説明

仮撚り繊維機械

【課題】複数のマルチフィラメント糸をテクスチャード加工する仮撚り繊維機械を改良して、糸を高品質でテクスチャード加工可能及び処理可能にする。
【解決手段】糸11を引き出し、延伸し、テクスチャード加工し、かつ巻取るための、複数のデリベリユニット3,9,14と加熱装置4と冷却装置5と仮撚り装置8と巻取装置10.1とを有し、第1のデリベリユニット3と第2のデリベリユニット9との間に、テクスチャード兼延伸ゾーンが形成され、前記第2のデリベリユニット9と前記1つの巻取ユニット10.1との間に設けられた第3のデリベリユニット14が後処理ゾーンを形成している形式のものにおいて、第1のデリベリユニット3と第2のデリベリユニット9とがそれぞれ、巻き掛けデリベリユニット15.1,15.2として構成されており、前記第3のデリベリユニット14がニッピングデリベリユニット20として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した複数のマルチフィラメント糸をテクスチャード加工するための仮撚り繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べた形式の仮撚り繊維機械は、例えば国際公開第2007/036242号パンフレットにより公知である。
【0003】
糸を仮撚りテクスチャード加工する際に、糸はまず前置されたフィードボビンから引き出される。フィードボビンの糸は、前もって溶融紡糸プロセスで製造されている。溶融紡糸されたマルチフィラメント糸を織物製品用に処理するために、糸はフィードボビンから引き出した後で同時に延伸され、かつテクスチャード加工される。テクスチャード加工後に、後処理例えば収縮処理が実施され、それによって完成されたテクスチャード加工及び処理された糸が最後に1つのボビンに巻き取られるようになっている。糸を処理中にガイドし、かつ延伸するために、複数のデリベリユニットが設けられている。従って公知の仮撚り繊維機械が第1のデリベリユニットを有しており、この第1のデリベリユニットが、後置された第2のデリベリユニットと共に1つの組み合わされたテクスチャード兼延伸ゾーンを形成する。第2のデリベリユニットの後ろに第3のデリベリユニットが配置されており、この第3のデリベリユニットによって後処理ゾーンが規定されている。第3のデリベリユニットに続いて巻取装置が配置されており、この巻取装置によって糸が1つのボビンに巻き取られるようになっている。
【0004】
糸をガイド及び延伸するために、基本的に2つ異なる形式のデリベリユニットが使用される。第1の形式のデリベリユニットは、いわゆる巻き掛けデリベリユニットによって形成されている。巻き掛けデリベリユニットは、巻き掛けデリベリユニットに糸を複数回巻き掛けることによって糸の引張力が生ぜしめられることに基づいている。このために、有利にはゴデットと、このゴデットに対して短い間隔を保って配置されたダンサーローラとが使用され、このダンサーローラの外周面に糸が複数回巻き掛けられてガイドされている。
【0005】
第2の形式のデリベリユニットは、いわゆるニッピングデリベリユニット(把持供給ユニット)である。ニッピングデリベリユニットは、駆動される駆動ローラとニッピングエレメント(例えば圧力ベルト又は圧着ローラ)との間のニップ(ローラ間隙)内でガイドされる。この場合、糸は駆動軸の外周面に部分的に巻き掛けられてガイドされる。ニッピングエレメントは、駆動軸の外周面の巻き掛け領域内にあって、この場合、ニッピングエレメントと駆動軸とは同じ方向で運動する。
【0006】
公知の仮撚り繊維機械においては、1つの形式のデリベリユニットを糸のガイド及び延伸のために使用することが一般的である。しかしながら、いずれの形式のデリベリユニットも、糸をガイドする際に利点及び欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/036242号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、冒頭に述べた形式の仮撚り繊維機械を改良して、糸を高品質でテクスチャード加工可能及び処理可能なものを提供することである。
【0009】
本発明の別の課題は、手動のボビン交換中においても糸をできるだけ中断することなく連続的に処理することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した、冒頭に述べた形式の本発明の仮撚り繊維機械によれば、第1のデリベリユニットが第1の巻き掛けデリベリユニットして構成され、また第2のデリベリユニットが第2の巻き掛けデリベリユニットとして構成されており、前記第3のデリベリユニットがニッピングデリベリユニットとして構成されている。
【0011】
本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載した特徴及びその組み合わせに記載されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、糸のテクスチャード加工及び後処理が、糸の各フィラメントにおいて均一に生ぜしめることができることを特徴としている。ニッピングデリベリユニットのニッピングエレメントによる、糸のフィラメントの外部からの付加的な機械的負荷は、糸の後処理まで行われない。糸は、テクスチャード兼延伸ゾーンにおいて、並びに後処理ゾーンの入口に、純粋な巻き掛けデリベリユニットによって丁寧にガイドされる。糸の後処理が終わってから初めて、糸がその最終的にテクスチャード加工された構造を有し、糸をガイドするために、第3のデリベリユニットがニッピングデリベリユニットとして構成されている。巻取装置の前に配置されたニッピングデリベリユニットは、後処理ゾーン内において糸の緊張が著しく一定に維持される、という特別な利点を有している。巻取装置内で実施されるボビン交換(このボビン交換時に、糸が短時間吸引されて糸屑容器にガイドされる)は、有利には後処理ゾーン内において影響を及ぼすことはない。ニッピングデリベリユニットによって、巻取装置への糸の供給はほぼ一定に保たれる。これによって、本発明による仮撚り繊維機械は、ボビン交換を手動で行う部分自動運転を実施するのに特に適している。しかしながら基本的に、本発明は、部分自動式の仮撚り繊維機械だけに限定されるものではない。それとは異なり、自動式のボビン交換も、有利な形式で巻取装置の前に配置されたニッピングデリベリユニットによって実施することができる。
【0013】
テクスチャード加工兼延伸ゾーン及び後処理ゾーン内において種々異なる糸緊張状態を調節するために、有利な実施態様によれば、第1の巻き掛けデリベリユニットと第2の巻き掛けデリベリユニットとニッピングデリベリユニットとが、別個の電動機によって駆動されるようになっている。これによって、複数のデリベリユニットにおける供給速度を、互いに無関係に独立して調節及び制御することができる。
【0014】
この場合、ニッピングデリベリユニットの駆動装置は、ニッピングデリベリユニットが、複数の駆動ステーションに亘って延在する駆動軸を有しており、該駆動軸が一端部で以て電動モータに接続されている、ように構成される。これによって、同時に複数の糸をそれぞれ対応配置された処理ステーションにガイドするために、ニッピングデリベリユニットの中央駆動装置が実現される。
【0015】
しかしながら、駆動軸が機械内で複数の部分軸に分割されており、この場合、前記部分軸が複数の処理ステーションに亘って延在していて、隣接する部分軸とは無関係に駆動可能であってもよい。これによって、処理ステーションの個別のグループを統括して駆動することができるので、ニッピングデリベリユニットは機械内部で、別個に制御可能な複数の駆動装置を有している。
【0016】
基本的に、その代わりに、ニッピングデリベリユニットが、処理ステーション内で個別に駆動されるデリベリユニットとして構成されていてもよい。このために、例えばニッピングデリベリユニットはゴデットによって形成されており、このゴデットの外周面に圧着ローラ又は圧力ベルトが糸を送るために当接するようになっている。
【0017】
ニッピングデリベリユニットは、ニッピングエレメントとして、有利には圧着ローラを有しており、この圧着ローラは、処理ステーション毎に及び糸毎に、糸をニッピングするために、駆動軸の外周面に保持されている。これによって特にスリップすることなしに糸を移動及びガイドすることができる。
【0018】
巻き掛けデリベリユニットにおいて糸をできるだけ操作し易くガイドするために、本発明の有利な実施態様によれば、第1及び第2の巻き掛けデリベリユニットが処理ステーション内で、個別に及び隣接する処理ステーションの隣接する巻き掛けデリベリユニットとは無関係に独立して駆動可能に構成されている。
【0019】
このために、巻き掛けデリベリユニットは有利には、それぞれ1つの駆動されるゴデットと回転可能に支承されたダンサーローラとによって形成されており、プロセス開始時に、糸の引き渡し若しくは糸通しを簡単な形式で実施することができる。
【0020】
しかしながら基本的に、このような巻き掛けデリベリユニットを、機械内で複数の処理ステーションに亘って延在する駆動軸によって形成することもよい。この駆動軸に、互いに上下に配置された複数のゴデット周壁が固定されている。
【0021】
仮撚り繊維機械の操作は、さらに、本発明の有利な実施態様に従って、巻き掛けデリベリユニットが処理ステーション内で、互いに向き合う機械スタンド部分に配置されており、これらの機械スタンド部分の間に作業用通路が形成されている。
【0022】
特に収縮処理に適した、できるだけ垂直に整列された後処理ゾーンを実現するために、第2の巻き掛けデリベリユニットとニッピングデリベリユニットとが、前記機械スタンド部分に互いに上下に配置されており、この場合、前記ニッピングデリベリユニットが処理ステーション内で前記巻取装置の下に配置されている。これによって、デリベリユニットの他に、巻取装置も作業用通路から操作することができる。
【0023】
この場合、有利には、複数の前記処理ステーションの複数の前記巻取装置から成る1つのグループに、手動のボビン交換を行うための補助装置が対応配置されている。手動のボビン交換時に、この補助装置は一般的な形式で、手動でガイドされた糸吸引装置に供給するための圧縮空気接続部及び吸引装置によって形成される。自動式のボビン交換時に、一般的な形式で付加的に、糸を吸引装置に引き渡すための糸ガイド装置が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例による仮撚り繊維機械の概略的な横断面図である。
【図2】図1に示した実施例の一部の概略的な側面図である。
【図3】本発明の別の実施例による仮撚り繊維機械の概略的な横断面図である。
【図4】図3に示した実施例の一部の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を用いて、本発明の幾つかの実施例による仮撚り繊維機械について説明する。
【0026】
図1及び図2には、本発明による仮撚り繊維機械の第1実施例が示されている。図1は、仮撚り繊維機械の横断面図、図2は、機械に相前後して配置された複数の巻取装置の部分図を示す。図1及び図2において、いずれかの図面であることが特に指摘されていなければ、以下の説明の図1及び図2の両方に当てはまる。
【0027】
図1に示した横断面図は、糸が1つのフィードボビンから引き出され、ガイドされ、テクスチャード(フィラメント)加工され、延伸され、かつ1つのボビンに巻き取られる処理ステーションにおける糸道を示す。このために必要なプロセス装置は、作業用通路27を部分的に取り囲む糸道のための、複数の部分より構成された機械スタンド7内に配置されている。仮撚り繊維機械は、長手方向で見て(図1においては図平面が、長手方向に対して直交する横方向の横断平面である)、複数の処理ステーションを有しており、これら複数の処理ステーションのそれぞれの1つにおいてそれぞれ1本の糸をテクスチャード加工し、かつ延伸加工するようになっている。一般的に、200以上の処理ステーションが相並んで配置されている。
【0028】
この実施例においては、処理ステーションの構造は同一に構成されているので、以下では、前記複数の処理ステーションの1つの装置について、図1を用いて説明する。
【0029】
フィードボビン2から糸11を引き出すために、処理ステーション毎に1つのフィードステーション1が設けられている。フィードステーション1はクリールスタンド6内に構成されており、このクリールスタンド6に複数のフィードステーション1から成る1つのグループが保持されている。クリールスタンド6に面した機械スタンド部分7.1に第1のデリベリユニット3が配置されている。第1のデリベリユニット3に続いて糸道に加熱装置4と冷却装置5とが配置されている。加熱装置4と冷却装置5とは中央の機械スタンド部分7.2に配置されており、この中央の機械スタンド部分7.2は、作業用通路27の上にかかっている。その先の糸道に仮撚り装置8及び第2のデリベリユニット9が続いている。仮撚り装置8と第2のデリベリユニット9とは、別の機械スタンド部分7.3に配置されており、この場合、機械スタンド部分7.1と7,3との間に作業用通路27が形成されている。第2のデリベリユニット9に、セット加熱装置(Set-Heizeinrichtung)13と第3のデリベリユニット14とが続いている。このために、第3のデリベリユニット14が、第2のデリベリユニット9の下に配置されており、それによって2つのデリベリユニット間に垂直に整列された後処理ゾーンが調節される。
【0030】
処理ステーション内で、第3のデリベリユニット14の後に巻取り装置10.1が配置されており、該巻取り装置10.1内で糸11がボビン12に巻き取られる。このために、巻取り装置10.1は、可動なボビンホルダ25と駆動ローラ26とを有している。糸道内で駆動ローラ26の前に、詳しく図示していない綾振り装置が設けられており、この綾振り装置は、糸をボビンに巻き付ける前に綾振りストローク内で往復ガイドし、それによって綾巻ボビンが巻取り装置で巻き取られる。この場合、ボビン12は駆動ローラ26に接触し、一定の周速度で糸11を巻取るために駆動せしめられる。
【0031】
巻取り装置は処理ステーション内で、巻取り装置の前に設けられたプロセス装置よりも大きい幅を必要とするので、隣接する処理ステーションの巻取り装置は、階層状に互いに上下に配置されている。この実施例では、巻取り装置10.1,10.2及び10.3は、機械スタンド7内で互いに上下に配置されており、この場合、巻取り装置10.1〜10.3の前に設けられたプロセス装置、例えば仮撚り装置8又は冷却装置5は互いに並列に保持されている。
【0032】
マルチフィラメント糸に高品質のテクスチャード加工及び延伸を実施することができるようにするために、第1のデリベリユニット3が巻き掛けデリベリユニット15.1によって形成され、第2のデリベリユニット9が第2の巻き掛けデリベリユニット15.2によって形成される。この実施例では、巻き掛けデリベリユニット15.1と15.2とが同一に構成されていて、それぞれ1つのゴデット16.1及び16.2並びにダンサーローラ17.1及び17.2を有している。ゴデット16.1及び16.2は、それぞれ別個のゴデットモータ19.1及び19.2に接続されている。それによって、巻き掛けデリベリユニット15.1及び15.2は、処理ステーション内で個別に、かつ隣接する処理ステーションの隣接する巻き掛けデリベリユニットとは無関係に駆動可能である。これによって、特にプロセス開始時又は糸切れ時に簡単な形式で操作を実施することができる。この場合、第1のデリベリユニット3に対応配置されたゴデットモータ19.1は、有利な形式でグループ変換装置を介してグループ毎に駆動することができる。
【0033】
ガイドを実施するために、糸11は、複数のゴデット16.1,16.2並びにダンサーローラ17.1,17.2の回転可能な外周面に複数回巻き付けられる。特にプロセス開始時に2つの巻き掛けデリベリユニット15.1及び15.2を作業用通路27の外から操作することができるようにするために、巻き掛けデリベリユニット15.1及び15.2が、処理ステーション内で互いに向き合う機械スタンド部分7.1及び7.2に配置されている。この場合、第2の巻き掛けデリベリユニット15.2の前でテクスチャード加工及び延伸ゾーン内に、仮撚り装置8、冷却装置5及び加熱装置4が、糸11がほぼ付加的な糸ガイドエレメントなしにガイド可能であるように、配置されている。これによって、糸を巻き掛けデリベリユニット15.1及び15.2に純粋に巻き掛けると共に、糸を丁寧にガイドし、かつテクスチャード加工及び延伸処理することができる。
【0034】
この場合、糸11は溶融紡糸したばかりの状態で直接的に第2の巻き掛けデリベリユニット15.2を介して後処理ゾーン内に達する。この後処理ゾーン内にセット加熱装置13が配置されている。セット加熱装置13内で糸の均一な弛緩状態を維持するために、糸はできるだけ低い糸緊張で巻き掛けデリベリユニット15.2と第3のデリベリユニット14との間に供給される。このために、第3のデリベリユニット14は、ニッピングデリベリユニット(把持供給ユニット)20として構成されており、このニッピングデリベリユニット内で、糸は駆動軸21と圧着ローラ22との間の緊締ギャップ内にガイドされる。圧着ローラ22は、可動なテンションアーム23を介して、駆動ローラ21の外周面に保持される。糸11は、駆動軸21の外周面に部分的に巻き掛けてガイドされ、駆動軸21と圧着ローラ22とが協働することによって連続的に送られる。
【0035】
これによって、巻取装置の前に配置されたニッピングデリベリユニット20は、処理ゾーン内で糸張力を処理ステーションのそれぞれの運転状態とは無関係に一定に維持する。糸が作業員によって切断され、一時的に吸い込み装置に供給される、手動のボビン交換も、後処理ゾーンに影響を及ぼすことはない。
【0036】
図2に示されているように、ニッピングデリベリユニット20の駆動軸21は、機械内で複数の処理ステーションに亘って延在している。処理ステーションは前部で18箇所設けられており、これらの処理ステーションは、階層状に互いに上下に配置された巻取装置の6つのグループを有している。巻取装置の最後のグループは、例えば符号10.16,10.17及び10.18で示されている。駆動軸21の端部は電動モータ24に連結されており、それによって複数の糸が同時に複数の処理ステーションで駆動軸21によってガイドされる。各処理ステーションにおいて、ニッピングデリベリユニット20は1つの圧着ローラ22を有しており、この圧着ローラ22は、それぞれテンションアーム23を介して選択的に、駆動軸21の外周面に接触して、又は接触せずに保持される。これによって糸は、糸切れ後に各処理ステーション内に個別に引き渡すことができる。
【0037】
駆動軸21は、機械スタンド7.3内で、複数の軸受箇所によって回転可能に支承されている。図2には、軸受箇所34.1及び34.2の実施例が示されている。
【0038】
図1及び図2に示されているように、巻取装置のうちの1つで作業員による手動のボビン交換を実施するために、巻取装置10.1〜10.3の各グループにそれぞれ1つの補助装置28が対応配置されている。補助装置28として、例えば吸引接続部29及び圧縮空気接続部30が図示されている。従って、手動でガイドされた吸引装置を接続することができ、この吸引装置によって、糸がボビン交換中にガイドされる。吸引装置の圧縮空気供給は、圧縮空気接続部30を介して行われる。吸引接続部29は、吸引管36に形成されており、この吸引管36は、機械長手方向側に延在していて、糸屑容器に接続されている。圧縮空気接続部30は、圧縮空気管路35に配置されており、この圧縮空気管路35は、機械長手方向側に沿って延在していて、圧縮空気原に接続されている。
【0039】
図3及び図4には、仮撚り繊維機械の別の実施例が示されている。図3には、この別の実施例の横断面図が示されていて、図4には、機械長手方向側の部分図が示されている。特に指摘がなければ、以下の説明は図3及び図4の両方に当てはまる。
【0040】
この実施例は、前記図1及び図2に示した実施例とほぼ同じであるので、ここでは相違点についてだけ説明する。この実施例は、供給されたそれぞれ1つの糸11を延伸し、テクスチャード加工し、後処理するために、前記図1及び図2の実施例と同様に多数の処理ステーションを有している。前記実施例とは異なり、第2のデリベリユニット9と第3のデリベリユニット14との間の後処理ゾーンにおいて多段式の後処理が行われる。このために、第2のデリベリユニット9の後ろに渦動発生装置33が配置されており、この渦動発生装置33内で、テクスチャード加工糸に、圧縮空気によって生ぜしめられた渦動が実施される。テクスチャード加工された糸のこのような渦動によって、仮撚り装置8の出口側においてまだ存在する、糸の残留ねじれが解かれる。
【0041】
糸道内で渦動装置3の後ろに第4のデリベリユニット32が配置されており、それによって、特に第3のデリベリユニット14と第4のデリベリユニット32との間で糸11に渦動を加えるための糸張力を調節することができる。続いて収縮処理を実施するために、糸道内で第4のデリベリユニット32に続いて、セット加熱装置13、第3のデリベリユニット14が配置されている。
【0042】
セット加熱装置13の前に設けられたデリベリユニット3,9及び32は、それぞれ巻き掛けデリベリユニット15.1,15.2及び15.3によって形成されている。各巻き掛けデリベリユニット15.1〜15.3は、同様に構成されているので、その構成は、繰り返しの説明を避けるために、前記実施例の構成が参照される。従って巻き掛けデリベリユニット15.3は、ゴデット16.3とダンサーローラ17.3とゴデットモータ19.3とによって形成される。
【0043】
巻取装置10.1の前に配置されたデリベリユニット14は、同様にニッピングデリベリユニット20として構成されており、このニッピングデリベリユニット20において駆動軸21は処理ステーション内で圧着ローラ22と協働する。図2に示した実施例とは異なり、駆動軸21は図4に示した実施例では、複数の部分軸31.1及び31.2に分割されていて、これらの部分軸にそれぞれ1つの別個の電動モータ24.1及び24.2が対応配置されている。これによって、ニッピングデリベリユニット20は、処理ステーションの複数のグループのために個別の駆動することができる。
【0044】
図1から図4に示した本発明の仮撚り繊維機械の実施例は、仮撚り繊維機械の装置の構造並びに配置の例、並びに糸の処理、加工及び巻取のためのプロセス装置の例である。例えば、仮撚り装置は有利な形式で、摩擦円板装置によって形成されており、この場合、各処理箇所に装置が対応配置されている。冷却装置5は、冷却レール又は冷却管によって形成されており、この冷却レール又は冷却管で少なくとも1つの糸又は複数の糸が同時に冷却可能である。同様に、加熱装置4はいわゆる高温加熱器によって形成することができる。この高温加熱器において、糸が加熱された面を介してガイドされ、この加熱された面は糸の溶融温度を超える表面温度を有している。この場合、加熱手段の形式とは無関係に、加熱装置において単数又は複数の糸を同時に温度調節することができる。
【0045】
また、糸を巻取る前に調整液(preparation fluid)で濡らすことも一般的に行われる。このような形式の調整装置は、有利な形式で、ニッピングデリベリユニットと巻取装置との間に配置されている。図示の実施例で示された、後処理ゾーン内の装置は、同様に1例として挙げられたものである。従って、糸を後処理ゾーン内で渦動させることも可能であるので、第2のデリベリユニットと第3のデリベリユニットとの間に1つだけの渦動装置を配置してもよい。
【0046】
本発明による仮撚り繊維機械のために重要なことは、デリベリユニットを、巻き掛けデリベリユニットとニッピングデリベリユニットとに分割する、ということである。この場合、巻取装置の前に直接配置されたデリベリユニットだけがニッピングデリベリユニットとして構成されていて、糸をテクスチャード加工及び処理するために設けられたその他のすべてのデリベリユニットが、糸を丁寧に扱う巻き掛けデリベリユニットによって形成されている。
【符号の説明】
【0047】
1 フィードステーション、 2 フィードボビン、 3 第1のデリベリユニット、 4 加熱装置、 5 冷却装置、 6 クリールスタンド、 7 機械スタンド、 7.1,7.2,7.3 機械スタンド部分、 8 仮撚り装置、 9 第2のデリベリユニット、 10.1,10.2,10.3 巻取装置、 11 糸、 12 ボビン、 13 セット加熱装置、 14 第3のデリベリユニット、 15.1,15.2,15.3 巻き掛けデリベリユニット、 16.1,16.2,16.3 ゴデット、 17.1,17.2,17.3 ダンサーローラ、 19.1,19.2,19.3 ゴデットモータ、 20 ニッピングデリバリユニット(把持供給ユニット)、 21 駆動軸、 22 圧着ローラ、 23 テンションアーム、 24,24.1,24.2,24.3 電動モータ、 25 ボビンホルダ、 26 駆動ローラ、 27 作業用通路、 28 補助装置、 29 吸引接続部、 30 圧縮空気接続部、 31.1,31.2 部分軸、 32 第4のデリベリユニット、 33 渦動装置、 34.1,34.2 軸受箇所、 35 圧縮空気管路、 36 吸引管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマルチフィラメント糸をテクスチャード加工するための仮撚り繊維機械であって、複数の糸(11)のうちの1つを引き出し、延伸し、テクスチャード加工し、かつ巻取るための、複数のデリベリユニット(3,9,14)と1つの加熱装置(4)と1つの冷却装置(5)と1つの仮撚り装置(8)と1つの巻取装置(10.1)とを有しており、この場合、第1のデリベリユニット(3)と第2のデリベリユニット(9)との間に、組み合わされたテクスチャード兼延伸ゾーンが形成されており、この場合、前記第2のデリベリユニット(9)と、前記1つの巻取ユニット(10.1)の前に設けられた第3のデリベリユニット(14)との間に後処理ゾーンが形成されている形式のものにおいて、
前記第1のデリベリユニット(3)が第1の巻き掛けデリベリユニット(15.1)として構成され、また前記第2のデリベリユニット(9)が第2の巻き掛けデリベリユニット(15.2)として構成されており、前記第3のデリベリユニット(14)がニッピングデリベリユニット(20)として構成されていることを特徴とする、仮撚り繊維機械。
【請求項2】
前記第1の巻き掛けデリベリユニット(15.1)と第2の巻き掛けデリベリユニット(15.2)とニッピングデリベリユニット(20)とが、それぞれ別個の電動機(19.1,19.2,24)によって駆動可能である、請求項1記載の仮撚り繊維機械。
【請求項3】
前記ニッピングデリベリユニット(20)が、複数の駆動ステーションに亘って延在する駆動軸(21)を有しており、該駆動軸(21)が一端部で以て電動モータ(24)に接続されている、請求項2記載の仮撚り繊維機械。
【請求項4】
前記駆動軸(21)が機械内で複数の部分軸(31.1,31.2)に分割されており、この場合、前記部分軸(31.1,31.2)が複数の処理ステーションに亘って延在していて、隣接する部分軸(31.1,31.2)とは無関係に独立して駆動可能である、請求項3記載の仮撚り繊維機械。
【請求項5】
前記ニッピングデリベリユニット(20)が処理ステーション毎に又は糸毎に回転可能な1つの圧着ローラ(22)を有しており、該圧着ローラ(22)が、糸(11)を締め付けるために駆動軸(21)の外周面に当接する、請求項3又は4記載の仮撚り繊維機械。
【請求項6】
前記第1の巻き掛けデリベリユニット(15.1)及び第2の巻き掛けデリベリユニット(15.2)が処理ステーション内で、個別に、かつ隣接する作業ステーションの隣接する巻き掛けデリベリユニットとは無関係に独立して駆動可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の仮撚り繊維機械。
【請求項7】
前記第1及び第2の巻き掛けデリベリユニット(15.1,15.2)が、それぞれ1つの駆動されるゴデット(16.1,16.2)と回転可能に支承されたダンサーローラ(17.1,17.2)とによって形成されている、請求項6記載の仮撚り繊維機械。
【請求項8】
前記第1及び第2の巻き掛けデリベリユニット(15.1,15.2)が処理ステーション内で、互いに向き合う機械スタンド部分(7.1,7.3)に配置されており、これらの機械スタンド部分(7.1,7.3)の間に作業用通路(27)が形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の仮撚り繊維機械。
【請求項9】
前記第2の巻き掛けデリベリユニット(15.2)と前記ニッピングデリベリユニット(20)とが、前記機械スタンド部分(7.3)に互いに上下に配置されており、前記ニッピングデリベリユニット(20)が処理ステーション内で前記巻取装置(10.1)の下に配置されている、請求項8記載の仮撚り繊維機械。
【請求項10】
複数の前記処理ステーションの複数の前記巻取装置(10.1,10.2,10.3)から成る1つのグループに、手動のボビン交換を行うための補助装置(28)が対応配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の仮撚り繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24610(P2010−24610A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168440(P2009−168440)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】