説明

以前に治療された乳癌の治療のための抗血管新生療法

本開示は、抗VEGF抗体を用いた疾患及び病態の一般的な治療に関する。より具体的には、本開示は以前に治療された転移性乳癌において1つ以上の追加の抗腫瘍治療薬と併用して、抗VEGF抗体を用いて、癌に感受性があるか又は癌と診断されたヒト患者の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年12月3日に出願された米国特許仮出願番号61/266343、及び2009年8月15日に出願された米国特許仮出願番号61/234281の優先権を主張し、この内容全体を出典明記により本明細書に援用する。
(発明の分野)
本発明は、一般的にヒトの疾患及び病的状態の治療に関する。より具体的には、本発明は、以前に治療された乳癌の治療のために、単独で又は他の抗癌治療と組み合わせた抗血管新生療法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌はヒトの健康に最も致命的な脅威の一つである。米国では、癌は毎年約130万人の新規患者に影響を及ぼし、心臓病に続く死亡原因の第2位であり、死者4人に約1人を占める。また、癌は5年以内に第一死亡原因として心血管疾患を上回ることが予測される。固形腫瘍はこれらの死亡のほとんどに関与している。特定の癌の治療に大きな進歩があったものの、全ての癌の全体的な5年生存率は過去20年間でほんの約10%向上したにすぎない。癌、又は悪性腫瘍は、転移し、制御不能な様態で急速に増殖し、時宜を得た検出と治療を非常に困難にしている。
【0003】
乳癌は米国では毎年多くの女性を死に至らす疾患である。米国癌協会によると、2008年に約40000人がその病気で死亡するとされる。毎年18万を上回る乳癌の新規症例が診断されており、8人に1人の女性が乳癌を発症すると推定されている。これらの数字は乳癌が今日、女性が直面する最も危険な疾患の一つであることを示している。転移性乳癌は、標準的な化学療法後に長期生存を達成する患者はほんの少数であり、一般的に不治である。Greenberg et al., J. Clin. Oncol. 14:2197-2205 (1996)。
【0004】
乳癌の基本的な生物学の知識は、この三十年にわたって指数関数的に増大し、いくつかは治療に影響を与えている。HER2過剰発現転移性乳癌患者222人の女性の、多国籍、非盲検第II相試験は、HER2に対する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体(トラスツズマブ(trastuzumab)、ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)、ジェネンテック、サウスサンフランシスコとしても知られる)を用いて、6つの完全な応答を確認し15%の奏効率を見いだした(Cobleigh et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 17:97 (1998))。無作為化第III相試験は、パクリタキセル又はドキソルビシン+シクロホスファミドとの組み合わせの何れかによる一次治療化学療法に、ハーセプチンを追加することの安全性と有効性を評価した。全体的な奏効率と進行に至る時間が化学療法単独に比べて化学療法にハーセプチンを加えることで有意に改善した(Slamon et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 17:98 (1998))。ハーセプチンの追加は全生存期間を延長した(Norton et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 18:127a (1999))。
【0005】
トラスツズマブは、最初の新規な、HER2過剰発現癌を持つ乳癌患者の亜集団の治療のために承認された生物学に基づいた最初の新規な治療薬であるが、複数の他のアプローチが有望であることを示し臨床段階に入っている。しかし、女性の75%が、転移性乳癌がHER2陰性であると診断されるであろうという推定がある。血管新生を阻害する化合物は、さらなる乳癌集団に到達するための特定の関心を生みだし、米国内外において臨床試験の対象である。
【0006】
癌は依然として最も致命的な脅威の一つであり、患者に対する更なる癌治療が必要とされる。本発明は、以下の開示のレビューにより明らかになるように、これら及びその他のニーズに対処する。
【発明の概要】
【0007】
以前に治療された転移性乳癌を持つ乳癌患者を効果的に治療するための抗VEGF抗体の使用が提供される。特に、本発明は、ヒト被検体で以前に転移性乳癌の治療を受けた患者において、化学療法計画との併用でベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))の無作為化第III相臨床試験由来のデータを提供する。このような化学療法計画はタキサン療法(パクリタキセル(paclitaxel)3週間ごとに(q3wk)又は毎週、蛋白結合パクリタキセル小粒子(例えば、アブラキサン(登録商標)(Abraxane)又はドセタキセル(docetaxel))、ゲムシタビン(gemcitabine)、ビノレルビン(vinorelbine)又はカペシタビン(capecitabine)療法を含む。本試験の成功は、化学療法に抗VEGF抗体を加えると、以前に治療された乳癌患者の二次治療として、統計的に有意で臨床的に意味のある利点を提供することを示している。
【0008】
転移性乳癌を有するヒト被検体におけるベバシズマブの使用に関する臨床試験で得られた結果において、無増悪生存期間(PFS)で評価した有効性は、特に化学療法剤単独によるPFSのデータと比較した場合に陽性であったことを示している。化学療法(タキサン療法、カペシタビン、ゲムシタビン又はビノレルビン)と併用してベバシズマブを受けた臨床試験の被検体は化学療法単独で治療された被検体に比べて無増悪生存期間の増加があった。その違いは著しく有意であった。
【0009】
従って、本発明は、抗VEGF抗体の有効量を投与する化学療法を併用する治療計画を患者に供することを含み、以前に治療された転移性乳癌と診断された患者を治療する方法を提供する。抗VEGFの投与と化学療法を組み合わせるこの治療計画は効果的に患者の無増悪生存期間(PFS)を拡張する。
【0010】
所定の実施態様において、PFSは約0.5ヵ月、1ヶ月、1.2ヶ月、2ヶ月、2.1ヶ月、2.2ヶ月、2.8ヶ月、3ヶ月等延長される。所定の実施態様において、PFSは約2.1ヶ月延長される。所定の実施態様において、PFSは約2.2ヶ月延長される。所定の実施態様において、PSFは約2.8ヶ月延長される。
【0011】
抗癌活性を示す任意の化学療法剤は、本発明に従って使用することができる。所定の実施態様において、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連した阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドピロトキシン(epipodopyyllotoxins)、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制薬、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、及び生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体からなる群から選択される。所定の実施態様において、化学療法剤としては、例えば、カペシタビン、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、蛋白結合パクリタキセル小粒子(例えば、Abraxane(登録商標))、ゲムシタビン、ビノレルビンまたはそれらの組み合わせである。所定の実施態様において、化学療法剤は、例えば、カペシタビン、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、蛋白結合パクリタキセル小粒子(例えば、Abraxane(登録商標))、ゲムシタビン、又はそれらの組み合わせである。所定の実施態様において、化学療法剤は、例えば、カペシタビン、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、蛋白結合パクリタキセル小粒子(例えば、Abraxane(登録商標))、またはそれらの組み合わせである。二つ以上の化学療法剤は、抗VEGF抗体の投与と組み合わせて投与さてるカクテルで使用することができる。
【0012】
本発明に係る治療の臨床的ベネフィットは例えば、無増悪生存期間(PFS)の持続、治療成功期間、客観的奏効率及び応答の持続時間によって測定することができる。
【0013】
従って、本発明は、被検体の無増悪生存期間を増加させ、被検体の癌の再発のリスクを減少させ、又は被検体の生存の可能性を高めるために、抗VEGF抗体で治療を受けるための手順を提供することにより、以前に治療された癌、例えば、乳癌を持ったヒト被検体に指示する方法を特徴とする。幾つかの実施態様において、本方法は、少なくとも一つの化学療法剤で治療を受けるための指示を更に含む。抗VEGF抗体による治療は化学療法剤による治療と同時か又は連続的であり得る。所定の実施態様において、被検体は指示の方法に指示される通りに治療される。
【0014】
また、本発明は、被検体の以前に治療された癌、例えば、乳癌の治療のために抗VEGF抗体の投与を宣伝することを含む、プロモーション方法を提供する。幾つかの実施態様において、本方法は少なくとも一つの化学療法剤を投与することを宣伝することを更に含む。抗VEGF抗体の投与は化学療法剤の投与と同時か又は連続的であり得る。プロモーションは、利用可能な任意の手段によって行うことができる。幾つかの実施態様において、プロモーションは抗VEGF抗体の市販製剤に付属するパッケージ挿入物によるものである。プロモーションはまた化学療法剤の市販製剤に付属するパッケージ挿入物によるものである。プロモーションはまた、医師又は医療提供者に対する書面又は口頭での伝達によるものであってもよい。幾つかの実施態様において、プロモーションはまた、パッケージ挿入物がVEGF抗体による治療を受けるための指示を与えるパッケージ挿入物による。幾つかの実施態様において、プロモーションの後に、化学療法剤併用又は非併用下での、抗VEGF抗体による被検体の治療が伴う。
【0015】
本発明は、以前に治療された乳癌等を治療するヒト被検体において、無増悪生存期間を増やすか、被検体の癌の再発の可能性を減らすか、又は被検体の生存可能性を向上させるために、抗VEGF抗体のマーケティングを含むビジネス方法を提供する。幾つかの実施態様において、本方法は、抗VEGF抗体と併用して使用するための化学療法剤のマーケティングを含む。幾つかの実施態様において、マーケティングの後に、化学療法剤併用又は非併用下での、抗VEGF抗体による被検体の治療が伴う。
【0016】
また提供されるのは、以前に治療された乳癌等を治療するヒト被検体において、無増悪生存期間を増やすか、被検体の癌の再発の可能性を減らすか、又は被検体の生存可能性を向上させるために、抗VEGF抗体を併用した化学療法剤のマーケティングを含むビジネス方法である。幾つかの実施態様において、マーケティングの後に、化学療法剤及び抗VEGF抗体の組合わせによる被検体の治療が伴う。
【0017】
本発明の方法の各々において、下記の通り、抗VEGF抗体はVEGF特異的アンタゴニスト、例えばVEGF受容体分子又はキメラVEGF受容体分子と置換され得る。本発明の方法による所定の実施態様において、抗VEGF抗体はベバシズマブである。抗VEGF抗体又はその抗原結合断片は、モノクロナール抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、又はヒト化抗体であり得る。本発明の方法に有用な例示的抗体は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、G6抗体、B20抗体、及びその断片を含む。所定の実施態様において、抗VEGF抗体は以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号1)
及び以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号2)
を有する。
【0018】
抗体、又はその抗原結合断片はまたFc部分、F(ab')、Fab、又はFv構造を欠損した抗体であっても良い。
【0019】
一実施態様において、治療はVEGF特異的アンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体、及び少なくとも一つの化学療法剤との組合わせである。
【0020】
本発明の方法の各々は、限定されないが、乳癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化器癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、腎癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、胃癌、黒色腫、及び様々なタイプの頭頸部癌を含む。幾つかの実施態様において、本被検体は以前に治療されたHER2陰性転移性乳癌を有する。
【0021】
上記態様の各々は、癌の再発に関して被検体をモニターすることを更に含む。モニタリングは、例えば、無増悪生存期間(PFS)又は全生存(OS)又は客観的奏効率(ORR)を評価することにより達成することができる。一実施態様において、PFS又はOS又はORRは、治療開始後に評価される。
【0022】
疾患の種類や重症度に応じて、例えば、ベバシズマブ等の抗VEGF抗体の好ましい用量は本明細書に記載されており、約1μg/kgから約50mg/kgであり、最も好ましくは、限定しないが、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgを含む、約5mg/kgから約15mg/kgである。投与の頻度は、疾患の種類や重症度によって異なる。数日間以上にわたる繰り返し投与においては、状態に応じ、本明細書に記載又は当技術分野で知られた方法で測定されて、癌が治療されるまで又は所望の治療効果が達成されるまで処置が継続される。一例において、本発明の抗VEGF抗体は毎週1回、隔週1回、又は3週間に1回、限定されないが、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgを含む、約5mg/kgから約15mg/kgの用量で投与される。しかしながら、他の投薬計画が有益な場合がある。本発明の治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0023】
上記態様の各々の更なる実施態様において、抗VEGF抗体等のVEGF特異的アンタゴニストが、局所的又は全身的に(例えば経口又は静脈内投与で)投与される。他の実施態様において、臨床医により評価されるか又は本明細書に記載の通りに、治療の一態様は長期治療段階又は維持療法におけるVEGF特異的アンタゴニストによる。
【0024】
他の実施態様において、以前に治療された乳癌に対するVEGF特異的アンタゴニストによる治療は、限定されないが、手術、放射線療法、化学療法、分化療法、生物療法、免疫療法、血管新生阻害剤、細胞毒性剤及び抗増殖化合物を含む、更なる抗癌治療の併用による。VEGF特異的アンタゴニストによる治療は、治療計画の上記の型の任意の組み合わせを含めることが可能である。幾つかの実施態様において、化学療法剤及びVEGF特異的アンタゴニストは、同時に投与される。
【0025】
更なる抗癌治療を含む所定の実施態様において、被検体は、VEGF特異的アンタゴニスト投与期間中(例えば、同時に)、又は後に、更なる抗癌療法で治療されることが可能である。一実施態様において、VEGF特異的アンタゴニストは、単独又は抗癌治療による何れかで投与されるが、維持療法として投与されることが可能である。
【0026】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な記述、図面、及び請求項の範囲によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、様々な化学療法とともにベバシズマブ(治療群A)又はプラセボ(治療群B)を用いた、以前に治療された転移性乳癌臨床試験の研究デザインを示す。
【図2】図2は、図1の研究のPSFの主要エンドポイントの分析を示す。
【図3】図3は、図1の研究のPSFのコホート特異的分析を示す。
【図4】図4は、図1の研究の客観的奏効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.定義
本明細書中で用いる「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語は、Leung et al. (1989) Science 246:1306, and Houck et al. (1991) Mol. Endocrin, 5:1806に記載された、165アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子及び関連する121、189、及び206アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子、並びにそれらの天然に生じる対立遺伝子型及びプロセシング型を指す。VEGF-AはVEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、VEGF−F、及びPlGFを含む遺伝子ファミリーの一部である。VEGF-Aは2つの高親和性受容体、VEGFR-1(Flt-1)及びVEGFR-2(Flk-1/KDR)に主に結合し、後者はVEGF-Aの血管内皮細胞の分裂促進シグナルの主要な伝達物質である。更に、ニューロピリン1は、ヘパリン結合性VEGF-Aアイソフォームに対する受容体として同定されており、血管発生に重要な役割を果たす可能性がある。「VEGF」又は「VEGF-A」なる用語はまた、マウス、ラット又は霊長類等の非ヒト種由来のVEGFを指す。また、「VEGF」なる用語は、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109、又は1〜109を含むポリペプチドの切断型を言及することにも使われる。任意のそのようなVEGF型の参照は、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」として特定され得る。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵する、KDR及びFlt−1レセプターに対する結合親和性を有する。
【0029】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性と特異性によりVEGFに結合する抗体である。選択された抗体は、通常、VEGFに対して結合親和性を有しており、例えば該抗体は100nM〜1pMのKd値を有してhVEGFを結合しうる。抗体親和性は、例えば、表面プラスモン共鳴ベースのアッセイ(例えばPCT出願公開番号WO2005/012359に記載される、BIAcoreアッセイ)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および競合アッセイ(例えばRIAのもの)で測定されてもよい。ある実施態様では、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が伴う疾患又は症状を標的および干渉する際の治療用薬剤として用いられうる。また、抗体は、例えばその治療上の有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイの対象とされうる。このようなアッセイは従来技術において周知であり、標的抗原と抗体の使用目的に依存する。例として、限定されないが、HUVEC阻害アッセイ、腫瘍細胞増殖阻害アッセイ(例えば国際公開89/06692にて説明される)を含む。抗VEGF抗体は通常、VEGF−B又はVEGF−Cなどの他のVEGFホモログにも、PIGF、PDGF又はbFGFなどの他の増殖因子にも結合しないであろう。
【0030】
「VEGFアンタゴニスト」は、一又は複数のVEGFレセプターへの結合を含むVEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減又は干渉することができる分子を指す。VEGFアンタゴニストには、抗VEGF抗体及びその抗原結合性断片、VEGFに特異的に結合することによって一又は複数のレセプターへの結合を隔離するレセプター分子及び誘導体、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤などの抗VEGFレセプター抗体及びVEGFレセプターアンタゴニストが含まれる。
【0031】
「天然配列」ポリペプチドは、天然由来のポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。よって、天然配列ポリペプチドは、任意の哺乳動物由来の天然に生じるポリペプチドのアミノ酸配列を有し得る。このような天然配列ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、あるいは組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列」ポリペプチドという用語は特にポリペプチドの天然に生じる切断型又は分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、ポリペプチドの天然に生じる変異体型(例えば、選択的スプライシング型)及び天然に生じる対立遺伝子変異体を包含する。
【0032】
ポリペプチド「変異体」は、対応する天然配列ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、一又は複数のアミノ酸残基が、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端で付加されているか、又は欠失しているポリペプチドが含まれる。通常、変異体は、天然配列ポリペプチドと少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性、又は好ましくは少なくともおよそ90%のアミノ酸配列同一性、又は更により好ましくは少なくともおよそ95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0033】
「抗体」という用語は最も広義に使用され、モノクローナル抗体(完全長又はインタクトなモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限り抗体断片(以下を参照)を包含する。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲にわたって、免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に明確に援用されるKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)にあるEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
【0035】
本発明の「Kd」又は「Kd値」は、段階的な力価の非標識VEGFの存在下で、最小濃度の(125I)-標識Fab(109)にてFabを均衡化して、抗Fab抗体コートプレートにて結合したVEGFを捕獲することによってVEGFに対するFabの溶液結合親和性を測定するアッセイで示されるような(Chen, et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881)、抗体およびVEGF分子のFab型(バージョン)を用いて実行される放射性標識したVEGF結合アッセイ(RIA)で測定される一実施態様のものである。一例において、アッセイの条件を決めるために、ミクロタイタープレート(Dynex)を5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コートして、その後2%の(w/v)ウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温で2〜5時間(およそ23℃)、ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)に、100pM又は26pMの[125I]VEGF(109)を段階希釈した所望のFab、例えばFab−12と混合する(Prestaら., (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599))。ついで対象のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは確実に平衡状態に達するまでに65時間かかるかもしれない。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で1時間インキュベートする。そして、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween20を含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MicroScint-20; Packard)を加え、プレートをTopcountγ計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ以下濃度のFabをそれぞれ競合結合測定に選択する。他の実施態様によると、〜100反応単位(RU)の固定したhVEGF(8−109) CM5チップを用いて25℃のBIAcoreTM−2000又はBIAcoreTM−3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを行ってKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。ヒトVEGFを10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。ヒトVEGFの注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合および解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(Kon)と解離速度(Koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をKoff/Kon比として算出した。例として、Chen, Y.,ら, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10−1−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度のヒトVEGF短型(8−109)又はマウスVEGFの存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗VEGF抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。本発明による「Kd」又は「Kd値」は一実施態様において当該技術分野で既知の方法によって測定される。
【0036】
「遮断(ブロック)」抗体又は抗体「アンタゴニスト」は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減させるものである。例えば、VEGF特異的アンタゴニスト抗体はVEGFを結合し、VEGFの能力を阻害して血管内皮細胞の増殖を誘導するか又は血管透過性を誘導する。好適な遮断抗体ないしアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を完全に阻害する。
【0037】
特に断らない限りは、本明細書全体を通して「多価抗体」という表現は3又はそれ以上の抗原結合部位を含む抗体を指すために使用される。例えば、多価抗体は3又はそれ以上の抗原結合部位を持つように遺伝子操作されたもので、一般には天然配列IgM又はIgA抗体ではない。
【0038】
「抗体断片」は、一般には無傷の抗体の抗原結合を含み、よって抗原に結合する能力を保持している無傷の抗体の一部のみを含む。本定義に包含される抗体断片の例には、(i)VL、CL、VH及びCH1ドメインを持つFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基を持つFab断片であるFab'断片;(iii)VH及びCH1ドメインを持つFd断片;(iv)CH1ドメインのC末端に一又は複数のシステイン残基とVH及びCH1ドメインを持つFd'断片;(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを持つFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward等, Nature 341, 544-546 (1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって結合された2つのFab'断片を含む二価断片であるF(ab')断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば単鎖Fv;scFv)(Bird等, Science 242:423-426 (1988);及びHuston等, PNAS (USA) 85:5879-5883 (1988));(x)同一のポリペプチド鎖中で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を持つ「ダイアボディー(diabodies)」(例えば、欧州特許公報第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む「線形抗体」(Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062(1995);及び米国特許第5641870号)が含まれる。
【0039】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一抗原に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」なる修飾は、ある特定の方法によって抗体が作製されることを必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明において用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって初めて記載されるハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、組み換えDNA法を用いて作製されてもよい(例として米国特許第4816567号を参照)。また、「モノクローナル抗体」は、例としてClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)又はMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されうる。
【0040】
「Fv」断片は、完全な抗原認識および結合部位を含む抗体断片である。この領域は、堅く結合した重鎖可変ドメイン1つと軽鎖可変ドメイン1つの二量体から成り、その結合は自然界では例えばscFvにおけるように共有結合である。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面の抗原結合部位を確定するのはこの構成である。この6つのCDR又はそのサブセットは、共同して抗体に抗原結合特異性を賦与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なCDRを3つしか含んでいないFvの半分)でさえ、通常は結合部位全体より親和性は低いものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0041】
本明細書で使われるように、「抗体可変ドメイン」は相補性決定領域(CDR;即ち、CDR1、CDR2およびCDR3)ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、抗体分子の軽鎖および重鎖の部分を指す。Vは重鎖の可変ドメインを指す。Vは軽鎖の可変ドメインを指す。本発明で使用される方法によると、CDRとFRに割り当てられるアミノ酸位置はカバットに従って規定される(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health, Bethesda, Md., 1987および1991))。抗体又は抗原結合断片のアミノ酸のナンバリングも、カバットのそれに準じる。
【0042】
本明細書で使われるように、「相補性決定領域」(CDR、即ち、CDR1、CDR2およびCDR3)なる用語は、抗原結合のために存在している必要がある抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、一般的にCDR1、CDR2およびCDR3と同定される3つのCDR領域を持つ。各相補性決定領域はカバットが記載しているような「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD.(1991))、および/又は「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基約26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメインの26〜32(H1),53〜55(H2)および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk, J.Mol.Biol.196:901-917頁(1987))を含んでもよい。いくつかの場合には、相補性決定領域はカバットの記載により定義されているCDR領域および超可変ループの両方からのアミノ酸を含むことができる。例えば、抗体4D5の重鎖のCDRH1は、アミノ酸26〜35を含む。
【0043】
「フレームワーク領域」(以下FRと称す)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、一般的にFR1、FR2、FR3およびFR4と同定される4つのFRを持つ。CDRがカバットの定義に従うならば、軽鎖FR残基は残基約1〜23(LCFR1)、35〜49(LCFR2)、57〜88(LCFR3)および98〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基約1〜30(HCFR1)、36〜49(HCFR2)、66〜94(HCFR3)および103〜113(HCFR4)に位置する。CDRが超可変ループからのアミノ酸残基を含むならば、軽鎖FR残基は軽鎖の残基約1〜25(LCFR1)、33〜49(LCFR2)、53〜90(LCFR3)および97〜107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基約1〜25(HCFR1)、33〜52(HCFR2)、56〜95(HCFR3)および102〜113(HCFR4)に位置する。いくつかの場合には、CDRがカバットの定義によるCDRと超可変ループのそれの両方からのアミノ酸を含む場合、FR残基はそれに応じて調節されるであろう。例えば、CDRH1がアミノ酸H26−H35を含むとき、重鎖FR1残基は位置1〜25にあり、FR2残基は位置36〜49にある。
【0044】
「Fab」断片は、軽鎖の可変および定常ドメインと重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(CH1)を含む。F(ab')抗体断片は一対のFab断片を含み、通常これらはその間にあるヒンジシステインによってそのカルボキシ末端の近くで共有結合により連結される。抗体断片の他の化学的結合も当技術分野で公知である。
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。通常、FvポリペプチドはVおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーはscFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成するのを可能にする。scFvのレビューに関しては、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol.113, RosenburgおよびMoore編, Springer-Verlag, New York, 269-315頁(1994)を参照。
【0045】
「ダイアボディ(diabody)」なる用語は、抗原結合部位を2つ備える小さな抗体断片を指し、この抗体断片は同じポリペプチド鎖(VおよびV)内で軽鎖可変ドメイン(V)に連結した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖の上の2つのドメインの間で対合させるにはあまりに短いリンカーを用いて、このドメインを他の鎖の相補性ドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位をつくる。ダイアボディについては、例えば欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;およびHollinger他, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:6444-6448(1993)でさらに詳しく記載されている。
【0046】
「線状抗体」なる表現はZapata等, Protein Eng., 8(10):1057-1062頁(1995)に記載されている抗体を指す。つまり、これらの抗体は相補性の軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。線状抗体は二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0047】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖および/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;およびMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
【0048】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト免疫グロブリンから得られた最小配列を含むキメラ抗体である。多くの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又はヒト以外の霊長類のような所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によって、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は場合によって、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0049】
「ヒト抗体」は、ヒトにより生成される抗体のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を有するもの、および/又は本明細書中に開示したヒト抗体をつくるためのいずれかの技術を使用して、つくられたものである。この定義におけるヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特別に除く。ヒト抗体は、当分野で公知の様々な技術を用いて製造することができる。一実施態様では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリから選択される(Vaughan et al. Nature Biotechnology 14:309-314 (1996):Sheets et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 6157-6162 (1998));Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991))。また、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているマウスに導入することによって作製されてもよい。抗原負荷すると、ヒト抗体の産生が観察される。これは遺伝子再構成、アセンブリおよび抗体レパートリを含むあらゆる点でヒトに見られるものを酷似している。この方策は、例えば米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号、および以下の科学的な刊行物、Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載されている。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化により調製されうる(このようなBリンパ球は、個体から回収されてもよいし又はインビトロで免疫化されていてもよい)。例として、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al., J. Immunol., 147 (1): 86-95 (1991);および米国特許第5750373号を参照のこと。
【0050】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のCDRに1つ以上の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産できる。Marks他は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。CDRおよび/又はフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、Barbas他、Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier他、Gene, 169:147-155 (1995);Yelton他、J. Immunol., 155:1994-2004 (1995);Jackson他, J. Immunol., 154(7):3310-9 (1995);およびHawkins他, J. Mol. Biol., 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0051】
抗体の「機能的抗原結合部位」は標的抗原に結合可能なものである。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が由来する親抗体と必ずしも同じほどは強くはないが、抗原に結合する能力は、抗原に結合する抗体を評価するために知られている既知の様々な方法の何れか一つを使用して測定できるものでなければならない。更に、ここの多価抗体の抗原結合部位の各々の抗原結合親和性は定量的に同じである必要はない。本明細書中の多量体抗体に対して、米国特許公開20050186208の実施例2に記載されるように、機能的抗原結合部位の数は超遠心分離分析法を使用して評価することができる。この分析法によれば、多量体抗体に対する標的抗原の異なった比を組み合わせ、複合体の平均分子量を、機能的結合部位の異なった数を仮定して算定する。これらの理論値を、機能的結合部位の数を評価するために得られた実際の実権値と比較する。
【0052】
指定された抗体の「生物学的特性」を有する抗体は同じ抗原に結合する他の抗体とは区別されるその抗体の生物学的特性の一又は複数を保有するものである。
【0053】
対象の抗体が結合する抗原上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載のものなどの常套的な交差遮断(cross-blocking)アッセイを行ってもよい。
【0054】
「種依存性抗体」、例えば哺乳動物抗-ヒトIgE抗体は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有するものである。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(例えば、約1×10−7M以下、又は約1×10−8M以下、又は約1×10−9M以下の結合親和性(K)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、典型的にはヒト化又はヒト抗体である。
【0055】
ここで用いる「抗体変異」又は「抗体変異体」は、種依存性の抗体のアミノ酸残基の一つ以上が変更された種依存性の抗体のアミノ酸配列変異体を指す。このような変異体は、必然的に種依存性の抗体と100%未満の配列同一性又は類似性がある。一実施態様では、抗体変異体は、種依存性の抗体の重鎖又は軽鎖の可変ドメインの何れかのアミノ酸配列と、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、より好ましくは、少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性又は類似性があるアミノ酸配列を有する。ここでは、最大のパーセント配列同一性を得るために、本配列に関する同一性又は類似性は、種依存性の抗体残基と同一(すなわち同じ残基)又は類似(すなわち共通の側鎖の性質に基づく同じ群由来のアミノ酸残基、以下を参照)である候補配列配列を整列し、必要であれば間隙(ギャップ)を入れて、候補配列中のアミノ酸残基の割合として測定したものである。配列同一性又は類似性に影響を及ぼすように、可変ドメインを除く抗体配列、N末端、C末端又は内部伸展のいずれにも、欠失又は挿入はない。
【0056】
本発明のアミノ酸配列を含む抗体又はポリペプチドの半減期を増大させるために、例えば米国特許第5739277号に記載のように、抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープ接着させることができる。例えば、サルベージレセプター結合エピトープをコードする核酸分子は、操作した核酸分子によって発現される融合タンパク質が本発明のポリペプチド配列とサルベージレセプター結合エピトープを含むように、本発明のポリペプチド配列をコードする核酸のフレーム内に連結させることができる。ここで使用される場合の「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因であるIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する(例えば、Ghetie, V等, (2000) Ann. Rev. Immunol. 18:739-766, 表1)。Fc領域内に置換を有する抗体および血清半減期が増大した抗体については、国際公開00/42072、国際公開02/060919; Shields, R.L., ら.,(2001) JBC 276(9):6591-6604;Hinton, P.R., (2004) JBC 279(8):6213-6216)にも記載されている。他の実施態様では、例えば他のポリペプチド配列に接着させることによっても血清半減期が増大しうる。例えば、血清アルブミンが抗体又はポリペプチドに結合するように、抗体又は本発明の方法に有用な他のポリペプチドをFcRnレセプター又は血清アルブミン結合ペプチドに結合する血清アルブミン又は血清アルブミンの一部に接着させることができ、例としてこのようなポリペプチド配列は国際公開01/45746に開示されている。一実施態様では、接着した血清アルブミンペプチドはアミノ酸配列DICLPRWGCLWを含む。他の実施態様では、Fabの半減期はこれらの方法によって増大する。血清アルブミン結合ペプチド配列については、Dennis, M.S., ら., (2002) JBC 277(38):35035-35043も参照のこと。
【0057】
「キメラVEGFレセプタータンパク質」は、少なくとも2つの異なるタンパク質から得られるアミノ酸配列を有するVEGFレセプター分子であって、そのうちの少なくとも1はVEGFレセプタータンパク質である。ある実施態様では、キメラVEGFレセプタータンパク質は、結合してVEGFの生物学的活性を阻害することが可能である。
【0058】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分は、抗体を診断又は治療へ使用することを妨害しうる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様溶質又は非タンパク質様溶質が含まれる。ある実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法により定量し、抗体が95重量%より多くなるまで、最も好ましくは99重量%より多くなるまで、 (2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分な程度にまで、又は(3)クーマシーブルー又は銀染色を用いた非還元条件下又は還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるまで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内にインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0059】
「断片」とは、好ましくは、参照核酸分子又はポリペプチドの全体の長さの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上を含むポリペプチド又は核酸分子の一部を意味する。断片は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100、200、300、400、500、600又はそれ以上のヌクレオチド、ないしは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、190、200アミノ酸又はそれ以上を含みうる。
【0060】
「抗血管新生剤」又は「血管新生(血管形成)インヒビター」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成又は望ましくない血管透過を阻害する、小分子量の物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離したタンパク質、組換えタンパク質、抗体、又はそれらのコンジュゲート又は融合タンパク質を意味する。抗血管形成剤には、結合して、血管形成因子又はそのレセプターの血管形成活性をブロックする作用剤が含まれることが理解されるであろう。例えば、抗血管形成剤は、本明細書に定義されもしくは当技術分野で既知の血管形成剤に対する抗体又はアンタゴニストであり、限定されないが、例えば、VEGF−Aに対する、又は、VEGF−Aレセプター(例えばKDRレセプター及び/又はFlt−1レセプター)に対する抗体、VEGFトラップ、GleevecTM(イマチニブメシレート(Imatinib Mesylate))などの抗PDGFRインヒビターである。また、抗血管新生剤には、天然の血管新生インヒビター、例えばアンジオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。KlagsbrunおよびD'Amore, Annu. Rev. Physiol., 53:217-39 (1991);StreitおよびDetmar, Oncogene, 22:3172-3179 (2003)(例えば、悪性黒色腫の抗血管形成治療を記載している表3);Ferrara & Alitalo, Nature Medicine 5(12): 1359-1364 (1999);Tonini等, Oncogene, 22:6549-6556 (2003)(例えば、公知の抗血管新生因子を記載している表2);および、Sato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)(例えば、臨床試験で用いられる抗血管形成剤を記載している表1)を参照。
【0061】
本明細書において、「維持」用量は、治療期間中又は後に患者に投与される治療薬の一又は複数の用量を指す。通常、維持用量は、間をおいた治療間隔、例として、およそ毎週、およそ2週ごと、およそ3週ごと、又はおよそ4週ごとに投与される。
【0062】
「生存」は、生存している患者を指し、無増悪生存期間 (PFS)及び全生存率(OS)を含む。生存率はカプラン・マイヤー法によって推定され得、生存率の違いは層別ログランク試験を用いて計算される。
【0063】
「無増悪生存期間 (PFS)」とは、治療(又は無作為化)から最初の疾患の進行又は死亡までの時間を言う。例えば、治療の開始から、又は初期診断から約0.5ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、2.1ヶ月、2.2ヶ月、2.8ヶ月、3ヶ月等の定義された期間において、患者が癌が再発することなく、生存している時間である。一実施態様において、PSFはおよそ2.1ヶ月延長される。本発明の一態様では、PFSは、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)で評価することができる。
【0064】
「全生存率」は、治療の開始から又は初期診断から一定期間、例えばおよそ1年、およそ2年、およそ3年、およそ4年、およそ5年、およそ10年などの間生存している患者を指す。
【0065】
「延長生存率」又は「生存可能性を増加させる」とは、未処置の患者と比較して(すなわち、VEGF抗体などのVEGF特異的アンタゴニストにて処置されていない患者と比較して)、又はコントロール処置プロトコール、例えば乳癌の治療において使用される化学療法剤のみによる処置と比較して、処置した患者においてPFSおよび/又はOSが増加していることを意味する。生存率は、処置開始後又は最初に診断された後、少なくともおよそ1か月、2か月、4か月、6か月、9か月、又は少なくともおよそ1年、又は少なくともおよそ2年、又は少なくともおよそ3年、又は少なくともおよそ4年、又は少なくともおよそ5年、又は少なくともおよそ10年などの間モニターされる。
【0066】
ハザード比(HR)は事象の発生率の統計的定義である。本発明の目的において、ハザード比は、任意の特定の時点で実験群における一事象の確率を対照群における一事象の確率で割ったものを表すとして定義されている。無増悪生存期間分析における「ハザード比」は2つの無増悪生存期間曲線の間の相違の概要であり、経過観察期間中にコントロールと比較した場合に治療における死のリスクの減少を表す。
【0067】
「同時に」なる用語は、投与の時間の少なくとも一部がオーバーラップしている、2以上の治療薬の投与を指すために本明細書中で用いられる。したがって、同時投与には、一又は複数の薬剤の投与が一又は複数の他の薬剤の投与をやめた後に続く場合の投薬計画が包含される。
【0068】
「維持療法」とは、疾患再発又は進行の可能性を低減するために施される治療的投薬計画を意味する。維持療法は、被検体の寿命まで延長された時間を含む任意の長さの時間に提供されてもよい。維持療法は、最初の療法の後又は、最初ないしは更なる療法と共に提供されてもよい。維持療法のために使用する用量は変化してもよく、他の種の療法に使用する用量と比較して、減少した用量を包含しうる。
【0069】
「癌」及び「癌性」なる用語は、一般的に調節不可能な細胞成長に特徴がある哺乳動物の生理学的状態を指すか又は表す。この定義に含まれるのは、良性及び悪性の癌並びに休眠腫瘍又は微小転移がある。癌の例には、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれるが、これに限定されるものではない。このような癌のより具体的な例には、乳癌、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(消化器癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝臓癌、及び様々な型の頭頸部癌、及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;マントル細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに、母斑症と関係する異常な血管性増殖、浮腫(脳腫瘍と関係するものなど)、及びメイグス症候群が含まれる。
【0070】
「転移」とは、癌がその主要部位から体内の他の場所へ広がることを意味する。癌細胞は原発腫瘍から離脱し、リンパ管及び血管に浸透し、血流を介して循環し、体の他の正常組織中の遠位増殖巣で増殖する(転移する)することが可能である。転移は、局所的又は遠位であり得る。転移は腫瘍細胞が原発腫瘍から離脱し、血流又はリンパ管を通って移動し、遠位部位で停止することを条件とする逐次プロセスである。新しい場所で細胞は血液供給を確立し、増殖し生命を脅かす腫瘤を形成することが可能である。腫瘍細胞内の刺激と抑制の分子経路の両方がこの現象を制御し、遠位部位における腫瘍細胞と宿主細胞間の相互作用も重要である。
【0071】
「被検体」は、哺乳類、限定するものではないが、ヒト又はヒト以外の哺乳動物、例としてウシ、ウマ科、イヌ、ヒツジ又はネコを意味する。好ましくは被検体はヒトである。本明細書において患者は被験体でもある。
【0072】
本発明の方法に対して、被験者に「指示する」という用語は、任意の手段、好ましくはパッケージ挿入物の形態又は他の文書でのプロモーション資料のように文書により、適用可能な治療法、医薬、治療、治療計画等に対する指示を提供することを意味する。
【0073】
本発明の方法に対して、「促進する」という用語は、パッケージ挿入物の形態の場合のように文書を含む任意の手段により、特定の薬剤、薬剤の組み合わせ、又は治療様式を提供し、宣伝し、販売し、又は記述することを意味する。ここでの促進は、乳癌の治療のような適応症に対しての、例えばVEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体又は化学療法剤のような治療剤のプロモーションを意味し、ここで、促進は、被験者の集団において統計的に有意な治療効果及び許容可能な安全性を伴うことが証明されているとして、食品医薬品局(FDA)によって許可されている。
【0074】
「マーケティング」なる用語は、製品(例えば薬剤)のプロモーション、販売又は流通を記述するためにここで使用される。マーケティングは特に包装、宣伝広告、及び製品を市販する目的での任意のビジネス活動を含む。
【0075】
被検体の「集団」は、例えば臨床試験において、又は乳癌治療などの特定の適応についてFDA承認に従って腫瘍学者によって観察される癌を有する被検体の集団を指す。
【0076】
「抗癌療法」なる用語は、癌を治療する際に有用な療法を指す。抗癌治療剤の例には、限定するものではないが、例えば、手術、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞障害剤、放射線療法に用いる薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン薬剤、および癌を治療するための他の薬剤、例として、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮性増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(Tarceva(登録商標))、血小板由来増殖因子インヒビター(例えばGleevecTM(メシル酸イマチニブ))、COX-2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプター(一又は複数)、TRAIL/Apo2および他の生理活性かつ有機化学的薬剤などの一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体、小分子インヒビター)が含まれる。また、その組合せが本発明に包含される。
【0077】
ここで用いられる「細胞障害性剤」は、細胞の機能を阻害又は抑制し、および/又は細胞破壊を起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90及びRe186、Re188、Sm153、Bi212、P32及び放射性同位元素Lu)、化学治療薬、及び小分子毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素であってその断片及び/又は変異体を含む毒素を意味する。
【0078】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、癌の治療に有用な化学的化合物が含まれる。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)およびバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW−2189およびCBI−TM1を含む); エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin); 同様にネオカルチノスタチン発光団および関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)およびアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)およびアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)およびタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);ミトキサントン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);イリノテカン(カンプトサル(Camptosar)、CPT-11)(5−FUおよびリューコボリンとのイリノテカンの治療処方を含む);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine);コンブレタスタチン(combretastatin);リューコボリン(leucovorin)(LV);オキサリプラチン(oxaliplatin)、オキサリプラチン治療処方(FOLFOX)を含む;PKC−αのインヒビター、Raf、H−Ras、EGFR(例として、エルロチニブ(erlotinib)(TarcevaTM))および細胞増殖を減少させるVEGF−A、並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0079】
また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)など、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、およびFARESTON・トレミフェン(Fareston);アロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害物質、それらは副腎でのエストロゲン産生を調節するものであり、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ゾロゾール(vorozole)、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;;および抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC−alpha、ラルフおよびH−Ras;リボザイム、例えばVEGF発現インヒビター(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現インヒビター;遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン)などのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン(Vinorelbine)およびエスペラミシン(Esperamicins)(米国特許第4675187号を参照)並びに上記のものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0080】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例は、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)、のような糖タンパク質ホルモン;上皮増殖因子;肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF-α;血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12のインターロイキン(IL);TNF-α又はTNF-βなどの腫瘍壊死因子;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合は、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0081】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ及び/又はインビボで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール(登録商標)、及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0082】
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換される製薬的活性物質の前駆体又は誘導体形態を意味する。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」, Biochemical Society Transactions, 14, :375-382, 615th Meeting, Belfast (1986)、及びStella 等, 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery, Borchardt等(編), 247-267項, Humana Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
【0083】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力を制限するため又は全く細胞を破壊するために、細胞に十分な損傷を誘導する有向性のγ線又はβ線の使用を意味する。治療の用量および治継続期間を決定するためには公知の多くの方法があることは明らかであろう。典型的な治療は、1回の投与として、1日当たり10〜200単位(グレイ)の典型的な用量として施される。
【0084】
「低減又は阻害」は遅延/防止する能力又は、全体の好ましくは20%以上、より好ましくは、50%以上、そして最も好ましくは75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の減少を引き起こす能力を意味する。低減又は阻害は、治療する疾患の症状、転移性癌又は微小転移性癌の存在ないしはサイズ、原発性腫瘍のサイズ、休止腫瘍の存在ないしはサイズ、又は血管新生疾患の血管のサイズないしは数を言及し得る。
【0085】
「静脈内注入」なる用語は、およそ5分以上、好ましくはおよそ30〜90分の時間をかけて動物又はヒト患者の静脈への薬剤の導入を意味するものであり、本発明では静脈内注入があるいは10時間未満かけて投与されることもある。
【0086】
「静脈内ボーラス」又は「静脈内圧力(intravenous push)」なる用語は、動物又はヒトに静脈に薬剤を投与して、およそ15分未満、好ましくは5分未満で身体が薬剤を受け取ることを意味する。
【0087】
「皮下投与」なる用語は、動物又はヒト患者の皮下、好ましくは皮膚と皮下組織の間の嚢内に、薬剤貯蔵物から相対的にゆっくりと、持続的に運搬されることによる薬剤の導入を意味する。
【0088】
「皮下注入」なる用語は、動物又はヒト患者の皮下、好ましくは皮膚と皮下組織の間の嚢内に、限定するものではないが30分以下ないし90分以下の時間をかけて、薬剤貯蔵物から相対的にゆっくりと、持続的に運搬されることによる薬剤の導入を意味する。場合によって、動物又はヒト患者の皮下にインプラントされる薬剤運搬ポンプを刺し入れることによって注入されてもよい。この場合のポンプは決まった量の薬剤を30分、90分又は治療期間などの決まった期間の間運搬するものである。
【0089】
「皮下ボーラス」なる用語は、動物又はヒト患者の皮下への薬剤の投与であって、ボーラス薬剤運搬(ドラッグデリバリー)は好ましくはおよそ15分未満、より好ましくは5分未満、最も好ましくは60秒未満である。好ましくは、投与は皮膚と皮下組織の間の嚢内であり、その嚢は例えば皮膚をつまんだり引き上げたりして皮下組織を除去することによって作ったものである。
【0090】
「障害」とは、抗体による治療の恩恵を受ける任意の状態である。これは哺乳類を問題の障害にかかりやすくさせる病理学的状態を含み、慢性および急性の障害又は疾患を含む。本明細書において治療されるべき疾患の非限定例は、癌;良性及び悪性腫瘍;白血病及びリンパ系悪性腫瘍;神経細胞、グリア、アストロサイト、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質及び割腔の疾患;及び炎症性、血管新生及び免疫性の疾患を含む。
【0091】
「治療的有効量」なる用語は、哺乳動物における疾患又は疾病を治療するために有効な薬物の量を指す。癌の場合は、薬物の治療的有効量がは、癌細胞の数を減少させる、腫瘍の大きさを小さくする、癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)、腫瘍の転移を阻害する(すなわち、ある程度遅く、好ましくは止める)、腫瘍の成長をある程度阻害する、及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげうる。ある程度、薬物は増殖を妨げ、及び/又は現存の癌細胞を殺し得、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、無増悪生存期間(PFS)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。
【0092】
「治療」は治療的処置および予防又は阻害的処置の両方を意味する。治療が必要なものには、既に良性、前癌性又は非転移性の腫瘍を有しているもの、並びに癌の発症又は再発が予防されるべきであるものが含まれる。
【0093】
本明細書中で用いられる「標識」なる用語は、ポリペプチドに直接的又は間接的にコンジュゲートされている検出可能な化合物又は組成物を指す。標識自体が検出可能なもの(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、酵素標識の場合、検出可能な基質化合物ないしは組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。
【0094】
II.抗VEGF抗体及びアンタゴニスト
(i)VEGF抗原
抗体の産生に使用されるVEGF抗原は例えばVEGF165分子並びにVEGFの他のアイソフォーム又は所望のエピトープを含むその断片でありうる。本発明の抗VEGF抗体を産生するために有用なVEGFの他の形態は当業者には明らかであろう。
【0095】
ヒトVEGFはハイブリダイゼーションプローブとしてウシVEGFcDNAを使用して、ヒト細胞から調製されたcDNAライブラリーを最初にスクリーニングすることによって得られた。Leung等 (1989) Science, 246:1306。それによって同定されたcDNAの一つはウシVEGFに対して95%を越える相同性を有する165アミノ酸のタンパク質をコードしている; この165アミノ酸のタンパク質は典型的にはヒトVEGF(hVEGF)又はVEGF165と呼ばれる。ヒトVEGFの分裂促進活性は、哺乳動物宿主細胞中でヒトVEGFcDNAを発現させることによって確認された。ヒトVEGFcDNAが形質移入された細胞によって条件化された培地は毛細血管内皮細胞の増殖を促進する一方、コントロール細胞は促進しなかった。上掲のLeung等(1989) Science。
【0096】
血管内皮細胞増殖因子は引き続く治療用途のために天然源から単離・精製できるが、濾胞細胞中での比較的低い濃度と、労力と費用の双方の面でのVEGFの回収の高いコストのため商業的には利用できないことが分かった。従って、組換えDNA技術によってVEGFをクローニングし発現させるために更なる努力がなされている。(例えば Ferrara (1995) Laboratory Investigation 72:615-618、及びそこに引用された文献を参照のこと)。
【0097】
VEGFは選択的RNAスプライシングから生じる複数のホモ二量体型(単量体当たり121、145、165、189及び206個のアミノ酸)として様々な組織中に発現される。VEGF121はヘパリンに結合しない可溶型マイトジェンである;VEGFのより長い型は漸次的により高い親和性でヘパリンに結合する。VEGFのヘパリン結合型はプラスミンによってカルボキシ末端を切断してVEGFの拡散性形態を放出することができる。プラスミンでの切断後に同定されるカルボキシ末端ペプチドのアミノ酸配列はArg110−Ala111である。ホモ二量体として同定されたVEGF(1−110)のアミノ末端「コア」タンパク質は中和モノクローナル抗体(例えば4.6.1及び3.2E3.1.1と呼ばれる抗体)と、無傷のVEGF165 ホモ二量体と比較して同様の親和性を持つVEGFレセプターの可溶型に結合する。
【0098】
胎盤成長因子(PIGF)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びVEGF-Eを含む、VEGFと構造的に関連する幾つかの分子がまた最近同定されている。上掲のFerrara及びDavis-Smyth (1987) Endocr. Rev.; Ogawa等(1998) J. Biological Chem. 273:31273-31281; Meyer等(1999) EMBO J., 18:363-374。レセプターチロシンキナーゼFlt-4(VEGFR-3)はVEGF-C及びVEGF-Dのレセプターとして同定された。 Joukov等(1996) EMBO. J. 15:1751; Lee等(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:1988-1992; Achen等(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:548-553。VEGF-Cはリンパ性血管新生の調節に関与していることが最近示されている。Jeltsch等(1997) Science 276:1423-1425。
【0099】
(ii)抗VEGF抗体
本発明の方法に有用である抗VEGF抗体には、VEGFに対して十分な親和性と特異性を有して結合し、VEGFの生物学的活性を低減ないし阻害することができる任意の抗体又はその抗原結合断片が含まれる。抗VEGF抗体は、通常、他のVEGFホモログ、例えばVEGF−B又はVEGF−Cにも他の増殖因子、例えばPlGF、PDGF又はbFGFにも結合しない。
【0100】
本発明のある実施態様では、抗VEGF抗体には、限定するものではないが、ハイブリドーマATCC HB 10709から生成されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体、Presta et al. (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体が含まれる。一実施態様において、抗VEGF抗体は、「rhuMAb VEGF」又は「AVASTIN(登録商標)」として知られる「ベバシズマブ(BV)」、が含まれる。ベバシズマブには、ヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する変異したヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原結合性相補性決定領域が含まれる。大部分のフレームワーク領域を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%は、ヒトIgG1由来であり、配列のおよそ7%はマウス抗体A4.6.1由来である。
【0101】
ベバシズマブおよび他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日発行の米国特許第6884879号にさらに記述される。更なる抗体として、PCT公開番号WO2005/012359、PCT公開番号WO2005/044853、及び米国特許出願公開US2009−0142343に記載される通り、これらの特許出願の内容は、明示的に参照により本明細書に援用されるが、G6又はB20系列抗体(例えば、G6−31、B20−4.1)が含まれる。更なる抗体については、米国特許第7060269号、同第6582959号、同第6703020号;同第6054297号;国際公開98/45332;国際公開96/30046;国際公開94/10202;欧州特許第0666868号B1;米国特許出願公開番号2006009360、同20050186208、同20030206899、同20030190317、同20030203409および同20050112126;およびPopkov et al., Journal of Immunological Methods 288:149-164 (2004)を参照のこと。他の抗体として、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103及びC104を含むかあるいは、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが含まれる。
【0102】
本発明の一実施態様において、抗VEGF抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号1)
及び以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号2)
を有する。
【0103】
本発明による「G6系列抗体」は、図7、PCT国際公開第2005/012359号の24−26及び34−35の何れか一の図によるG6抗体又はG6由来抗体の配列に由来するVEGF抗体抗体であり、その全体の開示は参照により明示的に本明細書に援用される。PCT国際公開第2005/044853号も参照の上、その全体の開示は参照により明示的に本明細書に援用される。一実施態様において、G6系列抗体は、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83及びQ89を含むヒトVEGFの機能的エピトープに結合する。
【0104】
本発明による「B20系列抗体」は、図7、PCT国際公開第WO2005/012359号の27−29の何れか一の図によるB20抗体又はB20由来抗体の配列に由来するVEGF抗体抗体であり、その全体の開示は参照により明示的に本明細書に援用される。PCT国際公開第2005/044853号、及び米国特許出願公開第2009−0142343号も参照の上、その全体の開示は参照により明示的に本明細書に援用される。一実施態様において。B20系列抗体は残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K101、E103、及びC104を含むヒトVEGF抗体の機能的エピトープに結合する。
【0105】
本発明の「機能的エピトープ」は、抗体の結合にエネルギー的に関与する抗原のアミノ酸残基を意味する。エネルギー的に関与している抗原の残基の何れか一の突然変異(例えば、アラニン又はホモログ突然変異による野生型VEGFの突然変異)により、抗体の結合が破壊され、抗体の相対親和度比率(IC50突然変異VEGF/IC50野生型VEGF)は5より大きくなるであろう(国際公開2005/012359の実施例2を参照のこと)。一実施態様では、相対親和度比率は、溶液結合ファージディスプレイELISAによって測定される。簡単に言えば、96ウェルMaxisorpイムノプレート(NUNC)は、2ug/mlの濃度の試験抗体のFab型を含むPBSにて4℃で終夜をかけてコートし、PBS、0.5%BSAおよび0.05%Tween20(PBT)にて室温で2時間かけてブロックする。hVEGFアラニン点突然変異(残基8−109型)又は野生型hVEGF(8−109)をディスプレイするファージのPBS階段希釈物を、まずFabコートプレート上で室温で15分間インキュベートし、PBS、0.05%Tween20(PBST)にてプレートを洗浄する。結合したファージを、PBTにて1:5000に希釈した抗M13モノクローナル抗体西洋わさびペルオキシダーゼ(Amersham Pharmacia)コンジュゲートにて検出し、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB、Kirkegaard & Perry Labs, Gaithersburg, MD)基質とおよそ5分間反応させ、1.0MのH3PO4にて消光して、450nmの分光光度を読んだ。IC50値(IC50,ala/IC50,wt)の比率は、結合親和性の(相対的な結合能)低減を倍数で表す。
【0106】
(iii)VEGF受容体分子
Flt-1(VEGFR-1とも呼ぶ)とKDR(VEGFR-2とも呼ぶ)の二つのVEGFレセプターが同定されている。Shibuya等(1990) Oncogene 8:519-527; de Vries等(1992) Science 255:989-991; Terman等(1992) Biochem. Biophys. Res. Commun. 187:1579-1586。それぞれのVEGFファミリーメンバーに対するそれぞれの受容体の特異性は異なるが、VEGF-AはFlt-1及びKDRの両方に結合する。ニューロピリン-1はヘパリン結合VEGFアイソフォームに結合可能な選択的VEGFレセプターであることが示された(Soker等 (1998) Cell 92:735-45)。Flt-I及びKDRは両方ともレセプターチロシンキナーゼ(RTKs)のファミリーに属している。RTKsは多様な生物学的活性を持つ膜貫通レセプターの大きなファミリーを含んでなる。現在では、少なくとも19の別個のRTKサブファミリーが同定されている。レセプターチロシンキナーゼ(RTK)ファミリーには、様々な細胞型の成長と分化に重要なレセプターが含まれる(Yarden及びUllrich, Ann. Rev. Biochem. 57:433-478, 1988; Ullrich及びSchlessinger, Cell 61:243-254, 1990)。RTKsの本来の機能はリガンド結合の際に活性化され、レセプター及び複数の細胞基質のリン酸化を生じ、続いて様々な細胞応答を生じる (Ullrich及びSchlessinger, 1990, Cell 61:203-212)。よって、レセプターチロシンキナーゼ媒介シグナル伝達が、特異的成長因子(リガンド)との細胞外相互作用によって開始され、それに典型的にはレセプターの二量体化、本来的なプロテインチロシンキナーゼ活性の刺激及びレセプタートランス-リン酸化が続く。それによって結合部位が細胞内シグナル伝達分子のために作り出され、適切な細胞応答を容易にするある範囲の細胞質シグナル伝達分子と複合体を形成する。(例えば細胞分裂、分化、代謝効果、細胞外微小環境の変化)Schlessinger及びUllrich, 1992, Neuron 9:1-20を参照。構造的には、Flt-1とKDRの両方共、細胞外ドメインに7の免疫グロブリン様ドメイン、単一の膜貫通領域、及びキナーゼインサートドメインによって中断されているコンセンサスチロシンキナーゼ配列を有している。Matthews等(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9026-9030; Terman等(1991) Oncogene 6:1677-1683。
【0107】
VEGFに特異的に結合するVEGFレセプター分子又はその断片は、VEGFタンパク質に結合して補足し、それによってシグナル伝達を妨げるための本発明の方法に用いられうる。ある実施態様では、VEGFレセプター分子又はそのVEGF結合断片は、可溶型、例えばsFlt−1である。レセプターの可溶型は、VEGFに結合して標的細胞の表面上に存在する天然のレセプターへのその結合を妨げることによって、VEGFタンパク質の生物活性に対して阻害作用を及ぼす。また、VEGFレセプター融合タンパク質も包含され、その例を後述する。
【0108】
キメラVEGFレセプタータンパク質は、少なくとも2つの異なるタンパク質由来のアミノ酸配列を有するレセプター分子であり、そのうちの少なくとも1はVEGFレセプタータンパク質(例えばflt−1又はKDRレセプター)であり、VEGFに結合してVEGFの生物活性を阻害することができる。ある実施態様では、本発明のキメラVEGFレセプタータンパク質は、2つの異なるVEGFレセプター分子だけから得られるアミノ酸配列からなるが、flt−1および/又はKDRレセプターの細胞外リガンド結合領域の1、2、3、4、5、6又は7つすべてのIg様ドメインを含むアミノ酸配列は、他の無関係なタンパク質、例えば免疫グロブリン配列のアミノ酸配列に連結されうる。Ig様ドメインが結合される他のアミノ酸配列は、当業者に容易に明らかであろう。キメラVEGFレセプタータンパク質の例には、例えば、可溶性Flt−1/Fc、KDR/Fc又はFLt−1/KDR/Fc(別名VEGF Trap)が含まれる。(例としてPCT出願公開番号WO97/44453を参照のこと)。
【0109】
本発明の可溶性VEGFレセプタータンパク質又はキメラVEGFレセプタータンパク質には、膜貫通ドメインを介して細胞の表面に固定されていないVEGFレセプタータンパク質が含まれる。また、キメラレセプタータンパク質を含むVEGFレセプター可溶型は、VEGFに結合してVEGFを不活性化することができるが、膜貫通領域を含んでおらず、したがって一般に、この分子が発現される細胞の細胞膜に結合したものとならない。
【0110】
III.抗VEGF抗体の治療目的使用
本発明は、腫瘍成長を支援する栄養素を提供するために必要とされる腫瘍血管の発生を阻害することを目的とする新規な癌治療方策である抗血管新生療法を包含する。原発性腫瘍成長と転移の双方に血管新生が関与しているので、本発明によって提供される抗血管新生療法は、原発部位における腫瘍の新生物成長を阻害し、並びに続発性部位における腫瘍の転移を防止することができ、よって他の治療法による腫瘍の攻撃を可能にする。
【0111】
具体的には、本発明は、以前に治療された転移性乳癌と診断された患者を、化学療法及び抗VEGF抗体の有効量の投与を組み合わせる治療法を患者に供することを含み、治療する方法を提供する。
【0112】
併用療法
本発明は、1つまたは複数の追加の抗癌療法と少なくとも一つのVEGF特異的アンタゴニストの併用を特徴としている。抗がん治療の例としては、限定されないが、手術、放射線療法(放射線療法)、生物療法、免疫療法、化学療法、又はこれらの治療法の併用を含む。更に、細胞毒性剤、抗血管新生及び抗増殖剤は、VEGF特異的アンタゴニストと併用して使用することができる。
【0113】
所定の態様において本発明は、以前に治療された転移性癌の影響を受けやすいか、又は診断された患者へ抗VEGF抗体及び1つ以上の化学療法剤の有効量を投与することにより、以前に治療された乳癌の治療方法を提供している。様々な化学療法剤が本発明の併用治療法で使用される可能性がある。意図されたの化学療法剤の典型的で非限定的なリストは、本明細書で「定義」の下に提供されるか、又は本明細書中に記載されている。
【0114】
一例において、本発明は、1つまたは複数の化学療法剤(例えば、カクテル)又はその任意の組み合わせによるVEGF特異的アンタゴニストの使用を備えている。併用投与は、別々の製剤又は単一の医薬製剤、及び双方の順番による連続投与を使用する、同時投与を含み、そこでは好ましくは、両方(又は全ての)の活性剤が同時にその生物学的活性を発揮する期間がある。そのような化学療法剤の調製および投与スケジュールは、製造業者の指示に従って、又は当業者により経験的に決められた通りに使用することができる。化学療法のための調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M. C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, Md. (1992)にも記載されている。化学療法剤は、VEGF特異的アンタゴニストの投与に先行するか又は後に続くか、又はそれと共に同時に与えられる場合がある。
【0115】
ある種の他の態様では、本発明の抗体との併用腫瘍療法に有用な他の治療剤には、腫瘍成長に関与する他の因子のアンタゴニスト、例えばEGFR、ErbB2(Her2としても知られる)、ErbB3、ErbB4、又はTNFが含まれる。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することもまた有利でありうる。一実施態様において、VEGF抗体は成長抑制剤と同時投与される。例えば、成長抑制剤を最初に投与した後、VEGF抗体を次に投与することができる。しかしながら、VEGF抗体の同時投与又は最初の投与もまた考えられる。成長抑制剤に適した投薬量は現在使用されている量であり、成長抑制剤と抗VEGF抗体の併用作用(相乗作用)によって低下させることができる場合がある。
【0116】
また、製剤は、治療される特定の効能に必要な一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有しうる。例えば、一製剤中にEGFR、VEGF(例えばVEGF上の異なったエピトープに結合する抗体)、VEGFR、又はErbB2(例えばハーセプチン(登録商標))に結合する抗体を更に提供することが望ましい場合がある。あるいは、又は加えて、組成物は、細胞障害剤、サイトカイン、成長阻害剤及び/又は小分子VEGFRアンタゴニストを含有してもよい。このような分子は、好適には、意図した目的に有効な量で組合せて存在する。
【0117】
ある態様では、本発明の抗体との併用癌療法に有用な他の治療剤には他の抗血管新生剤が含まれる。Carmeliet 及びJain (2000)によって列挙されたものを含む多くの抗血管新生剤が同定され、当該分野で知られている。一実施態様において、本発明の抗VEGF抗体は、他のVEGFアンタゴニスト又はVEGFレセプターアンタゴニスト、例えばVEGF変異体、可溶型VEGFレセプター断片、VEGF又はVEGFRを遮断可能なアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤及びその任意の組み合わせとの併用で使用される。別法として、又はそれに加えて、二又はそれ以上の抗VEGF抗体を患者に同時投与することができる。
【0118】
疾患の予防又は治療に対して、VEGF特異的アンタゴニストの適切な投薬量は、上述の治療される疾患のタイプ、疾患の重篤さと経過、VEGF特異的アンタゴニストが予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、過去の治療法、患者の臨床歴及びVEGF特異的アンタゴニストに対する応答性、付き添う医師の裁量に依存する。VEGF特異的アンタゴニストは一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。併用療法投与計画において、本発明によるVEGF特異的アンタゴニスト及び一又は複数の抗癌治療薬は治療的に効果があるか又は相乗効果のある量で投与される。ここで用いられる場合、治療的に有効な量とは、抗VEGF抗体と一又は複数の他の治療剤の同時投与、又は本発明の組成物の投与が上記のように癌の低減又は抑制を生じるような量である。治療的に相乗効果のある量とは、特定の疾患に伴う症状又は徴候を相乗的に又は有意に低減させ又は除去するために必要なVEGF特異的アンタゴニスト及び一又は複数の他の治療剤の量である。
【0119】
VEGF特異的アンタゴニストと一又は複数の他の治療的薬剤は、腫瘍、休止中の腫瘍又は微小転移性癌の発症ないしは再発を低減するか除去するために十分な量及び時間で同時又は連続的に投与されうる。VEGF特異的アンタゴニストと一又は複数の他の治療薬は、腫瘍の再発の可能性を防ぐか又は低減するために、維持療法として投与されてもよい。
【0120】
当業者には理解されるように、化学療法剤又は他の抗癌剤の適切な用量は、一般に、化学療法剤が単独で又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される臨床治療において既に用いられている用量とほぼ同様のものである。治療されている症状に応じて用量の変動が生じる可能性がある。治療を管理する医師は個々の患者に対して適した用量を決定するであろう。
【0121】
上記の治療計画に加えて、患者は放射線療法を受けることができる。
【0122】
本発明の所定の実施態様において、投与されたVEGF抗体は、インタクトな、ネイキッド抗体である。しかしながら、VEGF抗体は細胞障害性剤とコンジュゲートされてもよい。所定の実施態様において、コンジュゲートされた抗体及び/又は結合する抗原が細胞によって内部移行され、その結果結合する癌細胞を殺す該コンジュゲートの治療効果が増す。一実施態様では、細胞障害性剤は癌細胞内の核酸を標的とするか又は核酸を干渉する。このような細胞障害性剤の例には、メイタンシノイド、カリケアマイシン、RNA分解酵素及びDNAエンドヌクレアーゼなどがある。
【0123】
本発明は、被検体の無増悪生存期間を増加させ、被検体の癌の再発のリスクを減少させ、又は被検体の生存の可能性を高めるために、抗VEGF抗体で治療を受けるための手順を提供することにより、前に治療された癌、例えば、乳癌を持ったヒト被検体に指示する方法を特徴とする。幾つかの実施態様において、本方法は、少なくとも一つの化学療法剤で治療を受けるための指示を更に含む。抗VEGF抗体による治療は化学療法剤による治療と同時か又は連続的であり得る。所定の実施態様において、被検体は指示の方法に指示される通りに治療される。化学療法を伴うか又は伴わない抗VEGF抗体の投与による乳癌の治療は、癌の再発または死亡まで継続される場合がある。
【0124】
更に、本発明は、被検体の以前に治療された癌、例えば、乳癌の治療のために抗VEGF抗体の投与を宣伝することを含む、プロモーション方法を提供する。幾つかの実施態様において、本方法は少なくとも一つの化学療法剤を投与することを宣伝することを含む。抗VEGF抗体の投与は化学療法剤の投与と同時か又は連続的であり得る。プロモーションは、利用可能な任意の手段によって行うことができる。幾つかの実施態様において、プロモーションは抗VEGF抗体の市販製剤に付属するパッケージ挿入物によるものである。プロモーションはまた化学療法剤の市販製剤に付属するパッケージ挿入物によるものでも良い。プロモーションはまた、医師又は医療提供者に対する書面又は口頭での伝達によるものであってもよい。幾つかの実施態様において、プロモーションはまた、パッケージ挿入物がVEGF抗体による乳癌治療を受けるための指示を与えるパッケージ挿入物による。更なる実施態様において、パッケージ挿入物は実施例1による結果の一部又は全てを含む。幾つかの実施態様において、プロモーションの後に、化学療法剤併用又は非併用下での、抗VEGF抗体による被検体の治療が伴う。
【0125】
本発明は、以前に治療された乳癌を治療するヒト被検体において、無増悪生存期間を増やすか、被検体の癌の再発の可能性を減らすか、又は被検体の生存可能性を向上させるために、抗VEGF抗体のマーケティングを含むビジネス方法を提供する。幾つかの実施態様において、本方法は、抗VEGF抗体と併用して使用するための化学療法剤のマーケティングを含む。幾つかの実施態様において、マーケティングの後に、化学療法剤併用又は非併用下での、抗VEGF抗体による被検体の治療が伴う。
【0126】
また提供されるのは、以前に治療された乳癌を治療するヒト被検体において、無増悪生存期間を増やすか、被検体の癌の再発の可能性を減らすか、又は被検体の生存可能性を向上させるために、抗VEGF抗体を併用した化学療法剤のマーケティングを含むビジネス方法である。幾つかの実施態様において、マーケティングの後に、化学療法剤及び抗VEGF抗体の組合わせによる被検体の治療が伴う。
【0127】
IV.用量、及び継続期間
VEGF特異的アンタゴニスト組成物は、医学的実用性に合わせた様式で調製し、1回分に分けて、投与される。ここで考慮する要因は、治療する特定の疾患、治療する特定の被検体、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤の運搬部位、投与の方法、投与の日程計画、および医師が知る他の因子を含む。投与されるVEGF特異的アンタゴニストの「治療上有効量」は、このようなことを考慮して調整され、癌を予防、改善、又は治療、又は安定化させるため、進行(無増悪生存期間)までの時間を増加させるため、又は、腫瘍、休止中の腫瘍、又は以前に治療された癌の微小転移性癌の発生又は再発を治療又は予防するために必要な最少量である。VEGF特異的アンタゴニストは、場合によってではあるが、癌又は癌を発症するリスクを予防又は治療するために現在用いられる一又は複数の薬剤とともに製剤化される必要はない。他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するVEGF特異的アンタゴニストの量、疾患又は治療の種類、および上記の他の因子によって決まる。これらは、一般的に、本明細書中にて用いられるのと同じ用量及び投与経路で、又は従来用いられる用量のおよそ1〜99%で、用いられる。
【0128】
疾患の種類および重症度に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg(例えば0.1〜20mg/kg)のVEGF特異的アンタゴニストを、例えば一又は複数の分割投与又は連続注入によって患者投与の初期候補用量とすることができる。ある典型的な1日量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であろう。特に望ましい用量は、例えば5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgおよび15mg/kgなどである。症状に応じて、数日間以上にわたる繰り返し投与では、治療は、上記又は当分野で公知の方法によって測定して、癌が治療されるまで持続する。しかしながら、他の投与計画が有用であるかもしれない。ある例では、VEGF特異的アンタゴニストは抗体である場合、本発明の抗体は、週に1回、2週間に1回、又は3週間に1回、限定するものではないが5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg又は15mg/kgを含む、およそ5mg/kgからおよそ15mg/kgの範囲で投与される。本発明の治療の経過は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニターされる。他の実施態様において、そのような投薬計画は、以前に治療された転移性乳癌を治療するための二次治療として化学療法計画と組み合わせて使用される。適切な用量についての更なる情報は、以下の実施例に与えられる。
【0129】
治療の継続期間は、医学上指示された期間、又は、所望の治療効果(例えば本明細書において記述される効果)が達成されるまで、長い間継続するであろう。
【0130】
本発明のVEGF特異的アンタゴニストは、ボーラスとして又はある期間の連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、包膜内、経口、局所などの投与経路又は吸入経路などの既知の方法で哺乳類、好ましくはヒトに投与される。広範囲な副作用又は毒性がVEGF拮抗作用と関係している場合、局所投与が特に望ましい。また、エクスビボ方策が医療適用のために用いられてもよい。エクスビボ方策は、VEGFアンタゴニストをコードするポリヌクレオチドを被検体から得られる細胞に形質移入させるか又は形質導入させることを伴う。形質移入させるか又は形質導入させた細胞は、次いで被検体に戻される。細胞は、造血性細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞又はB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン合成細胞又は筋細胞を含むが、これらに限定されるものではない様々な範囲のいずれかでありうる。
【0131】
例えば、VEGF特異的アンタゴニストが抗体である場合、抗体は、非経口的、皮下、腹膜内、肺内、鼻腔内、局所の免疫抑制性治療のために所望するならば、病巣内の投与を含む、任意の適切な手段によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内、又は皮下の投与が含まれる。さらに、抗体は、特に抗体の用量を低減したパルス注入によって最適に投与される。好ましくは、投薬は、投与が短期であるか長期であるかにある程度依存して、注射、最も好ましくは静脈内又は皮下注射によってなされる。
【0132】
他の例では、VEGF特異的アンタゴニスト化合物は、直接注射などによって局所的に投与され、疾患又は腫瘍の位置が可能である場合には、注射は周期的に繰り返されてもよい。また、例えば休止中の腫瘍又は微小転移性癌の局所の再発又は転移を予防するか又は低減するために、VEGF特異的アンタゴニストは、被検体の全身に、又は腫瘍細胞、例えば腫瘍の外科的切除後の腫瘍床ないしは腫瘍に直接送達されてもよい。
【0133】
あるいは、VEGF特異的アンタゴニストをコードする核酸配列を含有する阻害性核酸分子又はポリヌクレオチドは、被検体の適切な細胞に送達されてもよい。ある実施態様では、核酸は、腫瘍そのものに対するものであってもよい。
【0134】
核酸は、使用されるベクターに適切な任意の手段によって細胞に導入されてもよい。多くのこのような方法は当分野で周知である(上掲のSambrook et al.、およびWatson et al., Recombinant DNA, Chapter 12, 2d edition, Scientific American Books, 1992)。遺伝子運搬の方法の例には、リポソームが媒介する形質移入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DEAEデキストラン方法、遺伝子銃、およびマイクロインジェクションが含まれる。
【0135】
V.薬学的製剤
本発明において使用される抗体の治療製剤は、任意成分の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と所望の純度を有する抗体を混合することによって(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16版, Osol,A編 [1980])、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で保存用に調製される。典型的には、適当量の製薬的に許容可能な塩が製剤を等張にするために担体中に使用される。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度では細胞に対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。好適な凍結乾燥抗VEGF抗体製剤は、出典明示によりここに取り込まれる国際公開第97/04801号に記載されている。
【0136】
場合によっては、製剤は、薬学的に許容可能な塩、一般的に例えば塩化ナトリウムを、しばしば生理的濃度で含有する。任意で、本発明の製剤は、薬学的に許容される保存剤を含有してもよい。いくつかの実施態様では、保存剤濃度は、0.1から2.0%、一般的にv/vの範囲である。好適な保存剤には製薬の分野で知られているものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンは保存剤の例である。場合によっては本発明の製剤は、0.005〜0.02%の濃度で、薬学的に許容可能な界面活性剤を含んでもよい。
【0137】
一実施態様において、ベバシズマブは、4ml又は16mlのベバシズマブ(25mg/ml)を送達するために、100mg及び400mgの防腐剤を含まない、使い捨てのバイアルで治療的使用のために供給される。100mgの生成物は、240mgのα,α-トレハロース無水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性、無水)、1.6mgのポリソルベート20および注入用の水、USPに製剤化される。400mgの生成物は、960mgのα,α-トレハロース無水和物、92.8mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、19.2mgのリン酸ナトリウム(二塩基性、無水)、6.4mgのポリソルベート20および注入用の水、USPに製剤化される。ベバシズマブのラベルも参照のこと。ベバシズマブは、所定の国で商業的に現在入手可能である。
【0138】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候の必要に応じて、一よりも多い活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものを含有してもよい。例えば、それがさらに1つの製剤でEGFR、VEGF(例えば、VEGFの異なるエピトープに結合する抗体)、VEGFR、又はErbB2の(例えば、ハーセプチン(登録商標))に結合する抗体を提供することが望ましい可能性がある。代わりに、またはそれに加えて、組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤及び/又はVEGFRアンタゴニスト(例えば、小分子阻害剤、ポリペプチドなど)を含み得る。このような分子は、意図する目的のために有効である量で組み合わされて適切に存在する。
【0139】
活性成分はまた、コロイド性薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロカプセル、ミクロエマルション、ナノ−粒子、およびナノカプセルなど)又はマクロエマルション中、例えば、それぞれ、コアセルベーション法又は界面重合法によって製造された、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)(poly-(methylmethacylate) マイクロカプセルに取込むことができる。このような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciences,第16版、Osol, A. 編集(1980)において開示される。
【0140】
徐放性製剤も調製できる。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルムやマイクロカプセル等の成形品の形である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体、非−分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)から構成される注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グルコール酸のようなポリマーは分子を100日間にわたって放出することができるが、ある種のヒドロゲルはタンパクをより短時間の間放出する。被包された抗体が体内に長時間維持された場合、37℃で水分に暴露されて変性するか凝集し、結果として生物学的活性を失い免疫原性が変化するかもしれない。関与する機構に応じて安定化のための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を介する分子間S−S結合の形成であることが分かれば、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量のコントロール、適当な添加物の使用、および特異的なポリマーマトリックス組成物の使用によって達成することができる。
【0141】
インビボ投与に使用される製剤は無菌であり得る。これは滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成される。
【0142】
VI.治療効果
本発明の治療法の主な利点は、ヒト患者において有意な毒性又は副作用を引き起こさないで顕著な抗癌作用を生じさせる能力にあり、よって患者は治療から全体的に恩恵を享受する。本発明の治療法の効果は、限定するものではないが、腫瘍の緩解、腫瘍重さ又はサイズの縮小、腫瘍増殖停止時間、生存期間、無増悪生存期間、全奏効率、奏効期間、及び生活の質を含む癌治療を評価する際に一般的に用いられる様々なエンドポイントによって測定することができる。本発明の抗血管新生剤は腫瘍の脈管構造を標的とし必ずしも新生物細胞自体を標的とはしないので、独特のクラスの抗癌剤であり、よって独特の基準及び薬剤に対する臨床奏効の定義を必要としうる。例えば、二次元解析で50%を越える腫瘍縮小は奏効を宣言する標準的なカットオフである。しかしながら、本発明の抗VEGF抗体は原発性腫瘍の縮小なしに転移拡散を阻害し、又は単に腫瘍抑制作用を生じうる。従って、例えば、血管新生の血漿又は尿マーカーの測定と放射線画像の測定を含む抗血管新生療法の効能を決定するための新しいアプローチ法が必要に応じて用いることができる。
【0143】
別の実施態様において、本発明は、以前に治療された癌の影響を受けやすいか又は以前に治療された癌と診断されたヒト患者の無増悪生存期間を増加させる方法を提供する。疾患の進行までの時間は薬剤の投与から疾患の進行又は死亡までの時間として定義される。一実施態様において、抗VEGF抗体及び一又は複数の化学療法剤を用いる本発明の併用療法は無増悪生存期間を少なくとも0.5ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、2.1ヶ月、2.2ヶ月、2.8カ月又はそれ以上有意に増加させる。一実施態様において、抗VEGF抗体及び一又は複数の化学療法剤を用いる本発明の併用療法は、化学療法単独による処置と比べて無増悪生存期間を約1ヶ月から約5ヶ月有意に増加させた。一実施態様において、PFS中央値は、ベバシズマブ無しによる治療における5.1か月と比較して、ベバシズマブで治療された患者において、HRが0.775、p値(ログランク)が0.0072で、7.2か月である。別の実施態様において、月単位のPFSは図3に載っている。
【0144】
更に別の実施態様において、本発明の治療は、以前に治療された癌に感受性があるか又は診断され、様々な治療法で治療されるヒトの患者群において奏効率を有意に増加させる。奏効率は、治療を受けて治療に反応する患者の割合として定義される。一態様において、抗VEGF抗体及び1つまたは複数の化学療法剤を用いる本発明の併用療法は、化学療法単独で治療された群と比較して、治療された患者群において奏効率を有意に増加させる。
【0145】
一態様において、本発明は、癌に感受性があるか又は診断されたヒト患者又はヒト患者群において応答の持続時間を増加させるための方法を提供する。応答の持続時間は、初期応答からの疾患の進行まで時間として定義される。
【0146】
一実施態様において、本発明は、癌の影響を受けやすいか、癌と診断されたヒト患者の生存期間を増加させるために使用することができる。
【0147】
VII.抗体産生
(i)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
【0148】
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と混合し、その溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、その動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合体として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0149】
(ii)モノクローナル抗体
本明細書中のモノクローナル抗体を製造するための様々な方法は、当該技術分野で利用できる。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作製することができる。
【0150】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスター又はマカクザルを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0151】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
【0152】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものである。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0153】
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
【0154】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0155】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製法により、培地、腹水、又は血清から適切に分離される。
【0156】
モノクローナル抗体をコードしているDNAは、常法を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)直ぐに単離され配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、そうしないと免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体の組換え生産は以下に更に詳細に記載する。
【0157】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記述している。続く刊行物は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783(1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266(1993))を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な代替法である。
【0158】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を、相同的マウス配列に代えて置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることで修飾できる。
【0159】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換され、又は抗体の一抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対する特異性を有する一つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0160】
(iii)ヒト化及びヒト抗体
ヒト化抗体には非ヒトである由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入されている。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にはヒト抗体の対応する配列に齧歯類CDRs又はCDR配列を置換することによりウィンターと共同研究者の方法(Jones等, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536(1988))を使用して実施することができる。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には幾らかの高頻度可変領域残基及び場合によっては幾らかのFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0161】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を作製する際に使用するヒトの軽重両方の可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものに最も近いヒト配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0162】
更に、抗体を、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムが購入可能である。これら表示を調べることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、直接的かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
【0163】
ヒト化抗VEGF抗体とその親和性成熟変異体は、例えば、2005年2月26日に発行された米国特許第6884879号に記載されている。
【0164】
今や、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えばJakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggerman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosal等 Nature 355:258 (1992)を参照されたい。
【0165】
別法として、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553[1990])を使用して、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージの主要又は非主要コートタンパク質遺伝子のどちらかで、例えばM13又はfd等で、クローンし、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能特性に基づいた選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択する結果となる。よって、このファージはB細胞のいくつかの特性を模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照せよ。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化したマウス脾臓由来のV遺伝子の小さなランダムなコンビナトリアルライブラリーから、多様で多くの抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様で多くの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術にそのまま従うことで単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
【0166】
上述したように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により産生することができる(米国特許第5567610号及び同5229275号)。
【0167】
ヒトモノクローナル抗VEGF抗体は1998年3月24日発行の米国特許第5730977号に記載されている。
【0168】
(iv)抗体断片
抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照)。しかし、これらの断片は今は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収し、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の方法は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号を参照。
【0169】
(vi)他のアミノ酸配列修飾
本明細書において抗体のアミノ酸配列修飾が検討される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体核酸に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製される。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが、最終的なコンストラクトが所望の特性を有していることを条件として、最終的なコンストラクトに到達するために作られる。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数又は位置を変更するような抗体の翻訳後プロセスを変更すること場合がある。
【0170】
突然変異誘発に好ましい位置である抗体の特定の残基又は領域の同定に有益な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science, 244:1081-1085に開示されているように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的となる残基又は残基群が同定され(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電した残基)、中性又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。置換に対する機能的感受性を示しているそれらアミノ酸の位置は、置換位置において、又は置換の位置のために、更なる又は別の変異体を導入することにより改良される。このように、アミノ酸配列変異体を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、与えられた部位における突然変異のパーフォーマンスを分析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャンニング又はランダム突然変異誘発が行われ、発現した免疫グロブリンは所望の活性についてスクリーニングされる。
【0171】
アミノ酸配列の挿入は、一残基から100以上の残基を含むポリペプチド長にわたるアミノ末端及び/又はカルボキシル末端への融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を持つ抗体又は細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、血清半減期を増加させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドに対する抗体のNまたはC末端への融合が含まれる。
【0172】
変異体有為のその他のタイプはアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基で置換された抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を持つ。置換変異誘発のための最も関心のある部位は、超可変領域を含むが、FR変化もまた熟考される。
【0173】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はらせん構造、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩に影響を及ぼす置換を選択することにより達成されうる。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger, in Biochemistry, 2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)無極性:Ala(A),Val(V),Leu(L),Ile(I),Pro(P),Phe(F),Trp(W),Met(M)
(2)無電荷極性:Gly(G),Ser(S),Thr(T),Cys(C),Tyr(Y),Asn(N),Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D),Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K),Arg(R),His(H)
別法では、天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0174】
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0175】
抗体の適切な構造の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換され、分子の酸化的安定性を向上させ異常な架橋を防止し得る。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特にここでの抗体はFv断片等の抗体断片である)。
【0176】
実質的置換変異体の一例は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、更なる開発のために得られた変異体は、それらが生成された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性成熟がふくまれる。簡潔に言えば、高頻度可変領域部位(例えば、6−7部位)を変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価形態で表示される。ファージ表示変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変の候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体とヒトHhip1ポリペプチドとの接点を同定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここで詳しく記述した技術による置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択することができる。
【0177】
抗体のアミノ酸変異体のもう一つのタイプは、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更することは、抗体に見つかった1つ又は複数の炭水化物部分を削除すること、及び/又は抗体中に存在しない1つ又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0178】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0179】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0180】
抗体がFc領域を含有する場合、それに接着する炭水化物を変更してもよい。例えば、抗体のFc領域に接着するフコースを欠損する成熟炭水化物構造の抗体は、米国公開特許第2003/0157108号(Presta, L.)に記載される。米国公開特許第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd.)も参照のこと。抗体のFc領域に接着した炭水化物内のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を二分する抗体は、国際公報第03/011878号、Jean-Mairet 等、及び米国特許第6602684号、Umana 等に参照されている。抗体のFc領域に接着するオリゴサッカライド内の少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、国際公報第97/30087号、Patel 等に報告される。また、抗体のFc領域に接着する変更された炭水化物を有する抗体については、国際公報第98/58964号(Raju, S.)及び国際公報第99/22764号(Raju, S.)も参照のこと。
【0181】
エフェクター機能、例えば抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)を向上させるために、本発明の抗体を修飾することが望ましい。このことは、抗体のFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。代わりに又は加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上及び/又は補体媒介性細胞障害及び抗体依存性細胞障害(ADCC)を増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) 及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗腫瘍活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff ら Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。又は、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体溶解及びADCC能を亢進した。StevensonらAnti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
【0182】
国際公開公報00/42072 (Presta, L.)はヒトエフェクター細胞の存在下にてADCC機能が向上した抗体を記述し、ここで抗体はそのFc領域にアミノ酸置換を含有する。好ましくは、ADCCが向上した抗体は、Fc領域の位置298、333及び/又は334に置換を含有する(残基のEu番号付け)。好ましくは、変更したFc領域は、これらの位置のうちの1つ、2つ又は3つに置換を含有する又はからなるヒトIgG1 Fc領域である。そのような置換は場合によってはC1q結合及び/又はCDCを増強させる置換と組み合わされる。
【0183】
C1q結合及び/又は補体依存性細胞障害性(CDC)が変化した抗体は、国際公開公報99/51642、米国特許第6194551号B1、米国特許第6242195号B1、米国特許第6528624号B1及び米国特許第6538124号(Idusogie 等)に記述される。抗体は、そのFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、313、333及び/又は334の一又は複数に、アミノ酸置換を含有する(残基のEu番号付け)。
【0184】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば米国特許第5739277号に記載されているように、抗体(特に抗体断片)にサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで用いられる場合、「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因となるIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFc領域のエピトープを意味する。
【0185】
新生児のFcレセプター(FcRn)への結合が向上し、半減期が増加している抗体は、国際公開第00/42072号(Presta, L.)及び米国公開特許第2005/0014934号A1(Hinton等)において、記述される。これらの抗体は、その中にFcRnへのFc領域の結合を向上させる一又は複数の置換を有するFc領域を含む。例えば、Fc領域は、一又は複数の位置238、250、256、265、272、286、303、305、307、311、312、314、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、428又は434(残基のEu番号付け)に置換を有してもよい。向上したFcRn結合を有する好適なFc領域−含有抗体変異体は、そのFc領域の位置307、380及び434(残基のEu番号付け)のうちの1、2又は3にアミノ酸置換を含んでなる。一実施態様において、抗体は307/434変異を有する。
【0186】
3つ以上(好ましくは4つ)の機能的抗原結合部位を有する改変抗体もまた考慮される(米国公開特許第2002/0004587号A1, Miller等)。
【0187】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定されないが、天然源(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)からの分離、又はオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及び以前に調製された抗体の変異体又は非変異体バージョンのカセット変異導入法を含む。
【0188】
(v)免疫複合体
また、本発明は、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害剤、あるいは放射性同位体(つまり、放射性コンジュゲート)と抱合しているここに記載の抗体を含む免疫複合体に関する。
【0189】
そのような免疫複合体の産生に有用な化学療法剤は上に記載した。使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。様々な放射性核種が放射性コンジュゲート抗体の生産に利用できる。例には、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。
【0190】
抗体と細胞障害性剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照のこと。
【0191】
他の実施態様では、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートすることができ、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0192】
(vi)免疫リポソーム
また、ここで開示されている抗体は、免疫リポソームとして処方することもできる。抗体を含むリポソームは、例えばEpstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4485045号及び同4544545号に記載されているような、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5013556号に開示されている。
【0193】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。場合によっては、化学療法剤はリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照のこと。
【0194】
VIII.製造品及びキット
本発明の他の実施態様では、前述した疾患の治療に有用な物質を含有する製造品が提供される。製造品は容器、ラベル及びパッケージ挿入物を含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器はガラス又はプラスチックのような様々な材料で形成することができる。容器は病状の治療に有効な組成物を収容しており、滅菌したアクセスポートを有している(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備する静脈溶液用のバック又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一種の活性剤は抗VEGF抗体である。容器上の又は容器に伴うラベルには、組成物が、選択された病状の治療に使用されることが示されている。製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びブドウ糖液を収容する第2の容器を更に含みうる。更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。更に製造品は、例えば、抗VEGF抗体組成物及び化学療法剤を、以前に治療された癌を持ち、かつ場合によってはHER2陰性を示す患者に投与するために、組成物の使用者に指示することを含む、使用のための指示を付したパッケージ挿入物を含む。所定の実施態様において、患者は転移性癌を有する。幾つかの実施態様において、患者は以前に治療された転移性乳癌を有し、HER2陰性である。パッケージ挿入物には、場合によっては実施例1において見いだされた結果の幾つか又は全てが含まれる。
【0195】
VEGF特異的アンタゴニストは、単独又はキットのような他の抗癌治療用化合物と組み合わせてパッケージ化することができる。キットには、粉末形態を再構成するためのバイアル、注射用シリンジ、カスタマイズされた静脈内(IV)送達システム、吸入器等、患者への単位用量の投与を援助する任意の構成要素を含めることができる。更に、単位用量キットに組成物の調製及び投与のための説明書を含めることができる。所定の実施態様において、説明書は、組成物の使用者に対して、以前に治療された乳癌又は場合によってはHRE2陰性を持つ患者へ抗VEGF抗体組成物及び化学療法剤を投与することを指示することを含む使用説明書を包含する。所定の実施態様において、患者は転移性癌を有する。幾つかの実施態様において、患者は以前に治療された転移性乳癌を有し、HER2陰性である。説明書は、必要に応じて実施例1で見出された結果の一部又は全てを含めることができる。キットは、一人の患者に対する単回使用の単位用量、特定の患者のための複数の使用(一定の用量で、又は個々の化合物は治療の経過につれて効力が異なる場合がある)として製造されて良く、又はキットには、複数の患者への投与に適した複数用量を含めることができる(「バルク包装」)。キットの構成成分は、カートン、ブリスター包装、ボトル、チューブ等に組み込むことができる。
【0196】
[材料の寄託]
以下のハイブリドーマ細胞株は、ブダペスト条約の規定によりアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、(マナッサス、バージニア州、アメリカ)に寄託されている。
抗体名称 ATCC番号 寄託日
A4.6.1 ATCC HB-10709 1992年3月29日
【0197】
以下の例は、本発明の実施を説明するために単に意図され、制限する目的で提供されてはいない。本明細書中で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0198】
実施例1.以前に治療された転移性乳癌の被験体における化学療法計画と併用したベバシズマブ
転移性乳癌(MBC)は、患者の大半が診断から2年以内に自らの疾患で死亡する不治の疾患である。Greenberg, et al., 1996, J. Clin. Oncol. 14:2197-205を参照。進行期疾患の患者の約60%が局所再発を示し、40%がアジュバント療法後に遠隔転移を示す。患者のわずか10%が初期診断時に転移性疾患を呈する。Ryberg et al., 2001 Ann. Oncol. 12:81-7を参照のこと。
【0199】
MBC患者のための治療アルゴリズムは、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)増幅、ホルモン受容体の状態、ホルモン剤に対する以前の応答及び/又は障害、転移性疾患の数及び特定部位、転移性及びアジュバント療法の両方での治療歴、などの臨床、病理学、及び組織学的特性を含む、いくつかの要因に基づいている。多数の細胞傷害性化学療法剤がアントラサイクリン、タキサン、ゲムシタビン、カペシタビン、及びビノレルビンを含む、MBCにおいて活性を示している。これらの薬剤で見られた奏効率及び無増悪間隔は、以前の治療の程度と範囲及び転移性疾患の程度によって異なる。一般的には、アントラサイクリンベースの併用療法及びタキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)が転移性の療法において、アジュバント療法で薬剤に前もって曝されず、及び転移性疾患の治療のため化学療法に前もって曝されない患者において、40から50パーセントの奏効率及び約6−9ヶ月の無増悪生存期間(PFS)の中央値を有し最大活性を示した。Hamilton and Hortobagyi 2005 J. Clin. Oncol. 23:1760-75を参照。予想通り、最初の治療の最中又はその後進行する患者は短い無増悪間隔(4−6ヶ月)及び生存(8−12ヶ月)を有する。従って、再発疾患を有する患者の無増悪間隔及び生存の両方を延長するであろう計画に組み込むことができる追加の治療法を見つける必要がある。
【0200】
MBCの二次治療の設定では、抗チューブリン薬(タキサン、ビノレルビン)及び抗代謝産物(カペシタビン、ゲムシタビン)を含む多くの薬剤が活性を示している。以前にアントラサイクリン治療を受けたMBC患者の大規模な第III相試験において、マイトマイシン及びビンブラスチンと比較して、ドセタキセルが、疾患の進行までの時間(4.4対2.5ヶ月;p=0.001)及び生存(11.4対8.7ヵ月、p=0.0097)を大幅に増加させた最初の単一の薬剤であった。Nabholtz et al., 1999 J. Clin. Oncol. 17:1413-24を参照。 以前にアントラサイクリンを受けたか又はその候補でなかった患者において、ドセタキセル単独と比較してドセタキセルにカペシタビンの追加は、進行までの時間(6.1月対4.2月;ハザード比=0.652)及び生存(14.5月対11.5月;ハザード比=0.775)の更なる改善につながった;しかし、この組み合わせにより毒性の実質的な増加があった。O’Shaughnessy et al., 2002 J Clin. Oncol. 20:2812-23を参照。単一又は組み合わせ薬剤の何れかによる追加試験では、明確な生存の利点を実証することはできなかった。Hamilton and Hortobagyi 2005 J. Clin. Oncol. 23:1760-75を参照。単独または組み合わせて使用する複数の薬剤の経験に基づいて、現在の治療パラダイムは、以前の治療、無治療間隔、毒性プロファイル及び患者の好みを含む多くの要因によって決定される特定の薬剤の選択による逐次単剤療法である。
【0201】
これらの複数の薬剤の可用性にもかかわらず、二次治療においてMBC患者のための追加治療が必要とされている。全身毒性を回避しながら、疾患の進行を遅らせることに向けられた新たな治療法は、これらの患者の治療において有意な進歩を象徴するであろう。
【0202】
化学療法と併用したアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)の第III相試験(RIBBON2)では、転移性HER2陰性乳癌に罹患し、初期の化学療法で働くことを止めた女性が疾患を悪化させることなく生き延びる時間を化学療法単独と比べて増加させた。試験で女性を治療する医師は、アバスチンと併用して用いられる化学療法の種類を選択し、その化学療法は主要エンドポイント解析において一緒に評価された。有害事象は、以前にアバスチンにおいて報告されたものと一致しており、新たなアバスチン安全信号は試験で観察されなかった。
【0203】
Ribbon2は、転移性疾患に対する化学療法を以前に受けた転移性HER2陰性乳癌を持つ684人の患者を登録した、国際的に、多施設で、無作為化され、二重盲検式の、プラセボ対照臨床試験であった。表1の実施研究及び表2の患者特性を参照。試験では、化学療法の治験責任医師の選択に対してAvastin(登録商標)(ベバシズマブ)又はプラセボのいずれかの追加を評価した。以下の化学療法計画が本研究で使用された:タキサン:パクリタキセル;タンパク質に結合したパクリタキセル又はドセタキセル;ゲムシタビン;カペシタビン;又はビノレルビン。

【0204】
[試験における適格性は以下を包めた]
試験に適格な年齢:18歳以上
試験に適格な性別:両方
健康なボランティアの受け入れ:否
【0205】
[試験における選択基準は以下を含めた]
署名入りインフォームドコンセントフォーム
≧年齢18歳
測定可能な又は非測定可能な進行した転移性疾患の組織学的に確認された乳癌(脳転移の既往歴のある患者は、彼らの脳転移が治療され、彼らが治療後に進行又は脳出血の証拠、及びデキサメタゾンの継続の必要性が無い限り、試験参加に適格である[米国のみ])
一次治療で投与された一(非治験)化学療法計画の管理中又は後の疾患の進行
ECOGパフォーマンスステータスが0又は1
妊娠の可能性のある女性に対して、非ホルモン性避妊の効果的な手段の使用
平均余命≧3か月
試験と経過観察の手順を順守する意欲と能力
【0206】
[試験における除外基準は以下を含めた]
ホルモン療法の前には化学療法によらない転移性疾患の治療のみ。患者は一次治療で転移性疾患のための化学療法を受けなければならない。ホルモン療法単独は認められない。
前にアントラサイクリンベースの治療を受けた被検体に対して、複数ゲートによる取得(MUGAスキャン)(MUGA)又は心エコー図(ECHO)により50%未満の左室駆出分画のドキュメンテーション。
MBCに対する一以上の細胞傷害性療法による治療
HER2陽性状態(HER2状態が不明の患者、HER2状態の決定が可能でない患者はこの試験に適格である)
ER及びPR状態が不明
第0日前の21日間にMBCに対して、寛解のため又は脳転移のため以外の放射線療法、生物学的療法、又は化学療法
ベバシズマブ又は他のVEGF経路標的療法による以前の治療
未治療の脳転移
コントロールが不十分な高血圧症
不安定性狭心症
ニューヨーク心臓協会のグレードII又はそれ以上のCHF
第0日(最初のベバシズマブ/プラセボ投与の日)に先立つ6ヶ月以内に心筋梗塞の既往
第0日に先立つ6ヶ月以内に脳卒中又は一過性脳虚血発作の既往
臨床的に重大な末梢血管疾患
出血性体質又は血液凝固の証拠
第0日に先立つ28日以内に大手術、切開生検、又は重大な外傷;試験期間中の大きな選択的手術の必要性を予想して
第0日に先立つ7日以内に軽微な手術、細針吸引、又はコア生検
第0日に先立つ6か月以内に瘻孔、胃腸穿孔、又は腹腔内膿瘍の既往
深刻な、非治癒創傷、潰瘍、又は骨折
前投薬治療で制御されないモノクローナル抗体療法に対するアナフィラキシー反応の既往
十分に制御された基底細胞癌又は皮膚の扁平上皮癌又は子宮頸部上皮内癌などの転移又は死亡のリスクが無視できる腫瘍を除く、第0日の5年以内に他の悪性腫瘍の既往
不十分な臓器機能
妊娠(陽性血清妊娠テスト)又は授乳中
治験薬の使用が禁忌であるか又はその結果の解釈に影響を与え得るか、又は被検体に治療の合併症由来のリスクを高める疾患又は状態の合理的な疑いを与える、他の疾患、代謝障害、身体検査所見、又は臨床検査室での知見。
【0207】
[ベバシズマブ(5mg/kgを毎週等量)]
15mg/kg IV 3週間ごと;又は
10mg/kg IV 2週間ごと
[プラス]
[化学療法]
タキサン
パクリタキセル(例えば、タキソール(登録商標)):3週間ごとに90mg/mIVでその後1週間休止;又は
パクリタキセル(例えば、タキソール(登録商標)):3週間ごとに175mg/mIV;又は
蛋白結合パクリタキセル粒子(アブラキサン(登録商標)):3週間ごとに260mg/mIV;又は
ドセタキセル(タキソテール(登録商標)):3週間ごとに75−100mg/mIV;又は
ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標)):各3週間サイクルの第1日及び第8日に1250mg/m;又は
ビノレルビン(ナベルビン(登録商標)):毎週30mg/mIV;又は
カペシタビン(ゼローダ(登録商標)):各3週間サイクルの第1日−14日に毎日2回経口的に1000mg/m
【0208】
本試験では、PFSは、試験において治療する医師により評価された(治験責任医師に評価された)、無作為化から病気の進行又は死亡に至る期間として定義される。二次エンドポイントは、化学療法の種類と安全性により、客観的奏効率、奏効期間、1年間の生存率、全生存、PFSの評価が含まれる。結果は、アバスチン+化学療法を受けた患者のプールしたコホートにおいてPFSの延長、主要エンドポイントを示した(HR=0.775;p-値(ログランク)=0.0072)。PFS中央値(95%Cl)は、ベバシズマブ/化学療法治療群(図1の治療群A、n=459)において7.2か月(6.5、7.6)、対、プラセボ/化学療法治療群(図1の治療群B、n=225)において5.1か月(4.1、6.0)であった。表3のPFSの主要有効性解析及び図2(PFSの主要エンドポイント)及び図3(PFSのコホート特異的解析)を参照。PFSの結果はビノレルビンの小サブグループを除いて、化学療法コホート間で一般的に一致していた。他のサブグループ(年齢、トリプルネガティブ(triple negative)、等)は主要PFSの結果と一般的に一致していた。全体的なPFSにおいて認められた改善はORRの二次有効性エンドポイントによって支持された。図4を参照。OSの暫定的有効性解析については表4を参照。新たなベバシズマブの安全性信号は、本試験で観察されなかった。例えば、表5の安全性の概要、安全集団、表6の選択された有害事象(AE)、安全集団、及び表7の化学療法コホートによる安全性の概要、安全集団を参照。ベバシズマブは、二次治療として患者に有益であった。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
転移性の以前に治療された乳癌と診断された患者を治療する方法であって、患者に化学療法と抗VEGF抗体の有効量を投与することを併用する治療計画を受けさせることを含み、治療計画の化学療法が少なくとも1つの化学療法剤の投与を含み、治療計画が患者の無増悪生存期間を効果的に延長する方法。
【請求項2】
前記抗VEGF抗体が、ハイブリドーマATCC HB 10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗VEGF抗体がヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗VEGF抗体がヒト化A4.6.1抗体又はその断片である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
患者の無増悪生存期間が、化学療法単独により治療された他の患者と比較して、少なくとも約2.1ヶ月又はそれ以上延長される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗VEGF抗体が以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号1)
及び以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号2)
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
抗VEGF抗体組成物、及び化学療法と併用して抗VEGF抗体組成物を用いるための指示を含むパッケージを含む、ヒト患者において以前に治療された転移性乳癌を治療するためのキットであって、該指示が、化学療法及びベバシズマブを受けた患者に対して、ハザード比が0.755及びp値が0.0072で、無増悪生存期間が7.2ヶ月であると唱えているキット。
【請求項9】
抗VEGF抗体が以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYTFT NYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP HYYGSSHWYF DVWGQGTLVT VSS(配列番号1)
及び以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKR(配列番号2)
を有する、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
癌を有するヒト被検体に指示する方法であって、該方法は以前に治療された転移性乳癌に対して、患者の無増悪生存期間を増加させるために、抗VEGF抗体により、乳癌治療を受けるための指示を提供することを含む方法。
【請求項12】
指示が少なくとも一つの化学療法剤による治療を受けるための指示を提供することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抗VEGF抗体による治療が化学療法剤による治療と同時である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以前に治療された転移性乳癌を有するヒト被検体における乳癌の治療のために、患者の無増悪生存期間を増加させるために、抗VEGF抗体の投与を宣伝することを含む、プロモーション方法。
【請求項15】
方法が少なくとも一つの化学療法剤の投与を宣伝することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗VEGF抗体の投与が化学療法剤の投与と同時である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
プロモーションはパッケージ挿入物により、該パッケージ挿入物が抗VEGF抗体による癌治療を受けるための指示を提供する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
プロモーションが抗VEGF抗体の市販製剤に付随するパッケージ挿入物による、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
プロモーションが化学療法剤の市販製剤に付随するパッケージ挿入物による、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
プロモーションが医師又は医療提供者に対する文書伝達による、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
プロモーションが医師又は医療提供者に対する口頭伝達による、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
プロモーションはその後に抗VEGF抗体による被検体の治療が続く、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
プロモーションはその後に抗VEGF抗体及び化学療法剤による被検体の治療が続く、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
以前に治療された転移性乳癌を有するヒト被検体において、患者の無増悪生存期間を増加させるために、乳癌の治療のために、抗VEGF抗体をマーケティングすることを含むビジネス方法。
【請求項25】
方法が、抗VEGF抗体と併用して使用するために化学療法剤をマーケティングすることを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
マーケティングはその後に抗VEGF抗体による被験体の治療が続く、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
マーケティングはその後に抗VEGF抗体及び化学療法剤による被験体の治療が続く、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
以前に治療された転移性乳癌のヒト被検体において、無増悪生存期間を増加させるために、乳癌の治療のために、抗VEGF抗体との併用で化学療法剤をマーケティングすることを含む、ビジネス方法。
【請求項29】
マーケティングはその後に化学療法剤及び抗VEGF抗体の併用による被検体の治療が続く、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501801(P2013−501801A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524835(P2012−524835)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045147
【国際公開番号】WO2011/022264
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】