説明

代謝制御および高溶質クリアランスのための方法およびそれにおいて使用するための溶液

本開示は、CRRT方法とともに使用するための、新規の標準化クエン酸塩補液溶液および標準化透析液を説明する。標準化クエン酸塩補液溶液および標準化透析液は、個々の患者の臨床状態に基づく変更を必要としない。ここで説明される標準化溶液の使用は、CRRTにおいて使用される従来技術の溶液を超える顕著な利点を提供する。本開示は、(a)0.67%クエン酸三ナトリウム補液溶液を使用した、24名の集中治療室(ICU)のARF患者、および(b)0.5%クエン酸三ナトリウム補液溶液を使用した、32名のICUのARF患者における、優れた代謝および電解質制御と有意に増加した透析装置の有効性を説明する。両群とも、Bicarbonate−25透析液で治療し、35mL/kg/hrの流出速度を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願書は、2005年11月14日に出願された米国非仮出願番号10/273,290に対する優先権およびその利得を請求する。
【0002】
本開示は概して、腎機能および腎疾患の分野に関する。本開示は具体的には、腎疾患の治療に対する持続的腎代償療法の間の、定義された希釈局所クエン酸三ナトリウム溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
持続的腎代償療法(CRRT)は、重症状態の患者における腎不全の管理のためのモダリティとして定着している。CRRTが最初に開発された時、使用の主要な適応は、急性腎不全(ARF)を発現する患者など、腎不全に関連する液体および溶質除去であった。急性腎不全(ARF)はめったに孤立したプロセスとなることはなく、しばしば、重症状態の患者における敗血症、外傷、および多臓器不全などの基礎症状の合併症である。それゆえ、付随する臨床症状は患者予後に著しく影響する。CRRT応用は、慢性腎不全(CRF)患者、およびその他の適応症に対する使用を含むように、長い時間をかけて発展してきた。持続的腎代償療法(CRRT)は近年、急性腎不全(ARF)の重症患者に対するえり抜きの透析技術として浮上している。持続的静静脈血液ろ過(CVVH)などを含むがこれに限定されない、数種類のCRRT療法がある。CRRTは概して、体液および代謝制御のための間欠的透析に顕著な利点を提供するとして認識されている(1)。さらに、CVVHなどの、CRRTを使用する高い限外ろ過速度(35ml/kg/hr以上)は、患者生存の改善を伴っている(2)。
【0004】
CRRTの処置の間、溶液を加えて、CRRT装置を通って流れる血液の凝固を防がなければならない。ヘパリンナトリウムは、CRRTに使用される最も一般的な抗凝血剤である。システムは、呼び水注入処置(5,000〜10,000U/Lの生理食塩水)の間に、システムを通して希釈ヘパリンが頻繁に注がれ、続いて、治療期間の間に一定のヘパリンが供給される。長年の間、これは、血液経路を使用した、あらゆる形態の透析に対して選択される抗凝血剤であった。しかし、CRRTがより重度の患者に適用されるにつれ、ヘパリンは、重症状態の患者で見られる凝固障害によって引き起こされる合併症と関連していることが明らかとなった。認められる副作用には、限定されないが、全身抗凝血、血小板減少症、およびアルドステロン分泌の抑制が含まれる。全身抗凝血の影響は、消化管出血のまたは、凝固因子消費あるいは創傷または血管穿刺部位からの潜在出血により止血が低下する外傷の患者において、ヘパリン投与は大きな問題である。凝固検査および血小板数の頻繁な監視、ならびに出血性合併症の継続的監視は、CRRTシステムのヘパリン抗凝固を受けるあらゆる患者にとって不可欠である。目標は患者の抗凝固ではなく、むしろシステムに対する局所抗凝固を提供することであるため、患者は治療の開始前にヘパリンによるボーラスを必要としない。呼び水注入に使用されるヘパリンを、システムから十分に流し去らないと、患者はなお、呼び水注入量から少量のヘパリンボーラスを受けることとなる。
【0005】
クエン酸三ナトリウムは、血液製剤用の抗凝血剤として長年使用されている。これは、1990年代前半に局所抗凝血剤としてCRRTに導入された。クエン酸ナトリウムを代謝するには、比較的正常な肝機能が必要とされる。
【0006】
よって、クエン酸三ナトリウムを使用して、CRRTの間に体外循環路内の血液の抗凝固を提供している。クエン酸塩は、カルシウムと結合して、カルシウムを凝固カスケードに利用できないようにすることによって、抗凝固に影響する。凝固カスケードのいくつかのステップはカルシウムに依存しているため、カルシウムの欠乏は凝固を防ぐ。体外循環路からの血液が患者に戻ると、カルシウムを含む中心静脈血と混合し、抗凝血剤の効果が中和される。言い換えれば、体外循環路から患者に戻った時のクエン酸塩は、もはや抗凝血剤ではない。概して、カルシウムは継続的に患者に投与され、クエン酸塩のカルシウムとの結合および体外循環路を通したカルシウムの欠損の結果として起こり得る、カルシウム貯蔵部位の枯渇を防ぐ。
【0007】
従来技術は、局所抗凝血剤としてクエン酸三ナトリウムを使用する際に、合併症が発生する場合があることを認識している。本方法の毒性は、クエン酸塩蓄積およびそれに続く重炭酸塩へのその代謝による代謝アルカローシス、および減少した全身イオン化カルシウムの影響を含む。患者は、自覚的な、動悸、口の周辺のうずくような痛みおよび胃けいれんを経験する場合がある。クエン酸塩毒性の客観的特徴は、心筋抑制、不整脈、およびアニオンギャップを含む場合も含まない場合もある全身性アルカローシスを含む。クエン酸塩投与の速度の適切な監視、および全身イオン化カルシウムの監視および補正は、これらの影響を未然に防ぐことができる。正常な肝機能がクエン酸三ナトリウムの代謝に必要とされるので、肝疾患患者はクエン酸塩毒性を発現しやすい場合があり、このような患者をクエン酸塩で治療する際は注意しなければならない。
【0008】
局所抗凝固のためのクエン酸塩の使用はヘパリンよりも優れていることが示されているが(4)、しばしばCRRTを複雑にする。少数の局所クエン酸塩抗凝固プロトコルは高い溶質クリアランスを提供するが、複数の特製の液をも必要とする(5、6、7、8、9、10)。患者の臨床状態に基づいた、またはそれによって決定されるその後の調整による、溶液の特製は、溶液を調製する際の薬学資源を浪費し、溶液の調製およびその投与における過失の危険性を上昇させる(11)。溶液のこの特製は、個々の患者間で変化し得るだけでなく、その患者の変化する臨床状態に基づいて同じ患者に関して変化し得る。また、患者の臨床状態が治療の経過にわたって変化する場合、以前に調製した溶液を廃棄しなければならない場合があり、それによって治療の費用が増加する。2004年に、塩化ナトリウムではなく塩化カリウムが誤って特製の透析液に加えられた後に、CRRTを受けていた2名の患者が死亡した(12、13)。現在FDAは品質管理に対するバッチ試験を要求しないので、可能性のある有害なCRRT溶液の欠陥が認識されない場合がある。重症ARF患者の管理についての近年の国際調査において、CRRTに対する最大の懸念に、抗凝固、透析装置の凝固、看護の作業負荷、基準の欠如および費用が含まれた(3)。
【0009】
理想的なCRRTプロトコルは、出血または凝固に関する重大な合併症がなく、量制御、代謝(酸塩基または電解質)制御、および適正な溶質クリアランスを提供すべきであり、上記のパラメータの独立調整を可能にするように多目的に使用可能であるべきである。さらに、CRRTプロトコルは標準化溶液を使用すべきであり、複数の薬局または医療提供者に対する負担を最小限にするために、2つまたは3つ以上の異なる種類の溶液を必要とするべきではない。最後に、CRRTは理想的には、中断がほとんどないか、または全くない状態で実行するべきである。
【発明の開示】
【0010】
本開示は、CRRTとともに使用するための新規の溶液を提供する。一実施形態では、CRRTプロトコルは、持続的静静脈血液透析ろ過(CVVHDF)法である。CVVHDFは、拡散および対流両方の溶質クリアランスを提供し、低血流速度および高流出速度において<20%のろ過率を容易に維持することによって、フィルタの凝固の可能性を減少させる(14)。本開示は、CRRTにおいて使用するための簡易化した一式のCRRT溶液も提供する。
【0011】
各患者に対してCRRT溶液の組成物を変更することは、高価で、手間がかかり、かつ間違いが発生しやすいことが判明した。結果として、我々はまず、標準化生理食塩水の透析液が1000ml/hrで供給され、250ml/hrで補液として供給される2%クエン酸三ナトリウム(クエン酸塩17.5mmol/hr)を使用する簡易化したクエン酸塩プロトコルを考案した(15)。しかし、本方法は重度の代謝性合併症を引き起こすことなしに、より高い流出速度を提供することができなかった。
【0012】
一実施形態では、重炭酸塩を基礎にした透析液および抗凝固および補液の両方に使用される希釈クエン酸溶液を開示する。クエン酸塩溶液は、個々の患者の臨床状態に基づく特製を必要とせずに、適正な代謝制御、高い限外ろ過量、および効果的な局所抗凝固を提供する。
【0013】
図面の簡単な説明
図1Aは、補液として0.67%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、CVVHDF CRRT療法の手順の概略図である。
【0014】
図1Bは、補液として0.5%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、CVVHDF CRRT療法の手順の概略図である。
【0015】
図2Aは、補液として0.67%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する代謝および電解質制御を示し、結果は中央値として、および四分位範囲で表される。
【0016】
図2Bは、補液として0.5%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する代謝および電解質制御を示し、結果は中央値として、および四分位範囲で表される。
【0017】
図3は、補液として0.67%TSC溶液(破線)または0.5%TSC溶液(実線)、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する透析装置のフィルタの耐用期間(有効性)を示し、結果はカプラン・マイヤー分析を使用して表される。
【0018】
発明の詳細な説明
本開示は、CRRTプロトコルにおいて使用するための補液溶液としての希釈クエン酸塩の標準化溶液を提供し、CRRTプロトコルにおいてクエン酸塩溶液を使用する方法をさらに提供する。本開示は、クエン酸塩補液溶液として、0.67%クエン酸三ナトリウム(TSC)溶液および0.5%TSC溶液を説明する。本開示は、CRRTプロトコルにおいて使用するための透析液およびカルシウムの標準化溶液も提供し、クエン酸塩補液溶液と組み合わせて透析液およびカルシウムを使用する方法をさらに提供する。本開示の標準化溶液および方法は、クエン酸塩溶液を組み込む現在公表されているCRRTプロトコルを越える、実用的かつ経済的な改善である。
【0019】
従来技術は、クエン酸塩溶液がCRRT方法において使用され得ることを認識している。クエン酸塩溶液を活用する従来技術のCRRTプロトコルは、代謝および電解質の要件に対処するために、個々の患者のニーズを満たすように特製された溶液を必要とし、患者の変化する臨床状態の結果として、使用中にさらなる変更をしばしば必要とした。表1は、局所抗凝固のためにクエン酸塩を使用する、最新のCVVHDF CRRTプロトコルを説明する。図示されるように、Mehta(10)、Kutsogiannis(9)、Tobe(8)およびCointault(5)によって説明されるプロトコルは、CRRT中に4つ以上の溶液の使用を必要とする。Gabutti(6)およびDorval(7)によって説明されるプロトコルは3つの溶液の使用を開示するが、個々の患者の臨床状態によって、クエン酸塩溶液は、カリウム(Gabutti)またはカリウムおよびリン酸塩レベル(Dorval)の特製を必要とすることに留意すべきである。
【0020】
ここで説明されるクエン酸塩補液溶液、透析液およびカルシウム溶液は、患者ごとに、または患者の臨床状態に基づいた使用中に、変更または特製を必要としない標準化溶液である。さらに、標準化補液、透析液およびカルシウム溶液の3つのみが、CRRT方法を実施するために必要とされる溶液である。これは、最大で5つの異なる溶液を必要とした(かつ、個々の患者のニーズに基づいて特製された)、多くの従来技術の方法を越える明確な利点である。限定されないが、CVVHDFなどのCRRTにおいて、これらの標準化溶液を使用することにより、高い溶質クリアランスおよび優れた局所抗凝固特性が可能となる。よって、ここで開示される新規の標準化溶液は、個々の患者のニーズに基づく特製を必要としない。さらに、ここで開示される標準化溶液は、使用中の変更を必要としない。標準化溶液は、溶液の組成物を変化させるよりもむしろ、溶液の流速を変更することによって、代謝および電解質制御、ならびに一定の流出速度を達成する。
【0021】
標準化溶液の調製
本開示は、種々のCRRTプロトコルにおいて使用するための、新規の標準化クエン酸補液溶液、標準化透析液および標準化カルシウム溶液を提供する。これらの溶液を下記に説明する。
【0022】
本開示は、標準化クエン酸塩補液溶液、およびCRRT方法における標準化クエン酸塩補液溶液の使用を説明する。クエン酸塩補液溶液は、約15から約25mmol/Lのクエン酸塩、約130〜150mmol/Lのナトリウム(Na)を有する。一実施形態では、ナトリウムは等張性である(約140mmol/L)。クエン酸塩補液溶液の2つの実施形態、(i)0.67%クエン酸三ナトリウム(TSC)溶液、および(ii)0.5%TSC溶液を説明する。第1の実施形態では、0.67%TSC補液溶液は、23mmol/Lのクエン酸塩および140mmol/Lのナトリウムを備える。0.67%TSC溶液は、2500mLの0.45%NaCl、500mLの4%クエン酸塩(4%TSC溶液、Baxter、米国イリノイ州マグローパーク)および6mLの濃縮NaCl(4mmol/mL)を空の3Lバッグに入れることによって調製された。当業者には明らかなように、代替量を提供する処方の代替方法を使用してもよい。第2の実施形態では、0.5%TSC溶液は、18mmol/Lのクエン酸塩および140mmol/Lのナトリウムを有する。0.5%TSC溶液は、2250mLの0.45%NaCl、325mLの4%クエン酸塩(4%TSC溶液、Baxter、米国イリノイ州マグローパーク)および15mLの濃縮NaCl(4mmol/mL)を空の3Lバッグに入れることによって調製された。当業者に明らかなように、代替量を提供する処方の代替方法を使用してもよい。
【0023】
透析液は、約120から約145mmol/Lのナトリウム、約110から約130mmol/Lの塩化物(CL)、約20から約35mmolの重炭酸塩(HCO)、約2から約4mmol/Lのカリウム(K+)および約0.5から約0.7mmol/Lのマグネシウムを有する。一実施形態では、透析液は、140mmol/Lのナトリウム、118.5mmol/Lの塩化物、25mmol/Lの重炭酸塩、4.0mmol/Lのカリウムおよび0.58mmol/Lのマグネシウムを有する(Bicarbonate−25と呼ばれる)。透析液は、4000mLの注射用蒸留水、240mLのNormocarb(R)(Dialysis Solutions Inc、カナダ、トロント)、36mLの濃縮NaCl(4mmol/ml)および9mLの濃縮KCl(2mmol/mL)を空の4Lバッグに入れることによって調製された。Normocarb(R)は、ナトリウム140mmol/L、塩化物106.5mmol/L、重炭酸塩35mmol/Lおよびマグネシウム0.75mmol/Lを含む。カルシウム溶液は、約20から50mmol/Lのカルシウムを有する。一実施形態では、カルシウム溶液は、200mLの10%グルコン酸カルシウム溶液を1000mLの0.9%NaClに加えることによって調製される38.75mmol/Lのグルコン酸カルシウム溶液である。重炭酸塩を基礎にした透析液を使用して、流出物中に除去されるクエン酸塩を相殺した[16、17]。
【0024】
多くの方法を使用して、ここで説明される溶液を作成し得る。先述のものは例示的なものとして提供されるに過ぎず、溶液の調製のその他の方法の除外を意図しない。
【0025】
CRRT技術の説明
ここで説明される実施形態では、CRRT技術はCVVHDFであった。一実施形態では、CVVHDFは、内頸、鎖骨下動脈、または大腿静脈に挿入された二重管12フレンチカテーテルを通して、AN69透析装置(0.9mの有効表面積)とともにCOBE PrismaプリポンプM100セットを使用して行った。図1Aおよび1Bは、0.67%クエン酸塩補液溶液(図1A)および0.5%クエン酸塩補液溶液(図1B)を使用するCRRTプロトコルを概略的に図示する。プリポンプM100輸液セットは市販されており、血液アクセス部位に近く、血液ポンプの前にあるクエン酸塩補液溶液の方向を変えることによって、アクセスラインの大部分が希釈されることを可能にする、単純な栓と拡張ラインから成る。このような配置により、クエン酸塩補液溶液がフィルタ前に供給されると、体外循環路の実質的全体の抗凝固が可能となる。このような配置はフィルタの有効性も維持し、フィルタの耐用期間を延長する。カルシウム溶液は、別の中心静脈ラインを通して(または、大口径多管中心静脈カテーテルの付属注入ポートを通して)投与した。フィルタ後イオン化カルシウムレベルは、局所クエン酸塩投与量を導くPrisma装置の戻りライン上に位置する、フィルタ後血液検体ポート(青色)より測定した。
【0026】
輸液セットはPrismaのフィルタ前補液ポートを通るため、クエン酸塩補液溶液の注入速度は、正味の液体除去の計算においてPrisma装置によって計上される。説明される実施形態では、血液透析ろ過は、90〜180mL/minの血流速度を使用して達成された。当技術分野で周知のように、その他の血流速度を使用してもよい。代替実施形態では、50〜250ml/minの血流速度を使用することができる。ここで説明される方法を使用して得られる透析の投与量は、当業者に周知のように計算することができる。一実施形態では、体重を基礎にした仕組みを使用して、透析の投与量を決定する。Prisma機を使用して、mL/hr単位の総流出速度は、補液速度(mL/hr)、透析液速度(mL/hr)および液体除去速度(mL/hr)の合計に等しい。ここで説明される実施形態では、35mL/hrの流体速度が使用され、CVVHDF開始時の患者のキログラム単位の体重によって決定された。当業者であれば明確となるように、その他の流出速度も使用してよい。代替実施形態では、流出速度は、約20から50ml/kg/hrとすることができる。クエン酸塩補液溶液および透析液の供給速度は独立して、約500から約3500ml/hrまで様々であってよい。一実施形態では、クエン酸塩補液溶液および透析液の供給速度は1000ml/hrである。供給速度は、患者の要件または治療目的に基づいて、医療提供者によって決定することができる。カルシウム溶液の供給速度は、約10から約150mL/hrまで様々であってよい。一実施形態では、カルシウム溶液の供給速度は約60mL/hrである。供給速度は、患者の要件または治療目的に基づいて、医療提供者が決定してよい。
【0027】
クエン酸塩補液溶液、透析液およびカルシウム溶液の供給速度は、患者の要件または治療目的に基づいて医療提供者によって決定されるように、初期供給速度から漸増することができる。例えば、クエン酸塩補液溶液および透析液は、所定の増加量における初期速度から漸増し、フィルタ後イオン化カルシウムレベルを0.25〜0.5mmol/Lに維持することができる。一実施形態では、所定の増加量は、約25から200mL/hrである。
【0028】
カルシウム溶液は、所定の増加量において漸増し、全身イオン化カルシウムレベルを0.9〜1.3mmol/Lに維持することができる。一実施形態では、所定の増加量は、約10から30mL/hrである。例えば、全身イオン化カルシウムレベルが約0.8から0.9mmol/Lの範囲である場合、カルシウム溶液の供給速度は10ml/hrずつ増やすことができ、全身イオン化カルシウムレベルが約0.8mmol/L未満である場合、カルシウム溶液の供給速度は、20mL/hrずつ増やすことができる。全身イオン化カルシウムが約1.3mmol/L以上であれば、治療レベルが得られるまで、カルシウム溶液の供給速度を10ml/hrの増加量ずつ減らすことができる。
【0029】
上記の実施形態では、流出速度(mL/kg/hr)は、透析の投与量に対する代理として使用し、下記のように計算した。
【0030】
流出速度=(透析液の流速(mL/hr)+補液の流速(mL/hr)+液体除去速度(mL/hr))/患者の体重(kg)
【0031】
例えば、70kgの患者は、2450mL/hr(70kg×35mL/kg/hr)の総流出速度を必要とするであろう。したがって、補液溶液、透析液および液体除去の速度は、2,450mL/hrの流出速度を達成するように調整されるであろう。一実施形態では、補液溶液および透析液の速度は、CRRTの開始時に均等に設定し(例えば1000ml/hrより速く)、患者の代謝、抗凝固および体液平衡の要件に従って漸増した。補液溶液および透析液の速度は、互いに異なるように設定してもよい。しかし、総流出速度は一定のままであった。
【0032】
代替実施形態では、体重を基礎にしない仕組みを使用して、透析の投与量を決定することができる。そのような仕組みの一実施形態では、液体除去速度に変更を行って、補液溶液および透析液の供給速度を一定速度に設定することができる。例えば、補液溶液および透析液の供給速度は、所望のように設定することができ(500から3500ml/hrなど)、達成される所望の量の状態によって、液体除去速度を調整することができる。
【0033】
CRRT療法の監視
血清およびフィルタ後イオン化カルシウムレベルを測定し、フィルタ後イオン化カルシウムレベルが0.25から0.5mmol/Lの範囲であり、血清イオン化カルシウムレベルが約0.9から1.3mmol/Lの範囲であることを確実にする。測定値は、医療提供者によって決定されるように、採取することができる。一実施形態では、血清およびフィルタ後イオン化カルシウムレベルはCRRTの開始後1時間、次いでその後6時間ごとに測定した。動脈血液ガス(ABG)、血清電解質(マグネシウム、カルシウム、およびリンを含むが、これらに限定されない。)、凝固パラメータおよび完全血球算定もまた、医療提供者によって決定されるように測定される。一実施形態では、これらの構成要素は少なくとも毎日測定した。医療提供者は、血清pHが<7.20または>7.45、重炭酸塩が<15mmol/Lまたは>35mmol/L、あるいは全身イオン化カルシウムが<0.9mmol/Lまたは>1.3mmol/Lであることを要求するように指示された。液体除去の流速、クエン酸補液溶液の流速または透析液の流速に対する任意の変更は、相互調整をもたらし、35mL/kg/hrの一定流出速度を確保した。透析装置のフィルタは、製造業者の推奨につき、72時間ごとに定期的に変えた。クエン酸塩毒性に対する監視は、前述のように行った(18)。
【0034】
統計的分析
結果は、平均値、中央値および四分位範囲として表される。基本特性および結果測度は、量的変数に対してスチューデントt−検定またはウイルコクソンの順位和検定、および割合に対してピアソンのカイ二乗検定またはフィッシャーの直接確率検定を使用して比較した。フィルタの存続は、カプラン・マイヤー生存統計およびログランク検定を使用して比較した。p値<0.05が、統計的有意と考えられた。
【0035】
治療の方法
また本開示は、CRRTおよびここで説明される標準化溶液を使用して治療可能な疾患または症状を有する個人を治療する方法も説明する。一実施形態では、疾患または症状は腎疾患である。腎疾患は、ARFおよびCRFとすることができるが、これらに限定されない。ARFまたはCRFの一因となり、および/または引き起こす種々の原因があり、そのような原因は、腎炎、薬物使用/過剰摂取、外科的介入、未熟児および新生児環境において発生する合併症、移植手技、熱傷、外傷、敗血症、ショックおよび多臓器不全を含むがこれらに限定されない(25)。代替実施形態では、疾患または症状は腎疾患ではなく、薬物使用/過剰摂取、重度酸塩基異常の補正、溶質/体液平衡制御、うっ血性心不全、敗血症のメディエータまたはサイトカインの除去、脳浮腫状態、ARDS、肝庇護、膵炎および熱傷管理を含むことができるが、それに限定されない(26)。治療の方法は、そのような治療を必要とする個人を識別するステップと、CRRTプロトコルを使用して、標準化クエン酸塩補液溶液および透析液をそのような個人に投与するステップとを含む。一実施形態では、クエン酸補液溶液は、ここで説明される0.67%TSC溶液または0.5%TSC溶液であり、透析液はBicarbonate−25溶液であり、CRRTプロトコルは、クエン酸塩補液溶液が体外循環路を介して導入される、ここで説明されるようなCVVHDFプロトコルである。クエン酸補液溶液および透析液は、約500から3500mL/hrの速度で投与され、流出速度は20から45mL/kg/hrの間である。一実施形態では、クエン酸塩は約10〜40mM/hrの速度で供給される。
【0036】
また本開示は、ここで説明される標準化溶液を使用するCRRT手順の間の、局所抗凝固を提供する方法も提供する。この抗凝固を提供する方法は、そのような抗凝固を必要とする個人を識別するステップとおよびCRRTプロトコルを使用して、標準化クエン酸塩補液溶液および透析液をそのような個人に投与するステップとを含む。一実施形態では、クエン酸補液溶液は、ここで説明される0.67%TSC溶液または0.5%TSC溶液であり、透析液はここで説明されるBicarbonate−25溶液であり、CRRTプロトコルは、クエン酸塩補液溶液が凝固の予防のために体外循環路を介して導入される、ここで説明されるようなCVVHDFプロトコルである。クエン酸補液溶液および透析液は、約500から3500mL/hrの速度で投与され、流出速度は20から45mL/kg/hrの間である。一実施形態では、クエン酸塩は約10〜40mM/hrの速度で供給される。
【0037】
また本開示は、ここで説明される標準化溶液を使用するCRRT手順の間に使用される透析装置のフィルタの有効性を拡大するための方法も提供する。この透析装置のフィルタの有効性を拡大する方法は、CRRTを必要とする個人を識別するステップとおよびCRRTプロトコルを使用して標準化クエン酸塩補液溶液および標準化透析液をそのような個人に投与するステップとを含む。一実施形態では、クエン酸補液溶液は、ここで説明される0.67%TSC溶液または0.5%TSC溶液であり、透析液はここで説明されるBicarbonate−25溶液であり、CRRTプロトコルは、クエン酸塩補液溶液が凝固の予防のために体外循環路を介して導入される、ここで説明されるようなCVVHDFプロトコルである。体外循環路内の血液の凝固を防ぐことによって、透析装置のフィルタの耐用期間が延長される。一実施形態では、フィルタの有効性は、72時間のCRRT後に70%以上であった。クエン酸補液溶液および透析液は、約500から3500mL/hrの速度で投与され、流出速度は20から45mL/kg/hrの間である。一実施形態では、クエン酸塩は約10〜40mM/hrの速度で供給される。
【実施例】
【0038】
本開示は、以下のような実施例を提供して、ここで提供される教示を解説する。下記の実施例は、本開示によって可能となる技術の特定の実施形態の応用を説明すると理解されるべきであり、いかなる方法によっても本開示を限定するものとしてとらえられるべきではない。実施例で説明される処方、投与の方法および使用は、当業者にとって周知であるようにおよび本明細書で説明されるように、変更することができる。本開示で使用される方法に関する追加情報は、(24)に見ることができる。
【0039】
CRRT開始時の患者の臨床的特徴
2つの研究を行い、CRRTプロトコルと共に使用される標準化溶液を評価した。1つの研究では、0.67%TSC溶液をクエン酸塩補液溶液として使用した。第2の研究では、0.5%TSC溶液をクエン酸塩補液溶液として使用した。両研究において、透析液はBicarbonate−25溶液であった。
【0040】
0.67%TSC溶液を使用する研究については、35mL/kg/hrの流出速度で0.67%クエン酸塩補液溶液および透析液(Bicarbonate−25)を使用し、バーミングハムのアラバマ大学にて2003年8月から2004年2月までCVVHDFを受けた、24名の連続成人ICUのARF患者を前向きに研究した。CRRTプロトコルは、ここで説明されるように行った。0.5%TSC溶液を使用する研究については、0.5%クエン酸塩補液溶液を使用した以外は同じプロトコルを使用し、2004年5月から2005年6月までCVVHDFを受けた、32名の連続ICUのARF患者であった。患者は、年齢19歳以上で少なくとも48時間のCRRTを受けていれば、どちらか一方の群に含まれる資格があった。登録時に収集されたデータは、人口統計、臨床的パラメータ、CRRT開始時の急性生理学・慢性健康評価(APACHE)IIスコア、血液生化学検査、動脈血液ガスおよび凝固指標を含んだ。血流速度、透析速度、補液速度、液体除去速度および透析装置の有効性を含むCRRTデータも毎日記録した。
【0041】
0.67%クエン酸塩補液溶液で治療した24名のICU患者および0.5%クエン酸塩補液溶液で治療した32名のICU患者の基本特性を図2に示す。代謝およびCRRTパラメータも要約する。CRRTの開始時、0.67%クエン酸塩群の24名の患者中15名(56%)が敗血症を認め、13名(54%)が乏尿症であり、21名(88%)が挿管され、14名(58%)が血液動態支援用の昇圧を必要とした。0.5%クエン酸塩群では、32名の患者中13名(41%)が敗血症を認め、19名(59%)が乏尿症症であり、26名(81%)が挿管され、16名(50%)が昇圧を必要とした。2群間で基本特性の有意差はなかった。
【0042】
CRRTにおける患者の代謝および酸塩基制御
CRRTの最初の10日間の酸塩基および電解質制御を、0.67%(図2A)および0.5%クエン酸塩群(図2B)の両方について示す。箱ひげ図は、四分位範囲および極値とともに、毎日のCRRTのpH、pCO2、血清重炭酸塩、ナトリウム、およびカリウムに対する中央値を表示する。0.67%クエン酸塩群では、pH中央値は7.40〜7.45に及んだ。血清重炭酸塩およびpCO2の中央値はそれぞれ、21〜27mmol/Lおよび30〜38mmHgに及んだ。0.5%クエン酸塩群では、pH中央値は7.36〜7.43に及んだ。血清重炭酸塩およびpCO2の中央値はそれぞれ、21〜25mmol/Lおよび31〜39mmHgに及んだ。
【0043】
CRRT中の代謝アルカローシスは、0.5%クエン酸塩群と比べて、0.67%クエン酸塩群でより頻繁に発生した(p=0.001、カイ二乗)。0.67%クエン酸塩群の24名の患者中18名が、CRRT中のある時点でpH7.50以上(最大pH7.62)を認めた一方で、0.5%クエン酸塩群の32名の患者中9名のみが、pH7.50以上(最大pH7.55)を認めた。従来技術において行われたように標準溶液の組成物を変えるよりもむしろ、クエン酸塩補液溶液および透析液の速度を調整することによって、アルカローシスが軽減された。例えば、1500ml/hrの透析液の流速および1500ml/hrのクエン酸塩補液溶液の流速によるCRRTを行っている患者において代謝アルカローシス(pH7.50以上)を補正するために、透析液の流速を所望の量だけ上昇させることができ、クエン酸塩補液溶液の流速を対応する量だけ減少させ、最終的なクエン酸塩濃度を低下させることができる。例えば、透析液およびクエン酸塩補液溶液の流速がいずれも1500mL/hrである実施形態では、透析液の流速は1800ml/hrにまで上昇させることができ、クエン酸塩補液溶液の流速は1200ml/hrにまで減少させることができる。上記のように、流速が対応する変更を受ける際、流出速度は一定のままである。クエン酸補液溶液の流速を減らすと、クエン酸供給(およびその後の重炭酸塩の産出)が減少する一方で、透析液の流速を上昇させると(Bicarbonate−25透析液に対して重炭酸塩濃度が25mmol/Lである場合)、重炭酸塩除去を増進し、それによって血清重炭酸塩レベルを低下させる。透析液が等張性であるため、重大な低ナトリウム血症または高ナトリウム血症に関する問題が回避される。0.67%TSC溶液で治療した患者で高ナトリウム血症(ナトリウム150mmol/L以上)を発現した者はおらず、0.5%TSC溶液で治療した患者の3%が発現した。153mmol/Lの最大ナトリウムであった。これと比較して、従来技術の2%クエン酸塩補液溶液を使用すると、治療を受けた患者の23%が高ナトリウム血症を発現した(両群についてp<0.01、フィッシャーの直接確率検定)(19)。4mmol/Lの透析液カリウム槽を使用して、カリウムレベルを正常化した。0.67%および0.5%TSC溶液群の両方に対する血清ナトリウムおよびカリウムレベルの中央値はそれぞれ、134〜138mmol/Lおよび3.6〜4.2mmol/Lに及んだ。Bicarbonate−25透析液はリンを含まないので、リンの補給が時々必要であった。
【0044】
CRRTについての凝固およびイオン化カルシウムデータ
0.67%TSC溶液で治療した患者(n=24)では、患者ごとのCRRTの平均日数は9.3±8であった。合計で111のフィルタを使用した。CRRTの開始後、92%のフィルタが24時間後有効性であり、48時間後80%、72時間後69%であった(図3)。0.5%TSC溶液で治療した患者(n=32)では、患者ごとのCRRTの平均日数は7.8±8であった。合計で137のフィルタを使用した。89%のフィルタが24時間後有効性があり、48時間後82%、72時間後80%であった。群間でフィルタ有効性の有意差はなかった。本結果は、従来技術の手法を使用して認められるものを越える劇的な増加である(表1の48時間の循環路耐用期間を参照)。
【0045】
全身イオン化カルシウムレベルは、0.67%TSC溶液および0.5%TSC溶液で治療した患者についてそれぞれ、0.73〜1.45mmol/Lおよび0.78〜1.54mmol/Lに及んだ。それぞれの異常全身イオン化カルシウム値に対して、(本願で先述のような)カルシウム溶液注入速度の調整は結果として、1時間以内にイオン化カルシウムレベルの正常化をもたらした。提示された研究では、臨床的有意な低カルシウム血症の例はなく、いったん定常状態が達成されると注入速度のさらなる調整は最小限であった。全身カルシウム溶液注入のほとんどの調整は、CRRT開始の24時間以内に発生した。900から2000mL/hrにクエン酸補液溶液の流速を変更したにもかかわらず、補液の流速を増加させることによって補正された1つの例を除いて、フィルタ後イオン化カルシウムレベルは両群について0.5mmol/L未満のままであった。フィルタ後イオン化カルシウムレベルは、0.67%TSC溶液および0.5%TSC溶液で治療した患者についてそれぞれ、0.17〜0.56mmol/Lおよび0.16〜0.47mmol/Lに及んだ。出血症状または臨床的有意なクエン酸塩毒性の例はなかった。全カルシウム対イオン化カルシウムの最大比率は、0.67%TSC溶液で治療した患者については2.8、0.5%TSC溶液で治療した患者については2.7であった。全体的に、両クエン酸塩群は、Venkataramらによって説明されるような68%と比べると、規定のCRRT療法の80%を受けた。治療量以下の抗凝固よりもむしろ、手技の輸送および患者のケアの問題がほとんど、治療時間の損失の一因となった。
【0046】
考察
ここで説明されるようなCRRTにおける標準化溶液の使用は、従来技術を越える顕著な利点を提供する。上記のように、説明されるCRRT方法は3つのみの標準化溶液を活用することによって、溶液の投与および調整における間違いの危険性を大きく軽減する。そのような危険性の軽減は、従来技術の方法を使用する際の欠点である(23)。また、溶液は患者の臨床状態に基づく溶液の変更/特製を必要とせず、溶液は全患者集団に使用することができる(それによって調製における顕著な費用節減を達成する)。よって、標準化溶液は追加変更を必要としない。一部の従来技術のCRRTプロトコルは市販の溶液を活用する一方で、添加剤がしばしば個人の代謝要求に従って調整され、時には特製が必要である。対照的に、ここで説明される標準溶液は、クエン酸塩補液溶液、透析液(現在市販されている)、およびカルシウム溶液に対する標準組成物を使用する。CRRTの開始後、各溶液の組成物は不変のままである。これによって、混合薬学部門による、溶液のバッチ調製、およびバッチ試験を可能にする。CRRTを中止する場合、未使用の溶液は他の患者に利用可能であり、廃棄されない。
【0047】
ここで説明されるようなCRRTにおける標準化溶液の使用は、追加の利益も提供する。
【0048】
CRRT方法におけるクエン酸塩補液溶液の使用は、高い溶質クリアランスを一貫して提供した。表1に示されるように、1時間につき1〜2リットルの透析投与速度が得られた。最近のデータは、より高い透析投与量が臨床転帰の改善につながることを示唆している。Schifflらは、間欠的血液透析に対して本所見を実証し、RoncoらはCVVHを使用してこのことを確認した(21、2)。ここで使用される一実施形態では、クエン酸塩補液溶液および透析液の流速が調整され、液体除去速度の変化を補うことによって35ml/kg/hrの流出速度(ある程度患者の体重に基づいて決定される)を維持した。
【0049】
しかし、その他のプロトコルを使用してもよい。全ての腎臓専門医が体重を基礎にしたプロトコルを使用したり、または一定の流出速度を維持するわけではないので、クエン酸塩補液溶液および透析液は定められた初期流速(1000ml/hrより速いなど)で開始し、医療提供者の裁量に従って調整することができる。結果として、日常的に通常必要とされる唯一の変化は、所望の量の状態によって、液体除去速度に関するものである。体重を基礎にした投与量がなくても、優れた代謝制御および高い溶質クリアランスが達成される。
【0050】
標準化溶液中の電解質は生理学的濃度において存在し、患者における代謝の破滅的状況の危険性を最小限にする。例えば、クエン酸塩補液溶液および透析液を切り替えても、CRRTとともに使用するための従来技術の溶液の場合のように、代謝の破滅的状況はもたらさない。補液溶液として使用される場合の濃縮クエン酸塩溶液(4%TSC)の不注意な代用による代謝結果を推測する場合、市販の溶液中のナトリウム濃度は408mmol/Lと高濃度であることがあり(9、10)、透析液については、200mL/hr(4%TSC補液溶液に対する一般的速度)から1000mL/hr(透析液に対する一般的速度)に流速を増加させる。Mehtaのプロトコル(10)どおりに、抗凝固用の濃縮クエン酸塩および低ナトリウム透析液を使用すると、問題が発生する場合もある。クエン酸塩補液溶液が省略されるか、または低ナトリウム透析液が間違えてクエン酸塩補液溶液に置き換えられると、生じる低ナトリウム血症は致命的となる場合がある。ここで説明されるようなクエン酸塩補液および透析液の標準溶液を使用すると、透析液およびクエン酸塩補液溶液、またはそのそれぞれの速度の任意の偶発的交換は、希釈クエン酸塩濃度および電解質の生理的含有量によるごくわずかな代謝結果しかもたらさない。
【0051】
クエン酸塩補液溶液として0.5%TSC溶液を使用した場合、2〜6mmol/Lの範囲のクエン酸塩濃度が、1〜2L/hrに及ぶクエン酸塩補液溶液の流速とともに認められた。3〜6mmol/Lの血液クエン酸塩濃度は、0.35mmol/L未満の全身イオン化カルシウムレベルに対応することが、以前に実証されている(22)。表3は、0.5%クエン酸塩プロトコルを使用した、様々な血流および補液の速度に対する血中クエン酸塩濃度を解説する。100〜180mL/minの間の血流速度および1〜2L/hrの間の補液速度の範囲に対して、イオン化カルシウムレベルは容易に0.5mmol/L未満に維持される。よって、標準化クエン酸塩補液溶液を使用する代謝性合併症は最小限となる。
【0052】
クエン酸塩を組み込むCRRTプロトコルのうち4つ(表1参照)は、クエン酸塩注入用の静脈アクセスの動脈肢の端に配置される三方活栓またはY連結器(5、8、9、10)を使用する。これらのプロトコルでは、補液溶液は通常どおり、透析装置上のフィルタ後補液ポートを通して投与される。栓がCRRT循環路の外にあるため、CRRT装置によって測定される正味の液体除去はクエン酸塩注入速度を含まない。したがって、看護職員などの医療提供者は、正味の体液平衡を計算する時に注入されたクエン酸塩の量を含むという責任がある。本開示は補液溶液にクエン酸を含み、クエン酸補液溶液はフィルタ前補液ポートにおいて加えられるので、クエン酸塩注入の計算は、正味の液体除去の計算において透析装置によって計上される。本手順は、医療提供者の作業を簡略化し、CRRT療法の投与における間違いの危険性を最小限にする。2つだけのプロトコルは、希釈クエン酸塩および合計3つの溶液を使用する(6、7)(表1のGabuttiおよびDorvalを参照)。2003年に、Dorvalら(7)はCVVHDFに対するクエン酸塩抗凝固投与計画を使用し、72時間にわたって14名の患者を前向きに評価した。Dorvalらは、クエン酸塩を含む補液溶液はCRRTを簡略化したことを示したが、14名の患者中4名のみが実際に透析(およびCVVHDF)を受け、残りはCVVH(透析なし)を受けた。患者の要件に従って、カリウムおよびリンが必要に応じて補液に加えられ、それによって溶液の特製を必要とした。また、クエン酸塩毒性の危険性により、限外ろ過量は2L/hrに制限された。Gabuttiら(6)は、補液(13.3mmol/L)および透析液(13.3mmol/L)両方において希釈クエン酸を使用して、12名の患者を評価した。彼らの方法では、透析液および/またはクエン酸塩補液溶液の組成物は、全身pHに基づいて漸増され、溶液の構成要素の変更を再び必要とした。該プロトコルはCVVHDFに伴うクエン酸塩の使用を簡略化したが、両溶液ともクエン酸塩を含んだため、高pHにおける透析液および限外ろ過量を減少させなければいけないことにより制限された。結果として、高pHの一部の患者は、補液のみを受けて透析液を受けなかった。さらに、5名の患者が不確かな理由によりクエン酸塩からヘパリンに切り替えられ、全患者に対する限界ろ過量は2L/hrに制限された。最後に、フィルタ存続は48時間後で15%しかなかった。
【0053】
表1に示される残りのクエン酸塩プロトコルはより複雑で、付加的な溶液および混合物を必要とし、本開示の標準化溶液を使用するCRRTと比較して、フィルタの存続率がより低い。0.67%クエン酸塩を受けた一部の患者は軽度アルカローシスを発現し、補正のために補液溶液の流速と透析液の流速の調整を必要とした。アルカローシスは、0.5%までのクエン酸塩補液溶液の希釈によって、第2の患者コホートにおいて後に軽減された。0.5%クエン酸塩により、流出速度を所望のレベルに保つために(実施例では35ml/kg/hr)、補液溶液の流速および透析液の流速に対する変化は、液体除去速度が変更された場合にのみ生じた。酸塩基状態は0.5%溶液で適切に制御されたため、さらなる速度調整は不要であった。
【0054】
CRRTにおける標準化クエン酸塩補液溶液および透析液の使用により、CRRTの供給における顕著な経費削減が可能となった。このことは主として、溶液の標準化、より少ない廃棄物、および凝固に対するより少ない数の透析装置の変更に起因している。1日あたり患者あたりの、出願者のセンターにおけるCRRTの溶液費用は、主に製薬費用の削減および透析液(Gambro、米国コロラド州レイクウッド)の商業的入手性より、1999年から2005年の間に$370から$290に減少した。さらに、CRRTにおける標準化クエン酸塩補液溶液および透析液の使用は、クエン酸塩毒性の危険性を上昇させることなく、有効な代謝制御、高い限界ろ過量、およびCRRT循環路の抗凝固を提供することが示された。クエン酸塩補液溶液および透析液の組成物の変化を避けることによって、費用を抑え、作業負荷を軽減し、間違いを最小限にする。さらに、出血および代謝の破滅的状況など、患者の有害事象の危険性は、ごくわずかである。標準化クエン酸塩補液溶液および透析液は、患者集団全体に使用することが可能であるという点で、生産しやすく多目的に使用できる。よって、標準化クエン酸補液溶液および透析溶液の使用は、当技術分野で現在利用可能な補液溶液および透析液に、安全で有効かつ実用的な代替物を提供し、重症患者における腎代償に対する選択のモダリティとして、CRRTのより広範囲に及ぶ受入れに向かった重要な一歩を表す。
【0055】
本開示は限られた数の実施形態について説明されているが、本開示の利益を有する当業者であれば、ここで開示されるような開示の範囲を逸脱しない範囲で、その他の実施形態を考案することが可能であることを十分理解する。従って、本開示の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるべきである。本願で引用される全ての参考文献は、参照することにより、本願で完全に説明されているかのように組み込まれる。
【0056】
参考文献
1.Clark WR、Murphy MH、Alaka KJ、Mueller BA、Pastan SO、Macias WL:持続的血液ろ過中の尿素動態。ASAIO J 38:M664−667。1992年
2.Ronco C、Zanella M、Brendolan A、Milan M、Canato G、Zamperetti N、Bellomo R:重症患者における重度急性腎不全の管理:345センターにおける国際調査。Neph Dial Trans 16:230−237。2001年
3.Ronco C、Bellomo R、Homel P、Brendolan A、Dan M、Piccinni P、La Greca G:急性腎不全の転帰に対する持続的静静脈血液ろ過における異なる投与量の影響:前向き無作為化試験。Lancet 355:26−30。2000年
4. Monchi M、Berghmans D、Ledoux D、Canivet JL、Dubois B、Damas P:持続的静静脈血液ろ過における抗凝固用のクエン酸塩対ヘパリン:前向き無作為化研究。Intensive Care Med 30:260−265。2004年
5.Cointault O、Kamar N、Bories P、Lavayssiere L、Angles O、Rostaing L、Genestal M、Durand D:市販の溶液を使用する持続的静静脈血液透析ろ過における局所クエン酸塩抗凝固。Neph Dial Trans 19:171−178。2004年
6.Gabutti L、Marone C、Colucci G、Duchini F、Schonholzer C:持続的静静脈血液透析ろ過におけるクエン酸塩抗凝固:代謝課題。Intensive Care Med 28:1419−1425。2002年
7.Dorval M、Madore F、Courteau S、Leblanc M:持続的静静脈血液透析ろ過に対する新規のクエン酸塩抗凝固。Intensive Care Med 29:1186−1189。2003年
8.Tobe SW、Aujla P、Walele AA、Oliver MJ、Naimark DM、Perkins NS、Beardsall M:市販の溶液のみを使用するCRRTに対する新規の局所クエン酸塩抗凝固。J Crit Care 18:121−129。2003年
9.Kutsogiannis D、Mayers I、Chin WD、Gibney RT:持続的静静脈血液透析ろ過における局所クエン酸塩抗凝固。AJKD 35:802−811。2000年
10.Mehta RL、McDonald BR、Aguilar MM、Ward DM:重症患者における持続的動静脈血液透析に対する局所クエン酸塩凝固。Kidney Int 38:976 981。1990年
11.Mueller BA:持続的腎代償療法の薬学側面。2004年度中間臨床会議、ミシガン大学薬学部。http://ashp.omnibooksonline.com/2004/papers/PI−009.pdf
12.外部患者安全レビュー、カルガリー保健区、2004年6月
13.カナダニュースワイヤグループ:アルバータ州健康質会議が、病院における塩化カリウム含有製品の安全な取り扱い、および持続的腎代償療法透析液の調製に対する推奨を発表。2004年7月
14.Mehta R:重症患者における持続的腎代償療法。Kidney Int 67:781−795。2005年
15.Tolwani A、Campbell R、Schenk M、Allon M、Warnock DG:持続的腎代償療法に対する簡易クエン酸塩抗凝固。Kidney Int 60:370− 374。2001年
16.Swartz R、Pasko D、O’Toole J、Starmann B:局所クエン酸塩抗凝固を使用する持続的腎代償療法の供給の改善。Clin Nephrol 61:134 143。2004年
17.Chadha V、Garg U、Warady BA、Alon US:持続的静静脈腎代償療法を受ける子供におけるクエン酸塩クリアランス。Pediatr Nephrol 17:819−824。2004年
18.Meier−Kriesche HU、Finkel KW、Gitomer JJ、DuBose TD Jr.:局所クエン酸塩抗凝固による持続的静静脈血液透析中の予期しない重度低カルシウム血症。Am J Kidney Dis 33: 1−4。1999年
19.Walker LJ、Campbell RC、O’Reilly PJ、Tolwani AJ。2%クエン酸三ナトリウム局所抗凝固を使用する持続的腎代償療法:前向き研究[要約]。Blood Purif 19:333。2001年
20.Venkataraman R、Kellum JA、Palevsky P:米国の大型大学医療センターにおける持続的腎代償療法に対する投与パターン。J Crit Care 17:246−250。2002年
21.Schiffl H、Lang SM、Fischer R:毎日の血液透析と急性腎不全の転帰。NEJM 346: 305−310。2002年
22.Flanigan MJ、Pillsbury L、Sadewasser G、Lim VS:局所血液透析抗凝固:高張性クエン酸三ナトリウムまたは抗凝固クエン酸塩デキストロース。Am J Kidney Dis 27:519−524。1996年
23.Mehta R:持続的腎代償療法における酸塩基および電解質管理。Blood Purif 20:262−268。2002年
24.Tolwani AJ、Predergast、MB、Speer、RR、Stofan BS、Wille、KM:代謝制御および高溶質クリアランスに対する実用的なクエン酸塩抗凝固CVVHDFプロトコル。Clin J Am Soc Nephrol In Press。2005年
25.Ronco C、Zanella M、Brendolan A、Milan M、Canato G、Zamperetti N、Bellomo R:重症患者における重度急性腎不全の管理:345センターにおける国際調査。Nephrol Dial Transplant 16:230−237。2001年
26.Vanholder R、Biesen WV、Lameire N:集中治療患者に対する第1選択の腎代償方法とは?J Am Soc Nephrol 12:S40−S43。2001年
【0057】
【表1】


【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

RF=クエン酸塩補液溶液の流速
**3〜6mmol/Lのクエン酸塩の血中濃度は、0.35mmol/L未満の全身イオン化カルシウム濃度に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】補液として0.67%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、CVVHDF CRRT療法の手順の概略図である。
【図1B】補液として0.5%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、CVVHDF CRRT療法の手順の概略図である。
【図2A】補液として0.67%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する代謝および電解質制御を示し、結果は中央値として、および四分位範囲で表される。
【図2B】補液として0.5%TSC溶液、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する代謝および電解質制御を示し、結果は中央値として、および四分位範囲で表される。
【図3】補液として0.67%TSC溶液(破線)または0.5%TSC溶液(実線)、および透析液としてBicarbonate−25を使用する、ここで説明されるようなCVVHDF CRRT療法で治療される患者に対する透析装置のフィルタの耐用期間(有効性)を示し、結果はカプラン・マイヤー分析を使用して表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約15から約25mmol/Lのクエン酸塩とおよび約130〜150mmol/Lのナトリウムとから本質的に成る、クエン酸塩を含む補液溶液。
【請求項2】
18mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとから本質的に成る、請求項1に記載の補液溶液。
【請求項3】
23mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとから本質的に成る、請求項1に記載の補液溶液。
【請求項4】
約110から約130mmol/Lの塩化物と、約20から約35mmol/Lの重炭酸塩と、約2から約4mmol/Lのカリウムとおよび約0.5から約0.7mmol/Lのマグネシウムとから本質的に成る、CRRTとともに使用するための透析液。
【請求項5】
140mmol/Lのナトリウムと、118.5mmol/Lの塩化物と、25mmol/Lの重炭酸塩と、4.0mmol/Lのカリウムとおよび0.58mmol/Lのマグネシウムとから本質的に成る、請求項4に記載の透析液。
【請求項6】
クエン酸塩補液溶液とおよび透析液とを有し、前記補液溶液および透析液に関し、前記補液溶液は、約15から約25mmol/Lのクエン酸塩とおよび約130〜150mmol/Lのナトリウムとを有し、前記透析液は、約110から約130mmol/Lの塩化物と、約20から約35mmolの重炭酸塩と、約2から約4mmol/Lのカリウムとおよび約0.5から約0.7mmol/Lのマグネシウムとを有する、CRRTにおいて使用するための組成物。
【請求項7】
前記補液溶液が、18mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記補液溶液が、23mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記透析液が、140mmol/Lのナトリウムと、118.5mmol/Lの塩化物と、25mmol/Lの重炭酸塩と、4.0mmol/Lのカリウムとおよび0.58mmol/Lのマグネシウムとを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
カルシウム溶液をさらに有し、前記カルシウム溶液は、前記補液溶液および前記透析液と組み合わせて使用され、前記カルシウム溶液は、約20から約50mmol/Lのグルコン酸カルシウムを有する、請求項6の組成物。
【請求項11】
前記カルシウム溶液が、38.75mmol/Lのグルコン酸カルシウムを有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第1の流速で標準化クエン酸塩補液溶液を前記患者に投与するステップを含み、前記補液溶液は、透析ユニットの体外循環路内におよび前記透析ユニットのフィルタの前に投与され、前記補液溶液は、約15から約25mmol/Lのクエン酸塩とおよび約130〜150mmol/Lのナトリウムとを有する、CRRTを受ける患者において局所抗凝固治療を提供する方法。
【請求項13】
前記補液溶液が、18mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウム、または23mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の流速が、約18〜27mM/hrの速度でクエン酸塩を供給するように設定されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の流速が約500から3500mL/hrである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、15mmol/Lから35mmol/Lの間の重炭酸塩レベルと、0.9mmol/Lから1.3mmol/Lの間の血清イオン化カルシウムレベルとおよび0.5mmol/L未満のフィルタ後イオン化カルシウムレベルとを維持している、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルタが、72時間のCRRT後に、少なくとも70%のフィルタの有効性を維持している、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記補液溶液および前記透析液が、患者の臨床状態に基づく変更を必要としない、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第1の流速で標準化クエン酸塩補液溶液を前記患者に投与するステップを含み、前記補液溶液は、透析ユニットの体外循環路内におよび前記透析ユニットのフィルタの前に投与され、前記補液溶液は、約15から約25mmol/Lのクエン酸塩とおよび約130〜150mmol/Lのナトリウムとを有する、CRRTを受ける患者において透析フィルタの耐用期間を延長する方法。
【請求項20】
前記補液溶液が、18mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウム、または23mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムとを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の流速が、約18〜27mM/hrの速度でクエン酸塩を供給するように設定されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の流速が約500から3500mL/hrである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、15mmol/Lから35mmol/Lの間の重炭酸塩レベルと、0.9mmol/Lから1.3mmol/Lの間の血清イオン化カルシウムレベルとおよび0.5mmol/L未満のフィルタ後イオン化カルシウムレベルとを維持している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記フィルタが、72時間のCRRT後に、少なくとも70%のフィルタの有効性を維持している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記補液溶液および前記透析液が、患者の臨床状態に基づく変更を必要としない、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
a.第1の流速で標準化クエン酸塩補液溶液を患者に投与するステップ(前記補液溶液は、透析ユニットの体外循環路内におよび前記透析ユニットのフィルタの前に投与され、前記補液溶液は、約15から約25mmol/Lのクエン酸塩とおよび約130〜150mmol/Lのナトリウムとを有する。)と、
b.第2の流速で標準化透析液を前記患者に投与するステップ(前記透析液は、約110から約130mmol/Lの塩化物と、約20から約35mmol/Lの重炭酸塩と、約2から約4mmol/Lのカリウムとおよび約0.5から約0.7mmol/Lのマグネシウムとを有する。)と、
c.第4の流速で標準化カルシウム溶液を前記患者に投与するステップ(前記カルシウム溶液は、約20から約50mmol/Lのグルコン酸カルシウムを有する。)と、および
d.第3の流速で流体を前記透析ユニットから取り除くステップ(前記第1、第2、および第3の流速は独立して調整される。)と
を含む、CRRTを受ける患者において局所抗凝固治療を提供する方法。
【請求項27】
前記第1、第2および第3の流速が、独立して調節され、一定の流出速度を維持している、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1、第2および第3の流速が、約20〜45mL/kg/hrの流出速度を維持するように独立して設定され、前記流出速度は、前記第1の流速、第2の流速および第3の流速を足して合計を求め、前記合計を前記患者の体重で割ることによって決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1および第2の流速が、約500から約3500mL/hrに独立して設定されている、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記補液溶液が、18mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウム、または23mmol/Lのクエン酸塩とおよび140mmol/Lのナトリウムを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記透析液が、140mmol/Lのナトリウムと、118.5mmol/Lの塩化物と、25mmol/Lの重炭酸塩と、4.0mmol/Lのカリウムとおよび0.58mmol/Lのマグネシウムとを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の流速が、約18〜27mM/hrの速度でクエン酸塩を供給するように設定されている、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、15mmol/Lから35mmol/Lの間の重炭酸塩レベルと、0.9mmol/Lから1.3mmol/Lの間の血清イオン化カルシウムレベルとおよび0.5mmol/L未満のフィルタ後イオン化カルシウムレベルとを維持している、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記フィルタが、72時間後に少なくとも70%のフィルタの有効性を維持している、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記補液溶液および前記透析液が、患者の臨床状態に基づく変更を必要としない、請求項26に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−523117(P2009−523117A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540281(P2008−540281)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/044219
【国際公開番号】WO2007/059145
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(505320791)ザ・ユー・エイ・ビー・リサーチ・フアンデーシヨン (5)
【Fターム(参考)】