リング部材1,2の綱通し開口部6,7を通して根尾綱101を両リング部材1,2のリング内に導入する。
このとき、漁船E上において、図6の(a)に示すように、まず、第1のリング部材1側に備えられている綱外れ防止部8の開放端側(他端8b側)から根尾綱101を綱通し開口部6,7側へと導くように第1、第2の両リング部材1,2全体を矢印G方向に回し、次いで、綱通し開口部6,7を通して根尾綱101を両リング部材1,2のリング内に導くことで、根尾綱101へ除去装置Aをセットする。
【0039】
このようにして、根尾綱101に除去装置Aをセットした状態で、第2のリング部材2側のロープ繋ぎ部4に結び繋がれている吊り下げロープ4aで支持しながら、除去装置Aを海底の固定部材100に当たるまで海中へと下ろす。このとき、図2に示す第1、第2の両リング部材1,2の略同心状の重ね合わせ状態は、引き下げロープ4aによる吊り下げ支持によって保たれる。
そして、第1、第2の両リング部材1,2を固定部材100まで下ろしたところで、吊り下げロープ4aを弛ませ、第1のリング部材1のロープ繋ぎ部3に結び繋がれている巻き上げロープ3aを巻き上げて第1、第2の両リング部材1,2を吊り上げる。すると、第2のリング部材2は枢着部Sを支点として自重で回動し、図1および図5の(b)から(d)に示すように、第1のリング部材1に対し、交差可変自在に重なり合う。
これにより、根尾綱101に付着している付着物Dを表面側から剥ぎ取るようにして取り除く。
【0040】
除去装置Aが巻き上げロープ3aに支持されて海面へと吊り上げられてきたところで、巻き上げロープ3aを弛ませ、吊り下げロープ4aの支持に変える。すると、第1のリング部材1は枢着部Sを支点として自重で回動し、図2および図5の(a)に示すように、第2のリング部材2に対し、略同心状に重なり合う。これにより、付着物Dに引っ掛かるなどなく、除去装置Aを海底へと下ろすことが可能となる。
そして、根尾綱101から殆どの付着物Dが取り除かれると、根尾綱101は、図5の(d)に示すように、第1のリング部材1の綱挟み凹部10に入り、この状態で第2のリング部材2に挟み込まれて、根尾綱101から略全ての付着物Dが取り除かれるものである。
【0041】
付着物Dの除去作業が終了し、除去装置Aを根尾綱101から取り外すときには、セット時における前記の操作とは逆の操作を行うことで、除去装置Aを根尾綱101から取り外すことができる。
ちなみに、各根尾綱101からの付着物Dの除去作業が終了したあとは、足し綱106が外され、根尾綱101と桁綱102とを結び繋げて、養殖施設Bは、図7の(a)の元の状態に戻される。
【符号の説明】
【0042】
A 付着物除去装置
1 第1のリング部材
2 第2のリング部材
3,4 ロープ繋ぎ部
3a 巻き上げロープ
4a 吊り下げロープ
5 ストッパー部
6,7 綱通り開口部
8 綱外れ止め部
9 円周部材
10 綱挟み凹部
101 根尾綱(綱)
S 枢着部
S1 連結部
S2 連結ピン
P1,P2 リング中心点
B 養殖施設
D 付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に綱によって構築される養殖施設の前記綱から付着物を取り除く付着物除去装置であって、
ロープ繋ぎ部をそれぞれ有する第1のリング部材と第2のリング部材とを備え、
前記第1、第2の両リング部材は、リング円周の一部において回動可能に枢着されて、この枢着部を支点に相互に略同心状に、かつ、交差可変自在に重なり合うように構成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項2】
前記第1のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部は、前記枢着部が備えられているリング円周の略反対側に位置するリング円周部位に備えられ、
前記第2のリング部材側の前記ロープ繋ぎ部は、前記枢着部と略同じリング円周部位に備えられ、
さらに、前記第1のリング部材側に、前記第2のリング部材が前記枢着部を支点に回動して略同心状に重なり合った時点でその動きを受け止めるストッパー部を備え、
このストッパー部は、前記ロープ繋ぎ部と前記枢着部との間におけるリング円周の略中間部位に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の付着物除去装置。
【請求項3】
前記第1、第2の両リング部材は、前記枢着部を支点に略同心状に重なり合ったときにリングの内外に通じる綱通し開口部をそれぞれ備え、
この綱通し開口部は、前記ストッパー部が備えられているリング円周の略反対側に位置するリング円周部位に備えられ、
さらに、前記第1、第2の両リング部材のうち、少なくとも第1のリング部材側の前記綱通し開口部に綱外れ防止部を備え
この綱外れ防止部は、一端側が前記綱通し開口部近傍に固着されて該綱通し開口部との間に前記綱の太さに相当する隙間を確保し、該綱通し開口部をリング円周方向に跨ぎ、かつ、他端側を前記綱通し開口部からリング円周方向に外れた位置において開放させていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の付着物除去装置。
【請求項4】
前記第1のリング部材は、リング円周に沿わせて円周部材を備え、
この円周部材は、少なくとも前記ロープ繋ぎ部側から前記ストッパー部および前記枢着部を通り、前記ロープ繋ぎ部が備えられているリング円周の略反対側に至るリング円周範囲において備えられ、
さらに、前記第1のリング部材は、前記第2のリング部材と協同で前記綱を摺接動自在に挟み込む綱挟み凹部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の付着物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−252781(P2010−252781A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298669(P2009−298669)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3151756号
【原出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【特許番号】特許第4542611号(P4542611)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(309011309)
【Fターム(参考)】