説明

仮設トイレ

【課題】 悪臭を防ぎ、電力や温水を供給することにより快適に使用できる仮設トイレを提供する。
【解決手段】 仮設トイレ1は、可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解する分解器3と、分解器3におけるガスハイドレートの分解により生じる水を便器へ給水する給水手段7と、分解器3におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃焼させることにより水又は空気を加熱する加熱器4とを備えた。加熱器4は、分解器3におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃料とするガスエンジン5であり、ガスエンジン5は、ガスエンジン5に接続し、ガスエンジン5稼働時の排熱を伝導することにより水又は空気を加熱する熱交換器7と、ガスエンジンに連動する発電機6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道を利用できない場合に使用する仮設トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
祭事や災害時、工事現場等のように、上下水道を利用できない場合には、仮設トイレが利用されている。仮設トイレは、非水洗であることが多く、その場合、便器と便槽との間を遮蔽することができず、便槽に溜まった汚物が気化・腐敗することで悪臭が発生するという問題があった。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、汚物タンクが汚物で一杯になったとき、新しい汚物タンクと交換できることで、汚物タンクから汚物を汲み取らなくても継続してトイレの使用をすることができ、どのような場所であっても設置可能な仮設トイレが記載されている。これは、便器と、該便器及び用便部を囲う遮蔽壁と、便器および遮蔽壁を下方から受けるとともに汚物タンクを有する架台とを備えた仮設トイレであって、架台が、架台本体と、この架台本体に着脱自在な着脱式汚物タンクとを備えたものである。
【特許文献1】特開2005−65886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の仮設トイレは、汚物タンクの交換が簡単にできるものの、汚物タンクからの悪臭が発生することは防げず、また、夏場であれば腐敗臭が発生する前に汚物タンクを交換するためには交換頻度を高くする必要があり、これに伴う労力や費用が問題となっている。
【0005】
さらに、通常、上下水道を利用できない環境では電力やガスも供給されていないことが考えられるから、照明や空調、給湯器等を設けることができず、快適に使用できるトイレを提供することはできなかった。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、悪臭を防ぐと共に、電力や温水を供給することにより快適に使用できる仮設トイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解して得られる水をトイレの洗浄水として利用すると共に、同ガスハイドレートを分解して得られる可燃性ガスを燃焼させることで、水又は空気を加熱し、もしくは発電するという着想に基づいてなされたものである。
【0008】
ここで、可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートは、水分子の作るクラスターの中に、可燃性ガスであるメタン、エタン、プロパン等のガスを取り込んだ包接水和物である。特に、天然ガスハイドレート(Natural Gas Hydrate)(以下、「NGH」という)は、それらの可燃性ガスを主成分とする天然ガスをゲストガスとしたハイドレートである。NGHは、大気圧下-20℃の環境で、約170倍の体積のガスと、約0.8倍の体積の水を包蔵している。そのため、天然ガスの新しい輸送・貯蔵方式として注目されている。NGHを大気圧下0℃以上の環境に置いた場合、約170倍の体積のガスと、約0.8倍の体積の水を発生する。
【0009】
本発明は、便器を有する仮設トイレであって、可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解する分解器と、該分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を便器へ給水する給水手段と、分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃焼させることにより水又は空気を加熱する加熱器とを備えたことを特徴とする。
【0010】
加熱器は、前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃料とするガスエンジンであり、該ガスエンジンは、該ガスエンジンに接続し、該ガスエンジン稼働時の排熱を伝導することにより水又は空気を加熱する熱交換器と、ガスエンジンに連動する発電機とを備えたものであってもよい。
【0011】
また、第二発明は、便槽を有する仮設トイレであって、可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解する分解器と、便槽の周囲に密着して設けられ、分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を通す配管と、分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃焼させることにより水又は空気を加熱する加熱器とを備えたことを特徴とする。
【0012】
さらに、仮設トイレは、便器と、分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を便器へ給水する給水手段とを備えているものでよい。
【0013】
加熱器は、前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃料とするガスエンジンであり、該ガスエンジンは、該ガスエンジンに接続し、該ガスエンジン稼働時の排熱を伝導することにより水又は空気を加熱する熱交換器と、ガスエンジンに連動する発電機とを備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の仮設トイレによれば、可燃性ガスハイドレートを分解器によって分解することにより生じる可燃性ガスと水のうち、水を便器へ給水して水洗式トイレとすることにより清潔を保つと共に、便器と便槽との間を水で遮蔽することで悪臭の発生を防止することができ、また可燃性ガスを燃焼させ、加熱器において水又は空気を加熱することで給湯や暖房を行うことができ、快適に使用できる仮設トイレを提供することができる。
【0015】
加熱器がガスエンジンであれば、熱交換器によってその排熱を利用して水又は空気を加熱することで給湯や暖房を行うことができると共に、発電機において発電することで電力を供給して照明や冷房に使用することができるから、より快適に使用できる仮設トイレを提供することができる。
【0016】
第二発明の仮設トイレによれば、可燃性ガスハイドレートを分解器によって分解することにより生じる可燃性ガスと水のうち、水を便槽の周囲に密着して設けられた配管へ給水して便槽を冷すことにより、便槽内部の汚物の腐敗を抑制して悪臭の発生を防止することができ、また可燃性ガスを燃焼させ、加熱器において水又は空気を加熱することで給湯や暖房を行うことができ、快適に使用できる仮設トイレを提供することができる。
【0017】
さらに、可燃性ガスハイドレートを分解器によって分解することにより生じる水を便器へ給水して水洗式トイレとすることにより清潔を保つと共に悪臭の発生を防止するができる。
【0018】
加熱器がガスエンジンであれば、熱交換器によってその排熱を利用して水又は空気を加熱することで給湯や暖房を行うことができると共に発電機において発電することで電力を供給して照明や冷房に使用することができるから、より快適に使用できる仮設トイレを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、トイレ室2へ冷水、温水及び電力を供給する第一実施例の仮設トイレの全体構成を示す。
【0020】
仮設トイレ1は、NGHタンク3と、NGH分解器4と、ガスエンジン5と、ガスエンジン5に連動する発電機6と、ガスエンジン5に接続された熱交換器7と、NGH分解器4において生じる水をトイレ室2へ供給する水配管8と、水配管8から分岐して、水を熱交換器7へ供給する水配管8aと、NGH分解器4において生じる天然ガスをガスエンジン5へ供給するガス配管9と、発電機6において発生した電力をトイレ室2へ供給する配電線10と、熱交換器7において温められた水をトイレ室2へ供給する給湯管11とで構成される。
【0021】
図2は、NGH分解器4の構成を示す。NGH分解器4は、ステンレス製の耐圧容器20であって、その周面にNGH供給口21、ガス出口22、水出口23を設け、容器20の内部に網板24を備えると共に、一端が水出口23に接続し、他端が容器20内に水を噴出する噴出口28を有し、その途中にポンプ26及び加熱器27を備えた導管25を有する。
【0022】
NGHタンク3から供給されるNGHは、NGH供給口21から容器20内に入り、網板24上に載る。
【0023】
ガス出口22は、容器20上部に設けられ、ガス配管9に接続する。NGH29の分解により生成した天然ガスGは、ガス出口22からガス配管9へ送り込まれる。
【0024】
水出口23は、容器20下部に設けられ、水配管8に接続する。NGH29の分解により生成し、容器20下部に貯蔵された水Wは、水出口23から水配管8へ送り込まれる。
【0025】
網板24は、容器20内の水Wに浸からない高さに、NGH29を載せる支持板として設けられ、水を通す(しかし、NGH29は通さない)孔24aを有している。
【0026】
水出口23から出た0℃程度の水Wの一部は、ポンプ26に引かれて導管25を通り、加熱器27で適温(10℃程度)に温められて容器20内のNGH29に掛けられる。これにより、温水が有する熱をNGH29に与えて、NGH29の分解を促進させる。
【0027】
容器20内でNGH29が分解すると、天然ガスG及び水Wが生成される。天然ガスGは、ガス出口22からガス配管9へ送り出される。水Wは、網板24の穴24aを通って容器20下部に貯蔵され、水出口23から水配管8へと送り出される。水出口23から出た水Wの一部は、上記のように加熱器27で温められて温水となり、噴出口28から容器20内へ戻される。
【0028】
図3は、ガスエンジン5及びガスエンジン5に接続する発電機6並びに熱交換器7を示す。
【0029】
水管32は、その一端を水配管8aに、他端を給湯管11に接続する。水は水配管8aから供給され、水管32内を通って図の矢印方向へ流れ、給湯管11から排出される。
【0030】
NGH分解器4において発生した天然ガスは、ガス配管9を通じてガスエンジン5へ供給される。ガスエンジン5は、この天然ガスを燃料として駆動し、発電機6に動力を与えて発電する。発電機6で発生した電力は、配電線10によりトイレ室2へ供給され、照明や空調、便座ヒータ等に使用される。
【0031】
熱交換器7は、ガスエンジン5に接合し、放熱面積の大きなフィン35を有する。ガスエンジン5の駆動の際に発生する熱は熱伝導によりフィン35に伝わる。フィン35に水が当たることで、フィン35と周囲の水とで熱交換が行われ、熱交換器7の周囲の水の温度が上がる。
【0032】
水管32内を通過する際に上記作用により加熱された水は、給湯管11を経由してトイレ室2内へ供給され、床暖房等に使用される。
【0033】
図4は、トイレ室2を示す。トイレ室2は、照明41と、空調設備42と、便器部43と、便槽44とを有する。
【0034】
便器部43は便器45及びタンク46より構成される。便器45は便座48を有し、便座48内に便座ヒータ(図示省略)を有する。タンク46は、上部に手洗い管53を有する。水配管8は止水弁49を経由して、便槽の周囲に螺旋状に密着して巻き付けた便槽配管8bへ接続し、便槽配管8bは分岐して、一方はボールバルブ50を経て洗浄ノズル8cへ接続し、他方は手水配管8dへ接続する。手水配管8dはタンク46内で手洗い管53に接続する。
【0035】
NGH分解器4(図2参照)において発生した水は、水配管8を介してトイレ室2へ供給され、止水弁49が開いていれば便槽配管8bに流れ込む。この際、便槽44内の汚物との間で熱交換を行う。これにより、便槽44内の汚物は低温に保たれるため、腐敗や気化による悪臭の発生を防ぐことができる。一方、便槽配管8b内の水は常温程度の手洗い等に適した温度に温められる。
【0036】
更に水は手水配管8dを経由して手洗い管53から流れ出て、手洗いに使用された後タンク46内に一定量溜まる。一方で、ボールバルブ50が開いた場合は洗浄ノズル8cから流れ出て、洗尻に利用される。
【0037】
タンク46側面にはレバー(図示省略)が、下部にはフロート弁54が設けられ、レバーを回動させることでフロート弁54が開放され、タンク46内に溜まった水が便器45内に流れ出て洗浄を行う。水は汚物と共にS字管55を経由して便槽へ溜まる。S字管55には常に一定量の水(斜線部)が溜まり、便器43と便槽44との間を遮蔽するので、便槽44からの悪臭を防ぐことができる。タンク46内の水が減るとフロート弁54は閉じ、減った分の水は手洗い管53より新たに供給される。
【0038】
トイレ室2の床には、床暖房パイプ56が埋め込まれ、これに給湯管11が接続され、給湯管11を介して温水が供給されることで床暖房としての機能を果たし、室内を暖めることができる。
【0039】
照明41、空調設備42及び便座48内の便座ヒータには、配電線10により電力が供給される。
【0040】
図5は、非水洗式の、第二実施例の仮設トイレ61を示す。
【0041】
仮設トイレ61は、便器部63及び便槽64とを有する。なお、便器部63及び便槽64以外の部分については第一実施例の仮設トイレと同様であるから、図示及び説明を省略する。
【0042】
水配管8は止水弁65を経由して、便槽64の周囲に螺旋状に密着して巻き付けた便槽配管8bへ接続し、便槽配管8bはボールバルブ69を経由して洗浄ノズル8cへ接続する。
【0043】
NGH分解器4(図2参照)において発生した水は、水配管8を介してトイレ室2へ供給され、止水弁65が開いていれば便槽配管8bに流れ込む。この際、便槽44内の汚物との間で熱交換を行う。これにより、便槽64内の汚物は低温に保たれる。
【0044】
仮設トイレ61の便器部63は、貯水タンク等、便器を洗浄する手段を有しない。このような非水洗式仮設トイレの場合は、便器部63と便槽64の間にS字管を設けることができないが、便槽64内の汚物を低温に保つことにより、汚物の気化や腐敗を抑止することができるから、悪臭の発生を抑えることができる。一方、便槽配管8bを経由した水は熱交換により常温程度になり、便器部63内に洗浄ノズル8cを設け、該洗浄ノズル8cをボールバルブ69を経由して便槽配管8bに接続し、適時ボールバルブ69を開いて便槽配管8bから洗浄ノズル8cに水を供給し、自動洗尻に利用することができるから、より快適な仮設トイレを提供することができる。
【0045】
以上、図示の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限らず、実際の使用態様に合せて種々の形態や改変が可能である。特に、加熱器は、NGH分解器で発生した天然ガスを燃料として加熱のみ行うボイラや電熱器等を利用する加熱器であっても、仮設トイレへ温水や温風を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第一実施例の仮設トイレの全体構成を示す図。
【図2】図1の仮設トイレにおけるNGH分解器の構成を示す図。
【図3】図1の仮設トイレにおけるガスエンジン、発電機及び熱交換器の構成を示す図。
【図4】図1の仮設トイレにおけるトイレ室の構成を示す図。
【図5】第二実施例の仮設トイレの便器及び便槽の構成を示す図。
【符号の説明】
【0047】
1,61…仮設トイレ、2…トイレ室、3…NGHタンク、4…NGH分解器、5…ガスエンジン、6…発電機、7…熱交換器、8…水配管、9…ガス配管、10…配電線、11…給湯管、20…容器、21…NGH供給口、22…ガス出口、23…水出口、24…網板、24a…穴、25…導管、26…ポンプ、27…加熱器、28…噴出口、29…NGH、32…水管、35…フィン、41…照明、42…空調設備、43,63…便器部、44,64…便槽、45…便器、46…タンク、48…便座、49,65…止水弁、50,69…ボールバルブ、53…手洗い管、54…フロート弁、55…S字管、56…床暖房パイプ、G…天然ガス、W…水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を有する仮設トイレであって、
可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解する分解器と、
該分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を前記便器へ給水する給水手段と、
前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃焼させることにより水又は空気を加熱する加熱器と
を備えたことを特徴とする仮設トイレ。
【請求項2】
請求項1記載の仮設トイレにおいて、
前記加熱器は、前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃料とするガスエンジンであり、
該ガスエンジンは、該ガスエンジンに接続し、該ガスエンジン稼働時の排熱を伝導することにより水又は空気を加熱する熱交換器と、
前記ガスエンジンに連動する発電機と
を備えたことを特徴とする仮設トイレ。
【請求項3】
便槽を有する仮設トイレであって、
可燃性ガスをゲストガスとするガスハイドレートを分解する分解器と、
前記便槽の周囲に密着して設けられ、前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を通す配管と、
前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃焼させることにより水又は空気を加熱する加熱器と
を備えたことを特徴とする仮設トイレ。
【請求項4】
請求項3記載の仮設トイレにおいて、
便器と、
前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる水を前記便器へ給水する給水手段とを備えたことを特徴とする仮設トイレ。
【請求項5】
請求項3又は4記載の仮設トイレにおいて、
前記加熱器は、前記分解器におけるガスハイドレートの分解により生じる可燃性ガスを燃料とするガスエンジンであり、
該ガスエンジンは、該ガスエンジンに接続し、該ガスエンジン稼働時の排熱を伝導することにより水又は空気を加熱する熱交換器と、
前記ガスエンジンに連動する発電機と
を備えたことを特徴とする仮設トイレ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−321364(P2007−321364A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150315(P2006−150315)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】