説明

伝送信号を処理する受信機及び方法

伝送チャネルで歪んだ伝送信号を処理する受信機が説明される。受信機は、少なくとも1つの処理パラメータに基づいて伝送信号を処理し、処理済み信号を生成する適応信号プロセッサ(101)と、処理済み信号及び予想信号間の差分を検出する差分検出器(13)と、差分に依存して新たなパラメータに向けて少なくとも1つの処理パラメータを調整する設定部(14)とを有する。設定部はリーケージ部(141)を有し、リーケージ部は、少なくとも1つの処理パラメータについてゼロとは異なるリーケージターゲット値を設定し、該リーケージターゲット値に向かう方向でリーケージ成分に基づいて少なくとも1つの処理パラメータを更に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝送信号を処理する受信機に関連し、その伝送信号は伝送チャネルによって歪められ、当該受信機は、前記伝送信号を受信する入力と、少なくとも1つの処理パラメータに基づいて前記伝送信号を処理し、処理された信号を生成する適応信号処理手段と、該処理された信号及び予想される信号間の差分を検出する差分検出手段と、該差分に依存して新たなパラメータに向けて前記少なくとも1つの処理パラメータを調整する設定手段とを有する。
【0002】
本発明は伝送信号を処理する方法にも関連し、その伝送信号は伝送チャネルによって歪められ、当該方法は、前記伝送信号を受信するステップと、少なくとも1つの処理パラメータに基づいて前記伝送信号を処理し、処理された信号を生成するステップと、該処理された信号及び予想される信号間の差分を検出するステップと、該差分に依存して新たなパラメータに向けて前記少なくとも1つの処理パラメータを調整するステップとを有する。
【0003】
特に本発明は適応制御の技術分野及びパラメータのリーケージ(leakage)に関連する。適応制御は現在のディジタル回路に幅広く使用されている。特に、ディジタル伝送システムの場合、変化する環境状態に対するシステムロバスト性を向上させる際、適応等化は非常に効果的な手段をもたらす。光ディスクシステム(CD,DVD,BD等)はそのようなシステム群を形成する。ディスクの傾斜(tilt)、焦点ずれ及び他の外乱に対してシステムの堅牢性を向上させるように適応等化は適用される。適応等化に加えて、パーシャルレスポンス最尤(PRML: Partial Response Maximum Likelihood)ビット検出を利用するシステムではしばしば適応チャネル推定が使用される。
【背景技術】
【0004】
伝送チャネルから信号を受信する装置及び方法は、例えば下記の非特許文献1により知られている。非特許文献1(Doc1)は、改善された読取チャネル信号処理及び書込チャネル最適化を用いることで光記憶システムの記憶密度を向上させることを議論している。考察される記憶密度範囲内でレコードキャリアにより構築される伝送チャネルから取り出された信号について、改善されたタイミングリカバリ及び適応等化アルゴリズムの組み合わせの元でPRML(ビタビ)ビット検出を利用することで、記録密度の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、信号を受信し、伝送信号を適切に処理するための上記システムは、伝送チャネルの良くない状況では、不正確になるかもしれないし、安定性やロバスト性に欠けるかもしれない。
【非特許文献1】Padiy et al., “Signal processing for 35GB on single - layer Blue-ray Disc”, PROCEEDINGS-SPIE THE INTERNATIONAL SOCIETY FOR OPTICAL ENGINEERING, 2004, Vol.5380, pp.56-70, published by International Society for Optical Engineering, USA, ISSN 0227-786X
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、伝送信号を処理する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1形態によれば、上記課題は冒頭で言及したような受信機と共に達成される。設定手段は、少なくとも1つの処理パラメータに備えてリーケージターゲット値を設定するリーケージ手段を有し、該リーケージターゲット値は0とは異なる。設定手段は、該リーケージターゲット値に向かう方向でリーケージ成分に基づいて少なくとも1つの処理パラメータを更に調整する。
【0008】
本発明の第2形態によれば、上記課題は冒頭で言及したような方法と共に達成される。本方法は、少なくとも1つの処理パラメータに備えてリーケージターゲット値を設定するステップを有し、該リーケージターゲット値は0とは異なる。本方法は、該リーケージターゲット値に向かう方向でリーケージ成分に基づいて少なくとも1つの処理パラメータを更に調整するステップを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本手段の利点は、処理パラメータの調整が、期待される信号との差分に基づく適切な適応システムに基づくことであり、しかもリーケージ成分が適用される。リーケージはパラメータ値を調整する或る手段であり、従来のアナログ回路では、リーケージ成分をグランドレベルから遠ざけるようにリークさせることでパラメータ値を減らしている。しかしながら、本質的にはパラメータ値をゼロにリークさせる既存のリーケージ法とは異なり、新規なリーケージシステムは、任意のリーケージターゲット値に向けてリークさせる。これは有利なことに堅牢で安定した処理システムをもたらし、その処理システムは、リーケージターゲット値により任意に選択された設定値に向かって本来的に収束する性質を有する。
【0010】
適応回路は低速であるし、不利な状況での不安定性に起因して問題を引き起こすかもしれないという認識にも本発明は基づいている。多くの外乱が存在する場合、収束の低下が生じるかもしれない。伝送信号と共に様々な現象の相互作用がある場合、適応プロセスの不安定化が生じるかもしれない。既存の従来のシステムの場合、適応システムの安定性を改善する際、リーケージは簡易ではあるが非常に有効な手段である。
【0011】
例えば、最小二乗平均(LMS)アルゴリズムで駆動される適応等化の場合、フィルタ係数調整の安定化を図るため、リーケージが広く使用されている。そのようなシステムでは、フィルタ係数(タップ)fpのLMSベースの調整は、次式に基づいている。
【0012】
fpnew=fpold+β・Δp
調整はタップリーケージによって捕捉される。
【0013】
fpnew+leakage=(1−α)・fpnew
ここで、αは或る小さな正の数である(α<1)。従って、LMS更新項Δpが或る周波数で欠落していた場合でさえ(例えば、CD,DVD,BD等のような光ディスクシステムにおいて、光チャネルのカットオフ周波数を上回る周波数のような場合)、フィルタ係数は固有に規定されるようになり、従ってLMSベースの適応回路の安定化が達成される。リーケージ法は歴史的にアナログ回路に深く根ざしており、パラメータ値の値を微少量だけゼロに向けて減らす意味を本来的に有し、「ゼロに向かうリーケージ(leakage towards zero)」と言及される。なぜなら、タップfpは、更新ステップを補足することでゼロに向かうよう促されるからである。しかしながら実際上の多くの場合、そのような簡易な方法によって安定化問題に対処することは困難である。
【0014】
US4,575,857は、より複雑なリーケージ法の例を示している。自動等化器は、線形歪みを含む入力信号を受信するよう接続されたトランスバーサルフィルタを有し、制御可能なタップゲインを有する波形等化器;及びトランスバーサルフィルタのタップゲインを連続的に訂正し、トランスバーサルフィルタから、線形歪みの除去された出力信号を取り出すタップゲイン補正手段;を有する。タップゲインの補正制御の良好な収束性を維持するため及び過剰な残留歪を防ぐため、タップゲイン補正手段は、タップゲインの補正制御に小さなリークを付加するよう形成される。第3列第38行乃至第40行で言及されているように、このシステムでは、タップゲインパラメータのリークは、ゼロに向かう。更に、第4列第30行乃至第38行では、リーク又はリークの大きさの判定は、入力信号が全く歪みを含んでいなかった場合に設定される所定値とタップゲインとの差分の絶対値の総和に基づいている。従って、その総和が大きかった場合(即ち、非常に大きな外乱があった場合)、ゼロに向かう強いリークが適用され、総和が小さかった場合には小さなリークが適用される又はリークは全く適用されない。
【0015】
今や本発明者等は別のより効果的なシステムを得た。ゼロに向かうリーケージのシステムは、或るターゲット値に向かってリークする新たな概念に修正可能なことを、本発明者等は見出した。基本的には、処理パラメータのターゲット値に向かうリーケージは、選択された応答特性を有する本来的に安定なシステムをもたらす一方、伝送チャネルでの逸脱に対して処理を合わせることも可能にする。例えばUS4,575,857で言及されているような、実際の値とターゲット値との差分に依存してリークすること又はリークしないことを決定するシステムを、本発明は組み込んでもよいことに留意を要する。
【0016】
一実施例では、受信機は伝送チャネルの特性を検出する手段を有し、その特性に依存して少なくとも1つの処理パラメータについてのリーケージターゲット値を設定するように、リーケージ手段は調整される。これは、検出された伝送チャネルの特性に依存してターゲット値が調整される、という利点を有する。その特性の検出は適切な如何なる方法で実行されてもよく、例えば、物理的な測定により、伝送信号を分析することにより、或いは伝送システムからシステム情報を取り出すことにより実行されてよいことに留意を要する。特殊な場合、伝送チャネルは光記憶システムにおけるものであり、上記の特性は光ヘッドの光軸とレコードキャリアのデータ面の垂線との間の傾斜角を表すチルトであってもよいことに、留意を要する。このチルトは、別個のチルト検出システムで検出されてもよく、検出された半径方向の又は接線方向のチルトは、有利なことに、リーケージターゲット値を算出及び設定するのに使用される。
【0017】
受信機の実施例の場合、適応信号処理手段は、様々な制御ループを有し、リーケージ手段は、少なくとも1つのループについての少なくとも1つの処理パラメータのリーケージターゲット値を、様々な制御ループ間の相互作用を減らすように設定する。これは様々なループがより速く収束するという利点を有する。なぜなら、安定性は他のループによりほとんど影響されないからである。特殊な場合、ループの1つは、ディジタルインパルス応答フィルタの各タップを制御する多数のタップパラメータを有する等化手段を含み、対称的な(symmetric)タップパラメータに向けて適応制御が進む。対称的なタップパラメータは、そのようなタップパラメータのターゲット値が、対称性の条件を考慮しつつ調整可能であるという利点を有する。
【0018】
本発明による装置及び方法の好適実施例は、添付の特許請求の範囲に関連し、以下に説明される。
【0019】
本発明に関する上記の及び他の形態は、添付図面と共に発明の詳細な説明の中で説明される実施例により更に明らかになるであろう。
【0020】
図中、既に説明済みの要素に対応する要素は、同じ参照番号を有する。
【実施例1】
【0021】
図1は適応信号処理を行う受信機を示す。この図は概して1つ以上の入力11及び1つ以上の出力12を有する受信機10を示す。受信機は例えば信号等化器のような処理装置101を備え、例えばフィルタパラメータのような処理パラメータに基づいて入力からの信号を処理する。処理された信号は、出力12に結合される、或いは例えばディスプレイ(図示せず)に映像を表示するように、受信機内で更に処理又は分析されてもよい。受信機は検出部13を有し、検出部は、処理された信号及び予想される信号の差分を検出し、例えば、予想される周波数スペクトルが、受信され処理された信号のスペクトルと比較される。出力信号12は、以下で詳細に説明されるように、比較に備えて直接的に又は間接的に使用される。受信機は、処理部101の処理パラメータの値を決定する設定部14を有し、即ち、検出された差分に基づいて(例えば、周知の最小二乗平均(LMS)アルゴリズムを利用して)処理パラメータを決定する。設定部14はリーケージ部141を備え、以下のようなリーケージ法に基づいて、処理部101での処理パラメータを追加的に調整する。先ず、処理パラメータ各々についてリーケージターゲット値が決定され、リーケージターゲット値はゼロとは異なる。その後、そのリーケージターゲット値に向かう方向で、処理パラメータがリーケージ成分に基づいて更に調整される。例えば、リーケージターゲット値は、伝送チャネルの既知の特性に基づく所定の値であり、その伝送チャネルを介して入力信号が受信される。
【0022】
一般に、受信機は伝送信号を受信し、適応的に処理するが、その伝送信号は伝送チャネルによって歪んでいる。受信機は、伝送信号を受信する入力を有し、1つ以上の処理パラメータに基づいて伝送信号を適応的に処理し、処理された信号を生成する適応システムを有する。検出器は、処理された信号及び期待される信号間の差分を検出し、アダプタは、その差分に依存して新たなパラメータ値に向けて処理パラメータを合わせる。その合わせる作業は、処理パラメータについて、ゼロとは異なるリーケージターゲット値を設定すること、リーケージターゲット値に向かう方向でリーケージ成分に基づいて処理パラメータを調整することを含む。適応システムAは、等化器、チャネル応答推定部、ゲインコントロール回路等のような、適応的な一群の動作パラメータ{Pi(A)}で特徴付けられるものでよい。
【0023】
動作パラメータの調整は、様々な影響を受け、安定性の問題や収束の遅延を招くかもしれない。安定的なソリューションは或るシステムBとして既知かもしれない。そのシステムBは、パラメータ{Pi(A)}に基づく適応システムAと本質的には同じ機能を有するが、特定のパラメータの値{Pi(B)}を有する。安定的なソリューションは、例えば次式に従って、装置Aのパラメータ値をリーケージターゲット値{Pi(B)}に向けてリークすることで達成される。
【数1】

因子αの値は、必要なリーケージ量に調整されてよい。
【0024】
ゼロに向かうリーケージを利用する従来のリーケージ法の制約を回避するため、任意のターゲットに向かうリーケージの概念が使用されることに留意を要する。我々は、任意のターゲットfptargetに向かうリーケージを次のように定義する。
【0025】
fpnew+target=fpnew−α・Lp(fpnew−fptarget)
ここで、リーケージターゲットfptargetはアプリケーション固有であり、予め決められていてもよいし、システムの状態に依存して変化してもよい。Lpは奇関数(odd function)である。数学的には、偶関数及び奇関数は、加法の逆元(additive inverse)を取る際、特定の対称性を満たす関数である。f(-x)=-f(x)ならば、奇関数である。ある特殊なLpは、Lp(x)=x, 何らかの整数nに関し、Lp(x)=x2n+1 である。場合によっては、或る範囲内の入力変数の中でLpをゼロとし、それ以外で(通常は、引数の大きな値で)ゼロ以外の値をとってもよい。このようにすることで、リーケージの「強さ」を可変にすることができる。
【0026】
図2は適応等化器を示す。入力信号151は伝送チャネル15を介して伝送され、元のシンボルシーケンスakに対応する入力信号をRkと表す。入力信号はパラメータ{Pi}に基づいて適応等化器16で処理され、処理された信号~akを生成する。処理された信号は所望のチャネル応答gに応じてディテクタ17で処理され、ディテクタはその所望のチャネル応答に調整されている。応答部18は予想される信号を生成し、その予想される信号は処理された信号と差分ユニット19で比較される。結果の差分は、パラメータ{Pi}を調整するのに使用される。ディテクタは信号^akを生成し、その信号はチャネルシンボルの検出された推定値である。伝送チャネルは、応答h=hnom+hdistを有し、即ち、予定通りの(nominal)成分と歪みによる成分とを有する。等化器は2つのタスクを有し、即ち{Pi-nom}に基づいてhnomをgに変換すること(スタティックモード−静的モード−と言及される)、及びチャネル歪みが存在していたとしても、等化器出力のチャネル応答がgに近いままであるようにhdistを補償することである(ダイナミックモード−動的モード−と言及される。)。更に、等化器のフィルタパラメータ{Pi}を更に合わせるためにリーケージが使用される。リーケージは、ゼロとは異なるリーケージターゲット値に向かい、特にパラメータ{Pi}をスタティック値{Pi-nom}に向けてリークすることで向かわせられる(fpnewはfptargetに近づく)。
【0027】
図3は、チルト検出機能を備えたスキャニング装置を示す。本装置はレコードキャリア300上でトラックを検出するスキャニング手段を備え、スキャニング手段は、レコードキャリア300を回す駆動部21、ヘッド22、トラックの上でヘッド22を位置決めするサーボユニット25及び制御部20を含む。ヘッド22は既存のタイプの光システムを有し、レコードキャリアの情報レイヤのトラック上の放射スポット23にフォーカスされた光素子を介して案内される放射ビーム24を生成する。放射ビーム24は、例えばレーザダイオードのような放射源により生成される。ヘッダは更に(不図示の)放射ビーム24の焦点をビームの光軸に沿って動かすフォーカスアクチュエータと、トラックの中心に関して半径方向にスポット23位置の微調整を行うトラッキングアクチュエータとを有する。トラッキングアクチュエータは、光素子を半径方向に動かすコイルで形成されてもよいし、或いは反射要素の角度を変えるように用意されてもよい。フォーカス及びトラッキングアクチュエータは、サーボユニット25からのアクチュエータ信号により駆動される。
【0028】
光ドライバの場合、読み出し動作はしばしばチルト(傾斜)によって劣化する。チルトは、光ヘッドの光軸とレコードキャリアのデータレイヤの垂線との間の角度である。2種類のチルトがあり、接線チルト(tangential tilt)と半径チルト(radial tilt)である。接線チルトの場合、スポットはトラック方向に傾斜しており、光チャネルを歪ませ、深刻なシンボル間干渉(ISI: Inter-Symbol Interference)を引き起こす。半径チルトの場合、スポットは隣接するトラックに向かって傾斜しており、隣接するトラック内のデータは、読み出されたターゲットトラックとトラック間干渉(ITI: Inter-Tracking Interference)又はクロストーク(XT: Cross Talk)の態様で遭遇する。チルト推定器が含まれており、そのチルト推定器と共に、機械的に又は信号処理によりチルトを訂正することができる。検出されたチルトは、検出されたチルトから生じるように予想されるチャネル歪に従って、リーケージターゲット値を調整し、信号処理パラメータを調整するために使用される。
【0029】
レコードキャリア300は矢印301で概略的に示されるようなチルトを有するかもしれない。例えば、チルトは、平坦でない表面、完璧でない機械的な支持、スキャニングシステムのオフセット等に起因するかもしれない。チルト角304は、スキャニングスポットの場所における、ヘッド22の光軸302及びレコードキャリアのデータレイヤの垂線303間の角度として決定される。実際には、チルト角は約1度以下であり、図は寸法を正確に描いたものではないことに留意を要する。
【0030】
ヘッド又はレコードキャリアサポートシステムは、チルトアクチュエータを更に含み、データレイヤの垂線とヘッドの光システムの光軸との間のチルト角を調整してもよい。チルトアクチュエータは、以下に説明されるようにして生成されたチルト信号に基づいて制御されてもよい。
【0031】
読取の際、情報レイヤで反射された放射(ビーム)は、ヘッド22内の例えば4つのクオドラントダイオード(four-quadrant diode)のような通常のタイプのディテクタで検出され、ディテクタは、様々なスキャニング信号を生成するフロントエンド部31に与えられる検出信号を生成し、スキャニング信号は、トラッキング及びフォーカシング用のメインスキャニング信号33及びエラー信号35を含む。エラー信号35はサーボユニット25に与えられ、トラッキング及びフォーカシングアクチュエータを制御する。メインスキャニング信号33は、情報を取り出すように、復調器、デフォーマッタ(deformatter)及び出力部を含む通常のタイプの読取処理装置により処理される。制御部20は制御回路を有し、例えば、マイクロプロセッサ、プログラムメモリ及び制御ゲートである。制御部20は、論理回路内の状態マシーンとして実現されてもよい。
【0032】
書き込み可能な又は再書込可能なタイプのレコードキャリアに情報を記録する記録手段と共に装置が用意されてもよい。記録手段は、入力部27、フォーマッタ28及びレーザユニット29を有し、書き込み放射ビームを生成するようにヘッダ22及びフロントエンド部31と協同する。フォーマッタ28は、記録フォーマットに従って、制御データを付加し、データをフォーマットして符号化し、例えば誤り訂正符号(ECC)、同期パターン、インターリーブ及びチャネルデコード等により処理を行う。フォーマットされた部分は、アドレス情報を含み、制御部20の制御の下で、レコードキャリア上の関連するアドレス可能な場所に書き込まれる。フォーマッタ28の出力によりフォーマットされたデータは、レーザ部29に伝送され、レーザ部は選択されたレイヤで印(マーク)を書き込むためにレーザ出力を制御する。
【0033】
一実施例では、記録装置はストレージシステムだけであり、例えばコンピュータ内で使用する光ディスクである。標準的なインターフェースを介してホストコンピュータシステム内の処理部と通信するように、制御部20は用意される。ディジタルデータは、フォーマッタ28及び読取処理部30に対して直接的にやりとりされる。
【0034】
一実施例では、装置はスタンドアローン装置として用意され、例えば家庭電化用のビデオ記録装置である。制御部20又は装置内に含まれる追加的なホスト制御部は、ユーザにより直接的に制御され、管理システムの機能を実行するように用意される。装置は、アプリケーションデータ処理回路−例えばオーディオ及び/又はビデオ処理回路−を含む。ユーザ情報は入力装置27で提示され、アナログオーディオ及び/又はビデオやディジタルの非圧縮のオーディオ/ビデオのような入力信号に備えて、入力装置は圧縮手段を含んでもよい。適切な圧縮手段は、例えば、オーディオについては国際公開第98/16014-A1に、ビデオについてはMPEG2標準仕様に記載されている。入力装置27は、オーディオ及び/又はビデオを或る情報単位に処理し、フォーマッタ28に伝送する。読取処理部30は、適切なオーディオ及び/又はビデオデコード部を備えてもよい。
【0035】
装置はチルト検出部32を有し、チルトを検出し、それに応じて、ダイヤゴナルプッシュプル信号(diagonal push-pull signal)に基づくチルト信号を生成する。チルト信号は、サーボユニット25に与えられ、チルトサーボを調整するためのチルトエラー信号を用意する。代替的に又は追加的に、チルト信号は何処で使用されてもよく、例えば、記録プロセスを調整するために使用されもよいし、読取部30における読取信号の処理を調整するのに使用されてもよいし、トラック間のクロストーク(チルト信号で表現されるチルト量に関連している)を補償することで使用されてもよい。チルト信号は、例えば、国際公開第2004/105028号に詳細に説明されている。チルト検出部32は、フロントエンド部31を利用する、制御部20におけるソフトウエア機能として実現されてもよく、読取部30の読取回路(選択されたサブディテクタ信号を生成し、ダイヤゴナルプッシュプル信号を生成する)として実現されてもよい。
【0036】
読取部30はPRMLビットディテクタ310を以下に詳細に説明するように含んでもよいことに留意を要する。
【0037】
光ストレージシステムの場合、ビット検出回路の要請に応じてチャネル応答を形成するため、及びディスクチルト、焦点ズレ等に起因するチャネル歪みに対処するために、適応等化器はしばしば使用される。図3に示されるように、読取部30は、適応等化器を含んでもよい適応処理装置を形成してもよい。適応等化器のタップは或る方法で自動的に調整され、その方法は、等化器はチルトや焦点ズレ等を補償し、等化後の全体的なチャネル応答が充分に上記の歪の影響を受けないことを保証する。調整は通常的には最小二乗平均(LMS)アルゴリズム(Doc1として言及済み)で実行される。入力波形サンプル及び対応するデータビット双方が、適応アルゴリズムに使用される。
【0038】
第1実施例では、正確なデータビットは通常的には未知なので、読取部30のビットディテクタでなされたビット判定(結果)が代わりに使用される。リーケージ法でなかった場合、ビット判定の質が悪ければ、LMS適応ループは安定性の問題(不安定化する問題)に遭遇してしまう。そのような状況は、媒体にローカルな欠落が存在していた場合や、媒体の質が悪かった場合に起こり、タイミングリカバリの際の初期駆動中にも起こり得るし、その場合、DC補償ループは未だ充分にロックされず、ビット検出の問題(ビット検出が困難になる問題)を引き起こしてしまう。このような状況の下では、LMS適応ループは発散し、受信機全体をだめにしてしまう。
【0039】
ゼロでないターゲットに向かうリーケージ法は、この問題に対する解を与える。既に上述しているように、適応等化器のタスクは2つのグループに分けることができ、第1は通常のチャネル応答を形成することであり、第2はチャネル歪を補償することである。チャネル歪は通常的には比較的小さいので、等化器のタップは次式のように表現できる:
fp=fpnom+ fpdist
ここで、fpnomは大きな通常成分であり、チャネル歪がなければ通常の読出条件の下でタップはそれに収束し、fpdistは、チャネル歪を追跡するのに必要な、タップ値に対する比較的小さな補正値を示す。公称伝送チャネルは周知なので、通常、fpnomは経験的に知られている。fptarget= fpnomに向かうリーケージは、手光処理の安定化を保証する非常に有効な手段をもたらす:タップ値fpは、我々が関数Lpを次のように選ぶならば発散することを許容せず、Lpは、fpがfpnomからほとんどずれていなければリーケージは小さいが、そうでなければ大きくなるように選択される。この方法の有効性は、実験的に検証済みである。提案方法はLMSに特化したものではない。他のタイプのタップ適合アルゴリズムと組み合わせることも可能である。
【実施例2】
【0040】
第2実施例では、適応等化法のロバスト性及び収束速度双方を改善するようにリーケージターゲット値が決定される。第1実施例では、予め決められたリーケージターゲットfptargetが選択されていた。しかしながら、より一般的に、リーケージターゲットを適応的にすることができる。図3を参照しながら上述したように、接線チルトの高速且つ動的に更新される推定値が、光ディスクシステムで利用可能な場合を考察することにする。例えば接線チルトはWO2004/105026で説明されているように検出されてもよい。推定されたチルト値は、チルトと必要なターゲット値との間の所定の関係に基づいて、等化器のタップ値を調整するために使用される。図3に示されるようなスキャニング装置は、例えば検出部32の一部としてルックアップテーブル34を含み、ルックアップテーブルはチルトの関数として一群のリーケージターゲット値を含む。
【0041】
他の外乱がなかった場合、等化器タップfpは、接線チルトの関数としてフィードフォワード法で決定できる。なぜならその接線チルトは伝送チャネルに対して明確に制御可能な(前もって特徴付けることの可能な)歪しか引き起こさないからである。この場合、等化器タップは、次式のように表現できる。
【0042】
fp=fpnom+fptilt
ここで、fpnomは名目上の大きな成分(予測可能な成分)であり、チャネル歪がなかったならば、名目上の読出条件の下でタップはその成分に収束する。fptiltは接線チルトに対処するのに必要な、タップ値に対するチルト依存性の補正値を示す。他の外乱も存在する場合、等化器タップは、次式のように表現できる。
【0043】
fp=fpnom+fptilt+fpdist
ここで、fpdistは接線チルト以外の他の総ての外乱に対処するのに必要な、タップ値に対する補正値を示す。双方の場合において、チルト依存性の成分fptiltは、接線チルトの利用可能な推定値に基づいて算出可能である。
【0044】
fptarget=fpnom+fptiltに向かうリーケージをLMS適応アルゴリズムに導入することで、LMSのロバスト性を第1実施例と同様に改善できるだけでなく、接線チルトの変化に対するLMS適応速度をも改善できる。従って本リーケージ法は、2つの異なる適応手段(チルト固有のもの及びLMSに基づくもの)を結合するのに使用可能である。
【0045】
例えばピンぼけや半径チルト等のような他の既知の外乱がシステムに存在する場合も、同じ方法を使用することができる。この場合、等化器タップは次式のように表現できる。
【0046】
fp=fpnom+fpknown+fpdist
ここで、fpknownは既知の外乱総てに対処するのに必要な、タップ値に対する補正値を示し、fpdistは既知のもの以外の他の総ての外乱に対処するのに必要な、タップ値に対する補正値を示す。
【実施例3】
【0047】
第3実施例では、図3に示されるPRMLビットデコーダ310のようなPRMLビットデコーダについて、リファレンスレベル更新法のロバスト性及び収束速度が改善される。PRML(ビタビ)ビット検出は、現在のディジタル伝送法で広く使用されており、特にDVD及びBD光ディスクストレージ法で使用されている。PRML検出を促すためにチャネル推定回路が必要とされる。例えば前節でDoc1と言及したようなチャネル推定回路である。チャネル推定は、波形サンプルに及び対応するデータビットに基づいて実行される。等化器の場合と同様に、厳密なデータビットは受信機で容易には利用できない。なぜなら通常はビットディテクタによるビット判定が代わりに使用されるからである。ビット判定が貧弱な品質の場合(例えば、受信機の電源投入の際や、光ヘッドが媒体の欠落部分を通過した等の場合)、これはチャネル推定プロセスの不安定化を招く。チャネル推定回路がPRMLビットディテクタについて「良好でない」入力を生成し始めると、ビット判定品質も劣化し、チャネル推定回路は、更に悪いことに、受信機全体の機能停止を招く。
【0048】
非ゼロ目標値(non-zero target value)へのリーケージは、この問題のソリューションをも与えることができる。第1及び第2実施例と同様に、既知のチャネル状態へのリーケージを適用することができる。リファレンスレベルは、既知のチャネル外乱の関数として予め算出でき、この既知の状態に向かうリーケージは、より良好なロバスト性及びより良好な適応速度をもたらすであろう。
【0049】
PRMLビット検出のリファレンスレベル更新に関する特定の実施例の場合、その適応レベルは、固定された線形チャネル応答と信号非対称性(signal asymmetry)の適応推定値との組み合わせに対応するように設定される。光記録伝送チャネルにおける信号非対称性は、システム的な不完全性(systematic imperfection)であり、書き込みプロセスやレコードキャリアの製造によって引き起こされるかもしれない。そのような非対称性については、次の文献を参照されたい:“Modeling and Compensation of Asymmetry in Optical Recording” by H.Pozidis et al., IEEE Transactions in Communications, Vol.50, No.12, Dec2002。目下のリーケージ法では、リーケージターゲット値はPRMLビット検出器における処理パラメータ(即ち、適応リファレンスレベル)について決定される。
【実施例4】
【0050】
図4は、様々な適応制御ループを有する信号処理装置を示す。入力信号43は、第1適応処理部41で受信及び処理される。処理途中の出力信号は、処理済み出力信号44を生成する第2適応処理部42で更に処理され、処理済み出力信号は、第2適応処理部42のパラメータを調整する第1設定部45で及び第1適応処理部41のパラメータを調整する第2設定部46で分析される。第4実施例の場合、少なくとも1つの制御ループについて非ゼロターゲットに向けてリーケージを適用することで、異なる制御ループ間の相互作用が減らされる。例えば、第1適応処理部41は、公称ゲインGを有する自動利得制御回路(AGC1)でもよい。第2適応処理部42は、第2処理パラメータ各々を設定することで影響を受けるゲインを有する。双方のループはゲインに影響するので、システムは不安定性を有し、例えば、第1ゲインが安全な動作範囲を超えて増加しつつ第2ゲインが減少するかもしれない。有利なことに、第1ゲインは、1の公称値に向けてリークされてもよい。例えば、第1適応処理部41及び第2設定部46で形成される第1ループは、伝送チャネルのゲイン変化に速やかに応答するが、公称ゲインGに向けてリークされてもよい。第2適応処理部42及び第1設定部45で形成される第2ループは、より緩慢に応答するが、伝送チャネルの緩やかな変動に対して、より正確に応答してもよい。
【0051】
異なる制御ループの別の例は非同期適応等化であり、等化器適応ループ及びタイミングリカバリループ(例えば、位相ロックループPLL)間の相互作用が深刻な問題を招く。非同期適応等化器の具体例は、図2に関するdoc1でも説明されている。
【0052】
非ゼロターゲットに向かうリーケージは、タイミング及び等化の間の望まれない相互作用を抑制するのに使用される。例えば、ある所定のタップ設定値に向かう又はある対称的な設定値に向かう適応等化器のタップのリーケージが使用可能である。異なるループ及び相互作用の別の例は、ゲイン制御ループ及び適応等化ループを有するシステムである。ゲインパラメータ又は等化器パラメータをある明確なリーケージターゲット値に向けてリークさせることで、システム全体の安定化を図ることができる。リーケージターゲット値はシステム状態に依存するかもしれないし、システム状態はシステムパラメータから又はシステムの動作モードから検出可能であることに、留意を要する。
【実施例5】
【0053】
第5実施例では、クロストークキャンセル法のロバスト性及び収束速度双方が改善される。上述したようにクロストークは半径チルトに起因して生じる。クロストークキャンセル法は、光ディスクシステムのトラック間クロストークを抑制するのに使用され、クロストークキャンセル法は、異なるチャネルで生成された補助信号を使用し、補助信号は例えばdoc1の図8に関連して議論されているような、3スポット光検出システムのサテライトスポットからの補助読出信号である。
【0054】
適応等化が補助読出信号に適用されるのは、補助読出信号が主チャネル信号から減算される前である。LMSベースのアルゴリズムは等化器を適合させるのに通常使用される。システムのロバスト性を向上させ且つ収束速度を向上させるため、第1及び第2実施例で説明されたものに類似するリーケージ法を適用することができる。補助信号の適合化及びリーケージを行うことで、受信機は、処理された信号及び別の伝送信号を合成するように用意される。少なくとも1つの伝送信号及び別の伝送信号の相互作用に依存して、リーケージ部は、処理パラメータ各自についてリーケージターゲット値を設定するように用意される。その相互作用は、例えば半径チルト、ピンぼけ及び球面収差等であり、これらはチャネル歪の主要因になる。これらの(又はこれらの一部の)パラメータのランタイム推定が利用可能な場合、予め計算された一群のタップ係数に向かう適応等化タップのリーケージを実行することが可能である。
【0055】
図5は、伝送信号の適応信号処理方法を示す。伝送信号は伝送チャネルによって歪んでいる。受信システムがノードSTART51で起動されると、プロセスはノードRECEIVE52で伝送信号を受信し始める。次に、ノードPROCESS53にて、1つ以上の処理パラメータに基づいて伝送信号が処理され、処理済み信号を生成する。本プロセスはノードDETECT_DIFFERENCE54に続き、処理済み信号及び予想される信号間の差分を検出する。予想される信号は、例えば信号の振幅又は周波数成分に関する信号パラメータのような、所定の信号でもよいし、或いは別の信号処理における信号検出ステップに基づいて生成された信号でもよい。次のステップADAPT_PARAMETER55では、処理パラメータは差分に依存して新たなパラメータ値に向けて合わせられる。並列的に、ノードSET_LEAKAGE_TARGET56において、処理パラメータに関するリーケージターゲット値が、ゼロとは異なる値に設定される。リーケージターゲット値は、上述したように伝送チャネルの特性に関する所定値又は測定値に基づく。処理ステップADAPT_PARAMETER55は、リーケージターゲット値に向かう方向のリーケージ成分に基づいて処理パラメータを合わせることを含む。ノードCONTINUE57では、別の信号が処理される必要のあることが確認された場合、ノードRECEIVE52で処理を再開し、そうでなければノードSTOP58で処理を終了する。
【0056】
以上、主に伝送チャネルのような光ディスクを利用する実施例により本発明は説明されてきたが、無線ネットワークのような変化する歪を有する他の伝送チャネルについても本発明は相応しい。
【0057】
本願では「有する」は列挙されたもの以外の他の要素やステップの存在を排除せず、要素に先行する「ある」又は「或る」はそのような要素が複数存在することを排除しないこと、如何なる参照符号も特許請求の範囲を限定しないこと、本発明はハードウエア及びソフトウエア双方を利用して実現されてもよいこと、いくつかの「手段」、「装置」又は「部」が同じハードウエアや同じソフトウエアで表現されてもよいことに留意を要する。更に、本発明の範囲は実施例に限定されず、本発明は上記の新規な特徴の各々の中に及び総ての中に或いは組み合わせの中に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】適応信号処理機能を有する受信機を示す図である。
【図2】適応等化器を示す図である。
【図3】チルト検出機能を備えたスキャニング装置を示す図である。
【図4】様々な適応制御ループを有する信号処理装置を示す図である。
【図5】伝送信号の適応信号処理方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送チャネルで歪んだ伝送信号を処理する受信機であって、
前記伝送信号を受信する入力と、
少なくとも1つの処理パラメータに基づいて前記伝送信号を処理し、処理された信号を生成する適応信号処理手段と、
該処理された信号及び予想される信号間の差分を検出する差分検出手段と、
該差分に依存して新たなパラメータに向けて前記少なくとも1つの処理パラメータを調整する設定手段と、
を有し、前記設定手段はリーケージ手段を有し、該リーケージ手段は、
前記少なくとも1つの処理パラメータについて、ゼロとは異なるリーケージターゲット値を設定し、
該リーケージターゲット値に向かう方向のリーケージ成分に基づいて前記少なくとも1つの処理パラメータを更に調整するようにした受信機。
【請求項2】
当該受信機は前記伝送チャネルの特性を検出する検出手段を有し、前記リーケージ手段は、前記少なくとも1つの処理パラメータの前記リーケージターゲッット値を前記特性に依存して設定し、前記伝送チャネルは光ストレージシステムであり、前記特性は、光ヘッドの光軸とレコードキャリアのデータレイヤの垂線との間の傾斜角を表すチルトである請求項1記載の受信機。
【請求項3】
前記リーケージ手段は、前記少なくとも1つの処理パラメータfpnew+leakageを、
fpnew+leakage=fpnew−α・Lp(fpnew−fptarget)
に基づいて調整し、前記新たなパラメータ値はfpnewにより示され、前記リーケージターゲット値はfptargetにより示され、αはゼロとは異なる定数であり、Lpは奇関数であり、該奇関数Lpは、Lp(x)=x又はLp(x)=x2n+1(nはゼロとは異なる整数)である請求項1記載の受信機。
【請求項4】
前記適応信号処理手段は、複数のフィルタパラメータを使用する等化手段を有し、前記フィルタパラメータは、ディジタルインパルス応答フィルタのタップ各々を制御するためのものである請求項1記載の受信機。
【請求項5】
前記等化手段はレスポンスをグループに分ける等化器を有し、公称グループは公称伝送チャネルに基づき、前記リーケージターゲット値は前記公称伝送チャネルの先験的情報に基づき、前記フィルタパラメータfpは、
fp=fpnom+fpdist
に基づき、fpnomは前記公称チャネルの公称成分を示し、fpdistは前記伝送チャネルの歪を表す補正値を示す請求項4記載の受信機。
【請求項6】
前記等化手段はレスポンスを少なくとも2つのグループに分ける等化器を有し、公称グループは公称伝送チャネルに基づき、前記リーケージターゲット値は、前記公称伝送チャネルの先験的情報に基づく第1リーケージターゲットと、前記伝送チャネルの予測される逸脱に基づく第2リーケージターゲットとを含み、前記フィルタパラメータfpは、
fp=fpnom+fpexp+fpdist
に基づき、fpnomは前記公称チャネルの公称成分を示し、fpexpは、光読取システムのチルトを表すチルト依存性補正値fptiltのような予想される偏移を示し、fpdistは、該予想される偏移以外の外乱に対する前記伝送チャネルの歪を表す補正値を示す請求項4記載の受信機。
【請求項7】
前記リーケージ手段は、前記伝送チャネルの特性を、前記公称伝送チャネルの予想される逸脱として検出し、前記チルト依存性補正値fptiltは接線チルトの検出された推定値に基づく請求項6記載の受信機。
【請求項8】
前記適応信号処理手段は、チャネル状態を表す複数のチャネルパラメータを有し、前記チャネルパラメータは、パーシャルレスポンス最尤検出器のリファレンスレベルを表す請求項1記載の受信機。
【請求項9】
前記適応信号処理手段は、互いに異なる制御ループを有し、前記リーケージ手段は、前記少なくとも1つのループの前記少なくとも1つの処理パラメータについての前記リーケージターゲット値を、前記異なる制御ループ間の相互作用を減らすように設定する請求項1記載の受信機。
【請求項10】
前記適応信号処理手段は、ディジタルインパルス応答フィルタのタップ各々を制御する複数のタップパラメータを有し、前記少なくとも1つの処理パラメータを更に調整することは、対称的なタップパラメータに向かう方向のリーケージ成分に基づく請求項1記載の受信機。
【請求項11】
前記伝送信号を受信する入力は、関連する伝送チャネルから複数の伝送信号を受信し、
前記適応信号処理手段は、少なくとも1つの処理パラメータに基づいて前記伝送信号の少なくとも1つを処理し、処理された信号を生成し、
当該受信機は、該処理された信号及び別の伝送信号を結合し、
前記リーケージ手段は、前記伝送信号の少なくとも1つ及び前記別の伝送信号の相互作用に依存して、前記少なくとも1つの処理パラメータの前記リーケージターゲット値を設定する請求項1記載の受信機。
【請求項12】
伝送チャネルで歪んだ伝送信号を処理する方法であって、
前記伝送信号を受信するステップと、
少なくとも1つの処理パラメータに基づいて前記伝送信号を処理し、処理された信号を生成するステップと、
該処理された信号及び予想される信号間の差分を検出するステップと、
該差分に依存して新たなパラメータに向けて前記少なくとも1つの処理パラメータを調整するステップと、
前記少なくとも1つの処理パラメータについて、ゼロとは異なるリーケージターゲット値を設定するステップと、
該リーケージターゲット値に向かう方向のリーケージ成分に基づいて前記少なくとも1つの処理パラメータを更に調整するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520313(P2009−520313A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546758(P2008−546758)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054839
【国際公開番号】WO2007/072346
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】