説明

伏臥用クッション装置

【課題】利用者が安定した状態で確実に伏臥姿勢を維持することができる伏臥用クッション装置を提供することにある。
【解決手段】利用者が伏臥状態となるときに胸部にあてて用いる伏臥用クッション装置であって、弾性材7a及びこの弾性材を被覆した外装地7bによって形成されたクッション体6を有し、
クッション体は、所定方向の一端から他端に向かって厚さが次第に厚くなるテーパ状に形成されているとともに、その一側面或いは他側面の少なくとも一方の面が平坦面9に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は利用者が下を向いた伏臥状態で就寝したり、背面にマッサージを受ける場合などに好適する伏臥用クッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マットレス装置を利用して就寝する場合、利用者によっては上を向いた仰臥状態よりも、下を向いた伏臥状態で就寝することを好む場合があり、またマットレス装置上で身体の背面にマッサージを受ける場合、利用者は伏臥姿勢をとることになる。
【0003】
利用者がマットレス装置上で伏臥姿勢をとると、顔面がマットレス装置の上面によって圧迫されるため不快であったり、呼吸がし難くなるなどのことがある。
【0004】
そこで、利用者が伏臥姿勢をとったときに、顔面が圧迫されることがないようにするため、特許文献1に示す構成の伏臥用マットが提案されている。特許文献1に示された伏臥用マットは、凹部若しくは貫通孔からなる顔面収容部を有する頭部マット部材と、胸部を支持する胸部マット部材を備え、これら2つのマット部材を折り返し可能に連結し、展開状態では厚さがテーパ状で、折り畳んだ状態では重なる部分の厚さがほぼ均一になる構成となっている。
【特許文献1】実開平4−80521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すように頭部マット部材に凹部若しくは貫通孔からなる顔面収容部を設けるようにすると、利用者が伏臥姿勢を維持するために、顔面を顔面収容部に収容したとき、呼吸がし難くなり、伏臥姿勢を快適に維持することができないということがある。とくに、顔面収容部を凹部とした場合には利用者が顔面を収容したときに顔面収容部が閉塞されるから、貫通孔の場合に比べてその傾向が著しく高くなる。
【0006】
そこで、特許文献1では呼吸がし難くなるのを解消するため、顔面支持部の内部に連通する呼吸孔を形成するということを行なっている。しかしながら、頭部マット部材に呼吸孔を形成すると、構成が複雑化したり、その加工に手間が掛かるということがあり、好ましくない。
【0007】
この発明は利用者の胸部だけを支持する簡単な構成とすることで、利用者は呼吸がし難くなることなく、伏臥姿勢を楽に維持することができるようにした伏臥用クッション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、利用者が伏臥状態となるときに胸部にあてて用いる伏臥用クッション装置であって、
弾性材及びこの弾性材を被覆した外装地によって形成されたクッション体を有し、
上記クッション体は、所定方向の一端から他端に向かって厚さが次第に厚くなるテーパ状に形成されているとともに、その一側面或いは他側面の少なくとも一方の面が平坦面に形成されていることを特徴とする伏臥用クッション装置にある。
【0009】
上記クッション体の他方の面の上記所定方向と交差する幅方向の中央部分であって、上記所定方向の他端部には利用者が頭部を載置するための凹曲面が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記クッション体には、上記所定方向の中途部から一端に向かって上記所定方向と交差する幅方向に次第に拡がる切り込み部が形成されていることが好ましい。
【0011】
2つのクッション体を有し、これらクッション体の厚さの薄い一端は上記外装地を介して折り曲げ可能に連結されていることが好ましい。
【0012】
上記クッション体の厚さの厚い上記所定方向の他端には、利用者の顎の部分が入り込む収容凹部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、クッション体の厚さを所定方向に沿ってテーパ状に形成しただけであるから、構成が簡単である。そして、利用者は伏臥姿勢をとるとき、上記クッション体を胸に当て、顔面を厚さの厚い一端から突出させる。それによって、顔面が覆われることがないから、呼吸がし難くなるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1はベッド装置1に利用者Uが伏臥した状態を示している。上記ベッド装置1は基台2を有する。この基台2の上面にはマットレス3が載置され、このマットレス3の上面に利用者Uが伏臥用クッション装置5を利用して伏臥している。
【0015】
上記伏臥用クッション装置5はクッション体6からなる。このクッション体6は図2乃至図4に示すように弾性材7aと、この弾性材7aを被覆した袋状の外装地7bを有する。上記弾性材7aは、たとえば低反発ウレタンフォームなどによって所定方向の一端から他端に向かって厚さ寸法が次第に厚くなるテーパ板状に形成されている。
【0016】
上記クッション体6、つまり外装地7bによって被覆された弾性材7aには、上記所定方向の中途部から厚さの薄い一端に向かって上記所定方向と交差する幅方向に次第に拡がる、平面形状が放物曲線状の切り込み部8が形成されている。上記クッション体6の一方の面は平坦面9に形成され、他方の面の幅方向の中央部には一端が上記切り込み部8に開放し、他端がクッション体6の他端面に開放した断面円弧状の凹曲面11が形成されている。
【0017】
なお、上記外装地7bは弾性材7aの表面をその表面形状に沿って被覆しており、それによってクッション体6の表面に上記弾性材7aと同じように上記切り込み部8、平坦面9及び凹曲面11が形成されている。
【0018】
上記外装地7bには、上記弾性材7aの平坦面9を覆う部分にファスナ12が上記クッション体6の幅方向全長にわたって設けられている。それによって、ファスナ12を開くことで、上記弾性材7aを上記外装地7から取り外すことができるようになっている。なお、上記ファスナ12は外部に露出しないように設けられている。
【0019】
利用者Uがマットレス3の上面でマッサージを受けたり、休息するために伏臥姿勢をとる場合、図1に示すように上記マットレス3の上面の長手方向の一端部に上記クッション体6を載置する。その場合、クッション体6の平坦面9を上にし、凹曲面11が形成された面を下にして載置する。
【0020】
そして、利用者Uは上記平坦面9に胸部を当て、顔面を上記クッション体6の厚さの厚い上記所定方向の他端から前方へ突出させて伏臥する。それによって、利用者Uは胸部がクッション体6の厚さによって所定の高さで保持されるから、頭部を下に曲げて前頭部分をマットレス3の上面に押し当てる。それによって、利用者Uは伏臥姿勢を安定した状態で楽に維持することができる。
【0021】
このようにして利用者Uが伏臥姿勢をとれば、利用者Uの顔面がクッション体6の他端から突出し、クッション体6によって覆われることがないから、利用者Uは顔面が開放され、閉塞感を感じることがないばかりか、呼吸も楽に行なうことができる。しかも、クッション体6は厚さをテーパ状にした板状の簡単な構成であるから、安価に、しかも容易に製造することができる。
【0022】
さらに、クッション体6にはその一端に開放する切り込み部8が形成されている。そのため、伏臥した利用者Uは腹部が切り込み部8に対応位置するため、クッション体6によって腹部が圧迫されることがない。したがって、そのことによっても、利用者Uは伏臥姿勢を楽に維持することができる。
【0023】
利用者Uが仰臥姿勢をとる場合には、上記伏臥用クッション装置5を、そのクッション体6の凹曲面11が形成された面を上にする。そして、利用者Uは上記伏臥用クッション装置5に仰臥すれば、後頭部が上記凹曲面11によって支持されるから、仰臥した姿勢を楽に、しかも安定して維持することができる。
【0024】
図5はこの発明の第2の実施の形態を示すクッション体の変形例である。この実施の形態のクッション体6Aには、厚さが厚い所定方向の他端に、その端面に開放した凹曲面状の収容凹部14が厚さ方向全長にわたって形成されている。
【0025】
なお、この場合、クッション体6Aには切り込み部8及び凹曲面11が形成されていないが、第1の実施の形態のように形成しても差し支えない。
【0026】
このような構成のクッション体6Aによれば、利用者Uが伏臥姿勢をとるとき、顔面をクッション体6Aの端面から前方へ突出させて顎の部分を上記収容凹部14に収容する。それによって、利用者Uは両方の肩をクッション体6Aの端面から前方に突出させずに伏臥姿勢を維持することができる。つまり、利用者Uはクッション体6Aに両肩を支持された状態で伏臥することができるから、伏臥姿勢を楽に、しかも安定した状態で維持することが可能となる。
【0027】
図6乃至図8はこの発明の第3の実施の形態を示すクッション体の変形例である。この実施の形態は伏臥用クッション装置5が一対のクッション体6Bを折り畳み可能に連結して構成されている。すなわち、一対のクッション体6Bは、それぞれの厚さの薄い一端が外装地7bを介して所定の幅寸法を有する帯状布16によって折り曲げ可能に連結されている。なお、一対のクッション体6Bには第1の実施の形態のクッション体6ように切り込み部8や凹曲面11は形成されていないが、形成するようにしても差し支えない。
【0028】
一対のクッション体6Bを帯状布16の部分で折り曲げて重ね合わせれば、全体の厚さを1つのクッション体6Bの厚さの2倍にすることができ、1対のクッション体6Bの間に、図7と図8に示すようにクッション体6Bと同じ厚さのテーパ板状に形成された調整クッション体17を介在させれば、全体の厚さを1つのクッション体6Bの3倍にすることができる。
【0029】
それによって、利用者Uは伏臥姿勢をとるときに、クッション体6Bの厚さを、体格や利用者Uの好みなどに応じて、1つのクッション体6Bの2倍又は3倍に設定することができる。
【0030】
つまり、この第3の実施の形態のクッション体6Bによれば、利用者Uの胸部を支持する高さを、利用者Uの体格や利用時の好みなどに応じて調整することができるため、便利である。
【0031】
この第3の実施の形態に示された調整クッション体17を第1の実施の形態に示されたクッション体6と組み合わせて使用するようにしてもよい。そうすれば、全体の厚さを1つのクッション体6Bの約2倍にして利用することができる。
【0032】
上記実施の形態ではクッション体をマットレスの上面に載置して利用する場合について説明したが、クッション体だけを単体で利用するようにしてもよい。
また、クッション体の弾性材としては低反発ウレタンフォームを用いることを例として挙げたが、たとえば上下三層構造とし、上下層に低反発ウレタンフォームを用い、中間層に上下層に比べて硬いウレタンフォームをもちいるようにしてもよい。そのようにすれば、クッション体は使用時の感触は柔らかく、全体としては形状を維持することのできる剛性を備えた構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す利用者がマットレス上に伏臥した状態を示す説明図。
【図2】クッション体の平坦な面を示す斜視図。
【図3】クッション体の凹曲面が形成された面を示す斜視図。
【図4】上記クッション体に用いられる弾性材を凹曲面が形成された面を上にした斜視図。
【図5】この発明の第2の実施の形態を示すクッション体の斜視図。
【図6】この発明の第3の実施の形態を示す連結された一対のクッション体を示す斜視図。
【図7】図6に示す一対のクッション体を折り畳んだ状態を示す側面図。
【図8】一対のクッション体を折り畳むときに、これらクッション体の間に補助クッション体を設ける状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0034】
6,6A,6B…クッション体、7a…弾性材、7b…外装地、8…切込み部、9…平坦面、11…凹曲面、14…収容凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が伏臥状態となるときに胸部にあてて用いる伏臥用クッション装置であって、
弾性材及びこの弾性材を被覆した外装地によって形成されたクッション体を有し、
上記クッション体は、所定方向の一端から他端に向かって厚さが次第に厚くなるテーパ状に形成されているとともに、その一側面或いは他側面の少なくとも一方の面が平坦面に形成されていることを特徴とする伏臥用クッション装置。
【請求項2】
上記クッション体の他方の面の上記所定方向と交差する幅方向の中央部分であって、上記所定方向の他端部には利用者が頭部を載置するための凹曲面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の伏臥用クッション装置。
【請求項3】
上記クッション体には、上記所定方向の中途部から一端に向かって上記所定方向と交差する幅方向に次第に拡がる切り込み部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の伏臥用クッション装置。
【請求項4】
2つのクッション体を有し、これらクッション体の厚さの薄い一端は上記外装地を介して折り曲げ可能に連結されていることを特徴とする請求項1記載の伏臥用クッション装置。
【請求項5】
上記クッション体の厚さの厚い上記所定方向の他端には、利用者の顎の部分が入り込む収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の伏臥用クッション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−43354(P2008−43354A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218610(P2006−218610)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】