説明

伝送路終端回路及び伝送路モニタ方法

【課題】上位装置とIP伝送路にて接続された移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、伝送路上のメッセージをモニタする機能を、処理能力の低下なく実現する。
【解決手段】移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、PHYとMAC間の電気信号(MII)を分岐させ、送信モニタ用PHY及び受信モニタ用PHYを介して伝送路上のメッセージをリアルタイムに出力する。MACを介さずにメッセージを出力するため、MACの上位レイヤ(プロセッサなど)によるメッセージのコピーをおこなう処理は不要となり、処理能力の低下がない。また、モニタ用にMACを必要とする構成ではないため、限りあるグローバルMACアドレスを無駄に使用することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP伝送路による伝送路終端回路の構成に関し、特に移動通信の無線基地局装置、その他電子装置などに実装される伝送路終端回路に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいては、次世代(第4世代)へ向けてIP網の導入が進んでおり、無線基地局装置でも上位装置及び他無線基地局装置との伝送路にETHERNET(登録商標)を採用している。移動通信システムにおける伝送路の多様化、伝送路のトラヒック量の増加にともない、オペレータは移動通信システムの障害を解析するために伝送路上のメッセージをモニタする必要性が出てきた。
【0003】
ところが、従来装置においてはETHERNETのようなIP伝送路のモニタ機能を実現するために、複数のMAC機能部を用意し、かつMACの上位レイヤ(プロセッサなど)によるメッセージのコピーをおこなう処理を追加で実装しなければならなかった。このため、従来装置では前記コピー処理による処理能力の低下が問題となっていた。また、モニタ回路はLAN接続が可能な構成であったため、モニタ用にもグローバルMACアドレスを用意しなければならなかった。
【0004】
本発明に関連する関連技術が記載された文献として、特許文献1,2を挙げる。特許文献1は、IP伝送装置において物理層とデータリンク層の間に「バス切替手段」を設けることを記載している(例えば、2ページ目左下から3ページ目右上)。また、特許文献2は、データ通信システム内の回線入出力部分に分岐回路を設け、入出力される送受信データをトレースし、トレース結果表示か色でモニタすることを記載している(例えば、段落0009−0011)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−057345号公報
【特許文献2】特開平05−014451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3を用いて、従来の構成について説明する。
【0007】
伝送路終端回路部は物理終端部81とPHY84、MAC87から構成される。物理終端部81はネットワーク側(IP伝送路)の物理終端をおこなうもので、トランスやSmall Form Factor Praggable(以下SFP)モジュールなどで構成される。物理終端部81とPHY84の間は電気信号により接続される。以下、ネットワーク側からPHY84までの受信信号をネットワーク側受信データ、PHY84からネットワーク側までの送信信号をネットワーク側送信データと呼ぶことにする。PHY84はOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスのことで、物理レイヤの信号をOSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)へ変換する機能をもつ。PHY84とMAC87の間はMedia Independent Interface(以下MII)にて接続される。MAC87は前記にあるように、OSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)に該当し、PHY84とデータの送受信方法、誤り検出などの規定、上位レイヤが処理するデータ変換をおこなう機能をもつ。以下、PHY84からMAC87までのMIIインタフェースを受信MIIインタフェース、MAC87からPHY84までのMIIインタフェースを送信MIIインタフェースと呼ぶことにする。
【0008】
モニタ部は物理終端部82(受信モニタ用)、物理終端部83(送信モニタ用)、PHY85(受信モニタ用)、PHY86(送信モニタ用)、MAC88(受信モニタ用)、MAC89(送信モニタ用)から構成される。物理終端部82と83は、伝送路終端回路部の物理終端部81と同様にトランス(RJ45コネクタも含む)やSFPモジュールであるが、必ずしも伝送路終端回路部と同じである必要はない。例えば、伝送路終端回路部の物理終端部が光回線で、モニタ部の物理終端部がトランスであっても構わない。PHY85とPHY86は、PHY84と同様にOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスである。PHY85は、物理終端部82に接続されて受信モニタの機能を実現し、PHY86は物理終端部83に接続されて送信モニタの機能を実現する。MAC88と89は、OSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)に該当し、上位レイヤにてコピーされた受信データや送信データを受信であればPHY85へ、送信であればPHY86へ中継している。以下、MAC88からPHY85までを受信モニタ用送信MIIインタフェース、MAC89からPHY86までを送信モニタ用送信MIIインタフェースと呼ぶことにする。
【0009】
図3を用いて、従来の動作について説明する。従来の動作をわかりやすく説明するため、受信側と送信側で分けて記載する。
【0010】
まず、受信側の動作について説明する。ネットワーク側(IP伝送路)からのデータは、伝送路終端回路部の物理終端部81にて受信される。物理終端部81を介して受信されたネットワーク側受信データは、PHY84へ入力され、受信MIIインタフェースへ変換される。受信MIIインタフェースは、MAC87によって、受信MIIインタフェースから上位レイヤにて処理可能な受信データへ変換される。上位レイヤは、受信データを受け取ると受信モニタ用のMAC88へ送信データとしてコピー処理をおこなう。MAC88は受け取ったコピーデータを受信モニタ用送信MIIインタフェースに変換する。受信モニタ用送信MIIインタフェースは、PHY85に入力され、受信モニタ用送信データへ変換される。受信モニタ用送信データは、物理終端部82を介して受信モニタから出力される。
【0011】
次に、送信側の動作について説明する。上位レイヤは送信データを、ネットワーク側のMAC87へ送るのとともにモニタ側のMAC89へも送信データとしてコピー処理をおこなう。ネットワーク側の送信データは、MAC87によって送信MIIインタフェースへ変換され、モニタ側の送信データはMAC89によって送信モニタ用送信MIIインタフェースへ変換される。ネットワーク側の送信MIIインタフェースは、PHY84に入力され、送信MIIインタフェースからネットワーク側送信データに変換される。ネットワーク側送信データは、物理終端部81を介してネットワーク側(IP伝送路)へと出力される。一方、送信モニタ側の送信モニタ用送信MIIインタフェースは、PHY86に入力され、送信モニタ用送信データへ変換される。送信モニタ用送信データは、物理終端部83を介して送信モニタから出力される。物理終端部83は物理終端部81と同様に、モニタ用インタフェースがツイストペア線であればRJ45コネクタとトランスになり、光回線であればSFPモジュールとなる。
【0012】
前記の通り、従来はモニタ機能を実現するために専用のMACを用意していた構成となっていた。このため、MACの上位レイヤ(おもにプロセッサが処理する)にてモニタインタフェースへのデータコピー処理をおこなわなければならず、処理能力に影響を与えていた。また、モニタ部にMACがあるのでLANなどへの接続も可能となっていたが、モニタ用にグローバルMACアドレスを取得しなければならず、限りあるグローバルMACアドレスを無駄に使用していた。
【0013】
そこで本発明は、上記実情に鑑みて、上位装置とIP伝送路にて接続された移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、伝送路上のメッセージをモニタする機能を、処理能力の低下なく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、上位装置とIP伝送路にて接続された伝送路終端回路であって、前記上位装置と接続するMACと、前記IP伝送路と接続するPHYと、前記MAC及び前記PHY間の電気信号を分岐させる分岐手段と、前記分岐手段により分岐された前記電気信号が接続されるモニタ用PHYと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る伝送路モニタ方法は、上位装置とIP伝送路にて接続された伝送路終端回路を用いて、前記IP伝送路上のメッセージをモニタする伝送路モニタ方法であって、前記上位装置と接続するMACと前記IP伝送路と接続するPHYの間の電気信号を分岐させ、分岐させた前記電気信号にモニタ用PHYを接続し、前記モニタ用PHYにより前記電気信号をモニタ用送信データに変換させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上位装置とIP伝送路にて接続された移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、伝送路上のメッセージをモニタする機能を、処理能力の低下なく実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】従来技術の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下で、本発明を実施形態により詳細に説明する。
【0019】
以下に記載する実施形態は、移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、PHYとMAC間の電気信号(MII)を分岐させ、送信モニタ用PHY及び受信モニタ用PHYを介して伝送路上のメッセージをリアルタイムに出力するものである。MACを介さずにメッセージを出力するため、MACの上位レイヤ(プロセッサなど)によるメッセージのコピーをおこなう処理は不要となり、処理能力の低下がない。また、モニタ用にMACを必要とする構成ではないため、限りあるグローバルMACアドレスを無駄に使用することがない。
【0020】
すなわち、以下に記載するIP伝送路モニタ回路は、上位装置とETHERNET(IP伝送路)にて接続された移動通信用無線基地局装置の伝送路終端回路において、伝送路上のメッセージをモニタする機能を処理能力の低下なし、グローバルMACアドレス付加なしにて実現する。以下で、具体的な構成及び動作について説明する。
【0021】
図1を用いて、本実施形態の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、無線基地局装置のIP伝送路モニタ回路は、伝送路終端回路部とモニタ部の大きく2つに分かれている。
【0023】
伝送路終端回路部は物理終端部1とPHY4、MAC7を備える構成である。物理終端部1はネットワーク側(IP伝送路)の物理終端をおこなうもので、トランスやSFPモジュールなどで構成される。ネットワーク側がツイストペア線(10Base−T、100Base−TX、1000Base−T)のときにはRJ45コネクタを介してトランスによる終端となり、ネットワーク側が光回線(1000Base−SX、1000Base−LX)のときにはSFPモジュールによる終端となる。
【0024】
物理終端部1とPHY4の間は電気信号により接続される。ネットワーク側がツイストペア線のときには、電気信号はトランスにより変圧された(実際には等倍が多い)ものであり、ネットワーク側が光回線のときには、電気信号はSFPモジュールにより光電気変換されたものとなる。以下、ネットワーク側からPHY4までの受信信号をネットワーク側受信データ、PHY4からネットワーク側までの送信信号をネットワーク側送信データと呼ぶことにする。
【0025】
PHY4はOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスのことで、物理レイヤの信号をOSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)へ変換する機能をもつ。
【0026】
PHY4とMAC7の間はMIIにて接続される。MIIは伝送路の速度(10Base、100Base、1000Base)やPHYの種類により、複数の形態(MII、SMII、RMII、GMII、SGMII、RGMIIなど)をもつ。
【0027】
MAC7は前記にあるように、OSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)に該当し、PHY4とデータの送受信方法、誤り検出などの規定、上位レイヤが処理するデータ変換をおこなう機能をもつ。MAC7の構成としては、単一デバイスであったり、プロセッサなどの集積デバイスに組み込まれていたりする場合がある。以下、PHY4からMAC7までのMIIインタフェースを受信MIIインタフェース、MAC7からPHY4までのMIIインタフェースを送信MIIインタフェースと呼ぶことにする。
【0028】
モニタ部は物理終端部2(受信モニタ用)、物理終端部3(送信モニタ用)、PHY5(受信モニタ用)、PHY6(送信モニタ用)、変換部11を備える構成である。物理終端部2と3は、伝送路終端回路部の物理終端部1と同様にトランス(RJ45コネクタも含む)やSFPモジュールであるが、必ずしも伝送路終端回路部と同じである必要はない。例えば、伝送路終端回路部の物理終端部が光回線で、モニタ部の物理終端部がトランスであっても構わない。
【0029】
PHY5とPHY6は、PHY4と同様にOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスである。PHY5は、物理終端部2に接続されて受信モニタの機能を実現し、PHY6は物理終端部3に接続されて送信モニタの機能を実現する。
【0030】
変換部11は、伝送路終端回路部の受信MIIインタフェースをPHY5が送信するための受信モニタ用送信MIIインタフェースへ変換する機能をもつ。以下、PHY5から受信モニタまでの送信データを受信モニタ用送信データ、PHY6から送信モニタまでの送信データを送信モニタ用送信データと呼ぶことにする。
【0031】
図1を用いて、本実施形態の動作について説明する。本実施形態の動作をわかりやすく説明するため、受信側と送信側で分けて記載する。
【0032】
まず、受信側の動作について説明する。ネットワーク側(IP伝送路)からのデータは、伝送路終端回路部の物理終端部1にて受信される。IP伝送路がツイストペア線(10Base−T、100Base−TX、1000Base−T)の場合、物理終端部1はRJ45コネクタを介したトランスによる終端となり、受信したデータを電圧変換する。IP伝送路が光回線(1000Base−SX、1000Base−LX)の場合、物理終端部1はSFPモジュールによる終端となり、受信したデータは光信号から電気信号へ変換される。
【0033】
物理終端部1を介して受信されたネットワーク側受信データは、OSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するPHY4へ入力され、受信MIIインタフェースへ変換される。
【0034】
MIIインタフェースはIEEE802.3にて規格化されたPHY−MAC間の通信手段であり、送信MIIインタフェースと受信MIIインタフェースがある。MIIインタフェースはPHY−MAC間と1対1に接続するのが通常ではあるが、本実施形態ではモニタ機能を実現するため、上位レイヤ側とモニタ側の2つに分岐する。したがい、PHY4にて変換された受信MIIインタフェースは、上位レイヤ側のMAC7と、受信モニタ側の変換部11に分岐する。
【0035】
上位レイヤ側へ分岐した受信MIIインタフェースは、MAC7によって、受信MIIインタフェースから上位レイヤにて処理可能な受信データへ変換される。一方、受信モニタ側へ分岐した受信MIIインタフェースは、変換部11に接続される。
【0036】
受信モニタを実現するため、受信MIIインタフェースは受信モニタ側のPHY5が送信できるように受信モニタ用送信MIIインタフェースに変換される必要がある。変換部11における受信MIIインタフェースから受信モニタ用送信MIIインタフェースへの変換は、使用するMIIインタフェースの仕様に応じて、信号接続変更やデータフォーマットの変更がともなう。
【0037】
変換部11にて変換された受信モニタ用送信MIIインタフェースは、PHY5に入力され、受信モニタ用送信データへ変換される。受信モニタ用送信データは、物理終端部2を介して受信モニタから出力される。物理終端部2は物理終端部1と同様に、モニタ用インタフェースがツイストペア線であればRJ45コネクタとトランスになり、光回線であればSFPモジュールとなる。
【0038】
次に、送信側の動作について説明する。上位レイヤからの送信データは、MAC7によって送信MIIインタフェースへ変換される。送信MIIインタフェースは、受信MIIインタフェースと同様にモニタ機能を実現するため、ネットワーク側とモニタ側の2つに分岐する。したがい、MAC7にて変換された送信MIIインタフェースは、ネットワーク側のPHY4と送信モニタ側のPHY6に分岐する。
【0039】
ネットワーク側へ分岐した送信MIIインタフェースは、PHY4に入力され、送信MIIインタフェースからネットワーク側送信データに変換される。ネットワーク側送信データは、物理終端部1を介してネットワーク側(IP伝送路)へと出力される。
【0040】
一方、送信モニタ側へ分岐した送信MIIインタフェースは、PHY6に入力され、送信モニタ用送信データへ変換される。送信MIIインタフェースは、もとよりPHYが送信可能なインタフェースとなっているため、受信MIIインタフェースのように送信用インタフェースに変換する必要がなく、そのままPHY6へ接続される。
【0041】
送信モニタ用送信データは、物理終端部3を介して送信モニタから出力される。物理終端部3は物理終端部1と同様に、モニタ用インタフェースがツイストペア線であればRJ45コネクタとトランスになり、光回線であればSFPモジュールとなる。
【0042】
ここで本実施形態のモニタ機能について補足説明する。モニタ部の物理終端部2と3は、伝送路回路部の物理終端部1と必ずしも同じインタフェースであるとは限らない。例えば、ネットワーク側(IP伝送路)が光回線で、モニタ側がRJ45コネクタとトランスでもよい。モニタ部の接続先は、LANなどのネットワークを意図したものではなく、データアナライザなどのETHERNETフレームを解析できる測定器やパソコンを想定している。したがい、本実施形態ではモニタ部のインタフェースとして、ツイストペア回線や光回線のどちらにも対応できるように構成されている。
【0043】
また、モニタ機能はネットワークにおける障害解析を目的としたものと考えられるため、通常LANなどのネットワークに接続して利用されることはない。したがい、モニタ部にグローバルMACアドレスを準備する必要もないので、本実施形態ではPHY−MAC間のMIIインタフェースを分岐することでモニタ機能を実現している。
【0044】
上記、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0045】
第1の効果は、モニタ機能を有していても処理能力の低下がおこらないことである。その理由は、PHYとMAC間のMIIインタフェースを分岐して、モニタ機能を実現することでMACを介さずにメッセージを出力するため、MACからモニタ用MACへのメッセージコピー処理が不要になったためである。
【0046】
第2の効果は、グローバルMACアドレスの有効利用が可能である。その理由は、モニタの接続先を測定器やパソコンに限定したため、回路構成にてモニタ側にMACが不要となったためである。
【0047】
第3の効果は、第1の効果に付随して伝送路モニタのリアルタイム性が増したことである。その理由は、MACを介さないモニタ方法を実現し、MACの上位レイヤによるデータのコピー処理がなくなったことで、コピー処理による出力遅延がなくなったためである。これにより、実際に通信しているメッセージをごくわずかな遅延(PHYの出力遅延)でモニタできる。
【0048】
図2を用いて、本発明の他の実施形態の構成について説明する。
【0049】
図2に示すように、本実施形態は、無線基地局装置のIP伝送路モニタ回路は、伝送路終端回路部とモニタ部の大きく2つに分かれている。
【0050】
伝送路終端回路部は物理終端部51とPHY54、MAC57、コネクタ60を備える構成である。物理終端部51はネットワーク側(IP伝送路)の物理終端をおこなうもので、トランスやSFPモジュールなどで構成される。物理終端部51とPHY54の間は電気信号により接続される。以下、ネットワーク側からPHY54までの受信信号をネットワーク側受信データ、PHY54からネットワーク側までの送信信号をネットワーク側送信データと呼ぶことにする。
【0051】
PHY54はOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスのことで、物理レイヤの信号をOSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)へ変換する機能をもつ。PHY54とMAC57の間はMIIにて接続される。MAC57は前記にあるように、OSI参照モデルの第2層の下位副層(MACレイヤ)に該当し、PHY54とデータの送受信方法、誤り検出などの規定、上位レイヤが処理するデータ変換をおこなう機能をもつ。以下、PHY54からMAC57までのMIIインタフェースを受信MIIインタフェース、MAC57からPHY54までのMIIインタフェースを送信MIIインタフェースと呼ぶことにする。
【0052】
コネクタ60は、伝送路終端回路部とモニタ部を接続するためのもので、伝送路終端回路部に電源が入った状態でもモニタ部の着脱が可能なように、活線挿抜の仕様となっている。
【0053】
モニタ部は物理終端部52(受信モニタ用)、物理終端部53(送信モニタ用)、PHY55(受信モニタ用)、PHY56(送信モニタ用)、コネクタ60、変換部61を備える構成である。物理終端部52と53は、伝送路終端回路部の物理終端部51と同様にトランス(RJ45コネクタも含む)やSFPモジュールであるが、必ずしも伝送路終端回路部と同じである必要はない。例えば、伝送路終端回路部の物理終端部が光回線で、モニタ部の物理終端部がトランスであっても構わない。
【0054】
PHY55とPHY56は、PHY54と同様にOSI参照モデルの第1層(物理レイヤ)を終端するデバイスである。PHY55は、物理終端部52に接続されて受信モニタの機能を実現し、PHY56は物理終端部53に接続されて送信モニタの機能を実現する。
【0055】
変換部61は、伝送路終端回路部の受信MIIインタフェースをPHY55が送信するための受信モニタ用送信MIIインタフェースへ変換する機能をもつ。以下、PHY55から受信モニタまでの送信データを受信モニタ用送信データ、PHY56から送信モニタまでの送信データを送信モニタ用送信データと呼ぶことにする。
【0056】
モニタ部も伝送路終端回路部と同様に活線挿抜の仕様に対応したコネクタ60をもち、前記受信MIIインタフェースの接続だけでなく、伝送路終端回路部の送信MIIインタフェースとPHY6の送信MIIインタフェースを接続する。
【0057】
図2を用いて、本実施形態の動作について説明する。本実施形態の動作をわかりやすく説明するため、受信側と送信側で分けて記載する。
【0058】
まず、受信側の動作について説明する。ネットワーク側(IP伝送路)からのデータは、伝送路終端回路部の物理終端部51にて受信される。物理終端部51を介して受信されたネットワーク側受信データは、PHY54へ入力され、受信MIIインタフェースへ変換される。
【0059】
MIIインタフェースはPHY−MAC間と1対1に接続するのが通常ではあるが、本実施形態ではモニタ機能を実現するため、上位レイヤ側とモニタ側の2つに分岐する。したがい、PHY54にて変換された受信MIIインタフェースは、上位レイヤ側のMAC57と、受信モニタ側のコネクタ60に分岐する。
【0060】
上位レイヤ側へ分岐した受信MIIインタフェースは、MAC57によって、受信MIIインタフェースから上位レイヤにて処理可能な受信データへ変換される。一方、受信モニタ側へ分岐した受信MIIインタフェースは、コネクタ60を介して変換部61に接続される。
【0061】
受信モニタを実現するため、受信MIIインタフェースは受信モニタ側のPHY55が送信できるように受信モニタ用送信MIIインタフェースに変換される必要がある。変換部61における受信MIIインタフェースから受信モニタ用送信MIIインタフェースへの変換は、使用するMIIインタフェースの仕様に応じて、信号接続変更やデータフォーマットの変更が伴う。変換部61にて変換された受信モニタ用送信MIIインタフェースは、PHY55に入力され、受信モニタ用送信データへ変換される。
【0062】
受信モニタ用送信データは、物理終端部52を介して受信モニタから出力される。物理終端部52は物理終端部51と同様に、モニタ用インタフェースがツイストペア線であればRJ45コネクタとトランスになり、光回線であればSFPモジュールとなる。
【0063】
次に、送信側の動作について説明する。上位レイヤからの送信データは、MAC57によって送信MIIインタフェースへ変換される。送信MIIインタフェースは、受信MIIインタフェースと同様にモニタ機能を実現するため、ネットワーク側とモニタ側の2つに分岐する。したがい、MAC57にて変換された送信MIIインタフェースは、ネットワーク側のPHY54と送信モニタ側のコネクタ60に分岐する。
【0064】
ネットワーク側へ分岐した送信MIIインタフェースは、PHY54に入力され、送信MIIインタフェースからネットワーク側送信データに変換される。ネットワーク側送信データは、物理終端部51を介してネットワーク側(IP伝送路)へと出力される。
【0065】
一方、送信モニタ側へ分岐した送信MIIインタフェースは、コネクタ60を介してPHY56に入力され、送信モニタ用送信データへ変換される。送信MIIインタフェースは、もとよりPHYが送信可能なインタフェースとなっているため、受信MIIインタフェースのように送信用インタフェースに変換する必要がなく、そのままPHY56へ接続される。
【0066】
送信モニタ用送信データは、物理終端部53を介して送信モニタから出力される。物理終端部53は物理終端部51と同様に、モニタ用インタフェースがツイストペア線であればRJ45コネクタとトランスになり、光回線であればSFPモジュールとなる。
【0067】
ここで本発明の他の実施形態のモニタ機能について補足説明する。本発明の他の実施形態において、伝送路回路部とモニタ部は、活線挿抜可能なコネクタ60にて接続されている。このため、必要に応じて伝送路回路部とモニタ部を切り離すことが可能である。例えば、モニタ機能は通常の運用で何の障害もなければ使用することもないので切り離しておき、障害が発生した場合に後から取り付けて解析をおこなうといった使い方もできる。また、モニタに使用する測定器のインタフェースにあわせ、インタフェースにあったモニタ部をもってきて取り付けて使用することも可能である。
【0068】
本発明の他の実施形態では、モニタ機能を切り離すことができるために以下の追加効果が期待できる。
【0069】
第1の追加効果は、伝送路終端回路を安く提供できることである。その理由は、モニタ部を切り離すことが可能なので、モニタ部分をオプション化することができ、モニタ部分の購入有無を選択できるためである。当初の運用にモニタが不要であれば、モニタ部分の回路を購入しなければよい。また、障害解析が必要になったら、そのときにモニタ部分だけを購入すればよい。
【0070】
第2の追加効果は、伝送路終端回路の消費電力を低減できることである。その理由は、モニタ部を切り離すことが可能なためである。運用において、モニタが不要のときにモニタ部分をはずしておくことで無駄な電力の消耗を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3,51,52,53,81,82,83 物理終端部
4,5,6,54,55,56,84,85,86 PHY
7,57,87,88,89 MAC
11,61 変換部
60 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置とIP伝送路にて接続された伝送路終端回路であって、
前記上位装置と接続するMACと、
前記IP伝送路と接続するPHYと、
前記MAC及び前記PHY間の電気信号を分岐させる分岐手段と、
前記分岐手段により分岐された前記電気信号が接続されるモニタ用PHYと、
を備えることを特徴とする、伝送路終端回路。
【請求項2】
前記モニタ用PHYを含むモニタ部と、
前記モニタ部の前記モニタ用PHYを挿抜可能に前記分岐手段に接続させるコネクタと、
を備えることを特徴とする、請求項1記載の伝送路終端回路。
【請求項3】
前記分岐手段は、受信信号を分岐させる受信信号分岐手段と、送信信号を分岐させる送信信号分岐手段と、を有し、
前記モニタ用PHYは、前記受信信号分岐手段及び前記送信信号分岐手段にそれぞれ対応し、2つあることを特徴とする、請求項1又は2記載の伝送路終端回路。
【請求項4】
前記PHYと、前記受信信号分岐手段に対応する前記モニタ用PHYと、の間に、前記PHYと前記受信信号分岐手段に対応する前記モニタ用PHYの通信インタフェースの仕様に応じて必要な変更を行う変換手段を備えることを特徴とする、請求項3記載の伝送路終端回路。
【請求項5】
前記モニタ用PHYは、前記分岐手段により分岐され、前記モニタ用PHYに入力された前記電気信号を、モニタ用送信データへと変換することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の伝送路終端回路。
【請求項6】
上位装置とIP伝送路にて接続された伝送路終端回路を用いて、前記IP伝送路上のメッセージをモニタする伝送路モニタ方法であって、
前記上位装置と接続するMACと前記IP伝送路と接続するPHYの間の電気信号を分岐させ、
分岐させた前記電気信号にモニタ用PHYを接続し、
前記モニタ用PHYにより前記電気信号をモニタ用送信データに変換させることを特徴とする、伝送路モニタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−239418(P2010−239418A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85597(P2009−85597)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】