説明

伸縮性のある製品を製造するための方法

本発明は、天然エラストマーおよび他の合成のエラストマーなどの材料で主に構成された可撓性で伸縮性のあるおよび/または弾性製品を製造するための方法を提供する。加工物の型の上に製品材料を噴霧することによって伸縮性のある製品を製造する方法と、直立位置の繊維の上に製品材料を噴霧することによって孔の開いた製品を形成する方法である。本発明は、製品の両側を繊維で被覆する方法および、または壁から製品を除去する必要がなく、少なくとも壁に面する側で製品の表面を被覆する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然エラストマーおよび他の合成ポリマーなど、可撓性、伸縮性および/または弾性を有する材料で構成された二次元および三次元製品などの製品を製造する方法に関する。本発明はまた、製品を繊維で被覆し、孔が開いて伸縮性および/または弾性を有する製品を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然または人工のラテックスゴム製品を作製する方法は従来技術で知られているが、結果として生じる製品は通気性がないものにすぎず、体に接するときの感触はゴムのようである。快適な触感を生み出す目的で製品材料の塗布前に遊離繊維が塗布される際、繊維が製品材料によって浸漬され均一なベルベット状の内部の繊維コーティングを得ることが難しくなる。したがって、所望の触感を備えた、通気性があり伸縮性のある製品を製造するための改良された方法に対する要望が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は一般に、例えば加工物の型などの壁の表面に対する主原料の制御された噴霧を利用して、限定するものではないが天然ラテックスゴムまたはポリウレタンを含む弾性エラストマーなどの材料で主に構成された、伸縮性、弾性または形状保持性を有する製品を製造する方法に関する。結果として生じる製品は、所望されるような異なる領域において均一の厚さまたは異なる厚さを有することができる。本発明は、片面または両面に遊離繊維のコーティングを有する製品を準備する改良された方法、およびこのような製品に微孔性をもたらす方法も対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態において、伸縮性のある加工物を製造する方法が提供され、この方法は、(a)壁の表面に湿潤剤を塗布するステップと、(b)部分的に繊維で被覆された表面を形成するために、壁の表面の少なくとも一部に遊離繊維の第1の層を塗布するステップと、(c)繊維で被覆された表面に所定の厚さの製品材料層を形成して伸縮性を有する加工物を製造するために、繊維で被覆された表面に液状の製品材料を噴霧するステップであって、製品材料層が内面と外面とを有し、繊維が製品材料層の内面に付着または固定されるステップとを含む。
【0005】
本実施形態の一態様において、方法はさらに、製品材料層の外面上に遊離繊維の第2の層を塗布するステップを含む。遊離繊維は、湿っているまたは完全には乾いていない製品材料層の外面に直接塗布されてもよい。あるいは、最初に製品材料層が乾燥され、その後、接着層を形成するために少なくとも1つの接着剤の層または第2の製品材料層が製品材料層に塗布されてもよい。その後、遊離繊維を接着層に塗布することができる。これにより、遊離繊維によって被覆された内面および外面を有する製品を形成することが可能になる。
【0006】
本実施形態の別の態様において、方法はさらに、製品材料層を乾燥させるステップを含む。
【0007】
別の実施形態において、本発明は伸縮性のある加工物を製造する方法を提供し、この方法は(a)ゲルで壁の表面を被覆するステップと、(b)少なくとも部分的に繊維で被覆された表面を形成するために、遊離繊維が該ゲル内に固定され、壁の表面に対してほぼ直立する位置でゲルによって保持され(例えば静電気によるフロック加工技法によって)、ゲルによって繊維が部分的に被覆されるように、ゲルで被覆された壁の表面の少なくとも一部に遊離繊維の第1の層を塗布するステップと、(c)繊維で被覆された表面上に製品材料層を形成して伸縮性のある加工物を製造するために、繊維が製品材料の液滴のネットワークの中に埋め込まれるように、ほぼ垂直に立っている繊維に対して液状の製品材料を噴霧するステップであって、製品材料層が内面と外面とを有し、繊維がほぼ直立する位置で製品材料層の内面に付着するステップとを含む。
【0008】
本発明のこれらのおよびその他の実施形態は、以下の詳細な記載に照らしてみることで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】代表的な加工物を示す図であり、1Aでは、加工物が型の上にあり、繊維の第1の層が湿潤剤の中に塗布されており、1Bでは、加工物が型から移され、湿潤剤が除去されている。
【図2】噴霧液滴によって形成された微小な孔が開いた層を示す加工物の表面の図である。
【図3】液滴のネットワークによって形成された微細孔を示す加工物の断面を示す図である。
【図4】(A)型に水溶液を塗布することと、(B)型の上の水溶液に対して繊維を塗布することと、(C)埋め込まれた繊維の上に製品材料を塗布することと、(D)製品材料の先端部に繊維を塗布することとを伴う、完成した加工物を準備するための代表的な工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は一般に、例えば加工物の型などの壁の表面に対する精密に制御された液状材料の噴霧を利用して、噴霧可能な液体状態の天然ラテックスゴム、ポリウレタンまたは他の合成材料などの弾性エラストマーから成る主原料で構成された、伸縮性、弾性または形状保持性を有する製品を製造する方法に関する。結果として生じる製品は、所望されるような異なる領域において均一の厚さまたは異なる厚さを有することができる。本発明は、片面または両面がフロック加工された、すなわち遊離繊維で被覆された製品を準備する方法、およびこのような製品の通気性を確保するために所望の多孔性を生成する方法も対象としている。本発明は、進歩的な方法、加工物の型、および製品材料の噴霧によって製品を準備する装置によって製造される製品も対象としている。本発明によって製造される製品は、製品の両側において改善された心地よい感触がある。本発明の方法および型を使用することによって、織物のような感触および「衣擦れ音」が実現する。
【0011】
用語「フロック」または「フロック加工」は、表面に遊離繊維を塗布、付着、または密着させる工程を指す。
【0012】
用語「型」、「モールド」または「加工物型」は、相互に置き換えて使用される。型またはモールドは、任意の所望の形状またはサイズで作製された物体であり、製品を作製するための成形型として働く。例えばフェイスマスクの形をした製品が望まれる場合、所望のフェイスマスクの形およびサイズを示す型またはモールドを構成することができる。型は、平坦なベルトコンベアなど平坦かつ二次元であってよい。あるいは、型は三次元であり、加工物が実質的に合致する複雑な形状の場合もある。さらに型は、金属(例えばアルミニウム)、磁器、セラミック、プラスチックまたは複合体(例えば金属とプラスチックの)などの任意の好適な材料で作製されてよい。
【0013】
用語「製品」および「加工物」は相互に置き換えて使用され、本発明の方法、装置および型を使用して製造することができる任意の物体も含むことができる。伸縮性のある弾性製品には、限定するものではないが、パイプ、シール、薄膜シート、フィルタ膜などの工業的用途、食品などの腐りやすいものを含む物品のための、通気性があり伸縮性のある包装材料またはカバーなどの食品産業、包帯用品および帯具などの医療品に関する医療産業、保護服およびブラジャー、パンツ、靴下または手袋などの下着ならびに任意の他の衣服、動物用のまたはアウトドア用の下着または手当用品を含む衣料品などの保健衛生、運動用、および個人の衛生産業など多様な用途がある。衣服の他の例は、2003年11月26日に提出された米国特許出願番号10/723244号および1999年8月5日に提出された米国特許出願番号09/744,779号に記載されており、これらは共にその全体が参照により組み込まれている。
【0014】
「遊離繊維」という語句は、天然または合成材料を含む任意の好適な遊離したフロック加工繊維材料を指し、親水性、疎水性またはそれらを組み合わせたものであり得る。親水性の繊維は湿潤可能な繊維、すなわちそれらを親水性で吸水性のある繊維および超吸水性のポリマー繊維にするために処理された疎水性の繊維を含む。湿潤可能な繊維の例は、例えば界面活性剤によって処理された複合繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエステル繊維を含む。湿潤可能な繊維の例は、ICI Americas社より市販されているTween20などの界面活性剤によって処理された、DuPont社より市販されているDuPont−Akraポリエステルタイプ11A Brightなどのポリエステル繊維である。吸収性繊維は親水性繊維である。吸収性繊維は、レーヨン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール繊維および天然または再生セルロース繊維を含んでよい。吸収性繊維の例は、レーヨン繊維である。超吸収性ポリマー繊維は、1グラム(繊維重量)当たり5グラムよりも多くの1%塩溶液を膨潤かつ吸収可能な親水性の繊維である。超吸収性ポリマー繊維の例は、ポリアクリレート繊維、グラフトセルロース繊維およびマレイン酸繊維である。超吸収性ポリマー繊維の例は、Technical Absorbents Limitedより市販されているOASIS Type101およびカナダ、アルバータ州の、Camelot社より市販されているCAMELOTである。本発明で使用するのに好ましい繊維は、綿繊維である。遊離繊維が表面に塗布され得るようにそれらを送出するのに適した任意の方法を使用することができる。例えば、遊離繊維を壁の表面に噴霧するまたは吹き付けたり、静電気およびまたは空気圧によってフロック加工したりすることができる。
【0015】
「製品材料」という語句は、天然または合成ポリマーなどの好適な伸縮性のある材料を含む。天然ポリマーは、限定ではなくラテックスゴムを含む。合成ポリマーは、限定ではなくポリウレタンを含む。噴霧する目的で、製品材料のエマルジョン、懸濁液または溶液、例えば液体ラテックスゴムなどが一般に使用される。製品材料を噴霧した後、追加の工程ステップによって、またはそれ無しで、製品材料は好ましくはそれが表面から除去される前に乾燥させることができる。乾燥工程は、製品材料の選択に応じて硬化工程または凝固工程を含んでよい。例えば、製品材料としてラテックスゴムが使用される場合は、ラテックスゴムは、それが乾燥するときに硬化する。本発明を実施する際、好ましい製品材料は、耐久性があり、可撓性があり、伸縮性があり、弾性の形状保持性がある製品を形成する天然ラテックスゴムである。
【0016】
用語「壁」は、平坦なベルトコンベアベルト、または製品が実質的に合致する任意の好適な成形された平坦な表面など平坦なまたは二次元の加工物の型を指すことができる。あるいは、壁は、製品が実質的に合致する複雑な形状の三次元加工物の型である場合もある。あるいは、壁は、平坦ではないエンボス加工されたまたは複雑な成形されたコンベアベルト、穴の開いたコンベアベルトまたはそれらを組み合わせたものである場合もある。壁は、プラスチック、ゴム、複合体(例えば金属と、プラスチックまたはセラミックの)、セラミック、アルミニウムまたはステンレス鋼などの金属など任意の好適な材料で作製されてよい。
【0017】
本発明より前には、両面がフロック加工された製品を製造するのは簡単にできることではなかった。通常は、モールド上に含まれる製品の外面が最初にフロック加工される。製品の内面をフロック加工するために、製品は通常、モールドから離型され、フロック加工されていない内面を露出させるように裏返しにひっくり返される。フロック加工されていない内面に接着剤が層状に重ねられ、その後、接着層に遊離繊維が塗布される。付加的な機械的除去および接着剤を塗布するステップがあるため、特に薄い製品が必要とされる場合、両側がフロック加工された製品を製造する工程は難しくかつ費用がかかるおそれがある。本発明は、工程ステップの数およびそれに伴うコストを削減することによって、両側を繊維で被覆する処置を目覚ましくかつ飛躍的に改良する。さらに本発明によって、内面と外面においてフロック加工される薄い製品を製造する、驚くほど効率的かつ経済的な方法が提供される。
【0018】
したがって、内面がフロック加工された製品を利用して両面がフロック加工された製品を準備することが可能であり、本発明の別の実施形態では、方法はさらに、製品材料層の外面に遊離繊維の第2の層を塗布するステップを含む。これにより、最初にフロック加工された製品を機械的に型から取り出す必要がなく、両面(内面と外面)がフロック加工された製品材料面を有する製品を形成することが可能になる。
【0019】
上述したように、任意の好適な手段によって、壁の表面に遊離繊維を塗布することができる。製品材料層を塗布する前に、壁の表面に遊離繊維を一時的に密着させることができるように、遊離繊維を塗布する前に、表面を好適な媒体または湿潤剤で濡らすことができる。代表的な湿潤剤は、水、水溶液(例えば界面活性溶剤)または懸濁液(例えばヒドロゲルなどのゲル)などの水性媒体および界面活性溶剤を含む。湿潤剤は、フロック加工処置を妨げたり、製品材料層のいかなる劣化も引き起こしたりしてはならない。製品材料を噴霧すると、遊離繊維が製品材料層に貼り付き、その結果、噴霧された製品上に内側がフロック加工された層が生成される。湿潤剤中の溶剤は、主要な製品層の乾燥または硬化ステップにおいて、いずれにしろ乾燥または蒸発し、残留物はほとんどまたは全く残らない。例えば柔軟な触感などの製品の特徴に残留物が影響を与えることはない。しかしながら所望であれば、いかなる残留物も除去するまたは浸出させる目的で、例えば水などの水溶液中で製品を洗浄または浸漬するなど任意の好適な手段によって残留物を取り除くことができる。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、湿潤剤は、5重量パーセント未満のセルロースの溶液を含む。別の実施形態において、湿潤剤は、95重量パーセントを超える液状のゲルと、例えばゼラチン、界面活性剤またはセルロースなどの少量のゲル化基体を有する。湿潤剤は、液体製品材料に反応したりこれを変色させたりせず、完成した加工物から容易に取り除くことができる。本発明の湿潤剤は、繊維を安定した位置に保持するような粘性を有するべきである。例えば湿潤剤は、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、プロピレングリコール、合成または天然ポリマー、タンパク質、炭水化物、ソルビトール、ポリソルベート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキレンメタクリルアミド、N−ジアルキレンアミノ−アルキレンメタクリルアミド、N−ジアルキレンアミノ−アルキレンメタクリルアミド、N−メチロール−メタクリルアミド、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニル−アセトアミド、N−ビニル−N−メチル−アセトアミド、N−ビニル−N−メチル−フォルムアミド、ヒドロキシ−エチル−アクリレート、ポリエチレン−グリコール−モノ−アリル−エーテルのメタクリル酸−エステルまたはポリエチレン−グリコールのアリルエーテルを含んでよい。例えば本発明で使用できる湿潤剤は、ヒドロゲル(Hydromer社、Cambridge Polymer GroupおよびVitality Medical)である。
【0021】
本発明の一実施形態において、伸縮性のある加工物を製造するための方法が提供され、この方法は(a)壁の表面に湿潤剤を塗布するステップと、(b)少なくとも部分的に繊維で被覆された表面を形成するために壁の表面の少なくとも一部に遊離繊維の第1の層を塗布するステップであって、遊離繊維が壁の表面にほぼ垂直に当たるようにそれらが静電気または任意の他の好適な方法によってフロック加工されるステップと、(c)繊維で被覆された表面に所定の厚さの製品材料層を形成して伸縮性のある加工物を製造するために、垂直に立っている繊維に対して液状の製品材料を噴霧するステップであって、製品材料層が内面と外面とを有し、製品材料層の内面に繊維が付着するステップとを含む。別の実施形態は、製品材料層の外面に遊離繊維の第2の層を塗布するステップをさらに含み、ここでは製品材料層は硬化されないまたは部分的に硬化されない。別の実施形態では、方法はさらに、製品材料層を乾燥させるのを可能とするステップと、表面から伸縮性のある加工物を取り除くステップとを含む。加工物が表面から取り外された後、ゲルは蒸発することができ、その結果、繊維の第1の層にはゲルの残留物はほとんど残らない。残留物はその後、例えば水などの水性媒体で製品を洗浄することによって実質的に除去または減少させることができる。
【0022】
一実施形態においては、製品材料層は、異なる領域において異なる厚さを有し、または異なる領域において同一の厚さを有する。壁は、例えば平坦なコンベアベルトなど平坦である、または壁は加工物の型である。別の実施形態において、加工物の型は、加工物が実質的に合致する複雑な形状である。さらに別の実施形態において、壁は複数の孔を備え、少なくともかなりの製品材料層が孔の上に形成されないように噴霧が行われる。
【0023】
1つの他の実施形態においては、繊維は、例えば軽量の綿繊維またはビスコース繊維またはそれら2つを組み合わせたものなど、天然または合成材料で作製される。別の実施形態において、液状製品材料は、天然または人工エラストマーを有する。天然エラストマーは天然ラテックスゴムを有してよく、人工エラストマーはポリウレタンを有してよい。
【0024】
本発明の一実施形態において、ステップ(a)は、所定の厚さと粘度範囲で湿潤剤を塗布するステップを含む。好ましい実施形態において、湿潤剤はおよそ300からおよそ10,000cpsの粘度である。別の好ましい実施形態では、湿潤剤はゲルである、または5重量パーセント未満のセルロースを含む溶液である。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、ステップ(b)は、壁の表面に対して垂直に繊維がゲルを貫通し、ゲルが繊維を直立する位置に保持するように繊維を塗布するステップを含む。さらに別の実施形態において、ステップ(c)は、直立する繊維の先端部に噴霧された液状製品材料のウェブを形成するように、直立する繊維の先端部に液状製品材料を噴霧するステップを含む。噴霧される液状製品材料の強度および液滴のサイズは、噴霧された液状製品材料が、多孔の層または単一化されかつ均一な層を形成するように調節することができる。一実施形態において層は、微孔質である。
【0026】
いくつかの実施形態においては、ゲルを土台とする形態での湿潤剤上で繊維のフロック加工は好ましくは静電気により行われ、その結果、空気抵抗効果によって、濡れた型に向かって繊維が強力に移動することで繊維が型の表面に対して垂直に移動しゲルを貫通する。繊維は、繊維を直立した状態で保持し、各繊維の一部、すなわちゲル内に侵入した繊維の一部を覆うゲル層を貫通する。
【0027】
ラテックスなどの液体製品材料を直立する繊維の先端部に噴霧することで、直立する繊維の被覆されていない上側に噴霧されたポリマーのウェブ状の層が形成される。このようなウェブ状の層の形成は、製品材料を噴霧することによって形成された噴霧層の連続性を次々に調節する、噴霧の強度を調整することによって効果的に行うことができる。このような処置によって、多孔の層または微孔の層、またはより単一化されかつ均一な層が形成される。製品材料の噴霧強度、液滴サイズおよび表面張力を調節することによって、完成した製品の多孔性および通気性を調節することが可能である。
【0028】
噴霧強度の調節は、例えば壁の表面に対する噴霧ガンの移動速度を調節することによって行うことが可能であり、液滴サイズは、霧化空気圧および噴霧される材料の圧力を変え、ノズル開口部の直径を変え、かつ噴霧する液体の粘度を変えることによって調節することができる。表面張力は、製品液状材料の化学的配合、特性および希釈を変えることによって調節することができる。液滴サイズが比較的大きくかつ表面張力が比較的高い場合、微多孔または微孔の層が形成され、その結果、液滴が簡単には一緒に結合せず、液滴同士の間に小さな空間が残される。繊維上に製品材料が噴霧された後すぐに繊維によって吸収される少量の液体は、不規則な微孔層を形成する別の理由となる。
【0029】
一実施形態において製品層の形成は複数の噴霧ステップにおいて行われ、その結果、最初に不規則な多孔の製品材料層が硬化または部分的に硬化され、次いで第2の層が、その表面張力効果によってほとんどの液滴が先に形成されたウェブと結合した状態が保持されるように噴霧され、加工物の微細な多孔性を保持しつつ、より厚みがありより強力な層を形成することができる。
【0030】
湿潤剤は、繊維を壁の表面に対して保持するために壁の表面に塗布することができる水性溶液であることが好ましい。いくつかの実施形態において、湿潤剤は、例えば蜂蜜またはゲル物質の粘度の粘性を有する。例えば、湿潤剤の粘度は、およそ300から10,000cpsの範囲内であってよい。
【0031】
繊維を型の表面上に直立させて保持する湿潤剤を有する方法からこのように形成された加工物は、優れた特性の加工物をもたらす多くの驚くべきかつ予測外の結果を示す。製品材料層の制御された液滴の噴霧が後に続く静電気によるフロック加工技法を併用する高粘度の湿潤剤の使用は、繊維が製品材料層によって浸漬されず、層の内側が繊維によって均一かつ効果的に被覆された加工物の表面を形成するために繊維がほぼ直立した位置に保持される点で有利である。垂直に立っている繊維が湿潤剤を貫通するので、それらは湿潤剤によって垂直位置に保持され該湿潤剤によって一時的にその一部が覆われる。
【0032】
噴霧される製品材料の液体が繊維の先端部に塗布される際、繊維の被覆された部分は該製品材料液体によって被覆されないように保護され、この段階で役割が変更され、製品材料液体は、繊維を所定の位置に、すなわち依然として表面に対して垂直に維持する役割を果たす。その後の段階で湿潤剤が洗い流され、または蒸発し、先に被覆された繊維の一部が姿を現し、それらは製品材料層の表面に対してほぼ垂直に製品材料層から外に自由に立っている。これにより、外側のフロック加工表面と同様の方法で製品層の内面を被覆する滑らかでかつベルベット状の繊維層が形成され、このこと他のいかなる方法でも実現することのできない結果である。
【0033】
さらに、直立する繊維が加工物内の孔の形成を促進させることから、内側の層の直立する繊維は、通気性のある加工物の形成を促進させる。
【0034】
この実施形態のさらに別の態様では、壁の表面は平坦な表面である。
【0035】
本発明は、特に上記に示され記載されたものに限定されないことを当業者は理解するであろう。むしろ本発明の範囲は、先行する記述を読めば当業者が思いつくであろう、かつ従来技術にはない、明細書中に記載され図面中に示される多様な特徴の変形形態および修正形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のある加工物を製造する方法であって、
(a)壁の表面を湿潤剤によって被覆するステップと、
(b)少なくとも部分的に繊維で被覆された表面を形成するために、遊離繊維が前記湿潤剤の中に固定され、それによって前記壁の表面に対してほぼ直立した位置に保持され、前記繊維が前記湿潤剤によって部分的に覆われるように、前記湿潤剤で被覆された壁の前記表面の少なくとも一部に前記遊離繊維の第1の層を塗布するステップと、
(c)前記繊維で被覆された表面に製品材料層を形成し伸縮性のある加工物を製造するために、前記繊維が前記製品材料の液滴のネットワークの中に埋め込まれるように、ほぼ直立している前記繊維に対して液状の製品材料を噴霧するステップであって、前記製品材料の層が内面と外面とを有し、前記製品材料の層の内面に前記繊維が固定されるステップとを含む方法。
【請求項2】
ほぼ直立している前記繊維の先端部に前記液状の製品材料を噴霧するステップは、前記製品材料の部分的に連結した液滴のネットワークを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
製品材料層の多孔性を調節するように前記製品材料を2つ以上のステップで噴霧するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)は、前記湿潤剤を所定の厚さおよび粘度範囲で塗布するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記湿潤剤はゲルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記噴霧される液状の製品材料が多孔の層または単一化されかつ均一な層を形成するように、前記噴霧される液状の製品材料の強度および液滴サイズが調節される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記層は微孔層である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記製品材料の層の外面に遊離繊維の第2の層を塗布するステップであって、前記製品材料の層は硬化されないまたは部分的に硬化されないステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遊離繊維が静電気によって塗布される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記製品材料の層を乾燥させるステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維の第1の層の上に湿潤剤の残留物が全く残らないように、前記湿潤剤を蒸発させる、または洗浄するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記製品材料の層は、異なる領域において同一のまたは異なる厚さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記壁は平坦である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記壁は、平坦なコンベアベルトまたは加工物の型である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記壁は、エンボス加工されたコンベアベルト、複雑な成形されたコンベアベルト、穴が開いたコンベアベルトまたはそれらを組み合わせたものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加工物の型は、前記加工物が実質的に合致する複雑な形状である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記壁は複数の孔を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくともかなりの製品材料の層が前記孔の上に形成されないように前記噴霧ステップが行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維は、天然または合成材料で作製される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維は、軽量の綿繊維、ビスコース繊維またはそれら2つを組み合わせたものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記湿潤剤は、5重量パーセント未満のセルロースを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液状の製品材料が天然または人工エラストマーを備える、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記液状の製品材料が天然ラテックスゴムまたはポリウレタンを備える、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−515251(P2011−515251A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501321(P2011−501321)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005465
【国際公開番号】WO2009/118654
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505196174)タミケア リミテッド (6)
【Fターム(参考)】