説明

伝送制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は伝送制御方に関し、特に無線パケット通信システムに用いて好適な伝送制御方に関する。
【0002】
【従来の技術】HDLC(High Level Data Link Control procedure、ハイレベルデータリンク制御手順、例えばJIS X5104(ISO 3309)、X5105(ISO 4335)、X5106(ISO7809)等参照)は、高効率且つ信頼性の高い、高速伝送が可能な伝送制御方式であり、任意のビットパターンの伝送が可能であり、且つ誤り制御が厳密であるという特徴を持つ。
【0003】HDLC手順に従う伝送制御方式における誤り制御については、ポール(Poll)/ファイナル(Final)ビット(「P/Fビット」という、なお、P/FビットについてはJIS X5105 4.2「ポール・ファイナルビットの用法」が参照される)を用いて行われる送達確認や、受信側から応答信号の送出などにより実現されている。例えばポール/ファイナルビットは、コマンドフレームの場合にはポール(P)ビットとなり、レスポンス(応答)フレームの場合にはファイナル(F)ビットとなり、Pビットは相手局に対して単一又は複数の応答フレームを誘発するのに用いられ、また“1”に設定されたFビットは、“1”に設定されたPビット受信の結果として送出された応答フレームであることを示す。
【0004】そして、従来の通信システムでは、パケット信号を送信する毎に送達確認を行ったり、通信の方向に関わらず送達確認信号を送信してから応答信号を得るまでの周回遅延を設定値として、アウトスタンディングフレーム数内の固定的な周期で、送達確認を行い、順序番号の確認を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のような送達確認方式を、無線基地局及び複数の端末から成り、マルチアクセス制御を行う無線パケット通信システムに適用した場合、無線基地局から端末への下り方向では、複数の端末宛に送信するパケットがMAC(Media Access Control)サブレイヤにおける、送信待ちキューに入力されるため、送達確認に対する応答信号(Pビット=“1”に対する応答信号)が戻ってくるまでの時間が揺らいでしまうという現象が起こる。
【0006】一方、端末から無線基地局への上り方向では、マルチアクセスによって衝突が生じる可能性があるため、送達確認に対する応答が戻ってくる時間が揺らいでしまうという現象が起こる。
【0007】このように、送達確認信号を送信しても、直に応答信号が戻って来るとは限らないため、双方向通信の状況下において、パケットの連続送信を実現するには、アウトスタンディングフレーム数よりも短めの周期で送達確認信号を送信しなければならない。
【0008】このため、無線区間では、ユーザのデータではない、制御信号である応答信号が増えてしまい、この結果、無線回線の有効利用効率を低下させてしまうという問題が生じる。
【0009】従って、本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、無線回線の有効利用効率を向上する伝送制御方を提供することを目的とする。また、本発明は、マルチアクセスによる衝突を誘発することなく無線回線の有効利用効率を向上する伝送制御方を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、無線回線を用いて複数の端末と無線基地局との間でパケット信号の送受信を行う無線パケット通信システムにおける伝送制御方式であって、前記無線基地局から前記端末への下り通信時には、通信開始時の下りパケット信号にて送達確認を行い、前記端末から上りパケット信号として応答信号が戻って来るまでに前記無線基地局が送出した下りパケット信号数を周回遅延数として記憶し、前記無線基地局が送達確認をとらずに連続して送信できるパケット数から前記周回遅延数を差し引いた値に「1」を加えた回数を最大送達確認間隔として記憶し、前記最大送達確認間隔後に前記無線基地局が送達確認を行い、応答信号を受信する度に前記最大送達確認間隔を更新して送達確認を行う、ことを特徴とする伝送制御方を提供する。
【0011】また、本発明は、無線回線を用いて複数の端末と無線基地局との間でパケット信号の送受信を行う無線パケット通信システムにおける伝送制御方式であって、前記端末から前記無線基地局への上り通信時には、通信開始時の上りパケット信号にて送達確認を行い、前記無線基地局から応答信号が戻って来るまでに前記端末が送出した上りパケット信号数を周回遅延数として記憶し、前記端末が送達確認をとらずに連続して送信できるパケット数から前記周回遅延数を差し引いた値に「1」を加えた回数を最大送達確認間隔として記憶し、以降の送達確認の送信間隔を前記周回遅延数から前記最大送達確認間隔まで順次増しながら送達確認を行い、応答信号を受信する毎に周回遅延数を計測し、この値が変化した場合には、再び送達確認の送信間隔を該周回遅延数に設定して送達確認を行う、ことを特徴とする伝送制御方を提供する。
【0012】
【作用】本発明の原理・作用を以下に説明する。
【0013】請求項1に係る発明では、通信開始時の下りパケット信号を用いて送達確認を行い、周回遅延を計測することにより、送達確認を行うパケット信号の送出周期をできる限り大きく取れるようにしたものである。
【0014】また、請求項2に係る発明では、通信開始時の上りパケット信号を用いて送達確認を行い、周回遅延を計測し、その値を最大値として、送達確認を行うパケット信号の送出周期を徐々に大きくすることができるようにしたものである。
【0015】このように、本発明では、無線パケット通信システムの上り・下りの回線の特性に応じた個別の方式で適応的に伝達確認を行うことを特徴としており、下り方向では、送達確認を行うパケット送信周期をできる限り大きくすることにより、無線回線の有効利用を行うことができる(下り方向では応答信号の返送が遅れ連続送信が一旦途絶えても復旧可能であるため無線回線有効利用のため送達確認の周期を大とする)。また、上り方向では、送達確認を行うパケット送信周期を徐々に大きくしていくことにより、連続送信を継続することが可能となる(上り方向ではマルチアクセスのため連続送信が一旦途絶えると衝突を誘発するため連続送信を途絶えさせないように送達確認周期を徐々に大としている)。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。
【0017】図1は、請求項1に係る発明の実施の形態を説明するための図であり、この発明の伝達制御方の実施形態を説明するシーケンス図である。
【0018】図1において、送信側が送達確認を行わずに送信できるパケット数であるアウトスタンディング数は「7」、送信側が送達確認を行ってから応答信号が戻って来るまでに送出したパケット数は「2」である。また、図1において、送信されるパケット信号をDi(i=0,1,…)とし、送達確認を要求するパケット信号をDipとし(Pビット=“1”)、その応答信号をRR(receive ready)として示す。
【0019】まず、無線基地局から送信される最初のパケット信号D0にて送達確認を行うべく、D0pとして送信する。アウトスタンディングフレーム数は「7」であるので、次の送信タイミングでは、D1が送信される。
【0020】パケット信号D1を送信した後に、通信を行っている端末から応答信号が来たとすると、無線基地局は周回遅延数を「2」として記憶し、最大送達確認間隔として、[(アウトスタンディングフレーム数)−(周回遅延数)+1]を算出する(この場合、7−2+1=6)。
【0021】この後、無線基地局は、パケット信号D0に対する応答信号を受信するため、パケット信号D0からアウトスタンディングフレーム数だけ先のD7まで、送達確認を行わずに送信可能であるが、最大送達確認間隔である6パケット信号を送出毎に送達確認を取るようにする。
【0022】即ち、パケット信号D2からD5までは、そのまま送信し、D6を送信する時に送達確認を行うため、D6pとしてパケット信号を送信する。
【0023】無線基地局はD7を送信後、端末からD6pに対する応答信号を受信し、再び周回遅延数を計測することになる。
【0024】以降、無線基地局は、計測された周回遅延数から算出される最大送達確認間隔毎に送達確認を行う。
【0025】図2は、請求項2に係る発明の実施の形態を説明するための図であり、この発明の伝達制御方の実施形態を説明するシーケンス図である。
【0026】図2において、送信側が送達確認を行わずに送信できるパケット数であるアウトスタンディングフレーム数は「7」、送信側が送達確認を行ってから応答信号が戻って来るまでに送出したパケット数は「2」である。また、送信されるパケット信号をDi(i=0,1,…)とし、送達確認を要求するパケット信号をDipとし、応答信号をRRとして示す。
【0027】まず、端末から送信される最初のパケット信号D0にて送達確認を行うべく、D0pとして送信する。アウトスタンディングフレーム数は「7」であるので、次の送信タイミングでは、D1が送信される。
【0028】パケット信号D1を送信した後に、通信を行っている無線基地局から応答信号が来たとすると、前記端末は周回遅延数を「2」として記憶し、最大送達確認間隔として、[(アウトスタンディングフレーム数)−(周回遅延数)+1]を算出する。
【0029】この後、端末はD0に対する応答信号を受信するため、D0からアウトスタンディングフレーム数だけ先のD7まで送達確認を行わずに送信可能であるが、送達確認を要求する間隔は、この周回遅延数から上記最大送達確認間隔まで一つずつ増加させていく。
【0030】このため、次の送信タイミングにD2を送信した後、最初に送達確認を行ったD0から、前記計測された周回遅延数「2」のパケット信号を送信した後のD3を送信するときに、送達確認を行うためD3pとして送信する。
【0031】次の送信タイミングでD4を送信した後、再び応答信号を受信すると、周回遅延数を計測し、最大送達確認間隔を算出し直す。
【0032】以降、計測された周回遅延数が変わらない限り、端末は、送達確認間隔を一つずつ増しながら送達確認を行い、送達確認間隔が最大送達確認間隔と等しくなった時点で、送達確認間隔を増加しないようにして送達確認を行う。
【0033】また、計測された周回遅延数が前記端末が記憶している周回遅延数と異なる場合には、再び送達確認間隔を上記計測した周回遅延数として送達確認を行う。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明(請求項1)によれば、送信開始時に送達確認を行うことにより、無線回線の有効利用効率を速やかに向上することを可能とする。
【0035】また、本発明によれば、送信開始時に送達確認を行い、徐々に送達確認間隔を増していくことにより、マルチアクセスによる衝突を誘発することなく無線回線の有効利用効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の伝送制御方を説明するためのシーケンス図である。
【図2】本発明の他の実施形態の伝送制御方を説明するためのシーケンス図である。
【符号の説明】
Di(i=0,1,…) パケット信号
Dip(i=0,1,…) 送達確認を行うパケット信号
RR 応答信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】無線回線を用いて複数の端末と無線基地局との間でパケット信号の送受信を行う無線パケット通信システムにおける伝送制御方であって、前記無線基地局から前記端末への下り通信時には、通信開始時の下りパケット信号にて送達確認を行い、前記端末から上りパケット信号として応答信号が戻って来るまでに前記無線基地局が送出した下りパケット信号数を周回遅延数として記憶し、前記無線基地局が送達確認をとらずに連続して送信できるパケット数から前記周回遅延数を差し引いた値に「1」を加えた回数を最大送達確認間隔として記憶し、前記最大送達確認間隔後に前記無線基地局が送達確認を行い、応答信号を受信する度に前記最大送達確認間隔を更新して送達確認を行う、ことを特徴とする伝送制御方
【請求項2】無線回線を用いて複数の端末と無線基地局との間でパケット信号の送受信を行う無線パケット通信システムにおける伝送制御方であって、前記端末から前記無線基地局への上り通信時には、通信開始時の上りパケット信号にて送達確認を行い、前記無線基地局から応答信号が戻って来るまでに前記端末が送出した上りパケット信号数を周回遅延数として記憶し、前記端末が送達確認をとらずに連続して送信できるパケット数から前記周回遅延数を差し引いた値に「1」を加えた回数を最大送達確認間隔として記憶し、以降の送達確認の送信間隔を前記周回遅延数から前記最大送達確認間隔まで順次増しながら送達確認を行い、応答信号を受信する毎に周回遅延数を計測し、この値が変化した場合には、再び送達確認の送信間隔を該周回遅延数に設定して送達確認を行う、ことを特徴とする伝送制御方

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2962215号
【登録日】平成11年(1999)8月6日
【発行日】平成11年(1999)10月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−21773
【出願日】平成8年(1996)1月12日
【公開番号】特開平9−200266
【公開日】平成9年(1997)7月31日
【審査請求日】平成8年(1996)1月12日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平3−36852(JP,A)
【文献】特開 平5−336194(JP,A)