説明

会陰切開縫合トレーナー

【課題】会陰切開・縫合に係る手技、会陰切開縫合術、又は会陰裂創縫合術に係る手術手技を的確かつ正確に行うことを目的とした手術手技技能を向上させるための練習装置・機器を提供する。
【解決手段】(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分、(2)前記(1)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分、及び(3)前記(1)及び(2)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分を有し、試料となる会陰切開縫合部分は、ヒトの皮膚の弾力や引っ張り強度があればよく、好ましくはスポンジ、更に好ましくは、化粧用のパフであればよい。大きさは、本トレーナーにおける術式対象とする切開創は2から3cmであるので、形状は4cm程度の立方体等で事足りる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会陰切開縫合トレーナーに関する。更に詳しくは、主として正中側切開に係る会陰切開縫合トレーナーに関する。会陰切開縫合トレーナーとは、産科領域における陰部切開と切開後の縫合術を的確かつ正確に行うことを目的とした手術手技のシュミレーション(模擬練習)が可能なもので、該手技技能を向上させるための練習装置や練習のための機器である。
【背景技術】
【0002】
会陰切開(Episiotomy)は、胎児娩出に際し、会陰及び膣壁裂傷の予防のため、母児双方にとって安全な分娩を行うことを目的として児娩出直前の会陰部に種々の切開を行うことである。1742年にFielding Ouldが始めて行ったといわれている。(非特許文献1)切開後には、通常、縫合が必須となる。この会陰切開縫合技術は、産婦人科医にとっては最も基本的な手技となっている。しかしながら、医学生や初期研修医が実地診療の課程で、本技術に習熟することは非常に困難である。従来、本手技については、特別なトレーニングを受けることなく、経験を重ねることで手技を獲得してきたのが実情となっていた。
更に、例えば、会陰切開縫合術シュミレーターとして発売されているものは実際の人体部分をシリコン樹脂等で模したもので、著しく高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トレーナーのメリットは、手術手技のシュミレーションが可能で、いきなり患者に施術する際に生じる精神的ストレスや技術的危険を回避できる点にある。更に、本発明のトレーナーは安価であり、技術的習熟がなるまで繰り返しトレーニングすることが可能である。また、本発明では、本手術手技の向上に伴い、現在、手技困難度が異なる2種類のトレーナーが用意され、より技術的習熟度が増すような教育方法が実践できる。
【0004】
本邦において、医療現場にトレーナーの導入はすでに行なわれており有用性が示唆されている。中心静脈カテーテル穿刺挿入シミュレータや気管切開シミュレータなどが開発されており、医療事故防止に直結した実習が可能となっている。中心静脈カテーテル穿刺挿入シミュレータ使用後のアンケート調査の結果は、研修医1、2年目を対象とした結果では、その多くは満足いくものであり、シミュレータによる継続的なトレーニングが必要であるというアンケート結果になっている。気管切開シミュレータにおいては、日本医学シミュレーション学会・日本麻酔科学会のワークショップで教育している方法のひとつである。気管確保の最終的な選択肢である輪状甲状膜切開を、緊急時に冷静に対応できるようになるためのトレーニングとして、紹介されている。(非特許文献2)
会陰切開の方法としては、側切開法、正中側切開法、正中切開法、正中切開法の変法、Schuchardtの切開法など種々の切開法がある。主に行われるのが、側切開法、正中側切開法及び正中切開法である。側切開法(Lateral episiotomy)は、後連合より2から3cm側方で、膣入口縁から坐骨結節の方向に切開を加える方法で、正中側切開(Mediolateral episiotomy)は、正中切開と側切開のほぼ中央(5時又は7時の位置)、又は正中切開の中央起始部から、肛門を避けて左又は右に2から3cm斜めに切開を加える方法であり、最も多く行われている切開法である。正中切開法(Median episiotomy)は、後連合中央部より肛門に向かって、縦方向、正中に切開を加える方法で、前述2つの切開法と比べ、切開の大きさに対する会陰の開大効果が優れ、出血、疼痛が少なく、しかも切開が正中で左右対称のため縫合しやすく、創傷治療がスムーズであるなど長所が多いが切開創の延長がそのまま3度、4度裂傷につながる場合がある。(非特許文献1)
本発明者らは、これらの長所・短所に鑑み、正中側切開縫合術が第一に選択されるものと考え、本発明のトレーナーの第一の手技習得の対象を、主に正中側切開並びにその縫合とした。
また、縫合法としては、実際には会陰切開創の裂傷の程度などを確認してから行うが、種類として、膣壁縫合、皮下縫合及び皮膚縫合に分けられる。膣壁縫合は、膣壁創断端を1cmほど越えた奥より縫合を開始し、結節縫合や連続縫合として1cm程度の間隔で、処女膜縁まで縫合する。皮膚縫合は、皮下組織の創傷が深い場合に行われ、埋没縫合として行われる。以上2種の縫合は、縫合糸の抜糸をしなくて済むように、組織反応が少なく、異物として残らない吸収糸が一般的に使用される。皮膚縫合は、通常、創最下端より開始され、出来上がりの状態を想定しながら縫合する。通常、絹糸や合成吸収糸が用いられる。(非特許文献1)
本発明のトレーナーでは、いずれの縫合法についても、シュミレーションが可能なものである。
【0005】
【非特許文献1】「[妊婦が入院したら]会陰切開の方法」、 下伊那赤十字病院 高橋正明、日産婦誌51巻3号、1999年3月
【非特許文献2】「輪状甲状膜穿刺・切開と経気管ジェット換気」、 島根大学医学部付属病院集中治療部 野村岳志、Anesthesia 21 Century Vol.9 No.3-29 2007
【課題を解決するための手段】
【0006】
主に正中側切開並びにその縫合を患者等に供することができるまで、トレーニング可能な会陰切開縫合術、又は会陰裂創縫合術(縫合に焦点がある場合、縫合術式をこのようにいう場合がある)に用いることができる安価に作製できるトレーナー(装置・機器)を発明した。このトレーナーの効果を、本発明のトレーナーを用い、医学生や初期研修医を対象とする研修会等に使用しその効果を評価し、著しい効果があることを確認し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、会陰切開縫合トレーナーであって、以下の機能部分を具備するトレーナーである。
(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分
(2)上記(1)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分
(3)上記(1)及び(2)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分
また、会陰切開縫合トレーナーであって、以下の機能部分を具備するトレーナーである。
(1a)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分
(2a)上記(1a)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分
(3a)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽機能部分
(4a)切開及び/又は縫合対象が一定の奥行きをもってなる部分
(5a)上記(1a)から(4a)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分
更に、会陰切開縫合トレーナーであって、正中切開、正中側切開及び/又は側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有する上記に記載のトレーナーである。
更なる構造的特定手段等で記載すると、
本発明は、会陰切開縫合トレーナーであって、正中側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有するトレーナーで、以下の部分よりなるトレーナーである。
(1b)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料が、該試料への接近面を円として、その円中心から、接近面の右又は左に10度から30度のある角度傾いて支持されている構造を有し、
(2b)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽を、上記(1b)の支持体に保持された試料を笊状又は円筒状に遮断する覆い構造を有し、笊状の場合は比較的広い平面的接近を可能とし、円筒状の場合には比較的狭い一方向のみの接近を可能とする構造を有し、
(3b)上記(1b)及び(2b)の構造を、切開及び/又は縫合対象試料までの高さとして、2cmから30cmの間の距離をもって3次元的に保持できる支えの構造体を有し、更に支えられる上記(2b)の構造を保持される水平面に対して垂直(90度)から60度のある角度をもって固定できる構造を有するトレーナー。
また、別の態様では、本発明は、会陰切開縫合トレーナーであって、正中側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有するトレーナーで、以下の部分よりなるトレーナーである。
(1c)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料が、該試料への接近面を円として、その円中心から、接近面の右又は左に10度から30度のある角度傾いて支持されている構造を有し、
(2c)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽を、上記(1c)の支持体に保持された試料を円筒状に遮断する覆い構造を有し、比較的狭い一方向のみの接近を可能とする構造を有し、
(3c)切開及び/又は縫合対象試料の切開面及び/または縫合面を奥行きとして2cmから5cm取れるように配置された構造を有し、
(4c)上記(1c)から(3c)の構造を、切開及び/又は縫合対象試料までの高さとして、2cmから30cmの間の距離をもって3次元的に保持できる支えの構造体を有し、更に支えられる上記(2c)の構造を保持される水平面に対して垂直(90度)から60度のある角度をもって固定できる構造を有するトレーナー。
本発明の会陰切開縫合トレーナーは、会陰裂創縫合術の技術習得において、上記に述べたトレーナーのいずれかを使用することができる。
更に、本発明の会陰切開縫合トレーナーは、会陰裂創縫合術の段階的な技術習得における、先ず先に述べた(1b)から(3b)の構造部分を有するトレーナーを使用し、続いて(1c)から(4c)の構造部分を有するトレーナーを使用することで、より習熟度が増す段階的技術習得が可能である。
【0008】
会陰切開縫合トレーナーであって、具備すべき3つの機能部分、(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分、(2)前記(1)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分、及び(3)前記(1)及び(2)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分があればよく、図3及び図6に示すような構造を有していればよい。
試料となる会陰切開縫合部分は、ヒトの皮膚の弾力や引っ張り強度があればよく、好ましくはスポンジ、更に好ましくは、化粧用のパフであればよい。大きさは、本トレーナーにおける術式対象とする切開創は2から3cmであるので、形状は4cm程度の立方体等で事足りる。
【0009】
切開縫合対象試料の支持部分は、一方方向からの接触が可能なものであればよいが、実施例の本トレーナーの作製例で示すように、直径15cm程度で深さ5cm程度のプラスチック製の笊を挙げることができる。材質や固定のための手段は選ばないが、簡単に支持できるように、糸やつり用のテグス等で該試料を固定可能な部分を有するものが好ましい。
更に、一方方向からの接触が更に制限された機能部分を有するトレーナーには、直径10cm程度の円筒形の籠で、奥行き11cm程度のものであればよく、試料の支持方向も縫合実施者から水平に近い位置で切開創が2から5cmの奥行きをもって支持されるものであればよい。更に、接近開口部をフェルトなどにより、長円長5から7cmで短円長3から5cmの楕円状の開口部をもって、より方向性を制限したトレーナーを作製することが可能である。
対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽機能部分は、術者の手や手術器具が接近できぬよう笊状や円筒形状に遮蔽すればよい。その遮蔽部分も紙製、合成樹脂製のものが挙げられるが、本トレーナーを繰り返し使用するためには、ある程度の強度をもった合成樹脂製の笊や籠が好ましい態様として挙げられる。これらの笊や籠は、いわゆる廉価品を販売している100円ショップなどにて入手が可能である。
【0010】
これらの機能部分を一定の高さに支持できる構造物は、どのような構造を有するものでもよいが、木製や合成樹脂製のものが挙げられる。上記機能部分を何点かで支える構造が安定性の面で好ましく、例えば、実施例では、金属製のまな板立てを用いている。これも、いわゆる廉価品を販売している100円ショップなどにて入手が可能である。
【0011】
なお、図3や図6で示したものは、発明の一態様で、トレーナーとしての機能をさらに付加された構造を有するものであってもよい。例えば、対象試料の自動交換装置などを具備したものであってもよい。さらに、縫合形態など評価が機械的にできる装置の具備であれば、本術式の技術習得度の要素としてより細かな評価を行うことが可能となる。
【0012】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0013】
(会陰切開縫合トレーナーの作製)
図1に会陰切開縫合トレーナーの材料とその完成形態を示す。本会陰切開縫合トレーナーの愛称を発明者らは、「エインシュタイン」ちゃんと称している。
材料は、化粧用パフ(厚さ2.5cm、縦・横とも約5cm)とプラスチック製笊(奥行き5cm、直径14cm)、及び笊を固定できるステンレス製のまな板立てである。
化粧用パフを笊の内側に、向かって左又は右でもよく、約笊中心より約20度の位置に来るように糸にて固定する。図1の場合は、化粧用パフが縦方向に長さ7cm程度となるように延ばされ笊の円形に沿うように若干変形させ固定されている。
化粧用パフを固定した笊をステンレス製まな板立てにて固定する。この場合、笊の開口部を切開・縫合実施者に対し、やや後方に傾けて固定する。この角度は、固定土台の水平面に対して笊開口部の面の角度が60度以内程度(図1の場合は、約80度)であればよい。
(会陰切開縫合トレーナーを用いた実技)
図2に本トレーナーを用いた実習状況を示す。切開、縫合は、実際に用いる手術用器具を用いて行えばよい。本実習は、会陰切開縫合術、又は会陰裂創縫合術である、具体的には会陰切開手技と膣壁縫合手技並びに会陰縫合手技を行った。
医学生を対象とした実習では、全員、本手術手技は未経験であり、初期研修医を対象とした実習では、ある程度の手技の経験を有する者がいた。
実技の結果は、図3に示すような縫合後の化粧パフを笊部分よりは外し、その主観的・客観的評価を加えた。
また、本実習の効果を見るため、表1に示すようなアンケート項目を設定し、実習後、受けた医学生及び研修医より実習の評価を受けた。












(表1)
アンケート項目
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「会陰縫合練習用模型(エインシュタインちゃん)」使用後アンケート
以下のアンケートにご協力ください。
*アンケートご記入方法*
[4−3−2−1] [0]は、
4:そう思う 3:おおむねそう思う 2:あまりそう思わない
1:そう思わない 0:分からない、を示しています。
これらのうち、あなたの考えに最も近いものの番号に○を付けてください。

1 模型を使った講習全体についてお聞きします。
(1) この講習に参加してよかった [4−3−2−1] [0]
(2) 会場は適切であった [4−3−2−1] [0]
(3) 時間は十分であった [4−3−2−1] [0]
(4) 今後同様の講習があったら参加したい [4−3−2−1] [0]

2 模型自体についてお聞きします。
(1) 模型の形は実物とよく似ていた [4−3−2−1] [0]
(2) 模型の素材は実物とよく似ていた [4−3−2−1] [0]
(3) 制作費は適切であった [4−3−2−1] [0]
(4) 制作者のアイデアに感心した
[4−3−2−1] [0]

3 模型を使った手技練習についてお聞きします。
(1) 前説明は良く理解できた [4−3−2−1] [0]
(2) 会陰切開は容易にできた [4−3−2−1] [0]
(3) 腟壁縫合は容易にできた [4−3−2−1] [0]
(4) 会陰縫合は容易にできた [4−3−2−1] [0]

4 その他、ご意見、ご要望がありましたらご自由にお書きください。
{ }
ご協力ありがとうございました

図4に本アンケートから得られた評価情報の概略を示す。
本発明の会陰切開縫合トレーナーの実習に関しては、肯定的回答が得られた。また、縫合の術式の経験に依存し、その容易性のスコアーが医学生より研修医が上昇しており、本トレーナーの存在意義の有用性が認められている。
【0014】
(改良会陰切開縫合トレーナーの作製)
より習熟度を上げるためのトレーナーとして、上記トレーナーの改良を行った。本トレーナーを「エインシュタイン改良モデル」と称する。
図5にエインシュタイン改良モデルの材料を示す。いずれも、いわゆる100円ショップにて購入可能なものである。
本モデルの作製法を図6に示す。本モデルでは、プラスチック製鉛筆立て(奥行き11cm、開口部直径10cm、閉口部直径7.5cm)の遮蔽効果を有する構造体を、やや変形させ、縦長として用いる。切開・縫合用の化粧パフはホチキスや糸にて開口部より奥行きをもって固定する。この場合、切開・縫合用の化粧パフの周囲を別のパフやスポンジにて固定してもよく、弾力性や引っ張り強度を付与させるため、やや圧縮気味に固定するとよい。
更に、開口部に長円6.5cm、短円4cmの楕円の開口部をもつフェルトにて、一方方向からの制限をかけると、実際の術式の困難な場合を想定でき、この一方方向からの制限については、その段階を設けて、習熟度に応じて何段階かのトレーナーを分けて作製することが可能である。
改良会陰切開縫合トレーナーを用いて、高度な習熟度を求める研修医の要望に応えることができる。更に、上記トレーナーを用いた実習の後、本改良トレーナーを用いて実習を行うことで、効率よく産科医に必要とされる、会陰切開縫合術、又は会陰裂創縫合術の習熟が図れる。
【本発明の効果】
【0015】
従来、この手技に慣れるために、上級医の手技を見学し、そのうえで上級医の指導の下、実際の患者で実施し、その後自分一人で修練をおこない試行錯誤しながら習得してきたと考えられる。本発明のトレーナを用いることにより、習熟するまで何回も手技を試すことが可能となり、引いては著しい練習効果を有することが明らかとなった。
【0016】
安価な材料で実技シュミレーションが可能となるため、多人数の医学生を対象とする実習にも適しており、更に、習熟度の向上を求める研修医には、習熟度に応じた改良モデルトレーナーにてその実技シュミレーションが可能となる。よって、本トレーナーは、会陰切開縫合術、又は会陰裂創縫合術による手技の修得を目指す医学生や初期研修医に有用なツールと成り得ることが明らかとなった。
更に、切開・縫合試料の固定後の脱着が可能であるため、試料以外の機能部分は一度作製してしまえば、何回でもトレーナーとして使用できる装置として繰り返しの使用に耐えるものとなっている。
【0017】
また、初期研修医を対象とする講習会などで本トレーナーを用いた手術手技実習は産婦人科医への動機づけにも役立つ可能性があると考えられる。今後、本トレーナーがわが国の主なる大学病院及び国公立病院などの教育機関に常備され実習者の十分な訓練に供されて医療安全に貢献することが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の会陰切開縫合トレーナー(エインシュタイン)の作製に係る図である。
【図2】本発明のトレーナーで、実習を行っている状況を示す図である。
【図3】本発明のトレーナーの実習成果としての縫合試料と、縫合完成後のトレーナー状況を示す図である。
【図4】本発明の実習後に行ったアンケート結果の概略を示す図である。
【図5】本発明の改良トレーナー(エインシュタイン改良モデル)の材料を示す図である。
【図6】本発明の改良トレーナー(エインシュタイン改良モデル)の作製法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
会陰切開縫合トレーナーであって、以下の機能部分を具備するトレーナー。
(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分
(2)上記(1)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分
(3)上記(1)及び(2)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分
【請求項2】
会陰切開縫合トレーナーであって、以下の機能部分を具備するトレーナー。
(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料を支持できる部分
(2)上記(1)の機能部分を一定の範囲の角度をもって保持できる部分
(3)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽機能部分
(4)切開及び/又は縫合対象が一定の奥行きをもってなる部分
(5)上記(1)から(4)の機能部分を一定の高さをもって固定できる部分
【請求項3】
会陰切開縫合トレーナーであって、正中切開、正中側切開又は側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有する請求項1又は2記載のトレーナー。
【請求項4】
会陰切開縫合トレーナーであって、正中側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有するトレーナーで、以下の部分よりなるトレーナー。
(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料が、該試料への接近面を円として、その円中心から、接近面の右又は左に10度から30度のある角度傾いて支持されている構造を有し、
(2)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽を、上記(1)の支持体に保持された試料を笊状又は円筒状に遮断する覆い構造を有し、笊状の場合は比較的広い平面的接近を可能とし、円筒状の場合には比較的狭い一方向のみの接近を可能とする構造を有し、
(3)上記(1)及び(2)の構造を、切開及び/又は縫合対象試料までの高さとして、2cmから30cmの間の距離をもって3次元的に保持できる支えの構造体を有し、更に支えられる上記(2)の構造を保持される水平面に対して垂直(90度)から60度のある角度をもって固定できる構造を有するトレーナー。
【請求項5】
会陰切開縫合トレーナーであって、正中側切開後の縫合手技をシュミレーションできる機能を有するトレーナーで、以下の部分よりなるトレーナー。
(1)繰り返し練習可能な切開及び/又は縫合対象試料が、該試料への接近面を円として、その円中心から、接近面の右又は左に10度から30度のある角度傾いて支持されている構造を有し、
(2)切開及び/又は縫合対象試料に対し、一方向でのみ接近可能とする遮蔽を、上記(1)の支持体に保持された試料を円筒状に遮断する覆い構造を有し、比較的狭い一方向のみの接近を可能とする構造を有し、
(3)切開及び/又は縫合対象試料の切開面及び/または縫合面を奥行きとして2cmから5cm取れるように配置された構造を有し、
(4)上記(1)から(3)の構造を、切開及び/又は縫合対象試料までの高さとして、2cmから30cmの間の距離をもって3次元的に保持できる支えの構造体を有し、更に支えられる上記(2)の構造を保持される水平面に対して垂直(90度)から60度のある角度をもって固定できる構造を有するトレーナー。
【請求項6】
会陰裂創縫合術の技術習得における、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトレーナーの使用。
【請求項7】
会陰裂創縫合術の段階的な技術習得における、先ず請求項4に記載のトレーナーの使用の後、続いて請求項5に記載のトレーナーの使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220871(P2012−220871A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89003(P2011−89003)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本産科婦人科学会雑誌 Vol.63 No.2 第577頁に発表
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】