説明

伝熱管振れ止め装置

【課題】蒸気発生器などの熱交換器の製作時だけでなく、常に隙間調整をして、伝熱管との接触状態を維持することが可能な伝熱管振れ止め装置を提供する。
【解決手段】伝熱管41と伝熱管41の間に挿入されるAVB61と、伝熱管の外周面41dに接する接触面62cを有する接触板62と、AVBと接触板との間に介設され、弾性力で接触板を付勢して接触面を伝熱管の外周面に押し付ける板ばね63とを備えた構成とする。また、伝熱管の側面61aに凹部61bを形成し、接触板は凹部に設け、接触面は凹部の出口61cから凹部の外へ出て、伝熱管の側面よりも突出させ、板ばねは凹部に設け、凹部の底面61fと接触板との間に介設する。また、接触板の周縁部にストッパ部62a−1を設け、凹部の出口の周縁部にストッパ当接部61dを設ける。また、接触面は伝熱管の外周面に沿った曲面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気発生器などの熱交換器に設けられる伝熱管振れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電プラント(PWR発電プラント)の蒸気発生器などの熱交換器における伝熱管のUベンド部には、伝熱管の流力弾性振動の発生を防止するために伝熱管振れ止め金具(AVB:Anti Vibration Bar)が設けられる。
【0003】
AVBは伝熱管と伝熱管の間に挿入されるが、このときにAVBと伝熱管の間に隙間が生じないようにすることが重要である。AVBと伝熱管の間に隙間ができると、伝熱管の流力弾性振動が発生して伝熱管が摩耗する可能性が考えられる。
【0004】
これに対して下記の特許文献1には、AVBと伝熱管の間の隙間を調整して、AVBと伝熱管の間の隙間を無くす(即ちAVBを伝熱管に接触させる)技術が開示されている。図14〜図16には特許文献1に開示されているAVBの例を示す。
【0005】
図14に示すAVB1は、隣り合う伝熱管2と伝熱管2の間にAVB1を挿入し、シリンダ3の底面3aに内圧を作用させてシリンダ3の接触面3bを伝熱管2の外周面2aに接触させ、ラチェット機構5でシリンダ3をボックス4にロックする構成のものである。
図15に示すAVB11は、隣り合う伝熱管12と伝熱管12の間にAVB11を挿入し、シリンダ13の底面13aにテーパ付き引張り棒14を作用させてシリンダ13の接触面13bを伝熱管12の外周面12aに接触させ、ラチェット機構15でシリンダ13をボックス16にロックする構成のものである。
図16(a)及び図16(b)に示すAVB21はピン22で組み立てられた井型の骨組構造物であり、図16(a)のように折りたたんだ状態で隣り合う伝熱管22と伝熱管22の間に挿入した後、図16(b)のように広げて伝熱管22の外周面22aに接触させる構成のものである。
なお、図示及び説明は省略するが、AVBが開示されている先行技術文献としては下記の特許文献2,3などもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−291896号公報
【特許文献2】特許昭62−093586号公報
【特許文献3】特開平10−078201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14〜図16に示すAVB1,11,21は、何れも蒸気発生器の製作時にAVB1,11,21と伝熱管2,12,22との間の隙間調整を行ってAVB1,11,21を伝熱管2,12,22に接触させるものであり、蒸気発生器の製作後に何らかの理由によって伝熱管2,12,22と伝熱管2,12,22の間隔が変化した場合、この変化に追従してAVB1,11,21と伝熱管2,12,22との間の隙間調整を行うこと(即ち両者の接触状態を維持すること)はできない。
【0008】
例えば、AVB1,11,21の何れかを有する蒸気発生器を備えたプラントが起動から定格運転に至るまでの間に生じる伝熱管2,12,22の熱伸びなどにより、伝熱管2,12,22と伝熱管2,12,22の間隔が広くなった場合、AVB1,11,21は、この間隔の広がりに追従して隙間調整をすることができない。このため、AVB1,11,21と伝熱管2,12,22との間に隙間が生じるおそれがある。なお、伝熱管2,12,22と伝熱管2,12,22の間隔が変化する理由としては、製作後の輸送時の振動やプラント据付時に蒸気発生器をクレーンで立てて設置することなど、ABVを組み込んだ初期状態から状態が変化することも考えられる。
【0009】
従って本発明は上記の事情に鑑み、蒸気発生器などの熱交換器の製作時だけでなく、常に隙間調整をして、伝熱管との接触状態を維持することが可能な伝熱管振れ止め装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1発明の伝熱管振れ止め装置は、熱交換器の伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め装置であって、
前記伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め金具と、
前記伝熱管の外周面に接する接触面を有する接触板と、
前記伝熱管振れ止め金具と前記接触板との間に介設され、弾性力で前記接触板を付勢して前記接触面を前記伝熱管の外周面に押し付ける弾性体とを備えた構成であることを特徴とする。
【0011】
また、第2発明の伝熱管振れ止め装置は、第1発明の伝熱管振れ止め装置において、
前記伝熱管振れ止め金具の側面には凹部が形成され、
前記接触板は前記凹部に設けられ、前記接触面が前記凹部の出口から前記凹部の外へ出て、前記伝熱管振れ止め金具の側面よりも突出しており、
前記弾性体は前記凹部に設けられ、前記凹部の底面と前記接触板との間に介設されていることを特徴とする。
【0012】
また、第3発明の伝熱管振れ止め装置は、第2発明の伝熱管振れ止め装置において、
前記接触板の周縁部にはストッパ部が設けられており、
前記接触板が前記凹部の奥へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の基端が前記凹部の底面に当接して、前記接触板の前記奥へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触面が前記振れ止め金具の側面よりも内側に凹むのを防止する構成であることを特徴とする。
【0013】
また、第4発明の伝熱管振れ止め装置は、第3発明の伝熱管振れ止め装置において、
前記凹部の出口の周縁部にはストッパ当接部が設けられており、
前記接触板が前記凹部の出口へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の先端が前記ストッパ当接部の裏面に当接して、前記接触板の前記出口へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触板が前記凹部の外に飛び出るのを防止する構成であることを特徴とする。
【0014】
また、第5発明の伝熱管振れ止め装置は、第1〜第4発明の何れか1つの伝熱管振れ止め装置において、
前記接触面は前記伝熱管の外周面に沿った曲面であり、前記接触面と前記伝熱管の外周面とが面接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の伝熱管振れ止め装置によれば、熱交換器の伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め装置であって、前記伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め金具と、前記伝熱管の外周面に接する接触面を有する接触板と、前記伝熱管振れ止め金具と前記接触板との間に介設され、弾性力で前記接触板を付勢して前記接触面を前記伝熱管の外周面に押し付ける弾性体とを備えた構成であることを特徴としていることから、弾性体の弾性力(復元力)を利用することができるため、熱交換器の製作時だけでなく、常に隙間調整をして、伝熱管との接触状態を維持することが可能である。
例えば熱交換器を備えたプラントの起動から定格運転に至るまでに生じる伝熱管の熱伸びなどの理由により、伝熱管振れ止め金具が間に挿入されている伝熱管と伝熱管の間隔が広がっても、これに追従して弾性体が変形(復元)するため、この弾性体の弾性力(復元力)によって接触板を一方の伝熱管へ向かう方向に付勢することにより、接触板の接触面を一方の伝熱管の外周面に押し付けることができる。同時に伝熱管振れ止め金具の他方の側面も、弾性体の弾性力(復元力)で他方の伝熱管へ向かう方向に付勢されることにより、他方の伝熱管の外周面に押し付けられる。
【0016】
第2発明の伝熱管振れ止め装置によれば、第1発明の伝熱管振れ止め装置において、前記伝熱管振れ止め金具の側面には凹部が形成され、前記接触板は前記凹部に設けられ、前記接触面が前記凹部の出口から前記凹部の外へ出て、前記伝熱管振れ止め金具の側面よりも突出しており、前記弾性体は前記凹部に設けられ、前記凹部の底面と前記接触板との間に介設されていることを特徴としているため、接触板及び弾性体が伝熱管振れ止め金具の凹部に設けられることにより、接触板及び弾性体を容易且つ確実に伝熱管に対応した位置に配置することができる。
【0017】
第3発明の伝熱管振れ止め装置によれば、第2発明の伝熱管振れ止め装置において、前記接触板の周縁部にはストッパ部が設けられており、前記接触板が前記凹部の奥へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の基端が前記凹部の底面に当接して、前記接触板の前記奥へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触面が前記振れ止め金具の側面よりも内側に凹むのを防止する構成であることを特徴としているため、接触板の接触面が振れ止め金具の側面よりも内側に凹んで接触板の接触面と伝熱管の外周面との間に隙間が生じるのを、確実に防止することができる。このため、より確実に伝熱管を伝熱管振れ止め装置によって支持することができる。
【0018】
第4発明の伝熱管振れ止め装置によれば、第3発明の伝熱管振れ止め装置において、前記凹部の出口の周縁部にはストッパ当接部が設けられており、前記接触板が前記凹部の出口へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の先端が前記ストッパ当接部の裏面に当接して、前記接触板の前記出口へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触板が前記凹部の外に飛び出るのを防止する構成であることを特徴としているため、接触板が凹部の外に飛び出たすのを確実に防止することができる。このため、より確実に伝熱管を伝熱管振れ止め装置によって支持することができる。
【0019】
第5発明の伝熱管振れ止め装置によれば、第1〜第4発明の何れか1つの伝熱管振れ止め装置において、前記接触面は前記伝熱管の外周面に沿った曲面であり、前記接触面と前記伝熱管の外周面とが面接触していることを特徴としているため、接触板の接触面と伝熱管の外周面が線接触している場合に比べて、より大きな接触板の接触面と伝熱管と外周面との間の摩擦による減衰効果が得られる。このため、伝熱管の応答(振れ)を低減する効果がより大きくなり、伝熱管の摩耗進行速度をより遅くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置を備えた蒸気発生器の概要図である。
【図2】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の正面図(図2のA方向矢視図)である。
【図4】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の横断面図(図3のB−B線矢視断面図)である。
【図5】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の横断面図(図3のC−C線矢視断面図)である。
【図6】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の縦断面図(図3のD−D線矢視断面図)である。
【図7】本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置の縦断面図(図3のE−E線矢視断面図)である。
【図8】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の正面図(図8のF方向矢視図)である。
【図10】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の横断面図(図9のG−G線矢視断面図)である。
【図11】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の横断面図(図9のH−H線矢視断面図)である。
【図12】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の縦断面図(図9のI−I線矢視断面図)である。
【図13】本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置の縦断面図(図9のJ−J線矢視断面図)である。
【図14】従来の伝熱管振れ止め金具の例を示す図である。
【図15】従来の伝熱管振れ止め金具の例を示す図である。
【図16】従来の伝熱管振れ止め金具の例を示す図であり、(a)には伝熱管振れ止め金具を折りたたんだ状態を示し、(b)には伝熱管振れ止め金具を広げた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態例1>
まず、図1に基づき、本発明の実施の形態例1に係る伝熱管振れ止め装置51を備えた蒸気発生器31の概要について説明する。
【0023】
図1に示す蒸気発生器31はPWR発電プラントに設けられるものであり、1次冷却水(1次冷却材)と2次冷却水(2次冷却材)との間の熱交換によって2次冷却水を沸騰させることにより、発電機駆動用の蒸気タービン(図示省略)を駆動するための水蒸気を発生させるものである。
【0024】
図1に示すように、蒸気発生器31は容器32を有している。容器32の下端部は、1次冷却材入口ノズル35を有する第1水室33と、1次冷却材出口ノズル36を有する第2水室34とに区画されている。容器32の上端には蒸気出口ノズル37が設けられ、容器32の中間部には給水入口ノズル38が設けられている。容器32の内部には、逆U字状に形成された多数の伝熱管41と、給水入口ノズル38に接続された給水リング42と、気水分離器43と、湿分分離器44などが設けられている。伝熱管41の下端部41aは管板45に固定され、管板45から上方に延びている伝熱管41の直管部41bは複数の管支持板46によって支持されている。また、伝熱管41群の周囲は管群外筒47によって囲まれている。
【0025】
そして、伝熱管41の上部のUベンド部41cは、伝熱管41の流力弾性振動が発生するのを防止するため、隣り合う伝熱管41と伝熱管41との間に挿入された複数の伝熱管振れ止め装置51によって支持されている。なお、伝熱管振れ止め装置51は、保持金具52によって保持されている。
【0026】
かかる構成の蒸気発生器31では、原子炉(図示省略)で加熱された1次冷却水が、1次冷却材入口ノズル35から第1水室33に流入し、伝熱管41内を流通した後、第2水室35を経て1次冷却材出口ノズル36から流出し、原子炉へ戻る。一方、2次冷却水は給水入口ノズル38及び給水リング42を介して容器43内に供給され、容器43と管群外筒47の間のダウンカマー部を下降して、管群外筒47の下端から管群外筒47の内側に流入した後、伝熱管41群を上昇する。このとき、伝熱管41の外側を流れる2次冷却水と伝熱管41内を流れる1次冷却水との間で熱交換が行われることにより、2次冷却水が沸騰する。この沸騰した2次冷却水を気水分離器43で気水分離することにより水蒸気を生成し、この水蒸気が、湿分分離器44で湿分分離された後、蒸気出口ノズル37から流出して蒸気タービンへ送られる。
【0027】
そして、このときに伝熱管振れ止め装置51では、伝熱管41の外側を流れる2次冷却水によって伝熱管41のUベンド部41cで流力弾性振動が発生するのを防止している。
【0028】
次に、図2〜図7に基づき、伝熱管振れ止め装置51の構成について説明する。なお、図2〜図7では、説明の便宜上、伝熱管41を一点鎖線(透視図)で示している。このことは、後述する本発明の実施の形態例2(図8〜図13)においても同様である。
【0029】
図2〜図7に示すように、伝熱管振れ止め装置51は伝熱管振れ止め金具(AVB)61と、接触板62と、弾性体の一例である板ばね63とを備えた構成となっている。なお、図2〜図7には伝熱管振れ止め装置51が、伝熱管41群のうちの最も外側の伝熱管41に設けられている状態を例示している(保持金具52は図示省略)。
伝熱管振れ止め装置51(AVB61に接触板62及び板ばね63を設けた構造)は、全ての伝熱管41に適用してもよいが、流力弾性振動による摩耗が厳しいと考えらる箇所が事前に把握できていれば、その箇所の伝熱管41(例えば最も外側の伝熱管41)のみに適用してもよい。これらのことは、後述する本発明の実施の形態例2(図8〜図13)についても同様である。
【0030】
伝熱管振れ止め装置51の構成について詳述すると、図2〜図7に示すように、AVB61は隣り合う伝熱管41と伝熱管41の間に挿入されている。伝熱管41は横断面が円形のものである(図6)。AVB61はV字状(図1)や直線状などに形成された棒状の部材であり、横断面が矩形状(図4,図5)に形成されている。AVB61の一方の側面61aには、凹部61bが形成されている。凹部61bは、側面61aにおける伝熱管41に対応する位置に形成されている。
また、凹部61bの出口(開口)61cの周縁部には、ストッパ当接部61dが形成されている。ストッパ当接部61dの表面61d−1とAVB61の側面61aは面一になっている。ストッパ当接部61dを設けることにより、凹部61bの出口61cの広さが、凹部61bの内部61eの広さよりも狭くなっている。
【0031】
接触板62は、正面視(図3)が矩形状の基部62aと、正面視(図3)が矩形状で基部62aよりも一回り小さな凸部62bとを有する形状の部材であり、凸部62bの表面が平坦な接触面62cとなっている。接触板62の凸部62bは、AVB61における凹部61bの出口61cよりも一回り小さくなっている。接触板62は凹部61bに設けられている。接触板61の基部62aは、凹部61bの内部61eよりも一回り小さく形成されて、この内部61eに位置している。
一方、接触板62の凸部62bは、その一部(先端部)が、凹部61bの出口61cから凹部61bの外へ出ている。従って、接触板62(凸部62b)の接触面62cは、凹部61bの外へ出て、AVB61の側面61aよりも突出している。
なお、伝熱管振れ止め装置51の製作時に接触板62を凹部61bに設ける際には、例えば接触板62(基部62a)を凹部61bの内部61eに設けた後、凹部61bの出口61cの周縁部にストッパ当接部61dを、溶接などによって設ければよい。
【0032】
また、接触板62における基部62aの周縁部は、ストッパ部62a−1となっている。
このため、接触板62が、AVB61の凹部61bの奥へ向かう方向(図5の矢印K方向)へ移動したときには、ストッパ部62a−1の基端62a−2が、凹部61bの底面61fに当接する。このため、接触板62の前記奥へ向かう方向(図5の矢印K方向)の移動が規制されて、接触板61の接触面62cが、AVB61の側面61aよりも内側(凹部61b内)に凹むのを防止することができる。
一方、接触板62が、AVB61の凹部61bの出口61cへ向かう方向(図5の矢印L方向)へ移動したときには、ストッパ部62a−1の先端62a−3が、ストッパ当接部61dの裏面61d−2に当接する。このため、接触板62の前記出口61cへ向かう方向(図5の矢印L方向)への移動を規制して、接触板62が凹部61bの外に飛び出るのを防止することができる。
【0033】
また、接触板62の裏面62dには、凹部62eが形成されている。この凹部62eは、板ばね63の幅よりも少し広い幅を有してしている(図7)。
【0034】
板ばね63は、側面視(図5)が円弧状に形成された本体部63aと、この本体部63aの長手方向の両側に形成された直線状の端部63b,63cとを有する構造のものであり、AVB61と接触板62との間に介設されている。
具体的には、板ばね63は、AVB61の凹部61bに設けられ、この凹部61bの底面61fと接触板62との間に介設されている。板ばね63の本体部63aは、接触板62の凹部62eに設けられている。このため、凹部62eによって板ばね63の幅方向(図7の上下方向)の移動を防止している。そして、板ばね63の本体部63aは、凹部62eの底面62e−1に接している一方、板ばね63の端部63b,63cは、AVB61の凹部61bの底面61fに接している。
【0035】
従って、板ばね63は、その弾性力(復元力)で接触板62を、一方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印L方向)に付勢することにより、接触板62の接触面62cを、一方の伝熱管41の外周面41dに押し付けている。このとき、AVB61の他方の側面(凹部61bが形成されている側面61aと反対側の側面)61gも、板ばね63の弾性力でAVB61が他方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印K方向)に付勢されることにより、他方の伝熱管41の外周面41dに押し付けられる。
【0036】
図4〜図7には、接触板62におけるストッパ部62a−1の先端62a−3と、AVB61におけるストッパ当接部61dの裏面(内面)61d−2との間に隙間を有し、接触板62におけるストッパ部62a−1の基端62a−2と、AVB61における凹部61bの底面61fとの間にも隙間を有している状態を示している。
【0037】
この状態で、例えば蒸気発生器31を備えたPWR発電プラントの起動から定格運転に至るまでに生じる伝熱管41の熱伸びなどの理由により、AVB61が間に挿入されている伝熱管41と伝熱管41の間隔d(図5)が広がったとしても、これに追従して板ばね63が図5に一点鎖線で示すように変形(復元)する。従って、この板ばね63の弾性力(復元力)により、接触板62が、一方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印L方向)に付勢されるため、接触板62の接触面62cが、一方の伝熱管41の外周面41dに押し付けられる。勿論、このときにAVB61の他方の側面61gも、板ばね63の弾性力(復元力)によって他方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印K方向)に付勢されるため、他方の伝熱管41の外周面41dに押し付けられる。
【0038】
かくして、板ばね63の弾性力(復元力)を利用した隙間調整により、接触板62の接触面62cと一方の伝熱管41の外周面41dとの間や、AVB61の他方の側面61gと他方の伝熱管41の外周面41dとの間に隙間が発生するのを防止する。
【0039】
以上のように、本実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51によれば、蒸気発生器31における伝熱管41と伝熱管41の間に挿入される伝熱管振れ止め装置であって、伝熱管41と伝熱管41の間に挿入されるAVB61と、伝熱管41の外周面41dに接する接触面62cを有する接触板62と、AVB61と接触板62との間に介設され、弾性力で接触板62を付勢して接触面62cを伝熱管41の外周面41dに押し付ける板ばね63とを備えた構成であることを特徴としていることから、板ばね63の弾性力(復元力)を利用することができるため、蒸気発生器31の製作時だけでなく、常に隙間調整をして、伝熱管41との接触状態を維持することが可能である。
即ち、伝熱管41の熱伸びなどの理由により、伝熱管41と伝熱管41の間隔が広がっても、これに追従して板ばね63が変形(復元)するため、この板ばね63の弾性力(復元力)によって接触板62を一方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印L方向)に付勢することにより、接触板62の接触面62cを一方の伝熱管41の外周面41dに押し付けることができる。同時にAVB61の他方の側面61gも、板ばね61の弾性力(復元力)で他方の伝熱管41へ向かう方向(図5の矢印K方向)に付勢されることにより、他方の伝熱管41の外周面41dに押し付けられる。
【0040】
また、本実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51によれば、AVB61の側面61aには凹部61bが形成され、接触板62は凹部61bに設けられ、接触面62cが凹部61bの出口61cから凹部61bの外へ出て、AVB61の側面61aよりも突出しており、板ばね63は凹部61bに設けられ、凹部61bの底面61fと接触板62との間に介設されていることを特徴としているため、接触板62及び板ばね63がAVB61の凹部に設けられることにより、接触板62及び板ばね63を容易且つ確実に伝熱管41に対応した位置に配置することができる。
【0041】
また、本実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51によれば、接触板62(基部62a)の周縁部にはストッパ部62a−1が設けられており、接触板62が凹部61bの奥へ向かう方向(図5の矢印K方向)へ移動したとき、ストッパ部62a−1の基端62a−2が凹部61bの底面61fに当接して、接触板62の前記奥へ向かう方向(図5の矢印K方向)の移動を規制することにより、接触面62cがAVB61の側面61aよりも内側に凹むのを防止する構成であることを特徴としているため、接触板62の接触面62cがAVB61の側面61aよりも内側に凹んで接触板62の接触面62cと伝熱管41の外周面41dとの間に隙間が生じるのを、確実に防止することができる。このため、より確実に伝熱管41を伝熱管振れ止め装置51によって支持することができる。
【0042】
また、本実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51によれば、凹部61bの出口61cの周縁部にはストッパ当接部61dが設けられており、接触板62が凹部61bの出口61cへ向かう方向(図5の矢印L方向)へ移動したとき、ストッパ部62a−1の先端62a−3がストッパ当接部61dの裏面61d−2に当接して、接触板62の前記出口61cへ向かう方向(図5の矢印L方向)の移動を規制することにより、接触板62が凹部61bの外に飛び出るのを防止する構成であることを特徴としているため、接触板62が凹部61bの外に飛び出たすのを確実に防止することができる。このため、より確実に伝熱管41を伝熱管振れ止め装置51によって支持することができる。
【0043】
<実施の形態例2>
図8〜図13に基づき、本発明の実施の形態例2に係る伝熱管振れ止め装置71について説明する。図8〜図13において、図2〜図7と同様の部分には同一の符号を付した。両者の対応関係ついては、図2と図8、図3と図9、図4と図10、図5と図11、図6と図12、図7と図13がそれぞれ対応している。
なお、本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71は、上記実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51に代えて、蒸気発生器31(図1)に設けることができるものである。
【0044】
そして、本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71と、上記実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51とでは、接触板61(凸部62b)における接触面62aの形状が異なっている。
即ち、上記実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置71では接触板62の接触面61cが平らであるのに対して(図2〜図7)、図8〜図13に示すように本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71では、接触板62(凸部62b)の接触面62cが、伝熱管41の外周面に沿った曲面となっている。換言すると、接触面62cは、側面視(図12,図13)が、伝熱管41の外周面41dの周方向に沿った円弧状となっている。このため、接触面62cと伝熱管41の外周面41dは面接触している。
【0045】
本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71のその他の構成については、上記実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0046】
以上のことから、本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71においても、上記実施の形態例1の伝熱管振れ止め装置51と同様の作用効果が得られる。
【0047】
しかも、本実施の形態例2の伝熱管振れ止め装置71によれば、接触板62の接触面62cは伝熱管41の外周面41dに沿った曲面であり、接触板62の接触面62cと伝熱管41の外周面41dとが面接触していることを特徴としているため、接触板62の接触面62cと伝熱管41の外周面41dが線接触している場合に比べて、より大きな接触板62の接触面62cと伝熱管41と外周面41dとの間の摩擦による減衰効果が得られる。このため、伝熱管41の応答(振れ)を低減する効果がより大きくなり、伝熱管41の摩耗進行速度をより遅くすることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態例1,2では弾性体として板ばね63を用いた例を示したが、本発明の伝熱管振れ止め装置に適用する弾性体としては、板ばね63に限定するものではなく、その他の弾性体でもよい。例えば、板ばね63とは異なる形状の板ばねや、板ばね以外のばね(例えばコイルばね)などを適用してもよい。また、弾性体の弾性力(復元力)は、弾性体の形状や材質によって弾性体の剛性を調整することにより、調整可能である。
【0049】
また、上記では本発明の伝熱管振れ止め装置をPWR発電プラントの蒸気発生器に適用した場合について説明したが、これに限定するものではなく、本発明の伝熱管振れ止め装置は蒸気発生器以外の熱交換器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は伝熱管振れ止め装置に関するものであり、PWR発電プラントの蒸気発生器などの熱交換器において、伝熱管の流力弾性振動の発生を確実に防止する場合に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0051】
31 蒸気発生器
32 容器
33 第1水室
34 第2水室
35 1次冷却材入口ノズル
36 1次冷却材出口ノズル
37 蒸気出口ノズル
38 給水入口ノズル
41 伝熱管
41a 下端部
41b 直管部
41c Uベンド部
41d 外周面
42 給水リング
43 気水分離器
44 湿分分離器
45 管板
46 管支持板
47 管群外筒
51 伝熱管振れ止め装置
52 保持金具
61 振れ止め金具(AVB)
61a 側面
61b 凹部
61c 出口
61d ストッパ当接部
61d−1 表面
61d−2 裏面
61e 内部
61f 底面
61g 側面
62 接触板
62a 基部
62b 凸部
62a−1 ストッパ部
62a−2 基端
62a−3 先端
62b 凸部
62c 接触面
62d 裏面
62e 凹部
62e−1 底面
63 板ばね
63a 本体部
63b,63c 端部
71 伝熱管振れ止め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め装置であって、
前記伝熱管と伝熱管の間に挿入される伝熱管振れ止め金具と、
前記伝熱管の外周面に接する接触面を有する接触板と、
前記伝熱管振れ止め金具と前記接触板との間に介設され、弾性力で前記接触板を付勢して前記接触面を前記伝熱管の外周面に押し付ける弾性体と
を備えた構成であることを特徴とする伝熱管振れ止め装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝熱管振れ止め装置において、
前記伝熱管振れ止め金具の側面には凹部が形成され、
前記接触板は前記凹部に設けられ、前記接触面が前記凹部の出口から前記凹部の外へ出て、前記伝熱管振れ止め金具の側面よりも突出しており、
前記弾性体は前記凹部に設けられ、前記凹部の底面と前記接触板との間に介設されている
ことを特徴とする伝熱管振れ止め装置。
【請求項3】
請求項2に記載の伝熱管振れ止め装置において、
前記接触板の周縁部にはストッパ部が設けられており、
前記接触板が前記凹部の奥へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の基端が前記凹部の底面に当接して、前記接触板の前記奥へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触面が前記振れ止め金具の側面よりも内側に凹むのを防止する構成であることを特徴とする伝熱管振れ止め装置。
【請求項4】
請求項3に記載の伝熱管振れ止め装置において、
前記凹部の出口の周縁部にはストッパ当接部が設けられており、
前記接触板が前記凹部の出口へ向かう方向へ移動したとき、前記ストッパ部の先端が前記ストッパ当接部の裏面に当接して、前記接触板の前記出口へ向かう方向の移動を規制することにより、前記接触板が前記凹部の外に飛び出るのを防止する構成であることを特徴とする伝熱管振れ止め装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の伝熱管振れ止め装置において、
前記接触面は前記伝熱管の外周面に沿った曲面であり、前記接触面と前記伝熱管の外周面とが面接触していることを特徴とする伝熱管振れ止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−96612(P2013−96612A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238249(P2011−238249)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)