説明

仮設床

【課題】
本発明は、脱ぎ置かれた作業者の靴によって、建物への出入りがしにくくなるという問題を緩和することができ、ALCパネルのように粘着テープが貼り付けられない材質で床面が構成されていても、床の保護を容易に行うことができる仮設床を提供することを目的とする。
【解決方法】
本発明によれば、建物の玄関ホール部の床面より低い床面を有する玄関土間部に設置される仮設床であって、上面が前記玄関ホール部の床面とほぼ段差なく連続し、内部に靴収納空間が形成されたことを特徴とする仮設床が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の建築工事中に玄関土間部に形成される仮設床に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の靴を脱いで入室する建物の建築工事において、躯体が完成し内部の木工事が開始されると、仕上げが施される前の下地の状態であっても、床の汚れや傷みを防止するために、玄関土間より先の空間は土足厳禁とし上履きに履き替えるようにするのが一般的である。
【0003】
躯体が完成し建物内部が外壁で囲まれた後は作業者の出入りは玄関に限定される。なお、出入りに掃き出し窓を利用することも考えられるが、周囲の地面との高低差が大きく、靴の履き替えの場所もなく不便である。
【0004】
また、木工事と併行して、給排水工事や電気工事などが行われることもあり、そのような場合、多くの作業者の靴が狭い玄関土間に脱ぎ置かれることになり、出入りの邪魔になるという問題がある。
【0005】
また、玄関土間に面する部分は玄関框が取り付けられるまでの間、床の端面(小口)がむき出しの状態となり、作業者の出入りや資材の搬入出の際に傷むため、養生(保護)をする必要がある。特に、ALCパネルを床下地とする場合、ALCパネルの端部が欠けやすいので養生が重要となるが、ALCパネルには粘着テープなどで簡易に養生材を固定することができないため、手間がかかるという問題がある。
【0006】
特許文献1には、階段等の床の段差用養生材が開示されている。このような段差用養生材により、端面の養生をすることは可能であるが、床の領域に比べて小さな養生材を用いると上面保護部の厚み分の段差が形成されてつまずき等の原因となる。また、このような養生材では、脱ぎ置かれる靴が出入りの邪魔になるという問題は解消しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−211333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、脱ぎ置かれた作業者の靴によって、建物への出入りがしにくくなるという問題を緩和することができ、特に、ALCパネルのように粘着テープが貼り付けられない材質で床面が構成されていても、床の保護を容易に行うことができる仮設床を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、建物の玄関ホール部の床面より低い床面を有する玄関土間部に設置される仮設床であって、上面が前記玄関ホール部の床面とほぼ段差なく連続し、内部に靴収納空間が形成されたことを特徴とする仮設床が提供される。
【0010】
上記構成からなる仮設床は、仮設床に靴収納空間が形成されているので、作業者の靴が広範囲にわたって脱ぎ置かれて出入りに支障を来たすことを抑制できる。また、仮設床の床板が玄関ホールの床と同一高さとなるように仮設されることで、段差のない安全な仮設床とすることができる。
【0011】
本発明の一態様によれば、上記仮設床は、側面に靴出し入れ用の開口を持つ。これにより、作業者の靴の出し入れを効率的に行うことができる。
【0012】
また本発明の一態様によれば、上記仮設床は、複数の仮設床ユニットが連結されて構成される。複数の仮設床ユニットを連結して構成することで、強度が増し、運搬にも都合がよい。
【0013】
本発明の一態様によれば、上記仮設床は、前記仮設床の上面を形成する床板部と、該床板部を支持する脚部とからなり、該脚部が、前記床板部に対して折りたたみあるいは着脱自在である。脚部を折りたたみ自在または着脱自在とすることで、仮設床ユニットの運搬や保管の際にかさばらなくすることができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、上記仮設床は、前記玄関ホール部の床がALCパネルからなり、建物の仕上げ工程が施される前の状態において仮設される。玄関ホールの床が、欠けやすく粘着テープも効かないALCパネルからなる場合、保護効果が極めて高い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、脱ぎ置かれた作業者の靴によって、建物への出入りがしにくくなるという問題を緩和することができ、特に、ALCパネルのように粘着テープが貼り付けられない材質で床面が構成されていても、床の保護を容易に行うことができる仮設床が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る仮設床の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る仮設床ユニットの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る仮設床の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る仮設床の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
A 仮設床
1 室内部
1a 玄関ホール部
1b 居室部
2 ALCパネル
3 玄関土間部
4 土間コンクリート
5 仮設床ユニット
5A 端部用仮設床ユニット
5B 中間部用仮設床ユニット
5a 床板部
5b 脚部
5c 棚板部
5d 背板部
6 隙間閉塞材
7 外壁パネル
8 布基礎
W 仮設床ユニットの幅寸法
H 仮設床ユニットの高さ寸法
M モジュール
D 基礎幅
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施形態に基づいて、本発明に係る仮設床について説明するが、これらの実施形態は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明を記載された実施形態に限定するものではない。
【0019】
[建物の構成]
本実施形態に係る建物は、305mmの平面モジュールMを有する工業化住宅である。本建物は図1に示すように、靴を脱いで使用される玄関ホール部1aと居室部1bを含む室内部1と、土足で使用される玄関土間部3を有している。
【0020】
室内部1の床の完成状態での層構成は、下方から順に、布基礎8天端に載置されたALCパネル2、断熱パネル、構造用合板、フローリングとなる。
【0021】
玄関土間部3は室内部1より低い床面を有し、玄関土間部3の完成状態での床の層構成は、下方から順に、土間コンクリート4、モルタル、タイルとなる。
玄関土間部3は布基礎8に囲まれ、相対する布基礎8の間隔(中心間の間隔)は奥行方向・間口方向ともにMの整数倍(この例ではともに6倍=1830mm)である。布基礎8の幅Dは160mmに統一されており、相対する布基礎8間の内法寸法は、1670mmとなる。
【0022】
内部の木工事の進捗に従って、玄関土間部3と玄関ホール部1aとの境界辺(図1における上辺)に沿って玄関框が取り付けられ、玄関土間部3と居室部1bとの境界辺(図1における右辺)に沿って間仕切り壁が立ち上げられる。
【0023】
[仮設床の構成]
図1又は図3に示すように、仮設床Aは、上記構成の建物において、玄関土間部3に土間コンクリート4が打設され、室内部1にALCパネル2が敷設された後、玄関土間部3に仮設される。
【0024】
仮設床Aは、図2に示す複数の仮設床ユニット5を、玄関土間部3と玄関ホール部1aとの境界辺及び玄関土間部3と居室部1bとの境界辺に沿って、平面視L字状に配置することで構成されている。
【0025】
仮設床ユニット5としては、幅寸法Wを有する端部用仮設ユニット5Aと、幅寸法W2、を有する中間部用仮設床ユニット5B、5Cの3種類が設定されている。
=M×2−(D/2)
=M×2
=M×1
【0026】
上記仮設床ユニットを組み合わせることによって、様々な大きさの玄関土間部に対応することが可能であり、本実施例においては、玄関土間部3と玄関ホール部1aとの境界辺側については、2つの端部用仮設ユニット5Aと1つの中間部用仮設ユニット5Bを用いて対向する布基礎8の間にほぼ隙間なく配置されている。また、玄関土間部3と居室部1bとの境界辺側については、2つの中間部ユニット5Bが用いられている。
【0027】
各仮設床ユニット5の高さ寸法Hは、図3に示すように、玄関土間部3の土間コンクリート4の上面から、室内部1のALCパネル2の上面までの寸法に対応している。また、仮設床ユニット5の奥行寸法Dは、特に限定されないが例えば収容される靴の長さに対応させて30cm程度に設定することができる。
【0028】
各仮設床ユニット5は、図2に示すように、床板部5a、脚部(側板部)5b、棚板部5c、背板部5dからなる。
【0029】
脚部5bは床板部5aに対し着脱自在な板状の材料で、床板部5aに対しビスを用いて、或いは上端を床板部5aの底面に形成された溝に嵌合することで、床板部5aに固定されている。棚板部5cは脚部5bに取り付けられた桟材、ダボ等により支持されている。背板部5dを脚部5bの背面側の端面にビス止めすることや、背板部5dに脚部5bの背面側の端縁部と嵌合される溝を設け脚部5bの背面側の端縁部を背板部5dの溝に嵌合することで、2つの脚部5bがハの字に広がることが防止される。
【0030】
ALCパネル2と仮設床Aとの間に形成される隙間には、作業者のつまずき防止のため、隙間を閉塞する隙間閉塞材6が設置される(図4)。
【0031】
上記構成の仮設床Aを仮設し、作業者の靴を靴収納空間に収納することによって、脱ぎ置かれた作業者の靴によって、建物への出入りがしにくくなるという問題を緩和することができ、ALCパネルのように粘着テープが貼り付けられない材質で床面が構成されていても、床の保護を容易に行うことができる。
【0032】
[他の実施形態]
上記実施形態では、仮設床Aは平面視L字状に配置されているが(図1)、仮設床Aの構成はこれに限定されるものではない。即ち、玄関ホール部1aと仮設床Aとが連続してさえいれば、I字、コ字状、ニ字状等に配置しても構わない。
【0033】
また、仮設床ユニット5において、板状の脚部5bと床板部5aとを蝶番を介して連結し、運搬時や収納時に折りたためるように構成してもよい。
【0034】
また、脚部5bを複数(例えば2本)の棒状部材で構成することも可能である。この場合、脚部5bの上端から突出した雄ネジを床板部5aに埋め込まれた雌ネジにねじ入れるように構成することで、着脱自在とすることができ、背板部を省略することもできる。
【0035】
また、仮設床ユニット5の玄関土間部3側に開口を設けずに、床板部5aを跳ね上げ自在または着脱自在として、仮設床ユニット5の上面から靴を出し入れするように構成してもよい。
【0036】
また、玄関土間部3はタイル等で仕上げる前の土間コンクリート4が打設された状態では不陸が多いので、不陸の影響を受けにくくするために、脚部5bを、玄関土間部3とは面や線ではなく複数の点で接するようにする(例えば、脚部5bの両端を下方に突出させて(逆凹字状にする)、この突出部のみで玄関土間部3に接するようにする)こともできる。
【0037】
また、脚部5bには高さ調整機能を備える(例えば、前記突出部をねじ込み式として、ねじ込み量の調整によって高さ調整ができる)ようにしてもよい。このように構成することで、工事の進捗によって、玄関土間部3と玄関ホール部1aの床面の高低差が変化するが、脚部5bに高さ調整機能を備えた場合、高低差の変化に対応させることができる。
【0038】
また、ずれ防止のために各仮設床ユニット5同士を、固定金具で互いに固定してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の玄関ホール部の床面より低い床面を有する玄関土間部に設置される仮設床であって、
上面が前記玄関ホール部の床面とほぼ段差なく連続し、内部に靴収納空間が形成されたことを特徴とする仮設床。
【請求項2】
側面に靴出し入れ用の開口を持つことを特徴とする請求項1に記載の仮設床。
【請求項3】
前記仮設床は、複数の仮設床ユニットが連結されて構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の仮設床。
【請求項4】
前記仮設床ユニットは、前記仮設床の上面を形成する床板部と、該床板部を支持する脚部とからなり、該脚部が、前記床板部に対して折りたたみあるいは着脱自在であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の仮設床。
【請求項5】
前記玄関ホール部の床がALCパネルからなり、建物の仕上げ工程が施される前の状態において仮設されることを特徴とする請求項1ないし4に記載の仮設床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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