説明

伸縮性繊維構造物

【課題】 ポリウレタン弾性糸による伸縮性繊維構造物であっても、130℃以上のような高温染色を複数回繰り返すことができ、さらに、熱セット温度をさらに高めることができる伸縮性繊維構造物を提供する。
【解決手段】 ポリウレタンウレア弾性繊維を含む伸縮性繊維構造物であって、ポリウレタンウレア弾性繊維が、特定の側鎖を有する構造単位(a)5〜25モル%及びテトロヒドロフラン由来の構造単位(b)95〜75モル%からなり数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、対称性芳香族系ジアミノ化合物とから重合されるポリウレタンウレアからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温染色や高温熱セット処理に適したポリウレタンウレア弾性繊維使い伸縮性繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン又はポリウレタンウレアからなるポリウレタン弾性糸は、一般に、布帛等の繊維構造物に伸縮性を付与する素材として混用され、用途に応じて種々の繊維との組合せで用いられる。
【0003】
ポリウレタン弾性糸と併用される他の繊維としては、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿繊維等が用いられるが、最近は、高温染色が必要なポリエチレンテレフタレート系繊維を用いることが多くなってきている。この場合、染色の均一性やコストダウンのために高温で染色されるので、ポリウレタン弾性糸の耐熱性向上が強く要求される。
【0004】
また、ポリウレタン弾性糸を用いた伸縮性繊維製品においては、併用する繊維の種類が多くなってきている。複数の繊維を併用した繊維製品の場合、色斑のない良好な色調の染色製品とするために、各々の繊維に適した染色を行うことが望ましく、2度染め、3度染めなどと数回にわたって染色することが望まれている。特に、消費者の要求が厳しい衣服の場合には、少しの色差も許されず、良好な色つやの高級な布帛を製造するために染色回数が増える傾向にある。
【0005】
ポリウレタン弾性糸が使用されて染色加工される上記状況から、ポリウレタン弾性糸に対し、高温で染色しても弾性特性が劣化し難いことが強く要求され、さらに、高温で数回染色しても弾性特性が劣化し難い高度の湿熱耐熱性も要求されている。
そこで、かかる要求に対する改善手段が幾つか提案されている。
【0006】
例えば、苛性ソーダ水溶液中で高温でアルカリ減量加工する際の強力保持率を高めるために、ポリウレタン繊維中に、特定のヒンダードアミン化合物、亜リン酸エステル化合物、及びフェノール系酸化防止剤を配合する技術が、特許文献1で提案されている。しかし、この手段は、通常のポリウレタンウレアの耐熱性不良を、添加剤の配合により補おうとするものであり、十分な量の添加剤を配合した場合、繊維表面に添加剤が析出し易く、繊維表面の添加剤が後工程途中で脱落して糸道上にスカムを形成し、編織工程での糸切れを誘発し易い、という問題がある。
【0007】
また、耐湿熱性を向上させて、乾熱セット性と耐湿熱性とが良好なポリウレタン弾性糸を製造するために、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとから重合されるポリアルキレンエーテルジオールと、通常のジイソシアネート化合物と、エチレンジアミンのような通常の鎖伸長剤とを用いてポリウレタンウレアを製造し、ポリウレタン弾性糸を製造することが、特許文献2で提案されている。しかし、このポリウレタンウレアからなる弾性糸ではポリマが耐えられる乾熱温度に限界があって、乾熱セット温度を十分に高めることができないので、併用する繊維の種類に応じて熱セット温度を高めることが困難という問題がある。
【0008】
さらにまた、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランとから重合されるポリアルキレンエーテルジオールと、通常のジイソシアネート化合物と、エチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの組合せ等の特定ジアミンの2種混合物(鎖伸長剤)とから重合されたポリウレタンウレアを用いてポリウレタン弾性糸を製造することが、特許文献3で提案されている。このポリウレタン弾性糸では、強度、湿熱クリープ性、熱セット効率が改善されるが、熱セット性は未だ不十分な水準であり、また、130℃のような高温での耐湿熱性は不十分であって高温染色は困難なものであった。
【0009】
テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランとから重合されるポリアルキレンエーテルジオールを用いて製造されるポリウレタンウレアからポリウレタン弾性糸を製造することは特許文献4にも記載されている。この発明は、ソフトセグメント部分の分子量を特定範囲内とすることにより、低温でも高温でもヘタリのない弾性特性を得ようとするものであり、高温特性は、180℃での乾熱処理後の伸長回復率の保持率でもって評価している。ここでの重合には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートのような通常のジイソシアネート化合物が用いられ、さらに、鎖伸長剤として、エチレンジアミン、又は、エチレンジアミンに他のジアミン化合物(1,2−プロピレンジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン等)を添加したジアミン混合物が用いられている。しかし、このポリウレタン弾性糸は、130℃のような高温で染色することまでは考慮しておらず、130℃のような高温での耐湿熱性は不十分であって高温染色は困難なものであった。
【0010】
上述したように、従来のポリウレタン弾性糸では、130℃以上のような高温染色を複数回繰り返すことや、熱セット温度をさらに高めることは実際上困難であるので、ポリウレタン弾性糸による伸縮性繊維構造物の染色可能条件をさらに広げるために、高温での耐湿熱性がさらに高く、さらに高温で乾熱セットすることも可能なポリウレタン弾性糸が強く望まれていた。
【0011】
【特許文献1】特開2001−355126号公報
【特許文献2】特開2004−189931号公報
【特許文献3】特許第2897254号公報
【特許文献4】特開平9−136937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、ポリウレタン弾性糸による伸縮性繊維構造物であっても、130℃以上のような高温染色を複数回繰り返すことができ、さらに、熱セット温度をさらに高めることができる伸縮性繊維構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の伸縮性繊維構造物は、前記目的を達成するため、以下の構成をとる。
【0014】
ポリウレタンウレア弾性繊維と他の繊維とからなる伸縮性繊維構造物であって、ポリウレタンウレア弾性繊維が、下記の構造単位(a)5〜25モル%及び下記の構造単位(b)95〜75モル%からなり数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、対称性芳香族系ジアミノ化合物とから重合されるポリウレタンウレアからなることを特徴とするものである。
【0015】
【化1】

(ただし、R1は炭素原子数が1〜3の直鎖のアルキレン基、R2は水素または炭素原子数1〜3のアルキル基をそれぞれ表す。)
【0016】
このように、本発明は、伸縮性繊維構造物を構成するポリウレタンウレア弾性糸として、特定のポリアルキレンエーテルジオールと特定のジアミンとを用い、さらにジイソシアネート化合物を用いて重合された特定のポリウレタンウレアからなる弾性糸を使用したことを特徴とするものであり、これによって、本発明の目的が達成可能となったものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリウレタンウレア弾性糸を用いた伸縮性繊維構造物でも、複数回の高温染色が可能であって、さらに、より高温での熱セットも可能となるので、伸縮特性に富み染色特性も良好な伸縮性繊維構造物とすることができる。即ち、複数回の高温染色にも耐えられることから、染色での失敗が減り、また、染色温度を高温化して短縮することも可能となり、コストダウンを図ることもできる。また、熱セット温度を、併用する他の繊維の種類に合わせてより高温にすることができ、繊維構造物全体の熱セット性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の伸縮性繊維構造物について、さらに詳細に述べる。
繊維構造物は、主として繊維から構成される物であり、例えば、複数の繊維から構成される糸、織物、編物、不織布、これらが組合われた繊維製品類で代表され、これらは樹脂コートのように、繊維以外の素材が含まれていてもよい。
【0019】
本発明の繊維構造物は、ポリウレタンウレア弾性糸と他の繊維とで構成される繊維構造物であり、その他、繊維以外の素材が含まれていてもよい。
【0020】
そして特に好ましいのは、繊維構造物を構成する繊維全体の1〜60%がポリウレタンウレア弾性糸からなり、99〜40%が他の繊維からなるものである。これにより、繊維構造物に高い伸縮性が付与することができ、さらに、他の繊維による所望特性を繊維構造物に付与することができる。さらに好ましくは、ポリウレタンウレア弾性糸の含有率が3〜60%、他の繊維の含有率が97〜40%である。
【0021】
本発明の繊維構造物で用いるポリウレタンウレア弾性糸は、下記の構造単位(a)5〜25モル%及び下記の構造単位(b)95〜75モル%からなり数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、対称性芳香族系ジアミノ化合物とから重合されるポリウレタンウレアからなるものであり、このポリウレタンウレアを通常の紡糸方法で紡糸することによって製造される弾性糸である。
【0022】
【化2】

(ただし、R1は炭素原子数が1〜3の直鎖のアルキレン基、R2は水素または炭素原子数1〜3のアルキル基をそれぞれ表す。)
【0023】
このように、本発明で用いるポリウレタンウレア弾性糸のためのポリウレタンウレアは、上記構造単位(a)5〜25モル%及び上記構造単位(b)95〜75モル%からなり数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールを、ポリオールとして用い、ジアミン化合物として対称性芳香族系ジアミノ化合物を用い、さらに、ジイソシアネート化合物を用いて重合されるものである。
【0024】
上記構造単位(a)は、ポリアルキレンエーテルジオール中に側鎖を導入させるためのものであり、例えば、3−メチルテトラヒドロフランに由来する構造単位や、ネオペンチルグリコールに由来する構造単位で代表される。なかでも、前記式中、R1が炭素数2の直鎖アルキレン基、R2が水素である構造単位が特に好ましい。
【0025】
このポリアルキレンエーテルジオールは、分子鎖中に側鎖を有することにより、高い柔軟性と高い回復性をもつ。さらに、このように側鎖のついたポリエーテルジオールを用いて製造されるポリウレタンウレアの繊維は、高温染色や高温熱セットに対する耐久性が向上し、回復応力の低下が抑制される。
【0026】
また、上記構造単位(a)と上記構造単位(b)とからなる共重合は、ブロック共重合でもランダム共重合でもよいが、特に、分子鎖の末端部分に上記構造単位(a)がリッチに存在することが好ましい。即ち、分子鎖の末端に占める上記構造単位(a)の割合(末端a割合)が、分子鎖全体中の上記構造単位(a)の割合(全体a割合)よりも多く、例えば、全体a割合に対する末端a割合の値が2倍以上であることが好ましい。このようにすれば、特に高温染色時の弾性繊維の回復応力の保持をさらに高めることができる。
【0027】
このように上記構造単位(a)が分子鎖末端部分にリッチに存在するためには、上記構造単位(a)を形成させるモノマと上記構造単位(b)を形成させるモノマとを重合させる工程の終期において、上記構造単位(a)を形成させるモノマを追加供給して反応させる重合方法をとればよい。この追加供給するモノマの量や供給タイミング等により、末端中に存在する構造単位(a)割合を所望水準に制御することができる。
【0028】
なお、上記した両モノマとして、3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランとを用いる場合には、触媒として、テトラヒドロフランを開環させ得る強酸(例えばクロロスルホン酸、2フロロスルホン酸、過塩素酸など)を存在させ、0〜50℃程度の温度で共重合反応させて、上記構造単位(a)及び構造単位(b)からなるポリアルキレンエーテルジオールを製造することができる。
【0029】
ポリアルキレンエーテルジオール中において、上記構造単位(a)の割合は5〜25モル%であり、好ましくは8〜20モル%である。上記構造単位(b)は残りの割合である。このような割合で上記構造単位(a)が含まれることにより高温での染色がより問題なくできるようになる。
【0030】
本発明で用いる弾性糸は、上記した特定のポリアルキレンエーテルジオールをポリオールとして用いて重合されるポリウレタンウレアから構成されるので、弾性糸の伸度が高くなり、強度も上がり、さらに数度の染色も可能となり、染色後も、高い伸縮性を保持することでできる。
【0031】
対称性芳香族系ジアミノ化合物としては、ジアミノジフェニルメタンやp−フェニレンジアミン等が挙げられるが、繊維着色防止の点からはジアミノジフェニルメタン(以下、MBAと略す)が好ましい。
【0032】
また、ジイソシアネート化合物としては通常のものが用いられ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)が用いられる。
【0033】
ポリウレタンウレアは、例えば、ポリアルキレンエーテルジオール1モルとジイソシアネート化合物2モルとから得られるプレポリマーを、対称性芳香族系ジアミノ化合物で鎖伸長させることによって製造することができる。このポリウレタンウレア中には、ポリアルキレンエーテルジオールとジイソシアネート化合物とから形成されたウレタン結合(−NHCOO−)をもつ構造単位が存在し、さらに、対称性芳香族系ジアミノ化合物とジイソシアネート化合物とから形成されたウレア結合(−NHCONH−)をもつ構造単位とが存在する。
【0034】
また、ジイソシアネート化合物としてMDIを用い、対称性芳香族系ジアミノ化合物としてMBAを用いる場合には、MDIのDMAc溶液中に水を添加してMBAを生成させる反応を利用することもできる。即ち、鎖伸長剤としてMBAを添加する代わりに、水を添加して、残存MDIと水とを反応させてMBAを系内で生成させ、このMBAを鎖伸長剤として作用させ、ポリウレタンウレアを生成することもできる。
【0035】
ポリウレタンウレア中に存在するウレア結合をもつ構造単位(ウレア構造単位)は、一般に水素結合が多い方が耐熱性が高いと推定される。しかし、実際には、MDIとエチレンジアミンとから形成されるウレア構造単位を含むポリウレタンウレアの繊維よりも、MDIとMBAとから形成されるウレア構造単位を含むポリウレタンウレアの繊維の方が、高温水処理、高温スチーム処理、また、乾熱処理した際のポリマの劣化が小さく抑えられ、処理後の弾性糸の回復応力保持率が高く、残留ひずみ低下率が大きくなる。水素結合が多く存在すると分子中に水が浸透し易いのに対し、芳香環を有する化合物は分子中に水が浸透し難いので、鎖伸長剤としてMBAのような芳香環を有する対称性芳香族系ジアミノ化合物を用いた場合、分子中への水の浸透が少なく抑えられ、この結果として、得られるポリウレタンウレアの耐熱水性が向上するものと考えられる。
【0036】
さらに、本発明で用いる弾性糸は耐熱水性はもとより、耐乾熱性も高い。これは、ポリマ中に芳香族系のウレア基を有することにより、その凝集性が高まり、弾性糸を加熱したとき、グライコール成分の動きを抑え込むことが可能になり、結果として耐乾熱性があがるものと推定される。
【0037】
従って、本発明では、ジアミノジフェニルメタンのような対称性芳香族系ジアミノ化合物で鎖伸長して得られるポリウレタンウレアを用いることにより、弾性糸の耐湿熱性や耐乾熱性を高めることが可能になるのである。
【0038】
本発明で用いるポリウレタンウレア弾性糸は、高温染色工程において、高温の熱水や高温のスチームに曝され、さらに伸びや張力などが付加される条件下におかれるが、この条件下で弾性糸が受ける回復力の低下は、必ずしも水素結合の多さのみに比例するものではないと推定される。2倍に伸ばした弾性糸を熱水で処理したり、またスチームで処理したりする場合、ポリマの熱分解や加水分解などが生じて、弾性糸の回復性が低下するものと考えられる。しかし、本発明で用いる弾性糸は、こうした湿熱処理条件下で処理された弾性糸の残留ひずみが、処理する前の弾性糸よりも低下するものである。
【0039】
本発明の伸縮性繊維構造物に使用するポリウレタンウレア弾性糸は、さらに、以下の特性を有することが好ましい。
つまり、130℃の熱水中で定長で60分間処理した糸の回復応力の保持率(未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、熱水保持率という。)が55%以上であり、かつ該処理により残留ひずみが低下する特性を有することが好ましい。
【0040】
ここで、熱水保持率は、弾性糸を2倍に伸ばした状態で60分間熱処理することによって保持される200%伸長時回復応力である。200%伸長時回復応力は、弾性糸を5回繰返し伸長し回復させた5回目回復時の応力であり、また、残留ひずみは、この繰り返し伸長後の変形を元の長さで割った値である。後述する方法により測定される値である。
【0041】
ポリウレタンウレア弾性糸の熱水保持率は55%以上が好ましく、特に好ましいのは58%以上である。
【0042】
また、かかる熱水処理した後の弾性糸の残留ひずみは、処理前の糸に比較して低いことが好ましい。特に好ましいのは、処理後の弾性糸の残留歪みが、処理前の弾性糸の残留歪みよりも1%以上低下することである。 残留歪みが小さいほど弾性回復特性は優れているので、このように残留歪みが低下するのは、熱水処理を経た後でも、糸を構成するポリマ自体は優れた回復特性をもっていることを意味する。
【0043】
このような熱水保持率の値や残留歪み特性を有する弾性糸を、伸縮性繊維構造物に用いると、染色加工時などで高温湿熱処理しても得られる繊維構造物の回復性が高く、伸縮性に富んだ物となるのである。
【0044】
また、より好ましいポリウレタンウレア弾性糸は、さらに、130℃のスチーム中で定長で1分間処理した糸の回復応力の保持率(未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、スチーム保持率という。)が、85%以上であり、かつ、上記スチーム処理により残留ひずみが低下する特性を有するものである。この場合のスチーム保持率、残留歪みの測定方法は後述するとおりである。
【0045】
かかる特性の糸として更に好ましいのは、スチーム保持率が90%以上であり、かつ該処理糸の残留ひずみが未処理の糸より1%以上低いものである。
このようなスチーム保持率の値や残留歪み特性を有する弾性糸を他の繊維とともに用いて伸縮性繊維構造物を製造すると、高温染色や繰り返し染色でのトラブル発生を少なくできるのである。
【0046】
そして、さらに好ましいのは、さらに、200℃の空気中で定長で1分間処理した糸の回復応力の保持率(未処理の糸の回復応力と比較しての保持率。以下、乾熱保持率という。)が50%以上であるポリウレタンウレア弾性糸を用いることである。この乾熱保持率は、55%以上であることが更に好ましい。この場合の乾熱保持率、残留歪みの測定方法は後述するとおりである。
【0047】
かかる弾性糸の場合、染色加工時に高温で熱セットすることが必要とされる他の繊維を用いた繊維構造物に伸縮性付与素材として混用させても問題なく熱セットすることができ、良好な伸縮性繊維構造物が得られるのである。
【0048】
本発明で用いるポリウレタンウレア弾性糸は、前述した特定のポリウレタンウレアからなるとともに、さらに上述したような特性を有することが好ましい。かかる特性のポリウレタンウレア弾性糸の製法は特に限定されるものではないが、ポリウレタンウレアの組成、分子量や紡糸条件等を任意に制御することによって製造できる。
【0049】
なお、本発明で用いるポリウレタンウレア弾性糸には、適宜、各種の添加剤、安定剤などが含まれていてもよい。例えば、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト及びハイドロマグネサイト、トルマリンなどに代表される各種の鉱物、Ca、Mg、Zn、Al、Ba、Tiに代表される金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物などが、本発明の効果を損なわない範囲内で含まれていてもよい。
【0050】
また、これら無機系添加剤を配合する場合には、その糸中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはこれらの混合物で表面処理された無機薬品を用いることも好ましい。
【0051】
さらに、これら弾性繊維には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80などをはじめとする両ヒンダードフェノール系薬剤、チバガイギー社製“チヌビン”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業(株)製の“スミライザー”P−16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、フッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などを添加してもよいし、またポリマと反応して存在させてもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるためには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80等、光安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミソーブ”300#622などの光安定剤などを含有させてもよい。
【0052】
本発明の伸縮性繊維構造物は、上述したポリウレタンウレア弾性糸と他の繊維とで構成されるものであるが、他の繊維として特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート系繊維であり、即ち、主たるポリマがポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維である。このポリエチレンテレフタレート系繊維は、良好な風合い、光沢を有し、またしわになりにくいなどのイージーケア性があり、伸縮性を有する繊維構造物を構成する繊維素材として好適である。また、ポリエチレンテレフタレート系繊維は、本発明で特定したポリウレタンウレア弾性糸との組合せで用いる場合に好適であって、良好な伸縮性繊維構造物とすることが可能である。
【0053】
かかる伸縮性繊維構造物の製法は特に限定されるものではなく、任意の方法が適用出来る。例えば、ポリウレタンウレア弾性糸に他の繊維をカバリングしてカバリング弾性糸としてもよいし、ベアのポリウレタンウレア弾性糸を編み込んで交編編み地としてもよい。なお、これら繊維構造物を製造する際のポリウレタンウレア弾性糸の繊度は特に限定されるものではなく用途に応じて任意のものを使えばよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものでない。
本発明においては下記の方法により特性を測定した。
【0055】
[強度、伸度、残留歪み]
ポリウレタンウレア弾性糸の試料(測定長5cm(L1))を、50cm/分の引張速度で300%伸長させ回復させることを5回繰返す。5回目伸長で300%伸長を30秒間保持する。ここで、5回目伸長途中における200%伸長時の応力を(GP200)とする。
【0056】
次に、伸長を回復せしめ応力が0になった時の試料の長さを(L2)とする。ここで、5回目回復途中における200%伸長時の応力を(GM200)とする。
さらに、6回目伸長として、試料の糸が切断するまで伸長する。この破断時の応力を(G1)とし、破断時の試料長さを(L3)とする。
以下、上記の測定値から、下記式により強度等が与えられる。
【0057】
強度=(G1)
伸度=100*[(L3)−(L1)]/(L1)
残留歪み=100*[(L2)−(L1)]/(L1)
【0058】
[熱水保持率(130℃の熱水中で定長下で60分間処理した後の回復応力の保持率)]
ポリウレタンウレア弾性糸の試料を2倍に伸ばした状態で、130℃の熱水中で1時間処理する。
処理後の試料(測定長5cm(L1))について、上記同様にして300%伸長させ回復させることを5回繰返す。5回目伸長で300%伸長を30秒間保持する。ここで、5回目伸長途中における200%伸長時の応力を(GLP200)とする。
【0059】
次に、伸長を回復せしめ応力が0になった時の試料の長さを(LL2)とする。ここで、5回目回復途中における200%伸長時の応力を(GLM200)とする。
以下、上記の測定値、及び、処理前試料での測定値(GM200)とから、下記式により、残留歪み、熱水保持率が与えられる。
【0060】
熱水処理後の残留ひずみ=100*[(LL2)−(L1)]/(L1)
熱水保持率=100*(GLM200)/(GM200)
【0061】
[スチーム保持率(130℃のスチーム中で定長下で1分間処理した後の回復応力の保持率)]
ポリウレタンウレア弾性糸の試料を2倍に伸ばした状態で、130℃のスチーム中で1分処理する。
処理後の試料(測定長5cm(L1))について、上記同様にして300%伸長させ回復させることを5回繰返す。5回目伸長で300%伸長を30秒間保持する。ここで、5回目伸長途中における200%伸長時の応力を(GSP200)とする。
【0062】
次に、伸長を回復せしめ応力が0になった時の試料の長さを(LS2)とする。ここで、5回目回復途中における200%伸長時の応力を(GSM200)とする。
以下、上記の測定値、及び、処理前試料での測定値(GM200)とから、下記式により、残留歪み、スチーム保持率が与えられる。
【0063】
スチーム処理後の残留ひずみ=100*[(LS2)−(L1)]/(L1)
スチーム保持率=100*(GSM200)/(GM200)
【0064】
[乾熱保持率(200℃の空気中で定長下で1分間処理した後の回復応力の保持率)]
ポリウレタンウレア弾性糸の試料を2倍に伸ばした状態で、200℃の空気中で1分処理する。
処理後の試料(測定長5cm(L1))について、上記同様にして300%伸長させ回復させることを5回繰返す。5回目伸長で300%伸長を30秒間保持する。ここで、5回目伸長途中における200%伸長時の応力を(GDP200)とする。
【0065】
次に、伸長を回復せしめ応力が0になった時の試料の長さを(LD2)とする。ここで、5回目回復途中における200%伸長時の応力を(GDM200)とする。
以下、上記の測定値、及び、処理前試料での測定値(GM200)とから、下記式により、残留歪み、乾熱保持率が与えられる。
【0066】
乾熱処理後の残留ひずみ=100*[(LD2)−(L1)]/(L1)
乾熱保持率=100*(GDM200)/(GM200)
【0067】
[耐高温染色性値(高温染色時の応力保持率)]
以下の実施例・比較例で作製された筒編み地を試料として、以下の条件で、高温染色と高温でのセットとを行い、1回染色及び熱セット後の50%伸長時応力と、3回染色及び熱セット後の50%伸長時応力とを測定する。
【0068】
処理条件
1回染色及び熱セット処理: 90℃の熱水中で1分間処理し、次に120℃の熱風中でネット上で乾燥した筒編み地を試料とする。次に、この筒編み地の試料を、あり幅より5%幅出した状態で190℃で1分間プレセットし、130℃で1時間染色処理する。さらに175℃で、あり幅で1分間熱セットする。
【0069】
3回染色及び熱セット処理: 上記と同様にしてプレセットし1回染色した筒編み地を、90℃の熱水で1分間処理する。200℃で1分間、あり幅でプレセットし、130℃で45分染色処理する。さらに130℃で45分染色処理する。175℃であり幅で1分間熱セットする。
【0070】
次に、1回染色及び熱セット処理後の染色筒編み地を50%まで伸ばし、50%伸長時の応力(GD2−1st)を測定する。また、3回染色及び熱セット後の染色筒編み地を50%まで伸ばし、50%伸長時の応力(GD2−3rd)を測定する。
【0071】
次の式により、耐高温染色性値を求める。
耐高温染色性値=(GD2−3rd)/(GD2−1st)
【0072】
[実施例1]
脱水されたテトラヒドロフランと脱水された3メチル−テトラヒドロフランとを撹拌機付き反応器に仕込み、窒素シール下、温度10℃で、触媒(70%過塩素酸及び無水酢酸)の存在下で8時間重合反応を行ない、反応終了液に水酸化ナトリウム水溶液で中和する共重方法により得られた、分子量3500の共重合テトラメチレンエーテルジオール(3メチル−テトラヒドロフラン由来の構造単位(a)を12.5モル%含む)を、ポリアルキレンエーテルジオールとして用いた。なお、この共重合ジオール中において、分子鎖末端部分に存在する構造単位(a)の割合は、全体中の割合とほぼ同程度であった。
【0073】
この共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.85モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてMBAを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が29重量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0074】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、4フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
【0075】
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。つまり、何れの処理後の残留ひずみも、未処理糸の残留ひずみよりも少なかった。
【0076】
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維をドラフト3で供給し、通常のポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(55dtex)をシングルカバリングした。このシングルカバリング糸を筒編み機にかけ、筒編み地とした。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0077】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品でも伸縮性に富み良好な風合のものが得られた。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.91と良好であった。
【0078】
[実施例2]
実施例1で用いたと同じ共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.95モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてMBAを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が28重量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0079】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、4フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
【0080】
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。特に、乾熱保持率が高いものであった。また、何れの処理後の残留ひずみも、未処理糸の残留ひずみよりも少なかった。
【0081】
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維を用いて、実施例1の場合と同様にしてシングルカバリング糸を製造し、次いで筒編み地を製造した。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0082】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品でも伸縮性に富み良好な風合のものが得られた。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.96と良好であった。
【0083】
[実施例3]
脱水されたテトラヒドロフランと脱水された3メチル−テトラヒドロフランとを撹拌機付き反応器に仕込み、窒素シール下、温度10℃で、触媒(70%過塩素酸及び無水酢酸)の存在下で7時間重合反応を行ない、さらに、脱水された3メチル−テトラヒドロフランを添加し、4時間反応させ、反応終了液に水酸化ナトリウム水溶液で中和する共重合方法により得られた、分子量3200の共重合テトラメチレンエーテルジオール(3メチル−テトラヒドロフラン由来の構造単位(a)を15モル%含む)を、ポリアルキレンエーテルジオールとして用いた。なお、この共重合ジオールは、分子鎖末端に3メチル−テトラヒドロフランに由来する構造単位が多く存在するものであった。
【0084】
この共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.85モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてMBAを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が26重量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0085】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、520m/分のスピードで巻き取り、5フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。また、何れの処理後の残留ひずみも、未処理糸の残留ひずみよりも少なかった。
【0086】
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維を用いて、実施例1の場合と同様にしてシングルカバリング糸を製造し、次いで筒編み地を製造した。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0087】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品でも伸縮性に富み良好な風合のものが得られた。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.97と良好であった。
【0088】
[実施例4]
特開2004−189931の参考例1と同様の方法によりテトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合させ、分子量約1900の共重合テトラメチレンエーテルジオールを調製した。
得られた共重合テトラメチレンエーテルジオールは、数平均分子量が約1900で、分子鎖末端に3メチル−テトラヒドロフランに由来する構造単位が多く存在するものであった。
【0089】
この共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.95モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてMBAを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が26%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0090】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、5フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
【0091】
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。特に、スチーム保持率が高いものであった。
また、何れの処理後の残留ひずみも、未処理糸の残留ひずみよりも少なかった。
【0092】
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維を用いて、実施例1の場合と同様にしてシングルカバリング糸を製造し、次いで筒編み地を製造した。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0093】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品でも伸縮性に富み良好な風合のものが得られた。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.86であった。
【0094】
[比較例1]
実施例1で調製した共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.85モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてエチレンジアミン(80モル%)と1,2プロピレンジアミン(20モル%)を含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が35重量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0095】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、4フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
【0096】
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維を用いて、実施例1の場合と同様にしてシングルカバリング糸を製造し、次いで筒編み地を製造した。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0097】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品では伸縮性はあるが、風合はぺらぺら感のある、たよりないものとなった。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.76と低いものであった。
【0098】
[比較例2]
実施例4で調製した分子量約1900の共重合テトラメチレンエーテルジオール1モルに対しMDIを1.95モルになるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを含むDMAc溶液を、前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ中の固体分が35%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
【0099】
このポリウレタンウレア溶液を、紡糸口金から高温の不活性ガス中に4フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の糸が撚り合わされるようにエアージェット式撚糸器を通し、4フィラメントを合着させ、540m/分のスピードで巻き取り、4フィラメント合着で44dtexのポリウレタンウレア弾性繊維を製造した。
【0100】
得られたポリウレタンウレア弾性繊維の熱水保持率等の特性は表1に示すとおりであった。
次に、得られたポリウレタンウレア弾性繊維を用いて、実施例1の場合と同様にしてシングルカバリング糸を製造し、次いで筒編み地を製造した。この筒編み地中のポリウレタンウレア弾性糸の比率は約30%であった。
【0101】
この筒編み地を前記した染色処理条件で3回染色処理し熱セットしたところ、3回染色品では伸縮性はあるが、風合はぺらぺら感のある、たよりないものとなった。また、前記方法で測定した耐高温染色性値は0.71と低いものであった。
【0102】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の伸縮性繊維構造物は、高温での染色や高温での熱セットがさらに容易となるので、色調に優れ、形態の良好な、染色された伸縮性繊維構造物を製造する場合に特に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンウレア弾性繊維と他の繊維とからなる伸縮性繊維構造物であって、ポリウレタンウレア弾性繊維が、下記の構造単位(a)5〜25モル%及び下記の構造単位(b)95〜75モル%からなり数平均分子量が250〜10000であるポリアルキレンエーテルジオールと、ジイソシアネート化合物と、対称性芳香族系ジアミノ化合物とから重合されるポリウレタンウレアからなることを特徴とする伸縮性繊維構造物。
【化1】

(ただし、R1は炭素原子数が1〜3の直鎖のアルキレン基、R2は水素または炭素原子数1〜3のアルキル基をそれぞれ表す。)
【請求項2】
ポリウレタンウレア中の構造単位(a)が、3−メチルテトラヒドロフランに由来する構造単位、及び/又は、ネオペンチルグリコールに由来する構造単位であることを特徴とする請求項1記載の伸縮性繊維構造物。
【請求項3】
ポリアルキレンエーテルジオールの末端が主として構造単位(a)からなることを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮性繊維構造物。
【請求項4】
対称性芳香族系ジアミノ化合物がジアミノジフェニルメタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の伸縮性繊維構造物。
【請求項5】
ポリウレタンウレア弾性繊維が、130℃の熱水中で定長下で60分間処理した後の回復応力の保持率が55%以上であり、かつ、上記熱水処理により残留ひずみが低下する特性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の伸縮性繊維構造物。
【請求項6】
ポリウレタンウレア弾性繊維が、200℃の空気中で定長下で1分間処理した後における回復応力保持率が50%以上であり、かつ、130℃の水蒸気中で定長下で60分間処理した後の回復応力の保持率が85%以上である特性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンウレア弾性繊維。
【請求項7】
伸縮性繊維構造物中の繊維全体の1〜60%がポリウレタンウレア弾性繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の伸縮性繊維構造物。
【請求項8】
伸縮性繊維構造物中の繊維全体の99〜40%を占める他の繊維が、ポリエチレンテレフタレート系繊維であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の伸縮性繊維構造物。

【公開番号】特開2006−97173(P2006−97173A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283667(P2004−283667)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】